(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱帯性サイクロンの発達を監視するためのUAV
(51)【国際特許分類】
G01W 1/08 20060101AFI20241002BHJP
G01W 1/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01W1/08 C
G01W1/02 A
(21)【出願番号】P 2022563916
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(86)【国際出願番号】 US2020061791
(87)【国際公開番号】W WO2021216119
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-06-29
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】フェンデル,フランシス・イー
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0299771(US,A1)
【文献】米国特許第09977963(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0004368(US,A1)
【文献】特開2005-164490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/08
G01W 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱帯性サイクロンの発達を監視する方法であって、
核を有する熱帯性サイクロンが形成したと判定するステップと、
前記熱帯性サイクロンの上方に無人航空機(UAV)を飛行させるステップと、
前記UAVに搭載されたセンサを使用して、前記熱帯性サイクロンの核に存在する気象条件を測定するステップと、
前記センサを使用して、前記熱帯性サイクロンの核の構造パラメータを検出するステップであって、前記熱帯性サイクロンの核の上端において目の初期形成をリアル・タイムで検出するステップと、アイウォール内部において目の存在を検出し、前記目および前記アイウォールが存在する時、前記目の下端の高度、前記目の上端の高度、および前記下端から前記上端までの複数の位置における前記目の直径を含む、目データを判定するステップとを含む、ステップと、
前記気象条件および前記構造パラメータに基づいて、前記熱帯性サイクロンが発達しているのかまたは衰弱しているのか判定するステップであって、前記目の初期形成が検出されたとき、前記熱帯性サイクロンが発達しているとリアル・タイムで判定する過程を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記熱帯性サイクロンの上方にUAVを飛行させるステップが、前記熱帯性サイクロンの上端よりも上方でありいずれの上に位置する雲よりも下である高度において、更に前記熱帯性サイクロンの核の連続的センサ監視を可能にする飛行パターンで、前記UAVを飛行させるステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、更に、前記目およびアイウォールの存在、ならびに前記目のデータを、以前のサンプル時間からの対応するデータと比較するステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記熱帯性サイクロンが発達しているかまたは衰弱しているか判定するステップが、前記目が上端/下端高度差を有し、当該差が直前の時間サンプルから増加した場合、または前記目が上端の直径と下端の直径との差を有し、当該差が直前のサンプル時間から増加した場合、または前記アイウォールが上端付近に傾斜を有し、当該傾斜が直前のサンプル時間から水平に近くなった場合、前記熱帯性サイクロンが発達していると判定するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記熱帯性サイクロンの核に存在する気象条件を測定するステップが、前記センサを使用して、気象条件データを測定するステップを含み、前記目およびアイウォールが存在するとき、前記気象条件データが、前記熱帯性サイクロンの目およびアイウォール内の複数の高さにおける気温、気圧、湿度、ならびに水平および垂直風を含む、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、更に、前記気象条件データを、以前のサンプル時間からの対応するデータと比較するステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記熱帯性サイクロンが発達しているかまたは衰弱しているか判定するステップが、前記目の下端における気温が前回のサンプル時間から上昇した場合、または前記目の下端における気圧が直前のサンプル時間から低下した場合、または前記アイウォール内の最大上昇気流速度が直前のサンプル時間から上昇した場合、前記熱帯性サイクロンが発達していると判定するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記UAVに搭載されたセンサが、レーダ検出器、撮像カメラ、赤外線センサ、受動型マイクロ波検出器、および前記熱帯性サイクロン内部における温度、圧力、相対湿度、ならびに風速および風向を測定し、遠隔測定データを前記UAVに返送する1つ以上の展開型センサを含む、方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記展開型センサが、海面まで降下する間に前記遠隔測定データを測定する投下ゾンデ、または前記熱帯性サイクロンの目内部において一定高度を維持しつつ前記遠隔測定データを測定する定高度バルーン、あるいは双方を含む、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、更に、前記気象条件および前記構造パラメータを、前記UAVからストーム予報センタに中継するための衛星、航空機、または船舶に送信するステップを含む、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記UAVがGlobal Hawkである、方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、更に、周期的に、前記UAVによって、構成変更可能なプロセッサおよび通信システムを使用して、地上配備リモート・コントローラから、更新された任務命令を受けるステップを含み、前記更新された任務命令が、飛行経路および高度の改定された定義と、行うべきセンサ測定と投下ゾンデ・センサの展開に関する命令とを含む、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、更に、第2UAVと交代する前に、少なくとも20時間の期間にわたり、前記UAVによって前記熱帯性サイクロンを監視し続けるステップを含み、前記UAVおよび前記第2UAVが、前記熱帯性サイクロンの存続期間全体にわたり、前記熱帯性サイクロンの連続的監視に備える、方法。
【請求項14】
熱帯性サイクロンの発達を監視する方法であって、
核を有する熱帯性サイクロンが形成したと判定するステップと、
前記熱帯性サイクロンの上方にGlobal Hawk無人航空機(UAV)を飛行させるステップと、
前記Global HawkUAVに搭載されたセンサを使用して、前記熱帯性サイクロンの核に存在する気象条件を測定するステップであって、前記センサが、レーダ検出器、撮像カメラ、赤外線センサ、受動型マイクロ波検出器、および前記熱帯性サイクロン内部における温度、圧力、相対湿度、および風向を測定し、前記Global HawkUAVに遠隔測定データを返送する複数の展開型センサを含む、ステップと、
前記センサを使用して、前記熱帯性サイクロンの核の構造パラメータを検出するステップであって、前記熱帯性サイクロンの核の上端において目の初期形成をリアル・タイムで検出するステップと、アイウォール内部において目の存在を検出し、前記目および前記アイウォールが存在するとき、前記目の下端の高度、前記目の上端の高度、および前記下端から前記上端までの複数の位置における前記目の直径を含む目データを判定するステップとを含む、ステップと、
前記気象条件および前記構造パラメータを、前記Global HawkUAVからストーム予報センタに中継するための衛星、航空機、または船舶に送信するステップと、
前記気象条件および前記構造パラメータに基づいて、前記熱帯性サイクロンが発達しているのかまたは衰弱しているのか判定するステップであって、前記目の初期形成が検出されたときに、前記熱帯性サイクロンが発達しているとリアル・タイムで判定する過程と、前記目が上端/下端高度差を有し、当該差が直前の時間サンプルから増加した場合、または前記目が上端の直径と下端の直径との差を有し、当該差が直前のサンプル時間から増加した場合、または前記アイウォールが上端付近に傾斜を有し、当該傾斜が直前のサンプル時間から水平に近くなった場合、前記熱帯性サイクロンが発達していると判定する過程とを含む、ステップと、
前記Global HawkUAVによって、構成変更可能なプロセッサおよび通信システムを使用して、地上配備リモート・コントローラから、更新された任務命令を周期的に受け、前記更新された任務命令に従うステップであって、前記更新された任務命令が、飛行経路および高度の改定された定義と、行うべきセンサ測定と投下ゾンデ・センサの展開に関する命令とを含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記熱帯性サイクロンの上方にGlobal Hawk UAVを飛行させるステップが、 前記熱帯性サイクロンの上端よりも上でありいずれの上に位置する雲よりも下である高度において、更に前記熱帯性サイクロンの核の連続的センサ監視を可能にする飛行パターンで、前記Global Hawk UAVを飛行させるステップを含む、方法。
【請求項16】
熱帯性サイクロンの発達を監視する方法であって、前記熱帯性サイクロンの上方に無人航空機(UAV)を飛行させるステップと、前記UAVに搭載されたセンサを使用して、前記熱帯性サイクロンの核の構造パラメータを測定するステップと、前記熱帯性サイクロンの核の上端において目の初期形成を検出したとき、前記熱帯性サイクロンがハリケーンに発達したとリアル・タイムで判定するステップと、前記構造パラメータの変化に基づいて、前記熱帯性サイクロンが発達していると判定するステップであって、前記構造パラメータの変化が、アイウォール内部における目の形成、前記目の垂直高さの増加、および前記目の上端直径と下端直径との間の差の増加を含む、ステップとを含む、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記UAVに搭載されたセンサが、レーダ検出器、撮像カメラ、赤外線センサ、受動型マイクロ波検出器、および前記熱帯性サイクロン内部における温度、圧力、相対湿度、および風向を測定し、前記UAVに遠隔測定データを返送する1つ以上の展開型センサを含み、前記展開型センサが、投下ゾンデ、定高度バルーン、または双方を含む、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、更に、前記UAVによって、構成変更可能なプロセッサおよび通信システムを使用して、地上配備リモート・コントローラから、更新された任務命令を周期的に受信し、前記更新された任務命令に従うステップを含み、前記更新された任務命令が、飛行経路および高度の改定された定義と、行うべきセンサ測定と展開型センサの投下に関する命令とを含む、方法。
【請求項19】
請求項16記載の方法であって、更に、前記構造パラメータを、前記UAVからストーム予報センタに中継するための衛星、航空機、または船舶に送信するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項16記載の方法において、前記UAVがGlobal Hawkである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、一般的には、熱帯性ストーム(tropical storm)およびハリケーンを監視するシステムおよび方法に関し、更に特定すれば、このようなストームの上方を飛行する無人航空機(UAV:unmanned aerial vehicle)を使用して、熱帯性ストームおよびハリケーンを監視するシステムおよび方法に関する。UAVは、観測可能な物理量の中でもとりわけ、ストームの核におけるアイウォール内にある目の存在を検出するセンサを含む。UAVは、アイウォール内に目がある場合、界面の特性を測定するセンサを使用する。何故なら、ストームの発達(intensification)または衰退(weakening)についての予測は、測定した属性に基づいて行うことができるからである。
【従来技術】
【0002】
[0002] 熱帯性サイクロンは、迅速に回転する対流圏渦系であり、その中心、特に地球の表面付近における低気圧、閉鎖下層大気循環、組織的な対流、および豪雨をもたらす雷雨の集中的発生(concentrated arrangement)を特徴とする。その地理的位置および強さにしたがって、熱帯性サイクロンは、ハリケーン、台風、熱帯性ストーム、サイクロン・ストーム(cyclonic storm)、熱帯低気圧、または単にサイクロンと呼ばれる。具体的には、ハリケーンは、大西洋または中央/東部太平洋において発生する強い渦であり、台風は北西太平洋におけるその同等物であり、サイクロンは南太平洋またはインド洋におけるその同等物である。米国において共通して記載されているように、熱帯性ストームとは、ハリケーンよりも勢力(intensity)が弱い熱帯性サイクロンであり、熱帯低気圧(tropical depression)とは、熱帯性ストームよりも勢力が弱い熱帯性サイクロンである。以下の開示全体を通じて、熱帯性サイクロン(tropical cyclone)という一般的な用語を、このような組織的な熱帯系を記述するために使用し、熱帯性ストームおよびハリケーンというような、更に具体的な用語も適宜使用する。
【0003】
[0003] これらよりも弱い先駆体は、ときとして大陸上の発生源まで辿ることもできるが、熱帯性サイクロンは通例比較的暖かい水の広大な広がりの上に形成する。これらは、海面から蒸発した水蒸気の凝集によって、雲の中にその形成エネルギを得て、その結果、湿った空気が大気内を上昇し、飽和までの膨張(expansion)によって冷却するとき、降雨が生ずる。このエネルギ源は、水平温度差異によって特徴付けられる周囲条件において生み出される、「ノーイースター」(nor’ester)やヨーロッパの暴風(windstorm)のような、中緯度低気圧性暴風雨(mid-latitude cyclonic storm)とは異なる。その大きな横方向規模のために、地球の回転によって付与される運動に対して作用する角運動量の保存の結果、熱帯性サイクロンの強い回転風が生ずる。異なる緯度における空気が、異なる速度で円周方向に移動し、対流誘導移流の下で中央に位置する顕著に(fairly)縦軸方向の回転に向かって引き込まれた場合、渦を編成することができる。これらの不可欠な熱帯性サイクロン形成条件(および論じない他の条件)は、全ての熱帯海盆(非常に希に熱帯性サイクロンに襲われる南大西洋以外)において夏後期および秋に、低緯度において、間欠的に強くなる対流による不安定な大気内で持続する。しかしながら、実測上、熱帯性サイクロンは赤道から5°以内で形成されるのは希であるので、超低緯度では発生条件は生じない。熱帯性サイクロンは、通例、直径100および2,000km(62および1,243マイル)の間である。
【0004】
[0004] つまり、熱帯(tropical)とは、これらの系の地理的起源を指し、ほぼ排他的に熱帯の海において編成されていく。サイクロン(cyclone)とは、その旋回する特性を指し、北半球では風が反時計回り方向(上から見たとき)に吹き、南半球では時計回り方向に吹く。発明者による循環(circulation)の観察では、地球と共に回転する基準系において発生するコリオリ効果を取り入れる。
【0005】
[0005] 強い風および雨に加えて、熱帯性サイクロンは、高波、危害を加える高潮、および中程度に強い竜巻も発生することができる。これらは、通例、陸上において8~12時間の範囲(scale)で衰弱し、山岳地帯上では地理的に誘発される降雨から更に素早く衰弱する。これらの理由から、海岸領域は、内陸領域と比較して、特に上陸が満潮と重なる場合、熱帯性サイクロンからの損害を受け易くなるのが通例である。しかしながら、豪雨(heavy rain)は、内陸において重大な洪水を発生させる原因となる可能性があり、高潮は、なだらかに傾斜する海底地形および海岸線の地形(orography)では、海岸線から40km(25マイル)までの広範な沿岸地域に洪水を生ずる(produce)可能性がある。
【0006】
[0006] 勢力(intensity)は、米国海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)によって、海抜高度10メートルにおける最大1分間平均風速として、公式に定義されている。もっと簡単に言えば、勢力とは、渦のいずれかの場所において保持される、最大低位風である。渦の大きさ、存続期間、高潮の傾向、降水量、竜巻の発生機構というような、他の熱帯性サイクロン・パラメータも重要であるが、現行の勢力は、そのときの渦強度を特徴付けるための最も有用なパラメータの1つとして、従前から受け入れられている。実際、勢力は、5~10%の範囲よりも正しく把握できることは滅多にないが、それでも構わないのは(if even that well)、熱帯性サイクロンのように猛烈で大きい渦は、総合的な監視が難しいからである。この不確実性に合わせて(consistent with)、勢力は従前よりビンニング(binning)の助けを借りて記述されている。最大保持底層風速が17m/s(38mph)を越える場合、低気圧は熱帯性ストームまで発達しており、33m/sでは、熱帯性ストームはカテゴリ1のハリケーンに発達しており、42m/sがカテゴリ2のハリケーンの閾値であり、49m/sがカテゴリ3のハリケーンの閾値であり、58m/sがカテゴリ4のハリケーンの閾値であり、70m/s(156mph)がカテゴリ5ハリケーンの閾値である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] ハリケーン、特に大きな(カテゴリ3~5)ハリケーンの破壊的性質のために、危険地帯にいる者に前もって警告を与えつつ、誤った警報を極力抑えるために、ハリケーンの経路および勢力を予測することには、大きな社会的関心がある。ハリケーンの経路は、主に、周囲の風および圧力場によって決められる。これらのパラメータは、衛星監視、コンピュータ化した大域予報システム、予報におけるアンサンブル(ensembles)の導入等の助けによって比較的利用しやすい(accessible)ので、ハリケーン経路予測は、過去20~30年にわたって著しく向上した。しかしながら、この同じ時間枠の間に、ハリケーンの発達または衰退の予測の精度は、特に、予知能力を必要とする、難易度が高い想定状況(more challenging scenario)にとって、殆ど改善が見られない。これは、少なくとも部分的に、どのようにそして何故熱帯性サイクロンが発達または衰弱するのか、多くの研究者の間で十分に理解していないためである。詳細で高度に包括的な渦のモデリングによって熱帯性サイクロンの内部挙動の理解を深める(improve)努力は、著しく改善された結果に至っておらず、進歩の停滞に寄与するおそれさえもある。何故なら、これらのモデルをリアル・タイムで使用するために、利用可能なリソースを大量に割り当てる(heavy allocation)と、いつも例外なく、空間的に荒い解像度が生じ、シミュレーションの開始に困難を来たすからであり、誤った物理概念(flawed physical concepts)の混入によってモデルに不利になる場合さえもある。
【0008】
[0008] 世界の殆どの地域(parts)では、衛星画像を供給することができ、太陽同期および対地同期コンステレーションからの画像は、熱帯性サイクロンやそれよりも弱い熱帯系(tropical system)の位置および大きさを判定するのに有用である。レーダ・データが利用可能な場合、渦の風および降水量についての追加情報を提供することができる。しかしながら、レーダ・データの入手可能性は、レーダ・アンテナに対する渦の近接性(proximity)に左右され、したがって海岸線から離れた渦、または遠い海岸線に沿った渦には、入手できなさそうな場合が多い。
【0009】
[0009] 衛星画像(imagery)およびレーダ・スキャニングに加えて、最近の数十年におけるハリケーン監視は、特に米国の両岸沖では、「ハリケーン・ハンター」(hurricane hunter)航空機を直接ハリケーン内部に対流圏中高度(~3km)において飛行させ、渦を通過する毎に、できるだけ多くの測定および人間の観察を行うことが強調されてきた。ハリケーン挙動に対する手掛かりは「境界層」(海抜約1000mよりも低い渦の部分であり、下に位置する海水と渦が激しく相互作用するところ)にあるという確信が拡散しているので、データ収集のために、安全性が許す限り低い高度で航空機を飛行させ、ハリケーンを通過させるのが通例である。これらのデータは、通例、先に論じたような、大型の計算集約的な気象モデルに供給され、渦の内部および周囲におけるプロセスを詳細にシミュレートし、渦が次に何をするか予測しようと試みる。この種のモデルにおいてデータを一致させる複雑さに加えて、この従前からの手法は、人間が操縦する航空機は熱帯性サイクロンを監視するのに短い時間量しか費やすことができず、飛行機(plane)が監視していない間に渦内において多くの変化が発生するかもしれないという事実によって、混乱する。前述のように、この総合的な監視に対する圧倒する(over-matched)試みは、熱帯性サイクロンについての発達(intensification)予測の精度には、限定的な改善しかもたらさなかった。さらに、地球の多くの地域では、機内操縦航空機(on-board-piloted aircraft)による偵察および調査飛行は、日常的に行われていない(undertake)。
【0010】
[0010] 大型ハリケーンの巨大な潜在的破壊力のため、そして既存の旧来の方法を使用したハリケーン発達予測における改善不足のため、個々の熱帯性サイクロンがその寿命の内に到達するかもしれない段階を、どのようにしてでも(whatever)もっと組織的にすることによって、熱帯性サイクロン発達および衰弱の運用監視(operational monitoring)を改善する新たな技法が求められている。単調でないことが多い進展(progression)は、熱帯低気圧から熱帯性ストームに、そしてハリケーンに、更に大型ハリケーンに発展することもあり、そして渦の終焉のモードとして、おそらくは元に戻るとして差し支えない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011] 本開示は、熱帯性ストームおよびハリケーンを含む熱帯性サイクロンの発達および衰弱を監視するシステムならびに方法について記載する。この方法は、長時間期間にわたって熱帯性サイクロンの上方にUAVを飛行させるステップと、渦の構造における遷移を検出するステップとを含む。ハリケーン段階への発達(intensification)は、アイウォール内部に目の存在を含む、熱帯性サイクロンの核構造における遷移によって示される。アイウォール内に目が存在する時、この目およびアイウォールの詳細な測定を行い、測定された目およびアイウォールの属性を、他の測定データと共に使用して、勢力を推定し、発達傾向(intensity trend)を予測する。UAVは、Global Hawk航空機とすることができ、熱帯性サイクロンの画像を提供する撮像カメラ、目領域における高さによる温度変化を検出する赤外線検出器、熱帯性サイクロンにおける風の強さおよび方向を検出するレーダ検出器、熱帯性サイクロンにおける温度、圧力、相対湿度、風速、および風向を測定する投下ゾンデ・センサ等のような、複数のセンサおよび検出器を含むことができる。UAVは、渦パラメータ・データを衛星または他の航空機(craft)に中継し、続いて受信ステーションにダウンリンクすることができる。
【0012】
[0012] 本開示の更に他の特徴は、以下の説明および添付した特許請求の範囲を、添付図面と合わせて検討することによって、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ハリケーン段階に達した熱帯性サイクロンの上方を飛行するUAVの図であり、UAVは、渦、特に、目およびアイウォールの属性を検出するために種々のセンサを含む。
【
図2】
図2は、
図1のUAVによって検出することができ、勢力および発達傾向の監視に使用することができる、ハリケーンの要素および特徴を示す、ハリケーンの上面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態にしたがって、熱帯性サイクロンの勢力および発達傾向を監視する方法のフローチャート図(flowchart diagram)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0017] 本開示は、UAVを使用して熱帯性サイクロンの勢力および発達傾向を監視するシステムならびに方法を対象とし、その実施形態についての以下の論述は、性質上単なる例示に過ぎず、本開示またはその用途もしくは使用を限定することは全く意図していない。
【0015】
[0018] 以下で詳細に論ずるように、本開示は、Global Hawkのような無人航空機(UAV)の使用を提案する。これは、熱帯性サイクロンの上方を飛行し、それと共に並進して、ハリケーンまたは大型ハリケーンへの発達を示す構造的変化を検出する。熱帯性サイクロンは、目およびアイウォールを含む構成に遷移するか、またはこれらの特徴の少なくとも一部の消失(withdrawl)が発生する(undergo)。UAVは、高空域長期滞空(HALE)航空機を備え(provide)、Global Hawkについては、高速飛行、高空域飛行、長期任務、大積載、大型内蔵電源、リアル・タイム・データ読み出し、飛行中任務方向転換(in-flight-mission-re-direction)能力の例外的な組み合わせ、更には互いに干渉せずに積載物を収容するための複数の加圧および非加圧ベイ、ポッド、ならびにハード・ポイントによって、熱帯性サイクロンの発達および衰弱の持続的リアル・タイム監視を可能にする。
【0016】
[0019] UAVは、種々の遠隔測定および現場の検出器ならびにセンサを採用し、熱帯性サイクロン内、具体的には、熱帯性サイクロンの中心およびその付近における順流によって挿入された、圧縮加熱され、比較的大気水象がない垂直ボールト(vault)(目)内部における構造的パラメータおよび熱流体-力学パラメータを検出する。これらの検出器およびセンサは、目の存在を示す、熱帯性サイクロンの比較的穏やかな中心を検出する。目は、その内部では、比較的弱い風または雨が発生しており、強い上昇気流(アイウオール)、深い雲および集中豪雨が発生する激甚エリアによって囲まれる。これらのセンサおよび検出器は、目に付随する雲頂面における低気圧(depression)も検出することができる。強い対流および回転を伴う周囲の環状体は積乱雲を含み、その上面は雲頂面を超過する。UAVによって提供される俯瞰透視は、有人航空機またはUAVによる低空飛行によって従前より採用されている虫眼透視とは対照的である。
【0017】
[0020] 本明細書において論ずる熱帯性サイクロン監視の究極的な目的は、(1)どの熱帯性ストームが発達してハリケーンになるか予測すること(統計的に、約半分がそうなる)、(2)どのハリケーンが更に発達して大型ハリケーンになるか予測すること(統計的に、約半分から1/3がそうなる)である。これらの発達の手掛かりは、ハリケーンに発展する(evolve)熱帯性ストームについては、アイウォール内部に目がある構造の挿入であり、大型ハリケーンに発展するハリケーンについては、その後における海方向への拡大、乾燥、およびその目の横方向収縮である。手掛かりとなる観測量は、回転軸からの半径方向変位および海面からの高度双方の関数としての、目/アイウォール界面の詳細な描写(delineation)である。
【0018】
[0021]
図1は、ハリケーン20の上方を飛行するGlobal Hawk UAV航空機12を示す図である。先に論じたように、本開示は、低気圧またはもっと勢力が強い熱帯性サイクロン、特に、熱帯性ストームおよび大型ハリケーンを含むハリケーンの監視のために設計されている。つまり、
図1において「ハリケーン20」に言及する場合、熱帯性ストームや熱帯低気圧には存在しない目/アイウォール構造がハリケーン20と共に図示されていることから、限定ではなく、例示を意図している。本開示を以前の熱帯性サイクロン監視方法と区別するのは、目/アイウォールの存在または不在、出現、および消失の検出、ならびにその構造についての監視である。
【0019】
[0022]
図1のハリケーン20について示したような類型の、はっきり形成された目/アイウォールに達した熱帯性サイクロンは、カテゴリ3~5ハリケーンに分類されるのに必要および十分な、最大維持低位風速(peak sustained low-level wind speed)に達している可能性が高い。ハリケーン20は、この理想化された軸対象図では、完全に環状のアイウォール26に囲まれた中心の目24を有する(後に再度取り組む主題)。ハリケーン20の目24は、対流圏(即ち、圏界面)の上端高度(upper altitude)から下方に海面までの全域に広がる場合もあり、また目は、圏界面における渦の上端から下方に、海面までの距離の一部のみに広がる場合もある。目24は円筒形状を有するとして差し支えないが、ほぼ常に目24の直径は上端において最も大きく、渦の底面に向かって小さい直径に、ときには徐々にそしてときには大幅に、先細っていく。ハリケーン20において最も強い暴風は、通例、環状のアイウォール26において発生する。以下で詳しく論ずる目24およびアイウォール26の属性の測定によって、ハリケーン20の発達または衰弱(または準定常的な持続性)の正確で時宜を得た評価が可能になる。
【0020】
[0023] 本明細書において説明する測定は、ハリケーン20の上端よりも上の高度から、そして存在するかもしれない雲の上位層のいずれよりも下において行うのが最良である。非限定的な一例では、航空機は50,000~60,000フィートの範囲の高度に位置付けられれば望ましい。ハリケーン20の目24は、直径が数キロ程度の大きさである場合もあるので、航空機12が常時目24の直接上方に滞留できないこともある。しかしながら、Global Hawk UAV航空機12は、その操作性(maneuverability)により、最適な連続測定のために、ハリケーン20の周りを回転すること、およびハリケーン20と並進することが可能である。更に、一部の測定および撮像は、視点(view perspectives)を変えることによって、やり易くなることもある。これらの理由のために、航空機12は、その任務の一部の間目24の上を直接飛行し、その任務の一部の間目24の上端からずれて飛行することも適当であろう。八の字旋回、楕円、蛇行、および/または螺旋パターンというような、中対流圏高度における有人偵察任務の間に渦の横断のために採用される種々の飛行パターンは、渦の核のHALE(全体像の)監視によって得られる最良の撮像および測定を達成することができない。
【0021】
[0024] Global Hawk航空機12は、複数のセンサ、検出器、カメラ等を含み、これらは、目24およびアイウォール26の存在または不在を含む(そして、これらを優先する)、ハリケーン20の核についてできるだけ多くのデータを収集するように、目の挿入(insertion)または退行(withdrawal)というような、種々の大気状態および事象、圧力、湿度、温度、風速、風向等を検出することができる。例えば、航空機12は、ハリケーン20の光学画像を撮影することができるカメラ32を含むこともでき、この画像は、目24の存在、目24の直径、目24が広がる下方向の距離、アイウォール26の上端の高度等のような、種々のものを示す情報を提供することができる。
【0022】
[0025] また、航空機12は、目24のような、ハリケーンの比較的雲がない部分において、高度による温度変化を検出する赤外線検出器34も含むことができる。これらの温度プロファイルは、目24内部で発生している、熱流体力学活動(圧縮加熱のような)を理解する上での貴重な手がかりを提供することができる。カメラ32および赤外線検出器34から供給される画像およびデータから、マイクロ波のような他の何らかの種類のセンサよりも細かい空間解像度が得られ、一方各種センサは、一般に、何らかのストームの特徴(例えば、外観、温度プロファイル、湿度データ、大気水象の存在等)を検出すること、または渦の部分に、他のものよりも 近づくことができる。
【0023】
[0026] また、航空機12は、複数の展開型(deployable)センサ38も含むことができ、変わる可能性があるスケジュールに合わせて航空機12から投下することができる。展開型センサ38の1つが、航空機12上に示され、他の1つが、目24の中に降下している、投下状態で示されている。当技術分野では周知のように、展開型センサ38は使い捨てセンサであり、航空機12から空中に展開可能であり、気温、気圧、相対湿度、風向等を含む気象データの現場測定値を供給するように設計されている。展開型センサ38は、投下高度から連続的に(all the way to)海面まで降下する投下ゾンデを含むこともできる。また、展開型センサ38は定高度バルーンを含むこともできる。
【0024】
[0027] 投下ゾンデは、降下の間気象データを収集し、投下ゾンデが降下するに連れてこのデータを航空機12に返送する。投下ゾンデ・センサには、目24内部における空気の半径方向/軸方向循環を検出できるものもある。目24の中心またはその付近における空気は下方向に流れ、目24においてアイウォール26に隣接する空気は剪断(shearing)の下で上方向に流れることができる。(目24内部において関連する半径方向/軸方向循環は、目24の相対的な暖かさ、および目およびアイウォールの近界面内容物(near-interface content)間において可能な質量/運動量/熱相互交換を維持することを可能にする。)また、投下ゾンデ・センサは、それが着地する海面の水温を測定し、この情報を航空機12に返送することもできればよい。また、展開型投下ゾンデ・センサ38は、収集および送信された大気データおよび他のデータの全てに、位置および高度でインデックス化することができるように、GPSセンサおよび高度計のような、位置および高度センサも含むことが好ましい。
【0025】
[0028] また、展開型センサ38に関係するUAV航空機12の能力(capability)は、定高度バルーンの目24への投下、およびそれに続く監視/追跡を含むこともできる。ストームの上方から投下される定高度バルーンは、長時間期間にわたるストームにおける特定の位置にいて状態を監視する能力を提供する。調査中の問題は、目24における空気の供給源(下部成層圏から引き寄せられるのか、または上部アイウォール26から降下するのか)、および目24の外縁とアイウォール26の内縁との間における質量/運動量/熱交換(通常、低高度における目24からアイウォール26への誘引(entrainment)、および上部アイウォール26から目24への吐出し(detrainment)であると考えられる)である。慣行にしたがうと、非常に正確に水平方向(垂直方向でない)の空気運動に従うように設計された、漂流する軽量で安価なバルーンは、伸長性でないシェルを有する。このような剛性または半剛性のバルーンは、近似的に目24における等高度面となる、目24における等密度面(constant-density surface)上を浮遊する。この等密度面は、ほぼ一定の体積のヘリウムおよび空気のような、気体の混合によって選択される。海面付近の湿り大気におけるこのようなバルーンに伴う問題の1つは、凝縮、即ち、通例昼間から夜間まで変化する水分の収集によって発生する可能性がある、余分な質量負荷(mass loading)である。この問題は、比較的乾いた目24において最小化される。それでもなお、日中には太陽による加熱があり、夜間には赤外線放射冷却があるので、高度には日周変動がある。したがって、これらのバルーンに更に磨きをかけたバージョンでは、バルーンが垂直方向に、投下の前に設定された気圧範囲外で移動するときに空気を注入または除去することによって、浮力を調節するためのバラストを有する。通例、このようなバルーンは、容積が変化できるように、可撓性材料で組み立てられる。GPS位置、気圧、温度、および相対湿度は、トランスポンダによって、バルーンが発射されたUAV航空機12に送信することができる。実際、双方向通信であれば、バルーン動作パラメータの対話処理制御を可能にすることができる。この場合も、他の者によって提案されたような、1キロメートル(およそ5000フィート)未満に高度が制限されたドローンまたは他の航空機は、定高度バルーンの発射および持続的監視には適さない(less suitable)。
【0026】
[0029] また、航空機12は、大気水象(空気中における液体および/または水固形物の粒子)を検出するレーダ検出器42も含むことができ、大気水象から、特にアイウォール26における、風向および風速のような、空気質量移動の変動を推測することができる。また、レーダ検出器42は、環状のアイウォール26の構造的属性、即ち、形状および大きさも検出できるとして差し支えない。これらの属性は、渦の発達または衰弱を理解する上での貴重な手がかりを提供する。しかしながら、アイウォールの内縁付近におけるランダムな短期間の対流、垂直面指向「バースト」(活発な上昇気流および下降気流を伴う)からのレーダ反射を、対象の長期流パターンと混同しないように警告する。これらのバーストの貫入頂(overshooting top)は、上部の目(upper eye)に大気水象を注入する可能性がある。次いで、これらの大気水象は、目24内において循環し、目24における圧縮加熱の一部を軽減する。
【0027】
[0030] また、航空機12は、ハリケーン20の核内部における温度および湿度プロファイルを検出する受動型マイクロ波センサ44も含むことができる。
【0028】
[0031] 本明細書において論ずるように、航空機12上の種々の検出器およびセンサによって収集されたデータ、画像、およびその他の情報は、1つ以上の衛星46に送ることができる。データは、処理され、他の衛星、船舶48、地上の受信ステーション50、他の航空機52等に送ることができる。最終的に、航空機12からのデータは、通例受信ステーション50のような設備に収容される、ストーム予報センタに供給される。
【0029】
[0032] Northrop Grumman社のGlobal Hawkは、航空機12として配備される(serve)のに適した理想的な高空域長期滞空(HALE)UAVである。Global Hawkは、毎時約350マイル(mph)の速度で巡航し、2000lb以上の積載物を収容することができる。Global Hawkの高速は、空域から熱帯性サイクロンへそして帰還の輸送(enroute)時間短縮を表し、つまり「ステーション上」で生産的に渦を監視するのに費やされる時間が増えることになる。Global Hawkの高空域飛行能力は、いずれの邪魔をする天候も、その熱帯性サイクロンの位置への接近を阻めないことを意味する。大きな積載量は、Global Hawkが展開型センサ38の多くを搬送し、これらをハリケーン20内に展開できることを意味する。実際、Global Hawkは、数十台もの展開型センサ38を搬送し展開するための十分な積載能力およびハード・マウント・ポイント(hard mounting points)を有する。Global Hawkは、迅速に連続的に展開された複数の投下ゾンデから、これらが同時に降下するにつれて、位置データおよび現場データを受信するのに十分な能力を搭載することができ、更に定高度バルーンの展開も扱うことができる。
【0030】
[0033] 長期耐久性(long endurance)は、Global Hawkの別の特徴であり、熱帯性サイクロン監視の必要性を満たす。Global Hawkは、30時間以上の飛行耐久性を有する。目標への迅速な到達を可能にするGlobal Hawkの高飛行速度を考えると、長期滞空性(long flight endurance)は、20時間以上の目標に対向する時間に匹敵する。これらの特徴により、数日または数週間も存続する可能性がある熱帯性サイクロンを、たった2機のGlobal Hawkによって連続的に監視することが可能になり、燃料を補給し、保守作業を行い、一方のユニットが飛行している間に他方のユニットに補充する十分な時間がある。Global Hawkの長期派遣能力により、航空機12は、従前から行われているような単なる間欠的なスナップショットではなく、連続測定および画像データを供給することが可能であり、したがって、Global Hawk航空機12は、ハリケーン20が発生した時に、その構造および勢力の変化を見逃すおそれは少ない。繰り返すが、熱帯性ストームは必ずしも単調に最大ハリケーン勢力まで発達し、次いで単調に低気圧まで衰弱するだけではなく、むしろカテゴリ間で発達および衰弱を繰り返す場合もある。熱帯性サイクロンを連続的に監視し、現在の測定値を以前の測定値と比較する機能(ability)は非常に重要である。初期の目の挿入は、ごく短時間の内に、比較的急速に発生する場合もある。
【0031】
[0034] 更に、航空機12は、自動飛行制御、地上に配備されたリモート・コントローラ56および他のデータ受信機(衛星46等)との通信のための双方向無線システム54、ならびに少なくとも1つのプロセッサ58を含む。プロセッサ58は、飛行速度、飛行高度および方位、取り込むべき具体的なセンサ測定値、ならびに展開型センサ38を展開する時間/位置等というような命令を用いて構成変更可能である。任務命令は、航空機12の離陸前に予めプログラミングされており、地上に配備されたリモート・コントローラ56からのコマンドによって飛行中に更新または修正することができる。熱帯性サイクロンの経路、勢力、および挙動の予測は、現在の技術的現状では精度が低い場合が多く、任務中における驚愕、特に、比較的急速な驚愕に対して応答する能力(capacity)は、非常に有利である。
【0032】
[0035] ハリケーン20を観察し画像データおよび測定データを供給する長期派遣のための、ハリケーン20の現場への航空機12の展開は、ストームの発達または衰弱を監視するのに貴重な補助となることができる。しかしながら、航空機12が「正しいこと」を探し測定するために使用されるだけで、最大の価値が実現される。これらの「正しいこと」は、具体的には、サイクロンの核の構造を含み、構造には、目24およびアイウォール26の縦方向ならびに半径方向の広がりが含まれる。これらは、上方からでなければ判定することができない。これの最大の利点は、これまでに使用されてきたサイクロン観察技法では得ることができなかったか、または見逃されてきた。
【0033】
[0036]
図2は、ハリケーン100の上面図であり、
図3はその横断立面図であり、ハリケーン100の要素および特徴を示す。これらは、
図1のUAV航空機12によって検出することができ、発達監視のために使用することができる。ハリケーン100の図示は、実世界のハリケーンを理想化した軸対称近似である。ハリケーン100は、完全に閉じたアイウォールを有し、高い勢力レベルに達した熱帯性サイクロンである。ハリケーン100の特徴の一部は、熱帯性ストームのような、それよりも勢力レベルが低いサイクロンでは存在しない。これについては以下で論ずることにする。
【0034】
[0037] 再度強調するが、「ハリケーン」という用語を
図2~
図3の論述において使用するのは、これらの図に描かれている渦が、最大限発達した強い勢力の熱帯性サイクロン(即ち、ハリケーン、おそらくは大型ハリケーン)の特徴の全てを含むからであるが、これらの特徴の存在/不在/広がりについての渦の監視は、ハリケーンの勢力レベルよりもはるかに低いものも含む、あらゆる熱帯性サイクロンにも適用可能である。
【0035】
[0038] ハリケーン100は、海面110の上方に位置する。ハリケーン100は、垂直回転軸120を有し、これを中心として渦が回転する。軸120またはその近傍に目124が存在する。目124は、比較的弱い風および少量の雲または雨という特徴を示す。目124の直ぐ外側に、アイウォール126が存在し、アイウォール126は、ハリケーン100におけるいずれの位置にしろ、最も激しい風および最大降水を含む。環状アイウォール126の境界(目124との内側境界、渦全体(bulk vortex)との外側境界)は、多くの異なる形状をなすことも考えられ、固定間隙の平行/垂直壁を有する同心状直円柱台(frustra of concentric right circular cylinders)、同心状円錐、または同心状ホーンを含む。即ち、
図3に示すように、外側に揺れる上端付近を除いて全体的に円錐形状である。アイウォール126の低高度部分は、単に例示を目的として、ほぼ一定の厚さで示されているが、具体的には、中高度よりも上では、アイウォール126は、高度が増すに連れて、厚さが増すとして差し支えなく、そして通例では、アイウォール126は、高度が上がるに連れて、増々横向きになる。以下で更に論ずるように、目124およびアイウォール26の形状および大きさは、ハリケーン100の勢力レベルにとって重要である。
【0036】
[0039] 物理および数学的分析を目的として、ハリケーン100を数個の別個のモジュールに構成し、各モジュールがそれ自体の有意な(significant)風成分(1つまたは複数)を有する。風成分は、アイウォール上昇気流130、地表近くの流入層(摩擦境界層)132,および一次渦(または渦本体)134を含む。一次渦内において観察可能な螺旋状帯は、積雲/層状雲142を含む。降雨帯における雲は、通例、軸120からの距離が短い程、高さが増す。螺旋状帯は、渦の回転方向(上から見て、北半球では反時計回り方向であり、一次渦134において示される)を有する、渦巻く風によって方位方向に搬送される積乱雲/層状雲142からの降水量(主に雨)を印す。雲および旋風(swirl)は、軸120からの距離と共に減退し、
図2に示すような、従前からの渦巻き風車の外観をハリケーン100に与える。一次渦では、短命な積乱雲における多くの湿った空気の上昇および多くの凝集物による空気の下降に囲まれて、境界層に供給する空気の定常的な適度の純下降気流(net downdrift)がある。
【0037】
[0040]
図3の水平および垂直方向の寸法は、同じ拡縮率で示されているのではない。この図は、例示の目的で、垂直方向に(かなり)強調されている。ハリケーン100のような大型の熱帯性サイクロンは、軸120から外側帯の外周まで、1500km(900マイル)の半径を有することもあるが、渦の高さが15km(約9マイルまたは48000フィート)を越えることは非常に希である。また、渦の低位境界層が供給する渦巻流入(low-level boundary-layer-furnished swirling influx)(通過量)は、核において高まり、横方向に外側に向かって消耗し、上部対流圏高度において殆ど枯渇する(exhaust)。つまり、スループットは、一旦通過した後、渦の周辺において周囲に戻される。したがって、渦の横方向の広がりの多くにわたって、上位の(higher-level)巻雲の層が、ハリケーン100の下位域(lower levels)よりも上に存在し、これら上位の巻雲は、衛星撮影による下位(lower-level)ハリケーン100の観察を妨害する。幸い、多くの主要観察は、もっと接近し易い渦の核に関わり、核において、圧力および温度のような多くの大気場を検知するためには、ハリケーン100を監視するときに航空機12が飛行する理想的な高度は、アイウォール126の上端の直ぐ真上、即ち、通例50,000~60,000フィートの高度である。
【0038】
[0041] 直感とは対照的に、目/アイウォール界面が、海抜高度の上昇に伴って、半径方向外側に傾斜する程(即ち、
図3に示す「スタジアム効果」が大きい程)、熱帯性サイクロンの勢力は強くなる。この傾きは、目124における圧縮加熱が、環状アイウォール126を増々覆い(overlie)、アイウォール126の底面において、特に、低高度におけるアイウォール126の外縁において、更に低い圧力を生成することを可能にする。(渦における最も速い維持低高度旋回が発生するのが観察されるのは、アイウォール126の外縁付近であるが、最も低い海面気圧はそこで発生する必要はなく、観察に基づくと発生しない。)目124が覆う部分を除いて、アイウォール126は、高さ増加に伴う膨張冷却を相殺するためには、凝縮熱の放出による低密度化に完全に頼らなければならない。軸方向運動量の保存の下で、このように凝縮熱の放出に完全に頼ると、海面の周囲圧力からの、海面圧力異常(不足)を生じる。この異常は数十ヘクトパスカル(hPa)またはミリバール(mb)に限定される。(hPaは大気圧測定の国際(SI)単位であり、1hPa=100パスカル=1mbである。)
【0039】
[0042] 数十hPaの側圧不足は、角運動量および半径方向運動量の保存についての方程式の下では、目がない熱帯低気圧および熱帯性ストームの穏やかな旋回速度に相当する(translate into)。目の存在によって与えられる圧縮加熱による密度低下がある熱帯性サイクロンでは、海面環境からの海面異常(側圧不足)は100hPaを超過する可能性があり、最大低位維持旋回速度(peak low-level sustained swirl speed)は75m/sを超過する可能性がある。つまり、重要なのは、上部対流圏部分を含む、目/アイウォール界面の構成全体である。これらの理由のために、本開示において教示するように、ストームを上から見下ろすことが必須となる。測定および観察を行うために、低高度(50,000フィートよりもはるかに低いいずれかの場所)において、ハリケーンの目を含むストームを突っ切る他の先行技術の実践および方法では、渦の発達または衰弱を予示する主要な特徴を検出することができない。
【0040】
[0043] 単に航空機をハリケーン100に展開し、あらゆる可能な変数を測定しようとするのではなく、本開示は、目124および/またはアイウォール126の外観、発達(development)、減衰、および消失に集中することを提案する。目124およびアイウォール126の構成、ならびにそれらの中で発生していることは、近い将来において、渦(ハリケーン100)が強くなるのかまたは弱くなるのか(もしくはそのまま維持するのか)について最良の指示を与えることができると確信する。これは、熱帯性サイクロンの予報士および公安関係者が特に求めている判断補助指針である。(1km規模以下の激しい対流である大気系に対して、勢力予報が物理的に利用可能な予測区間、即ち、今後における時間は、一般に知られているよりも遙かに短い場合もある)。先に述べたように、熱帯性ストームの勢力以下の熱帯性サイクロンのように、一部の熱帯性サイクロンには、アイウォールによって包まれた目が存在しない場合もある。熱帯性ストームでは、降水および厚い雲を伴う渦巻上昇気流(より遅い渦巻きであるが)の広い領域が、回転軸の右側において、渦の核全体を占める。目がなくても、対流核への外側境界は存在する。ここに、アイウォールの(接近しにくい)外側境界が何故渦強度変化の高感度指標となることが期待されないのかについての説明がある。
【0041】
[0044] また、目124およびアイウォール126は、熱帯性サイクロンの一生にわたって、現れ、次いで消え、次いで再度現れることもある。したがって、熱帯性サイクロンの核を参照すると便利である。核とは、渦の中心部分であり、十分に強い渦(ハリケーン)では目124およびアイウォール126を含み、それよりも弱い渦では目/アイウォールを含まない。内部熱流体力学機構(1つまたは複数)が見かけ上何であれ、それによって熱帯性ストームの約半分、しかし約半分だけが、もっと強い構成、即ち、ハリケーンへの遷移に至り、またハリケーンの約半分、しかし約半分だけが、大型ハリケーンへの遷移に至り、これらの遷移の観察に基づいて、見える形で利用可能なのは、核構造の変化である。このような有意な変化は、渦の固有の時間尺度 (time scale) である、逆コリオリ周波数の時間尺度で発生するとしてよい。したがって、このような遷移の最も素早い断片(swiftest fraction)を「急速発達」と呼ぶことには、疑問の余地がある。何故なら、このような特徴付けは、このシステムに対する明らかな時間尺度を見落とし、遷移の発生が準定常であるか否かに関わらず、事実上同じ物理プロセスに入るからである。
【0042】
[0045] したがって、以上のことを背景として、発達または衰弱の指示のために、ハリケーン100の核(および/またはその熱帯性ストーム先駆体/後継体)を監視する技法を提案する。1つの主要な要素は、アイウォールによって包まれた目が存在するか否かであり、存在する場合、どの位完全に挿入されているかである。目124のアイウォール126との界面は、海面110まで下方の全域に広がるとは限らない。実際、目124が丁度形成し始めたときには、ハリケーン100の天頂(upper elevation)のみに存在する。したがって、測定すべき渦の構造パラメータには、アイウォール126の上端の高度(巻雲層の上端よりも上方への何らかの垂直オーバーシュートを含むこともある)と、目124の下端の高度(大型ハリケーンに完全に発達しきっていない熱帯性サイクロンでは、海面よりもかなり上方にあることもある)とを含む。
【0043】
[0046] 目124の上端および下端の高度に加えて、高度の関数としての目124の直径も重要である。目124の直径は、アイウォール126の内側境界の直径と事実上同じであると見做される。目124が海面110まで下方の全域に広がる場合、それ自体が重要で、容易に利用可能で観察可能な物理量である。更にまた、海面110における目124の直径も、所与の渦についての強度の便利な指標となる。更に、高度上昇に伴う目の直径の変化も、基礎概念の自己無どう着にとって非常に重要である。先に論じたように、アイウォール126の直径は、上端の方が下端よりも長いので、そして特にアイウォール126は、
図3に示すように、高度が高くなるに連れて目に見えて外側に湾曲するので(「スタジアム効果」)、これは、海面110でアイウォール126において他の場合に発生するよりも、大きな圧力不足を支援し、そして大きな渦強度を維持する。したがって、その下端の高度、その上端の高度、および下端から上端までの様々な高度におけるその直径を含む、下端から上端までのアイウォール126の形状から、多くを学習する(そして確認する)ことができる。
【0044】
[0047] 先に論じた核構造パラメータ(目124およびアイウォール126の存在ならびに詳細形状に関する)に加えて、航空機12は、ハリケーン100の核における多くの重要な気象条件を測定するために、機内に搭載されたセンサを使用することができる。これらの条件は、目124における気温、圧力、および湿度を含む。部分的に挿入された目では、海面110までの全距離にわたって下方向に広がらない場合、湿った境界層の空気が目における圧縮加熱された乾燥空気の下を通る。その結果、部分的に挿入された目の底面において検出可能な逆転層があり、その中では温度は高度と共に上昇する。下を通る湿った空気は、最終的に境界層の空気の残りと合流し、アイウォール126の一部になる。海面110付近の目124における最小圧力だけでなく、高度による圧力変化も重要である。
【0045】
[0048] 重要な気象条件には、更に、アイウォール126における垂直速度成分、およびアイウォール126における回転速度成分が含まれる。回転速度および垂直速度は、アイウォール126における高度および半径方向位置と共に変化する。一般に、アイウォールは、その底面において、分離する近海面境界層からの流体が連続的に供給されるので、アイウォールの上昇流(upflux)および横方向流出における流れは、その内側境界付近程、速い流線沿い運動、低い渦巻き、および高い全停滞エンタルピを有し、そしてその外側境界付近程、遅い流線沿い運動、高い渦巻き、および低い全停滞エンタルピを有することが予測される。つまり、異なる湿潤擬似断熱座(moist-pseudo-adiabatic loci)上のアイウォール126内を上昇する空気は、異なる高度において平衡を達成する。局部的な剪断誘発混合以外に、上部対流圏流出は、安定的に階層化される傾向があり、熱帯性サイクロンが発生する熱帯環境との再合併と一致する。
【0046】
[0049] 核構造パラメータ(目/アイウォール形状データ)および他の重要な気象条件は、航空機12に搭載されたセンサの組み合わせによって、判定することができる。例えば、カメラ32は、目124が下方に海面110までの全域に広がっているか否かを示す画像を撮影することができ、更に航空機12の飛行高度がわかれば、目124の下端における直径を判定することができる。また、目124の上方および目124からずれた種々の位置からハリケーン100を撮像することによって、カメラ32からの画像は、アイウォール126の断面形状を解明することができる。この断面形状は、
図3におけるように、局部的に円筒形、円錐形、または強い外湾曲の場合もある。
【0047】
[0050] レーダ検出器42は、大気水象(空気中における液体および/または水固形物の粒子)を検出するために使用することができ、 大気水象 から、特にアイウォール26における、風向および風速のような、空気質量移動の変動を推測することができる。このように、レーダ検出器42は、種々の高度(アイウォール126の形状プロファイルを区別できる十分に異なる高度)におけるアイウォール126の形状および厚さの正確な(accurate)表現を供給することができる。また、レーダ検出器42は、アイウォールの上昇気流130の速度、およびアイウォール126内における接線方向の風の速度の測定値も供給する(provide)ことができる。
【0048】
[0051] ハリケーンの上端からその下端までの気象条件の正確な測定は、Global Hawkのような偵察飛行するHALE UAV12から展開される展開型センサ38を使用して行うことができる。投下ゾンデのように、展開型センサ38は、投下ゾンデが航空機12から海面10まで降下するに連れて、気温、圧力、および湿度のようなパラメータを測定し、測定データを航空機12に報告する。投下ゾンデは、緩やかな降下のためには、パラシュートに嵌め込むことができ、またもっと素早く直線的な、目124を通過する降下のためには、爆弾のようなテールフィンに嵌め込むこともできる。定高度バルーンは、目124内部で特定の高度において長時間期間にわたって気象条件を測定することができ、条件がどのように変化しているかについて非常に正確な表現を提供する。
【0049】
[0052] 赤外線検出器34は、目124のような、ハリケーン100の比較的雲がない部分における、高度による気温変化を検出することができる。通例、荒い(coarser)空間解像度では、目124およびアイウォール126が存在するか否かには関係なく、熱帯性サイクロンの核内部における温度および湿度プロファイルを検出するために、受動型マイクロ波センサ44を使用することができる。
【0050】
[0053] 以上の論述を纏めると、ハリケーン100の核の上空を繰り返し飛行するために、適したパターンでハリケーン100よりも高い高度で航空機12を飛行させる。核の現状について、正確な描写を提供する測定データを取り込む。測定データは、目/アイウォールが存在すれば、その詳細なデータを含む。測定データは、熱帯性サイクロン予報センタに、連続的に、通例中継衛星または他の航空機(craft)を通じて送信される。測定データを、例えば、1時間前というような、以前の時間サンプルからの対応するデータと比較することによって、ハリケーン100の発達または衰弱について、その時々の(timely)判定を行うことができる。
【0051】
[0054] 例えば、目を欠く熱帯性ストームのアイウォール内部に発生期の目ができた場合、ストームの高度の上端における浅い目に過ぎないにしても、これは発達の兆候(indication)である。同様に、直前の測定時から目124が深くなった(下端の高度が下がった)場合、ストームは発達していることになる。このように、目124が海面110に向かって更に深くなることを含む、目124およびアイウォール126の更に明白な構造への発展はいずれも、発達の兆候である。
【0052】
[0055] 加えて、直前の測定時から、アイウォール126が上端において更に外側に広がった場合(上端の直径が長くなった)、この状態は、アイウォール126の下端において更に大きい圧力不足を支援し、渦の発達を示す。多くのこのような結論を、目124およびアイウォール126の形状ならびに大きさから引き出すことができる。以上の論理の逆も成り立つ。例えば、1つの時間サンプルから次の時間サンプルまでに目124が更に浅くなった場合、ストームは弱化していることになる。
【0053】
[0056] 開示する高空域長期滞空UAV対応ハリケーン監視方法の1つの主要な能力は、熱帯性ストーム内部における目の初期形成の早期(リアル・タイム)検出であり、目の発生は、弱い方の(less intense)熱帯性ストームから強い方の(more intense)ハリケーンへの遷移の印となる。NOAAのスタッフ達は、海面上約3kmにおいて熱帯性サイクロン内への偵察行為を何度も行い、いわゆる1細胞状組織からいわゆる2細胞組織への、この決定的で実用上重要な、核における遷移をリアル・タイムで目撃したという主張は、事実上これまでになされてない。この遷移は例外なく迅速であり、渦の上端において開始するので、Global Hawkによって供給される連続的な全体像は不可欠であることに疑いの余地はない。
【0054】
[0057] 他者が示唆するように、5000フィートより下への渦の突入は、目の形成を目撃する機会を得るには低すぎる高度である。実際、発達(major intensification)についての有効な(operative)物理メカニズムに関して、約3/4世紀にわたり(そして継続中)熱帯性サイクロンの科学を誤った道に導いたのは、偵察飛行中にこのような低高度から、垂直であるとされている目/アイウォール界面(purported verticality)を見上げたときのロバート・シンプソン(Robert Simpson)の間違った印象であった。強調して要約すると、上からの熱帯性ストームの連続監視だけが、目の初期形成をリアル・タイムで目撃する機会を与え、このイベントを天気予報ステーションにリアル・タイムのストーム発達指標として、即ち、熱帯性ストームからハリケーンへの遷移として伝達することができる。Global Hawk UAV航空機12は、その高空域および長期間飛行能力によって、そしてその飛行任務中常時ストームの中心と視覚/センサを(上から)接触させ続ける機能によって、必要な能力を提供する。
【0055】
[0058] 先に論じた目124およびアイウォール126の形状および大きさによって得られる(offered)発達の手がかりに加えて、目124およびアイウォール126内において測定された気象条件もストームの発達または衰弱の指標を提供することができる。例えば、展開型センサ38を使用して、目124全域にわたる種々の高さにおける気圧を測定することができる。測定される気圧には海面における圧力も含まれ、これは渦の強度に代わって、変動が少ない指標としてしばしば使用される。また、展開型センサ38によって、目124の上端から下端まで全体の気温を測定することもできる。1つの時間サンプルから次の時間サンプルまでの間に目124の下端付近で温度が上昇した場合、例えば、これは、目の垂直方向の範囲(extent)が広がったため、または目が完全に乾燥した(dry out)ためであるが、目124における空気の圧縮加熱が増加し、そして更なる渦の発達が続く可能性があることの指標である。測定は、目124の上端から下端まで、または経時的に特定の高度において、迅速に行うことができる。
【0056】
[0059] Global Hawk航空機は、様々な投下ゾンデの展開型センサ38を100個程度搬送することができ、これが運用者(operator)の好ましい展開の選択肢であれば、航空機12がハリケーン100の現場にいる時間全体にわたって1時間毎に3~4個の展開型センサ38を展開するのに十分である。以上で論じたような多くの発達指標は、ストームの核における、特に、目124が存在するのであれば目124におけるセンサ測定値から検出することができる。これらの測定値は、展開型センサ38、または赤外線検出器34、もしくはマイクロ波センサ44のような、航空機12に搭載された他の計器(instrument)によって取り込むことができる。
【0057】
[0060]
図4は、本開示の実施形態にしたがって、熱帯性サイクロンの発達を監視する方法のフローチャート
図200である。ボックス202において、最も一般的には、運用中の(operational)対地同期および太陽同期衛星コンステレーションから、しかし広い範囲の研究および特殊目的気象衛星からでも、熱帯性サイクロンが形成したことを判定する。いずれの熱帯系を監視するためにもUAV航空機12を使用することができるが、熱帯性ストームのカテゴリでなくとも、少なくとも熱帯低気圧のカテゴリまで発達した熱帯性サイクロンだけにでも航空機12を展開すれば、有利であろう。熱帯擾乱の大部分は、熱帯低気圧の強さにですら決して達することはなく、通例人命や財産に対して比較的些細な脅威でしかない弱い熱帯擾乱の詳細な監視は、有限の運用資産の最適な使用ではない。
【0058】
[0061] ボックス204において、熱帯性サイクロンの上方にUAV航空機12を飛行させる。航空機12は、Global Hawkであれば、30時間以上の飛行耐久性を有する。ハリケーンであってもよい熱帯性サイクロンを目標に迅速な到達を可能にするGlobal Hawkの高い飛行速度を考慮すれば、長い飛行耐久性は、20時間以上の現場滞在時間に匹敵する。これらの特徴により、数日または数週間も存続する可能性がある熱帯性サイクロンを、たった2機のGlobal Hawkによって連続的に監視することが可能になり、一方のユニットが飛行している間に、他方のユニットに燃料を補給し、保守作業を行い、補充し、プログラミングし直す十分な時間がある。
【0059】
[0062] ボックス206において、UAV航空機12に搭載されているセンサを使用して、熱帯性サイクロンの核内に存在する気象条件を測定する。先に論じたように、気象条件には、気温、気圧、湿度、大気水象の存在、風速および風向等が含まれ、これらの測定値は、展開型センサ38(投下ゾンデまたは定高度バルーン)、または赤外線検出器34もしくはマイクロ波センサ44のような、航空機12に搭載されている他の計器によって取り込まれる。
【0060】
[0063] ボックス208において、カメラ32およびレーダ検出器42のような、UAV航空機12上のセンサを使用して、熱帯性サイクロンの核の構造パラメータを検出する。具体的に、構造パラメータは、アイウォール126によって包まれた目124の存在または不在、そして存在する場合には、先に論じたように、それらの大きさおよび形状の詳細を含む。ボックス208における構造パラメータの検出は、目の初期形成をリアル・タイムで検出するための、ストームの核の連続監視を含む。
【0061】
[0064] ボックス210において、核における気象条件および構造パラメータに基づいて、熱帯性サイクロンが発達しているかまたは衰弱しているか判定する。好ましい実施形態では、核内に存在する気象条件、および核の構造パラメータを含む、UAV航空機12によって収集されたデータを、UAV航空機12から予報センタに送信する。通常、これは、UAV航空機12から、衛星、他の航空機または船舶のような、データを予報センタに中継する仲介ビークルに送信することを含む。また、先に論じたように、現在のサンプルからの気象条件および構造パラメータを、以前のサンプル時間からの対応するデータと比較することによって、渦が発達している、または衰弱している、またはそのまま持続している明らかな指標が得られる。更に、ボックス210における発達または衰弱の判定は、以前には何も存在しなかった場合には初期の目の形成(発達)のリアル・タイム検出を含み、逆に、以前に存在していた場合には目の消失(衰弱)のリアル・タイム検出を含む。ボックス210における発達または衰弱の判定は、航空機12におけるプロセッサ58上で実行するソフトウェアによって、受信ステーション50におけるコンピュータ上で実行するソフトウェアによって、または航空機12からデータを受信するストーム予報センタにおける要員またはソフトウェアによって実行することができる。
【0062】
[0065] 勿論、発達または衰弱の兆候(sign)を求めて熱帯性サイクロンを監視することの総合的な目的は、近づきつつある危険な渦について民衆への適切で正確な警告を可能にすること、酷い被害を受けることが予測されるエリアへの機器および人的資源の展開を開始すること等である。これらの目的は、先に論じた技法を使用することによって、一層効果的に満たすことができる。その技法は、熱帯性サイクロンの長期上空飛行監視のためにGlobal Hawk航空機12を展開し、従前からの「ハリケーン狩り」(hurricane hunting)派遣では試験されなかった渦の属性を測定および分析することを含む。Global Hawkの能力を有するシステムの展開には、相当なコストがかかり、多くの環境監視の目的には、費用がかからない代替物で十分なことが多い。しかしながら、熱帯性サイクロンは、繰り返し起こり、影響が甚大であり(何十億ドルもの損害を与える)、不規則に発生し、急速に発達する自然災害であるため、運用展開(operational deployment)を支援する具体的な派遣計画が詳細に明示されている。
【0063】
[0066] 航空機12上のレーダ検出器42に関する以前の論述では、強力な対流「バースト」の上端が、アイウォール内を上昇する飽和空気の平衡高度を超過する可能性があることに言及していた。これらの活発な積乱雲は、周囲の空気と混合することによって殆ど希釈なく上昇する上昇柱の中心に空気を有する。熱帯圏界面は、注目に値する高度にあるので、このような超過は、強い渦の上を偵察飛行する場合、注意が必要である。Global Hawkには、巡航中にその飛行経路に沿って危険を検出するために、検知回避システムが装備されている。
【0064】
[0067] 以上の論述の焦点は、リアル・タイムでの熱帯性サイクロンの勢力予報を支援するための運用(operational)UAV派遣であった。更に、概観的視点(overview perspective)からの渦の核の監視に強調を据えた。しかしながら、これらの任務は、核の外側にある渦の部分についての研究を含む、熱帯性サイクロンの熱流体力学についての研究支援の機会も与える。具体的には、Global Hawkの偵察飛行によって、通過量の上部対流圏流出、および環境への排出の属性が測定可能になる。流出は包括的構造の内最も探査されていない部分として特徴付けられることが多いので、これは注目に値する。Global Hawkは、例外的な高度からの投下ゾンデの適用を可能にする。強い渦に対して、投下ゾンデは激しく変動する流れの任意の部位における瞬時的なサンプリングに対応する(furnish)が、乱気流のレベルは一般に高度と共に低下する。
【0065】
[0068] 以上の論述全体を通じて、種々のコンピュータ、プロセッサ、およびコントローラについて説明または暗示した。尚、これらのコンピュータおよびコントローラのソフトウェア・アプリケーションならびにモジュールとしてエンコードされた方法は、プロセッサとメモリ・モジュールとを有する1つ以上のコンピューティング・デバイス上で実行するという共通認識がある。具体的には、これは、UAV航空機12におけるプロセッサ58、受信ステーション50におけるリモート・コントローラ56、ならびに先に論じた衛星46、船舶48、および他の航空機52の各々においてプロセッサを有するコントローラまたはコンピュータを含む。他のコンピュータおよびプロセッサも同様に、UAV航空機12からデータを受信する天気予報ステーションにおいて採用される。
【0066】
[0069] 以上の論述は、本開示の例示的な実施形態を単に開示し説明したに過ぎない。このような論述から、そして添付図面および特許請求の範囲から、以下の特許請求の範囲に定められた本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更、修正、および変形が可能であることは、当業者には容易に認められよう。