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特許7564938ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲット
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  • 特許-ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲット 図1A
  • 特許-ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲット 図1B
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  • 特許-ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲット 図5A
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  • 特許-ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲット 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲット
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/08 20060101AFI20241002BHJP
   H05H 9/00 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 35/12 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 35/18 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 5/14 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 7/26 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 7/44 20060101ALI20241002BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20241002BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20241002BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G21K5/08 A
G21K5/08 C
G21K5/08 X
H05H9/00 Z
H01J35/00 A
H01J35/12
H01J35/18
H01J35/16
H01J35/08 F
H01J5/14
H01J7/26
H01J7/44
A61N5/10
H05G2/00 L
H05G1/00 G
H05G1/00 R
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023505947
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021039536
(87)【国際公開番号】W WO2022026101
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】16/939,836
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505172824
【氏名又は名称】アキュレイ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】1240 Deming Way, Madison, WI 53717 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】トレイル マーク
(72)【発明者】
【氏名】ベルチェ カーク
(72)【発明者】
【氏名】ボーン ダグラス
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0051899(US,A1)
【文献】米国特許第04323780(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0058992(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0219694(US,A1)
【文献】国際公開第2003/002001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/00-7/00
H05H 9/00
H01J 35/00-35/32
H01J 5/14
H01J 7/26
H01J 7/44
A61N 5/10
H05G 2/00
H05G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線加速器ターゲット装置であって、
直線加速器によって加速された電子がぶつかった時に放射線を生成するターゲット材料と、
前記ターゲット材料が取り付けられるターゲットホルダアセンブリであって、前記ターゲット材料の周辺部に沿って配置された冷却チャネルを含み、前記直線加速器のハウジングに取り外し可能に結合するように構成されたターゲットホルダアセンブリと、
前記ターゲット材料を覆って前記ターゲットホルダアセンブリに結合された保護窓と、
前記冷却チャネルと前記直線加速器との間の少なくとも1つの結合インターフェイスであって、前記冷却チャネルが蛇行形状の冷却チャネルからなる結合インターフェイスと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ターゲットホルダアセンブリに結合されて前記直線加速器の電子ビーム電流を測定するトロイダル変流器をさらに備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ターゲットホルダアセンブリは、前記ターゲット材料に結合されて前記直線加速器の電子ビーム電流を測定する電流検知コンポーネントをさらに備え、前記ターゲット材料は、前記直線加速器から電気的に絶縁される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ターゲット材料は、前記ターゲット材料の原子質量及び前記電子のエネルギーに対して厚みが0.2放射長未満である、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記保護窓と前記ターゲット材料との間に配置された不活性ガス雰囲気をさらに含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記保護窓はベリリウムで構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
放射線送達システムであって、
直線加速器と、
前記直線加速器によって加速された電子がぶつかった時に放射線を生成するターゲット材料と、
前記ターゲット材料が取り付けられるターゲットホルダアセンブリであって、前記ターゲット材料の周辺部に沿って配置された蛇行形状の冷却チャネルを含み、前記直線加速器のハウジングに取り外し可能に結合するように構成され、当該ターゲットホルダアセンブリの取り外し時に前記直線加速器の真空が維持されるターゲットホルダアセンブリと、
前記ターゲット材料を覆って前記ターゲットホルダアセンブリに結合された保護窓と、
前記冷却チャネルと前記直線加速器との間の少なくとも1つの結合インターフェイスと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記ターゲットホルダアセンブリに結合されて前記直線加速器の電子ビーム電流を測定するトロイダル変流器をさらに備える、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ターゲットホルダアセンブリは、前記ターゲット材料に結合されて前記直線加速器の電子ビーム電流を測定する電流検知コンポーネントをさらに備え、前記ターゲット材料は、前記直線加速器から電気的に絶縁される、
請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ターゲット材料は、前記ターゲット材料の原子質量及び前記電子のエネルギーに対して厚みが0.2放射長未満である、
請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記保護窓と前記ターゲット材料との間に配置された不活性ガス雰囲気をさらに含む、
請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記保護窓はベリリウムで構成される、
請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記ターゲットホルダアセンブリは、前記直線加速器に外部的に結合され、前記直線加速器は、該直線加速器の出力部に真空窓を含む、
請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記ターゲットホルダアセンブリが前記直線加速器に取り付けられた時に、前記ターゲットホルダアセンブリに結合された前記保護窓は、前記直線加速器の前記出力部における記真空窓と整列する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
直線加速器によって加速された電子がぶつかった時に放射線を生成するターゲット材料と、
前記ターゲット材料が取り付けられるターゲットホルダアセンブリであって、前記ターゲット材料の周辺部に沿って配置された蛇行冷却チャネルを含むターゲットホルダアセンブリと、
前記ターゲット材料を覆って前記ターゲットホルダアセンブリに結合された保護窓と、
を備えたターゲットアセンブリを前記直線加速器のハウジングに外部的に結合することと、
前記ターゲットアセンブリであって、前記ターゲットホルダアセンブリの取り外し時に前記直線加速器の真空が維持されるターゲットアセンブリの前記ターゲット材料に、電子ビームを加速させてぶつける前記直線加速器を使用して放射線の治療ビームを生成することと、
を含み、
前記蛇行冷却チャネルと前記直線加速器との間の少なくとも1つの結合インターフェイスを備えていることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ターゲットホルダアセンブリ内に配置されたトロイダル変流器を使用して前記電子ビームの電流をモニタすることをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲット材料を電気的に絶縁して前記ターゲット材料における電流を直接測定することにより、前記電子ビームの電流をモニタすることをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ターゲットホルダアセンブリが前記直線加速器に取り付けられた時に、前記ターゲットホルダアセンブリに結合された前記保護窓は、前記直線加速器の出力部における真空窓と整列する、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2020年7月27日に出願された米国特許出願第16/939,836号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この文献の内容は全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、加速器ベースの放射線治療では、制動放射(「制動輻射」)を介して高エネルギーX線ビームを発生させる。高原子番号(「高Z」)のターゲット材料に相対論的電子ビームが入射する。電子ビームは、ターゲット材料の原子核との電磁相互作用によって偏向され、加速して、高エネルギー光子を放出させる。これらの光子の一部は電子-陽電子対を生成するのに十分なエネルギーを有し、この電子-陽電子対がターゲット材料の原子核と相互作用してさらに多くの光子を放出する。この結果、電子、陽電子及び光子の「電磁シャワー」又は「電磁カスケード」が発生する。通常、ターゲットから逃がれた電子は、低原子質量材料で形成された電子吸収体によって治療ビームから排除される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、以下に示す詳細な説明及び本開示の様々な実装の添付図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】本明細書で説明する実施形態による、螺旋放射線送達システムを示す図である。
図1B】本明細書で説明する実施形態に従って使用できる放射線治療システムを示す図である。
図1C】本明細書で説明する実施形態による、Cアームガントリベースの放射線治療システムを示す図である。
図2】本明細書で説明する実施形態による、LINACの出力部に取り付けられるウィンドウホルダアセンブリ例を示す図である。
図3】本明細書で説明する実施形態による、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットホルダアセンブリの例を示す断面図である。
図4】本明細書で説明する実施形態による、LINACに取り付けられたビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットの例を示す図である。
図5A】本明細書で説明する実施形態による、現場交換可能なターゲットアセンブリの例示的な実施形態を示す図である。
図5B】本明細書で説明する実施形態による、現場交換可能なターゲットアセンブリの例示的な実施形態を示す図である。
図5C】本明細書で説明する実施形態による、現場交換可能なターゲットアセンブリの例示的な実施形態を示す図である。
図5D】本明細書で説明する実施形態による、現場交換可能なターゲットアセンブリの例示的な実施形態を示す図である。
図6】本明細書で説明する実施形態による、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットを使用する方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書では、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットのための方法及び装置の実施形態について説明する。様々な実施形態では、直線加速器(「LINAC」)の真空エンベロープの外側のLINACハウジングにX線ターゲット及びX線ターゲットアセンブリを取り付けることができる。従来のLINACのX線ターゲットはLINACの真空内に組み込まれており、従って個別に交換することができない。X線ターゲットの故障時にはLINAC全体がターゲット交換のためのメンテナンスを必要とし、この結果LINACの停止時間が長くなって、機械のオペレータ及び/又は所有者に著しいコストが生じる可能性がある。さらに、ターゲットがいつ故障するかは予測不能な場合もあり、従って上述したメンテナンスの計画を立てることは困難となり得る。
【0007】
本明細書で説明する実施形態は、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットを有利に提供する。X線ターゲット材料をターゲットホルダアセンブリに取り付け、その後にこれをLINACの真空エンベロープの外側に外部的に取り付けることができる。従って、ターゲットホルダアセンブリは、LINACの重大なメンテナンス及び真空の損失を伴うことなくLINACに対して取り付け及び取り外しを行うことができる。従って、現在のX線ターゲットの故障時には、故障したターゲットのターゲットホルダアセンブリを素早く取り外し、大幅な停止時間を伴うことなく新たなターゲット材料を有する新たなターゲットホルダアセンブリと交換することができる。また、ターゲットホルダアセンブリは、X線ターゲットの使用中における熱除去を増大させるように表面断面に対する冷却剤の接触部分を広げる冷却チャネルを含むことができる。ターゲット材料が高温になるとターゲットが劣化するため、熱除去を増大させることでターゲットの寿命を延ばすことができる。最後に、ターゲット及びターゲットホルダアセンブリはトロイダル変流器を含むことができ、及び/又はLINACから電気的に絶縁されてX線ビーム電流を直接測定する能力を提供することができる。
【0008】
図1Aに、本開示の実施形態による螺旋放射線送達システム(helical radiation delivery system)800を示す。螺旋放射線送達システム800は、リングガントリ820に取り付けられた直線加速器(LINAC)850を含むことができる。LINAC850は、電子ビームをX線放出ターゲットに向けることによって放射線ビーム(すなわち、治療ビーム)を生成するために使用することができる。治療ビームは、ターゲット領域(すなわち、腫瘍)に放射線を送達することができる。治療システムは、マルチリーフコリメータ(multi-leaf collimator:MLC)860をさらに含む。MLCは、治療ビームの成形を可能にするようにMLCのアパーチャを調整するために移動可能な複数のリーフを収容するハウジングを含む。リングガントリ820は、患者830がリング/トロイドのボアを通じて延びるトロイダル形状を有し、LINAC850は、リングの周辺部に取り付けられ、中心を通る軸を中心に回転して、患者の周囲の1又は2以上の角度から送達されるビームでターゲット領域を照射する。治療中、患者830は治療台840に乗ったまま同時にガントリのボア内を移動することができる。
【0009】
螺旋放射線送達システム800は、イメージングソースとしてのLINAC850とX線検出器870とを含むイメージングシステムを含む。LINAC850は、設定のために患者830を撮像して治療前画像を生成するためにLINAC850に対向するX線検出器870に入射する一連のX線ビームをROIに向けることによって、患者830の関心領域(ROI)のメガボルトX線画像(MVCT)を生成するために使用することができる。1つの実施形態では、螺旋放射線送達システム800が、LINAC850に直交して(例えば、90度離れて)取り付けられたkVイメージングソース810から成る二次イメージングシステムをリングガントリ820上に含むこともでき、この螺旋放射線送達システム800を、ターゲット領域にイメージング用X線ビームを投影して患者130の通過後に検出器の結像面を照明するように位置合わせすることができる。
【0010】
図1Bに、本明細書で説明する別の実施形態に従って使用することができる放射線治療システム1200を示す。図示のように、図1Bには放射線治療システム1200の構成を示す。図示の実施形態では、放射線治療システム1200が、放射線治療源として機能する直線加速器(LINAC)1201と、治療ビームを成形するようにLINACの前方に取り付けられたMLC1205とを含む。1つの実施形態では、患者の周囲の動作空間内で多くの角度から多くの平面で送達されるビームで病理解剖学的構造(例えば、ターゲット)を照射するようにLINAC1201を配置するために、LINAC1201が複数の(例えば、5以上の)自由度を有するロボットアーム1202の端部に取り付けられる。治療は、単一のアイソセンターを有するビーム経路、複数のアイソセンターを有するビーム経路、又は非アイソセントリックアプローチを伴うことができる。
【0011】
LINAC1201は、ロボットアーム1202を動かすことによって治療中に複数の異なるノード(LINAC1201が停止して放射線を送達できる所定の位置)に位置付けることができる。LINAC1201は、これらのノードにおいてターゲットに1又は2以上の放射線治療ビームを送達することができ、放射線ビーム形状はMLC1205のリーフ位置によって決定される。ノードは、患者の周囲に概ね球状分布で配置することができる。ノードの特定の数及び各ノードにおいて適用される治療ビームの数は、治療すべき病理学的組織の位置及びタイプの関数として変化することができる。
【0012】
放射線治療システム1200は、X線源1203A及び1203B(すなわち、イメージングソース)及び固定X線検出器1204A及び1204Bに接続された処理装置1230を有するイメージングシステム1210を含む。或いは、X線源1203A、1203B及び/又はX線検出器1204A、1204Bが移動可能であることもでき、この場合これらは、ターゲットとの整列を維持するように、或いは異なる方位からターゲットを撮像するように、又は多くのX線画像を取得して3次元(3D)円錐ビームCTを再構築するように再配置することができる。当業者であれば理解するように、1つの実施形態ではX線源が点源ではなくむしろX線源アレイである。1つの実施形態では、LINAC1201がイメージングソースとしての役割を果たし、この場合はLINACの電力レベルがイメージングにとって許容できるレベルまで抑えられる。
【0013】
イメージングシステム1210は、円錐ビームCT又は螺旋メガボルトコンピュータトモグラフィ(MVCT)などのコンピュータ断層撮影(CT)を実行することができ、イメージングシステム1210によって生成される画像は2次元(2D)又は3次元(3D)であることができる。2つのX線源1203A及び1203Bは、手術室の天井の固定位置に取り付けて、機械アイソセンター(本明細書では治療中心と呼び、治療中に患者を治療台1206上に位置付けるための基準点を提供する)において交差して患者を通過した後にそれぞれの検出器1204a及び1204bの結像面を照明するX線撮像ビームを2つの異なる(例えば、90度離れた)角度位置から投影するように位置合わせすることができる。1つの実施形態では、イメージングシステム1210が、ターゲット及び周囲の関心体積(VOI)の立体イメージングを提供する。他の実施形態では、イメージングシステム1210が、2つよりも多くの又は少ないX線源及び2つよりも多くの又は少ない検出器を含むことができ、検出器のうちのいずれかは固定式ではなく移動可能であることができる。さらに他の実施形態では、X線源の位置と検出器の位置とを入れ替えることもできる。当業者には周知のように、検出器1204A及び1204Bは、X線を可視光に変換する閃光放出材料(scintillating material)(例えば、非晶質シリコン)、及びデジタル画像の座標系を基準画像の座標系に変換する画像位置合わせプロセス中に基準画像と比較できるデジタル画像に光を変換するCMOS(相補的金属酸化膜シリコン)又はCCD(電荷結合素子)イメージングセルのアレイから作製することができる。例えば、基準画像は、CT画像を通じて光線を投射することによってX線画像形成プロセスをシミュレートすることに基づいて3D CT画像から生成される仮想X線画像であるデジタル再構成X線画像(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)とすることができる。
【0014】
1つの実施形態では、IGRT送達システム1200が二次イメージングシステム1239も含む。イメージングシステム1239は、例えばmedPhoton社のImagingRingシステムなどの円錐ビームコンピュータ断層撮影(CBCT)イメージングシステムである。或いは、他のタイプの体積イメージングシステムを使用することもできる。二次イメージングシステム1239は、アーム及びレールシステム(図示せず)に取り付けられた回転式ガントリ(例えば、リング)1240を含み、アーム及びレールシステムは、回転式ガントリ1240を1又は2以上の軸に沿って(例えば、治療台1206の頭部から足部に延びる軸に沿って)移動させる。回転式ガントリ1240には、イメージングソース1245及び検出器1250が取り付けられる。回転式ガントリ1240は、治療台の頭部から足部に延びる軸を中心に360度回転することができる。従って、イメージングソース1245及び検出器1250を数多くの異なる角度で配置することができる。1つの実施形態では、イメージングソース1245がX線源であり、検出器1250がX線検出器である。1つの実施形態では、二次イメージングシステム1239が、独立して回転可能な2つのリングを含む。イメージングソース1245は第1のリングに取り付けることができ、検出器1250は第2のリングに取り付けることができる。1つの実施形態では、回転式ガントリ1240が、ロボットアーム1202との衝突を避けるために、放射線治療送達中に治療台の足部で静止する。
【0015】
図1Bに示すように、画像誘導式放射線治療システム1200は、治療提供ワークステーション150をさらに伴うことができる。治療提供ワークステーションは、放射線治療システム1200及び患者が存在する治療室とは異なる室内に、放射線治療システム1200から離れて配置することができる。本明細書で説明するように、治療提供ワークステーション150は、1又は2以上の画像位置合わせに基づくターゲットの動きを検出したことに基づいて患者1225への治療提供を修正する(処理装置1230又は別の処理装置とすることができる)処理装置及びメモリを含むことができる。
【0016】
図1Cに、Cアーム放射線送達システム1400を示す。1つの実施形態では、Cアームシステム1400において、治療中にLINACのビームエネルギーを調整することができ、またLINACがX線撮像及び放射線治療の両方に使用されることを可能にすることができる。別の実施形態では、システム1400が、X線画像を生成する内蔵kVイメージングシステムと、さらに高エネルギーの治療用放射線ビームを生成する別のLINACとを含むことができる。システム1400は、ガントリ1410、LINAC1420、LINAC1420の前方におけるビーム成形のためのMLC1470、及びポータルイメージング検出器(portal imaging detector)1450を含む。ガントリ1410は、選択された投影に対応する角度に回転させて、治療台1440上の患者1430のVOIのX線画像を取得するために使用することができる。ポータルイメージングシステムを含む実施形態では、LINAC1420が、患者1430のターゲットを通過し、ポータルイメージング検出器1450に入射してターゲットのX線画像を作成するX線ビームを生成することができる。ターゲットのX線画像が生成された後には、LINAC1420が患者1430のターゲット領域を治療するための放射線ビームを生成できるように、LINAC1420のビームエネルギーを増加させることができる。別の実施形態では、kVイメージングシステムが、患者1430のターゲットを通過してターゲットのX線画像を作成するX線ビームを生成することができる。いくつかの実施形態では、ポータルイメージングシステムが、治療の提供中にポータル画像(portal images)を取得することができる。ポータルイメージング検出器1450は、ビームが患者1430を通過した後に出口放射線フルエンス(exit radiation fluence)を測定することができる。これにより、内部又は外部基準(internal or external fiducials)又は生体構造断片(pieces of anatomy)(例えば、腫瘍又は骨)がポータル画像内に限局化されることを可能にすることができる。
【0017】
或いは、本明細書で説明するkVイメージングソース又はポータルイメージャ及び動作方法をさらに他のタイプのガントリベースのシステムと共に使用することもできる。ガントリベースのシステムの中には、アイソセンターを通過する軸の周囲でガントリがkVイメージングソース及びLINACを回転させるものもある。ガントリベースのシステムは、患者の体がリング/トロイドのボアを通じて延びる概ねトロイダル形状を有するリングガントリを含み、KVイメージングソース及びLINACは、リングの周辺部に取り付けられて、アイソセンターを通過する軸を中心に回転する。ガントリベースのシステムは、kVイメージングソース及びLINACがアイソセンターを通過する軸上にカンチレバー様の形で取り付けられてこの軸を中心に回転するCアームガントリをさらに含むことができる。別の実施形態では、kVイメージングソース及びLINACを、kVイメージングソース及びLINACが上述したように取り付けられたロボットアームを含むロボットアームベースのシステムにおいて使用することもできる。本開示の態様は、ガントリベースのLINACシステム、放射線治療及び放射線手術に関連する静止イメージングシステム、統合画像誘導(integrated image guidance)を使用する陽子線治療システム、介入放射線医学及び術中X線イメージングシステムなどの他のこのようなシステムにおいてさらに使用することができる。
【0018】
図2に、本開示の実施形態による、LINACの出力部に取り付けられるウィンドウホルダアセンブリ例200を示す。1つの実施形態では、ウィンドウホルダアセンブリ200を銅で形成することができる。ウィンドウホルダアセンブリ200は、ウィンドウホルダアセンブリ200に取り付けられた真空窓205を含むことができる。例えば、真空窓205は、気密溶接、レーザー溶接、ろう付け又はその他のいずれかの好適なプロセスを使用して取り付けることができる。真空窓205は、ベリリウム、ステンレス鋼、チタン、又は他のいずれかの好適な低原子質量材料で形成することができる。ウィンドウホルダアセンブリ200は、LINACの出力部においてLINACに直接取り付けることができる。例えば、ウィンドウホルダアセンブリ200は、LINACが内部真空環境を確実に維持できるようにLINACに溶接することができる。ターゲットホルダアセンブリ200は、以下の図3に関して説明するようにターゲットホルダアセンブリの保護窓及びX線ターゲットと直接整列することができる。
【0019】
図3は、本開示の実施形態による、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットホルダアセンブリ例の断面図である。図3に示すように、ターゲットホルダアセンブリ300は、保護窓310によって保護されたX線生成ターゲット材料305を含むことができる。ターゲットホルダアセンブリ300は、図2に示すウィンドウホルダアセンブリ200の真空窓205に保護窓310が(例えば、1mm以内に)近接できるように凹部を有する構造とすることができる。後述する図4に示すように、ターゲットホルダアセンブリがLINACに取り付けられると、真空窓205とターゲットホルダアセンブリ300のX線生成ターゲット材料305を覆う保護窓310との間に非常にわずかな(例えば、1mm未満の)空隙が残ることができる。X線生成ターゲット材料305は、タングステン、ウラン、金、又はその他の(例えば、40よりも高い)高原子質量材料とすることができる。X線生成ターゲット材料305の寸法については以下で図4に関して説明する。ターゲットホルダアセンブリ300は、ターゲットホルダアセンブリをLINACのハウジングにボルト固定するための一連の取り付け穴340を含むこともできる。クランプ又は溶接などの他の取り付け/結合手段を使用することもできる。ターゲットホルダアセンブリ300は、図1A図1Cのいずれか1つにおいて説明したようにLINACに取り付けることができる。
【0020】
1つの実施形態では、ターゲットホルダアセンブリ300が、ターゲット領域の円周に沿った冷却チャネル315を含む。実施形態では、冷却チャネル315が、冷却チャネル内を流れる冷却剤に接するターゲットホルダアセンブリ300の表面積を増加させるように複雑な幾何学的形状を含むことができる。1つの例では、冷却チャネル315の幾何学的形状が、ターゲット領域の周囲の円形チャネルよりも少なくとも1.5倍長い冷却剤経路長をもたらす。1つの例では、冷却液を水、又は他の高比熱容量の(例えば、1よりも大きな)冷媒タイプの冷却液とすることができる。冷却液は、ターゲットアセンブリ300の冷却剤入口320において受け取られ、ターゲットアセンブリの冷却剤出口325を介して戻すことができる。1つの実施形態では、冷却剤入口320及び冷却剤出口325がLINACに一体的に結合され、LINACから直接冷却剤を受け取ってLINACに直接冷却剤を戻す。冷却剤入口320及び冷却剤出口325は、水密シールを介してLINACに結合することができる。例えば、冷却剤入口320及び冷却剤出口325では、金属製のCリングを使用して水密シールを提供することができる。或いは、冷却剤入口320が冷却剤を受け取り、冷却剤出口325が外部に配線された冷却剤ラインを介して冷却剤を戻すこともできる。
【0021】
1つの実施形態では、ターゲットホルダアセンブリ300が環状凹部330を含むことができる。環状凹部は、X線発生ターゲット材料305において受け取られた電子ビームの電流を測定するトロイダル変流器又はその他の変流器を受け取るような寸法を有することができる。トロイダル変流器を利用することで、たとえLINAC自体に電気的に接地されている(例えば、LINACから電気的に絶縁されていない)場合でもビーム電流の測定を可能にすることができる。1つの例では、測定される電流が100~300mA規模であり、パルス幅が2~6マイクロ秒である。変流器は、電流パルスの形状を測定することもできる。トロイダル変流器は、ビーム電流を測定するために、絶縁体コアに巻き回された導線を含むことができる。例えば、トロイダル変流器は、トロイドコアのサイズ及び使用されるワイヤに応じて10~60ターンを含む(例えば、コアに10~60回巻き回される)ことができる。1つの例では、ワイヤをマグネットワイヤとすることができる。トロイダル変流器は、トロイダル変流器がターゲットホルダアセンブリ300に含まれることを可能にするいずれかの寸法に形成することができる。例えば、トロイドの内径は20mm~40mmとすることができ、外径は25mm~55mmとすることができる。しかしながら、環状凹部330内に収まるいずれかの適切な寸法を使用することができる。測定された電流及びパルス形状は、LINACの校正又は診断、エネルギーサーボ制御、又はその他の最適化のために使用することができる。
【0022】
ある実施形態では、X線生成ターゲット材料305をLINACから電気的に絶縁することができる。例えば、ターゲットホルダアセンブリ300をセラミックなどの絶縁体で形成することができる。別の実施形態では、ターゲットホルダアセンブリ300をLINACから電気的に絶縁するために電気的に中性のコーティングで被覆することができる。電流は、X線生成ターゲット材料305に接続されて他端が接地された抵抗器にわたって測定することができる。上述したように、電流及び電流の形状を測定し、あらゆる数のLINAC最適化のために測定値を使用することができる。
【0023】
1つの実施形態では、ターゲットホルダアセンブリ300が、ターゲットホルダアセンブリ300の出口に別の保護窓335を含むことができる。保護窓335は、低原子質量材料で形成することができる。例えば、保護窓335は、ベリリウム、ステンレス鋼、チタン、又は他のいずれかの好適な低原子質量材料で形成することができる。ターゲットホルダアセンブリの出口は、ターゲットホルダアセンブリ300内の円筒形又は円錐形の凹部とすることができる。保護窓335は、凹部内に不活性ガス雰囲気を封入することができる。例えば、不活性ガス雰囲気は、アルゴン、水素、真空、又は他の低酸化性雰囲気とすることができる。不活性ガス雰囲気は、酸化によってキャビティがさらに損耗するのを防ぐことができる。保護窓335は、ターゲットホルダアセンブリ300に溶接することができる。例えば、保護窓335は、気密溶接、レーザー溶接、ろう付け、又は他のいずれかの好適なプロセスを使用して溶接することができる。
【0024】
図4に、本開示の実施形態による、LINACに取り付けられたビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットの例を示す。図示のように、ターゲットホルダアセンブリ400は直接LINAC450に取り付けられる。LINACは、電磁波を介して電子を加速させる内部真空455を保持することができる。LINAC450の出力部には、以下で図5Aに関してさらに詳細に説明するウィンドウホルダアセンブリを取り付けることができる。例えば、ウィンドウホルダアセンブリは、LINAC450の出力部に溶接することができる。ウィンドウホルダアセンブリは、LINAC450を真空に保って電子ビームの比較的スムーズな通過を可能にする、低原子質量材料で形成された真空窓460を含むことができる。ターゲットホルダアセンブリ400は、ターゲットホルダアセンブリ400にしっかりと取り付けられたX線ターゲット材料415を含むことができる。ターゲットホルダアセンブリ400のX線ターゲット材料415の上方には保護窓405を取り付けることができる。X線ターゲット材料415と保護窓405との間には、ターゲット材料415を酸化の影響から保護する不活性非酸化性ガス雰囲気410を密封することができる。例えば、不活性ガス雰囲気は、アルゴン、水素、真空、又はその他の低酸化性雰囲気とすることができる。いくつかの実施形態では、保護ターゲット窓405を取り付けるために使用される溶接又はろう付け技術によって不活性ガス410を生成することができる。
【0025】
X線ターゲット材料415、保護窓405、430及び基板420の厚みは放射長を用いて表すことができる。放射長は、高エネルギー電子が制動放射相互作用によってそのエネルギーの1/eを除く全てを失うのに要する平均距離である。従って、放射長は、ターゲット材料(例えば、ターゲット材料の原子質量)の固有の特性である。一般に、原子質量が大きいほど対応する放射長は短くなる。さらに、ターゲット材料の放射長の実際の測定厚は材料によって異なることができる。例えば、タングステンの放射長は約3.5mmであり、金の放射長は3.34mmである。1つの実施形態では、ターゲット材料の厚みがタングステンで0.01~0.2放射長である。従って、タングステンのターゲット材料は0.035mm~0.7mmの厚みを有することができるのに対し、金のターゲット材料は0.033mm~0.67mmの厚みを有することができる。同様に、使用される他のいずれかのターゲット材料も0.01~0.2放射長の厚みを有することができるが、実際の厚みは使用される材料の放射長に従って変化することができる。
【0026】
別の実施形態では、ターゲット材料の厚みがタングステンで0.25~2放射長であることができる。従って、タングステンのターゲット材料は0.9mm~7mmの厚みを有することができるのに対し、金のターゲット材料は0.8mm~6.7mmの厚みを有することができる。同様に、使用される他のいずれかのターゲット材料も0.25~2放射長の厚みを有することができるが、実際の厚みは使用される材料の放射長に従って変化する。
【0027】
1つの実施形態では、保護窓が、材料の放射長に対して薄いもの(例えば、薄い箔)であることができ、低原子質量(例えば、30未満)を有することができる。例えば、窓は、ベリリウム、チタン、ステンレス鋼、炭素箔、又はその他の同様の材料で形成することができる。1つの例では、材料が、電子が比較的スムーズに通過するように10-5放射長規模の厚み(例えば、ベリリウムでは0.025~0.075mm、チタンでは0.0025~0.0075mm、炭素箔では0.014~0.42mm)を有することができる。
【0028】
基板420は、LINAC450によって生成された電子ビームからの過剰電子がLINAC450及びターゲットアセンブリ500から流出するのを阻止する厚みであることができる。一方で、基板420は、X線ターゲットによって生成されたX線が比較的スムーズに通過できるほど十分に薄く、低原子質量を有することもできる。1つの例では、基板420が銅で形成され、少なくとも0.1放射長(すなわち、少なくとも1.4mm)の厚みを有する。
【0029】
LINACの出力部における真空窓455及び保護ターゲット窓405は、電子ビームがターゲット材料415に通過できるように直接位置合わせすることができる。ターゲットホルダアセンブリ400は、ターゲット材料415の真下に存在する基板420をさらに含むことができる。基板420は、銅又は低原子質量(例えば、30未満)の他の材料で構成することができ、LINAC450の電子ビームからの過剰電子が通過するのを防ぐのに十分な厚みを有しながら、X線放射線が通過できるほど十分に薄いものであることができる。また、基板420の下方には、ターゲットホルダアセンブリ400の中空円錐構造である出口キャビティが存在することができる。出口キャビティは、ターゲット材料415によって生成された放射線を治療対象の方向に向けることができる。酸化によるターゲットホルダアセンブリ400のさらなる損耗を防ぐために、出口キャビティの開口部に別の保護窓430を取り付けて、別の非酸化性ガス425雰囲気を内部に閉じ込めることができる。例えば、不活性ガス雰囲気は、アルゴン、水素、真空、又はその他の低酸化性雰囲気とすることができる。1つの例では、ターゲットホルダアセンブリ500が、X線治療ビームと共に過剰電子がターゲットホルダアセンブリ400から流出するのを阻止するようにアルミニウムなどのプラグ材料435を含む。
【0030】
図5A図5Dに、現場交換可能なターゲットアセンブリの実施形態例を示す。ターゲットアセンブリ500は、冷却剤入口505及び冷却剤出口510を含むことができる。冷却剤入口及び出口は、X線ターゲット520及び基板から熱を抽出する冷却液が流れることができる冷却チャネル515に結合することができる。ターゲットアセンブリ500は、ターゲットアセンブリ500をLINACに取り付けるボルトを受け取るための1又は2以上の取り付け穴530をさらに含むことができる。ある実施形態では、ターゲットアセンブリ500が取り付け穴530を含まず、代わりにクランプ、溶接などの別の手段によって取り付けることができる。
【0031】
冷却剤入口505及び冷却剤出口510の各々は、液体冷却剤がLINACから冷却剤入口505に流れて冷却剤出口510からLINACに戻るための水密シールを提供するシーリングインサート(sealing inserts)を含むことができる。冷却剤は、X線ターゲット520の円周に沿って冷却剤を導く冷却チャネル515内を流れることができる。図示のように、冷却チャネル515は、X線ターゲット520の周囲の蛇行形状とすることができる。蛇行形状は、ターゲット520を取り囲む導電性基板に接する冷却剤の表面積を増やし、従って導電性基板から冷却剤への熱伝達を高めることができる。さらに、蛇行チャネルは、ターゲット520から冷却チャネル515を流れる冷却剤に熱を引き込むヒートシンクとして機能するフィン様構造を提供することができる。いくつかの実施形態では、ターゲットアセンブリ500がLINACに一体的に取り付けられ、冷却剤入口505においてLINACから冷却剤を受け取り、熱くなった冷却剤を冷却剤出口510を介してLINACに戻す。
【0032】
冷却チャネル515は、高アスペクト比の幅対高さを有することができる(例えば、冷却チャネル515は、接触面から冷却剤への熱伝達のための表面積を広くするように高く細いものであることができる)。実施形態では、冷却チャネル515が、冷却剤の流れに乱流を生じさせるためにライフリング(rifling)及び/又はスクリューを含むことができる。実施形態では、冷却チャネル515が、冷却剤経路を円形チャネルの長さの最大1.5倍以上に増加させるいずれかの複雑な幾何学的形状であることができる。
【0033】
最後に、ターゲットアセンブリ500は、パルストロイド(pulse toroid)のための凹部210を含むことができる。例えば、凹部210内にパルストロイドが配置され、X線ターゲット220においてLINACから受け取られるパルス電流を検出することができる。別の実施形態では、X線ターゲット220の取り付け面及び冷却チャネルの内部を高電気抵抗率の材料(すなわち、ダイヤモンド状炭素などの絶縁体)でコーティングすることができる。コーティングは、ターゲット220を電気的に絶縁することができる。ターゲットは、LINACの接地面にさらに接触することができる。従って、ターゲット220と接地との間の電流を測定することができる。このようにして、ビーム電流を直接かつ正確に測定することができる。
【0034】
ターゲットホルダアセンブリ500は、ターゲット材料520が取り付けられた基板の真下に出口キャビティを含むことができる。出口キャビティは、別の保護窓によって取り囲むことができる。出口キャビティの取り囲まれた部分は、酸化による損傷を防ぐように非酸化性の不活性ガス雰囲気を含むことができる。
【0035】
図6に、ビーム電流モニタリング一体型の現場交換可能な使い捨て式の熱的に最適化されたX線ターゲットを使用する方法例を示す。図6を参照すると、方法600には、様々な実施形態によって使用される機能例を示す。方法600では特定の機能ブロック(「ブロック」)を開示するが、このようなブロックは一例である。すなわち、実施形態は、他の様々なブロック、又は方法600において記載するブロックの変形例の実行にも上手く適合する。なお、方法600のブロックは、提示するものとは異なる順序で実行することもでき、また方法600のブロックを全て実行できるとは限らないと理解されたい。
【0036】
方法は、ターゲットアセンブリを直線加速器のハウジングに外部的に結合するブロック602から開始する。ターゲットアセンブリは、直線加速器によって加速された電子がぶつかった時に放射線を生成するターゲット材料と、ターゲット材料が取り付けられるターゲットホルダアセンブリとを含むことができ、ターゲットホルダアセンブリは、ターゲット材料の周辺部に沿って配置された蛇行冷却チャネルと、ターゲット材料を覆ってターゲットホルダアセンブリに結合された保護窓とを含む。1つの例では、ターゲットホルダアセンブリが直線加速器に取り付けられると、ターゲットホルダアセンブリに結合された保護窓が、直線加速器の出力部における真空ウィンドウと整列する。
【0037】
ブロック604において、電子ビームを加速させてターゲットアセンブリのターゲット材料にぶつける直線加速器を使用して放射線の治療ビームを生成する。ブロック606において、電子ビームの電流をモニタする。1つの例では、ターゲット材料を電気的に絶縁してターゲット材料における電流を直接測定することによって電流がモニタされる。別の例では、ターゲットホルダアセンブリ内に配置されたトロイダル変流器によって電流がモニタされる。なお、方法600は、図1図5Dに関して上述した説明及び/又は実施形態のいずれかに関連して実行することができる。
【0038】
上記の説明から明らかなものとして特に明記していない限り、「受け取る(receiving)」、「位置付ける(positioning)」、「実行する(performing)」、「放出する(emitting)」、又は「引き起こす(causing)」などの用語は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理量(例えば、電子量)として表されるデータを操作して、コンピュータシステムのメモリ、レジスタ又はその他のこのような情報記憶装置又はディスプレイ装置内の物理量として同様に表される他のデータに変換するコンピュータシステム又は同様の電子コンピュータ装置の動作及びプロセスを意味することができると理解されるであろう。本明細書で説明した方法は、コンピュータソフトウェアを使用して実装することができる。認可規格に準拠するプログラミング言語で書かれている場合、これらの方法を実行するように設計された一連の命令は、様々なハードウェアプラットフォーム上での実行、及び様々なオペレーティングシステムに接続するインターフェイスのためにコンパイルすることができる。また、本開示の実装は、いずれかの特定のプログラミング言語を参照して説明したものではない。本開示の実装は、様々なプログラミング言語を使用して実装することができると理解されるであろう。
【0039】
なお、本明細書で説明した方法及び装置は、医療診断撮像及び医療診断治療との使用のみに限定されるものではない。別の実装では、本明細書における方法及び装置を、工業用撮像及び材料の非破壊検査などの医療技術分野以外の用途で使用することもできる。このような用途では、例えば「治療」は、ビーム(例えば、放射線、音響など)の適用などの、治療計画システムによって制御される動作の遂行を一般に意味することができ、「ターゲット」は、非解剖学的物体又は領域を意味することができる。
【0040】
上述した本明細書では、特定の例示的な実装を参照しながら本開示を説明した。しかしながら、添付の特許請求の範囲に示す本開示の幅広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、これらの実装に様々な修正及び変更を行えることが明らかであろう。従って、本明細書及び図面は限定的な意味ではなく例示的な意味で捉えるべきものである。本明細書全体を通じた「1つの実施形態」又は「ある実施形態」についての言及は、その実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて様々な箇所に見られる「1つの実施形態では」又は「ある実施形態では」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を意味するわけではない。
【0041】
上述した本発明の例示的な実装の説明は、要約書に記載した内容を含めて、完全であること、或いは開示した正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。本明細書では、本発明の特定の実施形態及び具体例を例示目的で説明したが、当業者であれば認識するように、本発明の範囲内で様々な同等の修正が可能である。本明細書で使用した「例」又は「例示的な」という単語は、例、事例又は例示としての役割を果たすことを意味する。本明細書において「例」又は「例示的な」として説明するあらゆる態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましいもの又は有利なものとして解釈すべきではない。むしろ、「例」又は「例示的な」という単語の使用は、本概念を具体的に示すことを意図するものである。本出願で使用する「又は(or)」という用語は、排他的「or」ではなく包含的「or」を意味するように意図される。すなわち、別途明示していない限り、又は文脈から明らかでない限り、「XはA又はBを含む」という表現は、自然な包含的置換のいずれかを意味するように意図される。すなわち、XがAを含む場合、XがBを含む場合、或いはXがAとBの両方を含む場合、「XはA又はBを含む」はこれらの事例のいずれの下でも満たされる。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する「a」及び「an」という冠詞は、単数形を対象にしていることを別途明示していない限り、又は文脈から明らかでない限り、一般に「1又は2以上」を意味すると解釈すべきである。さらに、全体を通じて、「ある実施形態」又は「1つの実施形態」、或いは「ある実装」又は「1つの実装」という用語は、同じ実施形態又は実装を意味するものとして説明していない限り、そのように意図するものではない。さらに、本明細書で使用する「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」などの用語は、異なる要素同士を区別するラベルとして意図するものであり、必ずしもこれらの数字指定に従う順序を意味するとは限らない場合もある。
【符号の説明】
【0042】
300 ターゲットホルダアセンブリ
305 X線生成ターゲット材料
310 保護窓
315 冷却チャネル
320 冷却剤入口
325 冷却剤出口
330 環状凹部
335 保護窓
340 取り付け穴
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6