IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図1
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図2
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図3
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図4
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図5
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図6
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図7
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図8
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図9
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図10
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図11
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図12
  • 特許-電子制御装置及び車載システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電子制御装置及び車載システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20241002BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G06F9/50 150D
G06F9/50 120A
B60R16/02 660B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023533052
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004529
(87)【国際公開番号】W WO2023281784
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021111229
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前濱 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
(72)【発明者】
【氏名】前田 功治
(72)【発明者】
【氏名】芹沢 一
【審査官】三坂 敏夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-036420(JP,A)
【文献】特開2019-082857(JP,A)
【文献】特開2017-128308(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183141(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/455-9/54
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動作を制御するための演算処理を実行する電子制御装置であって、
車両に設置されたセンサの情報に基づいて外界を認識する一又は複数の電子装置と接続され、前記電子装置から送信された外界認識情報に基づいて車両の動作を決定する判断部と、
前記電子制御装置の処理負荷が高いと判定されると、前記電子制御装置と前記電子装置の機能の変更の必要性を判定する機能境界変更判定部とを備え
前記機能境界変更判定部は、地図情報及び測位情報に基づいて判定された自車両の走行状況に基づいて、前記電子制御装置の処理負荷を判定することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
車両の動作を制御するための演算処理を実行する電子制御装置であって、
車両に設置されたセンサの情報に基づいて外界を認識する一又は複数の電子装置と接続され、前記電子装置から送信された外界認識情報に基づいて車両の動作を決定する判断部と、
前記電子制御装置の処理負荷が高いと判定されると、前記電子制御装置と前記電子装置の機能の変更の必要性を判定する機能境界変更判定部とを備え、
前記機能境界変更判定部は、前記センサが取得した外界の物標数、自車両の速度、及び自車両の加速度の少なくとも一つに基づいて、前記電子制御装置の処理負荷を判定することを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
車両の動作を制御するための演算処理を実行する電子制御装置であって、
車両に設置されたセンサの情報に基づいて外界を認識する一又は複数の電子装置と接続され、前記電子装置から送信された外界認識情報に基づいて車両の動作を決定する判断部と、
前記電子制御装置の処理負荷が高いと判定されると、前記電子制御装置と前記電子装置の機能の変更の必要性を判定する機能境界変更判定部とを備え、
前記機能境界変更判定部は、前記電子装置による処理の実行周期を前記電子制御装置による処理の実行周期の整数倍にして、前記電子制御装置の機能を前記電子装置に実行させることを特徴とする電子制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電子制御装置であって、
前記機能境界変更判定部は、前記電子制御装置と前記電子装置の機能を変更すると判定すると、機能及びタスク周期の少なくとも一つの変更を前記電子装置へ指示することを特徴とする電子制御装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電子制御装置であって、
前記機能境界変更判定部は、前記電子制御装置の処理負荷の時間変化に基づいて、前記電子制御装置の処理負荷を判定することを特徴とする電子制御装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電子制御装置であって、
前記機能境界変更判定部は、前記電子装置による処理の一部を休止して、前記電子制御装置の機能を前記電子装置に実行させることを特徴とする電子制御装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電子制御装置であって、
前記電子装置は、前記機能の変更によって、前記電子装置に配置された前記電子制御装置の処理を実行することを特徴とする電子制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電子制御装置であって、
前記機能境界変更判定部は、現在の処理負荷が低い電子装置に前記電子制御装置の一部の処理を実行させることを特徴とする電子制御装置。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電子制御装置であって、
前記電子制御装置の処理負荷を判定する第1処理負荷判定部を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一つの電子制御装置と、一又は複数の前記電子装置とを備える車載システム。
【請求項11】
請求項10に記載の車載システムであって、
前記電子装置は、前記電子制御装置の処理負荷を判定する第2処理負荷判定部を有することを特徴とする車載システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車載システムであって、
前記第2処理負荷判定部は、前記電子制御装置へ送信する外界認識情報によって、前記電子制御装置の負荷を判定することを特徴とする車載システム。
【請求項13】
請求項12に記載の車載システムであって、
前記第2処理負荷判定部は、前記電子制御装置へ送信する外界認識情報に含まれる物標数によって、前記電子制御装置の負荷を判定することを特徴とする車載システム。
【請求項14】
車両の動作を制御するための演算処理を実行する電子制御装置と、車両に設置されたセンサの情報に基づいて外界を認識する一又は複数の電子装置とを備える車載システムであって、
前記電子制御装置は、
前記一又は複数の電子装置と接続され、
前記電子装置から送信された外界認識情報に基づいて車両の動作を決定する判断部と、
前記電子制御装置の処理負荷が高いと判定されると、前記電子制御装置と前記電子装置の機能の変更の必要性を判定する機能境界変更判定部とを有し、
前記電子装置は、前記電子制御装置へ送信する外界認識情報に含まれる物標数によって、前記電子制御装置の負荷を判定する第2処理負荷判定部を有することを特徴とする車載システム。
【発明の詳細な説明】
【参照による取り込み】
【0001】
本出願は、令和3年(2021年)7月5日に出願された日本出願である特願2021-111229の優先権を主張し、その内容を参照することにより、本出願に取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は車両に搭載される電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
車両には、外界認識センサが取得した情報に基づいて車両や歩行者などの物標を認識する電子制御装置や、物標の認識結果を統合して自動運転や運転支援のための演算を行う電子制御装置や、エンジンやアクチュエータの制御を行う電子制御装置等、多くの電子制御装置が搭載されている。搭載される電子制御装置の数を減らすため、一つの電子制御装置への機能が集約されるが、機能が集約された電子制御装置の処理負荷が高くなり、部品が高価になるという課題がある。電子制御装置の処理負荷増大を抑制する技術として、特開2006-134203号公報(特許文献1)、特開2010-262444号公報(特許文献2)、特開2012-185541号公報(特許文献3)、特開2018-67135号公報(特許文献4)、特開2020-29174号公報(特許文献5)がある。
【0004】
特許文献1(特開2006-134203号公報)には、ネットワークで接続された複数の制御装置が複数のタスクを分散して実行する分散制御システムであって、各制御装置は、自己が実行すべきタスクとして起動されたタスク管理リストを有し、各タスクは実行終了までの要求時間であるデッドラインまたはタスクが起動される周期の情報を含み、各制御装置は、前記タスク管理リスト内の全てのタスクが、前記デッドラインまたはタスク周期を満足できるか否かを判定して、満足できないと判定された場合には、前記タスク管理リストに含まれるタスクの中から、他の制御装置で前記デッドラインまたはタスク周期を満足して実行可能なタスクを選択して、他の制御装置にタスクの実行を依頼することを特徴とする分散制御システムが記載されている。
【0005】
特許文献2(特開2010-262444号公報)には、固有に定められた起動周期で起動される1または複数のタスクを有したOSが搭載されている車載装置であって、自車両の状態を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された自車両の状態に応じて、前記タスクについての前記起動周期を変更する起動周期変更手段と、を備えることを特徴とする車載装置が記載されている。
【0006】
特許文献3(特開2012-185541号公報)には、複数のタスクに対して順次実行権を付与することで、これらのタスクを並行して動作させる車載装置であって、自車両の状態を判別する判別手段と、前記判別手段により判別された前記自車両の状態に応じて、それぞれの前記タスクを動作させる頻度を変更する変更手段と、を備えることを特徴とする車載装置が記載されている。
【0007】
特許文献4(特開2018-67135号公報)には、車両の動作を制御する車両制御装置であって、前記車両の動作を制御する制御タスクを実行すべき演算装置を定義するタスクテーブルを格納する記憶部、前記タスクテーブルの定義にしたがって前記制御タスクを実行する第1および第2演算装置、前記車両制御装置が起動または終了するとき前記タスクテーブルを更新する更新部、を備えることを特徴とする車両制御装置が記載されている。
【0008】
特許文献5(特開2020-29174号公報)には、制御タスクの演算負荷に関する指標データをもとに、リアルタイムに前記演算負荷を推定する演算負荷推定部と、前記演算負荷をもとに、車両の動作を制御するタスクテーブルを更新するタスクテーブル更新部と、を備えることを特徴とする車両制御装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、特許文献4、特許文献5に記載される技術では、複数の電子制御装置に割り当てるタスクテーブルを更新して、処理負荷が増大した場合に優先順位が高い機能が停止しないタスク配置を得る。しかし、これらタスクテーブルの更新によるタスク配置の変更は機能の順序性及び認識、認知、制御などの電子制御装置の本来の役割を考慮していない。また、特許文献2及び特許文献3に記載される技術では、タスクの実行周期を変更して処理負荷の増大を抑制する。タスクの実行周期の変更による処理負荷増大の抑制は、車載の電子制御装置が担う機能においては実行周期を変更できるタスクが限られ、許容できる実行周期が制限されるため、機能を集約する電子制御装置の処理負荷を低減する程度の処理負荷低減は困難である。
【0010】
本発明は、機能の順序性及び各電子制御装置の本来の役割を考慮しつつ、機能を集約させた電子制御装置の処理負荷を低減して車載システム全体の要求性能を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、車両の動作を制御するための演算処理を実行する電子制御装置であって、車両に設置されたセンサの情報に基づいて外界を認識する一又は複数の電子装置と接続され、前記電子装置から送信された外界認識情報に基づいて車両の動作を決定する判断部と、前記電子制御装置の処理負荷が高いと判定されると、前記電子制御装置と前記電子装置の機能の変更の必要性を判定する機能境界変更判定部とを備え、前記機能境界変更判定部は、地図情報及び測位情報に基づいて判定された自車両の走行状況に基づいて、前記電子制御装置の処理負荷を判定することを特徴とする電子制御装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、電子制御装置のピーク時の処理負荷を低下できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図2】実施例1の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図3】実施例1における外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
図4】実施例1の外界認識電子装置と統合電子装置との間の処理を示すシーケンス図である。
図5】実施例3の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図6】実施例3における外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
図7】実施例4の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図8】実施例4における外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
図9】実施例6の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図10】実施例6における外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
図11】実施例7の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図12】実施例7の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
図13】実施例8の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例を図面を参照して説明する。
【0015】
<実施例1>
図1図2は、本発明の実施例1の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図であり、図1は、処理負荷が低く統合電子装置1000の認知部1003が動作する通常時の動作状態を示し、図2は、外界認識電子装置1010の代替認知部1014が動作する動作状態を示す。
【0016】
図1に示すように、通常動作状態では、自動運転システムでは、複数の外界認識センサ1101~1106が複数の外界認識電子装置1010、1020、1030に接続され、複数の外界認識電子装置1010、1020、1030が単一の統合電子装置1000に接続される。外界認識電子装置1010、1020、1030では、接続された外界認識センサ1101~1106から得られた外界情報に基づいて、認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032が車両、歩行者、標識、信号等の物標情報や、車線や横断歩道などの道路標示を認識し、外界認識結果を出力する。統合電子装置1000では、入力された複数の外界認識結果を認知部1003が統合し、統合された外界認識結果に基づいて判断部1004が車両の挙動を決定し、制御部1005が車両の挙動をブレーキ1111やアクセル1112のアクチュエータの制御指令値に変換して出力する。このような自動運転システムでは、統合電子装置1000に機能が集約しており、統合電子装置1000には高い演算性能が必要となる。
【0017】
本実施例の自動運転システムでは、図2に示すように、統合電子装置1000は、処理負荷判定部1001と機能境界変更判定部1002を有し、外界認識電子装置1010、1020、1030は、それぞれ、負荷計測部1013、1023、1033と代替認知部1014、1024、1034を有する。処理負荷判定部1001は、統合電子装置1000の処理負荷が予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。機能境界変更判定部1002は、処理負荷判定部1001の判定結果と各外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷状況に応じて、統合電子装置1000で実行する機能を代替的に実行する外界認識電子装置を決定する。また、負荷計測部1013、1023、1033は、各外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷値(例えばCPU使用率)を計測又は予測する。代替認知部1014、1024、1034は、機能境界変更判定部1002が認知処理の実行を外界認識電子装置1010、1020、1030へ指示した場合に、認識結果統合処理を実行する。
【0018】
なお、図2に示すように、認知部1003の全ての処理を代替認知部1014が実行するのではなく、認知部1003の処理を部分的に代替認知部1014が実行してもよい。また、統合電子装置1000の処理を外界認識電子装置1010、1020、1030が代替するが、外界認識電子装置ではない他の電子装置が統合電子装置1000の処理を代替してもよい。
【0019】
図3は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムにおける、外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
【0020】
ステップ100:各外界認識センサ1101~1106が外界情報を取得する。外界情報とは、自車両の周辺を各外界認識センサ1101~1106によって計測したセンサ情報であり、例えば外界認識センサ1101~1106のうち、カメラであれば画像データ、LiDARであれば3次元位置を表す点の集合(3次元点群)である。
【0021】
ステップ101:各外界認識電子装置1010、1020、1030において、認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032が外界情報を用いて、自車両周辺の物標や車線等を認識する。
【0022】
ステップ102:各外界認識電子装置1010、1020、1030において、負荷計測部1013、1023、1033が、各外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷値を取得し、取得した負荷値を機能境界変更判定部1002に送信する。本実施例において、負荷値はCPU使用率とする。本実施例においては、CPU使用率を計測するが、外界情報からCPU使用率を予測してもよい。また、負荷値を取得するタイミングは後述のステップ103の後やステップ104中(前記統合電子装置の処理性能不足が判明したタイミング)でもよい。
【0023】
ステップ103:統合電子装置1000における処理負荷判定部1001が統合電子装置1000の負荷値を取得する。本実施例において、負荷値はCPU使用率とする。本実施例においては、CPU使用率を計測するが、実施例2に示すように、外界認識結果から処理負荷を予測してもよい。
【0024】
ステップ104:処理負荷判定部1001が統合電子装置1000の負荷値が予め設定した閾値を超えているか否か(すなわち、統合電子装置1000の処理性能が十分か否か)を判定し、機能境界変更判定部1002が、処理負荷判定部1001の判定結果とステップ102の結果(各外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷値)を用いて、認知処理を実行する外界認識電子装置を決定する。ここで、統合電子装置1000が処理性能不足の場合、どの外界認識電子装置に認知処理を実行させるかは、例えば単純にステップ102で得られた負荷値が少ない外界認識電子装置を選択しても、予め処理を分散して実行するルールを定めておいてもよい。
【0025】
ステップ105:負荷値が閾値を超えていない場合(すなわち、統合電子装置1000の性能が十分である場合)、図1に示すように、統合電子装置1000において認知処理を実行する。
【0026】
ステップ106:負荷値が閾値を超えている場合(すなわち、統合電子装置1000の性能が十分でない場合)、機能境界変更判定部1002が、認知機能を代替する外界認識電子装置を選択し、選択された外界認識電子装置へ認知処理の実行を依頼する。そして、図2に示すように、統合電子装置1000の認知部1003は機能を停止し、機能境界変更判定部1002が定めた外界認識電子装置(例えば、負荷が低く、性能に余裕のある外界認識電子装置)の代替認知部1014が認知処理を実行する。
【0027】
ステップ107:統合電子装置1000の判断部1004が、ステップ105又は106における認知処理の結果を用いて、判断処理を実行する。ここで判断部1004の入力の切り替えは、例えば、常に全ての認知部1003及び代替認知部1014、1024、1034から認知結果が出力されており、有効な値が含まれている入力を採用しても、図2に示すように、機能境界変更判定部1002から認知処理を実行する電子装置からの入力を採用してもよい。
【0028】
ステップ108:統合電子装置1000の制御部1005が、判断部1004の判断処理結果(車両の挙動情報)から制御指令値を生成して、出力する。
【0029】
図4は、本実施例の外界認識電子装置1010、1020、1030と統合電子装置1000との間の処理を示すシーケンス図である。図4において図3と同じ処理には図3と同じ番号を付する。まず、各外界認識電子装置1010、1020、1030は、各外界認識センサから外界情報を受信し、認識処理部によって自車両周辺の物標や車線等の認識を行う(ステップ101)。
【0030】
また、外界認識電子装置1010、1020、1030は、認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032の処理結果を統合電子装置1000に送信し、自己の現在の処理負荷を算出し、算出結果を統合電子装置1000へ送信する(ステップ102)。
【0031】
統合電子装置1000の処理負荷判定部1001は、統合電子装置1000の負荷値を計算し(ステップ103、104)、負荷値が予め定めた閾値以下である場合、外界認識電子装置1010、1020、1030に通常タスクを実行するように通知して、統合電子装置1000の認知部1003が認知処理を実行する(ステップ105)。
【0032】
負荷値が閾値より大きい場合、機能境界変更判定部1002が、認知機能を代替する外界認識電子装置を選択し、選択された外界認識電子装置へ認知処理の実行を依頼し、統合電子装置1000の認知部1003は機能を停止する。
【0033】
代替認知処理実行依頼を受け取った外界認識電子装置が認知処理を実行できない状況にある場合、当該外界認識電子装置は実行拒否応答を統合電子装置1000へ送信する。統合電子装置1000は実行拒否応答を受け取った場合、機能境界変更判定部1002において認知処理を実行する外界認識電子装置を再度選択し、選択した外界認識電子装置へ代替認知処理の実行を依頼する。
【0034】
代替認知処理実行依頼を受け取った外界認識電子装置が認知処理を実行できる状況にある場合、当該外界認識電子装置は代替認知処理を実行し、認知処理結果を統合電子装置1000へ送信する(ステップ106)。統合電子装置1000の判断部1004は、ステップ105又は106の結果に基づいて判断処理を実行し(ステップ107)、判断処理の結果から制御指令値を生成して、ブレーキ1111やアクセル1112等のアクチュエータへ制御指令値を出力する(ステップ108)。
【0035】
車両の運転状態や周辺環境によって機能境界変更判定部1002が統合電子装置1000の処理性能を判定する閾値を変更してもよい。車両の運転状態は、例えば、一般道路走行中か高速道路走行中か自動駐車中かなどであり、周辺環境は、交差点、歩道の有無、道路幅、車線数、可視範囲の信号機の有無などである。
【0036】
<実施例2>
本発明の実施例2では、実施例1のステップ100において統合電子装置1000の負荷値を直接計測する代わりに、外界認識結果より統合電子装置1000の負荷値を予測する。実施例2において、自動運転システムの構成は実施例1と同じなのでその説明は省略する。また、自動運転システムの処理は以下の点において実施例1と異なる。
【0037】
ステップ102において、外界認識電子装置1010、1020、1030から出力される認識結果から外界認識電子装置の負荷を推定する。例えば、認識処理は、認識物標数が多くなると処理負荷が増大するため、外界認識電子装置1010、1020、1030から出力される外界認識結果に含まれる認識物標数から外界認識電子装置の負荷を推定できる。そして、ステップ105において、外界認識電子装置から送信された外界認識結果に含まれる物標数が予め設定した閾値以下である外界認識電子装置を、認知処理を実行する外界認識電子装置に選択する。
【0038】
<実施例3>
本発明の実施例3では、実施例1のステップ100において統合電子装置1000の負荷値を直接計測する代わりに、地図情報及び測位情報から現在の自車両の走行道路の道路種別を判別し、道路種別に応じて機能境界変更判定部1002が機能配置を変更する。実施例3において、自動運転システムの構成及び処理について、実施例1と同じ部分の説明は省略し、相違点を主に説明する。
【0039】
図5は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
【0040】
実施例3において、統合電子装置1000の処理負荷判定部1001は、測位情報センサ1121から取得した測位情報及び地図情報管理装置1122から取得した地図情報を用いて現在の自車両の走行道路の道路種別を判別する。測位情報センサ1121には人工衛星からの信号を受信して、位置を測定するGNSS受信機を使用できる。道路種別に応じて認知すべき物標数が異なるので、機能境界変更判定部1002が認知処理の配置を変更する。例えば、高速道路より一般道路の方が認識する物標数が多くなるため、統合電子装置1000の処理負荷が増大することから、一般道路走行時は外界認識電子装置で処理の一部を代替する。また、車速によって認識する物標数が変わることから、車速によって機能境界変更判定部1002が認知処理の配置を変更してもよい。また、認識する物標数は、加速中は少なく、減速中は多いことから、加速度によって機能境界変更判定部1002が認知処理の配置を変更してもよい。
【0041】
さらに、車両の運転状態や周辺環境によって機能境界変更判定部1002が認知処理の配置を変更してもよい。例えば、自動運転中か自動駐車中かによって認識する物標数が変わり、統合電子装置1000の処理負荷が変わることから、機能境界変更判定部1002が認知処理の配置を変更してもよい。車両の運転状態は、自動運転中か自動駐車中かなどであり、周辺環境は、交差点、歩道の有無、道路幅、車線数、可視範囲の信号機の有無などである。
【0042】
図6は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムにおける、外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
【0043】
ステップ300:処理負荷判定部1001が、地図情報管理装置1122から地図情報を取得する。
【0044】
ステップ301:処理負荷判定部1001が、測位情報センサ1121から測位情報を取得し、現在位置を求める。
【0045】
ステップ302:処理負荷判定部1001が、車両が高速道路上か否か(すなわち、自動運転を実施するために必要な物標が多いか否か)を判定し、機能境界変更判定部1002が、処理負荷判定部1001の判定結果を用いて、認知処理を実行する外界認識電子装置を決定する。
【0046】
ステップ303:車両が高速道路上である場合(すなわち、認知部1003が認知すべき物標が少ない場合)、統合電子装置1000で認知処理を実行する。
【0047】
ステップ304:車両が高速道路上でない場合(すなわち、認知部1003が認知すべき物標が多い一般道上である場合)、各外界認識電子装置1010、1020、1030において、負荷計測部1013、1023、1033が、それぞれ外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷値を取得する。本実施例において、負荷値はCPU使用率とする。本実施例においては、CPU使用率を計測するが、外界情報からCPU使用率を予測してもよい。また、負荷値を取得するタイミングはステップ302の前でもよい。
【0048】
ステップ305:機能境界変更判定部1002が、処理性能に最も余裕のある外界認識電子装置を認知機能を代替する外界認識電子装置に選択し、選択された外界認識電子装置へ認知処理の実行を依頼する。
【0049】
ステップ306:そして、統合電子装置1000の認知部1003は機能を停止し、機能境界変更判定部1002が定めた、処理性能に余裕がある外界認識電子装置の代替認知部1014が認知処理を実行する。なお、どの外界認識電子装置に認知処理を実行させるかは、予め処理を分散して実行するルールを定める方法でもよい。
【0050】
ステップ307:ステップ303又は306における認知処理の結果を用いて、統合電子装置1000の判断部1004が判断処理を実行する。ここで判断部1004の入力の切り替えは、例えば、常に全ての認知部1003及び代替認知部1014、1024、1034から認知結果が出力されており、有効な値が含まれている入力を採用しても、機能境界変更判定部1002から認知処理を実行する電子装置からの入力を採用してもよい。
【0051】
そして、統合電子装置1000の制御部1005が、判断部1004の判断処理結果(車両の挙動情報)から制御指令値を生成して、出力する。
【0052】
<実施例4>
本発明の実施例4では、実施例1のステップ103及び実施例3のステップ304において外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷値を直接計測する代わりに、統合電子装置1000に入力された認識結果によって外界認識電子装置の負荷値を予測する。実施例4において、自動運転システムの構成及び処理について、実施例3と同じ部分の説明は省略し、相違点を主に説明する。
【0053】
図7は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
【0054】
実施例4の外界認識電子装置1010、1020、1030は、負荷計測部を有さず、機能境界変更判定部1002が、外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷を推定し、統合電子装置1000が行っている認知処理を代替する外界認識電子装置を選定する。
【0055】
図8は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムにおける、外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
【0056】
図8に示すフローチャートは、ステップ404において図6に示すフローチャートと異なる。すなわち、ステップ400~403及びステップ405~407は、図6のステップ300~303及びステップ305~307と同じである。
【0057】
ステップ404:車両が高速道路上でない場合(すなわち、認知部1003が認知すべき物標が多い一般道上である場合)、機能境界変更判定部1002は、外界認識電子装置1010、1020、1030から出力される認識結果から外界認識電子装置の負荷を推定し、統合電子装置1000が行っている認知処理を代替する外界認識電子装置を選定する。例えば、認識処理は認識物標数が多くなると処理負荷が増大するため、外界認識電子装置1010、1020、1030から出力される外界認識結果に含まれる認識物標数から外界認識電子装置の負荷を推定できる。本実施例において、負荷値はCPU使用率とする。また、負荷値を取得するタイミングもステップ302の前に実施してもよい。
【0058】
<実施例5>
本発明の実施例5では、前述した全ての実施例において、機能境界変更判定部1002が処理を代替させる外界認識電子装置を選定する際に(ステップ103、ステップ304、ステップ404)、外界認識電子装置の一部の処理を休止又は処理周期を変更する。また、統合電子装置1000と一部の処理を入れ替えるリソースを確保する。実施例5において、自動運転システムの構成は実施例1~4と同じなのでその説明は省略する。また、自動運転システムの処理は以下の点において実施例1~4と異なる。
【0059】
例えば、通常時は、統合電子装置1000の認知部1003による認知処理の実行周期と、各外界認識電子装置1010、1020、1030の認識処理部による認識処理の実行周期を等しく設定しておき、外界認識電子装置による認知処理の代替時に、統合電子装置1000の認知処理を代替する外界認識電子装置の認識処理部による認識処理の実行周期を、統合電子装置1000の認知部1003による認知処理の実行周期の整数倍(整数は2以上)に長く設定して、認知処理を実行するためのリソースを確保する条件において、外界認識電子装置1010、1020、1030の処理負荷を計算して、認知処理を代替する外界認識電子装置を選択する。
【0060】
そして、選択された外界認識電子装置の認識処理部は、認識処理の実行周期を認知部1003による認知処理の実行周期の整数倍(整数は2以上)に設定して、実行周期を長くすることによって、空いたリソースによって、統合電子装置1000の認知処理を代替する。
【0061】
<実施例6>
本発明の実施例6では、外界認識電子装置1010、1020、1030が、処理負荷判定部1001及び機能境界変更判定部1002を有する。実施例6において、自動運転システムの構成及び処理について、実施例1と同じ部分の説明は省略し、相違点を主に説明する。
【0062】
図9は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図である。
【0063】
実施例6では、複数の外界認識電子装置1010、1020、1030が単一の統合電子装置1000に接続される。外界認識電子装置1010、1020、1030では、接続された外界認識センサ1101~1106から得られた外界情報に基づいて、認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032が車両、歩行者、標識、信号等の物標情報や、車線や横断歩道などの道路標示を認識し、外界認識結果を出力する。処理負荷判定部1015、1025、1035は、統合電子装置1000の処理負荷が予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。機能境界変更判定部1016、1026、1036は、処理負荷判定部1001の判定結果と各外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷状況に応じて、統合電子装置1000で実行する機能を代替的に実行する外界認識電子装置を決定する。代替認知部1014、1024、1034は、機能境界変更判定部1016、1026、1036が認知処理の実行を決定した場合、認識結果統合処理を実行する。
【0064】
統合電子装置1000に入力される認識物標数が大きくなると統合電子装置1000の認知処理の負荷が増大するため、各外界認識電子装置1010、1020、1030において、各外界認識センサ1101~1106からの外界情報による認識物標を出力するのではなく、接続されている外界認識センサ1101~1106からの外界情報による認識物標を統合して出力して、統合電子装置1000が受け取る認識物標数を少なくし、認知処理の負荷を低減できる。
【0065】
統合電子装置1000では、入力された複数の外界認識結果を認知部1003が統合し、統合された外界認識結果に基づいて判断部1004が車両の挙動を決定し、制御部1005が車両の挙動をブレーキ1111やアクセル1112のアクチュエータの制御指令値に変換して出力する。統合電子装置1000は、認知部1003内に簡略認知部1006を有する。簡略認知部1006は、いずれかの外界認識電子装置1010、1020、1030の代替認知部1014、1024、1034の動作時に、入力された外界認識結果又は認知処理結果に基づいて、認知処理を実行する。
【0066】
図10は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムにおける、外界認識から制御指令値出力までの処理のフローチャートである。
【0067】
ステップ600:認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032が、外界認識センサ1101~1106から得られた外界情報を認識する。
【0068】
ステップ601:処理負荷判定部1015、1025、1035が、認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032による外界情報の認識結果から物標数を計測する。
【0069】
ステップ602:処理負荷判定部1015、1025、1035が、計測した物標数から統合電子装置1000の処理負荷を予測する。
【0070】
ステップ603:処理負荷判定部1015、1025、1035が、処理負荷が予め設定した閾値を超えるか否か(統合電子装置1000の性能が十分か否か)を判定する。
【0071】
ステップ604:処理負荷判定部1015、1025、1035が、処理負荷が閾値を超えると判定した場合、機能境界変更判定部1016、1026、1036が統合電子装置1000で実行する認知処理を代替的に実行する外界認識電子装置を選定し、選定された外界認識電子装置が認知処理を実行する。このとき、実施例5と同様に、機能境界変更判定部1016、1026、1036が外界認識電子装置の一部機能の休止や処理周期を変更して、外界認識電子装置の処理リソースを確保してもよい。
【0072】
ステップ605:統合電子装置1000の認知部1003又は簡略認知部1006が、入力された外界認識結果又は認知処理結果に基づいて、認知処理を実行する。
【0073】
ステップ606:前記統合電子装置1000の判断部1004が、ステップ605における認知処理の結果を用いて、判断処理を実行する。その後、制御部1005が、判断部1004の判断処理結果(車両の挙動情報)から制御指令値を生成して、出力する。
【0074】
<実施例7>
本発明の実施例7では、統合電子装置1000の処理負荷が増大した場合に、判断部1004の機能を外界認識電子装置に代替させる。実施例7において、自動運転システムの構成及び処理について、実施例1と同じ部分の説明は省略し、相違点を主に説明する。
【0075】
図11及び図12は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムの機能ブロック図であり、図11は、処理負荷が低く統合電子装置1000の判断部1004が動作する通常時の動作状態を示し、図12は、外界認識電子装置1010、1020、1030の代替判断部1017、1027、1037が動作する動作状態を示す。
【0076】
図11に示すように、通常動作状態では、自動運転システムでは、複数の外界認識センサ1101~1106が複数の外界認識電子装置1010、1020、1030に接続され、複数の外界認識電子装置1010、1020、1030が単一の統合電子装置1000に接続される。外界認識電子装置1010、1020、1030では、接続された外界認識センサ1101~1106から得られた外界情報に基づいて、認識処理部1011、1012、1021、1022、1031、1032が車両、歩行者、標識、信号等の物標情報や、車線や横断歩道などの道路標示を認識し、外界認識結果を出力する。統合電子装置1000では、入力された複数の外界認識結果を認知部1003が統合し、統合された外界認識結果に基づいて判断部1004が車両の挙動を決定し、外界認識電子装置1010、1020、1030に送る。外界認識電子装置1010、1020、1030では、制御部1018、1028、1038が、車両の挙動を、ブレーキ1111、アクセル1112、ステアリング1113のアクチュエータの制御指令値や、警告装置1114、表示装置1115の動作指令に変換して出力する。このような自動運転システムでは、制御部1018、1028、1038の機能分担に合わせて、判断部1004の機能を、車両の加減速に関わる機能、車両の操舵に関わる機能、ドライバへの警告や表示機能に分けることができる。
【0077】
本実施例の自動運転システムでは、図12に示すように、統合電子装置1000は、処理負荷判定部1001と機能境界変更判定部1002を有し、外界認識電子装置1010、1020、1030は、それぞれ、代替判断部1017、1027、1037を有する。処理負荷判定部1001は、統合電子装置1000の処理負荷が予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。また、処理負荷判定部1001は、統合電子装置1000から出力される認識結果から、各外界認識電子装置1010、1020、1030の処理負荷を推測する。機能境界変更判定部1002は、統合電子装置1000の処理負荷と各外界認識電子装置1010、1020、1030の負荷状況に応じて、統合電子装置1000で実行される判断部1004の機能を代替的に実行する外界認識電子装置を決定する。代替判断部1017、1027、1037は、機能境界変更判定部1002が判断処理の実行を外界認識電子装置1010、1020、1030へ指示した場合に、判断処理を実行する。すなわち、統合電子装置1000の処理負荷が増大した際、認知処理ではなく、加減速に関わる判断機能を外界認識電子装置1010の代替判断部1017で実行し、操舵に関わる判断機能を外界認識電子装置1020の代替判断部1027で実行し、ドライバへの警告や表示機能を外界認識電子装置1030の代替判断部1037で実行することによって、統合電子装置1000の処理負荷を低減できる。各代替判断部1017、1027、1037による機能の代替は、図12に図示したように判断部1004の全ての機能を代替えても、判断部1004の一部の機能を代替えてもよい。
【0078】
<実施例8>
本発明の実施例8では、複数の外界認識電子装置1010、1020、1030は、互いに接続されている。実施例8において、自動運転システムの構成及び処理について、前述した実施例と同じ部分の説明は省略し、相違点を主に説明する。
【0079】
図13は、本実施例の電子制御装置負荷分散システムが適用された自動運転システムのブロック図であり、自動運転システムを構成する電子装置の接続を示す。本実施例において前記複数の外界認識電子装置は互いに接続されている。本実施例では、処理負荷判定部1001及び機能境界変更判定部1002の少なくとも一方を、外界認識電子装置1010、1020、1030の少なくともいずれか一つに配置してよい。
【0080】
<実施例9>
本発明の実施例9では、実施例8の接続形態において、いずれかの外界認識電子装置の処理負荷が増大した場合、他の外界認識電子装置で処理を代替する。実施例9において、自動運転システムの構成及び処理について、前述した実施例と同じ部分の説明は省略し、相違点を主に説明する。
【0081】
本実施例では、統合電子装置1000の処理負荷を前記外界認識電子装置で代替せずに、外界認識電子装置の処理負荷が増大した場合に、他の外界認識電子装置で処理を代替させる。例えば、車両に前方認識センサ用、右側方認識センサ用、左側方認識センサ用、後方認識センサ用の四つの外界認識電子装置が搭載されている場合、前方は物標数が多く、後方は物標数が少ない場合がある。このような場合に、前方認識センサ用外界認識電子装置の認識処理の一部を、後方認識センサ用外界認識電子装置に代替させるとよい。
【0082】
<実施例10>
本発明の実施例10では、複数の統合電子装置1000が設けられる。複数の統合電子装置1000間で処理を代替えてもよい。
【0083】
<実施例11>
本発明の実施例11では、将来の負荷を予測する。例えば、処理負荷判定部1001は、現在の負荷値(CPU使用率や認識物標数など)から将来的の負荷値を予測する。実施例9で前述した四つの外界認識電子装置では、車両が前進している場合、前記前方認識センサ用外界認識電子装置の認識物標数が増加した後に、右側方認識センサ用外界認識電子装置又は左側方認識センサ用外界認識電子装置の認識物標数の増加が予測できる。
【0084】
<実施例12>
本発明の実施例12では、過去の走行データを学習して、将来の負荷を予測する。例えば、時間によって変化するCPU使用率を外挿して将来の不可知を予測してもよい。また、実施例11の処理負荷判定部1001において、過去の走行データにおける認識物標数の変化を教師データとして学習したDNNを用いて、数秒前から現在の認識物標数の変化から将来の認識物標数を予測できる。そして予測した認識物標数を用いて各電子装置の処理負荷を予測できる。
【0085】
前述した実施例では、統合電子装置1000の処理を外界認識電子装置1010、1020、1030で代替したり、外界認識電子装置1010、1020、1030同士で処理を代替するが、他の電子制御装置の処理を他の電子制御装置で代替する形態であれば、どの電子制御装置にも適用可能である。
【0086】
以上に説明したように本発明の実施例の統合電子装置1000によると、ピーク時の処理負荷を低減でき、統合電子装置1000への要求性能を低減できる。また、既存の他の電子装置のリソースを利用して、統合電子装置1000の処理を代替するので、別に電子装置を設けず、統合電子装置1000のピーク時の処理負荷を低減できる。
【0087】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0088】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウエアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウエアで実現してもよい。
【0089】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0090】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13