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特許7564945発泡気孔を有する拘束型制振金属板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】発泡気孔を有する拘束型制振金属板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20241002BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241002BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241002BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F16F15/02 Q
B32B5/18
B32B27/32 Z
B32B15/085 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023516577
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 KR2021012422
(87)【国際公開番号】W WO2022065773
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0124880
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジン-テ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ヤン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ハ-ナ
(72)【発明者】
【氏名】カン、 デ-ギュ
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205886(JP,A)
【文献】特開2009-090522(JP,A)
【文献】特開2000-225664(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0045048(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0058789(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
B32B 5/18
B32B 27/32
B32B 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部金属板;
前記下部金属板上に接合された発泡樹脂フィルム;及び
前記発泡樹脂フィルムに接合されている上部金属板を含み、
前記発泡樹脂フィルムは、自体重量%で、数平均分子量8000~12000の熱可塑性ポリエチレン樹脂:85~95%、ステアリン酸:0.1~1%、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂:1~5%、発泡剤:0.5~5%、ジクミルパーオキサイド架橋剤:1~4%、発泡助剤ZnO:0.5~2%を含む、発泡気孔を有する拘束型制振金属板。
【請求項2】
前記発泡剤はアゾジカルボンアミド系の粉末発泡剤である、請求項1に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板。
【請求項3】
前記発泡剤は熱可塑性アクリロニトリル系樹脂セル構造内に発泡剤が入っているカプセル発泡剤である、請求項1に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板。
【請求項4】
前記発泡樹脂フィルムの厚さは50~250μmの範囲を有する、請求項1に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板。
【請求項5】
前記下部金属板及び前記上部金属板のそれぞれは、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、及びアルミニウム板のうち選択された一つである、請求項1に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板。
【請求項6】
自体重量%で、数平均分子量8000~12000の熱可塑性ポリエチレン樹脂:85~95%、ステアリン酸:0.1~1%、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂:1~5%、発泡剤:0.5~5%、ジクミルパーオキサイド架橋剤:1~4%、発泡助剤ZnO:0.5~2%を含む発泡樹脂フィルムを設ける工程;
前記設けられた発泡樹脂フィルムを2つの金属板の間に積層した後、その積層体を130~150℃の温度に維持されている第1加熱領域を通過させながらロール圧着することで接合させる工程;
前記ロール圧着することで接合された積層体を150~190℃の温度範囲に維持されている第2加熱領域に通過させることで発泡剤を発泡させて前記発泡樹脂フィルム内に発泡気孔を形成する工程;及び
前記発泡気孔が形成された積層体を常温に冷却する工程;を含む、発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法。
【請求項7】
前記発泡剤はアゾジカルボンアミド系の粉末発泡剤である、請求項6に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法。
【請求項8】
前記発泡剤は熱可塑性アクリロニトリル系樹脂セル構造内に発泡剤が入っているカプセル発泡剤である、請求項6に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法。
【請求項9】
前記発泡樹脂フィルムの厚さは50~250μmの範囲を有する、請求項6に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法。
【請求項10】
前記第2加熱領域を通過するときのラインspeedを0.5~5m/minに制御する、請求項6に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法。
【請求項11】
前記金属板は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、及びアルミニウム板のうち選択された一つである、請求項6に記載の発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡気孔を有する拘束型制振金属板製造に関するものであり、より詳細には、金属板間に発泡樹脂フィルムを接合した後、これを発泡して冷却することで振動制御、騒音遮断の効果を有するようにする発泡気孔を有する拘束型制振金属板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に制振鋼板は、2枚の鋼板間に樹脂を積層して製造される拘束型複合鋼板の形態と、1枚の鋼板に樹脂をコーティングするか、積層した非拘束型の鋼板で騒音や振動を遮断する役割を果たす非拘束型制振鋼板に大別される。上記非拘束型の場合、2層の構造で製造工程が簡単であるのに対し、拘束型に比べて制振効果が比較的劣り、制振鋼板としての性能が劣ることから、ほとんどの制振鋼板は拘束型の構造を有している。
【0003】
すなわち、拘束型と非拘束型の制振効果を示す形態に差異があり、拘束型の制振鋼板の場合には、鋼板に加えられる外部の振動や騒音エネルギーを鋼板間に積層された樹脂のせん断変形によって熱エネルギーとして吸収して振動や騒音を減少させる役割を果たすものである。これに対し、非拘束型の制振鋼板の場合には、鋼板に加えられる外部の振動や騒音エネルギーを鋼板にコーティングされた樹脂の伸縮変形によって振動エネルギーを熱エネルギーとして吸収して振動や騒音を減少させる役割を果たすものである。
【0004】
このような制振鋼板は、冷蔵庫、洗濯機、空気清浄機のような騒音が多く発生する家電製品の外板、自動車騒音の主原因であるエンジン部分のオイルファン、ダッシュパネルなどの自動車部品、精密機器、建築資材など、非常に様々な使用分野での活用が可能である。
【0005】
ところで、従来の制振鋼板は、鋼板にポリエチレンのような熱可塑性高分子樹脂をサンドイッチパネルの形態で挿入するか、液状の高分子樹脂を塗布して制振性能を実現した。すなわち、代表的にはポリエステル(日本特開昭51-93770号)、ポリアミド(日本特開昭56-159160号)、エチレン/α-オレフィン、架橋ポリオレフィン(日本特開昭59-152847号)などの高分子樹脂を用いて制振性能を確保することで知られているが、上述の騒音が多く発生する家電製品や自動車などの適用には限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、制振性能の向上のために単に高分子樹脂の粘弾性性質のみを利用するのではなく、発泡気孔の効果を活用して高分子樹脂の粘弾性性質と発泡気孔の振動/騒音遮断の効果を通じて制振性能及び遮音性能を実現して製品の振動/騒音を最小化することができる拘束型制振金属板を提供することを目的とする。
【0007】
なお、本発明で解決しようとする技術的課題は、上記で言及した技術的課題に限定されず、言及しないまた他の技術的課題は、下記の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、
下部金属板;
上記下部金属板上に接合された発泡樹脂フィルム;及び
上記発泡樹脂フィルムに接合されている上部金属板を含み、
上記発泡樹脂フィルムは、自体重量%で、数平均分子量8000~12000の熱可塑性ポリエチレン樹脂:85~95%、ステアリン酸:0.1~1%、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂:1~5%、発泡剤:0.5~5%、ジクミルパーオキサイド架橋剤:1~4%、発泡助剤ZnO:0.5~2%を含む発泡気孔を有する拘束型制振金属板に関するものである。
【0009】
また、本発明の他の側面は、
上記のような発泡樹脂組成を有する発泡樹脂フィルムを設ける工程;
上記設けられた発泡樹脂フィルムを2つの金属板の間に積層した後、その積層体を130~150℃の温度に維持されている第1加熱領域を通過させながらロール圧着することで接合させる工程;
上記ロール接合された積層体を150~190℃の温度範囲に維持されている第2加熱領域を通過させることにより発泡剤を発泡させて上記発泡樹脂フィルム内に発泡気孔を形成する工程;及び
上記発泡気孔が形成された積層体を常温に冷却する工程;を含む発泡気孔を有する拘束型制振金属板の製造方法に関するものである。
【0010】
上記発泡剤は、アゾジカルボンアミド系の粉末発泡剤であってもよい。
【0011】
上記発泡樹脂フィルムの厚さは50~250μmの範囲を有することができる。
【0012】
上記金属板は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板及びアルミニウム板の中から選択された一つであってもよい。
【0013】
上記連続製造工程においてラインspeedを0.5~5m/minに制限することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上述のような構成の本発明は、金属板間に発泡樹脂フィルムを接合した後、発泡剤を発泡させて冷却することで振動制御、騒音遮断の効果を有するようにする発泡気孔を有する拘束型制振金属板を効果的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例による拘束型制振金属板の製造工程図である。
図2】本発明の制振鋼板の製造工程別の金属板の断面を示した断面概略図である。
図3】制振性能を測定するModal評価法を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を説明する。
【0017】
本発明は、発泡気孔をコーティング塗膜に適用して金属板の制振性能を向上させる技術であり、具体的には、発泡気孔を騒音/振動発生源に露出させて発生される騒音/振動が気孔から遮断されるようにして金属板の制振性能を向上することを特徴とする。
【0018】
このような本発明の拘束型制振金属板は、下部金属板;上記下部金属板上に接合された発泡樹脂フィルム;及び上記発泡樹脂フィルムに接合されている上部金属板を含み、上記発泡樹脂フィルムは、自体重量%で、数平均分子量8000~12000の熱可塑性ポリエチレン樹脂:85~95%、ステアリン酸:0.1~1%、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂:1~5%、発泡剤:0.5~5%、オキシド架橋剤:1~4%、発泡助剤であるZnO:0.5~2%を含む。
【0019】
まず、本発明の拘束型制振金属板は、発泡樹脂フィルムの両面に接合される上部及び下部金属板を含む。本発明において、上記上部及び下部金属板は、それぞれ冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板及びアルミニウム板の中から選択された一つであってもよく、上記金属板の厚さはそれぞれ0.2~2.0mmであってもよい。
【0020】
そして、本発明の制振金属板は、上記2つの金属板の間に形成されている発泡樹脂フィルムを含む。上記発泡樹脂フィルムは、自体重量%で、数平均分子量8000~12000の熱可塑性ポリエチレン樹脂:85~95%、ステアリン酸:0.1~1%、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂:1~5%、発泡剤:0.5~5%、オキシド架橋剤:1~4%、発泡助剤であるZnO:0.5~2%を含む。以下において、「%」は他に表示されていない限り、「重量」を意味する。
【0021】
本発明の発泡樹脂フィルムは、自体重量%で、数平均分子量8000~12000の熱可塑性ポリエチレン樹脂85~95%を含む。数平均分子量が8000未満の場合、フィルムが軟質化しすぎて制振鋼板として、強度維持が難しいのに対し、数平均分子量が12000を超過する場合、硬すぎて発泡気孔形成に困難である場合がある。また、本発明の発泡樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂を85~95%の範囲で含むが、この含有量の範囲から外れる場合、その他の添加物の適正量が不足して制振鋼板としての役割が果たせないことがある。
【0022】
また、本発明の発泡樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂の溶融時のポリエチレンの溶融作業性を高めるために、ステアリン酸を0.1~1%の範囲で含む。ステアリン酸を0.1%未満に添加する際には、ポリエチレン樹脂の溶融作業性に役立たず、これに対し、1%を超過する際には、ポリエチレンフィルムの物性を阻害させることができる。
【0023】
また、本発明の発泡樹脂フィルムは、上部及び下部の金属板とポリエチレンフィルムとの接着性を向上させるために、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂を11~5%の範囲で含む。SEBS樹脂の含有量が1%未満であると、接着性の向上に影響が少ないのに対し、5%を超過すると、フィルムの軟質度が高く、経済性が不利であることがある。
【0024】
また、本発明の発泡樹脂フィルムは、気孔形成のための発泡剤を0.1~5%の範囲で含む。上記発泡剤の含有量が0.1%未満であると、ガスの発生量が不足し、5%を超過すると、発生ガス量の増大により発泡される効率は良いが、制振鋼板としての強度維持が難しいことがある。
【0025】
本発明では、上記発泡剤として、下記表1のような粉末発泡剤であるアゾジカルボンアミド(Azodicarboneamide)を用いることができる。
【0026】
また、上記発泡剤として、下記表2のような熱可塑性アクリロニトリル系樹脂セル構造内に発泡剤が入っているカプセル発泡剤を用いることもできる。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
また、本発明の発泡樹脂フィルムは、プラスチック樹脂内に発生した発泡気孔の形状を維持させるために架橋剤を含み、好ましくは下記表3のようなジクミルパーオキサイド(Dicumylperoxide)を用いるものである。このとき、添加される含有量は1~4%に制限することが好ましい。その含有量が1%未満に添加される際には、添加量の不足により架橋剤としての役割が難しいのに対し、4%を超過すると架橋度の増加により発泡セルが形成される前に架橋される部分が発生して発泡率の低下を招くことがある。
【0030】
【表3】
【0031】
そして本発明の発泡樹脂フィルムは、発泡助剤であるZnOを0.5~2%を含む。
【0032】
制振鋼板の製造時、発泡樹脂フィルム内の発泡のために200℃以上の温度で長時間発泡を持続すると、金属板素材の剛性の変化が発生するか、高分子樹脂が熱により損傷されて経済的に不利であるため、発泡温度を最大限に下げる必要がある。一般的に、発泡剤であるアゾジカルボンアミドの分解温度は205℃であるが、ZnOを添加する際には150~170℃で発泡剤が分解するため、加工温度の損失を防ぐことができ、架橋剤の架橋役割を向上させることができる。
【0033】
したがって、本発明の発泡樹脂フィルムは、発泡剤の分解温度を下げるために発泡助剤としてZnOを0.5~2%を含み、その添加量が0.5%未満であると、分解温度を下げる役割が不足し、2%を超過すると、添加されたZnOが発泡気孔形成に障害となり得る。
【0034】
次に、本発明の拘束型制振金属板の製造方法について説明する。
【0035】
本発明の拘束型制振金属板の製造方法は、上記のような発泡樹脂組成を有する発泡樹脂フィルムを設ける工程;上記設けられた発泡樹脂フィルムを2つの金属板の間に積層した後、その積層体を130~150℃の温度に維持されている第1加熱領域を通過させながらロール圧着することにより接合させる工程;上記ロール接合された積層体を150~190℃の温度範囲に維持されている第2加熱領域を通過させることで発泡剤を発泡させて上記発泡樹脂フィルム内に発泡気孔を形成する工程;及び上記発泡気孔が形成された積層体を常温に冷却する工程;を含む。
【0036】
図1は、本発明の一実施例による拘束型制振金属板の製造工程図である。
【0037】
図1に示されたように、本発明の拘束型制振金属板の製造方法は、発泡フィルム製造工程、フィルム接合工程、フィルム発泡工程及び冷却圧縮工程を順次的に含む。
【0038】
まず、本発明では、上述したような組成を有する高分子樹脂と発泡物質との混合から構成された組成物を熱による溶融方式でmixerにて均一に混合した後、押出機を介してフィルム化させる。
【0039】
具体的には、これらの組成物の混合順序は、数平均分子量8000~12000のポリエチレン樹脂を140℃で先に溶かし、ここにステアリン酸(stearic acid)を重量%で0.1~1%の範囲で混合する。そして、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂1~5%を混合する。次いで、発泡剤0.1~10%と発泡助剤であるZnOを0.5~2%混合した後、最後に架橋剤としてdicumyl peroxideを1~4%の範囲で添加して均一に混合して発泡樹脂組成物を製造する。そして、配合された樹脂組成物を押出機のt-ダイを介してフィルムを製造するようになるが、フィルム製造時に発泡は行われてはいけない。
【0040】
本発明では、上記フィルムの厚さを50~250μmの範囲に制御することが好ましい。フィルムの厚さが50μm未満であると、フィルム厚さが薄すぎて制振鋼板の制振能が不足し、250μmを超過すると、制振能には優れるが、フィルム厚さが厚すぎて加工性が良くないことがある。
【0041】
続いて、本発明では、上記設けられた発泡樹脂フィルムを2つの金属板の間に積層した後、その積層体を130~150℃の温度に維持されている第1加熱領域を通過させながらロール圧着することで接合させる。すなわち、金属板と金属との間にフィルムを挿入した後、高分子樹脂の融点以上の温度の第1加熱領域でロール圧着の方式で圧着されながら金属と発泡フィルムが接着するようになる。
【0042】
このとき、本発明では、上記製造された発泡樹脂フィルムを金属板間に挿入してポリエチレン樹脂の融点以上である130~150℃の第1加熱領域を通過させながらロール圧着により接着させる連続製造工程を用いる。
【0043】
そして、本発明では、上記ロール接合された積層体を150~190℃の温度範囲に維持されている第2加熱領域を通過させることで、発泡剤を発泡させて上記発泡樹脂フィルム内に発泡気孔を形成する。
【0044】
すなわち、上記ロール接合された積層体を150~190℃の第2加熱領域を通過させると、発泡剤が分解しながらフィルムの発泡が行われるようになる。このとき、圧着ロールはロールの重量のみで圧着されて、発泡が十分に行われることができる。
【0045】
本発泡工程では、発泡剤が分解される温度範囲の第2加熱領域でpre-mixされた高分子フィルムの発泡剤が分解されながら、金属板間で高分子フィルムの発泡が行われる。本発明において、発泡気孔の生成方式は、熱可塑性高分子樹脂に化学的発泡方式により、発泡剤を高分子樹脂に均一に混合した後、一定温度で発泡剤を分解して発生されたガスで発泡する方式を採択した。
【0046】
最後に、本発明では、上記発泡気孔が形成された積層体を常温に冷却する。上述した発泡樹脂フィルムの発泡工程後、冷却ゾーンを通過する際の温度は常温であり、製品の必要厚さに応じて圧着ロールのギャップを調節して製品を製造する。通常的に、発泡前のフィルム厚さの100%~300%が制振鋼板としての制振性能及び強度維持に最適であると判断される。
【0047】
図2は、本発明の制振鋼板の製造工程別の制振金属板の断面を示す断面概略図である。
【0048】
一方、本発明では、上述した制振金属板の連続製造工程におけるラインスピードは、毎分0.5~5m/minで管理することが好ましい。0.5m/min未満の速度で進行される場合、生産性が低下するおそれがあり、5m/min超過時には、ポリエチレン樹脂層の発泡気孔形成に困難があり得る。
【実施例
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0050】
(実施例)
数平均分子量8000~12000のポリエチレン樹脂を140℃で溶かした後、これにステアリン酸(stearic acid)を重量%で0.1~1%の範囲で混合した。そして、SEBS(Styren-ethylen-butadiene-styrene)樹脂1~5%を混合し、次いで、ここに粉末発泡剤であるアゾジカルボンアミドと発泡助剤であるZnOを0.5~2%混合し、最後に、架橋剤としてdicumyl peroxideを1~4%の範囲で添加して均一に混合して発泡樹脂組成物を製造した。このとき、上記発泡剤の含有量は、下記表3-4のようにそれぞれ異ならせて発泡樹脂組成物をそれぞれ用意した。そして、上記配合された樹脂組成物を押出機のt-ダイを介して100μm厚さの発泡樹脂フィルムを製造した。
【0051】
そして、上記のように製造された発泡樹脂フィルムを0.5Tの亜鉛めっき鋼板間に挿入積層した後、その積層体を130~150℃の温度に維持されている第1加熱領域を通過させながらロール圧着することで相互接合させた。この後、上記ロール接合された積層体を150~190℃の温度範囲に維持されている第2加熱領域を通過させることで発泡剤を発泡させて、上記発泡樹脂フィルム内に発泡気孔を形成し、最後に上記発泡気孔が形成された積層体を常温に冷却して最終拘束型制振鋼板を製造した。
【0052】
このように製造された各制振鋼板について、発泡剤含有量に応じた発泡フィルムの発泡性能を評価し、その結果を下記表4に示した。
【0053】
また発泡剤含有量に応じた損失係数(Loss factor)を測定し、その値を下記5に示した。制振性能は、材料に振動が加わったときに振動エネルギーを熱エネルギーに変換させる能力を示した量である。このような制振性能の表示量としては、内部摩擦と同じ意味の損失係数ηを用いる。ここで、損失係数ηは、振動系が有する全振動エネルギーをE、1Cycle振動中に熱エネルギーに変換して放散されるエネルギーをΔEとするとき、下記関係式1によって定義される。
[関係式1]
η=ΔE/2πE(η≦1)
【0054】
一方、損失係数測定方法として図3のモーダル(Modal)評価法を用い、モーダル評価法は振動テストの一形態で試験片にハンマーを用いたimpact test方法で、試験片にimpact後に発生される振動特性を用いてloss factorを測定して制振性能を測定する方法である。参考に、損失係数の値は大きいほど制振性能に優れる。
【0055】
そして、製造された各制振鋼板を90°屈曲加工時に樹脂層と亜鉛めっき鋼板の剥離有無と90°形状の維持を目視で観察して制振鋼板の加工性を判断し、その結果を下記表5に示した。一方、このとき、その判断基準を良好(剥離なし、90°形状維持)、普通(剥離なし、90°形状維持が不十分)、不良(剥離)に区分して定めた。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
上記表4-5に示したように、亜鉛めっき鋼板間に本発明の発泡剤成分0.1~5%を満たす発泡樹脂フィルムが接着された制振鋼板の場合、いずれも発泡率が適正範囲(50~300%)であるのみならず、損失係数値が大きく、加工性も優れることが分かる。これに対し、発泡剤の含有量が0.1%未満であると発泡率が不足し、5%を超過すると加工性が良くないことが分かる。
【0059】
以上で説明したとおり、本発明の詳細な説明では、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変形が可能であることはもちろんである。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、これと均等なものによって定められなければならない。
図1
図2
図3