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特許7564886ハイブリッド車両の制御方法、及び、ハイブリッド車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法、及び、ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20241002BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20241002BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20241002BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241002BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241002BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241002BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60W20/17
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022563245
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 IB2020000958
(87)【国際公開番号】W WO2022106861
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 淳
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-056613(JP,A)
【文献】特開2019-135111(JP,A)
【文献】特開2013-060132(JP,A)
【文献】特開2015-120485(JP,A)
【文献】特開2016-016711(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116589(WO,A1)
【文献】特開2002-283841(JP,A)
【文献】特開2015-120482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させて前記バッテリに電力を供給可能なエンジンとを備えるハイブリッド車両において、
前記エンジンの動作時間が長くなるほど値が大きくなるパラメータであって、値が強制動作閾値を下回る場合に前記エンジンを動作させる動作パラメータが、前記強制動作閾値よりも大きい場合において、暗騒音の大きさが騒音閾値を上回る場合には、前記エンジンを動作させ、前記動作パラメータが大きいほど、前記騒音閾値を大きくする、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
駆動源となるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させて前記バッテリに電力を供給可能なエンジンとを備えるハイブリッド車両において、
前記エンジンの動作時間が長くなるほど値が大きくなるパラメータであって、値が強制動作閾値を下回る場合に前記エンジンを動作させる動作パラメータが、前記強制動作閾値よりも大きい場合において、暗騒音の大きさが騒音閾値を上回る場合には、前記エンジンを動作させるとともに、前記暗騒音が大きいほど、前記エンジンの出力を大きくする、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
さらに、前記動作パラメータが停止閾値を上回る場合には、前記エンジンを停止させる、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
さらに、前記暗騒音の大きさが前記騒音閾値を下回る場合には、前記エンジンを停止させる、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両が渋滞路を走行していると判断される場合において、前記暗騒音の大きさが前記騒音閾値を下回り、かつ、前記ハイブリッド車両の車速がゼロの場合には、前記エンジンを停止させる、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記エンジンの排気路に設けられる触媒の温度である、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記エンジンの冷却水の温度である、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項8】
請求項またはに記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記エンジンの排気路に設けられる触媒の温度、または、前記エンジンの冷却水の温度であり、
前記ハイブリッド車両の外気の温度が低いほど、前記エンジンの停止判断において前記動作パラメータと比較される閾値は大きい、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記バッテリのSOCである、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項10】
請求項またはに記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記バッテリのSOCであり、
前記ハイブリッド車両の速度が速いほど、前記エンジンの停止判断において前記動作パラメータと比較される閾値は大きい、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項11】
請求項1からのいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記ハイブリッド車両のブレーキに設けられるマスターバックの負圧である、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項12】
請求項またはに記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記動作パラメータは、前記ハイブリッド車両のブレーキに設けられるマスターバックの負圧であり、
前記ブレーキの操作頻度が多いほど、前記エンジンの停止判断において前記動作パラメータと比較される閾値は大きい、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項13】
駆動源となるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させて前記バッテリに電力を供給可能なエンジンと、前記エンジンを制御するコントローラとを備えるハイブリッド車両において、
前記コントローラは、
前記エンジンの動作時間が長くなるほど値が大きくなるパラメータであって、値が強制動作閾値を下回る場合に前記エンジンを動作させる動作パラメータが、前記強制動作閾値よりも大きい場合において、暗騒音の大きさが騒音閾値を上回る場合には、前記エンジンを動作させ、前記動作パラメータが大きいほど、前記騒音閾値を大きくする、ハイブリッド車両。
【請求項14】
駆動源となるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させて前記バッテリに電力を供給可能なエンジンと、前記エンジンを制御するコントローラとを備えるハイブリッド車両において、
前記コントローラは、
前記エンジンの動作時間が長くなるほど値が大きくなるパラメータであって、値が強制動作閾値を下回る場合に前記エンジンを動作させる動作パラメータが、前記強制動作閾値よりも大きい場合において、暗騒音の大きさが騒音閾値を上回る場合には、前記エンジンを動作させるとともに、前記暗騒音が大きいほど、前記エンジンの出力を大きくする、ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法、及び、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2013-56613Aには、エンジンとモータとを備えるハイブリッド車両におけるエンジンの動作方法が開示されている。この動作方法によれば、走行時において車輪と路面との間で生じるロードノイズを考慮し、ロードノイズに起因する暗騒音が比較的大きい場合にエンジンを動作させる一方、暗騒音が小さい場合にはエンジンを動作させない。このような動作制御を行うことにより、車室内において、運転者は暗騒音によってエンジンの動作音に気づきにくくなるので、車室内における快適性の向上が図られる。
【発明の概要】
【0003】
ハイブリッド車両においては、暗騒音以外に、バッテリの残量や、エンジンが備える排気系統の触媒温度等、種々のパラメータに応じてエンジンを動作させるため、暗騒音が比較的小さい状況においてもエンジンを動作させることがある。暗騒音が小さい車室内において、エンジンを動作させると、車室内の快適性が損なわれるおそれがある。
【0004】
本発明の目的は、暗騒音が比較的小さい場合においてエンジンを動作させる機会を多くすることで、車室内における快適性の向上を図ることである。
【0005】
本発明のある態様によるハイブリッド車両の制御方法によれば、駆動源となるモータと、モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させてバッテリに電力を供給可能なエンジンとを備えるハイブリッド車両において、エンジンの動作時間が長くなるほど値が大きくなるパラメータであって、値が強制動作閾値を下回る場合にエンジンを動作させる動作パラメータが、強制動作閾値よりも大きい場合において、暗騒音の大きさが騒音閾値を上回る場合には、エンジンを動作させ、動作パラメータが大きいほど、騒音閾値を大きくする
また、本発明の別の態様によるハイブリッド車両の制御方法によれば、駆動源となるモータと、モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させてバッテリに電力を供給可能なエンジンとを備えるハイブリッド車両において、エンジンの動作時間が長くなるほど値が大きくなるパラメータであって、値が強制動作閾値を下回る場合にエンジンを動作させる動作パラメータが、強制動作閾値よりも大きい場合において、暗騒音の大きさが騒音閾値を上回る場合には、エンジンを動作させるとともに、暗騒音が大きいほど、エンジンの出力を大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、各実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係るエンジン動作制御を示すフローチャートである。
図3図3は、比較例における車両の運転状態を示すタイミングチャートである。
図4図4は、第1実施形態の車両の運転状態を示すタイミングチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係るエンジン動作制御を示すフローチャートである。
図6図6は、第3実施形態に係るエンジン動作制御を示すフローチャートである。
図7図7は、第4実施形態に係るエンジン動作制御を示すフローチャートである。
図8図8は、暗騒音制御上限値の変更制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態においては、シリーズ型のハイブリッド車両について説明するが、これに限らない。パラレル型のハイブリッド車両であってよいし、シリーズ型とパラレル型とを併用したハイブリッド車両であってもよい。また、プラグインハイブリッド車両であってもよい。
【0009】
図1に示されるように、車両100は、エンジン(内燃機関)1、発電機2、バッテリ3、電動のモータ4、ギア5、車軸6、及び、車輪7を備える。また、車両100は、シリーズ型のハイブリッド車両であり、エンジン1、発電機2、及び、モータ4が直列に接続されている。すなわち、エンジン1の動力は、車輪7の駆動源でなく、発電機2を発電させるために使用される。
【0010】
詳細には、エンジン1は、減速機(図示せず)を介して発電機2に機械的に連結され、発電機2は、バッテリ3及びモータ4に対して送受電可能に接続されている。このような構成において、エンジン1の回転駆動力は発電機2に伝達され、発電機2はエンジン1の駆動力によって発電する。そして、発電機2において発電された電力は、バッテリ3の充電、及び/または、モータ4の回転駆動に用いられる。また、モータ4への電力の供給は、発電機2及び/またはバッテリ3により行われる。
【0011】
モータ4は、ギア5を介して車軸6に機械的に連結され、車軸6は車輪7に機械的に連結される。モータ4の駆動力は、ギア5及び車軸6を介して車輪7に伝達される。車輪7はモータ4の駆動力によって回転することにより、車両100が走行する。
【0012】
さらに、車輪7には、摩擦ブレーキ8が設けられている。摩擦ブレーキ8は、車輪7に対して摩擦力を生じさせることにより、制動力を発揮する。そのため、車両100において、モータ4における回生制動に加えて、摩擦ブレーキ8における摩擦制動を行うことができる。
【0013】
車両100は、全体を制御するコントローラ10を備える。さらに、車両100は、ブレーキ力を検知するブレーキ油圧センサ21と、アクセル開度を検知するアクセルポジションセンサ22と、車輪7の回転速度を測定する車輪速センサ23と、エンジン1に関するパラメータを取得する第1温度センサ24、及び、第2温度センサ25と、摩擦ブレーキ8に関するパラメータを取得する圧力センサ26とをさらに備える。コントローラ10は、これらのセンサの各々と電気的に接続されており、検出結果が入力される。
【0014】
ここで、車輪速センサ23は、サスペンションよりも下方の車輪7の側に設けられており、車輪7の近傍において車輪7の回転速度を測定することができる。車輪速センサ23により検出される車輪7の回転速度は、車両100の速度を求めるのに用いられ、さらに、後述のように、走行中において車輪7と路面との間において発生するロードノイズを推測するのに用いることができる。
【0015】
エンジン1に設けられる第1温度センサ24は、エンジン1の排気系統(排気路)に設けられた触媒の温度を測定する。また、第2温度センサ25は、エンジン1の水冷系統に設けられており、冷媒である冷却水の温度を測定する。なお、本実施形態においては、第1温度センサ24により排気系統の触媒の温度を取得する例について説明するが、これに限られない。エンジン1の動作点等に基づいて、触媒温度を推定してもよい。
【0016】
摩擦ブレーキ8には、負圧が導入されたマスターバックを備えており、ブレーキペダルを踏みこんだ際には、マスターバックの負圧が利用されて、踏み込み力が小さくても比較的大きな摩擦制動を生じさせることができる。マスターバックの負圧は、エンジン1の回転により生成されており、圧力センサ26により取得される。
【0017】
コントローラ10は、主に車両100において、モータ4を制御するモータコントローラ11と、バッテリ3の状態を監視するバッテリコントローラ12と、エンジン1を制御するエンジンコントローラ13と、経路の設定を行うナビゲーションコントローラ14とを備える。
【0018】
モータコントローラ11は、ブレーキ油圧センサ21、及び、アクセルポジションセンサ22からの入力に応じて、車輪速センサ23により取得された車輪7の回転速度が目標回転速度となるようにトルク指令値を生成し、生成したトルク指令値をモータ4へと出力する。これによりモータ4は所望のトルクを生成することができる。
【0019】
バッテリコントローラ12は、バッテリ3における電圧及び電流を取得可能に構成されており、バッテリ3の充電状態(SOC:Stete Of Charge)を監視する。なお、以下において、バッテリ3に充電された電力量の割合(充電率)を、単にSOCと示すものとする。
【0020】
エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させるとともに、発電機2の出力を制御することで、バッテリ3のSOCを制御する。エンジンコントローラ13によるエンジン1の動作タイミングが、後述の動作パラメータに応じて定められる。
【0021】
ここで、車室内の運転者(他の乗員を含む)にとって走行時に聞こえる音のうち、エンジン1の動作音以外の音を、以下では、暗騒音と称するものとする。また、車両の走行中に車輪7と路面との間で生じるロードノイズは、暗騒音の主成分である。暗騒音が極めて大きい場合には、エンジン1の動作音は車室内の運転者に気づきにくい。そこで、エンジンコントローラ13は、暗騒音が極めて大きい場合にエンジン1を動作させることで、運転者が気づきにくい状態でエンジン1を動作できる。さらに、本実施形態においては、エンジンコントローラ13は、動作パラメータが所定の条件である場合には、暗騒音の大きさに応じてエンジン1の動作を制御する。
【0022】
なお、エンジンコントローラ13は、一例として、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを取得し、車両100の走行時において車輪7と路面との間において発生するロードノイズを求める。例えば、エンジンコントローラ13は、取得した車輪7の角速度ωを微分することにより車輪7の角加速度Aを取得し、取得した角加速度Aのばらつきを求め、そのばらつきに応じてロードノイズの大きさを推測する。エンジンコントローラ13は、角加速度Aのばらつきが大きいほどロードノイズが大きいと判断し、角加速度Aのばらつきが小さいほどロードノイズが小さいと判断する。このように、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23により取得される車輪7の角速度ωに基づいてロードノイズを求め、当該ロードノイズに基づいて暗騒音の大きさを推測する。なお、車室内にマイクが設けられ、エンジンコントローラ13は、当該マイクによる集音結果に基づいて暗騒音を推測してもよい。
【0023】
ナビゲーションコントローラ14は、不図示のGPS受信機、通信インタフェース、及び、地図データベースを備えており、運転者の操作に応じて走行経路の設定をするナビゲーション機能を有する。ナビゲーションコントローラ14は、渋滞情報が取得可能に構成されており、走行経路における渋滞の発生有無を取得することができる。
【0024】
なお、コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ10は一つの装置として構成されていても良いし、複数のブロックに分けられ、本実施形態の各処理を複数のブロックで分散処理するように構成されていても良い。また、後述の図示されるフローチャートに示される処理は、コントローラ10に記憶されたプログラムが実行されることにより行われてもよい。
【0025】
図2は、エンジンコントローラ13により実行されるエンジン動作制御を示すフローチャートである。このエンジン動作制御は、繰り返し実行される。また、エンジンコントローラ13は、この図に示されたエンジン動作制御に加えて、暗騒音レベルが極めて大きい場合には、エンジン1を動作させる。
【0026】
図2の処理においては、動作パラメータを用いてエンジン1の動作制御が行われる。動作パラメータは、エンジン1の動作時間が長くなるほど大きくなる性質を有する。また、動作パラメータは適切な数値範囲を有しており、数値範囲の強制動作閾値を下回る場合には、エンジン1の動作を開始することで、動作パラメータを大きくする。なお、エンジン1の動作後において、動作パラメータが停止閾値を上回ると、エンジン1が停止される。
【0027】
動作パラメータは、例えば、第1温度センサ24により取得されるエンジン1の排気系統の触媒温度であり、本実施形態においては、動作パラメータが触媒温度である例について説明する。動作パラメータの他の例は、後述の第5~7実施形態に示されており、第2温度センサ25により取得されるエンジン1の水冷系統における冷却水温度(第5実施形態)、バッテリ3のSOC(第6実施形態)、及び、圧力センサ26により取得される摩擦ブレーキ8のマスターバック負圧(第7実施形態)である。
【0028】
ステップS101において、エンジンコントローラ13は、動作パラメータである触媒温度が、停止閾値以上であるか否かを判定する。触媒温度が停止閾値以上であると判定される場合には(S101:Yes)、エンジンコントローラ13は、触媒温度が十分に高く、エンジン1を動作する必要がないと判断し、エンジン動作制御を終了する。一方、触媒温度が停止閾値を下回ると判定される場合には(S101:No)、エンジンコントローラ13は、エンジン1の動作要否のさらなる判断をするために、次に、ステップS102の処理を行う。
【0029】
ステップS102において、エンジンコントローラ13は、触媒温度が、暗騒音制御上限値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上の数値範囲に含まれるか否かを判定する。暗騒音制御上限値は、停止閾値よりも小さく、かつ、強制動作閾値よりも大きな値である。強制動作閾値は、活性下限温度であって、触媒温度が強制動作温度を下回る場合には、エンジン1が動作制御される。そして、後述のように、触媒温度が強制動作温度を上回る場合であっても、暗騒音が大きい場合にはエンジン1が動作制御される。暗騒音制御上限値は、そのような暗騒音に応じたエンジン1の動作制御が行われる場合の触媒温度の上限を示すものである。触媒温度が当該数値範囲に含まれると判定される場合には(S102:Yes)、エンジンコントローラ13は、さらに暗騒音に応じたエンジン1の動作要否を判断するために、次に、ステップS103の処理を行う。
【0030】
一方、触媒温度が当該数値範囲に含まれないと判定される場合には(S102:No)、エンジンコントローラ13は、暗騒音に応じたエンジン1の動作要否を判断する必要はないと判断し、さらに触媒温度に応じたエンジン1の動作要否の判断を継続するために、次に、ステップS110の処理を行う。
【0031】
ステップS103においては、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを用いて暗騒音を求める。上述のように、例えば、エンジンコントローラ13は、角速度ωの微分値である角加速度Aのばらつきに応じて、ロードノイズに起因する暗騒音の大きさを推定する。なお、エンジンコントローラ13は、当該方法に限らず、他の方法で暗騒音の大きさを取得してもよい。
【0032】
そして、エンジンコントローラ13は、1つの閾値を用いて暗騒音を2段階のレベルで判定する。詳細には、エンジンコントローラ13は、暗騒音が閾値よりも大きい場合には暗騒音が大レベルであると判定し、暗騒音が閾値よりも低い場合には暗騒音が小レベルであると判定する。
【0033】
ステップS104において、エンジンコントローラ13は、暗騒音が大レベルであるか否かを判定する。暗騒音が大レベルである場合には(S104:Yes)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させるために、次に、ステップS105の処理を行う。一方、暗騒音が大レベルでない場合には(S104:No)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させる状況ではないと判断し、エンジン動作制御を終了する。
【0034】
ステップS105において、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させる。このような制御により、触媒温度が強制動作閾値(活性下限温度)よりも大きい場合であっても、暗騒音が大レベルである場合には(S104:Yes)、エンジン1が動作される(S105)ことになる。その結果、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきにくい状態でエンジン1を動作させる触媒温度が高くなるので、車室内の快適性の維持しながら触媒温度は活性下限温度よりも高い状態を保つことができる。
【0035】
ステップS106において、エンジンコントローラ13は、触媒温度が停止閾値以上であるか否かを判定する。触媒温度が停止閾値以上であると判定される場合には(S106:Yes)、エンジンコントローラ13は、触媒温度が十分に高く、エンジン1を動作させる必要性がなくなったと判断し、エンジン1を停止させるために次にステップS107の処理を行う。一方、触媒温度が停止閾値を下回ると判定される場合には(S106:No)、エンジンコントローラ13は、さらにエンジン1の停止要否を判定するために、次に、ステップS109の処理を行う。
【0036】
ステップS107において、エンジンコントローラ13は、エンジン1を停止させる。すなわち、エンジン1を動作させることによって触媒温度が停止閾値を上回った場合には(S107:Yes)、触媒温度が十分に高くなったため、エンジン1が停止される(S107)。
【0037】
ステップS108において、ステップS103と同様に、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを用いて暗騒音を求め、その暗騒音の大きさを2段階のレベルで判定する。
【0038】
ステップS109において、エンジンコントローラ13は、暗騒音が小レベルであるか否かを判定する。暗騒音が小レベルである場合には(S109:Yes)、エンジンコントローラ13は、エンジン1の動作音が車室内で運転者に聞こえる可能性が高いと判断し、エンジン1を停止させるために、次に、ステップS107の処理を行う。一方、暗騒音が小レベルでない場合には(S104:No)、エンジンコントローラ13は、エンジン1の動作音が運転者に聞こえにくく、エンジン1の動作を継続してもよいと判断し、次に、ステップS106の処理に戻り、エンジン1の動作を継続する。
【0039】
このように、ステップS103~S109の処理においては、エンジンコントローラ13は、触媒温度が強制動作閾値(活性下限温度)を上回る場合であっても(S102:Yes)、さらに暗騒音のレベルが大きい場合には(S204:Yes)、エンジン1を動作させる(S105)。その結果、暗騒音により運転者がエンジン1の動作音が気づきにくい状態でのエンジン1の動作機会が増えるので、車室内の快適性を確保しながら触媒温度が高い状態を保つことができるので、触媒温度が強制動作閾値(活性下限温度)を下回るおそれを低減することができる。
【0040】
一方、ステップS110において、エンジンコントローラ13は、触媒温度が強制動作閾値を下回るか否かを判定する。触媒温度が強制動作閾値を下回る場合には(S110:Yes)、エンジンコントローラ13は、触媒温度を上げるために、エンジン1の動作が必要と判断し、次に、ステップS111の処理を行う。
【0041】
ステップS111において、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させる。
【0042】
ステップS112においては、ステップS106と同等の処理が行われる。すなわち、エンジンコントローラ13は、触媒温度が停止閾値以上であるか否かを判定する。触媒温度が停止閾値以上であると判定される場合には(S112:Yes)、エンジンコントローラ13は、次にステップS113の処理を行う。一方、触媒温度が停止閾値を下回ると判定される場合には(S112:No)、エンジンコントローラ13は、次に、ステップS112の処理を継続する。
【0043】
ステップS113において、エンジンコントローラ13は、エンジン1を停止させる。このようにして、触媒温度が強制動作閾値を下回った場合にはエンジン1を動作させるので、触媒温度は停止閾値まで大きくなる。
【0044】
なお、本実施形態において、暗騒音制御上限値として停止閾値よりも小さい値を用いた。これは、触媒温度が暗騒音制御上限値よりも小さくなり(S102:Yes)エンジン1を動作させる処理(S105)と、触媒温度が停止閾値以上となり(S101:Yes)エンジン1が停止される処理(S106)との間において、処理が連続的に繰り返されるのを抑制するためである。
【0045】
例えば、暗騒音制御上限値を停止閾値と同じ値を用いる場合には、以下のような処理が行われるおそれがある。触媒温度が停止閾値をわずかに下回る場合においては(S101:No、S102:Yes)、エンジン1の動作後(S105)、すぐに触媒温度が停止閾値を上回り(S106:Yes)、エンジン1が停止される(S107)。このような、エンジン1の短時間の動作後の停止は望ましくない。そこで、暗騒音制御上限値として停止閾値よりも小さな値を設定することにより、エンジン1の動作と停止との処理の繰り返しを抑制することができる。
【0046】
なお、上述のような処理の繰り返しが発生するおそれがあるが、暗騒音制御上限値として停止閾値と同じ値を用いてもよい。暗騒音制御上限値として停止閾値と同じ値を用いたとしても、触媒温度が停止閾値と強制動作閾値との間にある場合には(S102:Yes)、ステップS103~S109の処理により、暗騒音のレベルに応じたエンジン1の動作制御が可能となる。
【0047】
図2に示されるエンジン動作制御の概要は、次の表のように示される。
【0048】
【表1】
【0049】
この表においては、列方向に暗騒音レベルが大小の2段階で示され、行方向に触媒温度に応じた3つの条件が示されている。行方向においては、1行目には、触媒温度が停止閾値以上である場合(S101:Yes)が示され、2行目には、触媒温度が停止閾値よりも小さく、かつ、暗騒音制御上限値以上である場合が示され、3行目には、触媒温度が暗騒音制御上限値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上である場合(S101:No、S102:Yes)が示され、3行目には、触媒温度が強制動作閾値よりも小さい場合(S101:No、S102:No、S110:Yes)が示されている。
【0050】
1行目に示される触媒温度が停止閾値を上回る場合には、エンジン1を動作させないので、暗騒音のレベルに応じたエンジン1の動作制御は生じない。同様に、2行目には、触媒温度が停止閾値を下回り、かつ、暗騒音制御上限値以上である場合が示されている。触媒温度がこのような数値範囲にある場合には、図2によれば、3つの判定処理(S101:No、S102:No、S110:No)を経て、エンジン1を動作させないため、1行目に示される触媒温度が停止閾値以上である場合(S101:Yes)と同等の処理が行われる。
【0051】
また、4行目に示される触媒温度が強制動作閾値(活性下限温度)を下回る場合には、エンジン1が騒音レベルによらずに動作されるので、暗騒音のレベルに応じたエンジン1の動作制御は生じない。
【0052】
一方、3行目を参照すれば、触媒温度が暗騒音制御上限値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上である場合(S101:No、S102:Yes)には、暗騒音のレベルに応じてエンジン1の動作方法が異なる。すなわち、暗騒音が大レベルである場合に(S104:Yes)エンジン1を動作させる(S105)。一方、暗騒音が小レベルである場合に(S104:No)エンジン1を動作させない。
【0053】
このように、触媒温度が強制動作閾値(活性下限温度)よりも大きくても、暗騒音が大レベルの場合にエンジン1を動作させるため、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、エンジン1の動作により触媒温度を大きくすることができ、その結果、触媒温度が活性下限温度よりも高い状態を維持できる。一方で、暗騒音が小レベルである場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0054】
本実施形態により得られる効果を、図3及び4を用いて説明する。
【0055】
図3は、比較例におけるハイブリッド車両の状態を示すタイミングチャートである。この図においては、上から、(a)車速、(b)触媒温度、(c)冷却水温、(d)SOC、(e)走行路面レベル、(f)暗騒音レベル、及び、(g)エンジン1の回転数が示されている。なお、この図においては、(e)路面レベル、及び、(f)暗騒音レベルは3段階で示されている。
【0056】
この例においては、(f)暗騒音レベルが最大レベルである場合に、エンジン1を動作させる。さらに、(b)触媒温度、(c)冷却水温、及び、(d)SOCの3つのパラメータが強制動作閾値を下回る場合にはエンジン1を動作させ、これらのパラメータが十分に大きくなると、エンジン1が停止される。なお、(a)車速に応じては、(g)エンジン1の動作制御は行われない。
【0057】
時刻t1~t3の制御について説明する。時刻t1において、(e)路面レベルが比較的悪くなると、(f)暗騒音レベルが大きくなる。そして、時刻t2において、(e)路面レベルがさらに悪くなると、(f)暗騒音が最大レベルとなり、(g)エンジン1の動作が開始されて回転数が増加する。その後、時刻t3において、(e)路面レベルが良くなると、(f)暗騒音レベルが小さくなり、(g)エンジン1が停止されて回転数がゼロとなる。ここで、時刻t2~t3においては、(g)エンジン1を動作させるため、(b)触媒温度、(c)冷却水温度、及び、(d)SOCの全てが大きくなる。
【0058】
次に、時刻t4~t5の制御について説明する。時刻t4おいて、(e)路面レベルが悪くなると、(f)暗騒音が大きくなるが、最大レベルではない。そして、時刻t5において、(e)路面レベルが良くなると、(f)暗騒音レベルが小さくなる。時刻t4~t5においては、(f)暗騒音が最大レベルではないため、(g)エンジン1を動作させない。
【0059】
次に、時刻t6~t7の制御について説明する。時刻t6において、(b)触媒温度が、触媒の活性下限温度(強制動作閾値)を下回ると、(f)暗騒音によらず、(g)エンジン1を動作させる。その後、時刻t7において、(b)触媒温度が十分に大きくなると、(g)エンジン1は停止される。
【0060】
次に、時刻t8~t9の制御について説明する。時刻t8において、(d)SOCが、使用範囲の下限値(強制動作閾値)を下回ると、(f)暗騒音によらず、(g)エンジン1を動作させる。その後、時刻t9において、(b)SOCが十分に大きくなると、(g)エンジン1は停止される。
【0061】
次に、時刻t10~t13の制御について説明する。時刻t10~t13においては、時刻t1~t3の動作と比較すると、時刻t3においては(e)暗騒音レベルが1段階で小さくなるのに対して、時刻t12、t13において(e)暗騒音レベルが2段階で小さくなる。時刻t12において、(e)暗騒音が最大レベルでなくなるため、(g)エンジン1は停止される。その結果、(g)エンジン1を動作させる時刻t11~t12においては、(b)触媒温度、(c)冷却水温度、及び、(d)SOCが大きくなる。
【0062】
次に、時刻t14~t15の制御について説明する。時刻t14において、(c)冷却水温が、暖房要求水準範囲の強制動作閾値を下回ると、(g)エンジン1を動作させる。その後、時刻t15において、(c)冷却水温が十分に高くなると、(g)エンジン1は停止される。
【0063】
このように、(g)エンジン1の動作期間は、(f)暗騒音レベルが最大レベルとなる時刻t2~t3、及び、時刻t11~t12に加えて、(b)触媒温度が活性温度下限(強制動作閾値)を下回ることでエンジン1が動作開始される時刻t6~t7、(d)SOCが使用範囲下限(強制動作閾値)を下回ることでエンジン1が動作開始される時刻t8~t9、及び、(c)冷却水温が暖房要求下限(強制動作閾値)を下回ることでエンジン1が動作開始される時刻t14~t15となる。
【0064】
このような比較例においては、(e)暗騒音レベルが最大になる場合に加えて、(b)触媒温度、(c)冷却水温、及び、(d)SOCが強制動作閾値を下回る場合には、(d)暗騒音によらずにエンジン1を動作させ、車室内の快適性を損なうおそれがある。
【0065】
次に、本実施形態のハイブリッド型の車両100の動作について説明する。
【0066】
図4は、本実施形態におけるハイブリッド型の車両100の状態を示すタイミングチャートである。この図においては、上から、(a)車速、(b)触媒温度、(e)走行路面レベル、(f)暗騒音レベル、及び、(g)エンジン1の回転数が示されている。また、この図においては、(c)冷却水温、及び、(d)SOCの記載は省略されている。なお、本実施形態においては、図3の比較例と同様に、(f)暗騒音レベルが最大レベルである場合においても、エンジン1を動作させる。さらに、(b)触媒温度が動作パラメータとして用いられて、図2に示されたエンジン動作制御がなされる。
【0067】
まず、時刻t1~t3の制御について説明する。時刻t1~t3は、図3の比較例における時刻t1~t3と同様の処理が行われ、(f)暗騒音レベルが最大となる時刻t2~t3において、エンジン1を動作させる。
【0068】
次に、時刻t4~t7の制御について説明する。時刻t4において、(e)路面レベルが比較的悪くなると、(f)暗騒音レベルが大きくなる。この場合においては、(f)暗騒音は、図2のステップS103における2段階のレベル判定に用いられる閾値を上回るものとする。
【0069】
そして、時刻t5において、触媒温度が暗騒音制御上限値を下回ると、暗騒音レベルに応じたエンジン1の制御が行われる。時刻t5においては、暗騒音レベルが大であるため、(g)エンジン1を動作させる。その後、時刻t6において、(b)触媒温度が停止閾値に達すると、(g)エンジン1は停止される。
【0070】
次に、時刻t8~t11の制御について説明する。時刻t8~t11においては、図3の比較例における時刻t10~t13と同様の処理が行われる。すなわち、(e)騒音レベルが最大レベルとなる時刻t9~t10において、(g)エンジン1を動作させ、(b)触媒温度が大きくなる。
【0071】
このように、暗騒音が最大レベルとなる場合に加えて、1つの動作パラメータ(触媒温度)を用いることにより、エンジン1の動作機会を低減することができる。さらに、動作パラメータが強制動作閾値を下回らない状態であっても、暗騒音レベルが比較的大きい(大レベル)場合には、車室内の快適性を損なわないためエンジン1を動作させる。その結果、動作パラメータを大きくする機会が増えるので、暗騒音レベルが小さい場合にエンジン1を動作させることが抑制され、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0072】
第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0073】
第1実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、エンジン1の動作時間に応じて値が大きくなる動作パラメータが用いられる。動作パラメータが強制動作閾値を下回る場合には(S101:No、S102:No、S110:Yes)、エンジン1を動作させる(S111)。
【0074】
そして、動作パラメータが、強制動作閾値よりも大きい場合においては(S101:No、S102:Yes)、暗騒音の大きさに応じてエンジン1の動作が制御される。詳細には、暗騒音の大きさが閾値を上回り大レベルである場合は(S104:Yes)、エンジン1を動作させる(S105)。
【0075】
このような制御がなされることにより、強制動作閾値よりも大きい場合であっても、暗騒音が大きい場合にエンジン1を動作できるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、動作パラメータを大きくでき、動作パラメータが強制動作閾値を上回る状態を保つことができる。一方、暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0076】
第1実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、さらに、動作パラメータが、停止閾値よりも大きくなる場合には(S106:Yes)、エンジン1を停止させる(S107)。このように、エンジン1の動作時間を制限することで、動作パラメータが適切な数値範囲に含まれるように制御することができる。
【0077】
第1実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータが、暗騒音制御上限値(停止閾値でもよい)よりも小さく、かつ、強制動作閾値よりも大きい場合においては、暗騒音の大きさが閾値を下回り小レベルである場合には(S109:Yes)、エンジン1を停止させる(S107)。暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0078】
第1実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータとして、第1温度センサ24により取得される、エンジン1の排気系統における触媒温度が用いられる。触媒には活性状態で動作可能な活性下限温度が存在するとともに、触媒温度は、エンジン1の動作時間に応じて高くなる。そこで、原則として、触媒温度が活性下限温度を下回る場合には、エンジン1を動作させて触媒温度を高くする。さらに、本実施形態では、触媒温度が活性下限温度以上であっても、暗騒音が大きい場合にエンジン1を動作できるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、動作パラメータを大きくでき、その結果、全体として、動作パラメータが強制動作閾値を上回る状態を保ちやすくなる。一方、暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0079】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、暗騒音のレベルを2段階で判定する制御について説明したが、これに限らない。第2実施形態においては、暗騒音のレベルを3段階で判定する制御について説明する。
【0080】
図5は、第2実施形態におけるエンジン動作制御のフローチャートである。本実施形態においては、図2に示された第1実施形態のエンジン動作制御と比較すると、ステップS102~S104、及び、S108の処理に替えて、ステップS201~S206、及び、S207の処理が設けられている。
【0081】
まず、ステップS201~S203の処理について説明する。
【0082】
ステップS201において、エンジンコントローラ13は、触媒温度(動作パラメータ)が、停止閾値よりも小さく、かつ、暗騒音制御上限値以上の数値範囲に含まれるか否かを判定する。触媒温度が当該数値範囲に含まれると判定される場合には(S201:Yes)、エンジンコントローラ13は、さらに暗騒音に応じたエンジン1の動作要否を判断するために、次に、ステップS202の処理を行う。
【0083】
一方、触媒温度が当該数値範囲に含まれないと判定される場合には(S201:No)、エンジンコントローラ13は、さらに、暗騒音に応じたエンジン1の動作制御の要否を判断するために、次に、ステップS204の処理を行う。
【0084】
ステップS202においては、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを用いて暗騒音を求め、暗騒音の大きさを、2つの閾値を用いて大中小の3ベルで判定する。
【0085】
ステップS203において、エンジンコントローラ13は、暗騒音が大レベルであるか否かを判定する。暗騒音が大レベルである場合には(S203:Yes)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させるために、次に、ステップS105の処理を行う。一方、暗騒音が大レベルでない場合には(S203:No)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させる状況ではないと判断し、エンジン動作制御を終了する。このように、触媒温度が比較的大きい場合には、触媒温度を大きくする必要性が比較的小さいため、暗騒音が大レベルとなるような比較的短時間でエンジン1を動作させる。
【0086】
次に、ステップS204~S206の処理について説明する。
【0087】
ステップS204において、エンジンコントローラ13は、触媒温度が、暗騒音制御上限値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上の数値範囲に含まれるか否かを判定する。触媒温度が当該数値範囲に含まれると判定される場合には(S204:Yes)、エンジンコントローラ13は、さらに暗騒音に応じたエンジン1の動作要否を判断するために、次に、ステップS205の処理を行う。
【0088】
一方、触媒温度が当該数値範囲に含まれないと判定される場合には(S204:No)、エンジンコントローラ13は、さらに触媒温度の大きさに応じた処理を行うために、次に、ステップS110の処理を行う。
【0089】
ステップS205においては、ステップS202と同じ処理が行われる。エンジンコントローラ13は、暗騒音の大きさを3段階で判定する。
【0090】
ステップS206において、エンジンコントローラ13は、暗騒音が大レベル又は中レベルであるか否かを判定する。暗騒音が大レベル又は中レベルである場合には(S206:Yes)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させるために、次に、ステップS105の処理を行う。一方、暗騒音が大レベルまたは中レベルではなく、小レベルである場合には(S206:No)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させる状況ではないと判断し、エンジン動作制御を終了する。このように、触媒温度が比較的小さい場合には、触媒温度を大きくする必要性が比較的高いため、暗騒音が大又は中レベルとなるような比較的長時間でエンジン1を動作させる。
【0091】
なお、ステップS202、S205における暗騒音の3レベルでの判定に用いられる2つの閾値のうち、小さい方の閾値は、第1実施形態における2段階のレベル判定に用いた閾値と同じであってもよい。小さい方の閾値が第1実施形態における2段階のレベル判定に用いられる閾値と同じである場合には、エンジン1を動作させる暗騒音レベルの条件が、第1実施形態のステップS105における条件と同等となる。
【0092】
また、ステップS207において、ステップS202、S205と同様に、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを用いて暗騒音を求め、その暗騒音の大きさを3段階のレベルで判定する。このように暗騒音のレベル判定を行うことで、後続のステップS109において、暗騒音レベルに応じた処理を行うことができる。
【0093】
図5に示されるエンジン動作制御の概要は、次の表のように示される。
【0094】
【表2】
【0095】
この表においては、列方向に暗騒音レベルが3段階で示され、行方向に触媒温度に応じた4つの条件が示されている。第1実施形態の表1と比較すると、列方向においては、2列目に、暗騒音の中レベルが追加されている。なお、行方向においては、2行目に示される、触媒温度が上限値よりも小さく、かつ、暗騒音制御上限値以上である場合は、図5に示される処理(S101:No、S201:Yes)と対応する。
【0096】
2行目を参照すれば、触媒温度が暗騒音制御上限値よりも大きく比較的余裕があるため、暗騒音が大レベルとなる比較的短時間でエンジン1を動作させる。その結果、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、触媒温度を大きくできる。
【0097】
一方、3行目を参照すれば、触媒温度が暗騒音制御上限値よりも小さく比較的余裕がない場合には、暗騒音が中レベル以上の場合にエンジン1を動作させる。この場合には、暗騒音レベルが中レベルでもエンジン1を動作させてしまうので、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきやすくなるが、より積極的に触媒温度を大きくすることができる。なお、暗騒音が低レベルである場合にはエンジン1の動作が抑制されるので、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0098】
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0099】
第2実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータ(触媒温度)が、停止閾値よりも小さく、かつ、強制動作閾値よりも大きい場合においては、動作パラメータが比較的大きく、暗騒音制御上限値を上回る場合に(S201:Yes)、エンジン1を動作させる暗騒音閾値を大きくする。その結果、暗騒音レベルが大である場合に(S203:Yes)、エンジン1を動作させる(S105)。一方、動作パラメータが比較的小さく、暗騒音制御上限値を下回る場合には(S201:No、S204:Yes)、エンジン1を動作させる暗騒音の閾値を小さくする。その結果、暗騒音レベルが大又は中である場合に(S206:Yes)、エンジン1を動作させる(S105)。
【0100】
このように、動作パラメータが比較的大きい場合には、動作パラメータを大きくする必要性が低いので、暗騒音に応じた動作条件を比較的厳しくし、暗騒音が大レベルの場合にエンジン1を動作させることにより、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、動作パラメータが強制動作閾値を上回る状態を保つことができる。
【0101】
一方、動作パラメータが比較的小さい場合には、動作パラメータを大きくする必要性が高いので、暗騒音に応じた動作条件を比較的緩め、暗騒音が中レベル以上である場合にエンジン1を動作させる。これにより、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきやすくなるが、より積極的にエンジン1を動作させるので動作パラメータが強制動作閾値を上回る状態を保つことができる。同時に、暗騒音が低レベルである場合にはエンジン1の動作が抑制されるので、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0102】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態においては、暗騒音レベルに応じてエンジン1の動作要否を判断した。第3実施形態においては、暗騒音レベルに応じてエンジン1の出力を変更する制御について説明する。
【0103】
図6は、第3実施形態におけるエンジン動作制御のフローチャートである。本実施形態においては、図2に示された第1実施形態のエンジン動作制御と比較すると、ステップS103~S105、及び、S108の処理に替えて、ステップS301~S305、及び、S306の処理が設けられている。
【0104】
ステップS301において、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを用いて暗騒音を求め、暗騒音の大きさについて、大中小の3段階で判定する。なお、この判定処理は、図5に示される第2実施形態のステップS202、S205と同等である。
【0105】
ステップS302において、エンジンコントローラ13は、暗騒音が大レベルであるか否かを判定する。暗騒音が大レベルである場合には(S302:Yes)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させるために、次に、ステップS303の処理を行う。一方、暗騒音が大レベルでない場合には(S302:No)、エンジンコントローラ13は、さらに暗騒音に応じたエンジン1の動作要否の判定を行うために、次に、ステップS304の処理を行う。
【0106】
ステップS303において、エンジンコントローラ13は、エンジン1を比較的大きな出力で動作させる。
【0107】
ステップS304において、エンジンコントローラ13は、暗騒音が中レベルであるか否かを判定する。暗騒音が中レベルである場合には(S304:Yes)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させるために、次に、ステップS305の処理を行う。一方、暗騒音が中レベルでない場合には(S304:No)、エンジンコントローラ13は、エンジン1を動作させる状態ではないと判断し、エンジン動作制御を終了する。
【0108】
ステップS305において、エンジンコントローラ13は、エンジン1を比較的小さな出力で動作させる。
【0109】
なお、ステップS306において、ステップS301と同様に、エンジンコントローラ13は、車輪速センサ23が検出した車輪7の角速度ωを用いて暗騒音を求め、その暗騒音の大きさを3段階のレベルで判定する。このように暗騒音のレベル判定を行うことで、後続のステップS109において、暗騒音レベルに応じた処理を行うことができる。
【0110】
このようにすることで、触媒温度が暗騒音制御上限値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上である場合においては(S101:No、S102:Yes)、暗騒音が大レベルの場合には(S302:Yes)、エンジン1を高出力で動作させ(S303)、暗騒音が中レベルの場合には(S304:Yes)、エンジン1を低出力で動作させる(S305)。このようにすることで、暗騒音が大きい場合には、エンジン1を高出力で動作させて動作音が大きくなってしまっても、動作音は運転者に気づきにくくいので、車室内の快適性を確保しながら触媒温度を上昇させることができる。一方、暗騒音が中レベルであり比較的小さい場合には、エンジン1を低出力で動作させることにより動作音が小さくなるので、動作音が運転者に気づきにくくなり、同様に、車室内の快適性を確保しながら触媒温度を上昇させることができる。
【0111】
なお、ステップS301における暗騒音の3レベルでの判定に用いられる2つの閾値のうち、小さい方の閾値は、第1実施形態における2段のレベル階判定に用いた閾値と同じであってもよい。小さい方の閾値が第1実施形態における2段階のレベル判定に用いられる閾値と同じである場合には、エンジン1を動作させる暗騒音レベルの条件が、第1実施形態のステップS105における条件と同等となる。また、大きい方の閾値は、ステップS302における判定に用いられるため、エンジン1の出力の切替に用いられる出力切替閾値と称してもよい。
【0112】
図6に示されるエンジン動作制御の概要は、次の表のように示される。
【0113】
【表3】
【0114】
この表においては、列方向には、表2に示された第2実施形態と同様に暗騒音レベルが3段階で示され、行方向には、表1に示された第1実施形態と同様に触媒温度(動作パラメータ)に応じた4つの条件が示されている。
【0115】
3行目を参照すれば、触媒温度が、暗騒音制御上限値を下回り、かつ、停止閾値以上である場合には、暗騒音レベルが大きい場合に(S302:Yes)、エンジン1を高出力で動作させ(S303)、暗騒音レベルが中の場合には(S304:Yes)、エンジン1を低出力で動作させる(S305)。
【0116】
このようにすることで、暗騒音が大きい場合には、エンジン1を高出力で動作させて動作音が大きくなってしまっても、運転者には気づきにくくなる。その結果、車室内の快適性を保ちながら高出力で動作パラメータを大きくすることで、動作パラメータを短期間で増加させることができる。一方、暗騒音が小さい場合には、エンジン1を低出力で動作させることにより動作音が小さくなり、運転者には気づきにくくなるので、車室内の快適性を維持しながら、触媒温度を増加させることができる。その結果、動作パラメータが強制動作閾値を上回る状態を保ちやすくなる。
【0117】
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0118】
第3実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータが、暗騒音制御上限値(上限値と等しくてもよい)よりも小さく、かつ、強制動作閾値よりも大きい場合において(S101:No、S102:Yes)、暗騒音の大きさが比較的大きな出力切替閾値を上回り大レベルである場合は(S302:Yes)、エンジン1を高出力で動作させる(S303)。一方、暗騒音の大きさが比較的小さな出力切替閾値を上回り中レベルである場合は(S304:Yes)、エンジン1を低出力で動作させる(S305)。
【0119】
このようにすることで、暗騒音が大きいほどエンジン1の出力が大きくなるように変更されるので、車室内の快適性を確保しながら、動作パラメータを適切に増加させることができる。すなわち、暗騒音が大きい場合には、エンジン1を高出力で動作させても運転者には気づきにくく、車室内の快適性を維持しながら触媒温度を下限温度以上に保つことができる。一方、暗騒音が中レベルである場合には、エンジン1の動作音に運転者は気づきやすいので、エンジン1の出力を抑制することで、車室内の快適性を維持しながら触媒温度を下限温度以上に保つことができる。
【0120】
(第4実施形態)
第4実施形態においては、さらに、エンジン1の停止条件の他の例について説明する。
【0121】
図7は、第4実施形態のエンジン動作制御を示すフローチャートである。この図によれば、第1実施形態のエンジン動作制御と比較すると、ステップS109に替えて、ステップS109Aの処理が設けられている。
【0122】
ステップS109Aにおいては、ハイブリッド車両100が渋滞経路を走行中でなく暗騒音が小レベルである場合、または、ハイブリッド車両100が渋滞経路を走行中であり、かつ、車速がゼロである(停車中)という条件が付加されている。すなわち、渋滞中以外には第1~3実施形態と同様の判定処理によりエンジンが停止されるが、渋滞中においては、車速がゼロである場合にエンジンが停止される。
【0123】
ここで、図2に示されるように、第1実施形態における処理においては、渋滞時において、低速走行が多く暗騒音が小レベルになりやすく(S109:Yes)、エンジン1が停止しやく(S107)、エンジン1の動作タイミングを得るのが難しい。そこで、渋滞時においては、車速がゼロ(停車中)である場合(S109A:Yes)にエンジン1を停止し(S107)、低速走行時(S109A:No)においてはエンジン1の動作を継続する。その結果、渋滞時には低速走行時の暗騒音が生じる数少ない機会においてエンジン1を動作させることで、触媒温度が活性下限温度以上に保たれやすくなる。
【0124】
本実施形態においては、さらに、渋滞の発生状況等が所定の条件を満たす場合に、ステップS102において用いられる騒音制御上限値が変更されるものとする。
【0125】
図8は、暗騒音制御上限値の変更制御を示すフローチャートである。なお、暗騒音制御上限値の変更制御は、任意のタイミングで実行可能であり、図7に示されるエンジン動作制御の前後に実行されうる。
【0126】
ステップS401において、モータコントローラ11は、暗騒音制御上限値の変更条件が満たされる状態であるか否かを判定する。そして、変更条件が満たされる場合には(S401:Yes)、モータコントローラ11は、次に、ステップS402の処理において暗騒音制御上限値を大きくする。一方、変更条件が満たされない場合には(S401:No)、モータコントローラ11は、暗騒音制御上限値の変更制御を終了する。
【0127】
一例として、変更条件としては、車両100の走行中の経路に渋滞が発生している場合が考えられる。渋滞が発生している場合には、エンジン1の動作機会が少なく、触媒温度は下限温度を下回りやすい。車両100の走行中の経路に渋滞が発生している場合には、暗騒音制御上限値を大きくする。
【0128】
他の一例として、ステップS401における変更条件としては、車両100の外部の外気温が考えられる。具体的には、外気温が所定の閾値を下回る場合には、変更条件が満たされると判定される。外気温が低いほど、自然冷却によって触媒温度は下限温度を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので触媒温度が高くなりやすくなる。
【0129】
さらに他の一例として、変更条件としては、車両100の車速が考えられる。車速が所定の閾値を上回る場合には、変更条件が満たされると判定される。車速が速いほど、自然冷却によって触媒温度は下限温度を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので触媒温度が大きくなりやすくなる。
【0130】
渋滞発生時には暗騒音が比較的小さいので、エンジン1の動作機会を得にくい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きくすることにより積極的にエンジン1を動作させるので触媒温度が大きくなりやすくなる。さらに、上述のように、暗騒音が小レベルである場合には、車速がゼロであり停車中である場合(S109A:Yes)にエンジン1を停止し(S107)、一方、低速走行時(S109A:No)においてはエンジン1を動作させる。その結果、渋滞時には低速走行時の暗騒音が生じる数少ない機会においてエンジン1を動作させて、触媒温度を高くすることができる。
【0131】
なお、図8に示された変更制御においては、暗騒音制限上限値が変更されたがこれに限らない。暗騒音制限上限値とともに、停止閾値を変更してもよい。停止閾値を大きくすることによっても、エンジン1が停止されにくくなるので、動作パラメータは大きくなりやすくなる。
【0132】
第4実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0133】
第4実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、ハイブリッド車両100の外気の温度が低いほど、停止閾値(暗騒音制御上限値でもよい)を小さくする。外気温が低いほど、自然冷却によって触媒温度は下限温度を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので触媒温度が高くなりやすくなり、触媒温度を活性下限温度以上に保つことができる。
【0134】
第4実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、渋滞路を走行していると判断される場合においては、ハイブリッド車両100が停車しておらず車速がゼロよりも大きい場合に、エンジン1を動作させる。
【0135】
渋滞時においては低速走行が中心となるため暗騒音が小レベルになりやすいため、エンジン1の動作機会が少なくなる。そこで、渋滞時においては、暗騒音が小レベルである場合には、停車中に(S109A:Yes)エンジン1を停止させ(S107)、低速走行中はエンジン1の動作を継続する(S109A:No)。その結果、渋滞時には低速走行時の暗騒音が生じる機会を利用して、エンジン1を動作させて触媒温度を高くすることができる。その結果、触媒温度を活性下限温度以上に保ちやすくなる。
【0136】
(第5実施形態)
第5実施形態においては、動作パラメータとして第2温度センサ25により取得されるエンジン1の冷却水温度が用いられる場合について説明する。エンジン1の水温は、エンジン1の動作時間が長いほど高くなる性質を有する。また、冷却水温には、適切な温度帯があり、下限値を下回ると室内の暖房機能に影響を与えてしまう。そのため、冷却水温が下限値を下回る場合には、エンジン1を動作させる。
【0137】
本実施形態のエンジン動作制御は、第1~4実施形態のエンジン動作制御と同様の処理であり、動作パラメータとして、冷却水温が用いられる。そのため、冷却水温が、暖房要求下限温度(強制動作閾値)以上である場合であっても、暗騒音が大レベルの場合にはエンジン1を動作させることになるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で冷却水温を暖房要求下限温度以上に保つことができる。一方で、暗騒音が小レベルである場合には、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0138】
本実施形態においては、第4実施形態と同様に、図8に示された暗騒音制御上限値の変更制御が実施されうるものとする。
【0139】
暗騒音制御上限値の変更条件としては、ハイブリッド車両100の外部の外気温が用いられる。具体的には、外気温が所定の閾値を下回る場合には、変更条件が満たされると判定される。外気温が低いほど、自然冷却によって冷却水温は暖房要求下限温度を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので触媒温度が大きくなりやすくなる。
【0140】
他の一例として、変更条件としては、エンジン1の冷却系統に取り込まれるブロア風量が考えられる。ブロア風量が所定の閾値を上回る場合には、変更条件が満たされると判定される。ブロア風量が大きいほど、冷却水温は下限温度を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので冷却水温が大きくなりやすくなる。
【0141】
第5実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0142】
第5実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータとして、第2温度センサ25により取得されるエンジン1の冷却水の温度が用いられる。冷却水の温度には、暖房を実施するための暖房要求下限温度(強制動作閾値)が存在するとともに、エンジン1の動作時間に応じて大きくなる。そこで、冷却水の温度が暖房要求下限温度を上回る場合であっても、暗騒音が大きい場合にエンジン1を動作させることで、車室内の快適性を保ちながら冷却水温を暖房要求下限温度以上に保つことができる。一方で、暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0143】
第5実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、ハイブリッド車両100の外気の温度が低いほど、停止閾値(暗騒音制御上限値でもよい)を大きくする。外気温が低いほど、自然冷却によって冷却水温は停止閾値を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので冷却水温が高くなりやすくなり、冷却水温を暖房要求下限温度以上に保つことができる。
【0144】
(第6実施形態)
第6実施形態においては、動作パラメータとしてバッテリ3のSOCが用いられる場合について説明する。SOCは、エンジン1の動作時間に応じて高くなる性質を有する。また、SOCが使用範囲の下限値(強制動作閾値)を下回る場合には、エンジン1を動作させる。
【0145】
本実施形態のエンジン動作制御は、第1~4実施形態のエンジン動作制御と同様の処理であり、動作パラメータとしてSOCが用いられる。そのため、SOCが、使用範囲下限値以上である場合であっても、暗騒音が大レベルの場合にはエンジン1を動作させることになるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態でSOCを大きくすることができる。一方で、暗騒音が小レベルである場合には、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0146】
本実施形態においては、第4実施形態と同様に、図8に示された暗騒音制御上限値の変更制御が実施されうるものとする。
【0147】
本実施形態における暗騒音制御上限値の変更条件として、例えば、車速、電装品電力消費、及び、運転者の加速操作の頻度が用いられる。これらのパラメータが大きくなるほどSOCは小さくなりやすいので、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるのでSOCが大きくなりやすくなる。
【0148】
第6実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0149】
第6実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータとして、バッテリ3のSOCが用いられる。SOCには、使用範囲下限値が存在するとともに、エンジン1の動作時間に応じて大きくなる。そこで、SOCが使用範囲下限値を上回る場合であっても、暗騒音が大きい場合にエンジン1を動作させることで、車室内の快適性を保ちながらSOCを大きくできる。一方で、暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0150】
第6実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、ハイブリッド車両100の車速が速いほど、暗騒音制御上限値(停止閾値と等しくてもよい)を小さくする。このようにすることで、車速が速く、消費電力が大きいほど、SOCは使用範囲下限値を下回りやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるのでSOCを使用範囲下限以上に保つやすくなる。同様に、電装品電力消費、及び、運転者の加速操作の頻度が大きいほど、SOCが小さくなりやすいので、予め暗騒音制御上限値を大きく変更しておいてもよい。
【0151】
(第7実施形態)
第7実施形態においては、動作パラメータとして圧力センサ26により取得される摩擦ブレーキ8におけるマスターバックの負圧を用いてもよい。負圧は、エンジン1の動作時間に応じて高くなる性質を有する。また、負圧には、適切な数値範囲があり、下限値(強制動作閾値)を下回ると、ブレーキペダルの踏み込み時にマスターバックによるアシスト機能が得られにくくなる。そのため、負圧が下限値を下回ると、エンジン1を動作させて負圧を大きくする。
【0152】
本実施形態のエンジン動作制御は、第1~4実施形態のエンジン動作制御と同様の処理であり、動作パラメータとして上述の負圧が用いられる。そのため、負圧が下限値以上である場合であっても、暗騒音が大レベルの場合にはエンジン1を動作させることになるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で負圧を高くすることができる。一方で、暗騒音が小レベルである場合には、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0153】
また、第4実施形態と同様に、図8に示された暗騒音制御上限値の変更制御が実施されうるものとする。
【0154】
暗騒音制御上限値の変更条件として、例えば、運転者のブレーキペダルの踏み込み頻度が用いられる。踏み込み頻度が大きくなるほどマスターバックの負圧は小さくなりやすいので、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので負圧が大きくなりやすくなる。
【0155】
また、変更条件として、ハイブリッド車両100の予測経路に渋滞が発生している場合が考えられる。渋滞が発生している場合には、運転者のブレーキペダルの踏み込み頻度が高くなりやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので負圧が大きくなりやすくなる。
【0156】
第7実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0157】
第7実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、動作パラメータとして、摩擦ブレーキ8のマスターバックにける負圧が用いられる。負圧には、下限値(強制動作閾値)が存在するとともに、エンジン1の動作時間に応じて大きくなる。そこで、負圧が下限値を上回る場合であっても、暗騒音が大きい場合にエンジン1を動作させることで、車室内の快適性を保ちながら負圧を大きくできる。一方で、暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0158】
第7実施形態のハイブリッド車両100の制御方法によれば、ブレーキペダルの操作頻度が大きいほど、暗騒音制御上限値(停止閾値でもよい)を小さくする。ブレーキペダルの操作頻度が大きいほど、負圧が小さくなりやすい。そこで、暗騒音制御上限値を予め大きく変更しておくことで、より積極的にエンジン1を動作させるので、負圧を使用下限値以上に保つことができる。
【0159】
(第8実施形態)
第1~第7実施形態においては、1つの動作パラメータを用いる例について説明したが、これに限らない。本実施形態では、複数の動作パラメータを用いる例について説明する。
【0160】
本実施形態においては、第1温度センサ24により取得される触媒温度、及び、第2温度センサ25により取得される冷却水温度の2つの動作パラメータを用いて、エンジン動作制御が行われるものとする。当該エンジン動作制御の詳細が、次表に示されている。
【0161】
【表4】
【0162】
この表においては、列方向に触媒温度の条件が示され、行方向において冷却水温度の条件が示されている。なお、この図においては、可読性のために、冷却水温度及び触媒温度の双方について、停止閾値よりも小さく、かつ、暗騒音制御上限値以上である場合と、暗騒音制御上限値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上である場合とについて、あわせて、停止閾値よりも小さく、かつ、強制動作閾値以上である場合として示されている。
【0163】
1行目に示されるように、冷却水温度が停止閾値を上回る場合には、エンジン1は動作されない。同様に、左列に示されるように、触媒温度が停止閾値を上回る場合には、エンジン1は動作されない。
【0164】
一方で、中央のセル(2行2列)に示されるように、触媒温度が停止閾値を下回り、かつ、強制動作閾値以上となる場合であって、冷却水温度が停止閾値を下回り、かつ、強制動作閾値以上となる場合には、暗騒音のレベルに応じてエンジン1の動作有無が判定される。この暗騒音のレベルに応じた動作有無の具体的な処理は、図2のステップS103~S109の処理と同等なる。
【0165】
そして、上記以外の状態(2行3列、3行2列、3行3列)においては、エンジン1が動作される。このようにすることで、複数のパラメータを用いる場合であっても、暗騒音レベルに応じてエンジン1の動作有無を制御することができる。その結果、暗騒音が大レベルの場合にエンジン1を動作させることになるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、動作パラメータを大きくすることができる。一方で、暗騒音が小レベルである場合には、運転者にとってはエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0166】
第8実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0167】
第8実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、複数の動作パラメータが用いられる。複数の動作パラメータを用いる場合であっても、それぞれの動作パラメータの両者が停止閾値と強制動作閾値との間である場合には、暗騒音に応じたエンジン1の動作制御が行われる。このようにすることで、暗騒音が大きい場合だけエンジン1を動作できるので、運転者にとってはエンジン1の動作音が比較的気づきにくい状態で、エンジン1の動作により動作パラメータを大きくすることができる。一方で、暗騒音が小さい場合には、運転者はエンジン1の動作音が気づきやすいので、エンジン1の動作が抑制されることにより、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0168】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8