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特許7564841樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20241002BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 31/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
B29C31/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022086938
(22)【出願日】2022-05-27
(65)【公開番号】P2023174206
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】砂田 衛
(72)【発明者】
【氏名】林 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森田 健
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193095(JP,A)
【文献】特開2007-044587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/18
B29C 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給対象物に粉粒体状樹脂を供給する樹脂供給機構と、
上型と当該上型に対向する下型とを含み、前記上型と前記下型との間に前記粉粒体状樹脂が配置される成形型と、
前記成形型を型締めして圧縮成形する型締め機構と、を備え、
前記樹脂供給機構は、
外周面に複数の凹部を有する円柱形状であって、軸心を中心に回転する回転体と、
前記粉粒体状樹脂が留められ、前記粉粒体状樹脂を自由落下させて前記回転体に供給する開口が形成された樹脂供給部と、
一端が前記回転体の前記外周面に接触するように配置されたへら状部材と、を有する樹脂成形装置。
【請求項2】
前記樹脂供給部の前記開口は、鉛直方向に沿って見たときに、前記軸心よりも前記回転体の回転方向の側に配置されている請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記軸心を通る鉛直方向の平面である鉛直面と、前記軸心と前記へら状部材の前記外周面への接触部分とを通る接触面とのなす角は45度以下である請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記供給対象物は、離型フィルムと枠状部材とを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記へら状部材は、前記一端から他端に向かう切り欠きを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記回転体の、前記軸心に対して前記回転体の回転によって前記外周面が下方に向かって移動する側に、前記軸心と平行に配置された板状部材を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記板状部材は、上下動可能に構成されている請求項6に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記樹脂供給機構を移動させる移動機構を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
前記供給対象物が載置されるテーブルと、
前記テーブルの下方にあって、前記供給対象物に供給された前記粉粒体状樹脂の重量を計測する計量部と、を更に備える請求項8に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂供給機構を用いて前記供給対象物に前記粉粒体状樹脂を供給する樹脂供給工程と、
前記成形型に成形前基板及び前記供給対象物を供給し、前記型締め機構により前記成形型を型締めして前記圧縮成形を行う成形工程と、を含む樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが固定された基板等は、一般的に樹脂封止することにより電子部品として用いられる。従来、樹脂成形装置において、粉粒体状樹脂を供給するための樹脂供給機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、粉粒体状樹脂(特許文献1では「樹脂材料」)をトラフの端部に形成された樹脂材料供給口から供給対象物(特許文献1では「樹脂材料移送トレイ」)に供給する樹脂供給機構(特許文献1では「樹脂材料供給装置」)を備えた樹脂成形装置が記載されている。具体的には、トラフを振動させて樹脂材料供給口から粉粒体状樹脂を落下させることにより、粉粒体状樹脂を単位時間当たりの供給量を一定にして供給対象物に供給する。供給対象物は樹脂材料供給口に対して相対移動し、相対位置が同じになる位置を2回以上通過することなく供給開始位置に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-65335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂成形品を精度よく製造するためには、粉粒体状樹脂を精度よく供給対象物に供給する必要がある。このため、樹脂材料供給口から供給される粉粒体状樹脂の単位時間当たりの供給量は小さくなる。また、特許文献1においては、樹脂材料供給口の開口面積は供給対象物の大きさに比べて小さいので、供給対象物の全体に粉粒体状樹脂を供給するためには多大な時間を要する。供給対象物のサイズが大判の場合には、供給対象物を相対移動させるために更に時間を要する。
【0006】
そこで、粉粒体樹脂の供給の精度を維持しながら、単位時間当たりの供給量を大きくして供給時間を短縮することができる樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂成形装置の特徴構成は、供給対象物に粉粒体状樹脂を供給する樹脂供給機構と、上型と当該上型に対向する下型とを含み、前記上型と前記下型との間に前記粉粒体状樹脂が配置される成形型と、前記成形型を型締めして圧縮成形する型締め機構と、を備え、前記樹脂供給機構は、外周面に複数の凹部を有する円柱形状であって、軸心を中心に回転する回転体と、前記粉粒体状樹脂が留められ、前記粉粒体状樹脂を自由落下させて前記回転体に供給する開口が形成された樹脂供給部と、一端が前記回転体の前記外周面に接触するように配置されたへら状部材と、を有する点にある。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の特徴は、上記に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記樹脂供給機構を用いて前記供給対象物に前記粉粒体状樹脂を供給する樹脂供給工程と、前記成形型に成形前基板及び前記供給対象物を供給し、前記型締め機構により前記成形型を型締めして前記樹脂成形品の樹脂成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉粒体樹脂の供給の精度を維持しながら、単位時間当たりの供給量を大きくして供給時間を短縮することができる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る樹脂成形装置を表す模式図である。
図2】樹脂成形装置の型締め機構を表す模式図である。
図3】第1実施形態に係る樹脂供給機構を表す模式図である。
図4】樹脂供給機構のX方向視の模式図である。
図5】回転体の変形例を示す図である。
図6】回転体の変形例を示す図である。
図7】回転体の変形例を示す図である。
図8】回転体の変形例を示す図である。
図9】回転体の変形例を示す図である。
図10】粗粒がスクレーパを持ち上げた状態を表す図である。
図11】スクレーパの変形例を示す図である。
図12】第2実施形態に係る樹脂供給機構を表す模式図である。
図13】第2実施形態に係る第一移動機構を表す模式図である。
図14】粉粒体状樹脂の重量を計測する手順を示す図である。
図15】粉粒体状樹脂の重量を計測する手順を示す図である。
図16】第3実施形態に係る第一移動機構及び第二移動機構を表す模式図である。
図17】第4実施形態に係る樹脂供給機構を表す模式図である。
図18】樹脂保持機構を表す平面図である。
図19】樹脂保持機構を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、樹脂成形装置の一例として、図1に示すように、樹脂供給モジュール2を備えた樹脂成形装置Dについて説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0012】
〔装置構成〕
半導体チップが固定された基板等は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術としては、コンプレッション方式(圧縮成形)やトランスファ方式等が挙げられる。このコンプレッション方式の1つとして、離型フィルムに粉粒体状の樹脂を供給した後、成形型の下型に離型フィルムを載置し、離型フィルム上の粉粒体状樹脂を溶融させた溶融樹脂に成形対象物を浸し入れて樹脂成形する樹脂封止方法が挙げられる。本実施形態における樹脂成形装置Dはコンプレッション方式を採用しており、樹脂供給モジュール2は、離型フィルムF(供給対象物の一例)に粉粒体状樹脂を供給する装置である。以下において、粉粒体状樹脂が供給される供給対象物を離型フィルムFとし、半導体チップ(以下、「チップ」と称する場合がある)が固定された基板Sを成形対象物の一例として、重力方向を下方向、重力方向とは反対方向を上方向として説明する。なお、図1に示すZ方向が上下方向であり、後述する樹脂供給モジュール2、圧縮成形モジュール3、基板供給収容モジュール4の配列方向がX方向であり、X方向とZ方向とに垂直な方向(各モジュールの奥行方向)がY方向である。なお、電子素子としては、半導体チップ以外に、抵抗素子、キャパシタ素子等が挙げられる。また、粉粒体状樹脂には、粉体状樹脂や、粉体状樹脂よりも粒度が大きい粒体状樹脂だけでなく、更に粒度が大きい顆粒状樹脂も含むものとする。粉粒体状樹脂は常温で固体状の樹脂であり、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、本実施形態においては、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0013】
図1に示された樹脂成形装置Dは、基板供給収容モジュール4と、3つの圧縮成形モジュール3(以下、3つの圧縮成形モジュール3を区別するときは、それぞれを圧縮成形モジュール3A,3B,3Cと称する)と、樹脂供給モジュール2とを、構成要素として備える。構成要素である基板供給収容モジュール4と、圧縮成形モジュール3A,3B,3Cと、樹脂供給モジュール2とは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。なお、本実施形態における圧縮成形モジュール3は3つで構成されているが、1つ若しくは2つ、又は4つ以上で構成されてもよい。
【0014】
基板供給収容モジュール4には、樹脂封止前のチップが固定された樹脂封止前基板Sa(基板Sの一態様。成形前基板の一例)を収容する第一収容部43と、樹脂封止後の樹脂封止済基板Sb(基板Sの一態様。樹脂成形品の一例)を収納する第二収容部44と、樹脂封止前基板Sa及び樹脂封止済基板Sbを受け渡しする基板載置部41と、樹脂封止前基板Sa及び樹脂封止済基板Sbを搬送する基板ローダ42とが設けられる。基板載置部41は、基板供給収容モジュール4内において、Y方向に移動する。基板ローダ42は、基板供給収容モジュール4、及びそれぞれの圧縮成形モジュール3内において、X方向及びY方向に移動する。所定位置S1は、基板ローダ42が動作しない状態において待機する位置である。
【0015】
基板供給収容モジュール4は、更に不図示の検査機構を含んでいる。検査機構は、圧縮成形モジュール3における成形対象物である樹脂封止前基板Saにおけるチップの存在領域を検査する。検査機構は、レーザ変位計のスキャンにより、検査を予定されたチップの存在領域において、チップが実際に存在するか否かを検査し、チップが存在する場所と存在しない場所とを記憶する。なお、検査機構は、可視光カメラ等で樹脂封止前基板Saを撮影し、この撮像画像に基づいて樹脂封止前基板Saにおけるチップの存在領域を検査してもよい。
【0016】
各圧縮成形モジュール3には、昇降可能な下型LMと、下型LMに相対向して配置された上型UM(図2参照)とが設けられる。上型UMと下型LMとは成形型Mを構成する。各圧縮成形モジュール3は、上型UMと下型LMとを型締め及び型開きする型締め機構35(図1で二点鎖線で示す円形の部分)を有する。離型フィルムFと粉粒体状樹脂Rとが供給される下型キャビティMCが下型LMに設けられる(図2参照)。下型LMと上型UMとは、相対的に移動して型締め及び型開きすることができる。
【0017】
樹脂供給モジュール2には、ベース27とベース27上に設置された樹脂撒きテーブル22とボールねじ29とを含むX-Yテーブルと、樹脂撒きテーブル22に離型フィルムFを供給する離型フィルム供給機構25と、枠体23(供給対象物の一例)の下面や内側面をクリーニングするクリーニング機構24と、枠体23を搬送する樹脂ローダ26と、枠体23内の離型フィルムFに粉粒体状樹脂を投入する樹脂搬送機構20と、樹脂供給機構21とが設けられる。樹脂撒きテーブル22は、樹脂供給モジュール2内においてX方向及びY方向に移動可能に構成されている。樹脂ローダ26は、樹脂供給モジュール2及びそれぞれの圧縮成形モジュール3内において、X方向及びY方向に移動可能に構成されている。所定位置M1は、樹脂ローダ26が動作しない状態において待機する位置である。
【0018】
制御部5は、樹脂成形装置Dの作動を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムで構成されており、コンピュータのCPU、ASIC等のプロセッサにより実行される。本実施形態においては、制御部5は、樹脂供給モジュール2の樹脂供給機構21を制御して、粉粒体状樹脂の離型フィルムFへの供給量(重量)の精度を高める。報知部6は、樹脂成形装置Dの作動を報知し、基板供給収容モジュール4の前面に配置されたディスプレイや警報ランプ等で構成されている。
【0019】
〔成形型の構成〕
図2に示すように、本実施形態における圧縮成形モジュール3は、下部固定盤31と上部固定盤33とが、対向配置された平板状部材32により一体化されたプレスフレームで構成されている。なお、下部固定盤31と上部固定盤33とは、平板状部材32の代わりに、4つのタイバー(柱状部材)で連結されていてもよい。下部固定盤31と上部固定盤33の間には可動プラテン34が設けられている。可動プラテン34は、平板状部材32に沿って上下に移動可能である。下部固定盤31の上には、ボールねじ等により可動プラテン34を上下に移動させる型締め機構35が設けられている。型締め機構35は、可動プラテン34を上方に移動させることにより成形型Mの型締めを行い、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Mの型開きを行うことができる。型締め機構35の駆動源は、特に限定されないが、例えば、サーボモータ等の電動モータ(不図示)を用いることができる。
【0020】
成形型Mとしての上型UM及び下型LMは、互いに対向して配置されており、いずれも金型等で構成されている。上部固定盤33の下面には上部ヒータ37を含む上型ホルダ39が配置され、上型ホルダ39の下に上型UMが取り付けられている。上型UMには、基板Sを配置するための上型基板セット部(不図示)が設けられており、上型UMの下面には、チップ等が固定された基板S(樹脂封止前基板Sa)が取り付けられる。可動プラテン34の上面には下部ヒータ36を含む下型ホルダ38が配置され、下型ホルダ38の上に下型LMが設けられている。下型キャビティMCに吸引機構により吸引された離型フィルムFが保持されることにより、樹脂供給機構21が離型フィルムF上に供給した粉粒体状樹脂Rが下型キャビティMCに供給される。型締め機構35により成形型Mを型締めすると共に下部ヒータ36で下型LMを加熱することで、下型キャビティMC内の粉粒体状樹脂Rが溶融し、硬化する。つまり、樹脂封止前基板Sa及び離型フィルムFを上型UMと下型LMとの間に配置した状態で、型締め機構35により成形型Mを型締めし、樹脂封止をする。これにより、樹脂封止前基板Sa(成形前基板)に固定されたチップ等は、下型キャビティMC内で樹脂封止されて樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)となる。
【0021】
〔第1実施形態〕
次に、第1実施形態に係る樹脂供給機構21について説明する。図3図4には、樹脂供給モジュール2の樹脂搬送機構20、樹脂供給機構21、X-Yテーブルの概略図が示されている。
【0022】
樹脂搬送機構20は、図3に示すように、樹脂貯蔵部200と、励振部202と、樹脂搬送路204と、第一樹脂落下口207とを有する。樹脂貯蔵部200は、粉粒体状樹脂Rを貯蔵する。樹脂搬送路204は、一端が樹脂貯蔵部200の底部近傍で樹脂貯蔵部200と連通され、他端には樹脂供給機構21の樹脂貯留部210に粉粒体状樹脂Rを供給する開口である第一樹脂落下口207が設けられている。励振部202は、制御部5の指示に応じて、樹脂貯蔵部200と樹脂搬送路204とを振動させる。励振部202により樹脂貯蔵部200と樹脂搬送路204とに振動が加えられることにより、樹脂貯蔵部200に貯蔵された粉粒体状樹脂Rが樹脂搬送路204上を移動し、断面矩形状の第一樹脂落下口207から樹脂供給機構21の樹脂貯留部210に向かって落下する。このとき、励振部202は、樹脂貯蔵部200と樹脂搬送路204とを振動させる。
【0023】
樹脂供給機構21は、樹脂貯留部210、重量計測部212、樹脂供給部220、回転体230、回転体駆動部234、ガイド240、ガイド駆動部248を有する。
【0024】
樹脂貯留部210は、樹脂貯蔵部200から樹脂搬送路204を経由して供給された粉粒体状樹脂Rが一時的に貯留され、後述する樹脂供給部220に粉粒体状樹脂Rを供給する。樹脂貯留部210は、上部に開口である第一樹脂投入口210Aが形成され、下部に開口である第二樹脂落下口210Bが形成されている。樹脂貯蔵部200に貯蔵され第一樹脂落下口207から自由落下した粉粒体状樹脂Rは、第一樹脂投入口210Aから樹脂貯留部210内に供給される。すなわち、樹脂貯留部210は、樹脂搬送機構20の第一樹脂落下口207の鉛直下方に配置されている。樹脂貯留部210に一時貯留された粉粒体状樹脂Rは、第二樹脂落下口210Bから自由落下して樹脂供給部220に供給される。本実施形態においては、第一樹脂投入口210Aと第二樹脂落下口210Bとは断面円形状を有しており、第二樹脂落下口210Bの内径は第一樹脂投入口210Aの内径よりも小さい。
【0025】
第二樹脂落下口210Bにはチョーク式絞り弁によるシャッター(不図示)が配置されている。シャッターは第二樹脂落下口210Bを塞ぐことができ、これにより、樹脂貯留部210に貯留された粉粒体状樹脂Rが落下せず、樹脂貯留部210内に粉粒体状樹脂Rが貯留された状態を維持することができる。また、シャッターを閉じることにより、樹脂貯留部210の内部に粉粒体状樹脂Rが残存した状態で成形に使用する粉粒体状樹脂Rの種類を変更する際に、樹脂供給部220に粉粒体状樹脂Rを落下させることなく樹脂貯留部210を樹脂供給機構21から取り外すことができる。
【0026】
本実施形態の樹脂貯留部210は、樹脂貯留部210を振動させる機能は有しておらず、樹脂搬送機構20により供給された粉粒体状樹脂Rは、自重により第二樹脂落下口210Bに向かう。しかし、樹脂貯留部210の内周面に付着した粉粒体状樹脂Rを落下させるために樹脂貯留部210を振動させる振動機構を別途設けていてもよい。
【0027】
重量計測部212は、樹脂貯留部210の重量を計測することにより、内部に貯留されている粉粒体状樹脂Rの重量を計測する。計測した粉粒体状樹脂Rの重量データは制御部5に送られる。
【0028】
樹脂供給部220は、樹脂貯留部210から供給された粉粒体状樹脂Rを回転体230に供給する。すなわち、樹脂供給部220は、第二樹脂落下口210Bの鉛直下方に配置されている。樹脂供給部220は中空の箱型形状を有しており、中空の空間221内に粉粒体状樹脂Rが供給される。本実施形態において、樹脂供給部220は、上板225と、前板226と、後板227と、2枚の側板228(図4参照)とで構成されている。図3に示すように、樹脂供給部220は底板を有しておらず、底側には、前板226、後板227、及び、2枚の側板228により、矩形状の第三樹脂落下口223(開口の一例)が形成されている。上板225には、第二樹脂落下口210Bから落下した粉粒体状樹脂Rを空間221内に供給するための断面円形状の第二樹脂投入口222が形成されている。すなわち、粉粒体状樹脂Rは、第二樹脂投入口222から供給され、第三樹脂落下口223から排出される。本実施形態においては、図3に示すように、第二樹脂落下口210Bの先端は、第二樹脂投入口222に入り込んでいる。
【0029】
本実施形態の樹脂供給部220において、後板227の上側は鉛直方向と平行に配置されており、後板227の中程で前板226に近づく方向に折り曲げられている。これにより、後板227の下側は鉛直方向に対して傾斜している。前板226は全体として平板状であり、下方に向かうほど後板227に近づくように鉛直方向に対して傾斜して配置されている。第三樹脂落下口223は、2枚の側板228間の内寸が前板226と後板227との間の内寸よりも長くなる矩形状に構成されている。
【0030】
前板226の下端には、ゴムやエラストマ等の弾性を有する材料からなる板状のスクレーパ224(へら状部材の一例)が取り付けられている。スクレーパ224は前板226から下方に突出した状態で前板226に取り付けられている。樹脂供給部220は、回転体230に対して、スクレーパ224の一端(下端)が回転体230の外周面231(側面)に接触し、かつ、後板227が回転体230の外周面231との間に僅かな間隙を有するように配置される。
【0031】
回転体230は、円柱形状を有しており、外周面231に複数の凹部232が形成されている。本実施形態においては、凹部232の一例として、回転体230の回転軸心X(軸心の一例。以下、単に「軸心X」ともいう)と平行かつ回転体230の軸心Xに平行な方向の長さ(以下、回転体230の全長ともいう)と同じ長さの複数の溝232aが形成されている(図4参照)。回転体230は、モータ等からなる回転体駆動部234により、軸心Xを中心に回転する。回転体230は、樹脂、セラミック、金属等の任意の材料を用いることができるが、異物発生防止の観点から、セラミックが望ましい。
【0032】
回転体230は、樹脂供給部220の第三樹脂落下口223から落下した樹脂が供給される。すなわち、回転体230は、樹脂供給部220の第三樹脂落下口223の鉛直下方に配置されている。具体的には、回転体230の全長は、樹脂供給部220の2枚の側板228間の内寸と等しいか僅かに短く、回転体230は、2枚の側板228間に配置されている(図4参照)。また、後板227の下端は、回転体230の軸心Xの鉛直上方か軸心Xよりも回転方向側に位置するように配置されている。さらに、スクレーパ224の回転体230の外周面231への接触部分224aは、後板227よりも更に回転方向側に位置している。すなわち、回転体230は、樹脂供給部220の後板227からスクレーパ224(前板226)に向かう方向に回転する。第三樹脂落下口223は、鉛直方向に沿って見たときに、全体が軸心Xよりも回転体230の回転方向の側に配置されている。なお、接触部分224aとは、スクレーパ224と回転体230の外周面231とが接触している線状の部分である。
【0033】
スクレーパ224は、軸心Xを通る鉛直方向の平面である鉛直面pと、軸心Xとへら状部材の接触部分224aとを通る接触面qとのなす角θが0度以上で45度以下、好ましくは30度以下となるように配置されている。このように、回転体230は、第三樹脂落下口223に近接した位置に配置されており、回転体230の外周面231と第三樹脂落下口223との間にはほとんど隙間がない。樹脂貯留部210から樹脂供給部220に供給された粉粒体状樹脂Rは空間221内で、軸心Xに沿う方向の全体に広がった上で第三樹脂落下口223から落下するので、回転体230に供給される粉粒体状樹脂Rは、溝232aの長さ方向全体に供給される。
【0034】
回転体230が回転している際には、任意の溝232aが第三樹脂落下口223と対向したとき、すなわち、当該溝232aが軸心Xに対して鉛直上方に位置したときに溝232a全体に粉粒体状樹脂Rが供給される。このとき、粉粒体状樹脂Rは、溝232a全体に加えて外周面231よりも上方(径方向外側)に盛り上がるように供給される。その後、回転体230が回転して当該溝232aがスクレーパ224の接触部分224aに到達すると、溝232aから盛り上がった粉粒体状樹脂Rは余剰の樹脂となり、スクレーパ224により擦切られる。これにより、接触部分224aを通過した後の溝232aには、溝232aの容積と同じ体積の粉粒体状樹脂Rが残り、回転体230の回転により当該溝232aが軸心Xよりも下方にくると、溝232a内の粉粒体状樹脂Rは溝232aから自由落下する。このような構成により、常に一定量の粉粒体状樹脂Rを落下させることができる。なお、回転体230に振動を加えて落下させたりはしていない。
【0035】
ガイド240は、回転体230の溝232aから落下した粉粒体状樹脂Rを第四樹脂落下口242から離型フィルムF上に落下させるために設けられている。ガイド240は角筒形状を有しており、ガイド240の内部空間241内に回転体230の少なくとも軸心Xよりも下側の部分が入り込んでいる。図3においては、回転体230のほぼ全部が内部空間241に入り込んでいる。本実施形態において、ガイド240は、前板246(板状部材の一例)、後板247、2枚の側板(不図示)とで構成されている。第四樹脂落下口242は、前板246、後板247、及び、2枚の側板により形成されており、2枚の側板間の内寸が前板246と後板247との間の内寸よりも長くなる矩形状に構成されている。第四樹脂落下口242の軸心Xに沿う方向の長さ(2枚の側板間の内寸)は、回転体230の全長に等しい、又はわずかに大きい。
【0036】
ガイド240において、後板247の上側は鉛直方向に平行に配置されており、後板247の中程で前板246に近づく方向に折り曲げられ、更に下端近傍で再び鉛直方向に平行になるように折り曲げされている。これにより、後板247の下側は、下端近傍を除いて鉛直方向に対して傾斜している。前板226は全体として平板状であり、鉛直方向に平行に配置されている。
【0037】
ガイド240は、例えばエアシリンダからなるガイド駆動部248により、鉛直方向に沿って上下に移動可能に構成されている。回転体230や樹脂供給部220は、ガイド240の上下動には連動していない。
【0038】
このように、本実施形態に係る樹脂供給機構21は、従来の樹脂材料供給口から離型フィルムF上に粉粒体状樹脂Rを供給する構成と比較して、軸心Xに平行な方向の長さである全長が長い回転体230を有しているので、一度に溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給することができる。したがって、従来の樹脂供給機構と比較して、単位時間当たりの粉粒体状樹脂Rの供給量を多くすることができる。これにより、例えば、従来は離型フィルムFを数往復させて粉粒体状樹脂Rを供給するような大きさの基板であっても、本実施形態に係る樹脂供給機構21によれば、一方向だけに一回(片道)離型フィルムFを移動させるだけで粉粒体状樹脂Rを供給することができるので、離型フィルムF上に粉粒体状樹脂Rを供給する時間を大幅に短縮することができる。
【0039】
回転体230が回転すると、スクレーパ224により溝232aから盛り上がった余剰の粉粒体状樹脂Rは擦切られるので、スクレーパ224を通過した後の溝232aには、その容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rが常に供給されている。回転体230が連続して回転することにより、溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを継続して供給することができる。このように、本実施形態に係る樹脂供給機構21においては、粉粒体状樹脂Rの供給精度を維持しつつ、単位時間当たりの供給量を多くすることができ、離型フィルムF上への粉粒体状樹脂Rの供給時間を短縮することができる。
【0040】
〔樹脂成形品の製造方法〕
次に、樹脂成形品の製造方法について、図1図3を用いて説明する。
【0041】
図1を参照して、樹脂成形装置Dを用いて基板S(樹脂封止前基板Sa)を樹脂封止する動作について説明する。以下の各動作は、制御部5により制御される。まず、基板供給収容モジュール4において、第一収容部43から基板載置部41に樹脂封止前基板Saを送り出す。次に、基板ローダ42を所定位置S1から-Y方向に移動させて基板載置部41から樹脂封止前基板Saを受け取る。このとき、検査機構は、成形対象物である基板S(樹脂封止前基板Sa)におけるチップ等の存在領域を検査しておく。制御部5は、少なくとも成形対象物である基板Sのサイズや基板Sにおけるチップ等の存在領域に基づいて、枠体23内の樹脂供給領域における粉粒体状樹脂Rの目標供給量、目標供給位置、及び/又は樹脂供給軌道等を予め演算(又は設定)する。そして、基板ローダ42を所定位置S1に戻す。次に、例えば、圧縮成形モジュール3Bの所定位置P1まで+X方向に基板ローダ42を移動させる。次に、圧縮成形モジュール3Bにおいて、基板ローダ42を-Y方向に移動させて下型LM上の所定位置C1に停止させる。次に、基板ローダ42を上動させて樹脂封止前基板Saを上型UMに固定する。基板ローダ42を基板供給収容モジュール4の所定位置S1まで戻す。
【0042】
次に、樹脂供給モジュール2において、離型フィルム供給機構25から樹脂撒きテーブル22に供給された離型フィルムFを所定の大きさにカットする。次に、樹脂ローダ26を所定位置M1から-Y方向に移動させて、クリーニング機構24によってクリーニングされた枠体23を受け取る。次に、樹脂ローダ26を更に-Y方向に移動させて、樹脂撒きテーブル22に吸着された離型フィルムF上に枠体23を載置する。そして樹脂ローダ26を元の位置M1に戻す。次に、樹脂撒きテーブル22を+X方向に移動させて、枠体23を樹脂供給機構21の下方の所定位置に停止させる。次に、樹脂撒きテーブル22(枠体23)をX方向及びY方向に移動させることによって、樹脂供給機構21から枠体23内の離型フィルムFに所定量の粉粒体状樹脂Rを供給する(樹脂供給工程)。そして樹脂撒きテーブル22を元の位置に戻す。
【0043】
樹脂供給工程において、樹脂供給機構21は、図3に示すように、制御部5からの制御により、目標供給量に応じた重量の粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給する。まず、樹脂搬送機構20の励振部202が振動することにより、樹脂貯蔵部200に貯蔵された粉粒体状樹脂Rが樹脂搬送路204上を搬送されて、第一樹脂落下口207から樹脂供給機構21の樹脂貯留部210に供給される。このとき、樹脂貯留部210の不図示のシャッターは閉じている。そして、所定量の樹脂が貯留されたことが重量計測部212により計測され、その重量データが制御部5に送られると、制御部5の制御により、励振部202が停止して樹脂搬送機構20からの粉粒体状樹脂Rの供給が停止されると共に、シャッターが開いて粉粒体状樹脂Rが第二樹脂落下口210Bから樹脂供給部220に供給される。
【0044】
重量計測部212での粉粒体状樹脂Rの減少量の計測に基づいて樹脂供給部220に所定量の粉粒体状樹脂Rが供給されたことが計測されると、ガイド駆動部248により、ガイド240は下方に移動し、図3に示すように、第四樹脂落下口242が枠体23の上面(天面)よりも下方(離型フィルムFに近接する方向)に位置する。その後、制御部5は、回転体駆動部234を作動させる。これにより回転体230が回転を開始する。回転体230の回転開始時には、回転体230の外周面231に形成された溝232a全体に加えて外周面231よりも上方(径方向外側)に盛り上がるように供給されている。
【0045】
回転体230が回転して粉粒体状樹脂Rが供給された溝232aがスクレーパ224の接触部分224aを通過すると、外周面231から盛り上がった余剰の粉粒体状樹脂Rはスクレーパ224により擦切られ、接触部分224aを通過した後の溝232aには、溝232aの容積と同じ体積の粉粒体状樹脂Rが残る。そして、擦切られた粉粒体状樹脂Rを含む樹脂供給部220内の粉粒体状樹脂Rは、回転体230の回転方向の後方にある次の溝232a内に供給される。スクレーパ224の接触部分224aを通過した溝232a内の粉粒体状樹脂Rは、回転体230の回転により当該溝232aが軸心Xよりも下方にくると、溝232a内からガイド240に向けて自由落下する。
【0046】
ガイド240内に溝232aから落下した粉粒体状樹脂Rは、第四樹脂落下口242から落下して離型フィルムF上に供給される。このとき、制御部5の制御により、X-Yテーブルの樹脂撒きテーブル22は予め演算された樹脂供給軌道に沿うように移動する。これにより、目標供給位置に目標供給量の粉粒体状樹脂Rが供給される。なお、制御部5は、成形対象物である基板Sのサイズや基板Sにおけるチップ等の存在領域、樹脂貯留部210からの粉粒体状樹脂Rの単位時間当たりの減少量、回転体230の回転数、及び、溝232aの容積に基づく、単位時間当たりの離型フィルムFへの粉粒体状樹脂Rの供給量についての算定テーブル又は計算式を記憶しており、これに基づいて、粉粒体状樹脂Rの目標供給量、目標供給位置、及び樹脂供給軌道を演算している。
【0047】
離型フィルムFへの粉粒体状樹脂Rの供給が完了したら、ガイド240は第四樹脂落下口242が枠体23の上面よりも上方に位置するように上昇する。次に、樹脂ローダ26を所定位置M1から-Y方向に移動させて、樹脂撒きテーブル22上に載置されている粉粒体状樹脂Rが供給された離型フィルムFを受け取り、樹脂ローダ26を元の位置M1に戻す(図1参照)。次に、樹脂ローダ26を圧縮成形モジュール3Bの所定位置P1まで-X方向に移動させる。次に、圧縮成形モジュール3Bにおいて、樹脂ローダ26を-Y方向に移動させて下型LM上の所定位置C1に停止させる。次に、樹脂ローダ26を下降させて、粉粒体状樹脂Rが供給された離型フィルムFを下型キャビティMCに供給する。樹脂ローダ26を所定位置M1まで戻す。
【0048】
次に、圧縮成形モジュール3Bにおいて、図2に示すように、型締め機構35によって下型LMを上方に移動させ、上型UMと下型LMとを型締めする。所定時間が経過した後、下型LMを下方に移動させ、上型UMと下型LMとを型開きする(成形工程)。次に、基板供給収容モジュール4の所定位置S1から下型LM上の所定位置C1に基板ローダ42を移動させて、樹脂封止済基板Sbを受け取る。次に、基板ローダ42を、所定位置S1を経由して基板載置部41の上方まで移動させ、基板載置部41に樹脂封止済基板Sbを受け渡す。基板載置部41から第二収容部44に樹脂封止済基板Sbを収納する。このようにして、樹脂封止が完了する。制御部5は、離型フィルムF上の粉粒体状樹脂Rの供給を継続するか否かを判定し、樹脂供給を継続する場合は上記の制御を再度実行し、樹脂供給を継続しない場合は制御を終了する。
【0049】
〔回転体の凹部の変形例〕
上記実施形態においては、回転体230の外周面231の凹部232として、軸心Xに平行な複数の溝232aを形成したが、これに限られるものではない。例えば、図5に示すように、軸心Xに平行な方向と軸心Xに垂直な方向の二方向に格子状の溝232aを有していてもよい。また、図6に示すように、格子状の溝232aは、軸心Xに対してそれぞれ傾斜する方向に形成されていてもよい。さらには、図7に示すように、軸心Xに対して傾斜する方向に平行なヘリカル状の複数の溝232aが形成されてもよいし、図8に示すように、ヘリカル状の溝232aが二方向に形成されていてもよい。また、図9に示すように、凹部232として、溝232aの代わりに複数のディンプル232bを有していてもよい。このように、凹部232の形状は粉粒体状樹脂Rの供給量や供給精度に応じて任意に設定することができる。凹部232をディンプル232bにすることにより、隣接するディンプル232b同士の間隔が隣接する溝232a同士の間隔に比べて小さくなり、回転体230を回転させたときに、粉粒体状樹脂Rを連続して落下させることができるので、より精度よく、粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給することができる。
【0050】
〔スクレーパの形状の変形例〕
本実施形態において、スクレーパ224は平板状である。しかし、粉粒体状樹脂Rの中に何らかの理由により通常よりも粒径の大きい粗粒R1が混入した場合、図10に示すように、粗粒R1がスクレーパ224と回転体230の外周面231との間に入り込むことがある。粗粒R1がスクレーパ224と回転体230の外周面231との間に入り込むと、スクレーパ224を持ち上げてしまい、粗粒R1の両側から粗粒R1より粒径の小さい通常粒径の粉粒体状樹脂Rがスクレーパ224をすり抜けてしまうおそれがある。粉粒体状樹脂Rがスクレーパ224をすり抜けると、離型フィルムF上に目標供給量より多い粉粒体状樹脂Rが供給されてしまう不都合が生じる。
【0051】
このような不都合を抑制するために、スクレーパ224は、図11に示すように、一端から他端に向かう所定長さの切り欠き224cを形成して複数のスクレーパ部分224bを有するように構成されてもよい。すなわち、スクレーパ224はいわゆるのれん形状を有する。スクレーパ224の一端とは、回転体230の外周面231に接触する端部である。スクレーパ224に切り欠き224cを形成して複数のスクレーパ部分224bを設けることにより、粉粒体状樹脂Rに粗粒R1が混入してスクレーパ224と回転体230の外周面231との間に入り込んだとしても、粗粒R1により持ち上げられるスクレーパ224は当該粗粒R1が入り込んだスクレーパ部分224bだけとなる。その結果、他のスクレーパ部分224bは接触部分224aに接触したまま持ち上がらず、粗粒R1の影響を受けない。これにより、粗粒R1の両側からの通常粒径の粉粒体状樹脂Rのスクレーパ224からのすり抜けを最小限、若しくは、すり抜けないようにすることができ、離型フィルムF上に目標供給量より多い粉粒体状樹脂Rが供給される不都合を抑制することができる。
【0052】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る樹脂供給機構21について図12図13を用いて説明する。本実施形態の樹脂供給機構21においては、樹脂供給機構21の全体をX方向に移動させることが可能な第一移動機構250(移動機構の一例)が設けられている。また、本実施形態の樹脂供給モジュール2は、ベース27、ボールねじ29を有しておらず、樹脂撒きテーブル22(テーブルの一例)のみを有している。樹脂撒きテーブル22は、X-Y方向に移動しない。その他の構成は第一実施形態と共通であるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
第一移動機構250は、第一駆動部252と、一対の第一レール254とを含む。一対の第一レール254はX方向に沿って延びると共に樹脂供給機構21を支持している。第一駆動部252は、モータ等からなる。樹脂供給機構21は、第一駆動部252により、第一レール254上を+X方向と-X方向とに移動可能に構成されている。
【0054】
上述したように、本実施形態においては、X-Y方向に移動しない樹脂撒きテーブル22を有すると共に、樹脂撒きテーブル22に載置された離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量を計測する重量計測機構270を有している。重量計測機構270を用いた粉粒体状樹脂Rの重量の計測方法について、図14図15を用いて詳述する。
【0055】
重量計測機構270は、4本のロッド272と、粉粒体状樹脂Rの重量を計測する計量器274(計量部の一例)とを有している。図14(a)に示すように、樹脂撒きテーブル22は4本(2本は不図示)のロッド272に支持されている。計量器274は樹脂撒きテーブル22の下に、樹脂撒きテーブル22と間隙を有して配置されている。
【0056】
次に、図14(b)に示すように、樹脂撒きテーブル22の上に離型フィルムFと枠体23とを配置する。このとき、離型フィルムFは、樹脂撒きテーブル22上に載置されているだけであり、エアによる吸着はされていない。計量器274は、依然として樹脂撒きテーブル22と間隙を有している。これは、枠体23を樹脂撒きテーブル22上に載置する際の衝撃が計量器274に伝わり、計量器274に悪影響を及ぼすのを防止するためである。
【0057】
次に、ロッド272の先端を下降させて、樹脂撒きテーブル22の下面を計量器274に接触させる。これにより、計量器274は、樹脂撒きテーブル22、枠体23、及び、離型フィルムFの合計の重量を計測することができる。このとき計量器274で計測された重量は制御部5に送られて、粉粒体状樹脂Rを供給する前の基準の重量となる。そして、図14(c)に示すように、樹脂供給機構21をX方向に移動させつつ粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給する。このときの計量器274による重量増加分が離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量となる。制御部5は、この粉粒体状樹脂Rの重量が目標供給量に等しいことを確認する。
【0058】
そして、図14(d)に示すように、ロッド272の先端を上昇させて樹脂撒きテーブル22を計量器274から離間させる。その後、枠体23と離型フィルムFとは移送部28によりチャックされ、樹脂ローダ26に移送される。
【0059】
次に、図15を用いて、エアの吸引により離型フィルムFを吸着する構成を有する樹脂撒きテーブル22を用いたときの重量計測機構270による粉粒体状樹脂Rの重量の計測方法を説明する。
【0060】
図15(a)に破線で示すように、樹脂撒きテーブル22には、離型フィルムFを吸着するためにエアを吸引する吸引路22aが形成されている。また、4本のロッド272の先端には、樹脂撒きテーブル22を支持すると共に、吸引路22aに接続されて不図示のマイクロイジェクタ又は真空ポンプ等の吸引源によりエアを吸引する吸引部273が設けられている。計量器274は樹脂撒きテーブル22の下に、樹脂撒きテーブル22と間隙を有して配置されている。このときは、吸引源はオフになっており、エアの吸引は行われていない。
【0061】
次に、図15(b)に示すように、樹脂撒きテーブル22の上に離型フィルムFと枠体23とを配置し、吸引源をオンにして、離型フィルムFをエア吸引により樹脂撒きテーブル22に吸着させる。このとき、計量器274は、依然として樹脂撒きテーブル22と間隙を有している。
【0062】
次に、吸引源をオフにしてエアによる吸引を停止させた状態で、ロッド272の先端の吸引部273を下降させて、樹脂撒きテーブル22の下面を計量器274に接触させる。このとき計量器274で計測された重量は制御部5に送られて、粉粒体状樹脂Rを供給する前の基準の重量となる。そして、図15(c)に示すように、樹脂供給機構21をX方向に移動させつつ粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給する。このときの、計量器274による重量増加分が離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量となる。制御部5は、この粉粒体状樹脂Rの重量が目標供給量に等しいことを確認する。
【0063】
そして、図15(d)に示すように、ロッド272の先端を上昇させて樹脂撒きテーブル22を計量器274から離間させる。その後、枠体23と離型フィルムFとは移送部28によりチャックされ、樹脂ローダ26に移送される。
【0064】
このように、樹脂撒きテーブル22を固定した状態で、樹脂供給機構21を移動させて粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給することにより、離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量を計量器274により直接計測することができる。したがって、樹脂貯留部210の重量に基づいて離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量を間接的に計測する場合と比較して、離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量をより正確に計測することができる。
【0065】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態に係る樹脂供給機構21について図12図16を用いて説明する。本実施形態の樹脂供給機構21においては、供給対象物としての離型フィルムFと枠体23に対して、樹脂供給機構21の全体をX方向に移動させることが可能な第一移動機構250(移動機構の一例、図12参照)に加え、樹脂供給機構21の全体をY方向に移動させることが可能な第二移動機構260(移動機構の一例、図16参照)が設けられている。図16に示される実施形態では、第一移動機構250は、樹脂供給機構21を支持するベース256を含み、ベース256には開口256aが設けられ、樹脂供給機構21のX方向の移動と粉粒体状樹脂Rの離型フィルムFへの供給ができるようになっている。その他の構成は第二実施形態と共通であるため、詳細な説明は省略する。
【0066】
第二移動機構260は、第二駆動部262と、一対の第二レール264とを含む。一対の第二レール264はY方向に沿って延びると共に、ベース256を介して樹脂供給機構21を支持している。第二駆動部262は、モータ等からなる。樹脂供給機構21は、第二駆動部262により、第二レール264上を+Y方向と-Y方向とに移動可能に構成されている。
【0067】
本実施形態によれば、樹脂供給機構21をX方向とY方向の2方向荷移動させることができるため、大判サイズの基板Sに対応する樹脂撒きテーブル22に対しても、樹脂撒きテーブル22を移動させることなく、粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給することができる。また、樹脂撒きテーブル22は粉粒体状樹脂Rの供給時に移動しないので、離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量をより正確に計測することができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
本実施形態は、樹脂供給機構21は、第1実施形態と同じであり、離型フィルムFと枠体23とがX-Yテーブルのベース27上の樹脂撒きテーブル22に載置される点も同じである。本実施形態においては、図17に示すように、樹脂供給機構21から供給される粉粒体状樹脂Rが直接離型フィルムF上に供給されるのではなく、樹脂保持機構280(供給対象物の一例)に一旦供給され、樹脂保持機構280から離型フィルムF上に供給される。この実施形態は、例えば成形型に配置された離型フィルムF上に樹脂を供給する装置に適する。その他の構成は第一実施形態と共通であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
樹脂保持機構280は、図18図19に示すように、複数の第一スリット282を有する保持部281と、その下に密着して設けられ、第一スリット282と同じ方向に配置された複数の第二スリット284を有するシャッター283を備える。なお、図17から図19において樹脂保持機構280の第一スリット282及び第二スリット284の本数は実際より多く又は少なく描かれている。
【0070】
本実施形態の樹脂保持機構280は、全体として、枠体23の内寸とほぼ同じ寸法を有しており、枠体23の内側かつ離型フィルムFの上方に配置されている。樹脂保持機構280においては、保持部281が上でシャッター283が下になるように配置されている。保持部281の第一スリット282の幅(複数の第一スリット282が配置される方向に平行な方向の長さ)は、上方が広くて下方が狭くなっており、これにより樹脂保持機構280よりも上方に位置する樹脂供給機構21から供給される粉粒体状樹脂Rが第一スリット282内に入り込みやすくなっている。一方、シャッター283の第二スリット284の幅(複数の第二スリット284が配置される方向に平行な方向の長さ)は上方も下方も同じである。第一スリット282の下方の幅と第二スリット284の幅とは同じ又は大きく、第一スリット282のピッチ(隣接する第一スリット282間の長さ)と第二スリット284のピッチ(隣接する第二スリット284間の長さ)とは同じである。したがって、保持部281に対するシャッター283の相対位置を1/2ピッチだけ幅方向にずらすことにより、第一スリット282と第二スリット284との連通と遮断とを切り替えることができる。図17から図19に示す樹脂保持機構280においては、第一スリット282と第二スリット284とは遮断されている。
【0071】
本実施形態においては、樹脂保持機構280を第一スリット282と第二スリット284とが遮断された状態にしておき、X-Yテーブルの樹脂撒きテーブル22を移動させながら、樹脂供給機構21から樹脂保持機構280に粉粒体状樹脂Rを供給する。樹脂保持機構280に供給された粉粒体状樹脂Rは、第一スリット282に入り込む。第一スリット282と第二スリット284とは遮断されているので、樹脂供給機構21から供給された粉粒体状樹脂Rは、第一スリット282内に溜められている。全ての第一スリット282に均等に満遍なく粉粒体状樹脂Rが入り込んだら、回転体230の回転を停止させて、粉粒体状樹脂Rの供給を停止する。このとき、全ての第一スリット282に均等に満遍なく粉粒体状樹脂Rを入れるために、樹脂保持機構280を振動させてもよい。
【0072】
次に、不図示のシャッター移動機構により、シャッター283を1/2ピッチだけ幅方向に移動させる。これにより、第一スリット282と第二スリット284とが連通し、第一スリット282に溜められた粉粒体状樹脂Rは、第二スリット284を通って、離型フィルムF上に供給される。
【0073】
このように、樹脂供給機構21と樹脂撒きテーブル22との間に樹脂保持機構280を設けることにより、粉粒体状樹脂Rを、成形型に配置された離型フィルムF上に供給することができる。また、基板Sのサイズが大判であっても、樹脂保持機構280を複数回往復移動させることにより、粉粒体状樹脂Rが供給可能である。
【0074】
〔別実施形態〕
以下、上述した実施形態の別実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0075】
<1>上述した実施形態では、第一樹脂落下口207、第一樹脂投入口210A、第二樹脂落下口210B、及び、第二樹脂投入口222は、断面円形状を有していたが、これに限定されるものではない。これらの断面形状は、矩形状など任意の形状にすることができる。また、これらの断面形状は同じである必要はなく、それぞれが異なる断面形状を有していてもよい。
【0076】
ただし、第二樹脂落下口210Bと第二樹脂投入口222の形状が、第三樹脂落下口223の開口の形状と同じで、かつ、回転体230の全長と同じ長さの矩形状を有していれば、より少ない量の粉粒体状樹脂Rで、回転体230の溝232aの全体に粉粒体状樹脂Rを供給することができるので好ましい。
【0077】
<2>上述した実施形態では、樹脂供給部220の後板227の上側は鉛直方向に平行であり、中程で前板226に近づく方向に折り曲げられており、前板226は全体として平板状であり、下方に向かうほど後板227に近づくように鉛直方向に対して傾斜して配置されていたが、前板226と後板227の形状はこれに限られるものではない。第三樹脂落下口223が回転体230に粉粒体状樹脂Rを適切に供給できる形状を有する限りにおいて、前板226と後板227は、任意の形状にすることができる。
【0078】
<3>上述した実施形態では、ガイド240の後板247の上側は鉛直方向に平行であり、中程で前板246に近づく方向に折り曲げられており、前板246は全体として平板状であり、鉛直方向に対して平行に配置されていたが、前板246と後板247の形状はこれに限られるものではない。第四樹脂落下口242が離型フィルムF上に粉粒体状樹脂Rを適切に供給できる形状を有する限りにおいて、前板246と後板247は、任意の形状にすることができる。
【0079】
<4>上述した実施形態では、樹脂供給機構21と樹脂撒きテーブル22のいずれか一方が移動可能に構成されていたが、樹脂供給機構21と樹脂撒きテーブル22の両方が移動可能に構成されていてもよい。
【0080】
<5>上述した実施形態における基板Sは、円形状、矩形状等どの様な形状であってもよい。基板Sのサイズも特に限定されない。樹脂撒きテーブル22の移動量、及び/又は、第一移動機構250、第二移動機構260の移動量を適切に設定することにより、どのような基板Sの形状、サイズにも対応可能である。
【0081】
<6>上述した実施形態では、ダイダウンのコンプレッション方式で説明したが、ダイアップのコンプレッション方式として、基板等の成形対象物を、樹脂供給機構21において粉粒体状樹脂Rを供給する供給対象物としてもよい。
【0082】
<7>上述した実施形態では、離型フィルムF、枠体23、樹脂保持機構280を供給対象物として説明したが、基板Sや成形型Mが供給対象物であってもよい。
【0083】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述の実施形態において説明した樹脂成形装置D及び樹脂成形品(樹脂封止済基板Sb)の製造方法の概要について説明する。
【0084】
(1)樹脂成形装置Dの特徴構成は、供給対象物(枠体23、離型フィルムF、樹脂保持機構280)に粉粒体状樹脂Rを供給する樹脂供給機構21と、上型UMと当該上型UMに対向する下型LMとを含み、上型UMと下型LMとの間に粉粒体状樹脂Rが配置される成形型Mと、成形型Mを型締めして圧縮成形する型締め機構35と、を備え、樹脂供給機構21は、外周面231に複数の凹部232(溝232a、ディンプル232b)を有する円柱形状であって、軸心Xを中心に回転する回転体230と、粉粒体状樹脂Rが留められ、粉粒体状樹脂Rを自由落下させて回転体230に供給する開口(第三樹脂落下口223)が形成された樹脂供給部220と、一端が回転体230の外周面231に接触するように配置されたへら状部材(スクレーパ224)と、を有する点にある。
【0085】
圧縮成形モジュール3において、樹脂封止済基板Sbの生産性を高めるためには、樹脂供給モジュール2の樹脂供給機構21において、短時間にかつ精度高く供給対象物(離型フィルムF)に粉粒体状樹脂Rを供給する必要がある。しかし、特許文献1に記載された技術では、粉粒体状樹脂Rを供給対象物に供給する際の精度を高くするために、樹脂材料供給口を用いて、粉粒体状樹脂Rの単位時間当たりの供給量を小さくしている。このため、供給対象物の全体に粉粒体状樹脂Rを供給するのに時間を要する。供給対象物が大判の場合には、更に時間を要する。そこで、本実施形態に係る樹脂供給機構21は、従来の樹脂材料供給口と比較して、全長が長い回転体230を有しているので、一度に溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給することができる。したがって、従来の樹脂供給機構と比較して、単位時間当たりの粉粒体状樹脂Rの供給量を多くすることができる。このとき、スクレーパ224により溝232aから盛り上がった余剰の粉粒体状樹脂Rは擦切られるので、溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを継続して供給することができる。このように、粉粒体状樹脂Rの供給精度を維持しつつ、単位時間当たりの供給量を多くすることができ、これにより離型フィルムF上への粉粒体状樹脂Rの供給時間を短縮することができる。
【0086】
(2)上記(1)に記載の樹脂成形装置Dにおいて、樹脂供給部220の開口(第三樹脂落下口223)は、鉛直方向に沿って見たときに、軸心Xよりも回転体230の回転方向の側に配置されていていてもよい。
【0087】
本構成であれば、第三樹脂落下口223から溝232aに入り込む粉粒体状樹脂Rが、軸心Xよりも回転方向と反対方向に落ちるおそれがないので、溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給することができる。
【0088】
(3)上記(2)に記載の樹脂成形装置Dにおいて、軸心Xを通る鉛直方向の平面である鉛直面pと、軸心Xとへら状部材(スクレーパ224)の外周面231への接触部分224aとを通る接触面qとのなす角θは45度以下であってもよい。
【0089】
本構成であれば、仮に、粉粒体状樹脂Rの粗粒R1がスクレーパ224を持ち上げたとしても、粉粒体状樹脂Rは自重により、持ち上がったスクレーパ224の隙間から離型フィルムF上に落下しないので、離型フィルムF上に目標供給量より多い粉粒体状樹脂Rが供給されてしまうという不都合を最小限に抑制することができる。
【0090】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の樹脂成形装置Dにおいて、供給対象物は、離型フィルムFと枠状部材(枠体23)とを含んでいてもよい。
【0091】
本構成であれば、離型フィルムFのうち枠体23の内側の部分に正確に粉粒体状樹脂Rを供給することができる。
【0092】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つに記載の樹脂成形装置Dにおいて、へら状部材(スクレーパ224)は、一端から他端に向かう切り欠き224cを有していてもよい。
【0093】
本構成では、スクレーパ224は、切り欠き224cにより形成された複数のスクレーパ部分224bを有する。このため、粉粒体状樹脂Rに粗粒R1が混入してスクレーパ224と回転体230の外周面231との間に入り込んだとしても、スクレーパ224の持ち上がりは当該粗粒R1が入り込んだスクレーパ部分224bだけとなり、他のスクレーパ部分224bは持ち上がらず、粗粒R1の影響を受けない。これにより、粗粒R1の両側からの粉粒体状樹脂Rのスクレーパ224のすり抜けを最小限、若しくは、すり抜けないようにすることができ、離型フィルムF上に目標供給量より多い粉粒体状樹脂Rが供給される不都合を抑制することができる。
【0094】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一つに記載の樹脂成形装置Dにおいて、回転体230の、軸心Xに対して回転体230の回転によって外周面231が下方に向かって移動する側に、軸心Xと平行に配置された板状部材(前板246)を更に備えてもよい。
【0095】
本構成であれば、回転体230の回転による遠心力で溝232aに供給された粉粒体状樹脂Rが溝232aから回転方向前方に飛び出したとしても、前板246に衝突し、下方に落下させることができる。したがって、目標供給位置に目標供給量の粉粒体状樹脂Rを供給することができる。
【0096】
(7)上記(6)に記載の樹脂成形装置Dにおいて、板状部材(前板246)は、上下動可能に構成されていてもよい。
【0097】
本構成であれば、前板246を含むガイド240を下方に移動させて離型フィルムFに近接させることにより、より正確に目標供給位置に目標供給量の粉粒体状樹脂Rを供給することができる。
【0098】
(8)上記(1)から(7)のいずれか一つに記載の樹脂成形装置Dにおいて、樹脂供給機構21を移動させる移動機構(第一移動機構250、第二移動機構260)を更に備えてもよい。
【0099】
本構成であれば、離型フィルムFが載置されたテーブル(樹脂撒きテーブル22)を固定した状態で粉粒体状樹脂Rを供給することができるので、例えば、樹脂撒きテーブル22の下方に粉粒体状樹脂Rの重量を計測する計量器274を配置することができる。
【0100】
(9)上記(8)に記載の樹脂成形装置Dにおいて、供給対象物(枠体23、離型フィルムF)が載置されるテーブル(樹脂撒きテーブル22)と、テーブル(樹脂撒きテーブル22)の下方にあって、供給対象物(枠体23、離型フィルムF)に供給された粉粒体状樹脂Rの重量を計測する計量部(計量器274)と、を更に備えてもよい。
【0101】
本構成であれば、離型フィルムF上に供給された粉粒体状樹脂Rの重量を計量器274で直接計測することができるので、より正確に離型フィルムF上の粉粒体状樹脂Rの重量を計測することができる。
【0102】
(10)上記(1)から(9)いずれか一つに記載の樹脂成形装置Dを用いた樹脂成形品(樹脂封止済基板Sb)の製造方法の特徴は、樹脂供給機構21を用いて供給対象物(枠体23、離型フィルムF、樹脂保持機構280)に粉粒体状樹脂Rを供給する樹脂供給工程と、成形型Mに成形前基板(樹脂封止前基板Sa)及び供給対象物(離型フィルムF)を供給し、型締め機構35により成形型Mを型締めして圧縮成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【0103】
本方法では、樹脂供給機構21が従来の樹脂材料供給口と比較して、全長が長い回転体230を有しているので、一度に溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを離型フィルムF上に供給する樹脂供給工程を含んでいる。このため、従来の樹脂供給機構と比較して、供給対象物(枠体23、離型フィルムF)への単位時間当たりの粉粒体状樹脂Rの供給量を多くすることができる。このとき、スクレーパ224により溝232aから盛り上がった余剰の粉粒体状樹脂Rは擦切られるので、溝232aの容積に等しい体積の粉粒体状樹脂Rを継続して供給することができる。このように、粉粒体状樹脂Rの供給精度を維持しつつ、単位時間当たりの供給量の多い樹脂供給機構21を用いた樹脂成形品(樹脂封止済基板Sb)の製造方法を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
21 :樹脂供給機構
22 :樹脂撒きテーブル(テーブル)
23 :枠体(枠状部材、供給対象物)
35 :型締め機構
220 :樹脂供給部
223 :第三樹脂落下口(開口)
224 :スクレーパ(へら状部材)
224a :接触部分
224c :切り欠き
230 :回転体
231 :外周面
232 :凹部
232a :溝(凹部)
232b :ディンプル(凹部)
246 :前板(板状部材)
250 :第一移動機構(移動機構)
260 :第二移動機構(移動機構)
274 :計量器(計量部)
280 :樹脂保持機構(供給対象物)
F :離型フィルム(供給対象物)
LM :下型
M :成形型
p :鉛直面
q :接触面
R :粉粒体状樹脂
Sa :樹脂封止前基板(成形前基板)
Sb :樹脂封止済基板(樹脂成形品)
UM :上型
X :軸心


図1
図2
図3
図4
図5
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