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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/12 20060101AFI20241002BHJP
   B65H 29/60 20060101ALI20241002BHJP
   B65H 15/00 20060101ALI20241002BHJP
   B41F 21/04 20060101ALI20241002BHJP
   B41F 21/06 20060101ALI20241002BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B65H5/12 A
B65H29/60 A
B65H15/00 D
B41F21/04
B41F21/06
B41J2/01 103
B41J2/01 305
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022086715
(22)【出願日】2022-05-27
(65)【公開番号】P2023174071
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博之
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕之
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234262(JP,A)
【文献】特開2018-122472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/12
B65H 29/60
B65H 15/00
B41F 21/04
B41F 21/06
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに印刷を含む処理を施す処理装置と、
前記処理装置による処理が施される位置にシートを搬送する処理胴と、
前記処理胴にシートを供給する供給胴と、
前記処理が施されたシートを前記処理胴から受け取って次の工程の装置に送る搬送機構と、
前記搬送機構からシートを受け取るとともにシートの表裏を反転させる反転胴とを備え、
前記反転胴は、表裏を反転させたシートを前記供給胴に供給するものであり、
前記供給胴には、シートを前記供給胴に押し付けながら回転するシート押えロールが接し、
表裏が反転したシートが前記供給胴に供給される位置は、シートの搬送方向において、シート押えロールによってシートが押しつけられる位置より上流側の位置であることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記反転胴は、シートの搬送方向上流側に位置する後端をくわえるグリップ部材を有し、
前記グリップ部材は、前記反転胴の軸線と平行な軸線を中心にして前記反転胴に対して旋回可能に構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1記載の印刷装置において、
前記搬送機構は、シートの搬送方向上流側に位置する後端が吸着される吸着胴を有し、
前記反転胴は、前記吸着胴に吸着されたシートの後端をくわえるグリップ部材を有し、
前記グリップ部材は、前記反転胴の軸線と平行な軸線を中心にして前記反転胴に対して旋回可能に構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載された印刷装置において、
前記搬送機構は、
前記反転胴を含む反転経路と、
シートを集積するデリバリー部にシートを搬送する排出経路とのいずれか一方の経路に搬送経路を振り分けるシート経路振分装置を有していることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを保持して搬送する処理胴とインクジェットヘッドとを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを備えた従来の印刷装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された印刷装置は、印刷後のシートの表裏を反転させて印刷胴に戻す反転スイング装置を備えており、シートの表裏両面にインクジェットヘッドによる印刷を行うことが可能な構成が採られている。反転スイング装置は、シートの搬送方向上流側の後端を把持した状態で印刷胴に向けて揺動し、このシートを印刷胴のくわえ爪装置に渡す構成が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-210337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反転スイング装置は、反復運動によりシートを反転させており、装置自体の加減速が必要であるために機材への負荷が大きく、高速化を図るにも限界があった。また、反転スイング装置によってシートが反転されるときにシートの紙尻が空中を浮遊する状態になることも問題であった。すなわち、シートとしての紙の紙尻が大きく揺れてシートが傷付いたり、シートが周辺の部材に擦れたり、シートに皺が生じる、などの印刷障害を引き起こす要因となり得る。
【0005】
本発明の目的は、シートを反転させる上で容易に高速化できるとともに、反転時に印刷障害を起こすことがない印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明に係る印刷装置は、シートに印刷を含む処理を施す処理装置と、前記処理装置による処理が施される位置にシートを搬送する処理胴と、
前記処理胴にシートを供給する供給胴と、前記処理が施されたシートを前記処理胴から受け取って次の工程の装置に送る搬送機構と、前記搬送機構からシートを受け取るとともにシートの表裏を反転させる反転胴とを備え、前記反転胴は、表裏を反転させたシートを前記供給胴に供給することを特徴とするものである。
【0007】
本発明は、前記印刷装置において、前記反転胴は、シートの搬送方向上流側に位置する後端をくわえるグリップ部材を有し、前記グリップ部材は、前記反転胴の軸線と平行な軸線を中心にして前記反転胴に対して旋回可能に構成されていてもよい。
【0008】
本発明は、前記印刷装置において、前記搬送機構は、シートの搬送方向上流側に位置する後端が吸着される吸着胴を有し、前記反転胴は、前記吸着胴に吸着されたシートの後端をくわえるグリップ部材を有し、前記グリップ部材は、前記反転胴の軸線と平行な軸線を中心にして前記反転胴に対して旋回可能に構成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記印刷装置において、前記搬送機構は、前記反転胴を含む反転経路と、シートを集積するデリバリー部にシートを搬送する排出経路とのいずれか一方の経路に搬送経路を振り分けるシート経路振分装置を有していてもよい。
【0010】
本発明は、前記印刷装置において、前記供給胴には、シートを前記供給胴に押し付けながら回転するシート押さえロールが接し、表裏が反転したシートが前記供給胴に供給される位置は、シートの搬送方向において、シート押えロールによってシートが押しつけられる位置より上流側の位置であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、シートの表裏を反転させる反転胴は、連続的に一定の回転速度で回転可能なものである。この反転胴でシートを搬送するときは、従来の反転スイング装置で加速、減速を行いながら搬送する場合と較べると、シートの紙尻が振られることが少なくなる。したがって、本発明によれば、シートを反転させる上で容易に高速化できるとともに、反転時に印刷障害を起こすことがない印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施の形態による印刷装置の構成を示す側面図である。
図2図2は、印刷装置の要部を示す側面図である。
図3図3は、反転胴の動作を説明するための模式図である。
図4図4は、第2の実施の形態による印刷装置の構成を示す側面図である。
図5図5は、反転胴の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る印刷装置の一実施の形態を図1図3を参照して詳細に説明する。
図1に示す搬送装置1は、図1において最も右に位置するフィーダー部2から印刷ユニット3にシート4を搬送し、この印刷ユニット3においてシート4の片面または両面に印刷を施すものである。印刷ユニット3において印刷が施されたシート4は、デリバリー部5に送られ、デリバリーパイル6に集積される。
【0014】
フィーダー部2は、シート4をフィーダーパイル11からサッカー12によってフィーダーボード13に移し替える構造のものである。サッカー12は、間欠給紙バルブ14に接続されており、シート4が連続的に送られる形態と、シート4が間欠的に送られる形態とのうちいずれか一方の形態で動作する。シート4の表面のみに印刷が施される場合は、サッカー12がシート4を連続的にフィーダーボード13に送る。一方、シート4の表面と裏面とに印刷が施される場合は、サッカー12がシート4を間欠的にフィーダーボード13に送る。
【0015】
印刷ユニット3は、フィーダー部2から供給されたシート4がスイング装置15によって搬送される供給胴16と、この供給胴16からシート4が送られる処理胴17と、印刷後のシート4を送る搬送機構18とを備えている。
供給胴16は、いわゆる2倍胴と呼ばれるもので、図2に示すように回転方向の2箇所にそれぞれ搬送面16aを有している。これらの搬送面16aは、供給胴16の外周面によって構成されており、供給胴16を軸方向から見て回転方向に2等分する位置に設けられている。互いに隣り合う搬送面16aどうしの間には、外周切欠き部16bが設けられているとともに、くわえ爪装置44が設けられている。 くわえ爪装置44は、シート4の搬送方向下流側の端部となる前端4aをくわえて保持するものであり、スイング装置15から受け取ったシート4を供給位置P1において処理胴17に供給する。供給胴16の近傍には、供給胴16の外周部を加熱するヒータ21が配置されている。供給胴16がヒータ21によって加熱されることにより、シート4が供給胴16によって搬送されるときに供給胴16の熱がシート4に伝達されてシート4の温度が上昇する。
【0016】
また、供給胴16における、スイング装置15によってシート4が供給される位置と供給位置P1との間には、シート押えロール22が接している。このシート押えロール22は、供給胴16によって搬送されているシート4を供給胴16に押し付けながら回転する。このようにシート押えロール22でシート4が供給胴16に押し付けられることにより、供給胴16の熱がシート4に効率よく伝達され、シート4の温度を目標とする温度に確実に昇温させることができる。
【0017】
処理胴17は、シート4を吸着して後述する処理装置23による処理が施される位置に搬送するものである。この実施の形態による処理胴17は、いわゆる3倍胴と呼ばれるもので、図2に示すように回転方向の3箇所にそれぞれ搬送面17aを有している。これらの搬送面17aは、処理胴17の外周面によって構成されており、処理胴17を軸方向から見て回転方向に3等分する位置に設けられている。互いに隣り合う搬送面17aどうしの間には、外周切欠き部24が設けられているとともに、くわえ爪装置25が設けられている。くわえ爪装置25は、シート4の搬送方向下流側の端部となる前端4aをくわえて保持するものである。
【0018】
処理胴17の周囲近傍であって、供給胴16よりシート搬送方向の下流側には、処理装置23の一部を構成する第1~第4のインクジェットヘッド26~29と、インキ乾燥ランプ30とがこの順序で並べて配置されている。この実施の形態による処理装置23は、第1~第4のインクジェットヘッド26~29の他に、第1のインクジェットヘッド26よりシート搬送方向の上流側に配置された印刷前処理装置31も含んでいる。印刷前処理装置31は、例えば印刷前のシート4にプレコートを施すプレコート装置や、印刷前のシート4にコロナ放電処理を施すコロナ処理装置などである。
【0019】
第1~第4のインクジェットヘッド26~29は、シート4にインク滴を吐出して印刷を施すものである。これらの第1~第4のインクジェットヘッド26~29は、図示してはいないが、処理胴17の軸方向(図2の紙面と直交する方向)に並ぶ複数のノズルをそれぞれ備えている。また、第1~第4のインクジェットヘッド26~29は、インク滴がシート4に正しく付着することを目的としてインクを予め定めた温度に加熱するヒータ(図示せず)を備えている。
【0020】
インキ乾燥ランプ30は、第1~第4のインクジェットヘッド26~29によってシート4に塗布されたインクを硬化させるためのものである。インキ乾燥ランプ30は、赤外線や紫外線をシート4に照射する。インクは、赤外線や紫外線が照射されることにより乾燥又は硬化する。
【0021】
搬送機構18は、複数の搬送胴を用いて構成されており、第1~第4のインクジェットヘッド26~29よりシート搬送方向の下流側に位置する受け取り位置P2で印刷後のシート4を受け取る。複数の搬送胴とは、処理胴17から受け取り位置P2においてシート4を受け取る排出胴41と、この排出胴41からシート4を受け取る排出側渡胴42と、排出側渡胴42からシート4を受け取る反転前倍胴43である。
【0022】
上述した供給胴16と、排出胴41と、排出側渡胴42と、反転前倍胴43は、シート4の受け渡しを行うために、それぞれくわえ爪装置44~47を備えている。これらのくわえ爪装置44~47は、処理胴17のくわえ爪装置25と同等のものである。
排出胴41が受け取り位置P2において受け取ったシート4のうち、裏面に印刷が施されるシート4は、排出側渡胴42と、反転前倍胴43と、後述する反転胴51とからなる反転経路52を経て表裏が反転された状態で供給胴16に戻される。
【0023】
一方、表面のみに印刷が施されるシート4や、表裏両面に印刷が施されたシート4は、排出胴41からデリバリーベルト53を含む排出経路54を経てデリバリー部5に排出される。
この実施の形態による排出胴41は、シート4の表裏が反転される反転経路52と、シート4が排出される排出経路54とのいずれか一方の経路に搬送経路を振り分けるシート経路振分装置を構成している。このシート経路振り分装置は、例えば特開2013-240987号公報に記載されている技術を利用して構成することができる。この公報には、排出胴41のくわえ爪装置45を開閉するカムを使用してくわえ爪装置45の開閉時期(シート4の受け渡し時期)を変えるカム装置が記載されている。カム装置は、排出側渡胴42のくわえ爪装置46と、デリバリーベルト53とともに移動するくわえ爪装置(図示せず)とのいずれか一方に排出胴41からシート4が渡されるように構成されている。
【0024】
デリバリー部5は、3つの機能を有している。第1の機能は、印刷が完了したシート4をデリバリーパイル6に集積する機能である。第2の機能は、サンプルを抽出する機能である。第3の機能は、シート4を次工程に搬送する機能である。
【0025】
反転胴51は、搬送機構18を構成する各胴と同期して回転し、搬送機構18からシート4を受け取るとともにシート4の表裏を反転させ、表裏を反転させたシート4を供給胴16に供給する。
この実施の形態による反転胴51は、例えば特開平5-16330号公報に開示されている転向ドラムと同等のもので、図3(A)~(C)に示すように、反転前倍胴43によって搬送されているシート4の搬送方向上流側に位置する後端4bをくわえるグリップ部材55を有している。
【0026】
グリップ部材55は、反転胴51の軸線と平行な軸線を中心にして反転胴51に対して旋回可能に構成されている。図3(A)は、反転前倍胴43によって搬送されているシート4の後端4bをグリップ部材55がくわえて保持した状態を示している。シート4は、印刷が施された表面4cが反転前倍胴43に接する状態で反転前倍胴43によって搬送される。グリップ部材55がシート4の後端4bをくわえた状態で反転胴51が回転することにより、図3(B)~(C)に示すように、シート4の後端4bが搬送方向の下流側に位置する状態でシート4が供給胴16に向けて搬送される。このように反転経路52を通って搬送されたシート4は、図1および図2に示す受け渡し位置P3で供給胴16に受け渡される。このシート4が供給胴16によって搬送されるときには、シート4の表面4cが供給胴16の外に露出するようになる。このため、反転経路52を通って搬送されたシート4は、表裏が反転した状態で供給胴16から処理胴17に搬送されることになる。
【0027】
受け渡し位置P3は、シート4の搬送方向において、供給胴16がスイング装置15からシート4を受け取る位置P4より下流側であって、シート押えロール22によってシート4が押しつけられる押し付け位置P5より上流側の位置である。したがって、表裏が反転されたシート4もシート押えロール22によって押さえつけられた後に処理胴17に受け渡される。
【0028】
上述したようにシート4の表裏を反転させる反転胴51は、連続的に一定の回転速度で回転可能なものである。この反転胴51がシート4を搬送するときは、従来の反転スイング装置で加速、減速を行いながら搬送する場合と較べると、シート4の紙尻が振られることが少なくなる。したがって、この実施の形態によれば、シート4を反転させる上で容易に高速化できるとともに、反転時に印刷障害を起こすことがない印刷装置を提供することができる。
【0029】
この実施の形態による反転胴51は、シート4の搬送方向上流側に位置する後端4bをくわえるグリップ部材55を有している。グリップ部材55は、反転胴51の軸線と平行な軸線を中心にして反転胴51に対して旋回可能に構成されている。このため、この反転胴51によって搬送されるシート4は、反転胴51の外周面に沿うようになるから、搬送中のシート4の姿勢が安定し易い。
【0030】
(第2の実施の形態)
本発明に係る印刷装置は図4および図5に示すように構成することができる。これらの図において、図1図3によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図4に示す印刷装置61は、供給胴16が単胴によって構成されていることと、処理胴17からシート4を受け取る搬送機構18が一つの吸着胴62によって構成されていることと、吸着反転方式の反転胴63を使用していることとが第1の実施の形態を採るときとは異なり、その他の構成は第1の実施の形態を採るときと同等となるように構成されている。
【0031】
この実施の形態による吸着胴62と反転胴63は、特開2014-234262号公報に記載されているものと同等のものである。吸着胴62は、2倍胴で、シート4の搬送方向下流側の端部である前端4aをくわえるくわえ爪装置64と、シート4の搬送方向上流側の端部である後端4bが吸着される吸着装置65とを備えている。くわえ爪装置64は、処理胴17のくわえ爪装置25と同等のものである。吸着装置65は、シート4の搬送方向下流側の端部を吸引して吸着胴62の外周面に密着させる。
【0032】
反転胴63は、吸着胴62からシート4を受け取り、シート4の表裏を反転させて供給胴16に送る。この反転胴63は、図5に示すように、外周面に開口する切り欠き66と、切り欠き66内に位置する吸着部材67と反転胴くわえ爪装置68とを有している。吸着部材67の先端部67aにはシート4が吸着される吸着面が設けられている。吸着部材67の基端部67bは、反転胴63に反転胴63の軸線と平行な軸線を中心にして揺動自在に支持されている。
反転胴くわえ爪装置68は、くわえ爪68aと爪台68bとを有し、反転胴63に反転胴63の軸線と平行な軸線を中心にして揺動自在に支持されている。この実施の形態においては、反転胴くわえ爪装置68が本発明でいう「グリップ部材」に相当する。
【0033】
この実施の形態による印刷装置61においては、印刷後のシート4が処理胴17から吸着胴62に送られる。吸着胴62が受け取ったシート4のうち、裏面に印刷が施されるシート4は、吸着胴62から反転胴63に至る反転経路71を経て表裏が反転された状態で供給胴16に戻される。
【0034】
一方、表面4cのみに印刷が施されるシート4や、表裏両面に印刷が施されたシート4は、吸着胴62からデリバリーベルト72(図4参照)を含む排出経路73を経てデリバリー部5に排出される。この実施の形態による吸着胴62は、シート4の表裏が反転される反転経路71と、シート4が排出される排出経路73のいずれか一方の経路に搬送経路を振り分けるシート経路振分装置を構成している。
処理胴17から吸着胴62に渡されたシート4は、搬送方向上流側の端部が吸着装置に吸着された状態で吸着胴62によって搬送される。このシート4の表裏を反転させるためには、先ず、図5(A)に示すように、吸着胴62によって搬送されているシート4の搬送方向上流側の端部を反転胴63の吸着部材67に吸着させる。
【0035】
そして、図5(B)に示すように、シート4の後端4bが反転胴くわえ爪装置68に向かうように吸着部材67を反転胴63に対して揺動させ、さらに、このシート4の後端4bを反転胴くわえ爪装置68によってくわえて保持させる。反転胴くわえ爪装置68は、図5(C)に示すように、シート4が反転胴63の外周面に沿って延びるように反転胴63の回転に合わせて反転胴63に対して揺動し、このシート4の搬送方向下流側の端部が供給胴16に接近したときにシート4を供給胴16に渡す。
このシート4が供給胴16によって搬送されるときには、シート4の表面4cが供給胴16の外に露出するようになる。このため、反転経路71を通って搬送されたシート4は、表裏が反転した状態で供給胴16から処理胴17に搬送されることになる。
【0036】
この実施の形態による反転胴63も連続的に一定の回転速度で回転可能なものである。したがって、この実施の形態においても、シート4を反転させる上で容易に高速化できるとともに、反転時に印刷障害を起こすことがない印刷装置を提供することができる。
【0037】
この実施の形態による搬送機構18は、シート4の搬送方向上流側に位置する後端4bが吸着される吸着胴62によって構成されている。反転胴63は、吸着胴62に吸着されたシート4の後端4bをくわえる反転胴くわえ爪装置68(グリップ部材)を有している。この反転胴くわえ爪装置68は、反転胴63の軸線と平行な軸線を中心にして反転胴63に対して旋回可能に構成されている。このため、この反転胴63によって搬送されるシート4は、反転胴63の外周面に沿うようになるから、搬送時のシート4の姿勢が安定し易い。
【0038】
上述した第1および第2の実施の形態で示した搬送機構18は、反転胴63を含む反転経路71と、シート4を集積するデリバリー部5にシート4を搬送する排出経路73とのいずれか一方の経路に搬送経路を振り分けるシート経路振分装置を有している。このため、シート4の片面のみに印刷を施す運転形態と、シート4の両面に印刷を施す運転形態とを簡単に切り換えることができる。
【0039】
上述した第1、第2の実施の形態で示した供給胴16には、シート4を供給胴16に押し付けながら回転するシート押えロール22が接している。このため、処理胴17に供給されるシート4の温度を所定の温度に上昇させるにあたって、シート4が接触する供給胴16の熱を利用して行うことができるから、シート4の温度むらが生じ難くなる。
【符号の説明】
【0040】
1,61…印刷装置、4…シート、5…デリバリー部、17…処理胴、16…供給胴、18…搬送機構、22…シート押えロール、23…処理装置、41…排出胴(シート経路振分装置)、51,63…反転胴、52,71…反転経路、54,73…排出経路、55…グリップ部材、62…吸着胴(シート経路振分装置)、67…吸着部材(グリップ部材)、68…反転胴くわえ爪装置(グリップ部材)。
図1
図2
図3
図4
図5