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特許7564832金属代謝の周期的変動に関連する生物学的障害の診断のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】金属代謝の周期的変動に関連する生物学的障害の診断のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20241002BHJP
【FI】
G16H50/20
【請求項の数】 67
(21)【出願番号】P 2021572372
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 US2020036368
(87)【国際公開番号】W WO2020247781
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】62/858,260
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513321467
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディシン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アローラ,マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】カーティン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,クリスティン
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-527833(JP,A)
【文献】特開2004-45133(JP,A)
【文献】特開2006-53101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属代謝に関連する第1の生物学的状態について対象を評価するための方法であって、
前記対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、複数のイオン試料を取得することであって、前記複数のイオン試料中の各イオン試料が、前記複数の位置における異なる位置に対応し、前記複数の位置における各位置が、金属代謝に関連する前記生体試料の異なる成長期間を表す、取得することと、
質量分析計を用いて前記複数のイオン試料中の各イオン試料を分析し、それにより、複数のトレースを含む第1のデータセットを取得することであって、前記複数のトレース中の各トレースが、前記複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である、取得することと、
特徴のセットを含む前記複数のトレースから第2のデータセットを導出することであって、前記特徴のセット内のそれぞれの特徴が、前記複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される、導出することと、
前記特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより、前記対象が金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有する確率を前記訓練済み分類子から取得することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の元素同位体が、表1に列挙される元素同位体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特徴のセット内の各特徴が、前記複数のトレースのうちの単一のそれぞれのトレース、または前記複数のトレースのうちの2つのそれぞれのトレースに関連付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記特徴のセットが、表2、3、4、5、6、7、8、9、または10に列挙される特徴から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特徴のセットが、表3に列挙される1つ以上の特徴をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態が、自閉症スペクトラム障害(ADS)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、過敏性腸疾患(IBD)、小児腎移植拒絶反応、および小児がんからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
金属代謝に関連する第1の生物学的状態について前記対象を評価することが、金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態と、金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態とは異なる金属代謝に関連する第2の生物学的状態と、を区別することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の生物学的状態が、自閉症スペクトラム障害であり、前記第2の生物学的状態が、注意欠陥/多動性障害である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒトが、5歳未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒトが、1歳未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料が、毛幹、歯、および爪からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料が、前記毛幹であり、前記基準線が、前記毛幹の長手方向に対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料が、前記歯であり、前記基準線が、前記歯のエナメル質表面上の前記歯の新生児線に対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料を、前記サンプリングの前に溶媒または界面活性剤で前処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料に低出力レーザを照射して、前記サンプリングの前に前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料から任意のデブリを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプリングが、レーザを用いて、前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料を前記レーザで照射し、それにより、前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料から複数の粒子を抽出することと、前記複数の粒子を誘導結合プラズマ質量分析計で電離し、それにより、前記複数のイオン試料を取得することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の位置は、前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料に沿った前記複数の位置における第1の位置が、前記対象の金属代謝に関連する前記生体試料の先端に最も近い位置に対応するように順序付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のトレース内の各トレースが、複数のデータ点を含み、各データ点が、前記複数の位置における前記それぞれの位置のインスタンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のデータセットの前記導出が、前記複数のデータ点から、第1の基準を満たさないようなデータ点を削除することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の基準は、前記複数のデータ点内の隣接データ点間の平均絶対差が、隣接点間の前記平均絶対差の標準偏差の3倍であることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対応する元素同位体の前記濃度が、前記対応する元素同位体の対照元素同位体に対する相対存在量に対応し、前記対照元素同位体が、前記複数のイオン試料に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記対照元素同位体が、硫黄である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記特徴のセットが、平均対角線長、決定性、再帰時間、エントロピー、トラッピング時間、およびラミナリティからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記訓練済み分類子が、
【数1】
を計算し、式中、
p(対象)は、前記対象が金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有する前記確率であり、
eは、オイラー数であり、
αは、β+…+βがゼロに等しいときに、前記対象が金属代謝に関連する前記生物学的状態を有する前記確率に関連付けられた計算されたパラメータであり、
β1,…,kは、1~kの特徴を含む前記特徴のセット内の各特徴に関連付けられた重みパラメータに対応し、
1,…,kは、前記特徴のセット内の各特徴について導出される値に対応し、前記特徴のセットは、1~kの特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
p(対象)が所定の閾値を上回っているという判定に従って、前記対象が金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有するとみなすことをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
金属代謝に関連する前記生物学的状態が、複数の金属の代謝の周期的な調節不全に関連し、前記複数の金属が、前記複数の元素同位体に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の位置が、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、または500の位置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の元素同位体が、表1に列挙される元素同位体のうちの少なくとも22個の元素同位体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記特徴のセットが、表2に列挙される少なくとも23個の特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
1つ以上のプロセッサと、前記1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、を含む、金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するためのデバイスであって、前記1つ以上のプログラムが、
前記対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、複数のイオン試料を取得することであって、前記複数のイオン試料中の各イオン試料が、前記複数の位置における異なる位置に対応し、前記複数の位置における各位置が、金属代謝に関連する前記生体試料の異なる成長期間を表す、取得することと、
質量分析計を用いて前記複数のイオン試料中の各イオン試料を分析し、それにより、複数のトレースを含む第1のデータセットを取得することであって、前記複数のトレース中の各トレースが、前記複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である、取得することと、
特徴のセットを含む前記複数のトレースから第2のデータセットを導出することであって、前記特徴のセット内のそれぞれの特徴が、前記複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される、導出することと、
前記特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより、前記対象が金属代謝に関連する前記生物学的状態を有する確率を前記訓練済み分類子から取得することと、を行うための命令を含む、デバイス。
【請求項32】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体および分類のためにその中に埋め込まれた1つ以上のコンピュータプログラムであって、前記1つ以上のコンピュータプログラムが、コンピュータシステムによって実行されたときに、前記コンピュータシステムに、金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価する方法を実行させる命令を含み、前記方法が、
前記対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、複数のイオン試料を取得することであって、前記複数のイオン試料中の各イオン試料が、前記複数の位置における異なる位置に対応し、前記複数の位置における各位置が、金属代謝に関連する前記生体試料の異なる成長期間を表す、取得することと、
質量分析計を用いて前記複数のイオン試料中の各イオン試料を分析し、それにより、複数のトレースを含む第1のデータセットを取得することであって、前記複数のトレース中の各トレースが、前記複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である、取得することと、
特徴のセットを含む前記複数のトレースから第2のデータセットを導出することであって、前記特徴のセット内のそれぞれの特徴が、前記複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される、導出することと、
前記特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより、前記対象が金属代謝に関連する前記生物学的状態を有する確率を前記訓練済み分類子から取得することと、を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体および分類のためにその中に埋め込まれた1つ以上のコンピュータプログラム。
【請求項33】
分類方法であって、
1つ以上のプロセッサと、前記1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、を有するコンピュータシステムにおいて、
a)複数の訓練対象におけるそれぞれの訓練対象であって、前記複数の訓練対象における訓練対象の第1のサブセットが、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有することに対応する第1の診断ステータスを有し、前記複数の訓練対象における訓練対象の第2のサブセットが、金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有しないことに対応する第2の診断ステータスを有する、それぞれの訓練対象について、
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、対応する複数のイオン試料を取得することであって、前記対応する複数のイオン試料中の各イオン試料が、前記対応する複数の位置における異なる位置のためのものであり、前記対応する複数の位置における各位置が、金属代謝に関連する前記対応する生体試料の異なる成長期間を表す、取得することと、
質量分析計を用いて前記対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を分析し、それにより、対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得することであって、前記対応する複数のトレース中の各トレースが、前記対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である、取得することと、
対応する特徴のセットを含む前記対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することであって、前記対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴が、前記対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される、導出することと、
b)未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)前記複数の訓練対象のうちの各訓練対象のそれぞれの第2のデータセットの前記対応する特徴のセットと、(ii)前記第1の診断ステータスおよび前記第2の診断ステータスの中から選択された、前記複数の訓練対象のうちの各訓練対象の前記対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、試験対象が金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する訓練済み分類子を、前記試験対象の金属代謝に関連する生体試料から取得された特徴のセット内の特徴の値に基づいて取得することと、を含む、分類方法。
【請求項34】
前記訓練済み分類子が、ニューラルネットワークアルゴリズム、サポートベクターマシンアルゴリズム、決定木アルゴリズム、教師なしクラスタリングモデルアルゴリズム、教師ありクラスタリングモデルアルゴリズム、または回帰モデルである、請求項33に記載の分類方法。
【請求項35】
前記訓練済み分類子が、多項型である、請求項33に記載の分類方法。
【請求項36】
前記訓練済み分類子が、二項型である、請求項33に記載の分類方法。
【請求項37】
前記複数の元素同位体が、表1に列挙される元素同位体から選択される、請求項33に記載の分類方法。
【請求項38】
前記対応する特徴のセット内の各特徴が、前記対応する複数のトレースのうちの単一のそれぞれのトレース、または前記対応する複数のトレースのうちの2つのそれぞれのトレースに関連付けられている、請求項33に記載の分類方法。
【請求項39】
前記対応する特徴のセットが、表2、3、4、5、6、7、8、9、または10に列挙される特徴から選択される、請求項33に記載の分類方法。
【請求項40】
前記対応する特徴のセットが、表3に列挙される1つ以上の特徴をさらに含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項41】
金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態が、自閉症スペクトラム障害(ADS)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、過敏性腸疾患(IBD)、小児腎移植拒絶反応、および小児がんからなる群から選択される、請求項33に記載の分類方法。
【請求項42】
金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態について前記試験対象を評価することが、金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態と、金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態とは異なる金属代謝に関連する第2の生物学的状態と、を区別することをさらに含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項43】
前記第1の生物学的状態が、自閉症スペクトラム障害であり、前記第2の生物学的状態が、注意欠陥/多動性障害である、請求項42に記載の分類方法。
【請求項44】
前記試験対象が、ヒトである、請求項33に記載の分類方法。
【請求項45】
前記ヒトが、5歳未満である、請求項44に記載の分類方法。
【請求項46】
前記ヒトが、1歳未満である、請求項45に記載の分類方法。
【請求項47】
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料が、毛幹、歯、および爪からなる群から選択される、請求項33に記載の分類方法。
【請求項48】
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料が、前記毛幹であり、前記基準線が、前記毛幹の長手方向に対応する、請求項47に記載の分類方法。
【請求項49】
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料が、前記歯であり、前記基準線が、前記歯のエナメル質表面上の前記歯の新生児線に対応する、請求項47に記載の分類方法。
【請求項50】
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料を、前記サンプリングの前に溶媒または界面活性剤で前処理することをさらに含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項51】
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料に低出力レーザを照射して、前記サンプリングの前に前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料から任意のデブリを除去することをさらに含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項52】
前記サンプリングが、レーザを用いて、前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料を前記レーザで照射し、それにより、前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料から複数の粒子を抽出することと、前記複数の粒子を誘導結合プラズマ質量分析計で電離し、それにより、前記対応する複数のイオン試料を取得することと、を含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項53】
前記対応する複数の位置は、前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料に沿った前記対応する複数の位置における第1の位置が、前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する前記対応する生体試料の先端に最も近い位置に対応するように順序付けられる、請求項33に記載の分類方法。
【請求項54】
前記対応する複数のトレース内の各トレースが、複数のデータ点を含み、各データ点が、前記複数の位置における前記それぞれの位置のインスタンスである、請求項33に記載の分類方法。
【請求項55】
前記第2のデータセットの前記導出が、前記複数のデータ点から、第1の基準を満たさないようなデータ点を削除することを含む、請求項54に記載の分類方法。
【請求項56】
前記第1の基準は、前記対応する複数のデータ点内の隣接データ点間の平均絶対差が、隣接点間の前記平均絶対差の標準偏差の3倍であることを含む、請求項55に記載の分類方法。
【請求項57】
前記対応する元素同位体の前記濃度が、前記対応する元素同位体の対照元素同位体に対する相対存在量に対応し、前記対照元素同位体が、前記対応する複数のイオン試料に含まれる、請求項33に記載の分類方法。
【請求項58】
前記対照元素同位体が、硫黄である、請求項57に記載の分類方法。
【請求項59】
前記対応する特徴のセットが、平均対角線長、決定性、再帰時間、エントロピー、トラッピング時間、およびラミナリティからなる群から選択される、請求項33に記載の分類方法。
【請求項60】
前記訓練済み分類子が、
【数2】
を計算し、式中、
p(対象)は、前記試験対象が金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有する確率であり、
eは、オイラー数であり、
αは、β+…+βがゼロに等しいときに、前記試験対象が金属代謝に関連する前記生物学的状態を有する前記確率に関連付けられた計算されたパラメータであり、
β1,…,kは、1~kまでの特徴を含む前記特徴のセット内の各特徴に関連付けられた重みパラメータに対応し、
1,…,kは、前記特徴の試験セット内の各特徴について導出される値に対応し、前記特徴の試験セットは、1~kの特徴を含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項61】
p(対象)が所定の閾値を上回っているという判定に従って、前記試験対象が金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態を有するとみなすことをさらに含む、請求項60に記載の分類方法。
【請求項62】
金属代謝に関連する前記第1の生物学的状態が、複数の金属の代謝の周期的な調節不全に関連し、前記複数の金属が、前記複数の元素同位体に対応する、請求項33に記載の分類方法。
【請求項63】
前記対応する複数の位置が、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、または500の位置を含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項64】
前記複数の元素同位体が、表1に列挙される元素同位体のうちの少なくとも22個の元素同位体を含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項65】
前記対応する特徴のセットが、表2、3、4、5、6、7、8、9、または10に列挙される少なくとも23個の特徴を含む、請求項33に記載の分類方法。
【請求項66】
1つ以上のプロセッサと、前記1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、を含む分類デバイスであって、前記1つ以上のプログラムが、
a)複数の訓練対象におけるそれぞれの訓練対象であって、前記複数の訓練対象における訓練対象の第1のサブセットが、金属代謝に関連する生物学的状態を有することに対応する第1の診断ステータスを有し、前記複数の訓練対象における訓練対象の第2のサブセットが、金属代謝に関連する前記生物学的状態を有しないことに対応する第2の診断ステータスを有する、それぞれの訓練対象について、
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、対応する複数のイオン試料を取得することであって、前記対応する複数のイオン試料中の各イオン試料が、前記対応する複数の位置における異なる位置のためのものであり、前記対応する複数の位置における各位置が、金属代謝に関連する前記対応する生体試料の異なる成長期間を表す、取得することと、
質量分析計を用いて前記対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を分析し、それにより、対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得することであって、前記対応する複数のトレース中の各トレースが、前記対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である、取得することと、
対応する特徴のセットを含む前記対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することであって、前記対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴が、前記対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される、導出することと、
b)未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)前記複数の訓練対象のうちの各対象のそれぞれの第2のデータセットの前記対応する特徴のセットと、(ii)前記第1の診断ステータスおよび前記第2の診断ステータスの中から選択された、前記複数の訓練対象のうちの各訓練対象の前記対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、試験対象が金属代謝に関連する前記生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する訓練済み分類子を、前記試験対象の金属代謝に関連する生体試料から取得された特徴のセット内の特徴の値に基づいて取得することと、を含む分類方法を実行するための命令を含む、分類デバイス。
【請求項67】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体および分類のためにその中に埋め込まれた1つ以上のコンピュータプログラムであって、前記1つ以上のコンピュータプログラムが、コンピュータシステムによって実行されたときに、前記コンピュータシステムに、
a)複数の訓練対象におけるそれぞれの訓練対象であって、前記複数の訓練対象における訓練対象の第1のサブセットが、金属代謝に関連付けられた生物学的状態を有することに対応する第1の診断ステータスを有し、前記複数の訓練対象における訓練対象の第2のサブセットが、金属代謝に関連付けられた前記生物学的状態を有しないことに対応する第2の診断ステータスを有する、それぞれの訓練対象について、
前記それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、対応する複数のイオン試料を取得することであって、前記対応する複数のイオン試料中の各イオン試料が、前記対応する複数の位置における異なる位置のためのものであり、前記対応する複数の位置における各位置が、金属代謝に関連する前記対応する生体試料の異なる成長期間を表す、取得することと、
質量分析計を用いて前記対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を分析し、それにより、対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得することであって、前記対応する複数のトレース中の各トレースが、前記対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である、取得することと、
対応する特徴のセットを含む前記対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することであって、前記対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴が、前記対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される、導出することと、
b)未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)前記複数の訓練対象のうちの各対象のそれぞれの第2のデータセットの前記対応する特徴のセットと、(ii)前記第1の診断ステータスおよび前記第2の診断ステータスの中から選択された、前記複数の訓練対象のうちの各訓練対象の前記対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、試験対象が金属代謝に関連付けられた前記生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する訓練済み分類子を、前記試験対象の金属代謝に関連付けられた生体試料から取得された特徴のセット内の特徴の値に基づいて取得することと、を含む分類方法を実行させる命令を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体および分類のためにその中に埋め込まれた1つ以上のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月6日に出願された「Systems and Methods for Hair Based Diagnostics for Autism Spectrum Disorders」と題された米国仮特許出願第62/858,260号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概して、金属代謝に関連する生物学的状態の診断に関するものであり、かかる生物学的状態のために試験された対象からの生体試料の分析を通して行われる。
【背景技術】
【0003】
金属イオンは、ヒトにとって構造的および機能的に重要な多くの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。栄養に含まれる特定の量の金属または特定の金属の代謝異常に起因して特定の金属イオンが不均衡に獲得されることは、多くの生物学的状態と関連している。この不均衡には、特定の金属イオンの過剰な獲得または特定の金属イオンの欠如のいずれかが含まれる。金属代謝に関連する生物学的状態の例としては、神経学的状態(例えば、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、または注意欠陥/多動性障害(ADHD))、神経変性状態(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病)、および一部のがん(例えば、小児がん)が挙げられる。
【0004】
最近の研究では、自閉症スペクトラム障害と代謝機能障害、特に金属調節不全との間の関連性が示されている(例えば、Chengらの“Metabolic Dysfunction Underlying Autism Spectrum Disorder and Potential Treatment Approaches,”Front Mol Neurosci.10,p.34,February 2017およびAroraらの“Fetal and postnatal metal dysregulation in Autism,”Nat.Commun.8,p.15493,June 2017を参照されたい)。別の例として、最近の研究では、神経変性と、対象の毛髪および/または歯から検出可能な金属の生物学的リズムとの間の関連性が示されている(例えば、Appenzellerらの“Stable Isotope Ratios in Hair and Teeth Reflect Biologic Rhythms,”PLoS ONE 2(7):e636.https://doi.org/10.1371/journal.pone.0000636,April 2017を参照されたい)。しかし、そこには、
【0005】
上記の背景を考慮すると、当該技術分野では、金属代謝に関連する生物学的状態を正確に診断するための改善されたシステムおよび方法が必要とされている。特に、金属代謝に関連する生物学的状態の診断のために、非侵襲的方法で検出可能なバイオマーカーが必要である。
【発明の概要】
【0006】
このように、金属代謝に関連する生物学的状態の診断のための正確な方法およびシステム、特に非侵襲的診断のための要求が存在している。本開示は、例えば、金属代謝に関連する生物学的状態の診断のための生体試料バイオマーカーを提供することによって、これらの必要性に対処する。生体試料には、特定の金属の堆積物が含まれ、成長に関連するヒト生体試料が含まれる。かかる生体試料は、毛幹、歯、および爪であり得る。本開示の非侵襲性バイオマーカーは、幼児、さらには1歳未満の乳児の診断に使用することができる。
【0007】
一部の実施形態によれば、金属代謝に関連する第1の生物学的状態について対象を評価する方法は、対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより複数のイオン試料を取得することを含む。複数のイオン試料中の各イオン試料は、複数の位置における異なる位置に対応し、複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する生体試料の異なる成長期間を表す。本方法は、複数のイオン試料中の各イオン試料を(例えば、質量分析計または他の分光法を用いて)分析し、それにより複数のトレースを含む第1のデータセットを取得することを含む。複数のトレース内の各トレースは、複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。本方法は、特徴のセットを含む複数のトレースから第2のデータセットを導出することを含む。特徴のセット内のそれぞれの特徴は、複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。本方法は、特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより、対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有する確率を訓練済み分類子から取得することを含む。
【0008】
一部の実施形態では、複数の元素同位体は、表1に列挙される元素同位体から選択される。一部の実施形態では、複数の元素同位体は、表1に列挙される元素同位体のうちの少なくとも22個の元素同位体を含む。
【0009】
一部の実施形態によれば、特徴のセット内の各特徴は、複数のトレースのうちの単一のそれぞれのトレース、または複数のトレースのうちの2つのそれぞれのトレースに関連付けられている。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙される特徴から選択され、任意選択で、特徴のセットは、表3に列挙される1つ以上の特徴をさらに含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙される少なくとも23個の特徴を含む。
【0010】
一部の実施形態では、金属代謝に関連する第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害(ADS)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、過敏性腸疾患(IBD)、小児腎移植拒絶反応、および小児がんからなる群から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、金属代謝に関連する第1の生物学的状態について対象を評価することは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態と、金属代謝に関連する第1の生物学的状態とは異なる金属代謝に関連する第2の生物学的状態と、を区別することをさらに含む。一部の実施形態では、第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害であり、第2の生物学的状態は、注意欠陥/多動性障害である。
【0012】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、または5歳未満である。
【0013】
一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、毛幹、歯、および爪からなる群から選択される。
【0014】
一部の実施形態では、本方法は、対象の毛幹をサンプリングする前に、溶媒で毛幹を前処理すること、および/または低出力レーザで毛幹に照射して毛幹から任意のデブリを除去することをさらに含む。一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、毛幹であり、基準線は、毛幹の長手方向に対応する。一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、歯であり、基準線は、歯のエナメル質表面上の歯の新生児ラインに対応する。
【0015】
一部の実施形態では、本方法は、対象の金属代謝に関連する生体試料を、サンプリングの前に溶媒または界面活性剤で前処理することをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、レーザを用いて、対象の金属代謝に関連する生体試料に低出力レーザを照射して、サンプリングの前に対象の金属代謝に関連する生体試料から任意のデブリを除去することをさらに含む。
【0016】
一部の実施形態では、サンプリングは、レーザを用いて、対象の金属代謝に関連する生体試料をレーザで照射し、それにより、対象の金属代謝に関連する生体試料から複数の粒子を抽出することと、複数の粒子を誘導結合プラズマ質量分析計で電離し、それにより、複数のイオン試料を取得することと、を含む。
【0017】
一部の実施形態では、複数の位置は、対象の金属代謝に関連する生体試料に沿った複数の位置における第1の位置が、対象の金属代謝に関連する生体試料の先端に最も近い位置に対応するように順序付けられる。一部の実施形態では、複数の位置は、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、または500の位置を含む。
【0018】
一部の実施形態では、複数のトレース内の各トレースは、複数のデータ点を含む。各データ点は、複数の位置におけるそれぞれの位置のインスタンスである。
【0019】
一部の実施形態では、第2のデータセットを導出することは、複数のデータ点から、第1の基準を満たさないようなデータ点を削除することを含む。第1の基準は、複数のデータ点内の隣接データ点間の平均絶対差が、隣接点間の平均絶対差の標準偏差の3倍であることを含む。
【0020】
一部の実施形態では、対応する元素同位体の濃度は、対応する元素同位体の対照元素同位体に対する相対存在量に対応し、対照元素同位体は、複数のイオン試料に含まれる。一部の実施形態では、対照元素同位体は硫黄である。
【0021】
一部の実施形態では、特徴のセットは、平均対角線長、決定性、再帰時間、エントロピー、トラッピング時間、およびラミナリティから選択される。
【0022】
一部の実施形態では、訓練済み分類子は、
【数1】
を計算し、式中、p(対象)は、対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有する確率であり、eは、オイラー数であり、αは、β+…+βがゼロに等しいときに、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率に関連付けられた計算されたパラメータであり、x1,…,kは、特徴のセット内の各特徴について導出される値に対応し、特徴のセットは、1~kの特徴を含み、β1,…,kは、1~kの特徴を含む特徴のセット内の各特徴に関連付けられた重みパラメータに対応する。
【0023】
一部の実施形態では、本方法は、p(対象)が所定の閾値を上回っているという判定に従って、対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有するとみなすことをさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、金属代謝に関連する生物学的状態は、複数の金属の代謝の周期的な調節不全に関連し、複数の金属は、複数の元素同位体に対応する。
【0025】
一部の実施形態によれば、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、を含む、金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するためのデバイスである。1つ以上のプログラムは、対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより複数のイオン試料を取得するための命令を含む。複数のイオン試料中の各イオン試料は、複数の位置における異なる位置に対応する。複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する生体試料の異なる成長期間を表す。1つ以上のプログラムは、複数のイオン試料中の各イオン試料を質量分析計で分析し、それにより複数のトレースを含む第1のデータセットを取得するための命令を含む。複数のトレース内の各トレースは、複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。1つ以上のプログラムは、特徴のセットを含む複数のトレースから第2のデータセットを導出するための命令を含み、特徴のセット内のそれぞれの特徴は、複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。1つ以上のプログラムは、特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率を訓練済み分類子から取得するための命令を含む。
【0026】
一部の実施形態によれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、分類のために1つ以上のコンピュータプログラムを埋め込む。1つ以上のコンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムに、金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するための方法を実行させる命令を含む。本方法は、対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより複数のイオン試料を取得することを含む。複数のイオン試料中の各イオン試料は、複数の位置における異なる位置に対応し、複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する生体試料の異なる成長期間を表す。本方法は、質量分析計を用いて複数のイオン試料中の各イオン試料を分析し、それにより複数のトレースを含む第1のデータセットを取得することを含む。複数のトレース内の各トレースは、複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。本方法は、特徴のセットを含む複数のトレースから第2のデータセットを導出することを含む。特徴のセット内のそれぞれの特徴は、複数のトレースにおける単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。本方法は、特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより、対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有する確率を訓練済み分類子から取得することを含む。
【0027】
一部の実施形態によれば、分類方法は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、を有するコンピュータシステムで実行される。分類方法は、複数の訓練対象におけるそれぞれの訓練対象ごとに実行される。複数の訓練対象における訓練対象の第1のサブセットは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有することに対応する第1の診断ステータスを有し、複数の訓練対象における訓練対象の第2のサブセットは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有しないことに対応する第2の診断ステータスを有する。分類方法は、それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより対応する複数のイオン試料を取得することを含む。対応する複数のイオン試料中の各イオン試料は、対応する複数の位置における異なる位置のためのものである。対応する複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する対応する生体試料の異なる成長期間を表す。分類方法は、質量分析計を用いて対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を分析し、それにより対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得することを含む。対応する複数のトレース内の各トレースは、対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。分類方法は、対応する特徴のセットを含む対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することを含む。対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴は、対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。分類方法は、未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)複数の訓練対象のうちの各訓練対象のそれぞれの第2のデータセットの対応する特徴のセットと、(ii)第1の診断ステータスおよび第2の診断ステータスの中から選択された、複数の訓練対象のうちの各訓練対象の対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、訓練済み分類子を取得することを含む。分類子は、試験対象の金属代謝に関連する生体試料から取得された特徴のセットの特徴の値に基づいて、試験対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する。
【0028】
一部の実施形態では、訓練済み分類子は、ニューラルネットワークアルゴリズム、サポートベクターマシンアルゴリズム、決定木アルゴリズム、教師なしクラスタリングモデルアルゴリズム、教師ありクラスタリングモデルアルゴリズム、または回帰モデルである。
【0029】
一部の実施形態では、訓練済み分類子は、多項型または二項型である。一部の実施形態では、複数の元素同位体は、表1に列挙される元素同位体から選択される。
【0030】
一部の実施形態では、特徴のセット内の各特徴は、複数のトレースのうちの単一のそれぞれのトレース、または複数のトレースのうちの2つのそれぞれのトレースに関連付けられている。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙される特徴から選択され、任意選択で、特徴のセットは、表3に列挙される1つ以上の特徴をさらに含む。
【0031】
一部の実施形態では、金属代謝に関連する第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害(ADS)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、過敏性腸疾患(IBD)、小児腎移植拒絶反応、および小児がんからなる群から選択される。
【0032】
一部の実施形態では、金属代謝に関連する第1の生物学的状態について対象を評価することは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態と、金属代謝に関連する第1の生物学的状態とは異なる金属代謝に関連する第2の生物学的状態と、を区別することをさらに含む。一部の実施形態では、第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害であり、第2の生物学的状態は、注意欠陥/多動性障害である。
【0033】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、または5歳未満である。
【0034】
一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、毛幹、歯、および爪からなる群から選択される。
【0035】
一部の実施形態では、本方法は、対象の毛幹をサンプリングする前に、溶媒で毛幹を前処理すること、および/または低出力レーザで毛幹に照射して毛幹から任意のデブリを除去することをさらに含む。一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、毛幹であり、基準線は、毛幹の長手方向に対応する。一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、歯であり、基準線は、歯のエナメル質表面上の歯の新生児ラインに対応する。
【0036】
一部の実施形態では、本方法は、対象の金属代謝に関連する生体試料を、サンプリングの前に溶媒または界面活性剤で前処理することをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、対象の金属代謝に関連する生体試料に低出力レーザを照射して、サンプリングの前に対象の金属代謝に関連する生体試料から任意のデブリを除去することをさらに含む。
【0037】
一部の実施形態では、サンプリングは、レーザを用いて、対象の金属代謝に関連する生体試料をレーザで照射し、それにより、対象の金属代謝に関連する生体試料から複数の粒子を抽出することと、複数の粒子を誘導結合プラズマ質量分析計で電離し、それにより、複数のイオン試料を取得することと、を含む。
【0038】
一部の実施形態では、複数の位置は、対象の金属代謝に関連する生体試料に沿った複数の位置における第1の位置が、対象の金属代謝に関連する生体試料の先端に最も近い位置に対応するように順序付けられる。一部の実施形態では、複数の位置は、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、または500の位置を含む。
【0039】
一部の実施形態では、複数のトレース内の各トレースは、複数のデータ点を含む。各データ点は、複数の位置におけるそれぞれの位置のインスタンスである。
【0040】
一部の実施形態では、第2のデータセットを導出することは、複数のデータ点から、第1の基準を満たさないようなデータ点を削除することを含む。第1の基準は、複数のデータ点内の隣接データ点間の平均絶対差が、隣接点間の平均絶対差の標準偏差の3倍であることを含む。
【0041】
一部の実施形態では、対応する元素同位体の濃度は、対応する元素同位体の対照元素同位体に対する相対存在量に対応し、対照元素同位体は、複数のイオン試料に含まれる。一部の実施形態では、対照元素同位体は硫黄である。
【0042】
一部の実施形態では、特徴のセットは、平均対角線長、決定性、再帰時間、エントロピー、トラッピング時間、およびラミナリティから選択される。
【0043】
一部の実施形態では、訓練済み分類子は、
【数2】
を計算し、式中、p(対象)は、対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有する確率であり、eは、オイラー数であり、αは、β+…+βがゼロに等しいときに、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率に関連付けられた計算されたパラメータであり、x1,…,kは、特徴のセット内の各特徴について導出される値に対応し、特徴のセットは、1~kの特徴を含み、β1,…,kは、1~kの特徴を含む特徴のセット内の各特徴に関連付けられた重みパラメータに対応する。
【0044】
一部の実施形態では、本方法は、p(対象)が所定の閾値を上回っているという判定に従って、対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有するとみなすことをさらに含む。
【0045】
一部の実施形態では、金属代謝に関連する生物学的状態は、複数の金属の代謝の周期的な調節不全に関連し、複数の金属は、複数の元素同位体に対応する。
【0046】
一部の実施形態によれば、分類デバイスは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、を含む。1つ以上のプログラムは、分類方法を実行するための命令を含む。分類方法は、複数の訓練対象におけるそれぞれの訓練対象ごとに実行される。複数の訓練対象における訓練対象の第1のサブセットは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有することに対応する第1の診断ステータスを有し、複数の訓練対象における訓練対象の第2のサブセットは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有しないことに対応する第2の診断ステータスを有する。分類方法は、それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより対応する複数のイオン試料を取得することを含む。対応する複数のイオン試料中の各イオン試料は、対応する複数の位置における異なる位置のためのものである。対応する複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する対応する生体試料の異なる成長期間を表す。分類方法は、質量分析計を用いて対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を分析し、それにより対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得することを含む。対応する複数のトレース内の各トレースは、対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。分類方法は、対応する特徴のセットを含む対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することを含む。対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴は、対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。分類方法は、未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)複数の訓練対象のうちの各訓練対象のそれぞれの第2のデータセットの対応する特徴のセットと、(ii)第1の診断ステータスおよび第2の診断ステータスの中から選択された、複数の訓練対象のうちの各訓練対象の対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、訓練済み分類子を取得することを含む。分類子は、試験対象の金属代謝に関連する生体試料から取得された特徴のセットの特徴の値に基づいて、試験対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する。
【0047】
一部の実施形態によれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、分類のために1つ以上のコンピュータプログラムを埋め込む。1つ以上のコンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムに分類方法を実行させる命令を含む。分類方法は、複数の訓練対象におけるそれぞれの訓練対象ごとに実行される。複数の訓練対象における訓練対象の第1のサブセットは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有することに対応する第1の診断ステータスを有し、複数の訓練対象における訓練対象の第2のサブセットは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有しないことに対応する第2の診断ステータスを有する。分類方法は、それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより対応する複数のイオン試料を取得することを含む。対応する複数のイオン試料中の各イオン試料は、対応する複数の位置における異なる位置のためのものである。対応する複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する対応する生体試料の異なる成長期間を表す。分類方法は、質量分析計を用いて対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を分析し、それにより対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得することを含む。対応する複数のトレース内の各トレースは、対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。分類方法は、対応する特徴のセットを含む対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することを含む。対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴は、対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。分類方法は、未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)複数の訓練対象のうちの各訓練対象のそれぞれの第2のデータセットの対応する特徴のセットと、(ii)第1の診断ステータスおよび第2の診断ステータスの中から選択された、複数の訓練対象のうちの各訓練対象の対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、訓練済み分類子を取得することを含む。分類子は、試験対象の金属代謝に関連する生体試料から取得された特徴のセットの特徴の値に基づいて、試験対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する。
【0048】
本明細書に開示されるように、適用可能な場合、本明細書に開示される任意の実施形態を任意の態様に適用することができる。
【0049】
本開示の追加の態様および利点は、以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。ここで、本開示の例示的な実施形態のみが示され、説明される。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、その複数の詳細は、すべて本開示から逸脱することなく、種々の明白な点で修正が可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A】本開示の一部の実施形態による、例示的なコンピューティングデバイスのブロック図を示す。
図2A】本開示の一部の実施形態による、生物学的状態について対象を評価するための方法のフローチャートを提供する。
図2B】本開示の一部の実施形態による、対象の毛髪、歯、および爪試料の例示的な図を提供する。
図2C】本開示の一部の実施形態による、対象の毛幹をサンプリングするレーザの例示的な概略図を提供する。
図2D】本開示の一部の実施形態による、経時的な元素同位体の濃度を説明するトレースの例示的な図を提供する。
図2E】本開示の一部の実施形態による、トレースに由来する単一の同位体の変動に対応する特徴の例示的な図を提供する。
図2F】本開示の一部の実施形態による、自閉症スペクトラム障害と他の神経発達障害とを区別するための実験データの図を提供する。図2Fにおいて、自閉症スペクトラム障害(ASD標識)症例は、注意欠陥/多動性障害(ADHD標識)症例、併存型ASDおよびADHD診断(CM標識)と診断された対象、ならびに神経発達障害診断を受けていない神経型対象(NT標識)とは対照的である。
図3A-3E】本開示の一部の実施形態による、生物学的状態について対象を評価するためのプロセスおよび機能のフローチャートを集合的に提供し、任意のブロックは、破線ボックスで示される。
図4】本開示の一部の実施形態による、生物学的状態について対象を評価するための分類子を訓練するためのプロセスおよび機能のフローチャートを提供し、任意のブロックは、破線ボックスで示される。
図5A-5D】一部の実施形態による、自閉症スペクトラム障害を評価するための実験的な受信者動作特性(ROC)曲線を示す。
図6】一部の実施形態による、筋萎縮性側索硬化症を評価するための開示の方法の精度を評価するためのROC曲線を示す。
図7】一部の実施形態による、統合失調症を評価するための開示の方法の精度を評価するためのROC曲線を示す。
図8】一部の実施形態による、過敏性腸障害を評価するための開示された方法の精度を評価するためのROC曲線を示す。
図9】一部の実施形態による、腎移植拒絶反応を評価するための開示の方法の精度を評価するためのROC曲線を示す。
図10】一部の実施形態による、小児がんを評価するための開示の方法の精度を評価するためのROC曲線を示す。
【0051】
同様の参照番号は、図面の複数のビュー全体で対応する部分を指す。図面は、縮尺通りに描写されていない。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示は、対象の金属代謝に関連する生体試料から金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するためのシステムおよび方法を提供する。特に、開示される方法は、対象から非侵襲的に取得され得る生体試料バイオマーカーを提供する。本方法は、任意の年齢の対象を評価するために適用することができ、早期治療および介入を可能にするために、小児、さらには1歳未満の乳児の診断に特に有用である。
【0053】
定義。
本開示で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、本発明を制限することを意図していない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示的に別段示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意のおよびすべての可能な組み合わせを指し、包含することも理解されるであろう。本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/もしくは構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/もしくはそのグループの存在もしくは追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「~の場合(if)」は、文脈に応じて、「~の場合(when)」または「~の際(upon)」または「決定に応じて」または「検出に応じて」を意味すると解釈され得る。同様に、語句「それが決定される場合」または「[記載された状態もしくは事象]が検出される場合」は、文脈に応じて、「決定したとき」または「決定に応じて」または「[記載された状態もしくは事象]を検出したとき」または「[記載された状態もしくは事象]に応じて」を意味すると解釈され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、金属代謝に関連する生物学的状態(金属代謝障害とも称される)は、本明細書において、特定の金属の代謝の周期的な調節不全に関連するか、またはそれにより引き起こされる生物学的状態を指す。周期的な調節不全は、1つ以上の金属の取り込みの周期的な減少(例えば、欠乏)、1つ以上の金属の取り込みの周期的な増加、または1つ以上の金属の取り込みの周期的な減少と周期的な増加の組み合わせとして現れ得る。金属代謝に関連する生物学的状態の非限定的な例としては、自閉症スペクトラム障害(ADS)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、腎移植拒絶反応、一部の種類のがん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、代謝障害(肥満および過敏性腸疾患(IBD))、ならびに/または金属代謝に関連する任意の状態または障害が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用する場合、金属代謝に関連する生体試料は、本明細書において、特定の金属の堆積物を含み、成長(例えば、毛髪、爪、および歯)に関連するヒト生体試料を指す。本開示の金属代謝に関連する生体試料は、ある金属の堆積物の存在量が時間に関して検出可能であるように、基準線に沿って成長を発現するという要件を有する。金属代謝に関連するこれらの生体試料は、それにより、特定の金属の存在量の周期的な変動の検出を容易にする。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生体試料は、基準線が毛幹の長手方向に沿った線に対応する毛幹を含む。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生体試料は、基準線が歯のエナメル質表面上の歯の新生児線に対応する歯を含む。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生体試料は、基準線が爪の成長方向の線に対応する爪を含む。例えば、基準線は、爪の根元から爪の先端に向かって延在する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「訓練済み分類子」という用語は、特定のパラメータ(重み)および閾値を有するモデル(例えば、ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク、回帰、サポートベクターマシン、クラスタリングアルゴリズム、決定木などの機械学習アルゴリズム)を指し、以前に見ていない試料に適用する準備が整っていることを指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「未訓練分類子または部分的訓練済み分類子」という用語は、少なくとも一部の固定されていないパラメータ(重み)および閾値を有するモデル(例えば、ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク、回帰、サポートベクターマシン、クラスタリングアルゴリズム、決定木などの機械学習アルゴリズム)を指し、パラメータおよび閾値を最適化および固定するために、訓練セットで訓練される準備が整っていることを指す。
【0059】
第1、第2などの用語は、種々の要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことも理解されよう。これらの用語は、ある要素と別の要素を区別するためにのみ使用される。例えば、第1の対象は、本開示の範囲から逸脱することなく、第2の対象と称され得、同様に、第2の対象は、第1の対象と称され得る。第1の対象と第2の対象はともに対象であるが、同じ対象ではない。さらに、「対象」、「使用者」、および「患者」という用語は、本明細書では同義に使用される。
【0060】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ヒト(例えば、男性ヒト、女性ヒト、胎児、妊婦、子供など)を指す。一部の実施形態では、対象は、任意の段階の男性または女性(例えば、男性、女性、または子供)である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「自閉症スペクトラム障害」という用語は、社会的相互作用の障害、発達言語およびコミュニケーションスキル、ならびに反復行動に関連する一連の神経発達状態を指す。例えば、疾病予防管理センター(CDC)による自閉症スペクトラム障害の診断のための標準化された基準は、1)社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用における持続的な欠損、ならびに2)行動、関心、または活動の制限された、反復的なパターンを含む。自閉症スペクトラム障害には、例えば、自閉症性障害(別名「古典的自閉症」)、アスペルガー症候群、および全身性発達障害(別名「非定型」自閉症)が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「再帰定量分析」(「RQA」)という用語は、動的システムにおける再帰の数および期間を定量化する非線形データ分析を指す。RQAは、位相空間における動的システムの挙動を特徴付けるために使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「再帰プロット」という用語は、実験データにおける時間依存性周期的構造のグラフィカルな可視化を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「トレース」という用語は、元素同位体の時間依存的存在量(または濃度)を指す。トレースは、複数のデータ点を含み、各データ点は、時間尺度および存在量尺度に関連付けられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「特徴」という用語は、例えば、RQAを使用することによって、元素同位体の時間依存的存在量トレース、または元素同位体の2つ以上の時間依存的存在量トレースの組み合わせから抽出される動的周期的特徴を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「平均対角線長」(「MDL」)という用語は、RQAに由来する重要な尺度を指し、二次元再帰プロットに存在する対角線の平均長さの直接的な測定値を反映する。この尺度は、所与の信号における周期的な成分の持続時間の絶対的な指標とみなすことができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、平均対角線長に関連する「決定性」という用語は、再帰分析における周期的成分と非周期的成分との相対比率を指す。決定性は、所与の信号の全体的な周期的な内容を示す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「再帰時間」(「RT2」)という用語は、対角線要素間の平均時間間隔、すなわち周期性間の間隔を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「エントロピー」という用語は、平均対角長の分布における変動性を指し、低エントロピー信号は周期成分の分布においてほとんど複雑性を示さず、高エントロピー信号は短期間および長期間の周期において多様性を示す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「トラッピング時間」(「TT」)という用語は、平均対角長が周期的プロセスの持続時間をどのように捕捉するかに類似して、安定した状態を示す、2次元再帰プロットにおける層状(垂直または水平)構造の平均長さを指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ラミナリティ」という用語は、信号安定性の全体的な尺度を指す。ラミナリティは、再帰点の総頻度に対する層状構造に属する再帰点の比率を定量化する。
【0072】
本明細書で使用される用語は、単に特定のケースを記載する目的のためであり、制限することが意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示的に別段示さない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはその変動が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、かかる用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることを意図している。
【0073】
複数の態様が、例示のための例示的な用途を参照して以下で説明される。本明細書に記載される特徴の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細、関係、および方法が記載されることを理解されたい。しかしながら、当業者は、本明細書に記載される特徴が、1つ以上の特定の詳細なしに、または他の方法を用いて実施され得ることを容易に認識するであろう。一部の行為は、異なる順序で、および/または他の行為もしくは事象と同時に生じ得るため、本明細書に記載される特徴は、例示される行為もしくは事象の順序によって限定されない。さらに、例示されるすべての行為または事象が、本明細書に記載される特徴に従って方法論を実装するために必要とされるわけではない。
【0074】
ここで、実施形態を詳細に参照し、その例は添付の図において図示される。以下の詳細な説明において、本開示の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、本開示がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の事例では、周知の方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0075】
例示的なシステムの実施形態。
ここで、本開示の一部の態様の概要が提供され、例示的なシステムの詳細が、図1と併せて説明される。図1Aは、本開示の一部の実施形態による、例示的なコンピューティングデバイス100のブロック図を示している。一部の実装形態では、デバイス100は、1つ以上のプロセッシングユニットCPU102(プロセッサとも称される)、1つ以上のネットワークインターフェース104、ユーザインターフェース106、非永続メモリ111、永続メモリ112、およびこれらの構成要素を相互接続するための1つ以上の通信バス114を含む。1つ以上の通信バス114は、任意選択で、システム構成要素間の通信を相互接続し、制御する回路(チップセットと称されることもある)を含む。非永続メモリ111は、典型的には、DRAM、SRAM、DDR RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリなどの高速ランダムアクセスメモリを含み、一方、永続メモリ112は、典型的には、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、磁気ディスク記憶装置、光学ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置、もしくは他の不揮発性固体記憶装置を含む。永続メモリ112は、任意選択的に、CPU102から離れて位置する1つ以上の記憶装置を含む。永続メモリ112、および非永続メモリ112内の不揮発性メモリデバイスは、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。一部の実装形態では、非永続メモリ111または代替的に、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、以下のプログラム、モジュール、およびデータ構造、またはそれらのサブセットを、場合によっては永続メモリ112と組み合わせて記憶する。
●種々の基本システムサービスを処理するための手順およびハードウェア依存タスクを実行するための手順を含む、任意のオペレーティングシステム116
●システム100を他のデバイスおよび/または通信ネットワーク104と接続するための任意のネットワーク通信モジュール(または命令)118
●金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するための分類子を訓練するための任意の分類子訓練モジュール120
●1つ以上の訓練対象124の特徴データを含む、訓練対象122からの生体試料のデータセットのための任意選択のデータストアであって、特徴データは、特徴126の各々に関連するパラメータ、および診断ステータス128(例えば、それぞれの訓練対象が、金属代謝に関連する生物学的状態と診断されているか、または金属代謝に関連する生物学的状態と診断されていない指標)を含む、任意選択のデータストア
●金属代謝に関連する生物学的状態を区別する分類子を検証するための任意の分類子検証モジュール130
●検証対象132からの生体試料のデータセットのための任意のデータストア
●例えば、分類子訓練モジュール120を使用して訓練されるように、金属代謝に関連する生物学的状態を有する対象を分類するための任意の患者分類モジュール134
【0076】
種々の実装形態では、上記で識別された要素のうちの1つ以上は、前述のメモリデバイスのうちの1つ以上に記憶され、上記に記載された機能を実行するための命令のセットに対応する。上記で識別されたモジュール、データ、またはプログラム(例えば、命令セット)は、別個のソフトウェアプログラム、手順、データセット、またはモジュールとして実装される必要はなく、したがって、これらのモジュールおよびデータの種々のサブセットは、種々の実装形態で組み合わされてもよく、または別様で再配置されてもよい。一部の実装形態では、非永続メモリ111は、任意選択で、上記で識別されたモジュールおよびデータ構造のサブセットを記憶する。さらに、一部の実施形態では、メモリは、上記に説明されていない追加のモジュールおよびデータ構造を記憶する。一部の実施形態では、上記識別された要素の1つ以上は、可視化システム100のもの以外のコンピュータシステムに記憶され、可視化システム100によってアドレス指定可能である。その結果、可視化システム100は、必要なときにかかるデータの全部または一部を取り出すことができる。
【0077】
一部の実施形態では、システム100は、化学分析を実行するための1つ以上の分析デバイスに接続されているか、またはそれを含む。例えば、任意選択のネットワーク通信モジュール(または命令)118は、例えば、通信ネットワーク104を介して、システム100を1つ以上の分析デバイスと接続するように構成される。一部の実施形態では、1つ以上の分析デバイスは、レーザ焼灼誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を含む。
【0078】
図1は、「システム100」を示しているが、図は、本明細書に記載される実装形態の構造的概略図としてではなく、コンピュータシステムに存在し得る種々の特徴の機能的説明として意図されたものである。実際には、当業者によって認識されるように、別々に示される項目を組み合わせることができ、一部の項目を分離することができる。さらに、図1は、非永続メモリ111内の特定のデータおよびモジュールを描写しているが、これらのデータおよびモジュールの一部またはすべては、永続メモリ112内にあってもよい。
【0079】
分類方法。
本開示によるシステムは、図1を参照して開示されているが、本開示による生体試料からの金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するための方法200の詳細なプロセスおよび機能は、図2A図2Fと併せて提供される。
【0080】
上記で定義したように、金属代謝に関連する生体試料(本明細書では「生体試料」とも称される)は、特定の金属の堆積物と関連付けられ、成長(例えば、毛髪、爪、および歯)に関連付けられたヒト生体試料を含む。本開示の金属代謝に関連する生体試料は、ある金属の堆積物の存在量が時間に関して検出可能であるように、基準線に沿って成長を発現するという要件を有する。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生体試料は、基準線が毛幹の長手方向に沿った線に対応する毛幹を含む。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生体試料は、基準線が歯のエナメル質表面上の歯の新生児線に対応する歯を含む。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生体試料は、基準線が爪の成長方向の線に対応する爪を含む。例えば、基準線は、爪の根元から爪の先端に向かって延在する。
【0081】
一部の実施形態では、方法200は、生体試料(例えば、毛幹を含む毛髪の鎖)を取得すること(202)を含む。対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、5歳以下の子供である(例えば、子供は、5歳以下、4歳、3歳、2歳、1歳、9ヶ月、6ヶ月、3ヶ月、または1ヶ月である)。一部の実施形態では、対象は成人である。図2BのセクションIは、本開示の一部の実施形態による、毛幹を含む対象の毛髪試料の例示的な画像を提供している。毛髪試料は、(例えば、ハサミの助けを借りて)対象から単純に切断してもよい。したがって、毛髪試料を取得する方法は、非侵襲的である。取得した毛髪試料は、1cmの最小長さを有する(例えば、毛髪試料は、1cm、2cm、3cm、4cm、または5cmの長さである)。毛髪試料は、毛髪の任意の部分(例えば、先端または先端と毛包との間の部分)を含み得る。特に、毛髪試料が毛包を含むことに特別な要件はない。図2BのセクションIIは、本開示の一部の実施形態による、対象の歯試料の例示的な画像を提供している。図2BのセクションIIIは、本開示の一部の実施形態による、対象の爪試料の例示的な画像を提供している。歯または毛髪の例では、生体試料を取得することは、歯または爪がサンプリングされ得るように、対象を位置決めすることを指す。
【0082】
一部の実施形態では、取得された生体試料は、1つ以上の溶媒および/もしくは界面活性剤で生体試料を洗浄し、乾燥させることによって前処理される(204)。生体試料が毛髪である例では、毛髪試料を、TRITON X-100(登録商標)および超純粋金属フリー水(例えば、MILLI-Q(登録商標)水)で洗浄し、オーブン内で一晩乾燥させる(例えば、60℃)。前処理は、接着フィルム(例えば、両面テープ)を有するスライドガラス(例えば、顕微鏡スライドガラス)上に毛幹を配置することによって、測定のために毛幹を準備することをさらに含む。毛幹は、毛幹が実質的にまっすぐであるように位置決めされる。次いで、毛幹を備えたスライドガラスを、分析を実行するためにレーザ焼灼誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)に入れる(206)。生体試料が歯または爪である場合、生体試料の表面は(例えば、界面活性剤、水、または1つ以上の溶媒によって)洗浄される。対象は、分析を行うためのLA-ICP-MSの近くに位置決めされる。
【0083】
一部の実施形態では、LA-ICP-MS分析は、生体試料を予め除去して、生体試料から表面のデブリおよび/または不純物を除去することを含む。プレアブレーションは、生体試料の表面上でのみ粒子を放出するが、生体試料の表面下から粒子を放出しないように、非常に低いレーザエネルギーを使用して実施される。例えば、プレアブレーションは、193nmのレーザ波長および0.4J/cm未満のレーザエネルギー(例えば、レーザエネルギーは、0.4J/cm、0.3J/cm、0.2J/cm、または0.1J/cm)を使用して実行される。一部の実施形態では、レーザエネルギーは、0.2J/cm~0.4J/cmの範囲である。
【0084】
プレアブレーション後、方法200は、生体試料をレーザでサンプリングして、生体試料の基準線に沿ったそれぞれの位置からイオン試料を取得すること(208)を含む。上述したように、毛幹の例では、基準線は、毛幹の長手方向に沿った線に対応する。例えば、図2BのセクションAは、毛幹の長手方向に沿った基準線201を有する毛幹を示している。歯の例では、基準線は、歯のエナメル質表面上の歯の新生児線に対応する。例えば、図2BのセクションIIは、エナメル226および一次象牙質224の部分を含む歯220を示している。基準線222は、歯220の新生児線に対応する。本明細書における新生児線とは、歯のエナメル質部分上の増殖線の特定のバンドを指す。爪の例では、基準線は、爪の成長方向の線に対応する。例えば、図2BのセクションIIは、爪の根元から爪の先端に向かって延在する基準線232を有する爪230を示している。サンプリングは、生体試料にレーザビームを照射すること(例えば、毛幹をアブレーションするレーザ)、および誘導結合プラズマ質量分析計で複数の粒子をイオン化することを含む。例えば、図2BのセクションIの領域200Aおよび200Bは、レーザアブレーション中にレーザで照射される毛幹に沿った例示的な位置に対応する。質量分析計は、それぞれの位置から取得されたイオン試料を分析する(210)。図2Cは、本開示の一部の実施形態による、対象の毛幹をサンプリングするレーザの例示的な概略図を提供する。図2Cのレーザ202は、毛幹上の領域200Cに照射し、それにより粒子204を放出する。粒子204は、誘導結合プラズマ(ICP)によってイオン化され、質量分析計(MS)によってさらに分析される。
【0085】
一部の実施形態では、レーザ照射は、波長193nm、および0.6~1.5J/cmの範囲のレーザエネルギー(例えば、レーザエネルギーは、0.6J/cm、0.7J/cm、0.8J/cm、0.9J/cm、1.0J/cm、1.1J/cm、1.2J/cm、1.3J/cm、1.4J/cm、または1.5J/cmである)を有するレーザを使用して行われる。一部の実施形態では、レーザエネルギーは、0.9~1.3J/cmの範囲である。一部の実施形態では、レーザは、25マイクロメートル~35マイクロメートル(例えば、25、27.5、30、32.5、または35マイクロメートル)の範囲のビーム直径を有する。一部の実施形態では、レーザは、30マイクロメートルのビーム直径を有する。毛幹をサンプリングする例では、レーザビームのサイズ、波長および/またはレーザエネルギーは、レーザサンプリングが毛幹の大部分をアブレーションするように調整され、毛幹を保持する接着フィルムおよび/またはスライドガラスから粒子を放出することはない。
【0086】
レーザ照射が繰り返され、元素同位体データが、生体試料に沿った複数の位置(例えば、図2BのセクションIの毛幹の領域200Aおよび200B)で順次収集される。一部の実施形態では、生体試料の基準線に沿った複数の位置は、少なくとも100の位置(例えば、100、150、200、250、300、350、400、450、または500の位置)を含む。一部の実施形態では、それぞれの位置(例えば、図2BのセクションIの領域200Aおよび200B)は、互いに隣接している。本方法によって、生体試料上の異なる位置に対応する各領域(例えば、領域200Aおよび200B)は、それにより、存在量の元素同位体(例えば、図2Cに示される金属同位体Zn、Fe、Pb、およびMn)に関連付けられる。一部の実施形態では、それぞれの位置は、所定の距離によって分離される。一部の実施形態では、サンプリングは、毛髪の先端に最も近いそれぞれの位置(例えば、対象の最も若い年齢に対応する位置)から開始して、生体試料の基準線に沿って実行される。概して、サンプリングは、サンプリングの方向が既知であり、適切な訓練済み分類子が分析に使用される限り、先端または根本に最も近いそれぞれの位置から開始して実行することができる。
【0087】
レーザサンプリングは、それによりデータ点のセットを生成する。データ点の各セットは、生体試料に沿った複数の位置で測定されたそれぞれの元素同位体の存在量(例えば、濃度)に対応する。生体試料の基準線上の各位置は、生体試料の特定の成長時間に対応する。一部の実施形態では、毛幹の例では、各位置は、毛髪成長の約130分の期間(例えば、30マイクロメートルのレーザビームサイズおよび1ヶ月当たりの毛髪成長の平均速度1cmを使用して計算された毛髪成長の期間)に対応する。生体試料の基準線に沿った複数の位置を、成長の対応する期間に相関させることによって、複数のトレースを含む第1のデータセットを取得する。各トレースは、生体試料から測定されたそれぞれの元素同位体の時間依存的存在量を含む。
【0088】
図2Dは、本開示の一部の実施形態による、トレース208の例示的な図を提供する。図2Dの各データ点は、生体試料に沿った複数の位置(すなわち、底部x軸上のレーザ距離)で測定される特定の元素同位体の存在量(すなわち、y軸上のカウント比)に対応する。生体試料に沿ってレーザによって移動される距離は、上部x軸に示されるように、生体試料の推定成長(すなわち、生物学的時間)に対応する。例えば、図2Dは、1.2cm(12,000マイクロメートル)の距離に沿った毛髪について測定された特定の元素同位体の存在量を示している。かかる距離は、およそ35日間の生物学的時間に対応する。生物学的時間は、毛髪成長の平均速度(例えば、1ヶ月当たり1cm)を使用して推定される。
【0089】
一部の実施形態では、複数の元素同位体は、表1に列挙される元素同位体から選択される。一部の実施形態では、複数の元素同位体は、表1に含まれる同位体の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【表1】
【0090】
一部の実施形態では、方法200は、取得された複数のトレースを含む第1のデータセットを分析すること(212)を含み、各トレースは、それぞれの元素同位体の時間依存的存在量(例えば、時間依存的濃度)に対応する。一部の実施形態では、データを分析することは、データをクリーニングするためにカスタマイズされた操作を実行すること(214)を含む。一部の実施形態では、データをクリーニングすることは、ある期間にわたってデータを平滑化すること、および/または所定の閾値よりも高いもしくは低いデータ点を削除することを含む。一部の実施形態では、データ分析は、トレースから、隣接するデータ点間の平均絶対差が、隣接点間の平均絶対差の標準偏差の3倍であるデータ点を削除することを含む。図2Dは、所定の閾値よりも高いデータ点を削除する動作を示している。ピーク210は、隣接するデータ点間の平均絶対差が、隣接点間の平均絶対差の標準偏差の3倍以上であるデータ点に対応する。したがって、ピーク210は、トレース208から除去される。
【0091】
一部の実施形態では、データセットを分析することは、内部標準に対して各トレースを正規化することをさらに含む。一部の実施形態では、試料が毛幹である例では、内部標準は、毛髪中の元素同位体の中で最も多く存在する硫黄であり、したがって、毛髪密度および/または硬度の尺度として使用することができる。しかし、実際には、環境曝露(例えば、食事)とともに変動しない生体試料の発生/成長中に均等に組み込まれる試料中で検出される任意の元素は、本開示の表に開示される元素のいずれかを含む内部標準として機能し得る。例えば、試料が歯である場合、ビスマス-209は内部標準で用いることができる。
【0092】
方法200は、元素同位体の時間依存的トレースを含む第1のデータセットを分析して、トレースの動的周期的特性を記述する特徴のセットを取得するために、再帰定量化分析(RQA)を行うことを含む。RQAは、元素同位体の時間依存的トレースの変動を測定する。RQAは、決定性、平均対角線長、およびエントロピーを含む、所与の波形における周期的性質を記述する特徴の推定を伴う。RQAの方法および特徴は、例えば、Webberらの“Simpler Methods Do It Better:Success of Recurrence Quantification Analysis as a General Purpose Data Analysis Tool,”Physics Letters A 373,3753-3756(2009) 、およびMarwanらの“Recurrence Plots for the Analysis of Complex Systems,”Physics Reports 438,237-239(2007)に説明されており、それらの各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、元素同位体の時間依存的トレースは、フーリエ変換、ウェーブレット分析、およびコシナー分析などの当該技術分野で既知の他の分析方法を使用して分析される。かかる方法は、周波数成分およびそれらに関連する電力のスペクトル分析を含む類似のメトリックを導出するために適用され得る。これらのメトリックおよび関連する派生的メトリックは、予測分類の目的のために、生体試料から取得された元素同位体の時間依存的トレースを分析するために、RQAから導出された特徴の代わりに使用されてもよい。
【0093】
RQAは、それぞれの取得されたトレースにおける動的時間構造を可視化し、分析する再帰プロットの構築(216)を含む。図2Eは、本開示の一部の実施形態による、それぞれのトレースに由来する単一の同位体の存在量の変動の例示的な図を提供する。図2EのセクションIは、対象の毛幹から測定した、銅(Cu)の時間依存的存在量(または濃度)に対応するトレースを示している。y軸は、銅の測定された存在量を示し、x軸は、時間の長手方向の増分を反映する、毛幹に沿った連続した測定を示している。図2EのセクションIIは、セクションIのトレースから導出された位相ポートレートである。毛幹から測定された一次元トレースから、追加の次元が、位相ポートレートと称されるより高い次元空間にトレースを埋め込むように計算的に導出されている。ここで、tは元のトレースの値を指し、次元(t+τ)および(t+2τ)は、元の時系列を区間τごとに遅らせることから導出される。次いで、埋め込まれた位相ポートレートについて、その後の分析を行い、再帰プロットおよび再帰定量分析を構築する。セクションIIIは、セクションIIに示す位相ポートレートに由来する銅同位体の再帰定量プロットを示している。RQA法は、所与のシステム内の状態間の遅延の間隔を調べるものであり、黒点は、システムが同じ状態を再検討したときの時間間隔を反映している。システムが所与のパターンの状態を連続的に繰り返す周期的なプロセスは、再帰プロットでは対角線の黒線として現れ、安定期間は正方形の構造として現れ、偽の繰り返しは黒点として現れ、固有のイベントは白い空間として現れる。
【0094】
一部の実施形態では、再帰プロットは、(例えば、表1から選択される元素同位体について)単一の元素同位体のトレース、または2つの元素同位体の組み合わせについて構築される。例えば、図2Eは、銅同位体の再帰プロットを示している。あるいは、2つの元素同位体の相互作用する周期的パターンを可視化するために、再帰プロットが構築される。一部の実施形態では、再帰プロットは、3つ以上の元素同位体の組み合わせのために構築される。
【0095】
方法200は、さらに、再帰プロットを分析して、再帰プロットに関連付けられた特徴のセットを取得すること(218)を含む。交換可能に「調律性特徴」または「動的特徴」と称され得るこれらの特徴は、複数のトレースに存在する周期性を記述する定量的尺度を提供する。特徴は、平均対角線長(MDL)、決定性(または予測可能性)、再帰時間(RT)、エントロピー、トラッピング時間(TT)、およびラミナリティから選択される。これらの特徴タイプの各々の定義は、上記の定義セクションに記載されている。
【0096】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表2に列挙される特徴から選択される。
【0097】
一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙されるすべての特徴を含む。
【0098】
一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。一部の実施形態では、このようにして表2から引き出された特徴は、本開示による、第1の生物学的状態(例えば、自閉症スペクトラム障害など)について対象を評価するための「コア」特徴であるとみなされる。一部の実施形態では、特徴のセットは、(コア特徴に加えて)表3に列挙されている1つ以上の特徴をさらに含む。
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0099】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、3つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表2に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表3に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表3に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0100】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表2および3に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2および3に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2および3に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0101】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表4に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表4に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表4に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0102】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表5に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表5に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表5に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0103】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表6に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表6に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表6に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0104】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表7に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表7に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表7に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0105】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表8に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表8に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表8に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0106】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表9に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表9に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表9に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0107】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表10に列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表10に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表10に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0108】
一部の実施形態では、各特徴がそれぞれの元素同位体または元素同位体の組み合わせ(例えば、2つの元素同位体の組み合わせ、または2つを超える元素同位体の組み合わせ)と関連付けられている特徴のセットは、表2、3、4、5、6、7、8、9、および10の任意の組み合わせに列挙される特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2、3、4、5、6、7、8、9、および10に列挙されるすべての特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2、3、4、5、6、7、8、9、および10に列挙される特徴の少なくとも5%、10%、15%、20%、または25%を含む。
【0109】
方法200は、さらに、取得された特徴のセットを訓練済み分類子に入力すること(220)を含む。一部の実施形態では、訓練済み分類子は、金属代謝に関連する生物学的状態を有する対象の確率を取得する(222)ための予測計算アルゴリズムを含む。一部の実施形態では、予測計算アルゴリズムは、式1を計算する。
【数3】
式中、
p(対象)は、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率であり、
eはオイラー数であり、
αは、β+…+βがゼロに等しいときに、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率に関連付けられた計算されたパラメータであり、
β1,…,kは、1~k、kの特徴を含む特徴のセット内の各特徴に関連付けられた重みパラメータに対応し、
1,…,kは、特徴のセット内の各特徴について導出される値に対応し、特徴のセットは、1~kの特徴を含む。
【0110】
1~kの特徴は、表2に列記される特徴であり、任意選択で、表3から選択される。重みパラメータβ1,…,kは、分類子の訓練に基づいて定義される。確率p(対象)は、0~1の範囲の数値として提供され、1は、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する100%の確率に対応する。
【0111】
一部の実施形態では、方法200はまた、取得された確率p(対象)に所定の閾値を適用すること(224)を含む。取得された確率p(対象)が所定の閾値を超える場合、対象は金属代謝に関連する生物学的状態を有すると評価される。取得された確率が所定の閾値未満である場合、対象は金属代謝に関連する生物学的状態を有しないと評価される。一部の実施形態では、所定の閾値は、0.3~0.6である(例えば、所定の閾値は、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、または0.6である)。一部の実施形態では、所定の閾値は、0.45である。一部の実施形態では、取得された確率は、関連するオッズ(例えば、OR=p/(1-p)となるような確率から導出され得るオッズ比(OR))の観点で表される。例えば、評価は、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有するオッズを評価することを含む。
【0112】
一部の実施形態では、方法200は、代替の状態、例えば、金属代謝に関連する第2の生物学的状態から金属代謝に関連する第1の生物学的状態を区別することをさらに含む。一部の実施形態では、代替の状態は、既知の状態(例えば、神経型状態(NT))がないことに関連付けられる。一部の実施形態では、金属代謝に関連する第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連し、代替的状態は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)に関連する。一部の実施形態では、代替の状態は、任意の他の神経発達状態、または2つの神経発達状態の併存診断である。図2Fは、本開示の一部の実施形態による、自閉症スペクトラム障害(ASD)と他の神経発達障害との間の区別を説明する実験データの図を提供する。なお、図2Fに示される実験データに基づいて、本開示の方法200は、自閉症スペクトラム障害とADHDを区別することができる。示されるように、本開示はまた、自閉症スペクトラム障害を、自閉症スペクトラム障害およびADHDの両方について診断される併存疾患(CM)症例と区別することができる。
【0113】
ここで、生体試料からの金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するための方法200のプロセスおよび機能の詳細が図2を参照して開示され、図3A図3Eは、本開示の一部の実施形態による、金属代謝に関連する生体試料について対象を評価するための方法3000の基本的なプロセスおよび機能のフローチャートを集合的に提供し、任意のブロックは、破線ボックスで示されている。一部の実施形態では、方法3000は、方法200に対応する。
【0114】
図3Aのブロック3100。方法3000は、例えば、レーザ(例えば、LA-ICP-MS)を用いて、対象の金属代謝に関連する生体試料上の基準線に沿った複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより、複数のイオン試料(例えば、図2BのセクションIの毛幹の領域200Aおよび200B)を取得することを含む。複数のイオン試料中の各イオン試料は、複数の位置における異なる位置に対応し、複数の位置における各位置は、金属代謝に関連する生体試料の異なる成長期間を表す。
【0115】
図3Aのブロック3200。方法3000は、質量分析計を用いて複数のイオン試料中の各イオン試料を分析し、それにより第1のデータセットを取得することを含む。第1のデータセットは、複数のトレース(例えば、図2Dのトレース208)を含む。複数のトレース内の各トレースは、複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。
【0116】
図3Aのブロック3300。方法3000は、特徴のセット(例えば、表2に列挙される特徴から選択される特徴のセット)を含む複数のトレースから第2のデータセットを導出することを含む。特徴のセット内のそれぞれの特徴は、複数のトレースにおける単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。例えば、図2EのセクションIIIは、図2EのセクションIIのトレースに由来する銅同位体の再帰プロットを示している。銅同位体存在量の変動は、再帰プロットにおいて対角線パターンとして観察される。
【0117】
図3Aのブロック3400。一部の実施形態では、方法3000はまた、特徴のセットを訓練済み分類子に入力し、それにより対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有する確率を訓練済み分類子から取得することを含む。一部の実施形態では、訓練済み分類子は、ニューラルネットワークアルゴリズム、サポートベクターマシンアルゴリズム、決定木アルゴリズム、教師なしクラスタリングモデルアルゴリズム、教師ありクラスタリングモデルアルゴリズム、または回帰モデルである。
【0118】
図3Bのブロック3110。一部の実施形態では、サンプリングは、レーザを用いて、対象の金属代謝に関連する生体試料をレーザで照射し、それにより、対象の金属代謝に関連する生体試料から複数の粒子を抽出することと、複数の粒子を誘導結合プラズマ質量分析計で電離し、それにより、複数のイオン試料を取得することと、を含む(例えば、図2C)。
【0119】
図3Bのブロック3120。一部の実施形態では、毛幹に沿った複数の位置(例えば、図2BのセクションIにおける毛幹の領域200Aおよび200B)は、対象の金属代謝に関連する生体試料に沿った複数の位置における第1の位置が、対象の金属代謝に関連する生体試料の先端に最も近い位置に対応するように順序付けられる。
【0120】
図3Bのブロック3130。方法3000は、対象の毛幹をサンプリングする前に、対象の金属代謝と溶媒または界面活性剤と関連付けられる生体試料も含む。例えば、毛幹は、TRITON X-100(登録商標)および超高純度金属フリー水(例えば、MILLI-Q(登録商標)水)で洗浄され、オーブン内で一晩乾燥される(例えば、60℃)。
【0121】
図3Bのブロック3140。方法3000はまた、対象の毛幹をサンプリングする前に、対象の金属代謝に関連する生体試料に低出力レーザを照射して、対象の金属代謝に関連する生体試料から任意のデブリを除去すること(例えば、毛幹、歯、または爪を事前に除去すること)を含む。例えば、プレアブレーションは、193nmのレーザ波長および0.4J/cm未満のレーザエネルギー(例えば、レーザエネルギーは、0.4J/cm、0.3J/cm、0.2J/cm、または0.1J/cm)を使用して実行される。一部の実施形態では、レーザエネルギーは、0.2J/cm~0.4J/cmの範囲である。
【0122】
図3Bのブロック3141。対象の金属代謝に関連する生体試料は、毛幹、歯、および爪(例えば、それぞれ、図2BのセクションI、II、およびIIIに例示される毛幹、歯、および爪)からなる群から選択される。
【0123】
図3Bのブロック3141-1。対象の金属代謝に関連する生体試料は、毛幹であり、基準線は、毛幹の長手方向(例えば、図2BのセクションIの基準線201)に対応する。
【0124】
図3Bのブロック3141-1。対象の金属代謝に関連する生体試料は、歯であり、基準線は、歯のエナメル質表面上の歯の新生児線(例えば、図2BのセクションIIの歯220の新生児線に沿った基準線222)に対応する。一部の実施形態では、対象の金属代謝に関連する生体試料は、爪であり、基準線は、爪の根本から爪の先端まで延在する線(例えば、図2BのセクションIIIにおける爪230の基準線232)に対応する。
【0125】
図3Cのブロック3210。複数の元素同位体は、表1に列挙される元素同位体から選択される。一部の実施形態では、複数の元素同位体は、表1に含まれる同位体の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。
【0126】
図3Cのブロック3220。複数のトレース内の各トレースは、複数のデータ点を含む。各データ点は、複数の位置におけるそれぞれの位置のインスタンスである。一部の実施形態では、各トレースは、少なくとも100の位置(例えば、100、150、200、250、300、350、400、450、または500の位置)を含む。一部の実施形態では、各データ点は、毛髪成長の約130分の期間(例えば、毛髪成長の期間は、30マイクロメートルのレーザビームサイズおよび1ヶ月当たりの毛髪成長の平均速度1cmを使用して計算される)に対応する。
【0127】
図3Cのブロック3230。対応する元素同位体の濃度は、対照元素同位体に対する対応する元素同位体の相対的存在量に対応する。対照元素同位体は、複数のイオン試料に含まれる。一部の実施形態では、対照元素同位体は硫黄である。
【0128】
図3Dのブロック3310。特徴のセットは、表2に列挙されている特徴から選択される。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙される特徴を含む。一部の実施形態では、特徴のセットは、表2に列挙される特徴の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を含む。特徴のセット内の各特徴は、複数のトレースのうちの単一のそれぞれのトレース、または複数のトレースのうちの2つのそれぞれのトレースに関連付けられる。
【0129】
図3Dのブロック3320。特徴のセットは、表2に列記される特徴から選択される特徴に加えて、表3に列記される1つ以上の特徴をさらに含む。
【0130】
図3Dのブロック3330。第2のデータセットの導出は、第1の基準を満たさないようなデータ点を複数のデータ点から削除することを含む。一部の実施形態では、第1の基準は、複数のデータ点内の隣接データ点間の平均絶対差が、隣接点間の平均絶対差の標準偏差の3倍であることを含む(例えば、ピーク210は、図2Dのトレース208から除去される)。
【0131】
図3Dのブロック3340。特徴のセットは、平均対角線長、決定性、再帰時間、エントロピー、トラッピング時間、およびラミナリティから選択される。
【0132】
図3Eのブロック3410。一部の実施形態では、訓練済み分類子は、
【数4】
式中、p(対象)は、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率であり、eは、オイラー数であり、αは、β+…+βがゼロに等しいときに、対象が金属代謝に関連する生物学的状態を有する確率に関連する計算パラメータであり、β1,…,kは、1~kの特徴を含む特徴のセット内の各特徴に関連付けられた重みパラメータに対応し、x1,…,kは、特徴のセット内の各特徴について導出され、特徴のセットは、特徴1~kを含む。
【0133】
図3Eのブロック3420。p(対象)が、所定の閾値を超えると判定するに従って、対象が、金属代謝に関連する生物学的状態を有すると判定される。
【0134】
図3Eのブロック3500。一部の実施形態では、金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価することは、金属代謝に関連する第1の生物学的状態と、金属代謝に関連する第1の生物学的状態とは異なる金属代謝に関連する第2の生物学的状態と、を区別することをさらに含む。
【0135】
図3Eのブロック3510。一部の実施形態では、第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害であり、第2の生物学的状態は、注意欠陥/多動性障害である。
【0136】
図3Eのブロック3510。一部の実施形態では、金属代謝に関連する第1の生物学的状態は、自閉症スペクトラム障害(ADS)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、過敏性腸疾患(IBD)、小児腎移植拒絶反応、および小児がんからなる群から選択される。
【0137】
一部の実施形態では、図3A図3Eに関して説明される方法3000は、方法3000を実行する命令を含む1つ以上のプログラム(例えば、非永続メモリ111または図1の永続メモリ112に記憶される1つ以上のプログラム)を実行するデバイスによって実行される。一部の実施形態では、方法3000は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、処理コア102)と、方法3000を実行する命令を含むメモリ(例えば、非永続メモリ111または永続メモリ112に記憶された1つ以上のプログラム)と、を含むシステムによって実行される。
【0138】
分類子の訓練。
ここで、図3A図3Eを参照して方法3000の方法および特徴が開示され、図4は、本開示の一部の実施形態による、金属代謝に関連する生物学的状態について対象を評価するための分類子を訓練するための方法4000のプロセスおよび機能のフローチャートを提供し、任意のブロックは、破線ボックスで示される。分類子を訓練する方法は、複数の訓練対象からそれぞれの訓練対象の金属代謝に関連する生体試料を収集することと、収集された生体試料を使用して分類子を訓練することと、を含む。訓練対象はヒトである。各訓練は、金属代謝に関連する生物学的状態と診断されたか、または金属代謝に関連する生物学的状態と診断されていないことを示す診断ステータスを有する。一部の実施形態では、訓練対象は、5歳以下(例えば、5歳、4歳、3歳、2歳、1歳、9ヶ月、6ヶ月、3ヶ月、または1ヶ月以下)の子供である。ブロック4100~4300に関して以下に記載される方法4000のステップは、複数の訓練対象における各訓練対象に対して実行される。
【0139】
図4のブロック4100。方法4000は、レーザを用いて、それぞれの訓練対象の金属代謝に関連する対応する生体試料上の対応する基準線の対応する複数の位置におけるそれぞれの位置をサンプリングし、それにより対応する複数のイオン試料を取得することを含む。対応する複数の位置における異なる位置のための対応する複数のイオン試料中の各イオン試料、および金属代謝に関連する対応する生体試料の異なる成長期間を表す対応する複数の位置における各位置である。
【0140】
図4のブロック4200。方法4000は、質量分析計を用いて対応する複数のイオン試料中のそれぞれのイオン試料を含み、それにより対応する複数のトレースを含むそれぞれの第1のデータセットを取得する。対応する複数のトレース内の各トレースは、対応する複数のイオン試料から集合的に決定された、複数の元素同位体中の対応する元素同位体の経時的な濃度である。
【0141】
図4のブロック4300。方法4000は、対応する特徴のセットを含む対応する複数のトレースからそれぞれの第2のデータセットを導出することを含み、対応する特徴のセット内のそれぞれの特徴は、対応する複数のトレース内の単一の同位体または同位体の組み合わせの変動によって決定される。
【0142】
図4のブロック4400。方法4000は、未訓練の分類子または部分的に未訓練の分類子を、(i)複数の訓練対象のうちの各訓練対象のそれぞれの第2のデータセットの対応する特徴のセットと、(ii)第1の診断ステータスおよび第2の診断ステータスの中から選択された、複数の訓練対象のうちの各訓練対象の対応する診断ステータスと、を用いて訓練し、それにより、訓練済み分類子を取得することをさらに含む。訓練済み分類子は、試験対象の金属代謝に関連する生体試料から取得された特徴のセットの特徴の値に基づいて、試験対象が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有するかどうかの指標を提供する。一部の実施形態では、(ブロック4410)、訓練済み分類子は、ニューラルネットワークアルゴリズム、畳み込みニューラルネットワークアルゴリズム、サポートベクターマシンアルゴリズム、決定木アルゴリズム、教師なしクラスタリングモデルアルゴリズム、教師ありクラスタリングモデルアルゴリズム、または回帰モデルである。一部の実施形態では、(ブロック4420)訓練済み分類子は、多項型または二項型である。一部の実施形態では、訓練済み分類子を使用して、試料が金属代謝に関連する第1の生物学的状態を有する対象に由来したかどうかに関するバイナリ予測を行うことができ、または、多項型であってもよく、診断を有しない対象は、金属代謝に関連する第1の生物学的状態または金属代謝に関連する第2の生物学的状態を有する対象と区別され、ここで第2の生物学的状態は第1の生物学的状態とは異なる。
【0143】
一部の実施形態では、分類子は、ニューラルネットワークまたは畳み込みニューラルネットワークである。Vincent et al.,2010,“Stacked denoising autoencoders:Learning useful representations in a deep network with a local denoising criterion,”J Mach Learn Res 11,pp.3371-3408、Larochelle et al.,2009,“Exploring strategies for training deep neural networks,”J Mach Learn Res 10,pp.1-40、およびHassoun,1995,Fundamentals of Artificial Neural Networks,Massachusetts Institute of Technologyを参照されたい。これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
SVMは、Cristianini and Shawe-Taylor,2000,“An Introduction to Support Vector Machines,”Cambridge University Press,Cambridge、Boser et al.,1992,“A training algorithm for optimal margin classifiers,”in Proceedings of the 5th Annual ACM Workshop on Computational Learning Theory,ACM Press,Pittsburgh,Pa.,pp.142-152、Vapnik,1998,Statistical Learning Theory,Wiley,New York、Mount,2001,Bioinformatics:sequence and genome analysis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,Duda,Pattern Classification,Second Edition,2001,John Wiley&Sons,Inc.,pp.259,262-265、およびHastie,2001,The Elements of Statistical Learning,Springer,New York、ならびにFurey et al.,2000,Bioinformatics 16,906-914に記載されており、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。分類に使用される場合、SVMは、ラベル付けされたデータから最大限に離れた超平面を用いて、所与のバイナリラベル付けされたデータのセットを分離する。線形分離が不可能な場合、SVMは、特徴空間への非線形マッピングを自動的に実現する「カーネル」の技術と組み合わせて動作することができる。特徴空間内のSVMによって見出される超平面は、入力空間内の非線形決定境界に対応する。
【0145】
決定木は、概して、Duda,2001,Pattern Classification,John Wiley&Sons,Inc.,New York,pp.395-396に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。木ベースの方法は、特徴空間を矩形のセットに分割し、その後、各モデルに(定数のような)モデルを適合させる。一部の実施形態では、決定木は、ランダムフォレスト回帰である。使用できる1つの特定のアルゴリズムは、分類および回帰木(CART)である。他の特定の決定木アルゴリズムとしては、ID3、C4.5、MART、およびランダムフォレストが挙げられるが、これらに限定されない。CART、ID3、およびC4.5は、Duda,2001,Pattern Classification,John Wiley&Sons,Inc.,New York.pp.396-408およびpp.411-412に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。CART、MART、およびC4.5は、Hastie et al.,2001,The Elements of Statistical Learning,Springer-Verlag,New York,Chapter 9に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ランダムフォレストは、Breiman,1999,“Random Forests--Random Features,”Technical Report 567,Statistics Department,U.C.Berkeley,September 1999に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0146】
クラスタリング(例えば、非監視クラスタリングモデルアルゴリズムおよび監視クラスタリングモデルアルゴリズム)は、Duda and Hart,Pattern Classification and Scene Analysis,1973,John Wiley&Sons,Inc.,New York,(以下“Duda 1973”)の211~256頁に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Duda 1973のセクション6.7に記載されているように、クラスタリングの問題は、データセット内の自然なグループ化を見つけることの1つとして説明されている。自然なグループ化を識別するために、2つの問題に取り組んでいる。まず、2つの試料間の類似度(または非類似度)を測定する方法が、判定される。このメトリック(類似度尺度)は、あるクラスタ内の試料が他のクラスタ内の試料よりも互いに類似していることを確認するために使用される。第2に、類似度尺度を用いて、データをクラスタに分割するための機構を判定する。類似度尺度は、Duda 1973のセクション6.7で議論され、そこでは、クラスタリング調査を開始する1つの方法は、距離関数を定義し、訓練セット内のすべての対の試料間の距離の行列を計算することであると述べられている。距離が類似度の良い尺度である場合、同じクラスタ内の参照エンティティ間の距離は、異なるクラスタ内の参照エンティティ間の距離よりも著しく短くなる。しかしながら、Duda 1973の215ページに記載されているように、クラスタリングは距離メトリックの使用を必要としない。例えば、非メトリック類似度関数s(x,x’)は、2つのベクトルxおよびx’を比較するために使用され得る。従来、s(x,x’)は、xとx’とが何らかの形で「類似」している場合に値が大きい対称関数である。非メトリック類似度関数の例(x,x’)は、Duda 1973のページ218に提供される。データセット内の点間の「類似度」または「非類似度」を測定する方法が選択されると、クラスタリングは、データの任意のパーティションのクラスタリング品質を測定する基準関数を必要とする。基準関数を極端にするデータセットのパーティションは、データをクラスタ化するために使用される。Duda 1973の217ページを参照されたい。基準関数は、Duda 1973のセクション6.8で考察する。最近では、Duda et al.,Pattern Classification,2nd edition,John Wiley&Sons,Inc.New Yorkが出版されている。537~563ページには、クラスタリングの詳細が記載されている。クラスタリング技術についての詳細は、Kaufman and Rousseeuw,1990,Finding Groups in Data:An Introduction to Cluster Analysis,Wiley,New York,N.Y.,Everitt,1993,Cluster analysis(3d ed.),Wiley,New York,N.Y.;およびBacker,1995,Computer-Assisted Reasoning in Cluster Analysis,Prentice Hall,Upper Saddle River,New Jerseyに記載されており、その各々は参照により本明細書に組み込まれる。本開示で使用され得る特定の例示的なクラスタリング技法としては、限定されないが、階層的クラスタリング(最近傍アルゴリズム、最遠傍アルゴリズム、平均連結アルゴリズム、重心アルゴリズム、または二乗和アルゴリズムを使用した集積クラスタリング)、k平均クラスタリング、ファジィk平均クラスタリングアルゴリズム、およびジャーヴィス・パトリッククラスタリングが挙げられる。一部の実施形態では、クラスタリングは、教師なしクラスタリングを含み、訓練セットがクラスタ化されたときにどのクラスタが形成されるべきかという先入観は課されない。
【0147】
マルチカテゴリロジットモデルの回帰モデルなどは、Agresti,An Introduction to Categorical Data Analysis,1996,John Wiley&Sons,Inc.,New York,Chapter 8に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、分類子は、Hastie et al.,2001,The Elements of Statistical Learning,Springer-Verlag,New Yorkに開示されている回帰モデルを使用する。
【0148】
一部の実施形態では、図4に関して説明される方法4000は、方法4000を実行する命令を含む1つ以上のプログラム(例えば、非永続メモリ111または図1の永続メモリ112に記憶される1つ以上のプログラム)を実行するデバイスによって実行される。一部の実施形態では、方法4000は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、処理コア102)と、方法4000を実行する命令を含むメモリ(例えば、非永続メモリ111または永続メモリ112に記憶された1つ以上のプログラム)と、を含むシステムによって実行される。
【実施例
【0149】
実施例
実施例1-自閉症スペクトラム障害の対象の評価
2人の対象(対象1および対象2)を、図2A図2Fに関して説明した方法200を使用して、自閉症スペクトラム障害について評価した。表4は、訓練セットから取得されたそれぞれのパラメータ推定値βに関連付けられた表2の特徴(例えば、列「特徴」)および対象1および対象2の経験的結果(例えば、x値)を含む結果を示している。β値は、それぞれの特徴に関する1単位の変化に関連する自閉症スペクトラム障害ステータスのログオッズの変化を記述する訓練データセットの各特徴を推定することによって取得される。それぞれの対象についての推定パラメータβおよびx値は、計算されたαパラメータ36.31を与えられたそれぞれの対象(上記の式1を参照されたい)についてp(対象)を計算するアルゴリズムに入力される。対象1について、推定パラメータβおよび実験結果xは、対象1が自閉症スペクトラム障害を有するという推定確率p(対象)2.28%を得た。対象2について、推定パラメータβおよび実験結果xは、対象2が自閉症スペクトラム障害を有するという推定確率p(対象)96.9%を得た。したがって、50%の所定の閾値で、対象1は、自閉症スペクトラム障害を有しないと評価され、対象2は、自閉症スペクトラム障害を有すると評価された。さらに、自閉症スペクトラム障害を有する対象1のオッズは0.023に等しく、自閉症スペクトラム障害を有する対象2のオッズは31.2に等しい。確率から式2を用いてオッズを算出する。
【数5】
【表4】
【0150】
例2-受信者動作特性(ROC)曲線。
図5Aは、一部の実施形態による、自閉症スペクトラム障害の対象を評価する開示の方法の精度を評価するための実験的な受信者動作特性(ROC)曲線を示している。図5Aに関して説明した実験では、評価は、対象の毛幹を測定することによって行われる。ROC曲線は、二項分類子の性能を評価するために使用され得る。ROC曲線は、特異度(真陰性率とも称される)に対する感度(真陽性率とも称される)としてプロットされる。完璧な分類子は、100%の感度および100%の特異度、および1に対応する曲線下面積(AUC)を有するであろう。図5Aに示すように、開示された分類方法のパフォーマンスを評価するための実験データに由来するROC曲線は、0.947に対応するAUCを有し、開示された方法が、対象が自閉症スペクトラム障害を有することを評価するための90%を超える精度を有することを示している。
【0151】
実施例3-1人または2人の親の毛髪試料からの自閉症スペクトラム障害のための対象の評価
対象が自閉症スペクトラム障害を有するか否かを判定することができる分類子を開発するために、スウェーデンに拠点を置く研究(Roots of Autism and ADHD Study in Sweden-RATSS;Marwan et al.,2007,“Recurrence plots for the analysis of complex systems,”Phys.Rep.438,237-329.)において、双子の両親(生みの母親および父親)から毛髪を収集した。この研究の目的は、親の髪だけから子供の自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を予測することであった。子供たちは自閉症の臨床検査を受けた。この分析では、診断以外に子供に関するデータは使用されない。a)子供の自閉症を予測するために母親の毛髪のみを使用する分類子(n=29;14ASD症例、15対照)、b)父親の毛髪のみを使用する分類子(n=23;9ASD症例、14対照)、およびc)母親と父親の毛髪の両方を使用する分類子(n=52;23ASD症例、29対照)の3つの分類子が開発された。
【0152】
表5は、母親の毛髪コホート、父親の毛髪コホート、ならびに母親の毛髪コホートと父親の毛髪コホートの組み合わせに対して使用される特徴およびそれらのβ値を示している。β値は、それぞれの特徴に関する1単位の変化に関連する自閉症スペクトラム障害ステータスのログオッズの変化を記述するそれぞれのコホートの各特徴を推定することによって取得される。
【0153】
図5B図5C、および図5Dはそれぞれ、一部の実施形態による、母親の髪、父親の髪、および母親の髪と父親の髪との組み合わせに基づいて、自閉症スペクトラム障害のための訓練済み分類子の精度を評価するための実験的ROC曲線を示している。図5Bに示すように、開示された分類方法のパフォーマンスを評価するための実験データに由来するROC曲線は、0.886に対応するAUCを有し、開示された方法が、対象の母親の毛髪の試料に基づいて、対象が自閉症スペクトラム障害を有することを評価するための85%を超える精度を有することを示している。図5Cに示すように、開示された分類方法のパフォーマンスを評価するための実験データに由来するROC曲線は、0.800に対応するAUCを有し、開示された方法が、対象の父親の毛髪の試料に基づいて、対象が自閉症スペクトラム障害を有することを評価するための80%を超える精度を有することを示している。図5Dに示すように、開示された分類方法のパフォーマンスを評価するための実験データに由来するROC曲線は、0.859に対応するAUCを有し、開示された方法が、対象の母親の毛髪の試料と対象の父親の毛髪との組み合わせに基づいて、対象が自閉症スペクトラム障害を有することを評価するための85%を超える精度を有することを示している。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0154】
実施例4-筋萎縮性側索硬化症(ALS)
改訂EI Escorial Word Federation of Neurology criteria(N=36)を満たすALS参加者をALSクリニックで採用した。臨床および家族歴のデータを取得した。年齢と性別に一致した対照参加者を口腔外科クリニックで採用した。対照対象(N=31)は、彼らまたは一親等または二親等の家族が神経変性疾患を患っていた場合は除外された。参加者または近親者にはインフォームドコンセントを提供した。
【0155】
ALSについては、歯試料から評価を行った。表6は、使用される特徴およびそれらの対応するβ値を示している。β値は、それぞれの特徴についての1単位の変化に関連するALS状態の対数オッズの変化を記述する、それぞれのコホートにおける各特徴を推定することによって取得される。図6は、コホートにわたってALSを評価する開示の方法の精度を評価するための実験的ROC曲線を示している。図6に示されるように、開示された分類方法の性能を評価するための実験データに由来するROC曲線は、0.869に対応するAUCを有し、これは、開示された方法が、歯試料に基づくALSの評価のためのコホートにわたって85%の精度を有することを示している。
【表6】
【0156】
実施例5-統合失調症
統合失調症のDSM-IV診断を有する参加者は、精神病の遺伝的リスクと転帰(GROUP)研究から選択され(n=20)、罹患していない兄弟姉妹を対照として使用した(n=7)。陽性症状、陰性症状、および一般的な精神病理の重症度を、陽性および陰性症状尺度(PANSS)によって評価した。さらに、統合失調症(n=25)および対照(n=24)のDSM-IV診断を有する参加者は、英国に拠点を置く前向き縦断コホート研究であるAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)から選択された。ALSAPCにおけるDSM-IV統合失調症の存在は、神経精神病の臨床評価のためのスケジュール(スキャンバージョン2.0)に基づいて、半構造化面接を用いて、18歳および24歳で判定した。
【0157】
統合失調症については、歯の試料から評価を行った。表7は、使用される特徴およびそれらの対応するβ値を示している。β値は、それぞれの特徴についての1単位の変化に関連する統合失調症状態の対数オッズの変化を記述する、それぞれのコホートにおける各特徴を推定することによって取得される。図7は、コホート全体にわたって統合失調症を評価するための実験的ROC曲線を示している。図7に示すように、ROC曲線は、1.000に対応するAUCを有し、開示される方法が、コホート全体にわたる歯試料に基づいて統合失調症を決定することにおいて100%の精度を有することを示している。
【表7-1】
【表7-2】
【0158】
実施例6-過敏性腸疾患(IBD)
対象はポルトガルに拠点を置く研究から採用された。歯試料は、IBD(クローン病=6、潰瘍性大腸炎/不定大腸炎=5)と診断された11人の患者と、罹患していない16人の対照から取得した。すべての参加者は同じポルトガルの県で生まれ育った。各対象を、実施例2および3に関して上述した同様の方法を使用して、IDBについて評価した。IDBについては、歯の試料から評価を行った。表8は、使用される特徴およびそれらの対応するβ値を示している。β値は、それぞれの特徴についての1単位の変化に関連するIBD状態の対数オッズの変化を記述する、それぞれのコホートにおける各特徴を推定することによって取得される。
【0159】
図8は、統合失調症の対象を評価するための開示された方法の精度を評価するための実験的ROC曲線を示している。図8に示すように、開示された分類方法のパフォーマンスを評価するための実験データから導出されたROC曲線は、0.915に対応するAUCを有し、開示された方法が、歯試料に基づくIBD測定について90%を超える精度を有することを示している。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【表8-9】
【表8-10】
【表8-11】
【表8-12】
【0160】
実施例7-腎移植拒絶反応の予測
毛髪試料は、生検で証明された急性拒絶反応(n=6)の時点での腎移植レシピエント、および移植後の同時にサーベイランス生検で急性拒絶反応を有さない年齢および性別適合対照腎移植レシピエント(n=5)から収集した。すべての参加者は、マウントシナイ(Mount Sinai)病院から募集された。表9は、使用される特徴およびそれらの対応するβ値を示している。β値は、それぞれの特徴についての1単位の変化に関連する腎移植片状態の対数オッズの変化を記述する、それぞれのコホートにおけるそれぞれの特徴を推定することによって取得される。
【0161】
図9は、腎移植拒絶反応のための対象を評価する開示の方法の精度を評価するためのROC曲線を示している。図9に示すように、開示された分類方法の性能を評価するための実験データに由来するROC曲線は、0.900に対応するAUCを有し、開示された方法が、毛髪試料に基づいて腎移植拒絶反応を評価するための90%の精度を有することを示している。
【表9-1】
【表9-2】
【0162】
実施例8-小児がん
実施例2および3に関して上述した同様の方法を用いて、対象を小児がんについて評価した。合計28人の児童をがんセンターから募集した。小児がん症例は22例、対照群は6例であった。診断は、標準的な臨床プロトコル-血液検査および組織病理学を使用して行われ、腫瘍学者によって確認された。表10は、使用される特徴およびそれらの対応するβ値を示している。β値は、それぞれの特徴についての1単位の変化に関連する小児がんステータスの対数オッズの変化を記述する、それぞれのコホートにおけるそれぞれの特徴を推定することによって取得される。
【0163】
図10は、小児がんの対象を評価するための開示された方法の精度を評価するためのROC曲線を示している。図10に示すように、開示された分類方法のパフォーマンスを評価するための実験データから導出されたROC曲線は、0.962に対応するAUCを有し、開示された方法が、歯のサンプリングに基づいて、小児がんの28人の小児のコホート全体にわたって95%超の精度を有することを示している。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【表10-7】
【表10-8】
【表10-9】
【0164】
引用文献および代替的な実施形態
本明細書で引用されるすべての参照文献は、各々の個々の刊行物または特許または特許出願が、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0165】
本発明の多くの修正および変動は、当業者に明らかになるように、その趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載される特定の実施形態は、例としてのみ提供される。実施形態は、本発明の原理およびその実際の用途を最もよく説明するために選択および説明され、それにより、当業者は、本発明および種々の実施形態を、企図される特定の用途に適した種々の修正を加えて最適に利用することができる。本発明は、添付の特許請求の範囲の条件のみによって、かかる特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに限定される。
図1A
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E-1】
図2E-2】
図2F-1】
図2F-2】
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10