IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲーの特許一覧

特許7564911コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品
<>
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図1
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図2
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図3
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図4
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図5
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図6
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図7
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図8
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図9
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図10
  • 特許-コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】コンピュータ実施方法、方法、コンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/25 20200101AFI20241002BHJP
【FI】
G06F30/25
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023072251
(22)【出願日】2023-04-26
(65)【公開番号】P2023169111
(43)【公開日】2023-11-29
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】10 2022 110 711.6
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501493037
【氏名又は名称】ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フレデリック シュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ノイシュヴァンダー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック シュテーレ
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0298579(US,A1)
【文献】国際公開第2007/088630(WO,A1)
【文献】井村 誠孝,複合現実環境における仮想流体とのインタラクション,日本バーチャルリアリティ学会 第10回記念大会,日本バーチャルリアリティ学会,2005年09月27日,pp.549-552
【文献】Md Rushdie Ibne ISLAM,“SPH-based framework for modelling fluidstructure interaction problems with finite deformation and fracturing”,Ocean Engineering,2024年02月,Vol. 294,pp.1-25,DOI: 10.1016/j.oceaneng.2024.116722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(10)用の安全システム(12)の安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するためのコンピュータ実施方法(30)であって、
・前記機械(10)の仮想モデルを仮想環境内に提供するステップ(32)と、
・前記仮想環境において、前記機械(10)の前記仮想モデルからの1つまたは複数の粒子の散乱をシミュレーションし、前記シミュレーション中に前記粒子のシミュレーションデータを取得するステップ(34)と、
・前記シミュレーションデータに基づいて、前記粒子のスピンの変化を決定し、各スピンの変化は、前記スピンの変化時の対応する前記粒子の位置と関連付けられるステップ(36)と、
・1つまたは複数のフィルタ基準に従って、前記決定されたスピンの変化をフィルタリングし、前記フィルタ基準の第1のフィルタ基準に従って、規定の閾値以上の前記スピンの変化に対してフィルタリングを実行するステップ(38)と、
・前記フィルタリングされたスピンの変化に関連付けられた前記位置に基づいて、機械的ハザード箇所(18)を決定するステップ(40)と、
・前記決定された機械的ハザード箇所(18)に基づいて、前記安全構成の前記少なくとも1つのパラメータを決定するステップ(42)と、
を含む、方法(30)。
【請求項2】
前記粒子の数は、1000よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子の数は、10,000よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子の数は、30,000よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子の数は、100,000よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子は、1mm~1000mmの粒子径を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子は、5mm~600mmの粒子径を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子は、50mmの粒子径を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記散乱をシミュレーションするために、特定の数の前記粒子が前記機械の前記仮想モデルで同時に散乱され、前記散乱の前記シミュレーション中、前記粒子は互いに衝突することができる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子の前記散乱をシミュレーションするために、前記特定の数の粒子は球から内側に放出され、前記球は、前記機械の前記仮想モデルを取り囲むように前記仮想環境内に配置されている、請求項2~5および9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルタ基準の第2のフィルタ基準に従ってフィルタリングするステップにおいて、フィルタリングは、前記仮想環境内の関連付けられた位置が前記モデルにあるかまたはその近くにある前記スピンの変化に対して実行される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記スピンの変化を決定する前記ステップ(36)において、前記決定されたスピンの変化およびそれらに関連付けられた前記位置に基づいてスピンマップが生成され、前記スピンマップは、フィルタリングする前記ステップ(38)でフィルタリングされ、前記機械(10)の前記機械的ハザード箇所(18)を決定する前記ステップ(40)で、前記フィルタリングされたスピンマップに基づいて前記機械的ハザード箇所(18)が決定される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記安全構成の前記少なくとも1つのパラメータは、前記安全システム(12)の保護装置(14、16)の配置および/または構成、および/または前記決定された機械的ハザード箇所(18)の周囲の安全区域(20)の配置、および/または前記決定された機械的ハザード箇所(18)からの安全距離(22)である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
機械(10)用の安全システム(12)を設定するための方法(50)であって、
・請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を使用して、前記機械(10)用の前記安全システム(12)の安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するステップ(52)と、
・前記安全構成に基づいて前記安全システム(12)を設定するステップ(54)と、
を含む、方法(50)。
【請求項15】
前記安全システム(12)を設定する際、前記安全システム(12)の保護装置(14、16)が配置され、および/またはその構成が前記安全構成に基づいて設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記安全システム(12)を設定する際、前記安全構成に基づいて安全区域(20)または安全距離(22)を設定し、前記安全区域(20)または前記安全距離(22)は、前記安全システム(12)の保護装置(14、16)を使用して監視または保護される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を含む前記コンピュータプログラムを含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械用の安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するためのコンピュータ実施方法に関する。また、本発明は、機械用の安全システムを設定するための方法に関する。また、本発明は、コンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
機械および設備の設計、製造、および操作において、これらの機械および設備の安全は不可欠である。ヨーロッパでは、例えば、この要件は、機械の完全な耐用年数に対する定期的なリスクアセスメントを規定する機械指令(CE)によって規範的に定義されている。
【0003】
CE認証のために、EN ISO 12100規格に従って、機械のハザード分析を実施しなければならない。EN ISO 12100規格は、設計者が安全な機械を製造することを支援するために、基本的な用語および方法論を定義し、リスクアセスメントおよびリスク軽減のための一般的な指針を確立している。
【0004】
分析の重要な側面は、人間に潜在的な危険をもたらす可能性のある機械的ハザード箇所または危険箇所の評価である。機械的ハザード箇所は、例えば、縁や尖端、とりわけ鋭い縁や尖端である。
【0005】
このような機械の機械的ハザード箇所は、決定され、安全を確保しなければならない。機械的ハザード箇所の安全を確保するために種々の技術的保護措置を講じることができる。特に、機械上の特定のハザード箇所の安全を確保するために安全システムを設けてもよい。例えば、安全システムは、ハザード箇所の安全を確保することができるセンサ、カメラ、エッジプロテクタ、またはバリアを含んでいてもよい。
【0006】
これまで、CE認証は検査員によって手動で行われてきた。特に、試験体はこれまで、検査員が自らの裁量で機械的ハザード箇所について手動で分析してきた。
【0007】
このような背景に対して、機械の安全性を向上できる方法を提供することが課題である。特に、機械のハザード箇所の検出と安全確保を向上できる方法を提供することが課題である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、この課題は、機械用の安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するためのコンピュータ実施方法によって解決され、該方法は、
・前記機械の仮想モデルを仮想環境内に提供するステップと、
・前記仮想環境において、前記機械の前記仮想モデルからの1つまたは複数の粒子の散乱をシミュレーションし、前記シミュレーション中に前記粒子のシミュレーションデータを取得するステップと、
・前記シミュレーションデータに基づいて前記粒子のスピンの変化を決定し、各スピンの変化は、前記スピンの変化時の前記対応する粒子の位置と関連付けられるステップと、
・1つまたは複数のフィルタ基準に従って、前記決定されたスピンの変化をフィルタリングし、前記フィルタ基準の第1のフィルタ基準に従って、規定の閾値以上の前記スピンの変化に対してフィルタリングを実行するステップと、
・前記フィルタリングされたスピンの変化に関連付けられた前記位置に基づいて、機械的ハザード箇所を決定するステップと、
・前記決定された機械的ハザード箇所に基づいて、前記安全構成の前記少なくとも1つのパラメータを決定するステップと、
を含む。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、機械用の安全システムを設定するための方法を提供し、該方法は、
・本発明の第1の態様にかかる方法を使用して、前記機械用の前記安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するステップと、
・前記安全構成に基づいて前記安全システムを設定するステップと、
を含む。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、本発明の第1の態様にかかる方法を実行するためのプログラムコード手段を含む前記コンピュータプログラムを含む、コンピュータプログラム製品が提供される。また、前記プログラムがコンピュータによって実行されるときに前記コンピュータに本発明の第1の態様にかかる方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品も提供されてもよい。
【0011】
有利には、新規の方法は、汎用コンピュータまたは専用コンピュータであってもよい処理ユニットまたは制御装置を使用して実施され、適切なコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品が記憶され実行され、コンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品は、上述した方法に従って、機械用の安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するために、または機械用の安全システムを設定するために、設計され構成されている。
【0012】
仮想環境は、仮想空間とも呼ばれてもよい、コンピュータで生成された三次元空間を含む。仮想環境を使用して、オブジェクトをモデリング、テクスチャリング、およびアニメーション化できる。例えば、仮想環境は、適切なソフトウェアプログラム(特に、グラフィックエンジン)を使用してコンピュータ上に生成してもよい。シミュレーションには、例えば、ソフトウェア「Blender」を使用してもよい。
【0013】
仮想環境において、機械の仮想モデルが提供または生成される。仮想モデルは、機械の3Dモデルである。特に、仮想モデルは、設計モデルまたはCAD(コンピュータ支援設計)モデルであってもよい。機械の仮想モデルは、特に、機械の3Dデータに基づいており、それを使用して仮想モデルが生成されて、仮想環境内に提供されてもよい。
【0014】
仮想環境では、オブジェクトの動きをシミュレーションしてもよい。提案された方法によるシミュレーションでは、仮想環境における1つまたは複数の粒子の動きがシミュレーションされる。好ましくは、粒子は膨張する。例えば、粒子は球状であってもよい。好ましくは、粒子は質量も有する。例えば、質量は、粒子の体積全体に均一に分布していてもよいし、または粒子の表面に均一に分布していてもよい。粒子の表面は、粘着性と呼ばれてもよい表面粗さを含んでいてもよい。好ましくは、シミュレーションにおける粒子はすべて、同じ物理的特性、特に、質量、サイズ、形状、および表面粗さを有する。特に、同一の粒子を使用してもよい。
【0015】
好ましくは、機械の仮想モデルは、仮想環境において静止している。あるいは、機械の仮想モデルは、粒子の質量よりもはるかに大きい質量を有していてもよい。
【0016】
シミュレーションのために、粒子は仮想環境で生成される。粒子の移動のために、仮想環境は、力場、特に重力場を含んでいてもよい。例えば、力場の原点、とりわけ重心は、仮想モデルの中心または質量中心に位置していてもよい。あるいは、力場は、中心に仮想モデルが配置されている球殻から生じる斥力場であってもよい。あるいは、またはさらに、粒子は、仮想環境において規定速度もしくは規定運動量ですでに生成されていてもよく、生成時の速度ベクトルは、好ましくは、機械の仮想モデルの方向を指す。
【0017】
粒子は、機械の仮想モデルの表面に散乱してもよい。散乱中、粒子は、機械の仮想モデルと衝突し、その結果、偏向する。それにより、粒子の仮想モデルとの衝突は非弾性であることが好ましい。特に、仮想環境における仮想モデルと粒子は剛体としてシミュレーションされてもよい。粒子が仮想モデルと衝突する位置は、散乱位置と呼ばれてもよい。
【0018】
一般に、粒子が物体と衝突すると、粒子の運動量および角運動量が変化する可能性がある。特に、衝突する粒子の動きおよびスピンの方向は、衝突中に変化する可能性がある。粒子のスピンは、固有角運動またはねじれとも呼ばれてもよい。一般に、物体のスピンは、物体の質量中心を中心とした回転運動または回転である。したがって、粒子が仮想モデルから散乱すると、粒子の動きおよび特にスピンの方向が変化する可能性がある。
【0019】
シミュレーション中、粒子のシミュレーションデータが取得される。好ましくは、複数の時間における各粒子の少なくとも位置およびスピンがシミュレーションデータとして取得される。好ましくは、シミュレーションデータは、一定の時間間隔で(特に、シミュレーションの継続時間にわたって)取得される。したがって、複数の時間は、等時間間隔で互いに続いていてもよい。よって、各時間間隔は、シミュレーションステップに対応する。言い換えれば、シミュレーションデータは、シミュレーションの継続時間にわたって特定の時間間隔で、すなわちシミュレーションステップごとに、定期的に取得される。したがって、シミュレーションデータには、時間ごとの(特にシミュレーションステップごとの)各粒子の位置およびスピンが含まれる。
【0020】
そして、取得されたシミュレーションデータが分析される。特に、シミュレーション中に粒子のスピンが変化したか否かが決定される。スピンにおける変化は、スピンの変化と呼ばれる。特に、シミュレーションデータは、粒子のスピンの変化を決定するために分析される。これを行うために、取得された2つの連続する時間(第1の時間および第2の時間)のそれぞれで、粒子のスピンが考慮される。好ましくは、第1の時間のスピンと第2の時間のスピンとの差がゼロに等しくない場合、スピンの変化が存在する。特に、第1の時間のスピンと第2の時間のスピンとの差の絶対値は、スピンの変化の尺度として採用してもよい。
【0021】
各スピンの変化は、スピンの変化時の対応する粒子の位置と関連付けることができる。例えば、スピンの変化時の位置は、第1の時間の位置、第2の時間の位置、または2つの時間の2つの位置の平均であってもよい。
【0022】
上述したように、粒子のスピンの変化は、粒子の衝突の結果として常に発生する。特に、粒子のスピンは、粒子が機械の仮想モデルと衝突する、つまり、それにより散乱する時に変化する。よって、スピンの変化時の粒子の位置は、粒子の散乱位置である。
【0023】
そして、決定されたスピンの変化はフィルタリングされる。フィルタリングには、1つまたは複数のフィルタ基準が適用される。言い換えれば、フィルタリングは、フィルタ基準を満たす特定のスピンの変化を検索することを意味する。フィルタリングによって、適用されたフィルタ基準を満たさないスピンの変化は破棄される。したがって、フィルタリングされたスピンの変化は、適用されたフィルタ基準を満たすスピンの変化と呼ばれる。
【0024】
1つまたは複数のフィルタ基準は、少なくとも第1のフィルタ基準を含む。第1のフィルタ基準によれば、フィルタリングは、規定の閾値以上のスピンの変化に対して実行される。言い換えれば、第1のフィルタ基準に従って、閾値法が適用される。
【0025】
粒子が機械の縁や尖端といった機械的ハザード箇所で散乱すると、大きなスピンの変化またはより大きなスピンの変化が発生する確率が少なくとも増加する。この確率は、縁や尖端が鋭利または先が尖っているほどさらに増加する。したがって、機械的ハザード箇所での散乱の場合、スピンの変化は通常、比較的平坦な表面またはほんのわずかに湾曲した表面での散乱よりも大きい。特に、鋭い縁または尖端での散乱の場合、スピンの変化は通常、比較的平坦な表面またはほんのわずかに湾曲した表面での散乱よりもはるかに大きい。
【0026】
閾値に従ってフィルタリングすることで、小さなスピンの変化が除外、つまり破棄される。これにより、機械的ハザード箇所での散乱によって引き起こされていないスピンの変化は破棄されてもよい。閾値のレベルは、フィルタリングの感度を示す。閾値が高いほど、散乱の際に粒子の対応するスピンの変化を引き起こすために、機械の縁や尖端は、より鋭利であるか先が尖っていなければならない。言い換えれば、閾値ベースのフィルタリングにより、機械的ハザード箇所で発生するスピンの変化のフィルタリングが可能になる。
【0027】
フィルタリングされたスピンの変化に関連付けられた位置に基づいて、機械の機械的ハザード箇所が決定されてもよい。機械的ハザード箇所は、好ましくは、機械の表面の縁または尖頭であってもよく、これらの縁または尖頭の位置は、フィルタリングされたスピンの変化に関連付けられた位置に基づいて決定される。特に、機械的ハザード箇所は、機械の表面の鋭利または先の尖った、すなわち安全関連の縁または尖頭である。第1のフィルタ基準に従ってフィルタリングすることで、フィルタリングされたスピンの変化は通常、機械的ハザード箇所での散乱によって引き起こされる。そして、スピンの変化に関連付けられた位置は、それぞれの機械的ハザード箇所に位置する。
【0028】
そして、決定された機械的ハザード箇所に基づいて、機械用の安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定することができる。
【0029】
安全システムは、機械の機械的ハザード箇所の安全を確保するための種々の保護装置を備えていてもよい。保護装置として、例えば、エッジプロテクタ、バリア、マーカー等の物理的な保護装置、またはセンサ、光グリッド、カメラ等の感知式の保護装置を設けても良い。物理的な保護装置を使用して、物理的な保護装置を適切に配置することにより、機械的ハザード箇所へのアクセスを妨害または防止することで、機械的ハザード箇所の安全を確保してもよい。感知式の保護装置を使用して、感知式の保護装置によって機械的ハザード箇所の周囲の領域、すなわち安全区域を監視することで、機械的ハザード箇所の安全を確保してもよい。領域は、例えば、機械的ハザード地点からの安全距離によって画定されてもよい。感知式の保護装置は、安全システムの制御装置に接続されていてもよい。人間が監視領域に入ったり、監視領域にいたりすることが検出されると、適切な保護措置が取られてもよい。例えば、安全システムの保護装置または制御装置は、人間が監視領域に入ろうとしている、または監視領域にいることが検出されると、視覚的または可聴式の警報信号を発するかまたは機械の電源を切るように構成されていてもよい。
【0030】
したがって、安全システムの安全構成は、安全システムの1つまたは複数の保護装置の配置および/または構成を規定する。安全構成は、1つまたは複数のパラメータによって規定される。したがって、安全構成のパラメータは、1つまたは複数の保護装置の配置および/または構成を決定する。言い換えれば、安全構成のパラメータは、機械的ハザード箇所の安全を確保するための保護措置を決定する。
【0031】
安全システムの決定された安全構成に従って、安全システムは、機械の決定された機械的ハザード箇所の安全を確保するように設定されてもよい。これにより、決定された機械的ハザード箇所で人間が負傷することを防止または妨害するための保護措置が実施される。
【0032】
決定されたすべてのスピンの変化が閾値未満であれば、第1のフィルタ基準によるフィルタリングは、決定されたすべてのスピンの変化を破棄する。この場合、機械的ハザード箇所はないと判断される。したがって、保護措置は必要ない。
【0033】
シミュレーションでスピンの変化が起きなければ、つまりシミュレーション中に粒子のスピンが変化しなければ、同じことが当てはまる。この場合も、保護措置は必要ない。
【0034】
したがって、提案された新規の方法は、機械的ハザード箇所を決定するための方法を提供する。この方法は、粒子スピン法とも呼ばれてもよい。粒子スピン法を使用して、鋭い縁や尖端といった機械的ハザード箇所を自動的に検出してもよい。したがって、粒子スピン法を使用して、CE認証を自動的に行ってもよい。さらに、機械の設計データ、例えばCADデータ、に基づいてのみ、機械的ハザード箇所の分析を行うことが可能である。手動のCE認証と比較して、提案された方法は、決定が迅速に、確実に、および特に開発プロセスの初期に(例えば、CAD設計データに基づいて)行われるという利点を有する。
【0035】
また、提案された方法では、決定されたハザード箇所に基づいて、適切な保護または安全措置が決定される。したがって、提案された方法では、安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータが、決定されたハザード箇所に基づいて決定される。そして、決定された安全構成に従って安全システムを設定して機械の安全を確保してもよい。このようにして、機械の安全性が向上する。特に、提案された新規の方法は、機械のハザード箇所の検出と安全確保を向上させる。
【0036】
したがって、上記提起された課題は全体として解決される。
【0037】
第1の改良形態において、粒子の数は、1000よりも多く、好ましくは10,000または30,000よりも多く、特に100,000よりも多くてもよい。
【0038】
特に、粒子の数は10,000~30,000の間であってもよい。好ましくは、粒子は、シミュレーションの開始時に仮想モデルの周囲の仮想空間にランダムにまたは任意に分布される。このようにして、比較的短いシミュレーション時間で、機械の仮想モデル本体の、より良好なスキャンが得られる。より少ない数の粒子はより長いシミュレーション時間で補い、少数のポイントであっても高いスキャンを得ることができる。
【0039】
さらなる改良形態において、粒子は、1mm~1000mm、好ましくは、5mm~600mm、特に50mmの粒子径を含んでいてもよい。
【0040】
粒子径は、粒子の直径(特に、最大膨張)を規定する。粒子径が小さいほど、機械の仮想モデル本体の、より細かなスキャンが実現される。しかし、粒子径が小さ過ぎると、人間がアクセスできない機械の仮想モデル本体の領域をスキャンすることになる可能性がある。したがって、粒子径は、好ましくは、腕、手、または指といった人体の寸法に対応するように設定される。例えば、粒子径は、50~100cm(平均的な腕の長さにほぼ対応する)、または10cm~30cm(平均的な手の長さにほぼ対応する)、または1cm~2cm(指の太さにほぼ対応する)であってもよい。このようにして、人間が領域に到達できるか否か、すなわち人間が領域にアクセスできるか否かをシミュレーションできる。適切な粒子径を選択することで、人間がアクセスできる機械的ハザード箇所のみを検出することを確実にしてもよい。
【0041】
さらなる改良形態では、散乱をシミュレーションするために、特定の数の粒子を機械の仮想モデルで同時に散乱させてもよく、特に散乱のシミュレーション中、粒子は互いに衝突することができる。
【0042】
一般に、散乱をシミュレーションするために、粒子は、モデル上で、個別に、すなわち次々と互いに独立して、または同時に、散乱させてもよい。同時散乱の場合、粒子は、散乱のシミュレーション中、互いに衝突してもよい。衝突とは、粒子が互いに衝突して動きの方向を変える可能性があることを意味する。これにより、粒子間の衝突がなければ到達が難しいかまたは不可能であろう機械の仮想モデル本体の領域に到達できる。このようにして、機械の仮想モデル本体のスキャンがさらに改善される。
【0043】
さらなる改良形態では、散乱をシミュレーションするために、粒子、特に特定の数の粒子は球から(特に、内側の球から)内側に放出されてもよく、球は、機械の仮想モデルを取り囲むように仮想環境内に配置されている。
【0044】
好ましくは、球は、閉じた表面、特に球面であり、シミュレーションのために粒子が生成される領域として機能する。したがって、この球は放出球と呼ばれてもよい。粒子が球によって放出される放出位置は、球上でランダムに分布するか、ほぼ均一に分布するかのどちらかであってもよい。仮想モデルは、好ましくは、放出球の中心に配置されている。放出球上で生成されると、粒子は速度、すなわち初期運動量を持つことがある。この速度の方向は、内向き(特に球に対して法線方向)であってもよい。好ましくは、粒子は初期スピンなしで放出される。このような球から放出することで、機械の仮想モデル本体の比較的均一なスキャンが達成される。
【0045】
また、仮想環境、すなわち仮想空間には、反射球と呼ばれてもよいさらなる球が配置されていてもよい。反射球も仮想モデルを取り囲み、仮想モデルは、好ましくは中心に配置されている。反射球は少なくとも放出球と同じかそれよりも大きい。反射球は仮想環境で静止している。内側から来た、反射球に衝突する粒子は、反射して内側に戻る。このようにして、粒子は、シミュレーション中、仮想環境内の規定の空間体積に保持される。このようにして、粒子が機械の仮想モデル本体と衝突する頻度がシミュレーション中に増加する。これにより、機械の仮想モデル本体のスキャンも改善される。
【0046】
さらなる改良形態では、フィルタ基準の第2のフィルタ基準に従ってフィルタリングするステップにおいて、フィルタリングは、仮想環境内の関連付けられた位置が仮想モデルにあるかまたはその近くにあるスピンの変化に対して実行されてもよい。
【0047】
好ましくは、第2のフィルタ基準によるフィルタリングは、第1のフィルタ基準によるフィルタリングの前に実行される。あるいは、第1のフィルタ基準によるフィルタリングは、第2のフィルタ基準によるフィルタリングの前に実行されてもよい。さらなる代替として、第1および第2のフィルタ基準によるフィルタリングを同時に実行してもよい。したがって、「仮想モデルにあるかまたはその近くにある」は、仮想モデルの周囲の特定領域を定義し、第2のフィルタ基準によるフィルタリングにおいて、関連付けられた位置が仮想モデルの周囲の特定領域にないスピンの変化は除外される。例えば、特定領域は、仮想モデルの質量中心または中心までの特定距離によって画定されてもよく、特定距離は少なくとも仮想モデルの直径または最大膨張と同じ大きさである。したがって、仮想モデルが配置され、好ましくは放出球に位置し、放出球よりも小さい球が、特定距離によって定義される。あるいは、特定領域は、仮想モデルの表面までの特定距離によっても画定されてもよい。したがって、第2のフィルタ基準によるフィルタリングによって、粒子が機械の仮想モデル本体と衝突することで引き起こされないスピンの変化は破棄される。言い換えれば、粒子の他の物体との衝突、例えば粒子同士の衝突、または外側の反射球との衝突は、これにより除外される。
【0048】
さらなる改良形態では、スピンの変化を決定するステップにおいて、決定されたスピンの変化およびそれらに関連付けられた位置に基づいてスピンマップが生成されてもよく、スピンマップは、フィルタリングするステップでフィルタリングされ、機械の機械的ハザード箇所を決定するステップで、フィルタリングされたスピンマップに基づいて機械的ハザード箇所が決定される。
【0049】
スピンマップは、関連付けられた位置でのスピンの変化を表す。例えば、位置は、デカルト座標系の座標x,y,zによって表してもよい。したがって、スピンマップは、決定されたスピンの変化S(x,y,z)と対応する位置との関連付けである。言い換えれば、スピンマップには、すべての決定されたスピンの変化が含まれる。フィルタリングのステップで、スピンマップはフィルタリングされる。これは、適用されたフィルタ基準を満たさないスピンの変化をスピンマップから破棄することで行われる。したがって、フィルタリングされたスピンマップには、適用されたフィルタ基準を満たすスピンの変化のみが含まれる。フィルタリングされたスピンマップは、間引きスピンマップとも呼ばれてもよい。したがって、フィルタリングされたスピンマップには、特に機械の領域で、機械的ハザード箇所に起因すると考えられる、大きなスピンの変化が発生する位置のみが含まれる。
【0050】
さらなる改良形態において、安全構成の少なくとも1つのパラメータは、安全システムの保護装置の配置および/または構成、および/または決定された機械的ハザード箇所の周囲の安全区域の配置、および/または決定された機械的ハザード箇所からの安全距離であってもよい。
【0051】
好ましくは、保護装置の配置は、保護装置の位置、向き、形状および/またはサイズを規定する。保護装置として、すでに上で説明した物理的および感知式の保護装置を使用してもよい。保護装置の構成は、対応するハザード箇所を保護するためにどのように保護装置を設定するかを定義する。例えば、感知式の保護装置は、安全距離または安全区域によって画定された領域を監視するように構成されてもよい。安全区域または安全距離は、人間が入ったり到達したりすべきでないかまたはできない領域を画定する。したがって、この領域は、監視または安全確保の対象となる領域である。監視または安全確保は、安全システムの対応する保護装置を使用して行われてもよい。そして、パラメータを使用して規定された安全構成は、それに応じて安全システムを構成するために使用される。言い換えれば、安全構成は、安全構成に従って保護装置を設定するために使用される。したがって、保護装置の配置および/または構成と、安全区域および/または安全距離の決定は、決定された機械的ハザード箇所の安全を確保するために使用される。
【0052】
さらなる改良形態では、安全システムを設定する際、安全システムの保護装置は、安全構成に基づいて配置および/または構成されてもよい。
【0053】
これにより、保護装置は、機械の少なくとも1つの対応するハザード箇所の安全を確保するかまたは監視することができるように配置および構成される。例えば、感知式の保護装置は、ハザード箇所の周囲の監視対象領域を監視するように構成されてもよい。物理的な保護装置は、ハザード箇所の安全を確保するように、すなわち人間によるハザード箇所へのアクセスを妨害または防止するように構成および配置されてもよい。このようにして、機械の安全確保がそれに応じて実施される。
【0054】
さらなる改良形態では、安全システムを設定する際、安全構成に基づいて安全区域または安全距離を設定してもよく、安全区域または安全距離は、安全システムの保護装置を使用して監視または保護される。
【0055】
例えば、安全区域または安全距離を監視するように構成された感知式の保護装置を設けてもよい。また、安全区域または安全距離の安全を確保するように構成された物理的な保護装置も設けてもよい。特に、安全構成は、複数のハザード箇所に対して複数の安全区域または安全距離も規定してもよく、安全区域および/または機械的ハザード箇所からの安全距離を監視するために、1つまたは複数の感知式の保護装置が設定(それに応じて配置および構成)される。このようにして、機械の安全確保がそれに応じて実施される。
【0056】
上記の特徴および以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれの場合に示した組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたは単独でも、使用できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の例示的な実施形態が図面に示され、以下の説明でより詳細に説明される。図面において、
図1図1は、機械および機械の安全確保用の安全システムの概略図を示す。
図2図2は、ハザード箇所の安全を確保するかまたは監視するための保護装置の配置の2つの例示的な図を示す。
図3図3は、機械用の安全システムの安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するための方法の一実施形態の概略図を示す。
図4図4は、機械用の安全システムを設定するための方法の一実施形態の概略図を示す。
図5図5は、ボールが平面と衝突する例示的な図を示す。
図6図6は、ボールが曲面と衝突する例示的な図を示す。
図7図7は、試験体上での粒子の散乱のシミュレーションの例示的な図を示す。
図8図8は、図7からのシミュレーションのスピンマップの図を示す。
図9図9は、機械上での粒子の散乱のシミュレーションの例示的な図を示す。
図10図10は、図9からのシミュレーションのフィルタリングされたスピンマップの図を示す。
図11図11は、図9からのシミュレーションのさらにフィルタリングされたスピンマップの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、機械10および安全システム12を示す。機械10は、鋭い縁や尖端といった機械的ハザード箇所18を含む。安全システム12は、機械10を守る/保護する役割を果たし、特に機械的ハザード箇所18の安全を確保する役割を果たす。安全システム12は、1つまたは複数の保護装置14、16を含む。保護装置14、16は、物理的な保護装置14(例えば、バリア、エッジプロテクタ、マーカー等)および/または感知式の保護装置16(例えば、センサ、カメラ等)である。保護装置14、16を使用して、機械的ハザード箇所18の安全を確保してもよい。
【0059】
図2は、保護装置14、16を使用して機械的ハザード箇所18の安全を確保する2つの例(A)および(B)を示す。図2のこれらの例は、安全システム12の安全構成の例になる。安全構成は、安全システム12の保護装置14、16の配置および/または構成を規定する。
【0060】
第1の例(A)では、物理的な保護装置14、例えばバリア、が機械10の機械的ハザード箇所18から特定の安全距離22に配置されている。物理的な保護装置14は、機械的ハザード箇所18へのアクセスを妨害または防止する。
【0061】
第2の例(B)では、感知式の保護装置16、例えばカメラや光センサ、が機械10の機械的ハザード箇所18の周囲の安全区域20を監視するように配置されている。感知式の保護装置16は、人間が安全区域20に入ったとき、および/または安全区域20にいるときを検出するように構成されている。感知式の保護装置16がこれを検出すると、例えば警報を作動させてもよい。
【0062】
図3は、機械10用の安全システム12の安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定するための方法30の一実施形態を示す。方法30は、コンピュータベースの方法で実行されてもよい。特に、方法30のステップは、コンピュータを使用して実行してもよい。したがって、方法30は、コンピュータ実施方法である。
【0063】
方法30の第1のステップ32では、機械10の仮想モデルが仮想環境内に提供される。
【0064】
方法30のさらなるステップ34では、仮想環境において、機械10の仮想モデルからの1つまたは複数の粒子の散乱をシミュレーションし、シミュレーション中に粒子のシミュレーションデータを取得する。シミュレーションデータとして、各粒子の位置およびスピンをシミュレーションの継続時間にわたって複数回連続して取得してもよい。
【0065】
好ましくは、粒子の数は1000よりも多く、好ましくは10,000または30,000よりも多く、特に100,000よりも多い。好ましくは、粒子は、1mm~1000mm、好ましくは5mm~600mm、特に50mmの粒子径を含む。
【0066】
散乱をシミュレーションするために、特定の数の粒子を機械の仮想モデル上に同時に散乱させてもよく、特に、散乱のシミュレーション中に粒子は互いに衝突してもよい。
【0067】
また、散乱をシミュレーションするために、粒子、特に特定の数の粒子は、放出球から内側に放出されてもよく、放出球は、機械10の仮想モデルを取り囲むように仮想環境内に配置される。さらに、反射球も仮想環境内に設けてもよく、反射球は、好ましくは放射球を取り囲んでいる。シミュレーション中、反射球は、内側から反射球に衝突する粒子を反射して内側に戻す。
【0068】
方法30のさらなるステップ36では、シミュレーションデータに基づいて、粒子のスピンの変化を決定し、決定された各スピンの変化は、スピンの変化時の対応する粒子の位置と関連付けられる。特に、決定されたスピンの変化および関連付けられた位置に基づいてスピンマップが生成されてもよい。
【0069】
方法30のさらなるステップ38では、1つまたは複数のフィルタ基準に従って、決定されたスピンの変化をフィルタリングする。フィルタ基準の第1のフィルタ基準に従って、規定の閾値以上のスピンの変化に対してフィルタリングを行ってもよい。フィルタ基準の第2のフィルタ基準に従って、仮想環境内の関連付けられた位置が仮想モデルにあるかまたはその近くにあるスピンの変化に対してフィルタリングを行ってもよい。特に、フィルタリングのステップ38では、スピンマップをフィルタリングしてもよい。
【0070】
方法30のさらなるステップ40では、フィルタリングされたスピンの変化に関連付けられた位置に基づいて、機械的ハザード箇所を決定する。特に、機械的ハザード箇所は、フィルタリングされたスピンマップに基づいて決定されてもよい。
【0071】
方法30のさらなるステップ42では、決定された機械的ハザード箇所に基づいて、安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定する。特に、決定された機械的ハザード箇所に基づいて複数の安全構成も決定されてもよい。安全構成の少なくとも1つのパラメータは、安全システム12の保護装置14、16の配置および/または構成、および/または決定された機械的ハザード箇所の周囲の安全区域20の配置、および/または決定された機械的ハザード箇所からの安全距離22を規定する。
【0072】
図4は、機械10用の安全システム12を設定するための新規の方法50の一実施形態を示す。
【0073】
方法50の第1のステップ52では、機械10用の安全システム12の安全構成の少なくとも1つのパラメータを決定する。機械10用の安全システム12の安全構成の少なくとも1つのパラメータの決定は、図3の方法30を使用して行われてもよい。
【0074】
方法50のさらなるステップ54では、少なくとも1つの決定されたパラメータを使用して規定される安全構成に基づいて安全システム12を設定する。安全システム12を設定する際、安全システム12の保護装置14、16は、安全構成に基づいて配置および/または構成されてもよい。また、安全システム12を設定する際、安全構成に基づいて安全区域20または安全距離22を設定してもよく、安全区域20または安全距離22は、安全システム12の保護装置14、16を使用して監視または安全確保される。
【0075】
図5図8は、新規の方法の基礎となる粒子スピン法の動作を説明している。
【0076】
まず、図5および図6において、2つの思考実験を考察する。1つは、理想化された環境(重力が存在する)にあるが、減衰は考慮されていない(具体的には、摩擦がなく、空気抵抗がない)。
【0077】
第一に、図5において、ボール100(球)の平面102(平らな床)との衝突を考察する。1つは、平らな床の部屋にある。ここで、ボールはスピンなしで真っ直ぐ下に落とされる。ボールはこれから、落ちた場所に戻ることになる。このプロセスでは、ボールはまず、飛行方向の最前点で地面に当たる。この地点は弾着点と呼ばれることがあり、図5に参照符号104で示されている。この衝突により、ボールは衝突後にスピンもねじれも起こさない。
【0078】
第二に、図6において、ボール110(球)の曲面112(起伏のある床)との衝突を考察する。特に、図5では、図5と同じ実験が繰り返されるが、今度は、平らな床の代わりに起伏のある床を使用する。ここで、ボール110はもはや飛行方向の最前点では当たらず、ボール110、110’、110’’の下半分に位置する任意の他の地点114で当たる場合が生じる。より分かりやすく示すために、これは、衝突中に異なる衝突点114、114’、114’’で曲面112と接触するいくつかのボール110、110’、110’’とともに図6に示されている。
【0079】
粒子スピン法はこの特性を利用し、特に縁については統計的に、粒子が真っ直ぐ当たらずスピンを起こす可能性が高い。特に、粒子が衝突する本体の縁または尖端が鋭利であるほど、結果として生じるスピンの変化は大きくなる。
【0080】
図7では、円錐形を備える試験体120の例を使用して、粒子スピン法が実証されている。特に、試験体120は円錐である。粒子スピン法では、試験体120から粒子122を散乱させ、散乱中の粒子のスピンの変化を分析する。
【0081】
この目的のために、仮想環境、すなわちシミュレーション環境が最初に提供される。仮想環境は、特にグラフィックエンジンを使用して生成されてもよい。例えば、この目的のためにコンピュータプログラム「Blender」を使用して、仮想環境およびこの仮想環境内のオブジェクトも生成し、それらの動きをシミュレーションしてもよい。仮想環境は、例えばデカルト座標を使用して記述することができる三次元の仮想空間を提供する。
【0082】
仮想環境では、試験体120のモデルが最初に生成または提供される。試験体120の質量中心または中心は、好ましくは、仮想環境の原点に配置される。次に、仮想環境において、放出球124が試験体の周囲(特に、仮想環境の原点の周囲)に配置される。さらに、少なくとも放出球124と同じ大きさで、放出球124を取り囲むか放出球124と一致する反射球が、試験体の周囲に配置されてもよい。
【0083】
試験体120の中心または質量中心、または仮想環境の原点に引力場(重力場)を生成またはシミュレーションしてもよい。あるいは、放出球または反射球のいずれかに位置するか両方の球を取り囲む、外部斥力場を生成してもよい。力場を使用して、粒子122は試験体120に向かって加速される。
【0084】
シミュレーションの開始時に、粒子122が放出球124上に生成される。生成位置は、放出球124全体にわたってランダムに分布または均一に分布される。粒子の数は、例えば、10,000~30,000であってもよい。粒子径は、例えば、5cmであってもよい。適切な粒子の数は、試験体の複雑さによって大きく異なる場合がある。好ましくは、粒子は丸く、質量を有する。また、粒子は、粘着性とも呼ばれてもよい表面粗さを有する。
【0085】
散乱をシミュレーションするために、粒子の動きは、それらの生成後に、例えば個別のシミュレーションステップでシミュレーションされる。各シミュレーションステップは、時間間隔に対応する。シミュレーションステップは、時間ステップとも呼ばれてもよい。したがって、各シミュレーションステップは、シミュレーション中の時間と関連付けられてもよい。シミュレーションは、好ましくは少なくとも1,000のシミュレーションステップを含む。シミュレーションステップごとに(すなわち、時間ごとに)、各粒子の少なくとも位置(例えば、3つの変数)とスピン(例えば、3つまたは4つの変数)とがシミュレーションデータとして取得される。特に、シミュレーションデータは、シミュレーションの全期間で(すなわち、すべてのシミュレーションステップで)取得される。好ましくは、取得されたシミュレーションデータは、シミュレーション中保存される。そして、保存されたシミュレーションデータは、その後の分析(特に、スピンの変化および機械的ハザード箇所の決定)に使用できる。
【0086】
好ましくは、粒子は、それらの生成中に放出球の表面から内側に、特に、表面に対して法線方向に特定の速度で放出される。シミュレーション中、粒子122は、粒子同士だけでなく、試験体120の仮想モデルとも、反射球124とも衝突する可能性がある。このプロセスで、粒子はそれらの質量中心/中心ではなく、外殻/表面と衝突する。このようにして、シミュレーション中、粒子が試験体120の表面をスキャンする。試験体で散乱すると、粒子はスピンを変化させる可能性がある。
【0087】
シミュレーション中に取得したシミュレーションデータに基づいて、シミュレーション中に粒子のスピンが変化したかどうか、またいつ変化したか、また変化したのであれば、スピンの変化はどれぐらい大きいかを決定することができる。このようにして、シミュレーション中に発生した粒子のすべてのスピンの変化が決定される。そして、決定されたスピンの変化に基づいて、スピンマップを生成してもよい。
【0088】
次に、スピンの変化またはスピンマップがフィルタリングされる。一方では、試験体の周囲の特定の限られた領域(すなわち、試験体またはその近く)で発生したスピンの変化をフィルタリングしてもよい。試験体との衝突で引き起こされていないスピンの変化が除外される。また、絶対値が特定の閾値よりも大きいスピンの変化をフィルタリングしてもよい。このようにして、縁や尖端との衝突によって引き起こされていない小さなスピンの変化を除外することができる。
【0089】
図8には、図7におけるシミュレーションからの試験体(円錐)の表面上のスピンの変化を含むスピンマップが示されている。スピンマップは、「スピンヒートマップ」とも呼ばれてもよい。特に、図8のスピンマップでは、円錐の下縁だけでなく尖端も、円錐の残りの部分よりも高いスピンの変化を含むことが分かる。したがって、高いスピンの変化の位置は、試験体の尖端または縁、すなわち機械的ハザード箇所、の位置に(少なくとも高い確率で)対応する。フィルタリングの閾値をそれに応じて大きくすると、円錐の尖端および下縁でのスピンの変化のみが残る。
【0090】
上述したように、スピンマップは、2つの時間の間の粒子のスピンの変化を分析するために使用される。粒子はすべてランダムな飛行方向を持ち、また互いに衝突する。各ボールに速度がある、摩擦のないボールプールの考えが非常に適切である。この方法では、粒子径も自由に調整可能であるため、粒子が特定の位置に到達するのに十分な大きさか否かも指定してもよい。言い換えれば、粒子径は、人間の部位(例えば、腕、手、指)の寸法に合わせてもよい。したがって、間接的に、スピンの変化が発生する場所と発生しない場所とを調べることで到達可能性の分析も行う。
【0091】
したがって、フィルタリングされたスピンマップに基づいて、縁や尖端といった機械的ハザード箇所の位置を決定してもよい。特に、フィルタリングされたスピンの変化の位置は、機械の機械的ハザード箇所の位置に対応する。
【0092】
図9図11では、機械からの粒子の散乱のシミュレーションを例示的に示している。図9では、機械のモデルが仮想環境に配置されている。この例では、機械はコンベアベルトと、コンベアベルトに隣接するロボットアームとを備える。
【0093】
図10には、図9からのシミュレーションのスピンマップが示されている。スピンの変化は、閾値法を使用してフィルタリングされ、ここでは小さな閾値を使用した。図10のスピンマップは、機械のほとんどの縁および尖端の位置におけるスピンの変化を含む。
【0094】
図11には、図9からのシミュレーションのスピンマップが示され、ここでは、図10よりも大きな閾値を使用して事前にスピンの変化がフィルタリングされている。このようにして、スピンマップでは、スピンの変化は、機械の、より鋭い縁または尖端にある位置でのみ示されている。
【0095】
フィルタリングされたスピンマップに基づいて、機械的ハザード箇所の位置を決定してもよい。フィルタリングに使用する閾値によって、感度を調整してもよい。閾値が高いほど、検出されるには縁がより鋭利でなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11