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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】血管への密閉されたアクセス用のシース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20241002BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M25/00 510
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023025864
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2021121210の分割
【原出願日】2015-07-06
(65)【公開番号】P2023054233
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】14175797.1
(32)【優先日】2014-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ニックス クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホッフ フランク
(72)【発明者】
【氏名】オカロル ゲル
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008058864(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0240202(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296275(US,A1)
【文献】特開2013-013446(JP,A)
【文献】特表2002-543914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0021382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/00
A61M 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すためのシース(10)であって、
遠位端部(20a)および近位端部(20b)を有するチューブ状本体を有する基部シース(20)を備え、前記チューブ状本体は、前記遠位端部(20a)および前記近位端部(20b)で開口している通過チャネル(22)を規定し、前記基部シース(20)は、血管開口部を通って前記血管内に挿入されるように構成されたシース(10)において、
前記基部シース(20)と協働するように構成された拡張デバイス(26)であって、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあるときに、前記シース(10)の外径(d;D)を前記血管開口部の領域で増大させて、前記血管開口部を密閉して閉鎖するように構成された拡張デバイス(26)と、
前記シース(10)を患者に固定する固定要素(60)と、を備え、
前記固定要素(60)は、滅菌カバーを適用するために前記基部シース(20)にまたがっている領域(62)を有し、前記領域(62)は、前記基部シース(20)の両側で前記基部シースが延在する主方向に対して交わる方向に延在し、傾斜面形状を有していることを特徴とするシース(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のシース(10)であって、前記固定要素(60)は、滅菌カバーを適用するための止め具(64)を備え、前記止め具は、前記基部シースが延在する主方向に対して交わる方向に、前記領域(62)の近位端部に延在していることを特徴とするシース(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシース(10)であって、供給カテーテル(40)を有する心臓ポンプ(70)を備え、前記シース(10)は前記供給カテーテル(40)上で変位可能に配置されるように構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26)は、前記基部シースが延在する方向(R)へ前記基部シース(20)上で変位可能な拡張シース(26)として構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26’)は、らせん状に前記基部シース(20)の周りに巻かれている膨張チューブとして構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26a、26b、26c、26d)は、前記近位端部(20b)と前記遠位端部(20a)との間に前記基部シースの可撓性部分(26a)を備え、前記可撓性部分は、前記基部シースの遠位端部部分が引張手段(26b、26c、26d)によって前記近位端部の方向に引っ張られたときに前記シースの前記外径を増大させるように拡張するように構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26”)は、前記近位端部(20b)と前記遠位端部(20a)との間に設けられた前記基部シースの伸縮性部分(26”)を備え、前記伸縮性部分は、引張手段(26b、26c、26d)によって伸びている状態で第1の厚みを達成し、伸びていない状態で前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを達成するように構成されており、前記引張手段(26b、26c、26d)を前記基部シースが延在する方向に解放することによって、前記基部シースの前記近位端部部分が前記伸びている状態から前記伸びていない状態に解放されたときに前記シースの前記外径が増大することを特徴とするシース(10)。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあるときに、スリーブ(28)が前記血管開口部と接触するように、前記基部シース(20)および前記拡張デバイス(26、26’、26a)を包み込む前記スリーブ(28)を備えることを特徴とするシース(10)。
【請求項9】
請求項に記載のシース(10)であって、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあるときに、スリーブ(28)が前記血管開口部と接触するように、前記基部シース(20)および前記拡張デバイス(26)を包み込む前記スリーブ(28)を備え、前記拡張シース(26)が前記基部シース(20)と前記スリーブ(28)の間で前記基部シース(20)上で変位可能であることを特徴とするシース(10)。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26)は、前記血管開口部の領域において前記シース(10)の前記外径(d)を、0.33mm~1.00mm増大させるように構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26)は、前記血管開口部の領域において前記シース(10)の前記外径(d)を、0.33mm~1.33mm増大させるように構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記拡張デバイス(26)は、前記血管開口部の領域において前記シース(10)の前記外径(d)を、0.33mm~1.66mm増大させるように構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項13】
請求項1~1のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記基部シース(20)の前記チューブ状本体の壁(25)は、前記遠位端部(20a)から前記近位端部(20b)の方へ前記壁(25)の中に延在する貫通チャネル(27)を有することを特徴とするシース(10)。
【請求項14】
請求項1に記載のシース(10)であって、前記貫通チャネル(27)は、前記血管から前記シース(10)の前記近位端部(20b)まで血液を導くように構成されることを特徴とするシース(10)。
【請求項15】
請求項1に記載のシース(10)であって、前記貫通チャネル(27)に接続された血圧測定デバイス(30)を備えることを特徴とするシース(10)。
【請求項16】
請求項1または1に記載のシース(10)であって、前記貫通チャネル(27)を通って挿入される温度測定要素を備えることを特徴とするシース(10)。
【請求項17】
請求項1~1のいずれか1項に記載のシース(10)であって、前記シース(10)の前記近位端部(20b)から前記貫通チャネル(27)を通って前記血管内に導入可能なガイドワイヤ(50)を備えることを特徴とするシース(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物または人体の血管、例えば、動脈の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すためのシースに関する。
【背景技術】
【0002】
シースは、人体の経皮的介入中、例えば、心臓カテーテルを動脈または静脈、例えば、大腿動脈を介して導入する際に、さまざまな形態で使用される。このような介入のさまざまなステップが本明細書において以下で、本発明の目的につながるように簡潔かつ簡単な形態で記載される。
【0003】
第1の段階では、この目的のために血管は穿刺針を用いて穿刺される。その場合、この針を通って第1のガイドワイヤが血管内に挿入される。針を抜去し、第1のシースがガイドワイヤに沿って血管内に挿入される。上記のステップは周知の「セルディンガー法」に従って実施される。このシースは通常、基部シース、抜去可能なダイレータ、およびシースの近位端部、すなわち、施術者の体を向くシースの端部にある止血弁を備える。本発明との関係では、解剖学的方向の用語は施術者に関連して選択される。シースは約2mmの外径を有する。ダイレータおよびガイドワイヤは連続して抜去されるため、第1のシースの基部シースのみが血管内に一部残る。
【0004】
第2の段階では、ここで硬いガイドワイヤが残りの基部シースを通って血管内に、例えば最長40cmの深さまで挿入される。その後基部シースは抜去される。ガイドワイヤは部分的に血管内に残る。
【0005】
所望により、この後に、さらなる予拡張を行ってもよい。この予拡張についてはここでは記載しないものとする。所望により、または代替的に、小さな中間シースを適用する代わりに、血管内への穿刺は、元々配置されているガイドワイヤの上に各種サイズのダイレータを適用してさらに拡張できる。
【0006】
ここで、シースは血管内に残っているガイドワイヤに沿って、血管内に挿入され、この血管を通って心臓ポンプが導入される。本出願との関係においては、「イントロデューサ」または「導入シース」は止血弁を有するシースである。この導入シースは通常、約4.5~5mmの内径および約5~6mmの外径を有する。導入シースの基本的構造は上述の第1のシースの構造と同じであり、すなわち、外側基部シース、ダイレータ、および止血弁からなる。ダイレータおよびガイドワイヤは、導入シースの基部シースを血管内に残したままここでも抜去される。心臓ポンプへのアクセスはここで作り出される。
【0007】
ガイドカテーテルは通常、基部シースを通り、動脈に沿って左心室内へと設置される。この目的のために、例えば、いわゆるピッグテールカテーテルが利用でき、ピッグテールカテーテルは細いチューブおよび柔らかく遠位が予め曲げられたガイド先端からなる。支持ガイドワイヤは、ガイドカテーテル内に延在して既に挿入されていてもよく、カテーテルを支持する。当該柔らかい支持ワイヤはその後抜去され、より硬いワイヤを、カテーテルを通して心臓内に挿入する。ピッグテールカテーテルの除去後、硬いガイドワイヤに沿って心臓ポンプが心臓に挿入される。その場合、心臓ポンプの入口は左心室に、出口は大動脈に配置され、ガイドワイヤは回収される。ポンプは、ポンプを配置するために利用される動脈に沿って延在し、血管開口部(穿刺側)から出る供給カテーテルに接続される。あるいは、ポンプは直接基部シース内に挿入でき、ポンプが、外傷を起こさないように大動脈弁を逆流するのに必要な適切な特徴を有して設計されている場合、追加のガイドカテーテルおよびガイドワイヤを必要とすることなく心臓内に送達され得る。
【0008】
心臓ポンプ挿入のために利用される導入シースをここで血管から抜去し、完全に引き抜いてから、例えば、所定の分離線に沿って引き裂く(「ピールアウェイ」技術)ことにより最終的な抜去を行う。ここで血管開口部で血管を閉鎖するために、すなわち、血管の穴の円周とポンプの供給カテーテルの外径との間の間隙を閉鎖するために、さらなるシースを、心臓ポンプ供給カテーテルの体外に位置する部分に沿って血管内に挿入する。最後に述べたシースは、本発明の主題である。このシースを通して、例えば、供給カテーテルを介して心臓ポンプを変位させるかまたは再配置することも可能であるため、このシースは再配置シース(または「リポシース」)とも呼ばれる。
【0009】
動脈における血流障害、および起こり得る低血流量または異種表面に関連する血栓症を避けるために、シースは必要な深さでのみ血管内に挿入されるべきであり、十分に密閉されるように血管を閉鎖する、すなわち、そうしないと生じるであろう出血または毛細血管性出血を止めるのにちょうど十分な外径を有するべきである。
【0010】
通常、導入シースの挿入によりかなり広げられる血管開口部は、導入シースの抜去後、再び収縮するため、後に挿入されるシースは、導入シースと比較してその外径を小さくされてもよい。しかしながら、場合によっては、このような収縮は観察することができないか、または部分的にもしくは遅れて観察され得る。その結果、後に挿入されるシースの外径が小さ過ぎるために、完全には出血を止めることができない。
【0011】
したがって、先行技術においては、長手方向に沿って外径が大きくなり、例えば、階段形状で段が付いているシースが提案されている。このシースを前進させることにより、シースのシース直径は血管開口部の領域において必要に応じて拡大可能である。しかし、このようなシースの配置は、実際問題として、多くの場合、不必要にその挿入が深くなり過ぎる、すなわち、最大外径は常に血管開口部を閉鎖するために利用されるため、不利だと分かった。これは、血管開口部の不必要な拡大につながる。過度に深い挿入および/または大きな外径は、前述のように、血管の血流障害を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、シースおよびこれを利用するための方法を提案することである。これらにより、血管における血流障害の危険性の低下と同時に、十分に密閉された血管の内部へのアクセスを確実に作り出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、シースおよび独立クレームの特徴を有する方法により達成される。有利な実施形態および発展例は従属クレームに述べられる。
【0014】
本発明による動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すためのシースは、通過チャネルを規定するチューブ状本体を有する基部シースを備える。通常、シースは、従来の止血弁を近位端部に備える。基部シースは、血管開口部を通って血管内に挿入されるように、すなわち、血管開口部を通って血管内に設置されるように構成される。本発明によれば、シースは、拡張デバイスを備える。拡張デバイスは、シースが血管内の静止位置にあり、拡張デバイスの作動時にシースの外径が血管開口部の領域で増大するように、基部シースと協働するように構成される。
【0015】
したがって、本発明によるシースによって血管への十分に密閉されたアクセスを作り出すために、シースは血管開口部を通って血管内に挿入される。その後、シースの外径は、シースの拡張デバイスの作動によって血管開口部の領域において必要に応じて増大される。シースの外径の十分な度合いの増大を判断するために、血管開口部に印加される圧力を測定できる。この圧力は、例えば、拡張デバイスとして使用されるバルーンの膨張圧力を測定することによって間接的に測定され得る。一般に、開口部に印加される圧力を測定するために、拡張デバイスの任意の力フィードバック信号が使用可能である。
【0016】
シースが血管内で静止位置に配置されている間に、シースの外径は、拡張デバイスの作動によって血管開口部の領域において増大され得るため、先行技術の記載された欠点を回避できる。必要な場合にシースの外径を増大させるために、シースが静止位置にある状態で血管開口部の領域におけるシースの外径の増大が可能であるため、特に、シースを血管内により深く挿入することは不必要である。シースはその初期状態において比較的小さな外径を有する、すなわち、拡張デバイスが作動されていないため、血管開口部の不必要な拡大および大きな外径または長い貫入深さによる血管内の血流障害を避けることができる。
【0017】
再配置シースは、最初は小型である、すなわち、シースの初期外径は、ポンプ用の導入シースにより作られた初期穿刺直径と比べて最高で4F(=1.33mm)直径を小さくできるように設計されることが意図される。外径がこのように小さい理由は、最初のより大きなシースが短時間(<60分間)配置された場合でも、血管それ自体がより小さな穴へと弾性的に戻る能力を有し得るからである。止血を達成する最小の閉塞具は、血管中の異物が最小量であり、完全な血管閉塞および遠位灌流の中断の可能性が最小であるもっとも好ましい実施形態であることが認識されるだろう。血管の戻りがないかまたは限定されている場合にのみ、再配置シースの拡張部分は止血させるために徐々に拡張される。好ましい実施形態では、拡張デバイスは、シースの拡張部分が血管穿刺部周りの標的領域に限定されることにより、皮膚を通って体外へと延びる近位シースが後退するように構成される。このようにして、拡張部分のさらなる拡張を必要とする皮膚レベルでも出血が目に見える。したがって、皮膚レベルで穿刺部を塞ぎ、ともすれば隣接組織内への血管穿刺部における連続的な出血を有し、これが輪状血腫として後に現れることが起こりにくい。
【0018】
好ましい実施形態によると、拡張デバイスは、血管開口部の方向にシース上で変位可能な拡張シースとして構成される。このような拡張シースは例えば、基部シースをチューブ状に取り囲むことができる。拡張シースを血管開口部の方向に基部シース上で変位させることによって、シース全体を血管内により深く挿入せずに、血管内への入口箇所の領域におけるシースの外径を増大させることができる。
【0019】
上記と異なる本発明による拡張デバイスの複数の実施形態が可能である。例えば、血管開口部の方向において基部シース上で変位されないが、基部シースの通過チャネルまたは基部シース周りに配置される拡張デバイスが提供され得る。このような拡張デバイスは基本的に、ダイレータのように構築でき、例えば、基部シース、または基部シース上に配置されたスリーブ(後でより正確に記述される)を内側から例えばバルーンダイレータのように拡大できる。バルーンダイレータもまたシース外部に配置できる。好ましい実施形態によると、らせん状膨張チューブの形態の拡張デバイスが提供され、これは基部シースとスリーブとの間に配置されることが好ましい。膨張チューブはらせん状に基部シース周りに巻かれている。チューブの膨張中、シースは拡張領域において、可撓性、すなわち、湾曲可能なままで拡張される。
【0020】
バルーンダイレータ等の代わりに、機械的展開要素、例えば、金網状ステントもまた提供可能である。このような展開要素は、例えば、シースの近位端部に配置され展開要素と連結された作動要素の回転または変位によって収縮位置から拡張位置へと動き得るため、シースの外径は展開要素の領域で増大する。好ましい実施形態によると、シースは、可撓性部分を拡張エリアに備える。この可撓性部分は基部シースの一部を形成し、近位端部と遠位端部の間に配置される。可撓性部分は、遠位端部で基部シースに連結されている引張手段を操作することにより拡張され得る。
【0021】
さらなる好ましい実施形態によると、シースは、拡張される領域に拡張デバイスとして伸縮性部分を備える。この伸縮性部分は基部シースの一部を形成し、近位端部と遠位端部の間に配置される。基部シースの近位端部部分が血管開口部の方向に伸びている状態から伸びていない状態へと解放されたときにシースの外径を増大させるように、伸縮性部分は、伸びている状態で第1の厚みを、伸びていない状態で第1の厚みよりも大きい第2の厚みを達成するように構成されている。換言すれば、伸縮性部分を有するシースは伸びている状態で最小の外径を持つ。伸びを-シースの近位端部から血管開口部の方向に-解放することにより、伸縮性部分は伸びていない状態になり、その結果血管開口部の領域においてシースの外径が増大する。本実施形態は、シースが軸方向変位による均一な圧縮を妨げる最小の壁の厚みを有する場合に有利である。
【0022】
類似の展開、拡張、または拡大装置の任意のその他の形態が本発明の目的のために拡張デバイスとして提供され得る。別の実施形態では、拡張は、周囲の血液(例えば、親水性ゲル)により、膨潤率の適切な選択によって血管への応力を最小限にしながら緩やかに「正しいサイズ」に単に拡張する材料を膨潤させることによって自動化され得る。
【0023】
さらなる好ましい実施形態によれば、シースは、既に示したようにケースを備える。シースが血管内に挿入され、すなわち、シースが血管内の静止位置にあるときに、スリーブが血管開口部と接触するように、スリーブは基部シースおよび拡張デバイスを包み込む。このことにより、シースの外径を増大させるために拡張デバイスが作動され、特に進められたときに、血管に対する拡張デバイスの外傷的影響を防ぐことができる。このスリーブは、滅菌バリアとしても機能し、再配置シースの近位端部からの非滅菌エキスパンダの挿入を可能にする。
【0024】
万一、拡張デバイスが、基部シース上で変位可能な上述の拡張シースの形態で構成された場合には、スリーブは、拡張シースが基部シースとスリーブの間で基部シース上で変位可能なように基部シースおよび拡張シースを包み込む。
【0025】
好ましくは、基部シースは、心臓ポンプのカテーテル、好ましくは、供給カテーテルを誘導可能な内径を有する通過チャネルを有する。約3mmの内径がこの目的には十分であろう。シースの内径は目的の用途に従って調節可能であり、また任意の他の留置デバイスと対にされるかまたは共に操作され得ることが認識されるだろう。
【0026】
好ましくは、シースの外径には、血管を通る心臓ポンプの挿入時に生じる血管開口部が、理想的には拡張デバイスを作動させることなく、十分に密閉されるように閉鎖される十分な大きさが選択される。約3.33~5mmの外径は、現在用いられる心臓ポンプおよびポンプ導入用の導入シースを考慮すると、この目的のために十分である。シースの外径は用途を考慮して調節する、すなわち、小さくするかまたは大きくすることも可能であることが認識されるだろう。しかし、血管合併症発症率は5mmを超えると指数関数的に増大することに言及すべきであるが、これは好ましい標的サイズは止血を達成する最小限の直径を目指すべきであるためである。
【0027】
シースの拡張デバイスは好ましくは、血管開口部の領域においてシースの外径を、約1F~3F(0.33mm~1.00mm)、好ましくは約1F~4F(0.33mm~1.33mm)、特に好ましくは約1F~5F(0.33mm~1.66mm)増大させるように構成される。このようにして、血管の内部への十分に密閉されたアクセスをさまざまなシナリオで、特に、異なる血管の戻りおよび血管サイズを有するさまざまな患者を考慮して作り出すことを確実に行うことができる。
【0028】
正確な密閉直径を有することに加え、シースの拡張部分が「半径方向に柔らかい」ことも等しく重要である。本文脈中、半径方向に柔らかいとは、この部分が、血管を変形させるおよび/または傷つける可能性がある硬い部分のように作用してはならないが、この部分は、再配置シースが血管内に入る場所の曲率/半径に限定され得ることを意味する。このことにより、拡張デバイスの低ジュロ硬度ポリマー材料および/または特別な設計、例えば、らせん状に巻かれた膨張デバイス(既に上で述べている)が要求される。拡張デバイスは、半径方向に拡張できるが、予め曲げられた部分を長手方向に伸ばすかまたは広げる任意の接線力を超えない。
【0029】
シースの外径の拡張度合いは、バルーンの膨張圧力、または止血を提供するのに十分な直径まで拡張を制限するために使用され得る任意の他の力フィードバック手段により誘導される。最大血圧をわずかに超える拡張力が十分だと考えられる。拡張力は、バルーン材料が非常に柔軟であれば、バルーンの膨張圧力に等しいと考えることができる。
【0030】
シースが血管内に十分深く挿入されているかどうか、またいつシースが血管内に十分深く挿入されたかを確実に認識できることが望ましい。これは、貫入される皮下脂肪組織の厚みおよび/またはアクセスの角度に依存して変化し得るため、判断が難しくなり得る。これに関連して従来のシースは何の解決策も提供しない。
【0031】
この問題を軽減するために、基部シースのチューブ状本体の壁は貫通チャネルを有することができる。この貫通チャネルは遠位端部から近位端部の方へ壁の中に延在する。貫通チャネルは、シースの近位端部またはその手前、すなわち、シースの遠位端部と近位端部との間でチューブ状本体の壁からシース外部へと出ることができる。貫通チャネルは基部シースの通過チャネルとは別で存在できる。代替的実施形態によると、貫通チャネルは、少なくとも遠位端部において通過チャネルの側方延長部として形成され得る、すなわち、その全長が通過チャネルから独立している必要はない。このような貫通チャネルは、シースが血管に挿入されるとすぐに、血管からシースの近位端部まで血液を導くように構成される。このようにして、シースが血管内へと組織を通って十分な深さまで挿入されるとすぐに、確実に認識できる。換言すると、チャネルによって、単純に血管からの血液がチャネルの近位端部で認められるようになるとすぐにシースの血管内への十分な深さの挿入を推定できるということによって、ある種の挿入深さインジケータを得ることができる。特に、必要以上に血管内へとさらにシースが挿入される危険性がなく、さもないとやはり血流障害を引き起こし得る。
【0032】
有利には、診断目的のために血液は好適な方法でチャネルを通じて採取することもできる。ここで、重大な診断方法は特に、患者の血圧測定および心送血量の測定である。血圧を測定するには、シースは、さらにチャネルに接続された血圧測定デバイスを備えることができる。心送血量は例えば、熱希釈法によって測定できる。この目的のために、シースは、チャネルを通って挿入される温度測定要素、例えば、サーミスタを備えることができる。
【0033】
シースは、好ましくはチャネルを通じて設置可能なガイドワイヤをさらに備えることができる。換言すれば、チャネルは、その場合、シースの近位端部からチャネルを介して血管内にガイドワイヤを挿入するように構成される。このようなガイドワイヤを介して、ポンプの抜去後でも血管アクセスが維持される。
【0034】
さらなる好ましい実施形態によれば、シースは近位端部に固定要素を備える。当該固定要素は、シースを患者の血管内に挿入した後、シースを患者に固定するのに役立つ。したがって、固定要素は例えば患者の皮膚に縫合できる。固定要素は、滅菌カバーを適用するために基部シースにまたがっている領域を備える。この領域は、基部シースの両側において基部シースの主方向に対して横方向に、傾斜面形状で下へ傾斜している。
【0035】
固定要素のこのような実施形態によって、滅菌カバーの簡単かつ安全な適用が可能になるため、血管開口部における細菌および病原体の入口の箇所を最小限とする。
【0036】
固定要素はさらに、固定状態で患者の皮膚に当たっている固定領域を備えることができる。その場合、固定領域は滅菌カバーを適用するために上述の領域の両側に位置する。
【0037】
好ましくは、固定要素は、ガイド要素をさらに備える。当該ガイド要素は、滅菌カバーを適用するための止め具として機能する。好ましくは、ガイド要素は、基部シースの主方向に対して横向きに、また領域に対して略垂直に、しかし止め具の機能が提供可能であるように当該領域から少なくとも突出するように、領域の近位端部に延在する。滅菌カバーのガイド要素への適用を通じて、また滅菌カバーをしわが寄らないように適用するために平滑な領域の構成を通じて、創傷の特に安全な滅菌被覆を得ることができる。ガイド機素はまた、固定要素の近位にある再配置シースのいずれかの要素、例えばカテーテルの近位部品を汚染から保護するために使用される汚染防止スリーブが不用意に固定されることを防止することに役立つ。
【0038】
さらなる好ましい実施形態によれば、シースは、供給カテーテルを有する心臓ポンプを備える。ここで、シースは供給カテーテル上で変位可能に配置されるように構成される。換言すると、心臓ポンプ、供給カテーテル、およびシースはこの実施形態による結合システムを成す。
【0039】
本発明に関連する技術は、動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すためのシース(10)であって、通過チャネル(22)を規定するチューブ状本体を有し、血管開口部を通って前記血管内に挿入されるように構成された、基部シース(20)を備えるシース(10)において、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあり、拡張デバイス(26)の作動時に前記シース(10)の外径(d;D)が前記血管開口部の領域で増大するように、前記基部シース(20)と協働するように構成される前記拡張デバイス(26)を特徴とする。
【0040】
望ましくは、前記拡張デバイス(26)は、前記血管開口部の方向(R)で前記基部シース(20)上で変位可能な拡張シース(26)として構成される。
【0041】
望ましくは、前記拡張デバイス(26’)は、らせん状に前記基部シース(20)の周りに巻かれている膨張チューブとして構成される。
【0042】
望ましくは、前記拡張デバイス(26a、26b、26c、26d)は、前記近位端部(20b)と前記遠位端部(20a)との間に前記基部シースの可撓性部分(26a)を備え、前記可撓性部分は、前記基部シースの遠位端部部分が引張手段(26b、26c、26d)によって前記近位端部の方向に引っ張られたときに前記シースの前記外径を増大させるように拡張するように構成される。
【0043】
望ましくは、前記拡張デバイス(26”)は、前記近位端部(20b)と前記遠位端部(20a)との間に前記基部シースの伸縮性部分(26”)を備え、前記基部シースの前記近位端部部分が前記血管開口部の方向に伸びている状態から伸びていない状態へと解放されたときに前記シースの前記外径を増大させるように、前記伸縮性部分は、前記伸びている状態で第1の厚みを、前記伸びていない状態で前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを達成するように構成されている。
【0044】
望ましくは、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあるときに、スリーブ(28)が前記血管開口部と接触するように、前記基部シース(20)および前記拡張デバイス(26、26’、26a)を包み込む前記スリーブ(28)を備える。
【0045】
望ましくは、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあるときに、スリーブ(28)が前記血管開口部と接触するように、前記基部シース(20)および前記拡張デバイス(26)を包み込む前記スリーブ(28)を備え、前記拡張シース(26)が前記基部シース(20)と前記スリーブ(28)の間で前記基部シース(20)上で変位可能である。
【0046】
望ましくは、前記拡張デバイス(26)は、前記血管開口部の領域において前記シース(10)の前記外径(d)を、0.33mm~1.00mm、好ましくは0.33mm~1.33mm、特に好ましくは0.33mm~1.66mm増大させるように構成される。
【0047】
望ましくは、前記基部シース(20)の前記チューブ状本体の壁(25)は、前記遠位端部(20a)から前記近位端部(20b)の方へ前記壁(25)の中に延在する貫通チャネル(27)を有する。
【0048】
望ましくは、前記貫通チャネル(27)は、前記血管から前記シース(10)の前記近位端部(20b)まで血液を導くように構成される。
【0049】
望ましくは、前記チャネル(27)に接続された血圧測定デバイス(30)を備える。
【0050】
望ましくは、前記チャネル(27)を通って挿入される温度測定要素を備える。
【0051】
望ましくは、前記シース(10)の前記近位端部(20b)から前記チャネル(27)を通って前記血管内に導入可能なガイドワイヤ(50)を備える。
【0052】
望ましくは、前記シース(10)を患者に固定する固定要素(60)を備え、前記固定要素(60)は、滅菌カバーを適用するために前記基部シース(20)にまたがっている領域(62)を有し、前記領域(62)は、前記基部シース(20)の両側において前記基部シースの主方向に対して横方向に、傾斜面形状で下へ傾斜している。
【0053】
望ましくは、前記固定要素(60)は、滅菌カバーを適用するための止め具(64)を備え、前記止め具は、前記基部シースの主方向に対して横方向に、前記領域(62)の近位端部に延在している。
【0054】
望ましくは、供給カテーテル(40)を有する心臓ポンプ(70)を備え、前記シース(10)は前記供給カテーテル(40)上で変位可能に配置されるように構成される。
【0055】
また、本発明に係る関連技術は、前記シース(10)によって動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すための方法であって、前記シース(10)を前記血管の血管開口部に挿入するステップと、前記シース(10)の前記拡張デバイス(26)を作動することによって、前記血管開口部の領域において前記シース(10)の前記外径(d;D)を増大させるステップとを含む。
【0056】
望ましくは、前記シース(10)の前記外径(d;D)の十分な増大を判断するために、前記開口部に印加される圧力を測定するさらなるステップを含む。
【0057】
また、本発明に係る関連技術は、動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すためのシース(10)であって、遠位端部(20a)および近位端部(20b)を有するチューブ状本体を有する基部シース(20)を備え、前記チューブ状本体は、前記遠位端部(20a)および前記近位端部(20b)で開口している通過チャネル(22)を規定し、前記基部シース(20)は、血管開口部を通って前記血管内に挿入されるように構成され、約3.33~5mmの外径を有するシース(10)において、前記シース(10)が前記血管内の静止位置にあり、十分に密閉されるように前記血管開口部を閉鎖するように拡張デバイス(26)の作動時に前記シース(10)の外径(d;D)が前記血管開口部の領域で増大するように、前記基部シース(20)と協働するように構成される前記拡張デバイス(26)を備える。
【0058】
また、本発明に係る関連技術は、前記シース(10)によって動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すための方法であって、前記シース(10)を前記血管の血管開口部に挿入するステップと、十分に密閉されるように前記血管開口部を閉鎖するように、前記シース(10)の前記拡張デバイス(26)を作動することによって、前記血管開口部の領域において前記シース(10)の前記外径(d;D)を増大させるステップとを含む。
【0059】
以下、本発明は、添付の図面を参照して例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明による実施例の好ましい実施形態の平面図である。
図2図1のシースの側面断面図である。
図3】本発明によるシースのさらなる好ましい実施形態の側面断面図である。
図4】本発明によるシースのさらなる好ましい実施形態の側面断面図である。
図5a】本発明によるシースのさらなる好ましい実施形態の側面断面図である。
図5b】本発明によるシースのさらなる好ましい実施形態の側面断面図である。
図6】さらなる任意選択のシース要素を有する図1のシースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1~6のシース10は縮尺通りに描かれておらず、単なる概略的なものである。したがって、シース10の一部の要素をより良く示すために、実寸法での関係は場合により不正確である。例えば、テーパ部分は誇張されており、小さな直径から大きな直径への穏やかで滑らかな移行ではなく、より斜めの段のように見える。
【0062】
図1および図2に示すように、動物または人体の血管の内部への十分に密閉されたアクセスを作り出すのに役立つシース10は、通過チャネル22を規定するチューブ状本体を有する基部シース20を備える。止血弁24(図6参照)はシースの近位端部20bで終端している。
【0063】
通過チャネル22は、内径d’および外径dを有する。内径d’は、シース10が心臓ポンプ70の供給カテーテル40の上に押し上げられるのに好適であり(図6と比較)、好ましくは、約3mmに達するように寸法決めされる。外径dは、好ましくは、約3.33~5mmに達するため、シース10は、血管を通る心臓ポンプ70のイントロデューサの挿入時に生じる血管開口部を十分に密閉するように閉鎖するのに好適である。外径dは、シース10の最小壁厚み、チューブ状本体(図2参照)の壁の貫通チャネル27のサイズ、または供給カテーテル40(図6参照)のサイズ等に基づいて、3.33mmよりも増大させることが必要とされてもよい。
【0064】
シース10は、血管開口部の方向Rで基部シース20上で変位可能な拡張シース26の形態の拡張デバイスを備える。本実施例では、拡張シース26は、基部シース20をチューブ状に取り囲む拡張シース26として構成される。シース10が血管内に挿入されたときに、血管内への入口箇所Gの領域におけるシースの外径dを増大させるために、拡張シース26は方向Rに基部シース20上を変位するように構成される。その後、血管開口部の領域に存在する外径Dは、元の外形dを2倍超え、ここで2倍とは0.75*dの大きさであってよい。
【0065】
シース10は、スリーブ28を備える。スリーブ28は、好ましくは、基部シース20にその遠位端部が固定され、さらに、その近位端部は固定要素60に固定されてよい。スリーブ28は、拡張シース26が基部シース20とスリーブ28の間で基部シース20上で変位可能なように基部シース20および拡張シース26を包み込む。このようにして、拡張シース26の血管に対する外傷的影響を防止することができ、血管開口部でシース10の外径を増大させるために拡張シース26が基部シース20に沿って血管開口部内へと変位されるときに滅菌が維持される。
【0066】
基部シース20のチューブ状本体の壁25は、貫通チャネル27を有する。貫通チャネル27は、基部シース20の通過チャネル22から独立して、また好ましくは通過チャネル22と平行に、基部シース20の近位端部20bから遠位端部20aの方へ壁25の中に延在する。別の実施形態によれば(図示せず)、貫通チャネル27は、例えば近位端部のみを除いて、その全長が通過チャネル22から独立していない。遠位端部では、貫通チャネル27は通過チャネル22の側方延長部を成すことができる。貫通チャネル27は、シース10が十分血管に深く挿入されるとすぐに、血管(例えば、動脈)からシース10の近位端部まで血液を導くように構成される。このようにして、血管内への十分な貫入深さは簡単な方法でチャネル27によって確かめることができる。
【0067】
加えて、シース10は、操作中に血管穿刺部位の領域に配置されることが意図された外部から読み取り可能なマーク領域をシースの領域に備えることができる。外部からの読み取り可能性は、例えば、放射線不透過性マーカー付き領域を設けることによって達成され得る。また、マーカーを形成するために、蛍光性物質または音波を発生する物質を使用できる。図2および図3に示される第1の実施形態によると、この領域は2つの限定マーカー29aおよび29bにより規定されてよい。これらのマーカーはさらに拡張を誘導し、貫通チャネル27の遠位開口部に対するシースおよびその血管穿刺部位の正確な位置での配置を補助する。それぞれのマーカーは例えば、基部シース20を被覆するスリーブ28と、基部シース20とに設けることができる。あるいは、好適な外部から読み取り可能な物質をその領域のシース材料に添加することによって、領域全体を本質的に均一にマークすることが可能である。このような実施形態によると、シースの拡張部分、例えば、上述の可撓性部分および/または伸縮性部分の少なくとも一部にマークしてもよい。
【0068】
図3は、本発明によるシース10の別の実施形態を示す。この実施形態によると、拡張デバイス26’は、らせん状に基部シース20の周りに巻かれている膨張チューブとして構成される。このチューブを膨張させることにより、シースの外径は、デバイスの湾曲可撓性に実質的に影響を及ぼすことなく増大される。
【0069】
図4による実施形態はさらなるタイプの拡張デバイス26を示す。ここで、基部シース20は、近位端部20bと遠位端部20aとの間に可撓性部分26aを備える。可撓性部分26aは、基部シース20の遠位端部部分が引張手段26b、26c、26dによって近位端部の方向Rに引っ張られたときにシースの外径を増大させるように拡張するように構成される。このような引張手段は、例えば、シースの近位端部に配置されるスライダ26dを備えることができる。スライダ26dは、例えばワイヤを介して引張リング26bに連結され得る。この引張リング26bは、可撓性部分26aの遠位端部に隣接している基部シース20の遠位端部に固定されている。スライダ26dによって近位端部の方向Rに引張リングを引っ張ることにより、シースの可撓性部分26aは、シース10の外径を増大させるように所望の方法で徐々に拡張する。可撓性部分26aの拡張度合いがスライダ26dの摺動距離または位置によって容易に観察できるように、定規(図示せず)が、例えば、スライダ26dに隣接して基部シース20に設けられてもよい。近位端部20bを遠位端部20aの方に押すことによって、同じ結果が基本的には達成され得る。この場合、必要であれば、引張手段は、血管開口部に対してシースの近位端部の位置を維持するために使用され得る。
【0070】
図5a、図5bによる実施形態はさらなるタイプの拡張デバイス26”を示す。ここで、基部シース20は、近位端部20bと遠位端部20aとの間に伸縮性部分26”を備える。伸縮性部分は、伸びている状態(図5a参照)で第1の厚みを、伸びていない状態(図5b参照)で第1の厚みよりも大きい第2の厚みを達成するように構成されている。基部シースの近位端部部分を血管開口部の方向R’に伸びている状態から伸びていない状態(図5a、図5b参照)へと解放することにより、シースの外径を増大させることができる。やはり、図4に関連して記述された引張手段は、必要であれば、血管開口部に対してシースの近位端部の位置を維持するために使用され得る。
【0071】
シース10のさらなる部品が以下、図1のシース10の斜視図を示す図6に関連して記述される。
【0072】
チャネル27は好適な接続32、55を介してさまざまな測定デバイス、例えば、血圧測定デバイス30に接続できる。代替的にまたは加えて、例えば、患者の心送血量を測定するための情報を得るために、温度測定デバイス、例えば、サーミスタ(図示せず)がチャネル27に接続されるかまたはチャネル27を通して挿入され得る。
【0073】
ガイドワイヤ50は、さらに、チャネル27を介して血管内に挿入できる。チャネル27へのアクセスは、例えばルアーコネクタ55を介して作り出されてもよい。
【0074】
上記のように、シース10は心臓ポンプ70の供給カテーテル40の上に押し上げられるのに好適である。カテーテル40を有する心臓ポンプ70およびシース10は結合ユニットとして提供されてもよい。心臓ポンプ70は好ましくは、ピールアウェイ技術を使用して除去されるか、またはシース10を進めることにより置換される導入シースによって、上述の方法で患者の脈管系内に導入される。
【0075】
上述の固定要素60は、シースを患者の血管内に挿入した後、シース10を患者に固定、例えば、縫合するのに役立つ。この目的のために、開口部66を設けることができる。固定要素60は、滅菌カバー(図示せず)を適用するために基部シース20にまたがっている領域62を有する。固定要素60の領域62は、基部シース20の両側において基部シースの主方向に対して横方向に、傾斜面形状で下へ傾斜している。さらに、固定要素60は、滅菌カバーを適用するための止め具として機能するガイド要素64を備える。
【0076】
固定要素60は、滅菌カバー下の空気循環が可能であるように循環用開口部67および/または循環用開口スロット(図示せず)をさらに備えてよい。これらの開口部またはスロットは、固定要素を、好ましくは、シースが通っている方向に通っている。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6