(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】自動車両を試験する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01M17/007 B
(21)【出願番号】P 2022500984
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 US2020041656
(87)【国際公開番号】W WO2021007540
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-07-10
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517196535
【氏名又は名称】ホリバ インスツルメンツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HORIBA Instruments Incorporated
【住所又は居所原語表記】9755 RESEARCH DRIVE IRVINE, CALIFORNIA UNITED STATES 92618
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルトン,レオ アルフォンス ゲラルト
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0016183(KR,A)
【文献】国際公開第2019/133686(WO,A1)
【文献】特開2016-001172(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02246686(EP,A1)
【文献】特表2017-522213(JP,A)
【文献】特開2007-192627(JP,A)
【文献】特開2001-091412(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1313148(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第109975035(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102007031040(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力計組立体が、車両の第1の実験室試験中に能動速度制御を実行している車両に負荷をかけている間、(i)前記車両から離れて配置される第1の可動目標本体の位置、又は(ii)前記車両に対して移動する1つ又は複数の仮想物体を示す信号を生成し、前記車両の速度パラメータが所望の速度スケジュールに従うように構成される第1の電子目標シミュレータを、前記動力計組立体又は前記車両からの速度パラメータフィードバックに従って、自動的に制御すること、
前記第1の実験室試験中に、前記車両の放出物、燃料消費量、又は電力消費データを収集することと、
前記能動速度制御を無効にした状態で前記車両の第2の実験室試験中に、前記所望の速度スケジュールに従って前記速度パラメータを制御し、前記第2の実験室試験中に、前記車両の放出物、燃料消費量、又は電力消費データを収集することと、
を含む、
試験方法。
【請求項2】
前記第1の実験室試験の前記放出物、燃料消費量、又は電力消費データを、前記第2の実験室試験の前記放出物、燃料消費量、又は電力消費データと比較することを更に含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の実験室試験中に周囲条件を同じ値に制御することを更に含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項4】
前記信号は、光探知及び測距信号、レーダー信号、又は超音波信号である、請求項1に記載の試験方法。
【請求項5】
前記動力計組立体は、二輪シャシー動力計であり、
前記第1の実験室試験の前に、
前記車両の右及び左後車輪ハブ速度センサーを、前記車両の右及び左後車輪ハブ速度センサー配線ハーネスからそれぞれ分離することと、
右及び左後車輪ハブを、前記車両の左及び右前車輪の外面にそれぞれ固定することと、
前記右及び左後車輪ハブの車輪ハブセンサーを、前記右及び左後車輪ハブ速度センサー配線ハーネスにそれぞれ接続することと
を更に含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項6】
前記車両から離れて配置される第2の可動目標本体の位置、及び前記第1の可動目標本体の配備状態を自動的に制御することを更に含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項7】
前記動力計組立体が、第
3の実験室試験中に能動速度制御を実行してい
る車両に負荷をかけている間、
(
iii)前
記車両と前記
第1の可動目標本体との間の間隔、又は
(
iv)
所望の間隔スケジュールを実行する先行車両に続く能動速度制御を実行する道路車両の道路車両速度プロファイルを再現する実験室車両速度プロファイルを生成す
る前記第1の
電子目標シミュレータ
を、所望の間隔スケジュールに従って、自動的に制御することを
さらに含む
、請求項1に記載の試験方法。
【請求項8】
路上試験からステップ変化を再現する
前記第1の可動目標本体と前
記車両との間の距離のステップ変化を引き起こすために、前記
第1の可動目標本体の配備状態を変更することを更に含む、請求項7に記載の試験方法。
【請求項9】
前記第
3の実験室試験中に、前
記車両の放出物、燃料消費量、又は電力消費データを収集することと、
前記能動速度制御を無効にした状態で前
記車両の第
4の実験室試験中に、前記実験室車両速度プロファイルに従って前
記車両の速度を自動的に制御し、前
記車両の放出物、燃料消費量、又は電力消費データを収集することと
を更に含む、請求項7に記載の試験方法。
【請求項10】
前記第
3の実験室試験の前記放出物、燃料消費量、又は電力消費データを、前記第
4の実験室試験の前記放出物、燃料消費量、又は電力消費データと比較することを更に含む、請求項9に記載の試験方法。
【請求項11】
前記第
3及び第
4の実験室試験中に周囲条件を同じ値に制御することを更に含む、請求項9に記載の試験方法。
【請求項12】
前記動力計組立体は、二輪シャシー動力計であり、
前記第
3の実験室試験の前に、
前
記車両の右及び左後車輪ハブ速度センサーを、前
記車両の右及び左後車輪ハブ速度センサー配線ハーネスからそれぞれ分離することと、
右及び左後車輪ハブを、前
記車両の左及び右前車輪の外面にそれぞれ固定することと、
前記右及び左後車輪ハブの車輪ハブセンサーを、前記右及び左後車輪ハブ速度センサー配線ハーネスにそれぞれ接続することと
を更に含む、請求項8に記載の試験方法。
【請求項13】
動力計組立体が、第1の実験室試験中に能動速度制御を実行している車両に負荷をかけている間、
前記動力計組立体から離れて配置される可動目標本体の速度、又は
前記車両に対して移動する1つ又は複数の物体の速度又は場所を示す電子仮想目標シミュレータからの信号
を、(i)前記動力計組立体又は前記車両からの速度パラメータフィードバックと(ii)交通流速度パターンを表す速度スケジュールとの間の差に従って、自動的に制御することを含む試験方法。
【請求項14】
前記第1の実験室試験中に、前記車両の放出物、燃料消費量、又は電力消費データを収集することと、
前記能動速度制御を無効にした状態で前記車両の第2の実験室試験中に、前記速度スケジュールに従って前記車両の速度を制御し、前記車両の放出物、燃料消費量、又は電力消費データを収集することと
を更に含む、請求項
13に記載の試験方法。
【請求項15】
前記第1の実験室試験の前記放出物、燃料消費量、又は電力消費データを、前記第2の実験室試験の前記放出物、燃料消費量、又は電力消費データと比較することを更に含む、請求項
14に記載の試験方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の実験室試験中に周囲条件を同じ値に制御することを更に含む、請求項
14に記載の試験方法。
【請求項17】
前記信号は、光探知及び測距信号、レーダー信号、又は超音波信号である、請求項
13に記載の試験方法。
【請求項18】
前記動力計組立体は、二輪シャシー動力計であり、
前記第1の実験室試験の前に、
前記車両の右及び左後車輪ハブ速度センサーを、前
記車両の右及び左後車輪ハブ速度センサー配線ハーネスからそれぞれ分離することと、
右及び左後車輪ハブを、前
記車両の左及び右前車輪の外面にそれぞれ固定することと、
前記右及び左後車輪ハブの車輪ハブセンサーを、前記右及び左後車輪ハブ速度センサー配線ハーネスにそれぞれ接続することと
を更に含む、請求項
13に記載の試験方法。
【請求項19】
前記
第1の可動目標本体を動かして、先行車両のカットイン又はカットアウトをシミュレートすることを更に含む、請求項
8に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、自動車排気ガス放出物測定及び分析、自動車のエネルギー効率の測定、自律特徴を有する自動車の制御に関する。より詳細には、本開示は、実験室試験に基づいて、ハイブリッド電気自動車(HEV)を含む内燃機関(ICE)を有する自動車から実世界排気ガス放出物を予測すること、及びバッテリー電気自動車(BEV)を含む自律ブレーキ特徴を有する任意の自動車タイプの実世界エネルギー効率及び自動ブレーキ応答を予測することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ICEを有する現代の自動車は、地上で見られる環境、道路勾配、及び運転条件の殆どどんな組み合わせの下でも確実に動作することができる。このような車両は、世界中で一般的であり、0℃未満から40℃を超える周囲温度で、乾燥砂漠状態から湿潤熱帯雨林まで、及びドイツの高速道路上の高速運転に対する遅い都市交通渋滞で、規則正しく確実に動作する。
【0003】
大量の自動車を受け入れる多くの国は、自動車製造業者が従うべき排気ガス放出物基準、即ち、「排気管」基準を有する。しかし、実世界で車両の放出物及び燃料経済性に影響を与えることが知られている広範囲の実世界環境、道路、及び運転条件下で車両を試験するのは困難で高価であることを、経験的に知っている。HEVのエネルギー効率及び単一充電に対するBEVの範囲がより低い周囲温度で減少することは、周知である。
【0004】
実験室ベースの排気管放出物試験は、限られた範囲の周囲条件、車両速度パターン、及び運転条件下で、歴史的に実行されている。車両の数は近年世界中で著しく増加しており、及び車両は益々コンピュータ制御されているので、政府及び自動車製造業者は、国家周囲空気品質(NAAQ)基準が現在の周囲空気「達成エリア」で適合され続けることができ、最終的に現在の「非達成エリア」で適合されることができるように、より広範囲の動作条件にわたって車両の放出物をより良く理解することが必要になっている。更に、車両製造業者は、より広範囲の周囲条件及び動作条件にわたって車両放出物制御及びパワートレイン較正に対する可能な変更の影響を評価することができることが必要になっている。
【0005】
新しい排気ガス放出物規制は、人間の健康に直接又は間接的に影響を与えることが知られている特定の基準汚染物質、及び温室効果ガス放出物の規制に対するNAAQの測定レベルによって部分的に促進される。NAAQレベルは、移動放出源及び固定汚染源の両方によって、世界中で大きく異なる。人口密度、気候条件、車両排出性能、局地使用中の車両隊の年代及び構成、固定大気汚染源、及び地理的特徴は全て、NAAQに影響を与える要因である。例えば、地理的特徴及び大気条件に起因した周知の大気温度逆転と相まって、高い人口密度のせいで、南カリフォルニアの空気品質は特に悪い。
【0006】
ICEを有する自動車及びトラックは、「移動源」、最も著しくは「排気管放出物」からの全汚染の一因となる。BEVは、汚染の「固定源」、即ち、発電所からの放出物の一因となる。実世界で動作する任意の特定の車両の排気管放出物及びエネルギー効率は、様々な環境条件、道路勾配、運転者行動、交通条件、及びそれらの要因に関連する車両の放出物規制の有効性を含む多くの要因に左右される。
【0007】
BEVが電力網からエネルギーを得るので、BEVを益々大量に生産する場合、BEVは、今後、「固定源」からの全汚染の重要な要因になり得る。従って、更に実世界運転でBEVのエネルギー効率を理解することが重要である。
【0008】
ICEを有する車両からの基準汚染物質及び温室効果ガス放出物を規制する新しい放出物基準の発布は、実験室ベースの試験形態及び関連方法に従来関係している。なぜなら、実験室ベースの試験は、非常に繰り返し可能であり、大衆ベースの実世界(即ち、路上)試験は、最近まで、即ち、携帯放出物測定システム(PEMS)の商用化以来、実行できていないからである。
【0009】
実験室試験方法は、非常に正確であることが知られており、実際の試験条件下で放出物測定に対して繰り返し可能であるが、実世界運転は、従来の実験室試験プロトコルが実行しない広範囲の条件に車両をかけることができる。実験室で全範囲の実世界温度及び大気圧条件をシミュレートする困難さ、実際の交通条件下での実世界運転者行動の影響などを含む多くの理由がある。
【0010】
実験室試験方法対実世界車両動作の使用に伴う歴史的問題を更に大きくするのは、自律特徴を有する車両の有用性及び人気が急速に高まっていることである。自律及び自動縦速度及び加速度制御を有する車両は、市場に現在一般に出ており、間もなく大半を占めるであろう。これらの車両は、先行車両、即ち、極めて接近して、対象車両の前に車両がない場合、設定点車両速度を維持することができ、後部から低速車両に接近する場合、又は車両が車線を変更して対象車両の通路に入る場合、車両速度を変更して安全車両間隔を維持することができる。
【0011】
現在、これらの車両が他の車両と自律的に相互作用しながら、排気放出物又は燃料経済性を測定するために実験室環境でこれらの車両を「目隠し試験」することができない(対象車両に対する変更を許可せず、車両制御システムの技術的詳細の知識を必要としないことを、目隠し試験は必要とする)。しかし、特に、従来の運転者制御下で同様の実世界運転に対して使用される較正に比べて異なる較正を車両パワートレインが使用する場合、自律特徴は、大抵の車両で放出物及びエネルギー効率に影響を与える可能性がある。
【0012】
車両及び自律システムの開発者が有する専門知識の深さを用いて、自動車両制御システムに対する、実世界交通における他の相反する車両が有する影響を分離してシミュレートし、実世界でシステムの動作に関するある程度の信頼度を得ることができるけれども、そのタイプの試験は、完全な車両システムが実世界で同じように動作することを実証しない。完全な車両システムは、実験室の結果が実世界性能を正確且つ適切に反映する最高の信頼度を提供し、車両の特定の型式及びモデルに関する詳細な技術情報に定期的にアクセスできない規制当局者に適している。自動縦制御を使用することによって、車両の放出物及び燃料経済性の特性を低下させることがあるけれども、自動縦制御を使用することによって、燃料経済性及び放出物性能を向上させることもできる。しかし、これらの目的を達成するために、十分に制御された実験室ベースの試験装置及び関連方法は、自動車製造業者及び規制当局者の両方に対して試験精度を最大化するのに必要である。
【0013】
放出物及びエネルギー効率のコンプライアンスの目的で、従来の実験室試験は通常、動力計上の1つ又は複数の車両速度スケジュールで動作する対象車両の排気放出物又はエネルギー効率を測定することを含む。様々な車両速度スケジュールは、様々なタイプの実世界車両運転を表すように意図されている。例えば、環境保護庁(EPA)は、都市運転、ハイウェイ運転、及びより攻撃的な車両運転を表す異なる速度スケジュールを使用する。どの場合にも、車両を、運転者によって対応する速度スケジュールに可能な限り近づけて運転する。しかし、より新しい車両モデルは、自律、動的、縦速度制御を、便利な特徴としてかつてないほど大量に使用している。これらの特徴は、都市交通渋滞からハイウェイ運転の任意の運転条件下で安全車両間隔を自動的に維持することによって非常に便利であり、及び技術のコストは急激に低下しているので、自律速度制御特徴は、今後、大抵の車両で見つけられ使用される可能性がある。自律速度制御特徴は、今後の完全自律車両の重要な技術の1つであり続ける可能性がある。
【0014】
しかし、自律車両速度制御の有用性及び使用法は増大し続けるので、実験室環境で、特に、動力計を用いた特定の車両速度スケジュールに対する対象車両の動作に基づく従来の試験形態内で、このような車両を試験する方法は、まだ知られていない。車両が多くの時間自らの速度を制御している将来、標準車両速度スケジュールの使用がどのように解釈されるかは不明である。例えば、速度スケジュールは、どの場合にも、「交通の速度」で走行する先行車両の速度に応じて対象車両が強制的に従う速度として単に解釈されてもよく、又は「交通の速度」自体(対象車両が、組み込まれ、従う必要がある交通)として解釈されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
ここで、特定の実施形態は、ICE車両及び任意の車両タイプのエネルギー効率測定及び自動ブレーキ動作(任意のルートで、及び関心のある周囲条件の任意のセットにわたって任意の縦制御車両モデルに対して、適切な場合、実世界エネルギー効率及び排気管放出物を表す測定及び動作)の場合、正確で反復可能な排気ガス質量放出物測定値を得るために、自律車両、又は自律縦速度又は加速度制御を有する車両の実験室試験を実行することに関してもよい。これらの実施形態は、放出物及びエネルギー効率の影響、及び自律縦制御車両機能の自動又は非常ブレーキ動作を正確に判定することができる装置及び方法を提供する。更に、制御環境で実世界交通事象をシミュレートする又は再現することによって、放出物、エネルギー効率、及び安全システム性能を、較正し、評価し、向上させることができる。
【0016】
より詳細には、特定の実施形態は、可変距離、速度、及び加速度で試験車両を「先行する」シミュレーション車両の存在によって他の車両の交通をシミュレートする装置に関する。これにより、動力計組立体と連携して実際のシミュレーション車両負荷条件下で車両が動作している間、周囲空気条件を再現又はシミュレートしている間、及び通常の放出物測定システム及び方法を用いて放出物をサンプリングしている間、試験車両の走行通路への別の車両の進入(即ち、「カットイン」操縦)、又は試験車両の走行通路からの別の車両の退出(即ち、「カットアウト」操縦)をシミュレートすることができる。
【0017】
他の車両をシミュレートする装置は、対象試験車両又は関連動力計組立体からの速度パラメータに基づいて、開ループ位置制御及び閉ループフィードバック制御を行うことができる。開ループ制御モードは、所定の車間距離スケジュールに従って試験車両を先行する車両のシミュレーションを可能にする一方、閉ループ動作は、所望の速度スケジュールに従う車両、又は対象車両自体が所望の速度スケジュールに従う車両のシミュレーションを可能にする。更に、両方の動作モードは、自動又は自律ブレーキシステムを試験する交通シナリオのシミュレーションを支援する。
【0018】
1つの装置は、光学単眼及び双眼カメラ、レーザーベースの距離検出システム(例えば、ライダーシステム)、レーダーベースの距離検出システム、及び異なるタイプのセンサーで構成され、「センサーフュージョン」を介して連結されたセンサーのネットワークを含む、車両縦速度制御システムで使用される全タイプの電子センサーによって検出可能な可動車両目標本体を物理的にシミュレートする。この第1の装置は、任意の縦制御システムの試験に関する。
【0019】
第2の装置は、光学単眼及び双眼カメラ、レーザーベースの距離検出システム(例えば、ライダーシステム)、レーダーベースの距離検出システム、及び異なるタイプのセンサーで構成され、「センサーフュージョン」を介して連結されたセンサーのネットワークを含む、車両縦速度制御システムで使用される1つ又は複数のタイプの電子センサー、又は2つ以上のタイプの電子センサーの組み合わせによって検出可能な仮想目標車両を電子的にシミュレートする。この第2の装置は、単一センサー技術を含む任意の縦制御サブシステムの試験、又はセンサー技術の任意の組み合わせに関する。
【0020】
妨害試験車両が所望の速度スケジュール(例えば、規制速度サイクル)に従うようにする一般的な可変交通条件をシミュレーション車両が表す試験方法を開示する。
【0021】
所望の対地速度又は実世界速度スケジュール(例えば、規制速度サイクル)によって定義される一般的な交通条件をシミュレーション車両が表し、これによって、まるで、対象車両が速度スケジュールの速度で流れる交通と連動していたかのように、対象車両は、それ自体で応答及び制御する別の方法を開示する。
【0022】
別の方法において、車間距離、即ち、シミュレーション車両と対象車両との間の距離を、関心のある所定のスケジュールによって定義する。スケジュールは、車間距離を測定及び記録した従来の実世界試験に基づいていてもよく、又は関心のある任意の他のスケジュールに基づいていてもよい。
【0023】
更に別の方法において、所定の車間距離スケジュールを用いて、自動又は非常ブレーキ応答シナリオを生成する。先行車両の「カットイン」及び「カットアウト」操縦又はシナリオに対する対象車両の自動又は非常ブレーキ応答を試験する他の方法を、デュアル目標本体シミュレータ装置と関連して使用する。
【0024】
上述の方法の何れかに従って試験しながら、車両タイプに応じた排気放出物、エネルギー効率、燃料経済性、及び自動ブレーキ応答を測定してもよい。
【0025】
例えば、自律車両試験方法は、道路負荷を車両に与えるように構成されている動力計組立体と対象車両が連携するようにシミュレーション車両装置を動作させ、車両の速度が所望の又は実世界車両速度スケジュールに従い、又は代わりに、所望の又は実世界車両速度スケジュールの速度で「流れる」シミュレーション交通と連動することによって、対象車両が組み込みアルゴリズム及び較正に従って対象車両の速度を制御することを含んでもよい。関連車両システムの性能を向上させ、同じ車両の従来の制御に比べて放出物及びエネルギー効率に対する自律システムの影響を判定するために、対応する実世界放出物データ、エネルギー効率データ、又は安全システム(例えば、自動非常ブレーキ)の性能に対応するデータを取り込んで使用してもよい。
【0026】
前の実世界運転中に実際の車両の記録された接近に基づいて、試験される車両に望ましく接近して1つ又は複数の車両の存在を物理的又は電子的に再現する新規なシステム、又は所望の交通シナリオに基づいて、試験される車両に望ましく接近して1つ又は複数の車両の存在をシミュレートする新規なシステムを、車両試験実験室に搭載する。
【0027】
更に、従来のシャシー動力計、又は代わりに各車両駆動車輪用の個別車軸動力計、及び適切な場合、ICE車両を試験する質量放出物サンプリング機器、及び車両を試験している間、関心のある環境条件(例えば、周囲温度、圧力、及び湿度)のセットに試験車両をさらすための試験機器の補足セットを、試験実験室に搭載する。
【0028】
実験室試験の前に、試験されるべき車両を、望ましい任意の環境条件及び交通条件下で、実世界における関心のある任意のルートで運転してもよい。例えば、NAAQ「基準値未達成エリア」における高速道路交通の動脈は、研究者及び規制当局者にとって特に関心があるかもしれない。寒中燃費性能は、寒冷気候における顧客によってより高価に使用される車両モデルの製造業者にとって特に関心があるかもしれない。
【0029】
実世界運転中に、車両の規制放出物認証要件に応じて、1マイル当たりのグラム、又は1ブレーキ馬力時当たりのグラムで質量放出物を測定及び記録するICE搭載車両に、PEMSを、任意選択的に設置してもよい。任意選択的な放出物データに加えて、全試験期間に対する車両速度、アクセルペダル又はスロットル位置、及びブレーキペダル位置又は状態(即ち、オン/オフ)を含む、車両動作を特徴付けるのに必要な周囲気候条件及び他の試験パラメータも記録する。手動変速機の車両の場合、ギア選択及びクラッチペダル位置も記録する必要がある。車間距離を再現する方法の場合、カメラ、レーダー、ライダー、又は他の関連システムを用いて、先行車両の後部の車間距離も測定及び記録する。
【0030】
所望のルートにわたる実世界試験の後、又はシミュレートされるべき所望のサイクルを開発又は決定した後、車両を、専門設備を備えた室内又は室外実験室に運ばれ、動力計に置く、又は動力計に接続する。実験室の質量放出物サンプリング機器(ICE車両の場合)は、質量放出物を測定し、試験機器の補足セットを、車両動作中に関心のある所望の環境条件(即ち、同じであることがある環境条件、又は実世界試験中に実際に受ける環境条件と異なることがある環境条件)を与えるために使用する。
【0031】
実世界試験中に記録される実世界車間距離、又はシミュレートされるべき任意の所望の実世界車間距離を、必要に応じて、物理的シミュレーション車両装置又は電子的シミュレーション車両装置にアップロードする。
【0032】
代わりに、試験装置は、対象車両が所望の車両速度スケジュール(例えば、規制速度サイクル)に従っているように「見える」他の車両、又は、対象車両自体が所望の車両速度スケジュール(例えば、規制速度サイクル)に従うようにする他の車両の存在をシミュレートする。規制速度サイクルを、今後「交通の速度」又は「試験車両の速度」として解釈するかどうかは、この時点で知られていない。提案技法の一部は、開示装置を用いた試験結果を従来の速度制御下の同じ車両に対する試験結果と比較することによって、何れの解釈下で自律縦速度制御システムを使用する影響を判定する手段を提供する。
【0033】
先行車両の後部の車間距離及び環境条件を含む実世界試験条件の全セットを、前の実世界運転を参照して再現する、又は実験室環境で要望通りにシミュレートする。パワートレインタイプに応じた質量放出物又はエネルギー効率、及び他の自動縦制御性能パラメータを、書き留めて記録する。車両又は縦制御システムの放出物、効率、又は他の性能測定器を較正する又は向上させるために、後の試験を使用することができる。
【0034】
任意選択的に、PEMS放出物データ又はエネルギー消費量を、実世界運転を含む方法に対して収集した場合、許容範囲内で条件が等しいことを保証する同じ条件下で実験室試験中に収集された実験室放出物又はエネルギー消費量データと、PEMSデータを直接比較することができる。この任意選択的な「確認」処理は、実験室及び実世界測定の両方が正確で再現可能であるという高い信頼度を実証するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面の簡単な説明
【
図1A】自律車両の放出物、エネルギー効率、燃料経済性、又は自動ブレーキ活動を測定又は観測しながら、車両試験台上の実際の自律制御車両を動的に先行する車両又は車両交通の存在、運動、出現、又は消失を再現又はシミュレートする物理的装置を示す。
【
図1B】
図1Aに示す装置でシミュレート可能な「カットイン」交通操縦を示す。
【
図1C】
図1Aに示す装置でシミュレート可能な「カットアウト」交通操縦を示す。
【
図2】自律車両の放出物、エネルギー効率、燃料経済性、又は自動ブレーキ活動を測定又は観測しながら、二輪車両試験台上の実際の自律制御車両を動的に先行する車両又は車両交通の存在、運動、出現、又は消失を再現又はシミュレートする電子的装置を示す。
【
図3A】自律車両の放出物、エネルギー効率、燃料経済性、又は自動ブレーキ活動を測定又は観測しながら、二輪車両試験台上の実際の自律制御車両を動的に先行する車両又は交通の存在、運動、出現、又は消失を再現又はシミュレートする物理的装置を示す。
【
図3B】車両を二輪車両試験台上で動作させながら、アンチロックブレーキ又は自律制御を有する車両の非回転車輪ハブの配線ハーネス入力に対する有効な車輪速度センサーをシミュレートする方法を示す。
【
図4】自律車両の放出物、エネルギー効率、燃料経済性、又は自動ブレーキ活動を測定又は観測しながら、車輪ハブ動力計試験台を用いた実際の自律制御車両を動的に先行する車両又は交通の存在、出現、又は消失を再現又はシミュレートする装置の上面図を示す。
【
図5】実験室における自律又は自動縦速度制御下で車両運転をシミュレートする方法を示す。
【
図6】実験室における自律又は自動縦速度制御下で車両運転をシミュレートする方法を示す。
【
図7】実験室における自律又は自動縦速度制御下で車両運転をシミュレートする方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
ここで、本開示の様々な実施形態について説明する。しかし、開示の実施形態は、単に例示であり、他の実施形態は、明示的に例示又は説明されない様々な代替の形をとってもよい。図面は、必ずしも原寸に比例している必要がなく、特定の構成要素の詳細を示すために、幾つかの特徴を強調又は最小化してもよい。従って、ここに開示の特定の構造及び機能の詳細は、限定されるとして解釈されるべきでなく、本発明を様々に使用する当業者を教示するために単に代表的なものとして解釈されるべきである。当業者が分かるように、図面の何れかを参照して例示及び説明される様々な特徴を、明示的に例示又は説明されない実施形態を生成する1つ又は複数の他の図面に例示の特徴と組み合わせてもよい。例示の特徴の組み合わせは、典型的な用途に対する代表的な実施形態を与える。しかし、この開示の教示と一致する特徴の様々な組み合わせ及び修正を、特定の用途又は実装形態に対して要望してもよい。
【0037】
ここで、自律又は自動縦速度制御システムを特徴付ける車両の動作及び制御に影響を与える交通流、気候、車両道路荷重、加速度、及び道路勾配に関する実世界運転条件を再現及びシミュレートする。これらの再現運転条件は、放出物及びエネルギー効率を正確に測定するのに必要であり、実験室環境で自動ブレーキ活動を再現するのに必要であり、このような測定及び活動が実世界動作を表すのに必要である。
【0038】
運転スタイルが、全タイプの自動車パワートレインのエネルギー効率、及び内燃機関(ICE)を使用するパワートレインの排気放出物レベルに影響を与えることは、当業者に周知である。アクセルペダル動作、ブレーキ活動、及びパワートレイン較正は全て、車両の効率及び放出物に影響を与える。しかし、車両に関する自律縦速度制御特徴、例えば、適応走行制御(ACC)は、運転者の通常のアクセルペダル入力及びブレーキ活動に取って代わり、車両が自律的に動作している間に、パワートレイン較正の異なるセットに左右されることがある。
【0039】
従来の非自律車両の場合、実験室放出物試験は通常、放出物をサンプリングしながら、望ましい速度スケジュール又はサイクルにわたって車両を制御する人間の運転者又はロボットの運転者で行われ、燃料経済性を、放出物から判定する。電気測定は、電気自動車に同様な機能を与える。しかし、自律車両(例えば、ACCを有する自律車両)の放出物及び燃料経済性又はエネルギー効率を測定する許容できる装置又は試験方法はまだない。その結果、放出物及びエネルギー効率に対する自律動作の影響を理解する目的で、放出物及びエネルギー効率を、人間又はロボットの運転者で従来の方法で動作する同じ車両に対する要件又は対応する値と比較することがある。
【0040】
例示的な装置
内燃機関を有する車両の排気放出物及び燃料経済性を測定する目的で、又は車両加速度、減速及びブレーキの自律制御を有する任意の車両のエネルギー効率又は自動ブレーキ応答を測定する目的で、様々な例示的な装置について後述する。
【0041】
動力計の動作と併せて、関心のある少なくとも1つの自律縦速度制御特徴を起動させた状態で車両が動作しながら、少なくとも1つの制御可能な自動ダミー又は目標本体を、対象車両に対して物理的に又は仮想的に動的に位置決めし、従って、目標本体の相対場所及び速度を変更することによって、車両速度制御及びブレーキに影響を与える。1つ又は複数の目標本体の相対場所、速度及び加速度を、動力計、試験車両、又は他の設置測定システム(例えば、アフターマーケット自律車両カメラシステム)からのフィードバックに基づいて、設定点スケジュールに従う開ループ方法で又は閉ループ方法で制御することができる。
【0042】
車両目標本体は、車両の後部に設置された実際の自律車両の検出システムによって実際の車両と区別できない視覚的レーダー及びライダー外観特性を有する。対象車両に対して指令位置又は指令速度までオーバーヘッドトラックに沿って進むトロリーシステムによって、目標本体の場所及び運動を制御する。代わりに、レーダー又はライダー信号を対象車両から受信し、次に、目標車両の相対場所又は運動の所望の仮想場所又は運動に対応するレーダー「帰還」信号を放出するレーダー又はライダー受信器/放出器システムを用いて、仮想目標本体の場所及び運動を達成する。
【0043】
車両の研究開発の目的で、仮想目標手法は、簡潔さ及び試験効率のために、望ましい。しかし、規制当局による放出物及びエネルギー効率のコンプライアンスの目的で、試験される対象車両に関して先験的な技術情報が知られている「目隠し試験」、及び「偽」制御信号をシミュレートすることなく、完成車両の試験を実行するのが望ましいことが多い。この完成車両試験の場合、実際の目標手法は、より望ましい。
【0044】
図1Aは、車両試験実験室で対象車両6の前における可変車間距離4、4’で相互作用車両の存在を物理的にシミュレートするために使用される車両縦速度制御試験装置(VLSCTA)2を示す。VLSCTA2は、対象車両6の前でシミュレーション車両を出現又は消失させることができ、対象車両6に対して可変開始又は終了速度及び可変車間距離4、4’で移動する1つ又は複数の先行車両をシミュレートすることができる。
【0045】
機能性ブレーキ灯10、10’を有する可動目標本体8、8’は、視覚外観、レーダー断面、及び実際の車両の後面のようなライダー外観撮像特性を与えることによって、他の車両の存在をシミュレートする。これにより、まるで、対象車両6が、シミュレーション車両と同じ相対場所及び運動を有する実際の車両を用いた実世界で動作していたかのように、対象車両6は、シミュレーション車両、即ち、可動目標本体8、8’と相互作用する。
【0046】
位置及び速度制御トロリー組立体(固定トラック又はレール30の上に装着された連接トロリー組立体22及び非連接トロリー組立体22’)によって、目標本体8、8’をつるす。目標本体8、8’の運動を、システム(図示せず)のモーター及び制御器によって、選択された動作モードに応じて所望の方法で動的に制御する。上からつるすことは、対象車両6の動作を変更することができる検出可能な床装着物体の導入を回避するのに有利である。
【0047】
目標本体8、8’は、試験される対象車両6の適切なセンサー(例えば、個々の光学カメラ、光学カメラシステム、双眼カメラ、レーダー送信器/受信器など)に代表的な外観又はレーダー署名を与える任意の材料で構成された物理的構造である。機能性尾灯10、10’は、このように他の車両のブレーキを検出する後続車両に先行車両のブレーキをかけることをシミュレートする。
【0048】
目標本体8、8’を、それぞれ剛性棒ハンガー13及び13’によって連接トロリー組立体22及び非連接トロリー組立体22’に固定する。更に、連接目標本体8を、剛性プッシュプル棒11によって連接トロリー組立体22の前方位置に固定し、非連接目標本体8’を、剛性棒11’によって非連接トロリー組立体22’の前方位置に固定する。後トロリー組立体28及びトロリー組立体28’を、速度、位置又は加速度、従って、対象車両6に対する目標本体8、8’の速度、位置又は加速度を制御する独立駆動機構に直接接続する。
【0049】
更に、前トロリー組立体42を、線形アクチュエータ46によって後トロリー組立体28に連結し、これによって、従動又は後トロリー組立体28に対してトラック又はレール30に沿って前トロリー組立体42の直線運動を固定する。線形アクチュエータ46を、個別制御信号によって伸縮させて、後トロリー組立体28と前トロリー組立体42との間の間隔をそれぞれ増減させる。
【0050】
配備状態(目標本体8だけの場合)、即ち、対象車両6の前に配備された、又は道路の上に(及び対象車両6の運動の仮想通路から外に)立てた配備状態、対象車両6の前部とシミュレーション車両目標本体8、8’の後部との間の距離を示す車間距離4、4’、及び対象車両6とシミュレーション車両目標本体8、8’の間の相対速度又は「終了速度」(但し、これらに限定されない)を含むパラメータの少なくともセットによって、シミュレーション車両の状態を定義する。
【0051】
連接トロリー組立体22及び非連接トロリー組立体22’を制御して、連接目標本体8及び非連接目標本体8’を、動力計組立体12の動作と同期して手動で又はプログラムで任意の望ましい状態に置く。アクチュエータ46を伸長すると、前トロリー組立体28は、後トロリー組立体28から離れる方向にトラック又はレール30に沿って移動するようにし、これによって、プッシュプル棒11に引っ張り、目標本体8及び剛性棒ハンガー13は、つり車軸48の周りに一緒に速く回転し、これによって、対象車両6の速度又は制御に影響を与える障害物として、対象車両6による検出から目標本体8を迅速に除去する。このような方法で、従動後トロリー組立体28及び追従前トロリー組立体42の機能及び制御と組み合わせて、目標本体8は、対象車両6の前における、又は対象車両6と第2のシミュレーション目標本体との間の車両又は障害物の存在又は突然の出現のシミュレーションを可能にする。突然の出現は、「カットイン」及び「カットアウト」交通操縦をシミュレートするために、目標本体8の配備状態の「ステップ変化」とも考えられる。
【0052】
図1Bは、「カットイン」操縦(例えば、車両6の移動通路への車線変更をシミュレートする)を示し、
図1Cは、対象車両6の前における車両8又は障害物の除去又は消失(例えば、車両6の移動通路から外への車線変更をシミュレートする)を示し、先行車両の後部で対象車両6の車間距離の大きさの「ステップ変化」を引き起こす。この機能を使用して、道路又はハイウェイから出る対象車両と同じ車線で先行車両をシミュレートすることもできる。
【0053】
図1Aに戻って説明する。通常の方法で実世界車両負荷条件をシミュレートする動力計組立体12と連携して、目標本体8、8’の制御を、対象車両6のシミュレーション運転と連携させる。駆動カバー14の後部でモーター駆動装置(図示せず)に接続された制御ケーブル(図示せず)によって、目標本体8、8’を移動させる。後可動レール止め具16及び前可動レール止め具18は、トロリー止め具20、20’に係合して、フェールセーフ機構としての機能を果たし、連接トロリー組立体22及び非連接トロリー組立体22’が設計移動限界を超えないようにする。
【0054】
動力計組立体12を用いた実験室試験中に、排気ガス、微粒子物質、及び微粒子数分析システム(図示せず)を使用して、適切な場合、一定容積容量サンプリング(CVS)システム(図示せず)に接続されたサンプリングホース26を介してサンプルを抽出することによって、車両排気管24から出る排気放出物を測定してもよく、自律縦速度又はブレーキ制御を有する車両のエネルギー効率、運転性、及びブレーキ応答を、検討又は評価してもよい。
【0055】
任意選択された縦速度制御を使用する車両の場合、自律モードで動作する車両で実行される試験に対する放出物及び効率の結果を、従来モードで動作する車両で実行される試験、即ち、人間又はロボットの運転者によって、又は試験サイクルにわたる車両制御器の直接電子操作によって制御される試験に対する結果と比較するためにこの装置を使用することによって、自律制御モードの放出物及びエネルギー効率に対する影響を判定することができる。
【0056】
連接トロリー組立体22及び非連接トロリー組立体22’は、動力計組立体12に向かう又は動力計組立体12から離れる位置及び速度を指令するプログラム可能制御器34(任意選択的に、試験セル自動システムに統合可能である)からの制御信号に応じて、ローラー32、44、32’上のトロリートラック30に沿って移動する。任意選択的に、動力計組立体12の動作と連携される開ループ入力、又は、動力計通信ケーブル38又は個別電子接続部(図示せず)を介して電子的に通信する動力計制御器36又は車両6自体からの車両速度信号に基づいて計算から得られる閉ループ入力であるように、制御器34の入力を選択する。
【0057】
制御器34への直接開ループ動的信号入力により、可動目標本体8、8’は、動力計組立体12上の対象車両6と目標本体8、8’との間の所望の動的車間距離4、4’のスケジュールに従って移動し、これによって、対象車両6の自律システムセンサーに対する1つ又は複数の車両の存在をシミュレートし、対象車両6の自律又は自動制御システムは、内部アルゴリズム及び較正に従って反応する。
【0058】
1つの動作モードにおいて、制御器34は、連接目標本体8と対象車両6との間の車間距離4又は非連接目標本体8’と対象車両6との間の車間距離4’を動的に変更し、所定の車間距離スケジュールに従い、前の路上試験、又は同じ車両タイプを用いて実行されるべき路上試験中に同じ距離スケジュールに従って先行車両に追従しながら、能動速度及びブレーキ制御動作を再現する方法で能動速度又は自動ブレーキ制御を車両が実行するようにプログラムされている。
【0059】
車両自体から得られない、実験室における後の再現又はシミュレーションに対して車間距離が測定されるべき路上試験の前に、又は何らかの理由で車両からセンサー関連データを監視しないことが望ましい場合、車間距離測定デバイス40を、任意選択的に、対象車両6に設置する。車間距離測定デバイスは、使用される場合、アフターマーケット自律車両制御単眼又は双眼カメラシステム、又は、レーダーベース、ライダーベース又はレーザーベースのシステムであってもよい。同じ車間距離測定デバイス40を、実験室において後で使用して、フィードバックシステムを与え、シミュレーション物理的車両の動的場所を与えることができる。
【0060】
第2の動作モードにおいて、制御器34は、連接目標本体8と対象車両6との間の車間距離4又は非連接目標本体8’と対象車両6との間の車間距離4’を動的に変更し、対象車両6の速度が、所望の車両速度スケジュール(例えば、EPAの都市動力計運転サイクル(UDDS)又はハイウェイ燃費試験(HWFET)サイクルなどの規制試験サイクル)に従うようにプログラムされている。動力計制御器36又は車両6からの速度パラメータをフィードバックとして用いた制御器34の閉ループ動作は、車両6が所望の速度スケジュールに厳密に従うことを保証する。
【0061】
対地速度vaが、連接目標本体8又は非連接目標本体8’のシミュレーション実世界車両速度を表し、vdが、動力計組立体12上の対象車両6の速度、即ち、対象車両6自体又は動力計制御器36によって検出される速度を表す場合、vaを、次式によって定義することができる。
va=vd+vr
但し、vrは、目標本体と対象車両6との間の相対速度である。vaは、実世界基準フレームにおける目標本体の対地シミュレーション速度として解釈される。vaは、実世界基準フレームにおける目標本体の運動によってシミュレートされる別の車両の類似実世界速度であり、実際の車両が、同じ車間距離4であり、vaと同じ速度で走行していた場合、実世界で実際の車両に反応するのと同じ方法で、対象車両6が反応するようにする。
【0062】
第3の動作モードにおいて、制御器34は、目標本体8と車両6との間の車間距離4を動的に変更し、目標本体8の対地速度(即ち、実世界道路速度を表す速度)が、所望の対地速度スケジュール(例えば、EPAのUDDS又はハイウェイ燃費試験(HFET)などの規制試験サイクル)に従うようにプログラムされている。このように目標本体8を動作させることによって、まるで、車両自体の速度ではなく「交通の速度」が所望の又は規制試験サイクルの速度に従う実際の交通条件で対象車両6が動作していたかのように、対象車両6が動作するようにする。対象車両6自体は、所望の速度サイクルに従うのではなく、所望のサイクルによって表された交通に組み込まれた自律車両として動作する。従って、この種の動作中に測定される放出物及びエネルギー効率は、所望のサイクルの速度で流れる実際の交通において実世界で得られる測定値を表す。
【0063】
更に、前トロリー組立体42は、前トロリーローラー44上のトロリートラック30に沿って移動し、アクチュエータ46によって後トロリー組立体28に可変的に接続される。後トロリー組立体28及び前トロリー組立体42は一般的に、トラック30に沿って一緒に移動するけれども、アクチュエータ46の任意選択的な伸長により、目標本体8は、つり車軸48の周りに前方へ速く回転し、これによって、対象車両6のシミュレーション前進運動の妨害から目標本体8の突然の消失を引き起こす。アクチュエータ46の収縮により、目標本体8は、つり車軸48の周りに後方へ速く回転し、これによって、対象車両6の前進運動の障害物として目標本体8の突然の出現を引き起こす。このようにして、制御器34の信号を介したアクチュエータ46の意図的な伸長及び収縮は、要望通りに、先行車両の突然の出現又は消失をシミュレートするために、目標本体8の突然の出現又は消失を引き起こす。この機能は、上述のように、目標本体8を用いて、他のシミュレーション車線(図示せず)からの、又は他のシミュレーション車線への車線変更をシミュレートするのにも効果的である。
【0064】
目標本体8、8’の運動を実験室職員から隔てるために、動力計試験セル室に隣接する別室にVLSCTA2組立体を収容するのが望ましい。又は、室内試験実験室に設置された対象車両6のセンサーに見える室外にVLSCTA2を収容するのが望ましい。この目的のために、光、レーダー信号及びライダー信号を通す特殊ガラスで構成された窓50を、任意選択的に、VLSCTA2と動力計組立体12、60(
図3A)との間に設置する。この追加特徴を、ここに記載の試験モードの何れかのために使用することができる。
【0065】
圧力、温度及び湿度の周囲空気条件を個別に制御することができる気候制御室(図示せず)に、試験実験室を収容してもよい。このような実験室は、試験結果の最高精度、及び制御変数を除いて同一であることを意図する試験間の最高精度のために、実験室で再現又はシミュレートされるべき前の実世界運転条件を反映する周囲空気条件の再現又はシミュレーション、又は関心のある特定の周囲空気条件のシミュレーションを可能にする。
【0066】
代わりに、動的周囲空気条件を再現及びシミュレートするよりコスト効率の良い実装形態は、最近市販されている「環境条件シミュレータ」52を使用する。環境条件シミュレータ52は、標準放出物試験実験室の使用又は連続使用を可能にしながら、試験中に対象車両6のパワートレインが受ける周囲条件を動的に変更し、所望の周囲空気条件を再現及びシミュレートするより少ない資本集約的手段を提供する。この場合、周囲空気圧力、温度及び湿度条件を、環境条件シミュレータ52によって生成し、吸気ホース56によって対象車両6のエンジン吸気システム(図示せず)に、及び排気ガスホース54によって車両の排気管24に環境条件シミュレータ52を接続することによって、パワートレイン及び必要な車両センサーだけに適用する。環境条件シミュレータ52は、固定選択値、又は要望通りにプログラム可能制御動的値に、吸気圧力、排気背圧、及び吸気湿度を制御し、又は対象車両6の速度及び動力計組立体12上の負荷と適切に同期して実世界試験中に記録される条件を模倣する。
【0067】
図1Bに示すような先行車両の「カットイン」操縦及び
図1Cに示すような「カットアウト」操縦に対する対象車両6の安全システムの応答を試験する試験方法と併せて、
図1Aの装置を使用することもできる。カットイン操縦をシミュレートするために、対象車両を、上述のように、先行車両の存在によって制御する。例えば、連接目標本体8を非配備状態で制御しながら、非連接目標本体8’を、上述の方法の1つで制御する。カットイン操縦をシミュレートする適切な時に、車両6の応答を書き留める又は測定する対象車両6と非連接目標本体8との間に、目標本体8を迅速に配備する。これは、非常ブレーキの有効性を判定する、又は「カットイン」操縦に対する任意の他の車両6のパラメータの反応を測定することであってもよい。
【0068】
図1Cに示すような「カットアウト」操縦をシミュレートするために、対象車両6と非連接目標本体8’との間に設置された連接目標本体8によって表される先行車両のシミュレーション存在によって、対象車両6を制御する。カットアウト操縦をシミュレートする適切な時に、連接目標本体8を、迅速に引っ込め又は配備せず、これによって、非連接目標本体は、車両6の応答を書き留める又は測定する「新しい」先行車両に突然になる。これを使用して、「カットアウト」操縦に対する任意の車両6のパラメータの反応を測定してもよい。
【0069】
図2は、対象車両6からのシミュレーション距離で、及び対象車両6に対するシミュレーション速度で相互作用車両の仮想存在をシミュレートし、これによって、対象車両からの可変車間距離を表し、車両試験実験室で対象車両6に対する可変速度で走行する1つ又は複数の可動仮想目標車両を電子的に生成するために使用される電子車両縦速度制御試験装置(eVLSCTA)63を示す。eVLSCTA63は、対象車両6の前でシミュレーション車両を電子的に出現又は消失させることができ、対象車両6に対して可変開始又は終了速度及び可変車間距離で移動する先行車両をシミュレートすることができる。eVLSCTA63は、対象車両6のレーダー送信器/受信器から信号を受信し、搭載されている場合、対象車両6に関するシミュレーション車両の所望のシミュレーション相対場所及び相対速度に対応する信号を同報通信する1つ又は複数の電子レーダー受信器/送信器55、対象車両6のライダー送信器/受信器から信号を受信し、搭載されている場合、対象車両6に関するシミュレーション車両の所望のシミュレーション相対場所に対応する1つ又は複数の信号を放出する1つ又は複数のライダー受信器/送信器57、及び表示画面61を提供することによって、1つ又は複数の他の車両の存在をシミュレートする統合試験ラックで構成されている。
【0070】
対象車両6又は動力計制御器36からの速度フィードバック信号に基づいてシミュレーション目標車両の場所及び速度を制御することによって、まるで、より詳細に上述のように物理的目標本体8の運動に対する対象車両6の応答に類似の方法で、シミュレーション車両と同じ相対場所及び運動を有する実際の車両を用いた実世界で、対象車両6が動作していたかのように、電子的シミュレーション車両に応答することを対象車両6の速度制御器に強制する。
【0071】
図3Aは、2つの回転駆動車輪だけを提供する二輪シャシー動力計組立体60を用いて自律車両を試験する試験装置を示す。アンチロックブレーキ及び自律速度制御を有する現代の車両において、非回転車輪は通常、車両自体の診断システムによって故障状態を検出する。このような状態下で、上述のように、車両を試験することができない。
【0072】
二輪動力計組立体60で試験するために、対象車両6の診断システムは、非回転車輪62(1つだけ示す)を含む各車輪速度センサーから有効な速度センサー入力を受信する必要がある。これを行うために、特定の対象車両6の型式及びモデルと適合する統合車輪速度センサーを含む追加車輪ハブ64(1つだけ示す)を、二輪動力計組立体60上の駆動車輪68(1つだけ示す)の外部に中心で固定する。これを達成する1つの方法は、追加車輪ハブ64が駆動車輪68と同じ速度で回転するように、追加車輪ハブ64を、駆動車輪68のハブスタッド又は耳付きナットにボルト締めすることである。より詳細には、幾つかの車両ハブが逆回転を検出するので、非回転左側ハブを回転右側車輪の外部に装着するのが有利であり、逆もまた同様に有利である。回転防止ストラップ70(片側だけ示す)によって、追加車輪ハブ64が、(内部軸受摩擦のために)自由に回転するのを防止する。
【0073】
試験の前に、二輪動力計組立体60で動作しながら、非回転車輪ハブと一体になっている対象車両6の元の車輪ハブ速度センサーを、対象車両6の配線ハーネス入力(図示せず)から分離する。追加ハブ64の一体型速度センサー(図示せず)を、横パターンで配線ハーネス入力に延長配線ハーネス66で接続する。即ち、右駆動車輪外部装着ハブを、左非駆動車輪ハブの場所で車両6の配線ハーネスに接続し、逆もまた同様である。なぜなら、幾つかの車輪ハブも、逆の運動を検出するからである。駆動車輪68の外側に装着されるべき非駆動車輪ハブに対して、追加駆動車輪ハブ64を180度回転させる必要があるので、追加駆動車輪ハブ64は、横に接続されていない場合、所望よりも反対方向に回転しているように見える。
【0074】
図3Bは、記載のように車両6の駆動車輪68に装着された追加車輪ハブ64の詳細図を示す。
【0075】
図4は、駆動車軸動力計を用いた車両試験実験室で対象車両6からの可変車間距離4で相互作用車両の存在を物理的にシミュレートするために車両縦速度制御試験装置(VLSCTA)2を使用する方法を示す上面図である。シャシー動力計組立体12又は二輪動力計組立体60の代わりに、個々の駆動車軸電気動力計102、104、106、108を使用して、通常の方法で車両6に現実的な実世界負荷を与える。
【0076】
試験の設置及び効率を簡単にするために、一体型車軸軸受及びロッキングハブ78、80、82、84を有する専用駆動車輪70、72、74、76を、通常の車輪の代わりに、試験車両6に装着する。動力計102、104、106、108は、移動可能であり、床板(図示せず)に都合良く装着されてもよく、シャシー動力計12、60と同じ機能を果たす。
【0077】
一体型車軸軸受及びロッキングハブ78、80、82、84を有する専用車輪70、72、74、76は、駆動車軸86、88、90、92が一体型車軸軸受内で自由に回転するのを可能にし、即ち、試験中に「アンロック」された場合、車輪からの選択可能分離(即ち、「自由車輪機構」)を可能にする。しかし、動力計を設置する場合、駆動車軸86、88、90、92は、動力計入力軸94、96、98、100を係合させる。動力計入力軸を「ロック」位置に設定する場合、試験用の所望の場所に車両を運転及び移動させることができるように、駆動車軸86、88、90、92を、通常の方法で専用車輪70、72、74、76に接続する。車両に実世界負荷をかけるこの代替の手段を除いて、この装置を用いた試験を、上述の他の動力計装置を用いた試験と同様に実行する。
【0078】
幾つかの例において、車両縦速度制御試験装置は、動力計組立体によって負荷をかけられている間、能動速度制御を実行している車両から離れて配置される第1の可動目標本体を含む。更に、車両縦速度制御試験装置は、第1の可動目標本体と車両との間の距離を変更し、(i)車両の速度パラメータが、動力計組立体又は車両からの速度パラメータフィードバックに基づいて所望の車両速度スケジュールに従い、(ii)第1の可動目標本体の速度及び速度パラメータフィードバックの合計が、所望の対地速度スケジュールに従い、又は(iii)第1の可動目標本体と車両との間の距離が、所望の距離スケジュールに従って増加するようにプログラムされている制御器を含む。装置は、車両から離れて配置される第2の可動目標本体を更に含んでもよく、制御器は、第1の可動目標本体の配備状態を変更し、第1及び第2の可動目標本体のうち最接近可動目標本体と車両との間の距離のステップ変化を引き起こすように更にプログラムされていてもよい。装置は、第2の可動目標本体と車両との間の距離を変更し、第1の可動目標本体を配備していない間、合計が所望の対地速度スケジュールに従うように更にプログラムされていてもよい。装置は、車両のパワートレイン又は排気システムに調整空気を供給するように構成されている動力計組立体又は大気シミュレーションシステムを密封する大気シミュレーション室を更に含んでもよい。動力計組立体は、車両の1つ又は複数の回転車輪に回転力を与えるように構成されているシャシー動力計であってもよく、装置は、車両の機外の回転車輪に装着され、車両の非回転車輪速度センサー入力に電気的に接続された車輪速度センサーを含むハブ組立体を更に含んでもよい。装置は、可動目標本体と車両との間に配置された光、光探知及び測距信号、又はレーダー信号を通す面を更に含んでもよい。
【0079】
幾つかの例において、車両縦速度制御試験装置は、動力計組立体によって負荷をかけられている間、能動速度制御を実行している車両と連動して動作するように構成されている第1の電子仮想目標シミュレータを含む。更に、車両縦速度制御試験装置は、第1の電子仮想目標シミュレータの出力信号を変更し、(i)車両の速度パラメータが、動力計組立体又は車両からの速度パラメータフィードバックに基づいて所望の車両速度スケジュールに従い、(ii)第1の電子目標シミュレータによってシミュレートされる仮想可動目標のシミュレーション速度及び速度パラメータフィードバックの合計が、所望の対地速度スケジュールに従い、又は(iii)仮想可動目標と車両との間のシミュレーション距離が、所望のスケジュールに従って増加するようにプログラムされている制御器を含む。装置は、車両と連動して動作するように構成されている第2の電子仮想目標シミュレータを更に含んでもよく、制御器は、下層可動目標の配備状態を変更し、シミュレーション距離のステップ変化を引き起こすように更にプログラムされている。装置は、車両のパワートレイン又は排気システムに調整空気を供給するように構成されている動力計組立体又は大気シミュレーションシステムを密封する大気シミュレーション室を更に含んでもよい。動力計組立体は、車両の1つ又は複数の回転車輪に回転力を与えるように構成されているシャシー動力計であってもよく、装置は、車両の機外の回転車輪に装着され、車両の非回転車輪速度センサー入力に電気的に接続された車輪速度センサーを含むハブ組立体を更に含んでもよい。
【0080】
例示的な方法
特定の車両速度サイクルに従うようにしながら、又は制御車両速度サイクルでシミュレーション車両に追従することによって表されるシミュレーション交通流内で動作するようにしながら、縦速度、加速度、又は車間距離の能動制御を用いて車両の燃料経済性及び排気放出物を正確に測定する多くの例示的な試験方法について後述する。他の試験方法は、適切な場合、任意の車両タイプ用のエネルギー効率、燃料経済性、又は放出物に対する縦制御システムの影響を定量化することによって、縦運動制御較正及びアルゴリズム変更の影響を更に判定することである。
【0081】
更に、縦速度、加速度、又は距離制御を用いて車両安全特徴の性能を測定する追加試験方法について説明する。例えば、シミュレーション交通シナリオを用いて非常ブレーキの性能及び有効性を試験する。
【0082】
例示的な実験室試験方法の各々は、動力計を用いた車両に作用する合計可変力を再現又はシミュレートすることを含む。力は、前の実世界運転中に同じ車両又は同様の車両に作用した再現力、又は、同様の試験条件下で、例えば車両速度及び道路勾配条件に基づいて実世界で車両に作用する力を近似するシミュレーション推定力であることができる。合計力は、車両の質量、加速度、速度、道路勾配、周囲大気条件、及び隣接車両に対する反応に起因する自律制御システム挙動(但し、これらに限定されない)を含む多くの要因の組み合わせに基づいていることができ、又は関心のあるシミュレーション力に基づいていてもよい。
【0083】
動力計試験は通常、排気後処理に対する冷却効果をシミュレートする対象車両6の下で、冷却用のパワートレイン放熱器を通る路上空気流をシミュレートするために、対象車両6の前に置かれた可変速度ファンを使用する。代わりに、後処理用の任意選択的な「側面冷却」で車両6の放熱器に対する冷却を行うために、より小さい可変速度ファンを使用することがある。実験室試験の場合、対象車両6の前に置かれた冷却ファンは、自律速度制御センサーのうち1つ又は複数のセンサーを妨げることがあるので、通常の方法と異なる方法で、放熱器冷却を行う必要がある。1つの冷却の選択肢は、閉位置でフードを有する車両の下からエンジン室を通る空気を吸い込み、これによって、放熱器を通る空気を吸い込むことである。別の選択肢は、様々なセンサーの視野の外側で、車両の前におけるより小さいファンを使用することである。しかし、この選択肢は、車両の自律センサーの多少の理解を必要とする。何れの選択肢も、対象車両6の放熱器を通る空気流を冷却するために使用可能であり、近年、普及している車両の底のカバーパネルの一部を除去又は修正する必要があることがある。
【0084】
例示的な試験方法の各々は、車両にシミュレーション負荷をかけることに連携した所望の変化する周囲環境条件の再現又はシミュレーションのための第2の要素を含む。所望の条件は、前の路上試験中に受ける実際の周囲条件に基づいていてもよく、又は関心のある任意の他の条件のシミュレーションに基づいていてもよい。これは、環境室を用いて所望の条件に全車両をかけることによって、又は所望の条件にパワートレイン及び関連センサーだけをかけることによって、例えば、エンジン吸気圧力、温度、及び湿度を調節することによって、及びICEパワートレインの場合、適切な排気流背圧を与えることによって達成されてもよい。これを行う装置は、上述されている。同じ環境条件で関連センサーを密封することは、車両設計に応じて必要であることもある。
【0085】
例示的な試験方法の各々は、実際又はシミュレーション車両負荷、実際又はシミュレーション周囲環境条件、及び実際又はシミュレーション交通条件によって定義される同じ条件下で実世界動作に使用される同じパワートレイン及び安全特徴較正を対象車両が使用するようにする第3の要素を含む。試験される対象車両6の場所、速度、及び加速度と適切に連携して、1つ又は複数の車両の物理的又は電子的シミュレーションによって、実際交通条件をシミュレートすることができる。
【0086】
例示的な試験方法の各々の第4の要素は、ICE車両の場合に排気放出物の測定、及びパワートレイン又は車両のエネルギー効率又は燃料経済性の測定又は判定を含む。ICE車両の場合、排気ガスのガス状及び微粒子放出物を、サンプリングして、研究開発の目的で関連規制基準又は他の測定基準と比較し、電気自動車の場合、エネルギー消費測定を、通常の方法で行う。実世界路上試験によって先行される実験室試験の場合、PEMS放出物測定値及び車両速度を、連続的に記録してもよい。次に、路上車両速度スケジュール、道路勾配、及び周囲条件を実験室でシミュレートする後の実験室試験を確認するために、PEMSデータを使用することができる。
【0087】
図5~
図7は、車両負荷、周囲条件、及び関連交通条件を再現又はシミュレートしながら、車両の排気ガス放出物及び燃料経済性を測定する、又は、自律縦速度、距離、又は加速度制御、又は関連安全特徴を有する車両の非常ブレーキ又は他の防御安全特徴の性能を評価する様々な例示的な試験方法を示す。これらの方法は、車両依存道路負荷係数に基づく道路負荷制御機能を有する動力計を使用して、及び車両質量及び道路勾配の影響をシミュレートすることによって、適切な合計道路負荷をシミュレートすることを必要とする。これらの方法に従って試験を実行することによって、このような自律縦制御を有する車両の放出物及びエネルギー効率を、異なるセットの周囲気候条件及び交通条件下の同じ又は同様の車両、又は異なるパワートレイン又は自律制御較正を有する同じ又は同様の車両と比較することができる。このように、方法は、性能及び安全の目的で、パワートレイン、自律車両センサー及びアルゴリズムを較正し、規制目的で、車両のエネルギー効率及び排気放出物に対する自律縦制御特徴の影響を判定するのに有用である。
【0088】
車両速度の関数である負荷に少なくとも部分的に基づいている負荷を与えるように動力計をプログラムする「道路負荷制御」モード、共通動作モード用に構成されている動力計を用いて、
図5~
図7に示す例示的な試験方法を実行する。この速度の従属項は、追加パラメータが典型的に、道路傾斜又は勾配の再現又はシミュレーションを考慮しながら、他のパラメータ自体(例えば、周囲空気条件)の関数であることができる。シャシー動力計12、シャシー動力計60、及び車輪ハブ動力計102、104、106、108を含む、この機能の能力を持つ任意の動力計は、適切である。更に、当業者は、エンジン動力計を用いたループ内エンジン手法を用いた試験に方法を適用することができることが分かる。
【0089】
任意選択的に、
図5~
図7に示す例示的な試験方法の何れかは、周囲大気条件シミュレータ52、又は代わりに、所望の気候条件が、偶然利用できる実験室周囲条件と異なる場合、正確な試験を実行する全車両「環境試験室」を使用することができる。
【0090】
任意選択的に、
図5~
図7に示す試験方法は、異なる環境条件における後の試験の前に、又は車両及び/又は較正を修正し、再試験して変更の影響を判定する前に、又は実世界運転の後の実験室シミュレーションで用いる実世界速度スケジュール、周囲気候条件、及び実世界「車間距離」スケジュールを取得及び記録するために、同じ実世界環境条件の実験室シミュレーションを確認する際の後の使用のために放出物及び/又はエネルギー効率データを取得する実世界路上試験によって先行されてもよい。代わりに、既知の速度又は車間距離スケジュールにわたる動作が望ましい場合、及び実験室確認を必要としない場合、実世界試験を回避することができる。
【0091】
図5について説明する。第1の例示的な試験方法110は、上述のように、所望の速度スケジュール(例えば、規制速度ベースの試験サイクル、又は前の実世界運転から得られる速度サイクル)に従って動作するようにした自律車両を試験することに関する。この場合、VLSCTA2装置を使用して、対象車両6が所望の速度サイクルに従って対象車両6の縦速度を制御するようにする外部交通条件をシミュレートする。この方法により、動的周囲条件下で任意の実世界ルート又は所望の車両速度スケジュールに対する実世界測定値を表す自律車両に対して、排気放出物、燃料経済性又はエネルギー効率測定値、及び自動ブレーキ活動を得ることができる。これは、上述のように、所定の実世界負荷及び周囲条件スケジュールを再現しながら、又は関心のある所望の実世界負荷及び周囲条件スケジュールをシミュレートすることによって、行われる。
【0092】
実世界又は他の車両速度スケジュール及び関連道路勾配スケジュールを、研究者の目的のために、研究者によって選択する。例えば、シミュレーションルートは、高い交通量、ラッシュアワー中の軽量乗用車の通勤路であってもよく、又は各々が大量通勤路である多くのサブルートを含む長時間ルートであってもよく、又は規制当局者又は自動車製造業者にとって関心のある任意の他のルートであってもよく、又は、試験ルートを、既存の速度及び道路勾配スケジュールによって表してもよい。
【0093】
実世界スケジュールを取得する場合、周囲圧力、周囲温度、及び湿度(但し、これらに限定されない)を含む、得られる車両速度スケジュール、道路勾配スケジュール、及び周囲気候条件スケジュールを更に記録しながら、要望通りに、設定され、記録される自律速度制御設定点を有する所望の道路ルートで、車両6を運転する。大気圧力、温度、湿度、及び対気速度測定値を全て、適切な周波数(例えば、1Hz)で記録する周囲大気条件の連続更新を行うために、搭載「測候所」を、一時的に設置して使用することができる。別の方法で、試験の目的によって、代替の速度スケジュール及び道路勾配スケジュールを選択又は生成する。選択速度スケジュールを、VLSCTA制御器34又はeVLSCTA制御器にアップロードし、適切な動力計負荷パラメータを、通常の方法で動力計制御器36に入力する。
【0094】
動作112で、ルート、車両速度、勾配、及び気候スケジュールを取得するように、任意選択的路上試験を実行する。動作114で、速度を、道路又は他の所望のスケジュールから選択してもよい。動作116で、車両を動力計に適用する。動作118で、適切な場合、ACC制御器を設定してもよい。動作120で、周囲大気条件の再現又はシミュレーションを開始してもよい。動作122で、対象車両速度フィードバックを用いて車両速度を達成する閉ループ制御で、シミュレーション車両を動作させてもよい。
【0095】
図6について説明する。第2の例示的な試験方法124は、「車間距離」4の開ループ制御に基づいている。対象車両の自律センサーの出力が、車間距離を示すアクセス可能パラメータを与え、記録及び解釈されることができる場合、車間距離を、路上試験を再現する実験室においてVLSCTA2及びeVLSCTA装置を用いて後で再現することができる。車間距離が、アクセス可能パラメータでなく、このパラメータに基づいて試験を再現するのが望ましい場合、個別車両間の車間距離測定装置を一時的に設置することができる。例えば、この目的のために、連続車間距離出力を用いたアフターマーケット自律車両単眼又は双眼カメラシステム、レーダーシステム、又はライダーベースのシステム、又は他の電子システムを使用することができる。
【0096】
ICE対象車両6の場合、任意選択的に、携帯放出物測定システム(PEMS)を使用して、路上試験又は他の手段に対する実世界排気管放出物及び燃料経済性(炭素収支技法による)データを収集してもよく、例えば、燃料流量計(図示せず)を使用して、後の比較のために任意選択的直接燃料消費データを得てもよい。BEV車両6の場合、任意選択的に、現場(図示せず)でよく使用される電気的手段を用いて、電力消費量を、全実世界運転にわたって記録する。
【0097】
車両6の制御器エリアネットワーク(CAN)バス又は車載診断(OBD)ポートからのデータロギングは、車両速度及び自律制御データ項目を含む車両動作パラメータを記録する1つの選択肢である。何らかの理由でCANバスへの接続を回避するのが望ましい場合、他の市販の速度測定手段(例えば、GPS受信器又は他の手段)を使用することができる。
【0098】
動作126で、ルート、車両速度、勾配、及び気候スケジュールを取得するように、任意選択的路上試験を実行する。動作128で、車間距離スケジュールを、道路又は他の所望のスケジュールから選択してもよい。動作130で、車両を動力計に適用する。動作132で、適切な場合、ACC制御器を設定してもよい。動作134で、周囲大気条件の再現又はシミュレーションを開始してもよい。動作136で、車間距離を設定する開ループ制御で、シミュレーション車両を動作させてもよい。
【0099】
例示的な方法110(
図5)又は例示的な方法124の場合、車両が前の路上試験を受けていようと受けていなかろうと、車両6、又は試験されるべき車両の一部(例えば、エンジン又はパワートレイン)を、試験実験室に持って来て、適切なタイプの動力計に対する通常の手順に従って、動力計組立体に置く、又は動力計組立体に接続する。例えば、シャシー動力計12、又はシャシー動力計60、又は駆動車軸動力計102、104、106、108は全て、十分である。他の動力計を使用してもよい。
【0100】
適切な場合、路上試験中に使用される同じ自律速度制御設定値(例えば、適応走行制御システム用の車両速度設定点)を、車両6の縦速度制御システムに入力する。この車両速度設定点は、選択速度サイクルの最高速度値であることができ、又は全試験サイクルに対して単一値だけを入力したい場合、より高い速度値であることができる。運転者又はロボットが試験中に更新値を与え、道路上で人間の運転者の動作を再現又はシミュレートし、時間が進む時に車両6が所望の速度を達成することができる限り、速度設定点は、選択速度サイクルの最高値よりも低い値であることもできる。どちらの場合でも、設定点は、実世界運転を再現するのが望ましい場合、実世界設定点と同じであるべきである。
【0101】
試験を開始する前に、所望の動的環境条件を、環境制御システム、即ち、関連環境室(図示せず)又はパワートレイン「環境条件シミュレータ」52用の制御システムに選択又はプログラムする。実験室環境条件が所望の環境条件と大幅に異なる時はいつでも、例えば、異なる気候条件で実世界道路運転をシミュレートする場合、適切な環境条件を人工的に維持することは、パワートレインが適切な較正空間で動作し、これによって、代表的な放出物を生成し、代表的なエネルギー効率を示すのに重要である。
【0102】
一旦試験が始まると、車両の縦速度制御システムの組み込みアルゴリズム、較正、及びユーザ選択設定点に従って、車両は、車両自体の速度を自動的に制御する。
【0103】
第1の例示的な試験方法110(
図5)の場合、例えばPIDループ又は他のフィードバック制御を使用することによって、対象車両6又は動力計の速度と速度スケジュールとの間の差に連続的に応じて車間距離4を動的に変更することによって、対象車両6の前の実世界試験中に記録される基準速度スケジュール、又は関心のある別の基準サイクル(例えば、規制速度サイクル)に対する対象車両6の速度の閉ループ制御を達成することができる。
【0104】
この閉ループ方法で目標本体8又は仮想目標を動的に位置決めすることは、車間距離4、又は車間距離4の変化率を連続的に変更する。試験される自律対象車両6に対する影響は、車両縦制御システム及び安全システムが、実験室試験中と同じ環境、車両速度、及び車両負荷条件下で、同じ相対運動及び同じ相対接近で、実際の車両に応答する方法で、目標本体8の運動、又は仮想目標シミュレーション運動及び接近に応答するようにすることである。
【0105】
物理的目標本体8の場合、アクチュエータ46を迅速に伸長し、つり車軸48の周りに支持棒10を回転させることによって試験車両6の高さよりも上に目標本体8を迅速に上げることによって、先行車両のシミュレーション車線変更、即ち、車両6によって検出される同じ「仮想」車線から隣接車線への車線変更のシミュレーションを達成する。この動作により、シミュレーション車両又は目標本体8を、障害物として迅速に除去し、又は対象車両6の縦制御システムによって先行車両としてもはや認識しない。
【0106】
伸長状態で試験車両6よりも上に目標本体を保持し、次に、アクチュエータ46を迅速に引っ込めることによって目標本体8を迅速に配備しながら、トロリー組立体22を介して車間距離4を設定することによって、シミュレーション車両が、対象車両6の前に先行車両として迅速に現れるようにすることもできる。このようにして、対象車両6の縦制御システム(ブレーキシステムを含む)が反応するようにする先行車両の突然の出現を、シミュレートすることができる。排気放出物、燃料経済性、及び/又は安全特徴を、試験の目的で要望通りに、処理全体にわたって監視する。
【0107】
選択速度スケジュールの最後に達するまで、試験は、このように進む。試験が、上述のように確認試験であった場合、放出物及びエネルギー効率の結果が、実世界試験結果と一致するかを確認する。試験を適切に実行すると、一致が得られるはずである。対象車両6、対象車両6の放出物制御システム、又は対象車両6の自律制御システムの変更又は較正変更を行うことができ、最大効率、性能、最小放出物、又は運転特性に対して車両システムを最適化又は較正するために、同じ速度スケジュール、道路勾配シミュレーション、及び環境条件下で、追加試験を実行する。対象車両6の制御の選択肢によって、自律速度制御システムを離脱させることができる場合、同じ速度スケジュールに車両速度を制御する人間又はロボットの運転者で、及び同じ気候及び負荷条件で、試験を再実行することができる。放出物及び効率の結果の差は、これらの条件及び速度スケジュールに関する放出物及び効率に対する自律速度制御システムの影響を示す。
【0108】
異なる環境又は周囲条件で、同じ方法で動作する同じ車両の放出物及び/又はエネルギー効率の変化を評価又は実証する目的で、後の動力計試験を実行することもできる。
【0109】
第2の例示的な方法124は、前の路上試験中に得られる記録車間距離スケジュールに従って車間距離4を制御することによって車間距離の開ループ制御を使用する点で異なる。これは、対象車両6の速度を実世界試験速度スケジュールに従って制御することを保証する1つの方法である。当然、様々な交通シナリオ及び自動ブレーキシナリオで対象車両6の挙動を検討するために、車間距離の任意の他の開ループ制御を使用することができる。
【0110】
図7に示す第3の例示的な方法138は、所望の速度スケジュール(例えば、規制速度ベースの試験サイクル)に従って流れるシミュレーション交通によって車両6を制約することによって実世界交通条件で動作しながら、自律車両6の放出物、エネルギー効率、燃料経済性、又は自動ブレーキ活動を試験することに関する。この場合、物理的シミュレーション車両又は電子的に生成されるシミュレーション車両、及び必要に応じて対象車両を先行するシミュレーション車両は、交通条件を定義し、対象車両が、シミュレーション車両と連携して対象車両の縦速度を制御し、車両の組み込みアルゴリズム及び較正に従って車両間隔を維持するようにする。方法により、同じ条件下で実世界測定値を表す試験結果を得ることができる。対象車両に対する先行車両の進入及び退出のシミュレーションを、有利に使用することもできる。
【0111】
交通又はシミュレーション車両対地速度スケジュールとしての機能を果たし、VLSCTA2又はeVLSCTA制御システム34にロードされる目的のために、所望の交通速度スケジュールを、研究者によって選択又は生成する。例えば、交通速度スケジュールは、高い交通量、ラッシュアワー中の軽量乗用車の通勤路の速度を表してもよく、又は各々が大量通勤路である幾つかのサブスケジュールを含む長時間速度スケジュールであってもよく、又は規制当局者又は自動車製造業者にとって関心のある任意の他のスケジュールであってもよい。
【0112】
試験されるべき自律又は自動縦速度制御特徴を有する車両6を、試験実験室に持って来て、動力計に置く、又は動力計に接続する。試験の前に、又は試験が進む時にそれぞれ、単一又は複数の時間依存自律速度制御設定値を、対象車両6の制御システムに選択及び入力する。例えば、適応走行制御システムに対する単一車両速度設定値を、交通速度スケジュールの最高値に設定することができ、又は、単一車両速度設定値を、要望通りに変更して、実際の運転者が実世界で設定値を変更する方法をシミュレートすることができる。
【0113】
動力計上の車両を動作させる前に、試験車両6用の適切な道路負荷パラメータ、ルート用の適切な道路勾配パラメータ、及び動的環境条件を、環境制御システム、即ち、関連環境室又はパワートレイン「環境条件シミュレータ」52用の制御システムに選択又はプログラムする。実験室環境条件が所望の環境条件と大幅に異なる場合、例えば、異なる気候条件で交通を制御する際に実世界道路運転をシミュレートする場合、適切な環境条件を維持することは、パワートレインが適切な較正空間で動作し、これによって、代表的な放出物を生成し、代表的なエネルギー効率を示すのに重要である。
【0114】
一旦試験が始まると、車両縦速度制御システムの組み込みアルゴリズム及び較正に従って、及び目標本体(物理的目標本体6又は仮想電子的生成目標本体)の場所及び運動に関するセンサー入力に基づいて、車両速度を、車両縦速度制御システムによって自動的に直接制御する。動力計又は車両からの速度信号フィードバックと現在の速度スケジュール値を連続的に比較することによって、目標本体の速度及び運動方向を制御する。動的相対速度設定点、即ち、車両に対する目標本体の速度を、次式によって判定する。
vr=va-vd
但し、vaは、現在の速度スケジュール値に等しい対地実世界交通速度を表し、vdは、車両6の速度センサーフィードバックから、又は動力計制御ユニット36からの動力計速度信号フィードバックから、動力計で動作する車両の速度を表す。
【0115】
vrの連続的に更新された値に従って、目標本体8又は仮想目標の速度を連続的に変更することによって、目標本体8又は仮想目標速度の閉ループ制御を達成する。上述の試験条件中に、これにより、車両6の縦制御システム及び安全システムは、同じ環境及び交通条件下で、同じ相対運動及び同じ相対接近で、実世界で車両6を先行し、選択速度スケジュールに等しい対地道路速度スケジュールで走行する実際の車両に応答するのと同じ方法で、目標本体8の運動、又は仮想目標シミュレーション運動及び接近に応答する。
【0116】
選択速度スケジュールの最後に達するまで、試験は、このように進む。試験をこの方法に従って実行する場合、放出物及びエネルギー効率の結果は、実際の車両が、対象試験車両を先行し、同じ対地車両速度スケジュールに従って移動する実世界試験結果と一致する。次に、最大効率、性能、又は最小放出物に対して車両システムを最適化するために、同じ交通速度、勾配、及び環境条件下の後の再試験で、対象車両6、対象車両6の放出物制御システム、又は対象車両6の自律制御システムを変更することができる。自律速度制御システムを離脱させることができる場合、同じvd速度スケジュールに車両6の速度を制御する人間又はロボットの運転者で、及び同じ気候及び距離ベースの道路勾配条件で、試験を再実行することができる。放出物及び効率の結果の差は、同じ速度スケジュールに関する放出物及び効率に対する自律速度制御システムの影響を示す。
【0117】
代わりに、自律速度制御システムを離脱させた後、交通速度又はva速度スケジュールに車両速度を制御する人間又はロボットの運転者で、試験を再実行することができる。その場合、放出物及び効率の結果の差は、交通速度で連続的に移動するのではなく、一般的な交通速度における交通と連動している縦速度制御システムに起因する自律速度制御システムの影響を示す。
【0118】
動作140で、ルート、車両速度、勾配、及び気候スケジュールを取得するように、任意選択的路上試験を実行する。動作142で、速度を、道路又は他の所望のスケジュールから選択してもよい。動作144で、車両を動力計に適用する。動作146で、適切な場合、ACC制御器を設定してもよい。動作148で、周囲大気条件の再現又はシミュレーションを開始してもよい。動作150で、対象車両速度フィードバックを用いて先行車両速度を達成する閉ループ制御で、シミュレーション車両を動作させてもよい。
【0119】
ここに開示の処理、方法、又はアルゴリズムは、任意の既存のプログラム可能電子制御ユニット又は専用電子制御ユニットを含むことができる処理デバイス、制御器、又はコンピュータに送出可能であり、処理デバイス、制御器、又はコンピュータによって実施可能である。同様に、書き込み不可能記憶媒体(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)デバイス)に永続的に記憶された情報、及び書き込み可能記憶媒体(例えば、フロッピーディスク、磁気テープ、コンパクトディスク(CD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス)に変更可能に記憶された情報、及び他の磁気媒体及び光媒体(但し、これらに限定されない)を含む多くの形で、制御器又はコンピュータによって実行可能なデータ及び命令として、処理、方法、又はアルゴリズムを記憶することができる。処理、方法、又はアルゴリズムを、ソフトウェア実行可能オブジェクトで実施することもできる。代わりに、適切なハードウェア構成要素(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、状態機械、制御器又は他のハードウェア構成要素又はデバイス)、又はハードウェア、ソフトウェア及びファームウェア構成要素の組み合わせを用いて、処理、方法、又はアルゴリズムを全部又は一部において具体化することができる。
【0120】
明細書で使用される用語は、限定ではなく説明の用語であり、開示及び特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができるものとする。上述のように、明示的に説明又は例示されない更なる実施形態を形成するために、様々な実施形態の特徴を組み合わせてもよい。利点を与えるように、又は1つ又は複数の所望の特性に対して他の実施形態又は先行技術実装形態よりも好ましいものとして、様々な実施形態が説明されているけれども、特定の用途及び実装形態に左右される所望の全システム属性を達成するために1つ又は複数の特徴又は特性を妥協して解決することができることが、当業者は認識する。これらの属性は、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、サイズ、有用性、重量、製造可能性、組立容易性など(但し、これらに限定されない)を含む。そのようなものとして、1つ又は複数の特性に対して他の実施形態又は先行技術実装形態よりも望ましくないものとして説明される実施形態は、開示の範囲外ではなく、特定の用途に望ましい。