(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】木質培土基材及びその製造方法、木質分解資材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C05F 1/00 20060101AFI20241002BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20241002BHJP
A01G 24/23 20180101ALI20241002BHJP
C05F 11/08 20060101ALI20241002BHJP
C05F 9/04 20060101ALI20241002BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
C05F1/00
C05F11/00
A01G24/23
C05F11/08
C05F9/04
C12N1/20 F
(21)【出願番号】P 2022004339
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】521361291
【氏名又は名称】大崎 満
(73)【特許権者】
【識別番号】521361305
【氏名又は名称】大崎 伸隆
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】大崎 満
(72)【発明者】
【氏名】大崎 伸隆
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-097281(JP,A)
【文献】特開2006-169043(JP,A)
【文献】特開平11-029384(JP,A)
【文献】特開平07-089782(JP,A)
【文献】特開2018-016603(JP,A)
【文献】特開2015-010022(JP,A)
【文献】特表2019-515862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F 1/00
C05F 11/00
A01G 24/23
C05F 11/08
C05F 9/04
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミミズの死骸を吸水した米と混合して第1混合物とする第1混合工程と、
前記第1混合物
において培養された前記ミミズの死骸含有菌により前記死骸を分解する第1熟成工程と、
前記第1熟成工程を経た前記第1混合物を、木質材と混合して第2混合物とする第2混合工程と、
前記第2混合物
に含まれる前記木質材を分解する第2熟成工程と
を有する木質培土基材の製造方法。
【請求項2】
前記第1熟成工程は
、暗所にて
行う請求項1に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項3】
前記第1混合工程は、前記ミミズの死後、24時間以上経過した前記死骸を前記米と混合する請求項1または2に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項4】
前記第1混合工程は、前記ミミズの死後7日以内の前記死骸を前記米と混合する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項5】
前記第2熟成工程は、前記第2混合物を切り返す切返工程を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項6】
前記第2混合工程は、前記第1熟成工程を経た前記第1混合物を、バイオ炭と混合する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項7】
前記第2熟成工程を経た第2混合物を、木質材と混合して第3混合物とする第3混合工程と、
前記第3混合物
に含まれている微生物叢により前記木質材を分解する第3熟成工程と
を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項8】
前記第3混合工程は、前記第2熟成工程を経た前記第2混合物を、バイオ炭と混合する請求項7に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項9】
前記死骸は、フトミミズ科に属する前記ミミズの死骸である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の木質培土基材の製造方法。
【請求項10】
ミミズの死骸と吸水した米とを混合して第1混合物とする第1混合工程と、
前記第1混合物
において培養された前記ミミズの死骸含有菌により前記死骸を分解する第1熟成工程と、
を有する木質分解資材の製造方法。
【請求項11】
ミミズの死骸と吸水した米とが混合している第1混合物
において培養された前記ミミズの死骸含有菌により前記死骸を分解した後に、
この第1混合物を木質材と混合して第2混合物とし、前記第2混合物
に含まれている微生物叢により前記木質材を分解することにより製造された木質培土基材。
【請求項12】
前記木質材が分解した前記第2混合物を
、非加熱で乾燥することにより製造された請求項11に記載の木質培土基材。
【請求項13】
ミミズの死骸と吸水した米とを混合した第1混合物
において培養された前記ミミズの死骸含有菌により前記死骸を分解して得られ、木質材を分解する木質分解資材。
【請求項14】
前記死骸が分解した前記第1混合物を
、非加熱で乾燥して得られた
請求項13に記載の木質分解資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質培土基材及びその製造方法、木質分解資材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イネ、小麦、トウモロコシ、大豆などの穀実作物の他、野菜、果樹等の各種作物を栽培する土壌の改質に、ミミズが寄与することは古くから知られており、ミミズの利用は、農薬の使用が制限される場合でも非常に有効である。また、ミミズとその排泄物との少なくともいずれかに含まれる微生物を好気性条件下で培養して得られる微生物群を有効成分として含有する植物の細菌病又は糸状菌病の予防用組成物が、特許文献1に記載されている。
【0003】
さらに、特許文献2には、ミミズの体内に含有されるラウルテラ属の微生物を取得する技術が開示されている。この特許文献2に記載されるラウルテラ属の微生物の単離方法は、細菌叢取得工程と、野菜培養工程と、集落形成工程と、分離菌株取得工程とを有し、細菌叢取得工程は、植物性廃棄物を食料とするミミズの体内から細菌叢を取得する。野菜培養工程は、野菜を入れた液体培地に細菌叢を接種して培養し、集落形成工程は、培養した後の液体培地を平板培地上で培養して集落を形成させる。分離菌株取得工程は、上記集落から分離菌株を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-016603号公報
【文献】特許第6346982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、作物を栽培する木質培土を製造するための手法を提案するためのものではない。また、特許文献2に記載される技術は、植物性廃棄物の処理に用いるものであり、大量に廃棄される木質バイオマスの分解物により、作物を栽培する木質培土へ利用することができない。
【0006】
そこで、本発明は、作物を栽培する木質培土に用いられ、ミミズを利用した木質培土基材と、この木質培土基材を簡便に製造する製造方法、及び、このような木質培土基材を製造するための木質分解資材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の木質培土基材の製造方法は、第1混合工程と、第1熟成工程と、第2混合工程と、第2熟成工程とを有する。第1混合工程は、ミミズの死骸を吸水した米と混合して第1混合物とする。第1熟成工程は、第1混合物において培養されたミミズの死骸含有菌により上記死骸を分解する。第2混合工程は、第1熟成工程を経た第1混合物を、木質材と混合して第2混合物とする。第2熟成工程は、第2混合物に含まれる上記木質材を分解する。
【0008】
第1熟成工程は、暗所にて行うことが好ましい。第1混合工程は、ミミズの死後、24時間以上経過した死骸を上記の米と混合することが好ましい。第1混合工程は、ミミズの死後7日以内の死骸を上記の米と混合することが好ましい。
【0009】
第2熟成工程は、第2混合物を切り返す切返工程を有することが好ましい。第2混合工程は、第1熟成工程を経た第1混合物を、バイオ炭と混合することが好ましい。
【0010】
第2熟成工程を経た第2混合物を、さらに木質材と混合して第3混合物とする第3混合工程と、第3混合物に含まれている微生物叢により上記木質材を分解する第3熟成工程とを有することが好ましい。第3混合工程は、第2熟成工程を経た第2混合物を、バイオ炭と混合することが好ましい。
【0011】
死骸は、フトミミズ科に属するミミズの死骸であることが好ましい。
【0012】
本発明の木質分解資材の製造方法は、ミミズの死骸と吸水した米とを混合して第1混合物とする第1混合工程と、第1混合物において培養されたミミズの死骸含有菌により死骸を分解する第1熟成工程とを有する。
【0013】
本発明の木質培土基材は、ミミズの死骸と吸水した米とが混合している第1混合物において培養されたミミズの死骸含有菌により上記死骸を分解した後に、この第1混合物を木質材と混合して第2混合物とし、この第2混合物に含まれている微生物叢により上記木質材を分解することにより製造されたものである。
【0014】
上記木質培土基材は、木質材が分解した第2混合物を、非加熱で乾燥することにより製造されたものであってもよい。
【0015】
本発明の、木質材を分解する木質分解資材は、ミミズの死骸と吸水した米とを混合した第1混合物において培養されたミミズの死骸含有菌により上記死骸を分解して得られたものである。
【0016】
木質分解資材は、上記死骸が分解した第1混合物を、非加熱で乾燥して得られたものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作物を栽培する木質培土に用いられ、ミミズを利用した木質培土基材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】吸水米と、吸水米の上に載置されているミミズの死骸との状態を示す写真である。
【
図3】培土基材にてブドウを栽培した場合の根の状態を示す写真である。
【
図4】培土基材にてブドウを栽培した場合の根の状態を示す写真である。
【
図5】実施例にてアスパラガスを栽培した場合の切株数を示す写真である。
【
図6】実施例にてアスパラガスを栽培した場合の切株数を示す写真である。
【
図7】実施例にてアスパラガスを栽培した場合のす入りの状態を示す写真である。
【
図8】実施例にてアスパラガスを栽培した場合のす入りの状態を示す写真である。
【
図9】比較例にてアスパラガスを栽培した場合の切株数を示す写真である。
【
図10】比較例にてアスパラガスを栽培した場合の切株数を示す写真である。
【
図11】比較例にてアスパラガスを栽培した場合のす入りの状態を示す写真である。
【
図12】比較例にてアスパラガスを栽培した場合のす入りの状態を示す写真である。
【
図13】実施例でのトマトの根の状態を示す写真である。
【
図14】比較例でのトマトの根の状態を示す写真である。
【
図15】実施例及び比較例にて栽培したチジミコマツナの写真であり、撮影日は令和3年5月8日である。
【
図16】実施例及び比較例にて栽培したチジミコマツナの写真であり、撮影日は令和3年5月22日である。
【
図17】実施例及び比較例にて栽培したチジミコマツナの写真であり、撮影日は令和3年6月5日である。
【
図18】実施例及び比較例にて栽培したチジミコマツナの写真であり、撮影日は令和3年6月19日である。
【
図19】実施例及び比較例にて栽培したチジミコマツナの写真であり、撮影日は令和3年7月3日である。
【
図20】実施例及び比較例にて栽培したチジミコマツナの写真であり、撮影日は令和3年7月10日である。
【
図23】実施例にて栽培したコマツナの写真である。
【
図24】実施例にて栽培したチンゲンサイの写真である。
【
図25】実施例にて栽培したミニキャベツの写真である。
【
図26】実施例にて栽培したズッキーニの写真である。
【
図28】実施例にて栽培したズラータ黄色大根の写真である。
【
図29】実施例にて栽培したキューリ フリーダムの写真である。
【
図30】実施例にて栽培したスモモ及びユズの写真である。
【
図31】実施例にて栽培したイチジクの写真である。
【
図35】実施例にて栽培した姫リンゴの写真である。
【
図36】実施例にて栽培した紅玉リンゴの写真である。
【
図37】実施例にて栽培したオリーブ(品種;ピケ)の写真である。
【
図38】実施例及び比較例にて栽培したダイコンの写真である。左から順に、腐葉土、(株)サカタのタネの培土、木質培土、木質培土にバイオ炭を追加したもの、腐葉土に木質培土を追加したものをそれぞれ使用した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す木質培土基材11は、植物を栽培する木質培土としてそのまま用いてもよいし、土を混合することにより木質培土としてもよく、本例では木質培土としてそのまま用いている。木質培土基材11は、ミミズの死骸(以下、単に「死骸」と称する)13及び木質材15とから製造され、死骸13に含まれている菌(以下、死骸含有菌と称する)を培養し、培養された菌により木質材15が分解されることで得られる。木質培土基材11は、吸水している米(以下、吸水米と称する)17を用いて製造される。木質培土基材11は、バイオ炭18を含有してもよく、本例でもそのようにしている。木質培土基材11を製造する木質培土基材製造方法は、第1混合工程S11と、第1熟成工程S12と、第2混合工程S15と、第2熟成工程S16とを有している。木質培土基材製造方法は、さらに、吸水工程S21と、第3混合工程S22との少なくともいずれか一方を有することが好ましく、本例もこれら両工程を有する。第3混合工程S22を有する場合の木質培土基材製造方法は、第3熟成工程S23を有する。
【0020】
吸水工程S21は、米21と水22とから吸水米17を得る工程であり、吸水米17が準備されている場合にはこの工程は省略してよい。吸水米17は、死骸含有菌を培養するための培地である。このように、培地は、米という身近なものを吸水させるだけで準備することができるので簡便である。なお、米21は、精米により得られた白米に加えて、または代わりに、籾、玄米、米ぬかを用いてもよい。
【0021】
吸水工程S21は、米21を水22に浸漬することにより吸水させる方法が簡易かつ確実であり、本例でも浸漬により吸水させている。米の飽和吸水率は温度によって異なるものの、米が十分に吸水する程度であれば米の吸水率は特に限定されない。本例では、米21を、室温(概ね25℃)下で、浸漬する時間(浸漬時間)を2時間以上24時間以内の範囲内として、水22に浸漬させている。水22は死骸含有菌を培養することができるものであれば特に限定されない。例えば、井戸水、雨水、水道水等のいずれでもよい。
【0022】
第1混合工程S11は、湿潤な暗所でミミズの死骸13を吸水米17の表面に静置し(
図2参照)、死骸含有菌が繁殖した後に混合して、第1混合物31とする。なお、
図2において、白色の吸水米17の中央に載置されているC字状の黒色物が死骸13であり、この
図2は、実験室内で実施した際の写真である。死骸13は半乾燥したものであることが好ましく、これにより、第1熟成工程S12において、より確実に菌の培養が進む。半乾燥とは、目視または触感で水分が残っていることが確認される程度の乾き具合を意味する。死骸13は、ミミズの死後の経過時間が特に限定されるものではないが、24時間以上経過してミミズ表面にうっすらとした菌叢が目視で認められるものが好ましく、24時間以上空気にさらされることで好気性菌が繁殖し、第1熟成工程S12で培養が確実に進む程度に半乾燥したものとなる。死骸13は、目視では、緑青色及び/または白色の微生物が繁殖することがあり、このようなものを用いることが好ましい。なお、黒色の微生物が繁殖する場合があるが、本例ではこのようなものは使用を避けている。なお、死骸13の代わりに生きたミミズを第1混合工程S11に供しても、木質材15の分解は進まず、植物の栽培に効を奏する木質培土基材11は得られない。本例では、ミミズの死後の経過時間が24時間以上7日以内の死骸13を用いている。なお、死骸13は、ミミズに例えばクエン酸などの酸の水溶液を接触させるなど化学的処理で死なせて得られたものではなく、屋外で既に死んでいるものや、自然環境で自然に死んでしまったものを用いる。
【0023】
死骸13の量に対する吸水米17の量は特に限定されず、本例では、1匹以上10匹以下程度のミミズの死骸13に対して、吸水米17を10リットル以上20リットル以下の範囲内の体積としているが、これよりも大きな体積であってもよいことを確認している。なお、吸水米17の体積は、粒間に形成される空隙を含めた体積、すなわち見かけの体積である。
【0024】
ミミズは、フトミミズ科に属するミミズであれば確実に効果がみられる。死骸13としては、フトミミズ科に属する特定の1種類のミミズの死骸を用いてもよいし、複数種類のミミズの死骸を混ぜて用いてもよい。本例の死骸13は、フトミミズ科に属する複数種類のミミズの死骸を併用している。なお、死骸含有菌は、複数の菌から構成されている。
【0025】
第1熟成工程S12は、死骸含有菌を培養するためのものである。第1熟成工程S12は、第1混合物31を熟成、すなわち、長時間置いておく。これにより、死骸含有菌は培養され、死骸13は当初の外形、すなわち長尺のミミズの外形が認められない程度に分解される。第1熟成工程S12では、第1混合物31を室温(常温)下で静置する。室温とは概ね25℃であり、意図的な温度コントロール(加熱処理及び冷却処理)を行わないことを意味する。したがって外気温度が高めの例えば30℃である場合には30℃下に静置してもよいし、低めの例えば15℃である場合には15℃下に静置してもよい。
【0026】
第1熟成工程S12は、第1混合物31を暗所(遮光下)にて熟成することが好ましく、本例でもそのようにしている。暗所にすることにより、明所にする場合に比べて、乾燥が抑制され、水分調整がほとんど要らないため、好ましい。
【0027】
第1熟成工程S12の時間(以下、第1熟成時間と称する)は特に限定されず、4日以上で吸水米17に白色もしくは黄色の菌叢の広がりが確認できてから1週間以内であることが好ましい。第1熟成時間は、4日以上1週間以内程度であるが、その後吸水米17を攪拌して、そのまま6週間程度保存することができる。また、攪拌した後、吸水米17を室内で自然乾燥して一年程度の暗所で長期保存をすることができる。
【0028】
第1熟成工程S12により、吸水米17は死骸含有菌の固体培地として機能し、吸水米17の色は、米21が白米の場合には白色から黄色へ、籾、玄米、米ぬかの場合には黄色がより濃い色へと変化する。なお、第1熟成工程S12により死骸含有菌が繁殖すると、緑青色及び/または白色の微生物が繁殖し、このような色を呈したものを用いることが好ましく、黒色になった場合及び黒色になった箇所は本例では除去して使用を避けている。第1熟成工程S12を経た第1混合物31、すなわち培養された死骸含有菌と吸水米と17とを含む生成物を、以下、第1熟成物32と称する。第1熟成物32は、木質材15を分解するための木質分解資材として使用することができ、第2混合工程S15に供する。なお、第2混合工程S15にすぐに移行することができない場合等には、第1熟成物32を自然乾燥することにより例えば1年程度保存することができる。自然乾燥は、非加熱で乾燥する一例である。自然乾燥した第1熟成物32は、水で湿潤化して、1週間程度経過すると、木質分解資材として、木質材15の分解に使用することができる。
【0029】
第2混合工程S15は、吸水米17と吸水米17に保持された死骸含有菌とからなる第1熟成物32を、木質培土基材11の原材料としての木質材15と混合して、第2混合物35とする。第2混合工程S15は、第1熟成物32を、木質材15に加えてバイオ炭(バイオチャー)18と混合することが好ましく、本例でもそのようにしている。混合は、第1熟成物32と木質材15及びバイオ炭18とが均質に混じり合った状態となるように行うことが、次工程である第2熟成工程S16における木質材15の効率的な分解の観点で好ましい。本例の第2混合工程S15は、屋外で行っているため土が混ざるが問題ない。この点、第3混合工程S22も同様である。
【0030】
木質材15は、木くず(林地での残材などを含む)、チップ、おが屑、枝等の、木製のものであれば単独でまたは複数種類を併用してもよく、特に限定されない。木質材15は、屋外において一年以上の野積みで自然分解する工程(図示無し)を経たものであることがより好ましく、これにより、予め微生物(菌)による分解(以下、予備分解と称する)が進み、第2熟成工程S16での分解がより効率的に進む。予備分解工程は、例えば野積した状態で3週間以上などの一定期間放置し、放置している間に、切り返しを数度行うことが好ましい。切り返しの回数は、木質材15の状態と外気温による。予備分解工程は、半年ほどかけて行うことがより好ましい。
【0031】
第2混合工程S15において、第1熟成物32の体積(見かけの体積)V32に対する木質材15の体積(見かけの体積)V15は特に限定されない。本例では、10リットル以上20リットル以下の範囲内の体積V32に対して、10m3程度の体積V15としている。
【0032】
バイオ炭18は、燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物であり(2019年改良IPCCガイドラインに基づく定義)、例としては木炭や竹炭が挙げられる。本例のバイオ炭18もこの定義を満たすものであればよい。
【0033】
バイオ炭18は木質材15と同様に微細孔が複数形成された多孔質素材であり、微細孔は保水力や通気機能があり、菌叢の生存に適した場として機能する。菌叢の生存や繁殖等の観点で、第2混合工程S15は、第1熟成物32にバイオ炭18が均一に混じった状態になるように、混合することが好ましい。バイオ炭18の体積V18は特に限定されないが、第2混合工程S15で混合する木質材15の体積をV15とするときに、0.1×V15以上1×V15以下の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
第2混合工程S15は、バイオ炭18に加えて、または代わりに、その他の資材33を第1熟成物32に混合してもよい。その他の資材33としては、貝殻粉末、リン酸資材などがあり、本例でも例えばこれらの少なくとも1種を第1熟成物32に混合している。これら他の資材は、第1熟成物32に対して、バイオ炭18と同時に混合したほうがよい。
【0035】
第2熟成工程S16は、木質材15を分解するための工程であるとともに木質材15とバイオ炭18との多孔質体に微生物叢が繁殖する工程である。第2混合物35を熟成、すなわち、長時間置いておく。これにより、第2混合物35に含まれている微生物叢により、木質材15が分解され、第2熟成物36が得られる。第2熟成工程S16では、第2混合物35を屋外にて外気温度下に置いておく。第1熟成工程S12と同様に、意図的な温度コントロールは行わない。したがって外気温度が高めの例えば30℃である場合には30℃下に置いておいてもよいし、低めの例えば15℃である場合には15℃下に置いておいてもよい。第2熟成工程S16の間に、第2混合物35の温度が上昇するが、この温度上昇は40℃前後に保たれる。
【0036】
第2熟成工程S16の時間(以下、第2熟成時間と称する)は特に限定されず、条件によるが24週間以上であることが好ましい。これにより、第2混合物35に含有されている木質材15が、植物共生に有用な菌叢や、土壌病害に耐性を持つ菌叢をもち、リンやカルシウム等の無機栄養を含む木質培土に熟成する。また、第2熟成時間においては、例えば24週間を超えると木質材15の可分解物の消滅により分解は停止する。分解の停止は、分解がとまり、発熱しなくなり、外気温と同期した時で、内部温度が40℃以下となることから判断することができる。したがって、第2熟成工程S16は、分解の停止をもって終了のタイミングとすればよい。
【0037】
第2熟成工程S16は、第2混合物35を静置する静置工程S16aだけでよい。ただし、第2熟成工程S16は、切り返しを行う切返工程S16bをさらに有することがより好ましく、本例の第2熟成工程S16も、静置工程S16aと、切返工程S16bとを有する。静置工程S16aと切返工程S16bとは複数回繰り返してもよく、本例では3週間ごとに切返工程S16bを実施している。
【0038】
静置工程S16aは、第2混合物35を静置(放置)しておく工程であり、適度な温度上昇(40℃)及び蓄熱されるように実施することが好ましい。第2混合物35には植物に有用な好気性微生物が多く含まれていると推定され、そのような好気性微生物の働きを促進させるまたは低下させないために、第2混合物35を高く堆積して表面積を大きくすることが好ましい。ただし、過度に高く堆積すると、内部の酸素が押し出されて死骸含有菌等の各種菌叢を含む有用な微生物叢の働きが鈍化するので、堆積の高さは2m程度が好ましい。
【0039】
切返工程S16bは第2混合物35に対して切り返しを行う工程である。切り返しは、有用な微生物叢へ酸素を供給するためものである。切り返しは、静置されている第2混合物35の下方部分と上方部分とを入れ替える、及び/または全体を攪拌するなど、第2混合物35を均一化する。切返工程S16bにより、熟成がより確実に進行する。切返工程S16bのタイミングは、第2混合物35の外観、温度などに基づいて適宜決定すればよく、本例では3週間以上5週間以内の静置工程S16aの後としている。
【0040】
この例では、第2熟成工程S16の次工程を第3混合工程S22としている。ただし、第2熟成工程S16で得られる第2熟成物36は、例えば1年間等、長期に保存することができる。第2熟成物36は、得られた状態でそのまま屋外に長期間置いておいてもよいし、乾燥してから長期間置いておいてもよい。乾燥する乾燥工程(図示無し)を経た場合には、第2熟成物36の質量及び体積が減少するので、保存する場所を変える場合の作業性がより軽減されたり、袋などの保管容器に収容して保管する場合の保管場所の省スペース化に寄与する。なお、乾燥は自然乾燥でよく、自然乾燥は非加熱で乾燥する一例である。長期保存した第2熟成物36は長期保存しない場合の第2熟成物36と同様に、第3混合工程S22に供することができる。このように、第2熟成物36は保存可能であるので、第2熟成工程S16で得られた第2熟成物36の全量をすぐに第3混合工程S22に供することができない場合には、一部を第3混合工程S22に供して残部を保存しておき、保存した残部は後に第3混合工程S22に供することができる。
【0041】
第3混合工程S22は、第2熟成工程S16を経た第2混合物、すなわち第2熟成工程S16で得られた第2熟成物36に、木質材15を新たに混合して第3混合物41を得る工程である。木質材15は、第2混合工程S15で混合する木質材15と同様に、熟成工程(図示無し)を経て、予備分解を進めたものの方が、第3熟成工程S23での分解がより効率的に進むので好ましい。第3混合工程S22は、さらにバイオ炭18を、第2熟成物36に新たに混合することが好ましく、本例でもそのようにしている。混合は、第2熟成物36と木質材15及びバイオ炭18とが均質に混じり合った状態となるように行うことが、次工程である第3熟成工程S23における木質材15の効率的な分解の観点で好ましい。
【0042】
第2熟成物36の体積(見かけの体積)をV36とし、木質材15の体積(見かけの体積)をV15とするときに、第3混合工程S22では、体積V36に対する体積V15は特に限定されず、例えば、10m3の体積V36に対して、体積V15を500m3以上20000m3以下の範囲内にする。本例では、10m3の体積V36に対して、体積V15を1000m3程度とする場合もあるし、10000m3程度とする場合もあり、いずれも良好に、木質培土基材11が得られている。
【0043】
第3混合工程S22において混合するバイオ炭18の体積(見かけの体積)をV18とするときに、体積V18は特に限定されないが、0.1×V15以上1×V15以下の範囲内とすることが好ましい。なお、V15は、第3混合工程S22において混合する木質材15の体積である。
【0044】
第3混合工程S22は、バイオ炭18に加えて、または代わりに、その他の資材33を第2熟成物36に混合してもよい。その他の資材33としては、貝殻粉末、リン酸資材等である。その他の資材33に加えて、または代わりに、有機物残渣42、堆厩肥45、有用微生物叢と異なるその他の菌46を第2熟成物36に加えてもよい。有機物残渣42としては(大豆粕、野菜等があり、その他の菌46としてはキノコ菌床、窒素固定菌、菌根菌、光合成細菌等がある。本例でもこれらの少なくとも1種を木質培土基材11に含有させている場合がある。これら他の素材は、第2熟成工程S16で得られた第2熟成物36に対して、バイオ炭18と同時に混合した方がよい。
【0045】
第3熟成工程S23は、第3混合工程S22で加えた木質材15を分解し、有用微生物叢を繁殖するためのものであり、第3混合物41を熟成、すなわち、長時間置いておく。これにより、第3混合物41に含まれている有用微生物叢により、木質材15が分解され、有用微生物叢が繁殖した第3熟成物としての木質培土基材11が得られる。第3熟成工程S23では、第3混合物41を屋外にて外気温度下に置いておく。第1熟成工程S12及び第2熟成工程S16と同様に、意図的な温度コントロールは行わない。したがって外気温度が高めの例えば30℃である場合には30℃下に置いておいてもよいし、低めの例えば15℃である場合には15℃下に置いておいてもよい。第3熟成工程S23の間に、第3混合物41の温度が上昇するが、この温度上昇は40℃前後に保たれる。
【0046】
第3熟成工程S23の時間(以下、第3熟成時間と称する)は特に限定されず、条件によるが24週間以上であることが好ましい。これにより、第3混合物41に含有されている木質材15が、十分に分解され有用微生物叢の繁殖が促進すると考えられる。また、第3熟成時間においては、例えば24週間を超えると木質材15の可分解物の消滅により分解は停止する。分解の停止は、内部温度が40℃以下となることから判断することができる。したがって、第3熟成工程S23は、分解の停止をもって終了のタイミングとすればよい。
【0047】
第3熟成工程S23は、第3混合物41を静置する静置工程S23aだけでよい。ただし、第3熟成工程S23は、第2熟成工程S16と同様に、切り返しを行う切返工程S23bをさらに有することがより好ましく、本例の第3熟成工程S23も、静置工程S23aと、切返工程S23bとを有する。静置工程S23aと切返工程S23bとは複数回繰り返してもよく、本例では3週間ごとに切返工程S23bを実施している。静置工程S23a及び切返工程S23bは、静置工程S16a及び切返工程S16bと同様に行うので、説明は略す。
【0048】
製造された木質培土基材11は、植物を栽培するための木質培土としてそのまま用いてもよいし、土を混合することにより木質培土としてもよく、本例では木質培土としてそのまま用いている。木質培土基材11を用いることにより、木質培土基材11が用いられていない木質培土や土で栽培した場合と比べて、植物の生育が促進される。特に、土壌菌に起因する病気の発生が抑えられ、生育がよい。また、木質培土基材11を用いることにより、後述のように、ポット栽培が従来不可能とされていた作物について、ポット栽培をすることができる。なお、上記の例では、第3混合工程S22及び第3熟成工程S23により、第2熟成物36の嵩増しをして少量の第1熟成物32から大量の木質培土基材11を製造している。ただし、第3混合工程S22及び第3熟成工程S23を実施せずに、第2熟成物36を木質培土としてそのまま、または土と混ぜることにより培土として用いることができる。
【0049】
栽培することができる作物は、イネ、小麦、トウモロコシ、大豆などの穀実作物の他、野菜、果樹のいずれでもよい。野菜及び果樹としては、例えば後述の各実施例に記載するものがある。
【0050】
上記方法によれば、ミミズ、それも生体ではなく死骸13を用い、また、入手しやすい米を吸水させただけの吸水米を培地として用いており、ミミズから所定の微生物を単離するための複雑な単離工程も不要である。さらに、第1熟成工程S12、第2熟成工程S16、第3熟成工程S23は、冬以外には屋外に置いておくだけでよい。したがって、木質培土基材11は、非常に簡便に製造される。また、木質材15は、そもそも培土として利用されることが少なくないが、木質材15を死骸含有菌による処理で木質培土基材11にすることで高機能化し、植物と有用微生物との共生系の構築をたすけ、植物の生育を促進し、土壌病害の抑制に寄与することができる。
【実施例1】
【0051】
[実施例1]
死骸13及び木質材15を用いて
図1に示す前述の方法により木質培土基材11を製造し、実施例1とした。なお、本実施例は木質培土の試験のため、バイオ炭18、その他の資材33、有機物残渣42、堆厩肥45、その他の菌46は混合しなかった。すなわち、木質培土基材11にはバイオ炭18、その他の資材33、有機物残渣42、堆厩肥45、その他の菌46は含有されていない。なお、その後、基本的に、木質培土にバイオ炭18、その他の資材33、有機物残渣42、堆厩肥45、その他の菌46を混合することにより、さらに機能性が高まることを確認している。
【0052】
実施例1においては、木質材15が分解して、木質培土基材11が得られた。Aは合格であり、Bは不合格である。評価結果は表1に示す。
A;木質培土基材が得られた
B;木質材15が分解せず、木質培土基材が得られなかった
【0053】
[比較例1-1]~[比較例1-2]
表1に示すように、ミミズの死骸の代わりに生体を用い、また、吸水米の代わりに吸水工程S21を経ていない非吸水の米を用いて、実施例1と同様のフローで木質培土基材の製造を試みて、比較例1-1~1-2とし、実施例1と同様に評価した。
【0054】
【実施例2】
【0055】
[実施例2]
図1に示す前述の方法により、バイオ炭18を加えた木質培土基材11を製造した。バイオ炭18の体積V18は、木質材15の体積V15の0.5倍とした。この木質培土基材11にて醸造用のブドウを栽培し、実施例2とした。プラスチック製フィルムで土壌(培土)表面を覆うマルチングを行い、乾燥を防止するようにした。実施した場所は、北海道枝幸郡中頓別町である。
【0056】
令和3年8月26日に、ブドウの根の状態と、土壌の状態の評価を以下の評価基準で行った。評価結果は表2に示す。
1.ブドウの根の状態
A;細根が多数確認されて、非常に良好(合格)
B;細根が確認されて、良好(合格)
C;細根が確認されない(不合格)
【0057】
2.土壌の状態
P;土壌がふわふわとして柔らかい(合格)
F;土壌が硬い(不合格)
【0058】
【0059】
[比較例2]
木質培土基材11が混ぜられていない土を培土として用いた以外は、実施例2と同様の条件でブドウを栽培して比較例2とした。ブドウの根の状態と、土壌の状態の評価を実施例と同様に評価した。評価結果は表2に示す。
【実施例3】
【0060】
[実施例3-1]~[実施例3-2]
図1に示す前述の方法により、バイオ炭18を加えた木質培土基材11を製造した。バイオ炭18の体積V18は表3の「バイオ炭の体積」欄に示す。アスパラガスの畝に、木質培土基材11とバイオ炭とを表層施与して、アスパラガスを栽培した。
【0061】
令和3年6月25日に、アスパラガスの切り株の数と、切り株における“す入り”(微細空隙の発生具合)とを評価した。評価結果は表3に示す。なお、す入りの評価基準は以下である。
A;す入りが認められず、非常に良好(合格)
B;す入りがごくわずかに認められたものの、許容範囲内(合格)
C;す入りが多数認められ、不良(不合格)
【0062】
【0063】
[比較例3-1]~[比較例3-2]
バイオ炭18を含有した木質培土基材11の代わりに、バイオ炭18のみを用いて比較例3-1とした。土に混ぜたバイオ炭18の体積は、実施例3-1におけるバイオ炭18の体積と同じとした。また、土のみで実施したものを、対照区としての比較例3-2とした。アスパラガスの切り株の数と、切り株における“す入り”とを実施例と同様に評価した。評価結果は表3に示す。
【実施例4】
【0064】
[実施例4-1]
実施例3-1と同じ木質培土基材11にて、トマトを栽培した。栽培したトマトの根の状態を、前述のブドウの根の状態の評価基準と同様の評価基準で評価した。評価結果は、表4に示す。
【0065】
[比較例4-1]
木質培土基材11の代わりに土を用いて、実施例4-1と同様にしてトマトを栽培し、トマトの根の状態を実施例と同様に評価した。評価結果は表5に示す。
【0066】
【実施例5】
【0067】
[実施例5]
実施例1で製造した木質培土基材11にて、チジミコマツナを4株、栽培し、実施例5とした。生育状態を観察し、収穫量を求めた。生育状態は、令和3年の、表5に示す観察日(表中「月/日」で示す)に観察した。収穫量は、株毎に、新鮮重(収穫されたものの質量であり、単位はg)を求め、4株の平均値とした。生育状態と収穫量とは、表5に示す。なお、収穫日は令和3年7月17日だった。
図13~
図18に示す各写真は、左から順に、比較例5-1、比較例5-2、比較例5-3、実施例5の収穫時の状態を示す。
【0068】
[比較例5-1]~[比較例5-3]
木質培土基材11の代わりに、比較例5-1では腐葉土(林床腐葉土)を、比較例5-2では(株)サカタのタネのスーパーミックスA(登録商標)を、比較例5-3では有機培土を、それぞれ培土として用いた。その他の条件は実施例と同じとした。実施例と同様に、チジミコマツナ4株の生育状態と、収穫量とを評価した。評価結果は表5に示す。
【0069】
【実施例6】
【0070】
[実施例6-1]~[実施例6-2]
実施例1で製造した木質培土基材11にて、リバグリーンレタス(種は(株)サカタのタネ製)をハウス栽培し、実施例6-1~6-2とし、ダイズ(エダマメ)を同様にハウス栽培し、実施例6-3とした。実施例6-1の栽培期間は夏季であり、令和3年7月16日から8月3日まで、ハウス内温度は35℃以上で連続していた。そのうち、7月20日及び7月31日は、ハウス内温度は43℃に達した。実施例6-2の栽培期間は冬季であり、ハウス内温度は10℃以上15℃以下の範囲で推移した。実施例6-3の栽培期間は秋から冬にかけての期間だった。
【0071】
各実施例のリバグリーンレタス、ダイズは、いずれも良好に生育し、収穫に供することができ、ダイズも良好に生育し(
図21参照)、収穫することができた(
図22参照)。これにより、木質培土基材11を用いることにより、高温耐性及び低温耐性が向上することがわかった。
【実施例7】
【0072】
[実施例7-1]~[実施例7-7]
実施例1で製造した木質培土基材11にて表6に示す各野菜をハウス栽培し、実施例7-1~7-7とした。なお、キュウリ(フリーダム)は、(株)サカタのタネ製の種子を用いた。栽培した結果、比較例7-1~比較例7-7と比べて2~3倍に生育した。収穫時の生育状態は、表6の「結果を示す写真」欄に記載の図に示す。実施例7-7は、比較例7-7と比べて着果率がほぼ2倍であり、非常に高かった。
【0073】
【0074】
[比較例7-1]~[比較例7-7]
培土として有機培土を用いた以外は実施例と同じ条件として、比較例7-1~7-7を実施した。栽培した結果、実施例7-1~実施例7-7と比べて1/3~1/2倍程度にしか生育しなかった。
【実施例8】
【0075】
[実施例8-1]~[実施例8-9]
実施例1で製造した木質培土基材11を土に混ぜて培土とし、表7に示す各果樹をポットにて栽培し、実施例8-1~8-9とした。生育状態は、表7の「結果を示す写真欄」に記載の図に示す。なお、表7に示す果樹は、従来、ポット栽培ができなかったものである。
【0076】
【実施例9】
【0077】
[実施例9-1]~[実施例9-3]
実施例1で製造した木質培土基材11を用いて、ダイコン(タキイ種苗 三太郎)をポット(ポリポット、黒、7号)に令和3年8月20日に播種して栽培し、実施例9-1~9-3とした。実施例9-1は、実施例1で製造した木質培土基材11にて栽培し、実施例9-2は、その木質培土基材11にバイオ炭(北海道下川産木炭から製造)をさらに5%(体積)の割合で加えたもので栽培し、実施例9-3は、落葉林床腐葉土の表面に実施例1で製造した木質培土基材11を散布して(令和3年9月3日)、栽培した。生育状態は
図38に示す。
図38に示す各写真は、左から順に、比較例9-1、比較例9-2、実施例9-1、実施例9-2、実施例9-3の収穫時の状態を示す。
【0078】
[比較例9-1]~[比較例9-2]
実施例9-1の木質培土基材11の代わりに、比較例9-1では腐葉土(落葉林床腐葉土)を、比較例9-2では(株)サカタのタネのスーパーミックスA(登録商標)を、それぞれ培土として用いた。その他の条件は実施例と同じとした。実施例と同様に、ダイコンの生育状態を評価した。評価結果は
図38に示す。
【符号の説明】
【0079】
11 木質培土基材
13 死骸
15 木質材
17 吸水米
18 バイオ炭
31 第1混合物
32 第1熟成物
35 第2混合物
36 第2熟成物
S11 第1混合工程
S12 第1熟成工程
S15 第2混合工程
S16 第2熟成工程
S22 バイオ炭混合工程
S25 乾燥工程