IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許7564953体からの電磁信号を検知する誘導検知システム
<>
  • 特許-体からの電磁信号を検知する誘導検知システム 図1
  • 特許-体からの電磁信号を検知する誘導検知システム 図2
  • 特許-体からの電磁信号を検知する誘導検知システム 図3
  • 特許-体からの電磁信号を検知する誘導検知システム 図4
  • 特許-体からの電磁信号を検知する誘導検知システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】体からの電磁信号を検知する誘導検知システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20210101AFI20241002BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61B5/05
A61B5/11 110
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023532495
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021082412
(87)【国際公開番号】W WO2022117377
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】20211050.8
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スターンブリンク ティム パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ドーデマン ゲラルドゥス ヨハネス ニコラース
(72)【発明者】
【氏名】ピータース ワウテル ヘルマン
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-151458(JP,A)
【文献】国際公開第2020/126878(WO,A1)
【文献】特表2020-505970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内へと伝播される電磁励起信号に応答して体から放出される電磁信号を検知する生理パラメータ誘導検知システムであって、前記生理パラメータ誘導検知システムが、
前記体から放出される前記電磁信号と誘導結合するためのループ共振器と、
前記ループ共振器を含む発振回路であって、前記ループ共振器を励起して、前記体内へと伝播する前記電磁励起信号を生成する発振回路と、
放出された前記電磁信号の振幅を測定する振幅測定回路と、
測定された前記振幅をデジタル化し、第1のビット数又はトリット数のデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記アナログ-デジタル変換器の連続出力を組み合わせて、前記第1のビット数又はトリット数よりも大きい第2のビット数又はトリット数の分解能の出力値を導出するカウンタと、
前記出力値に基づいて前記発振回路の前記振幅を制御するフィードバック制御器と
を備える、生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項2】
前記アナログ-デジタル変換器によって生成されたデジタル信号が、1ビット信号を含む、請求項1に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項3】
前記アナログ-デジタル変換器によって生成されたデジタル信号が、2ビット信号を含む、請求項1に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項4】
前記アナログ-デジタル変換器によって生成されたデジタル信号が、1トリット信号を含む、請求項1に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項5】
前記振幅測定回路が、複素反射インダクタンスの虚部を測定する回路を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項6】
前記振幅測定回路が、ピーク検出回路を備える、請求項5に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項7】
前記フィードバック制御器が、デジタル-アナログ変換器を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項8】
前記フィードバック制御器が、前記発振回路内のバイアス電流を制御する回路を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項9】
前記バイアス電流を制御する回路が、前記発振回路に電流を注入するカレント・ミラー回路を備える、請求項8に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項10】
前記発振回路が、駆動トランジスタを備え、前記バイアス電流を制御する回路が、前記駆動トランジスタに損失を導入する回路を備える、請求項8に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項11】
前記ループ共振器はループ・アンテナを備え、
前記ループ・アンテナが、ループ・コンデンサを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項12】
前記電磁励起信号の周波数が30MHzから1000MHzまでである、請求項1から11のいずれか一項に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項13】
一定時間にわたる前記出力値を処理して1つ又は複数の生理パラメータを導出する信号処理手段を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項14】
前記生理パラメータが、心拍数及び/又は呼吸数を含む、請求項13に記載の生理パラメータ誘導検知システム。
【請求項15】
体内に伝播される電磁励起信号に応答して体から放出される電磁信号を検知する方法であって、前記方法が、
ループ共振器を含む発振回路を制御することによって、前記ループ共振器を励起して前記体内へと伝播する前記電磁励起信号を生成するステップと、
前記電磁励起信号に応答して前記体から放出される電磁信号の振幅を測定するステップと、
測定された前記振幅を、アナログ-デジタル変換器を使用して、第1のビット数又はトリット数のデジタル信号に変換するステップと、
カウンタを使用して、前記アナログ-デジタル変換器の連続出力を組み合わせて、前記第1のビット数又はトリット数よりも大きい第2のビット数又はトリット数の分解能の出力値を導出するステップと、
前記出力値に基づいて前記発振回路の前記振幅を制御するステップと
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体からの電磁信号を検知する誘導検知システムに関し、詳細には、電磁信号の検知ために体と誘導結合するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的活動を測定するセンサは、キモグラフィ・センサと呼ばれる。キモグラフィ生体センサの例としては、加速度計に基づくバイオセンサ、経胸壁インピーダンス・バイオセンサ、レーダに基づくバイオセンサ、フォトプレチスモグラフィ・センサなどが挙げられる。
【0003】
誘導センサは、生体信号は動きに対する耐性が比較的あるので、患者モニタリングの分野で変革をもたらす可能性を有している。誘導検知は、ウェアラブル患者モニタ、動きに対する耐性のある呼吸測定、非接触型患者モニタリング、及びスポットチェック測定における適用例を有する。このように、誘導検知は一般に、体の特性を非侵襲的に検査する手段を提供する。
【0004】
1つの有利な適用分野では、誘導検知は、生理特性、特に心臓及び肺の動態を非侵襲的に検査する手段として使用することができる。誘導検知は、磁気誘導に基づき、導電検知及び容量検知よりも有利な点をいくつか有する。
【0005】
生体インピーダンス測定などの導電検知と比べた利点は、粘着性の電極が不要であり、検知は非接触で、及び/又は繊維製品及びプラスチックなどの非導電性材料を通じて行うことができることである。
【0006】
容量検知と比べた利点は、誘導検知は、電界ではなく磁界に基づき、その結果、皮膚レベルで正に発生している変化とは対照的に、体内のより深い浸透深さでの変化に対して高感度であることである。これは、磁界は電界よりも体内により深く浸透するので、磁界を使用して、体内のより深くの特性変化を測定できることに対し、電界は、皮膚特性(例えば、誘電率)の変化又は皮膚(皮膚近接)の運動などの、皮膚の表面における影響を測定することにのみ主に有用であるためである。
【0007】
コイルに基づく誘導センサは、電磁信号(すなわち、電磁波又は振動)と誘導結合することによって機能し、コイルを通る信号の伝播は、コイルを通る電流の変化につながり、この変化を測定し、伝播信号の特性(例えば、周波数スペクトル、振幅及び位相パターンを含む)を検知するのに使用することができる。
【0008】
電磁励起信号を体内に伝播させて体内を検査することができる。励起電磁信号は、体内に磁気誘導を起こし、すなわち、外部磁界を加えることにより体の組織内に渦電流を発生させる。次いで、これらの渦電流が、体外に伝播される電磁信号を生成し、この電磁信号は、コイルによる電磁信号の検知が可能になるやり方で、加えられた磁界と相互作用する。
【0009】
体内の組織の運動は、組織の局所領域のボリュームの変化、及び組織の導電特性又は誘電特性の変化として現れ得る。これらの変化により、電磁刺激に応答して体外に放出される電磁信号の振幅及び/又は位相の変調が発生する。これらの変化をモニタリングすることで、体内での要素の運動及びサイズ変化を検出及び追跡することができ、導電性及び誘電特性の変化を追跡することができる。例えば、心臓の収縮は主に血液の移動として発現し、呼吸は主に肺の導電性の変化として発現する。
【0010】
誘導検知の分野における最近の発明では、心臓及び肺の機械的活動、又は人間の腕の橈骨動脈などの血管の機械的活動の、簡単な非接触測定が可能になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、誘導検知技術の第1の課題は、電磁両立性(EMC)規制に適合することである。特に臨床の現場では、規制が厳重である。臨床現場は、無線周波数(RF)領域におけるアクティブ測定であるので、さらされる電磁界(近傍界)と放出される電磁放射(遠方界)が、常に存在することになる。アンテナ・ループにおけるRF電流は、さらされ、放出される電磁界の主要な発生源である。
【0012】
第2の課題は、電池容量が限られているので、ウェアラブル身体センサの消費電力を最小限に抑えることである。一方、消費電力の低い回路を使用する場合、一般的に信号対ノイズ比が低下し、バイタル・サインを信頼度高く測定するのに十分に良好な信号品質を可能にするように配慮する必要がある。
【0013】
これらの2つの課題に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0015】
本発明の一態様に係る実施例によると、体に伝播される電磁励起信号に応答して体から放出される電磁信号を検知する生理パラメータ誘導検知システムであって、上記生理パラメータ誘導検知システムが、
体から放出される電磁信号と誘導結合するためのループ共振器と、
ループ共振器を含む発振回路であって、ループ共振器を励起して、上記体内へと伝播する電磁励起信号を生成する発振回路と、
放出された電磁信号の振幅を測定する振幅測定回路と、
測定された振幅をデジタル化し、第1のビット数又はトリット数のデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
アナログ-デジタル変換器の連続出力を組み合わせて、第1のビット数又はトリット数よりも大きい第2のビット数又はトリット数の分解能の出力値を導出するカウンタと、
出力値に基づいて発振回路の振幅を制御するフィードバック制御器と
を備える生理パラメータ誘導検知システムが、提供される。
【0016】
検知システムでは、回路から出力される測定信号である出力値の分解能よりも低い分解能を備えた、アナログ-デジタル変換器であるADCが使用される。これは、発振器の振幅を制御するネガティブ・フィードバック・ループの内部にカウンタ(例えば、デジタル積分器)を設けることで可能になる。このように、振幅は制御されるが、発振の振幅に関する所望の情報(体から放出される電磁信号についての情報を伝達する)が、フィードバック制御信号によって捉えられる。
【0017】
このフィードバック制御信号は、発振回路の特定の制御レベルで安定し、この制御レベルは、体から放出される特定の信号レベルに対応する。したがって、フィードバック制御信号は、体から放出される信号の振幅の測定として機能する。
【0018】
第1のビット数は1であってもよい。このように、単純な1ビット量子化器がアナログ-デジタル変換器として使用され、入力と閾値とを比較して0又は1の出力を決定する。
【0019】
第1のビット数は2でもよく、ADCがトライステートADCになるように符号化されている。例えば、「00」は「基準未満」を意味し、「01」及び「10」は「基準と等しい」を意味し、「11」は「基準より大きい」を意味する。
【0020】
代わりに、ADCは、1-トリットADCであってもよく、すなわち、情報の単位として3進数を使用してもよい。これは、トライステートADCを符号化する2ビット版に相当する。
【0021】
振幅測定回路は、複素反射インダクタンスの虚部を測定する回路を含む。
【0022】
フィードバック制御器は、例えば、デジタル-アナログ変換器を含む。したがって、フィードバック制御ループではアナログ制御が使用されている。
【0023】
フィードバック制御器は、例えば、発振回路内のバイアス電流を制御する回路を含む。
【0024】
一例では、バイアス電流を制御するための回路は、発振回路に電流を流すカレント・ミラー回路を含む。
【0025】
別の例では、発振回路は駆動トランジスタを含み、バイアス電流を制御する回路は、駆動トランジスタに損失を導入する回路を含む。
【0026】
このように、バイアス電流制御を実施する様々なやり方が存在する。
【0027】
ループ・アンテナは、発振器の固有共振周波数を設定するための、ループ・コンデンサを含む。
【0028】
電磁励起信号の周波数は、例えば、30MHzから1000MHzまでである。1000MHz未満の周波数を維持することで、浸透深さが最適化される。1000MHzを超える周波数では、生理的パラメータ、例えば、肺又は心臓の信号を測定するには、電磁信号の浸透深さが極端に小さくなり始める。しかしながら、30MHzを超える周波数では、信号強度が大きくなる。
【0029】
一定時間にわたる出力値を処理して、1つ又は複数の生理的パラメータを導出するための信号処理手段が設けられる。例えば、生理的パラメータは、心拍数及び/又は呼吸数を含む。
【0030】
本発明は、体内に伝播される電磁励起信号に応答して体から放出される電磁信号を検知する方法であって、上記方法が、
ループ共振器を含む発振回路を制御することによって、ループ共振器を励起して体内へと伝播する電磁励起信号を生成することと、
電磁励起信号に応答して体から放出される電磁信号の振幅を測定することと、
測定された振幅を、アナログ-デジタル変換器を使用して、第1のビット数又はトリット数のデジタル信号に変換することと、
アナログ-デジタル変換器の連続出力を組み合わせて、第1のビット数又はトリット数よりも大きい第2のビット数の分解能の出力値を導出することと、
出力値に基づいて発振回路の振幅を制御することと
を有する方法も提供する。
【0031】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照することにより明らかになり、理解されるであろう。
【0032】
ここで、本発明をより良好に理解するため、また本発明がどのように実施することができるかをより明確に示すために、例示のみを目的として、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ループ・アンテナ及びコンデンサで構成される共振器の近傍の、対象者の胸部の刺激を示す図である。
図2】従来の振幅測定回路を示す図である。
図3】本発明の振幅測定回路を示す図である。
図4】振幅測定回路の一例を示す図である。
図5】発振器のフィードバック制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図を参照して本発明を説明する。
【0035】
詳細な説明及び具体例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の明細書、添付の特許請求の範囲、及び添付図面からより良好に理解されるであろう。図は単に模式的であり、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、図全体を通して、同じ参照数字が、同じ又は類似の部分を示すために使用されていることを理解されたい。
【0036】
本発明は、生理的パラメータ誘導検知システムを提供する。ループ共振器は、体から放出される電磁信号と誘導結合する。ループ共振器は発振回路の一部を形成し、ネガティブ・フィードバック制御を使用して、測定された発振振幅に基づいて発振回路が制御される。フィードバック制御ループ内では、第1のビット数(又はトリット数)であるアナログ-デジタル変換器が使用され、アナログ-デジタル変換器の連続出力を組み合わせて、第1のビット数(又はトリット数)よりも大きい第2のビット数の分解能の、出力値が導出される。発振回路の振幅のフィードバック制御は、出力値を使用して実現される。
【0037】
本発明を説明する前に、まず、誘導検知の原理の概要について考察する。さらなる詳細は、WO2018/127482で確認することができる。
【0038】
誘導結合システムは、時間変化する磁界にさらされることによる電位差を誘導したコイル又はワイヤを使用している。この原理を使用して、体に近接して配置されたコイルのインダクタンスの変化を検知することによって、体の領域内で生成される電磁信号の強さが測定され、これらの変化は、コイル回路の共振特性の変化に基づいて検出される。
【0039】
いかなる導電体も、自己インダクタンスという特性を示す。自己インダクタンスは導電体の特性であり、これによって、導体を通して流れる電流の変化により、導体に起電力の誘導が生じる。レンツの法則によると、誘導起電力は、それを誘導している電流の変化に抵抗するような方向である。そのため、これは一般に「逆起電力」と呼ばれる。自己インダクタンスは、電流の変化の結果として誘導される磁束により生じると理解することができる(アンペールの法則)。次いで、この磁束は、導体自身と相互作用して逆起電力を誘導する(ファラデーの電磁誘導の法則及びレンツの法則)。
【0040】
回路の自己インダクタンスLと、電圧v(t)と、電流I(t)との間の関係は、次式で表すことができる。
【数1】
【0041】
ファラデーの電磁誘導の法則を使用してv(t)をdΦB/dt(ここで、ΦBは磁束)と表し、(Lを時定数として)時間に関して積分することによって、N巻きのコイルに対する自由空間自己インダクタンスLは次式で表すことができる。
L=NΦ/I (2)
【0042】
共振器は、例えば、単巻きループ・アンテナを備え、電磁信号(波)で体を刺激又は励起し、それらの励起信号に応答して体から放出される信号を検知するために使用される。コイルは交流電流で駆動されて、体内を伝播する励起信号を生成する。
【0043】
コイルを体に近づけたとき、インダクタンスLは、励起信号を適用する結果、刺激される体に誘導される渦電流により生じる、追加的な反射インダクタンス成分Lを取得する。
【0044】
図1は、例として、胸部に電磁信号22を伝播させるように、対象者の胸部16に近接で交流電流で駆動されるループ・アンテナ12を示す、誘導検知システムの動作を示している。ループ・アンテナは、ループ共振器として機能する。ループ・アンテナは、固有共振周波数を調整するために使用される直列コンデンサを含んでもよい。
【0045】
結果として、渦電流18が胸部内に誘導される。ファラデーの電磁誘導の法則により、時間変化する磁界の存在に応答して、導電性媒質内に起電力(EMF)が誘導されるので、必然的に渦電流が生じる。
【0046】
これらの渦電流は、次いで、ループ・アンテナ12のインダクタンスに有効に寄与する。これは、それら自体によって、1次アンテナ12によって発生する磁束と同等の周波数の時間変化する磁束24が発生するためである。これらの渦電流磁束はアンテナの1次磁束と結合し、それにより、アンテナの誘導逆起電力がより大きくなり、したがって測定可能な実効インダクタンスがより大きくなる。
【0047】
渦電流から生じるインダクタンスの追加成分は、「反射インダクタンス」Lと呼ばれる。コイル・アンテナ12の総インダクタンスLは、次式で表される。
=L+L (3)
ここで、Lはコイル・アンテナ12の自己インダクタンスであり、Lは反射インダクタンスである。
【0048】
反射インダクタンスは次式のように定義することができる。
【数2】
ここで、Aは電磁ベクトル・ポテンシャルの反射部分(すなわち、刺激される媒質中の渦電流18によって生成される部分)であり、Iはコイル電流である。反射インダクタンスは、反射インピーダンスZと密接に関係している。この関係は、L=Z/iωであり、ここで、ωは電磁励起信号22(体に加えられる時間変化する磁界)の角周波数である。
【0049】
上記の積分式は、以下の関係式を適用することで理解することができる。
∇×A=B (5)
ここで、Bは「反射」磁界であり、ストークスの定理を適用して以下の式(4)で表現し直す。
【数3】
ここで、N=巻数である。この式は、上記の式(2)で説明されたインダクタンスの簡略式の形態に相当することがわかる。
【0050】
反射インダクタンス成分の大きさは、体から放射し返される「反射」電磁信号の強さの指示を与える。信号が強いと信号対雑音比がより高くなり、これにより、検知信号の品質及び信頼性が向上する。Lrの強さを最適化しようとすることで、それによって信号対雑音比が最大化される。
【0051】
一般に、反射インダクタンスLは複素数であり、次式で表すことができる。
【数4】
ここで、
【数5】
は、コイル・アンテナのリアクタンス性インピーダンスに関連し、
【数6】
は、コイルの抵抗性インピーダンスに関連する。
【0052】
インダクタンスLrの反射成分が加わることは、コイルの特性の離調につながる。特に、コイル・アンテナ回路の固有角周波数と、コイル・アンテナ回路の減衰係数との両方が変化する。このコイル特性の離調を測定することで、反射インダクタンスLの大きさを決定し、反射信号を測定することができる。
【0053】
特に、反射インダクタンスが加わった結果のコイルの特性の離調は、次式で表すことができる。
【数7】
【数8】
ここで、
【数9】
は、自由空間におけるコイル回路の非減衰固有角周波数であり、ω0,tは、媒質又は体が存在する場合のコイル回路の固有非減衰角周波数であり(下付き文字tは「total」を表す)、
【数10】
は、自由空間における減衰係数であり、ζは、媒質が存在する場合の(総)減衰係数であり、
【数11】
は、式(7)で定義される反射インダクタンスの実部であり、
【数12】
は、式(7)で定義される反射インダクタンスの虚部である。
【0054】
離調した固有角周波数は、反射インダクタンス
【数13】
の実部にのみ依存することがわかる。離調した減衰係数は、反射インダクタンスの虚部
【数14】
にも依存する。
【0055】
簡潔のため、幾何学的に正規化された量で作動することが好ましい。したがって、「特性」自己インダクタンス
【数15】
及び反射インダクタンス
【数16】
は、以下のように定義することができる。
【数17】
【数18】
ここで、l=単巻きのコイルの円周であり、N=コイル巻数であり、Lは、自由空間自己インダクタンス(実数)であり、Lは、反射インダクタンス(複素数)であり、Lは、上記の式(4)で定義される。幾何学的に正規化された量を使用する利点は、
【数19】
が、システム・サイズ及びアンテナ・コイルの巻数に依存しないという事実にある。
【0056】
これらの特性量を用いると、反射インダクタンスが加わることによるコイルの特性の離調は、以下のように表すことができる。
【数20】
【数21】
ここで、
【数22】
は、自由空間におけるコイル回路の非減衰固有角周波数であり、ω0,tは、媒質又は体が存在する場合のコイル回路の固有非減衰角周波数であり(下付き文字tは「total」を表す)、
【数23】
は、自由空間における減衰係数であり、ζは、媒質が存在する場合の(総)減衰係数であり、
【数24】
は、式(9)で定義される特性反射インダクタンスの実部であり、
【数25】
は、式(9)で定義される特性反射インダクタンスの虚部である。
【0057】
したがって、上記の分析から、反射インダクタンスは複素数であるので、発振器の周波数と振幅との両方に影響を与えることが見てとれる。誘導センサの多くは周波数のみに着目しているが、実際は、振幅は独立した情報を含む独立した信号である。この振幅変化は、共振器の減衰により発振器の振幅が変調するため、上記の減衰係数に現れる。したがって、振幅の変動は特に虚数インピーダンス成分で表される。
【0058】
しかしながら、(EMC適合に必要な)低い発振器の振幅及び低消費電力で正確に振幅を測定するのはより緻密な測定となる。
【0059】
図2は、振幅、ひいては減衰を測定する最も単純なやり方を示している。入力信号源は、発振器30として表されている。信号の揺れ(すなわち、発振器タンクのスイング)は、振幅検出器32で測定され、アナログ-デジタル変換器34でデジタル化されて振幅測定出力36を生成する。
【0060】
図2は、振幅復調システムである。そのようなシステムでは、自由空間からセンサの体への装着までの減衰測定に対応するために、広いダイナミック・レンジ(DR)を有することになる。これは、高リニアリティと高分解能/低ノイズとの両方の電子部品が必要となり、膨大な電力量を消費する。このダイナミック・レンジのほとんどは、センサが体に装着されると使われないが、デジタル化のステップごとに、全ダイナミック・レンジを循環してデジタル出力のビット・ストリームを決定する。
【0061】
高消費電力であることに加え、ループ・アンテナ12は自由空間にあるとき最大出力量を放射することになり、EMC規制に適合するのがより困難になるとともに、体に装着したときの測定の信号対雑音比(SNR)が低下する。
【0062】
そのため、電磁両立性(EMC)及び電力消費に関する2つの課題がある。本発明は、これら2つの課題の技術的な原因の理解に基づいており、両課題に対処する信号測定ソリューションを提供する。
【0063】
EMCに関しては、体に装着されていないとき、特にループ抵抗が小さい場合、発振器の振幅(ひいては、ループ内の電流)が早急に最大電流を超える。また、ループを体に装着すると、ループの総抵抗が増加し、自励発振器(振幅制御のない発振器)における熱雑音が増加し、信号強度が低下する。
【0064】
消費電力に関しては、全ダイナミック・レンジを網羅するためには、マルチビットADCが必要であるので、アナログ-デジタル変換器(ADC)用の電子部品は、高電力を必要とする。マルチビットADCは、同時に電力供給する必要がある多数の部品を有し、ADCサイクルごとに、全ダイナミック・レンジを網羅する必要があり、デジタル化すべきサンプルごとに繰り返される多くのサブサイクルが必要となる。また、そのような広いダイナミック・レンジを網羅するために、ADCは全レンジにわたって大きいリニアリティを有する必要があり、電力消費も増加する。
【0065】
本発明は、より少ないビット数又はトリット数の、すなわち、出力値(すなわち、回路によって提供される測定信号)の分解能よりも低い分解能を備えたアナログ-デジタル変換器の使用に基づいている。これは、アナログ-デジタル変換器の出力が、第1のビット数(又はトリット数)を有することを意味している。しかしながら、回路全体の出力値(測定信号)は、測定された振幅を、第2の、より大きいビット数の出力値として符号化している。したがって、ADCは、測定出力を定義するために単独では不十分であり得る出力分解能を有する。このように、ADCの分解能はデジタル出力よりも低く、これは、精度を向上し、より高い分解能の測定出力を作成するためにADC出力が時間にわたって積算されるために可能となる。ADCは、信号が基準値よりも大きいか小さいか(又は等しいか)を判定するためにのみ使用される。
【0066】
1つの選択肢は、1ビット量子化器として実施されるアナログ-デジタル変換器である。1ビット量子化器は非常に低電力であるが、ちょうど正確な振幅が達成されたことを示す能力がないという欠点がある。1ビット量子化器は、常に「上がる」と「下がる」との間のトグル動作をしており、ノイズの原因となっている。この問題は、3進数の情報、すなわち「上がる」、「何もしない」、及び「下がる」の情報を有する1トリットの量子化器を使用することで解決される。その結果、1ビット量子化器と比較して、非常に小さい追加コストで、よりきれいなフィードバック信号が得られる。
【0067】
「00」=「上がる」、「01」=「10」=「何もしない」、「11」=「下がる」としてセマンティクスが符合化される、2ビット量子化器を使用することで、同様の効果が達成できる。これは、バイナリ形式の電子半導体技術は容易に入手可能なので、1トリット量子化器よりも有利であり得る。
【0068】
図2の開ループ制御の代わりに、ネガティブ・フィードバック・ループを設け、ネガティブ・フィードバック・ループ内部のカウンタ(デジタル積分器)が発振器の振幅を制御する。
【0069】
図3は、本発明の振幅検出回路を示している。
【0070】
信号源は、やはり発振器40として表されている。この場合、発振器は自励式ではなく、振幅が制御される発振器であり、振幅制御入力41を有する。
【0071】
検出信号は、振幅復調器としてやはり機能する振幅検出器42に提供される。振幅検出器42は、複素反射インダクタンスの虚部を測定するために使用される。
【0072】
図4は、ピーク検出回路として実施された振幅検出回路の一例を示している。複素反射インダクタンスの虚部の測定には、振幅変調信号の復調を含み、すなわち、発振器タンクのスイングが、体からの生理信号によって変調される。
【0073】
振幅復調回路はよく知られており、図4は、ダイオードD及びローパス・フィルタR、Cを構成するピーク検出器の形態の、最も単純な実施例を示している。搬送波からのRFリップルが最小限に抑えられるが、生理信号の変化に対して十分に速くフィルタが反応できるように、RC値は選択される。このように、「振幅検出器」ブロックは、振幅復調器によって実施される。
【0074】
図3に戻ると、測定振幅信号は、低分解能ADC44、例えば1ビット量子化器に提供される。量子化器は、量子化プロセスの一部として、その入力信号を基準45と比較する。これは、電力供給される電子サブ部品の数が少ないので、フル分解能ADCよりもはるかに少ない電力しか使用しない。
【0075】
出力値の意図したデジタル分解能を実現するために、カウンタ46(デジタル積分器)は、量子化器の個々の結果を加算する。
【0076】
カウンタ46の出力は測定出力50であり、この出力はまた、アナログ制御信号が発振器40に提供され、それによってネガティブ・フィードバック・ループが閉じるように、デジタル-アナログ変換器48に提供される。
【0077】
デジタル-アナログ変換器48は、フィードバック制御器の一部である。アナログ信号41は発振回路と相互作用し、したがって発振回路の一部はフィードバック制御器の一部としても機能する。フィードバック制御を実施するための選択肢については、後述する。
【0078】
ネガティブ・フィードバック・ループは、アナログ-デジタル変換器44内で適用される基準45に依存して、振幅を一定値に保つように制御する。アナログ-デジタル変換器は、例えば、切り替え可能な抵抗器のアレイを備える。
【0079】
ネガティブ・フィードバック・ループ内では、ADC44は、1ビット量子化器として実施されるとき、ピーク検出器の出力が、基準値より大きいか小さいかを、ただ判定する。基準と同じレベルのピーク検出器の出力を取得するには、発振器振幅を調整する必要がある。調整量は、基準値に達するまでADC出力に基づいて1ずつカウント・アップ又はカウント・ダウンするカウンタ(デジタル積分器)によって制御される。1ビット量子化器の代わりにトライステート量子化器を使用する場合、結果として、量子化器出力は0になる。1ビット量子化器は、基準レベル付近の振幅検出器の出力で、0と1との間をトグル動作し続けることになる。
【0080】
カウンタ出力を出力値として使用することで、例えば、発振器の振幅が限定されているが制御ループを伴わない場合であるかのように、振幅測定に含まれる情報が失われるのを、回路は回避することができる。
【0081】
EMCは、振幅測定の積算デジタル結果を使用して、発振器の振幅を制御し、それによって発振信号の振幅を限定することによって達成される。回路のこの振幅限定機能は、ループ・アンテナによる高放射電力、及びセンサを体に装着したときの信号対雑音比(SNR)の低下という問題に対処する。発振器の振幅は、このように、発振器の減衰量に関係なく一定値に保たれる。
【0082】
したがって、測定された振幅自体は、もはや測定された生体信号の情報は含んでおらず、この情報は、回路の出力値を定義するフィードバック制御信号に転送されている(ただし、依然としてデジタル領域にある)。
【0083】
ADC44は先述のように1ビット量子化器であってよい。ADC44は、代わりに2ビット量子化器であってもよく、マルチビット量子化器であってもよい。ADC44は、1トリット量子化器又はマルチトリット量子化器であってもよい。しかしながら、いずれの場合も、量子化器は出力分解能、すなわち上記で説明された出力値50のレベル数よりも低い分解能を有する。
【0084】
ADC44は、発振器の振幅が基準レベルを上回るか下回るかを(少なくとも)判定する。したがって、カウンタ46は、発振器の振幅を増加又は減少させるために、その値を増加又は減少させる。量子化電子装置は、現在でははるかに複雑でなくなり、もはや広いダイナミック・レンジを必要としない(基準レベル付近の、一定のダイナミック・レンジのみが必要である)。
【0085】
このように、測定出力は量子化器の複数の動作から得られるので、時間とともに積算されていく。したがって、回路のループ周波数は、測定されている振幅のトラッキングすべき最高周波数よりも高い。
【0086】
回路のループ周波数はカウンタの分解能に依存し、ひいてはデジタル出力に依存する。分解能が高いほど、1カウントのステップが小さいことを意味する。振幅検出器が常に基準レベルにあるように発振器を調整するために、より高速な調整をより小さいステップで行う必要がある。例えば、100LSBをカバーする1Hzの周波数で三角波形を辿ろうとする場合、調整は200Hzで行う必要があることになる(100回カウント・アップし、100回カウント・ダウンする)。同じ信号を10LSBの分解能でトラッキングしようとする場合、ループ周波数はより低く、20Hzとすることができる。
【0087】
入力信号が線形ではなく、例えば正弦波信号の場合、ループの最低周波数は入力信号の導関数の最も急峻な部分によって決定される。
【0088】
許容誤差とループ周波数との間のトレードオフもあり得る。より大きな一時的誤差が許容される場合、少し低くしたループ周波数を使用してもよい。例えば、正弦波信号の場合、導関数が大きいとき(正弦曲線のゼロ交差において)、1LSB以内に信号をトラッキングすることができないかもしれないが、導関数が減少して正弦曲線がピーク値近くになるとき、トラッキングが成功する。
【0089】
ADC44としてマルチビット量子化器を使用することにより、振幅が基準から1LSB以上であるかを判定することが可能になり、このようにしてカウンタを1より大きい調整で調整することができ、1ビット量子化器による場合よりも迅速にトラッキングが成功する。
【0090】
したがって、ループの正確な周波数は、出力信号の分解能及び帯域幅、許容誤差、並びに量子化器の分解能に依存する。ループ周波数は常に出力帯域幅よりも高くなる。例として、ループ周波数は、現実的なシステムでは、典型的には1~10kHzの範囲内である。
【0091】
呼吸測定と脈拍測定との組み合わせでは、検出すべき信号の帯域幅は、典型的には33Hzである。
【0092】
この大きな周波数マージンにより、必要な出力分解能が反復積分プロセスで形成されることが可能になる。
【0093】
測定されている生体信号に変化があると、量子化器は、フィードバック・ループが新しい入力信号に適合するまで、差分出力を連続して送信する。これらの差分信号を合成/カウントすることによって、発振器制御信号41の必要な変化が記録され、これが測定振幅に対応する。
【0094】
このアーキテクチャの結果、自由空間におけるRF放出が低減され、センサが体に装着されたときのSNRが増大する。また、カウンタは出力値の最下位ビット(LSB)のみを増加又は減少させるので、デジタル化ステップごとに全てのビットがデジタル化されるわけではなく、結果としてはるかに効率的なデジタル化スキームとなる。
【0095】
カウンタ46は、CMOS論理回路を使用して実施されるとき、スイッチング(すなわち、その出力値の増加又は減少)を行うときにのみ電力を消費するので、電力効率も向上する。
【0096】
発振器40の振幅は様々なやり方で制御することができる。
【0097】
図5は、発振回路40の例を示し、発振回路40は、出力が(図3の)振幅検出器42に供給され、フィードバック信号を(図3の)デジタル-アナログ変換器48から受信する。
【0098】
発振回路40は、よく知られている交差結合CMOS発振器であり、交差結合されたプルアップ・トランジスタM1、M2及び交差結合されたプルダウン・トランジスタM3、M4を有する2つの並列回路分岐を含む。発振器タンクは、分岐の間に接続された並列LC回路である。L及びCの損失を表す等価並列抵抗である抵抗Rも存在する。抵抗Rは、通常、回路内に物理的に存在する構成要素の結果ではないが、そのような抵抗器は、(後述のように)意図的に切り替え可能な損失を導入するために使用され得る。
【0099】
タンク電圧スイングは、振幅検出器42、例えば上記で説明されたピーク検出器を使用して測定される。
【0100】
発振回路から流れ出るバイアス電流は、テール・トランジスタM5によって制御される。バイアス電流はタンク電圧スイングに直接関連している。デジタル-アナログ変換器48は、バイアス電流を制御するために様々なやり方で実施することができる。これは、電流を調整可能なカレント・ミラー、又はテール・トランジスタのゲート-ソース間電圧を制御する電圧DACであり得るが、これらに限定されない。
【0101】
テール・トランジスタの代わりに、カウンタの出力で制御される調整可能な抵抗器を使用してもよい。
【0102】
図5の例では、振幅制御は、テール・トランジスタM5のゲート-ソース電圧を制御する電圧デジタル-アナログ変換器48によって実現される。
【0103】
しかしながら、発振回路の振幅を制御するための他の選択肢も存在する。一例として、アンテナ・ループに負荷を加えることが挙げられる。上記で説明したように、ループ・インピーダンスはインダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、及び抵抗(R)に関して表すことができる。一般的に言うと、インダクタの直列損失は体に着用されるときに増加し、これは、等価並列抵抗は自由空間にあるときと比べて減少することを意味し、また、測定されている生理信号によっても変動する。
【0104】
抵抗Rは、発振器のタンク電圧スイングに直接影響する。そのため、ループの抵抗を制御することによって振幅を制御するという選択肢がある。ループに直列又は並列に追加された抵抗器は、総ループ抵抗が常に同じになるように、オン又はオフに切り替えることができる。これは、最も高い虚部反射インダクタンス値については、追加の抵抗は全く又はほとんど追加されないが、反射インピーダンスの虚部が低いときの自由空間では、同じ総抵抗になるように、より多くの抵抗が追加される。
【0105】
そのため、必要となる追加の抵抗の量が、測定されている生理信号の尺度となる。一定のループ抵抗を有することにより、タンク電圧スイング、したがってループを通る電流が一定のレベルに保たれ、放射磁界を低減し、EMCに適合させる。
【0106】
別の例は、発振トランジスタの1つ又は複数のソースに制御可能な損失を導入することである。
【0107】
振幅は、典型的にはアナログ方式で制御されるので、デジタル-アナログ変換器48が必要である。出力は、例えば自由空間でのダンピングを増加させるために発振器タンクに接続されるか、又は前述のように発振器のバイアス電流を制御するためにカレント・ミラーに接続される。
【0108】
電磁励起信号の周波数は、例えば30MHzから1000MHzまでである。他の適切な範囲は、100MHz~1000MHz、30MHz~500MHz、及び100MHz~500MHzである。
【0109】
測定出力は、典型的には、臨床医、看護師、患者本人、又は、例えば睡眠及びスポーツの適用例における健康な消費者であり得るエンド・ユーザに表示される。
【0110】
本システムは、特に、バイタル・サイン検知システムである。バイタル・サインは、例えば、心拍数、脈拍数、呼吸容量、呼吸数、1回拍出量、1回拍出量変動、心拍出量、又は大動脈若しくは動脈の脈拍の高さ/圧力/直径の変調を含む。これらのバイタル・サインを導出するため、所望の1つ又は複数の生理パラメータを導出するために、一定時間にわたる出力値を処理するための信号処理手段が設けられてもよい。
【0111】
本発明は、患者モニタリングの用途、遠隔測定、及びポットチェック・モニタリングに焦点を当てている。胸部パッチ又は手首着用デバイスなどのウェアラブル・システムに組み込まれてもよく、又はマットレス・ベースのモニタリング・システムの一部であってもよい。本発明は、例えば、新生児モニタリング、睡眠モニタリング、又は産科モニタリングに特に焦点を当てている。
【0112】
開示の実施形態に対する変形は、当業者であれば、特許請求されている発明を実施する際に、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、理解し、実施することができる。特許請求の範囲において、「備える/含む」という語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形の要素は、複数であることを除外しない。
【0113】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載の複数の項目の機能を果たしてもよい。
【0114】
ある手法が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手法の組み合わせが有利に使用できないことを示してはいない。
【0115】
コンピュータ・プログラムは、他のハードウェアとともに、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に格納/分散されてよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介したものなどの、他の形態で分散されてもよい。
【0116】
特許請求の範囲又は明細書において、「ように適合される」という用語が使用される場合、「ように適合される」という用語は、「ように構成される」という用語と等価であることを意図していることに留意されたい。
【0117】
特許請求の範囲における参照符号は、発明範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5