(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】B7-H3を標的とする抗体薬物複合体、その製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241002BHJP
C07K 1/107 20060101ALI20241002BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20241002BHJP
C07K 5/097 20060101ALI20241002BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241002BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241002BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241002BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241002BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241002BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241002BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K1/107
C07K7/06
C07K5/097
A61K47/68
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K31/4745
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2023537437
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 CN2020137472
(87)【国際公開番号】W WO2022126569
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510157476
【氏名又は名称】シャンハイ フダン-チャンジャン バイオ-ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ、チンソン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、イーチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、トン
(72)【発明者】
【氏名】パオ、ピン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ペイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ファン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、チュン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/057687(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/063673(WO,A1)
【文献】特表2017-537893(JP,A)
【文献】国際公開第2019/034176(WO,A1)
【文献】特表2017-510548(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110305213(CN,A)
【文献】Molecular Cancer Therapeutics,2020年11月,Vol.19, No.1,pp.2235-2244
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が式Iで表される通りである、抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【化1】
(ただし、Abは、B7-H3抗
体であり、mは、2~8であり
、
Dは、
【化2】
であり、R
2
及びR
5
は、それぞれ独立してH、C
1
~C
6
アルキル又はハロゲンであり、R
3
及びR
6
は、それぞれ独立してH、C
1
~C
6
アルキル又はハロゲンであり、R
4
及びR
7
は、それぞれ独立してC
1
~C
6
アルキルであり、
R
1は、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキル、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキル、
又はC
1~C
6アルキ
ルであり、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、
L
1は
、フェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基
、イソロイシン残基、ロイシン残基
、プロリン残基
、及びバリン残基の1つ又は複数であり、pは、2~4であり、
L
2は、
【化3】
であり、ここで、nは、独立して1~12であり、c端はカルボニルを介してL
1に連結され、f端はL
3のd端に連結され、
L
3は、
【化4】
であり、ここで、b端は前記Abに連結され、d端は前記L
2のf端に連結される。)
【請求項2】
L
3のb端は、前記抗体上のスルフヒドリルと、チオエーテルの形態で連結され、
及び/又は、前記R
1が、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記複数は、2つ又は3つであり、
及び/又は、前記R
1-1及びR
1-2が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記複数は、2つ又は3つであり、
及び/又は、前記R
1-3が、C
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、C
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記mは、4~8の整数又は非整数であり、
及び/又は、前記pは、2であり、
及び/又は、前記nは、8~12であり、
及び/又は、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3が、独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、C
1~C
4アルキルであることを特徴とする、請求項1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項3】
前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
及び/又は、前記R
4及びR
7が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記-NR
1-1R
1-2は、-N(CH
3)
2であり、
及び/又は、前記R
1が、1つの-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記1つの-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルは、
【化5】
であり、
及び/又は、前記R
1が、1つのR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記1つのR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルは、
【化6】
であり、
及び/又は、前記mは、7.4~7.85であり、
及び/又は、(L
1)
pは、
【化7】
であり、ここで、g端はカルボニルを通じて前記L
2のc端に連結され、
及び/又は、前記nは、8、9、10、11又は12であり、
及び/又は、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3が、独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチルであることを特徴とする、請求項
1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項4】
前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチルであり、
及び/又は、前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素であり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチルであり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素であり、
及び/又は、前記R
4及びR
7が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、エチルであり、
及び/又は、前記mは、7.47、7.48、7.52、7.62、7.64、7.65、7.67、7.72、7.78、7.83又は7.85である
ことを特徴とする、請求項
1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項5】
R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、
及び/又は、R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり、
及び/又は、R
4及びR
7は、エチルで
ある、請求項
1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項6】
前記抗体薬物複合体は、下記のいずれか1つの構成を有することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
(構成2:
前記R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、前記R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであ
る;
構成3:
前記R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、前記R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり、
前記mは、7~8であり
、
前記L
1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である;
構成4:
前記Dは、
【化8】
であ
る;
構成5:
前記Dは、
【化9】
であり、
前記mは、7~8であり
、
前記L
1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である
;
構成2-1:
前記Abは、前記B7-H3抗体であり、
Dは、
【化10】
である;
構成3-1:
前記Abは、前記B7-H3抗体であり、
Dは、
【化11】
であり、
mは、7~8であり、
L
1
は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である。
【請求項7】
前記抗体薬物複合体は、下記の式で表されるいずれか1つの化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
又は
【化22】
(ただし
、Abは、
前記B7-H3抗
体であり、
mは、7.47、7.48、7.52、7.62、7.64、7.65、7.67、7.72、7.78、7.83又は7.85である。)
【請求項8】
前記抗体薬物複合体は、下記の式で表されるいずれか1つの化合物であって、
【化23】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.64であり、
【化24】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.67であり、
【化25】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.83であり、
【化26】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.65であり、
【化27】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.78であり、
【化28】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.62であり、
【化29】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.48であり、
【化30】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.52であり、
【化31】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.47であり、
【化32】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.85であり、又は
【化33】
、Abは、
前記B7-H3抗体であり、
mは、7.72であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項9】
前記B7-H3抗体における軽鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号1に示される通りであり、重鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号2に示される通りである、請求項1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項10】
式IIで表される化合物とAb-水素
との間で下記に示されるカップリング反応を実行させるステップを含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体の製造方法。
【化34】
【請求項11】
物質X及び医薬補助剤を含む、医薬組成物であって、前記物質Xは、請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である、医薬組成物。
【請求項12】
B7-H3タンパク質阻害剤の製造における、物質X又は請求項
11に記載の医薬組成物の使用であって、前記物質Xは、請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である、使用。
【請求項13】
腫瘍を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、物質X又は請求項
11に記載の医薬組成物の使用であって、前記物質Xは、請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である、使用。
【請求項14】
前記腫瘍は、B7-H3陽性腫瘍であり、前記B7-H3陽性腫瘍は、B7-H3陽性肺癌、卵巣癌、黒色腫、膵臓癌、乳癌、脳神経膠腫、前立腺癌及び胃癌の1つ又は複数である、請求項
13に記載の使用。
【請求項15】
肺癌細胞は、NCI-1703細胞又はCalu-6細胞であり、
及び/又は、卵巣癌細胞は、PA-1細胞であり、
及び/又は、黒色腫細胞は、A375細胞であり、
及び/又は、膵臓癌細胞は、Hs-700T細胞であり、
及び/又は、乳癌細胞は、MDA-MB-468細胞であり、
及び/又は、脳神経膠腫細胞は、LN-229細胞であり、
及び/又は、胃癌細胞は、NCI-N87細胞である、請求項
14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ医学の分野に関し、特にB7-H3を標的とする抗体薬物複合体、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD276としても知られるB7-H3は、2001年に初めて報告され(Chapoval AIら、Nat Immmunol 2001,2(3):269-274)、そのタンパク質に一つのheptad構造及びB30.2ドメインが欠けていることから、ブチロフィリン及びミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質ではないと考えられ、それを免疫グロブリンスーパーファミリーB7ファミリー(Chapoval AIら、Nat Immmunol 2001,2(3):269-274)に属すると判明し、PD-L1、B7-H4、CD80、CD86などの他のファミリーメンバーとの違いは、B7-H3は、ヒトで2IgB7-H3及び4IgB7-H3の2つの異なる変異体として存在し、その中で4IgB7-H3は2IgB7-H3のエクソンコピーであり、人体では主に4IgB7-H3として存在し(Sun Mら、The Journal of Immunology 2002,168(12):6294-6297;Ling Vら、Genomics 2003,82(3):365-377;Steinberger Pら、 J IMMUNOL 2004,172(4):2352-2359)、マウスでは2IgB7-H3構造(Sun Mら、The Journal of Immunology 2002,168(12):6294-6297)のみを含む。この研究の結果は、天然マウスの2IgB7-H3とヒト4IgB7-H3が、機能的な差のない同様の機能を示すことを示し(Ling Vら、 Genomics 2003,82(3):365-377; Hofmeyer KAら、 Proc Natl)Acad Sci US A 2008,105(30):10277-10278.)、結晶構造は、当該タンパク質のIgV領域のFG loopがB7-H3の機能にとって重要なエピトープであることを示している(Vigdorovich Vら、 Structure 2013,21(5):707-717)。
【0003】
B7-H3のmRNAレベルは広く発現され、例えば、心臓、肝臓、胎盤、前立腺、精巣、子宮、膵臓、小腸及び結腸など、人体の多くの組織や器官で高レベルのB7-H3のmRNAレベルが検出されるが、タンパク質発現レベルは、休止状態の線維芽細胞、内皮細胞、骨芽細胞、羊水幹細胞などの非免疫細胞、ならびに誘導抗原提示細胞及びNK細胞の表面に相対的に限定されている(Hofmeyer KAら、 Proc Natl Acad Sci U S A 2008, 105(30):10277-10278;Yi KHら、 Immunol Rev 2009, 229(1):145-151; Picarda Eら、 CLIN CANCER RES 2016, 22(14):3425-3431)。B7-H3のタンパク質レベルは、正常な健康な組織では低発現し、例えば、正常なヒトの肝臓、肺、膀胱、精巣、前立腺、乳房、胎盤、リンパ器官などの組織では、B7-H3の低いタンパク質レベルが検出されるが、B7-H3タンパク質は多くの悪性腫瘍で過剰発現し、腫瘍細胞のマーカー抗原であり、研究では、B7-H3が前立腺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、腎細胞癌、非小細胞肺癌、膵臓癌、黒色腫、胃癌、膀胱癌、悪性神経膠腫及び骨肉腫などの多くの癌で高度に発現され、特に頭頸部癌、腎臓癌、神経膠腫及び甲状腺癌などの多くの癌で異常に高発現され(Roth TJら、 CANCER RES 2007, 67(16):7893-7900;Zang Xら、 MODERN PATHOL 2010, 23(8):1104-1112;Ingebrigtsen VAら、 INT J CANCER 2012, 131(11):2528-2536;Sun Jら、 Cancer Immunology, Immunotherapy 2010, 59(8):1163-1171;Crispen PLら、 CLIN CANCER RES 2008, 14(16):5150-5157;Zhang Gら、 LUNG CANCER 2009, 66(2):245-249;Yamato Iら、 Br J Cancer 2009, 101(10):1709-1716;Tekle Cら、 INT J CANCER 2012, 130(10):2282-2290;Katayama Aら、 INT J ONCOL 2011, 38(5):1219-1226;Wu CPら、 World J Gastroenterol 2006, 12(3):457-459;Wu Dら、 ONCOL LETT 2015, 9(3):1420-1424)、B7-H3は腫瘍細胞で発現されるだけでなく、腫瘍新生血管内皮細胞でも高度に発現され、非常に広範囲な腫瘍マーカー抗原である。B7-H3タンパク質の高発現は癌の進行を促進する可能性があり、患者の予後不良と生存利益の低下に関連している。
【0004】
初期の研究結果では、B7-H3が活性化T細胞の機能を刺激し、CD4及びCD8細胞の増殖とIFN-γの分泌を促進できることが示されているが、継続的な研究により、B7-H3は免疫チェックポイントとして働き、T細胞の負の制御分子であり、主にT細胞の機能を阻害し、T細胞の活性をダウンレギュレーションする効果を果たしていることが示された。Woong-Kyung Suh及びDurbaka V. R. Prasadによる研究では、マウスのB7-H3タンパク質が用量依存的にCD4、CD8細胞の増殖を有意に阻害できることが示された(Suh Wら、 NAT IMMUNOL 2003, 4(9):899-906;Prasad DVRら、The Journal of Immunology 2004, 173(4):2500-2506)。Judith Leitnerらによる研究では、ヒト4Ig-B7-H3Ig及び2Ig-B7-H3Igがいずれも体外でT細胞の増殖を阻害し、CD4、CD8細胞に関連するサイトカイン(IFN-γ、IL-2、IL-10、IL-13)の分泌を阻害することを示し(Leitner Jら、EUR J IMMUNOL 2009, 39(7):1754-1764)、さらなる分析によりB7-H3は主にIL-2の産生を阻害してT細胞の阻害を媒介することが示された。しかし、マウスの体内でB7-H3を標的として中和する抗体は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の進行及びCD4細胞の増殖を有意に促進する可能性があり、これは体内でのT細胞の阻害におけるB7-H3の機能を客観的に示している(Prasad DVRら、The Journal of Immunology 2004, 173(4):2500-2506)。Woong-Kyung Suhの研究では、B7-H3欠損マウスは野生型マウスよりも免疫EAE条件下で早期に実験的自己免疫性脳脊髄炎(Th1細胞によって引き起こされる)を示し、B7-H3が主にTh1細胞を阻害することが示された(Suh Wら、NAT IMMUNOL 2003, 4(9):899-906)。上述のように、B7-H3のT細胞に対する機能は議論されているが、B7-H3によるT細胞機能の促進はマウスの研究でのみ現れており、ヒトB7-H3によるT細胞機能の促進はまだ報告されてなく、B7-H3ので受容体はまだ同定されていないが、B7-H3がT細胞の負の制御分子であることが現在学界の主な見解である。
【0005】
B7-H3がT細胞の活性を阻害し、それによって腫瘍細胞が免疫監視から逃れることを媒介できること基づいて、B7-H3の未知の受容体への結合をブロックして、T細胞の活性化を媒介し、腫瘍細胞の活性を阻害することは効果的であり、例えば、Enoblituzumabの既存の臨床結果は、異なる腫瘍のいずれにも異なる程度の寛解を有し、良好な治療効果があることを示しているが、依然として疾患が進行している患者が多数存在するため、B7-H3に対するモノクローナル抗体の単純な開発には臨床上の大きなアンメットニーズまだ残されており、既存の臨床結果は、その抗腫瘍効果を更に改善する必要があることを示している。
【0006】
抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate、ADC)は、新世代の抗体標的治療薬であり、主に癌腫瘍の治療に使用される。ADC医薬品は、低分子細胞傷害性薬剤(Drug)、抗体(Antibody)、及び抗体と細胞傷害性薬剤をつなぐリンカー(Linker)で構成されており、低分子細胞傷害性薬剤は化学結合により抗体タンパク質に結合している。ADC薬物は抗体を使用して小分子薬を特異的に認識し、癌特異抗原を発現する癌細胞標的に誘導し、エンドサイトーシスを通じて癌細胞に侵入する。リンカー部分は、細胞内の低pH値環境又はリソソームプロテアーゼの作用下で破壊され、小分子の細胞毒性薬物を放出し、正常組織細胞に損傷を与えることなく癌細胞を特異的に殺傷する効果を達成できる。従って、ADC薬物は抗体の標的特異性及び癌細胞に対する小分子毒素の高い毒性の特徴を結合し、薬物の有効な治療用量範囲(Therapeutic window)を大幅に拡大する。臨床研究では、ADC薬物は有効性が高く、血液中で比較的安定し、循環系及び健康な組織に対する低分子細胞傷害性薬剤(化学薬品)の毒性を効果的に軽減できることが証明されており、現在抗癌薬物の国際研究開発における研究ホットスポットとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の抗体薬物複合体の種類が単一である欠点を克服するための、B7-H3を標的とする抗体薬物複合体、その製造方法及び使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される抗体薬物複合体は、良好なターゲティングを有し、B7-H3を陽性発現する腫瘍細胞に対して良好な阻害効果を有し、更に良好な創薬可能性及び安全性を有する。当該抗体薬物複合体は、B7-H3に対して阻害効果を有し、またNCI-N87、A375、LN-229、PA-1、MDA-MB-468、Calu-6及びHs-700T細胞の少なくとも1つに対して良好な効果を有する。
【0009】
本発明は、以下の技術的解決手段を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0010】
本発明は、構造が式Iで表される通りである、抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物を提供する。
【0011】
【0012】
ただし、Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、mは、2~8であり、
前記B7-H3抗体における軽鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号1に示される通りであり、重鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号2に示される通りであり、
前記B7-H3抗体の変異体は、B7-H3抗体と比べて、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%以上の相同性を有し、
Dは、細胞毒性薬トポイソメラーゼ阻害剤であり、
R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、C1~C6アルキル、C3~C10シクロアルキル、C6~C14アリール又は5~14員ヘテロアリールであり、前記5~14員ヘテロアリールのヘテロ原子は、N、O及びSから選択される1つ又は複数であり、ヘテロ原子の数は、1、2、3又は4であり、前記R1-1、R1-2及びR1-3は、それぞれ独立してC1~C6アルキルであり、
L1は、独立してフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、プロリン残基、セリン残基、スレオニン残基、トリプトファン残基、チロシン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、pは、2~4であり、
L2は、
【0013】
【0014】
であり、ここで、nは、独立して1~12であり、c端はカルボニルを介してL1に連結され、f端は前記L3のd端に連結され、
【0015】
L3は、
【0016】
【0017】
であり、ここで、b端は前記Abに連結され、d端は前記L2のf端に連結される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体において、特定の基は以下の定義を有し、言及されていない基の定義は、上記の方案のいずれかに記載される通りである(以下、本段落の内容を「本発明の好ましい実施形態において」と言う)。
【0019】
前記L3のb端は、好ましくは前記抗体のスルフヒドリルと、チオエーテル結合の形態で連結されている。
【0020】
【0021】
を例として、
【0022】
【0023】
と前記抗体のシステイン残基との連結形態は
【0024】
【0025】
である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、Dが細胞阻害性薬物トポイソメラーゼ阻害剤である場合、前記細胞阻害性薬物トポイソメラーゼ阻害剤は、好ましくは
【0027】
【0028】
であり、R2及びR5は、それぞれ独立してH、C1~C6アルキル又はハロゲンであり、R3及びR6は、それぞれ独立してH、C1~C6アルキル又はハロゲンであり、R4及びR7は、それぞれ独立してC1~C6アルキルである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記R2及びR5が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記R2及びR5が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくはフッ素である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、前記R3及びR6が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、前記R3及びR6が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくはフッ素である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、前記R4及びR7が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはエチルである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、R2及びR5は、それぞれ独立してC1~C6アルキルである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、R3及びR6は、それぞれ独立してハロゲンである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、R4及びR7は、エチルである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、Dは、
【0038】
【0039】
である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、前記Dが
【0041】
【0042】
である場合、前記抗体薬物複合体は、
【0043】
【0044】
であってもよい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、より好ましくはエチルである。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記複数は2つ又は3つである。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1-1及びR1-2が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、より好ましくはメチルである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記-NR1-1R1-2は、好ましくは-N(CH3)2である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つの-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記1つの-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルは、好ましくは
【0050】
【0051】
である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはエチルである。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記複数は2つ又は3つである。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1-3が、C1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、より好ましくはメチルである。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つのR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記1つのR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルは、
【0056】
【0057】
である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、C1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、前記mは、整数(例えば、2、3、4、5、6、7又は8)又は非整数であり、好ましくは4~8であり、より好ましくは6~8であり、より好ましくは7~8であり、更に好ましくは7.4~7.85であり、例えば、7.47、7.48、7.52、7.62、7.64、7.65、7.67、7.72、7.78、7.83又は7.85である。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、前記L1は、好ましくはフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、プロリン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、より好ましくはフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、より好ましくはバリン残基及び/又はアラニン残基であり、前記複数は、好ましくは2つ又は3つであり、前記pは、好ましくは2である。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、前記(L1)pは、好ましくは
【0062】
【0063】
であり、ここで、g端はカルボニルを通じて前記L2のc端に連結される。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、前記nは、好ましくは8~12であり、例えば、8、9、10、11及び12であり、また例えば、8又は12である。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1-1、R1-2及びR1-3が、独立して好ましくはC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1は、好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、C1~C6アルキル又はC3~C10シクロアルキルであり、より好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、より好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、又は、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルであり、最も好ましくは1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである。
【0067】
本発明において、Abが、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体である場合、前記B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体は、B7-H3抗体の残基(B7-H3抗体における1つのスルフヒドリル上の水素が置換されて形成した基)又はB7-H3抗体の変異体の残基(B7-H3抗体の変異体における1つのスルフヒドリル上の水素が置換されて形成した基)である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、前記の式Iで表される化合物は、下記のいずれか1つスキームに記載された通りである。
【0069】
スキーム1:
Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、好ましくはB7-H3抗体であり、
Dは、
【0070】
【0071】
であり、R2及びR5は、それぞれ独立してH、C1~C6アルキル又はハロゲンであり、R3及びR6は、それぞれ独立してH、C1~C6アルキル又はハロゲンであり、R4及びR7は、それぞれ独立してC1~C6アルキルであり、Dは、好ましくは
【0072】
【0073】
であり、
R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、C1~C6アルキル又はC3~C10シクロアルキルであり、
L1は、独立してフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、プロリン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、
【0074】
スキーム2:
前記Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、好ましくはB7-H3抗体であり、
Dは、
【0075】
【0076】
であり、前記R2及びR5は、それぞれ独立してC1~C6アルキルであり、前記R3及びR6は、それぞれ独立してハロゲンであり、Dは、好ましくは
【0077】
【0078】
であり、
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
L1は、独立してフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、プロリン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、
【0079】
スキーム3:
前記Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、好ましくはB7-H3抗体であり、
Dは、
【0080】
【0081】
であり、前記R2及びR5は、それぞれ独立してC1~C6アルキルであり、前記R3及びR6は、それぞれ独立してハロゲンであり、Dは、好ましくは
【0082】
【0083】
であり、
前記mは、7~8であり、
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
前記L1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基であり、
【0084】
スキーム4:
前記Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、好ましくはB7-H3抗体であり、
前記Dは、
【0085】
【0086】
であり、
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
【0087】
スキーム5:
前記Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、好ましくはB7-H3抗体であり、
前記Dは、
【0088】
【0089】
であり、
前記mは、7~8であり、
【0090】
つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
前記L1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは
【0092】
【0093】
【0094】
又は
【0095】
【0096】
である。
【0097】
本発明の好ましい実施形態において、前記L2は、好ましくは、
【0098】
【0099】
である。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、前記Abは、B7-H3抗体であり、Dは、
【0101】
【0102】
であり、L1は、バリン残基及び/又はアラニン残基であり、pは、2であり、(L1)pは、好ましくは
【0103】
【0104】
であり、R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル又はC1~C6アルキルであり、好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、又は、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルであり、より好ましくは1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルであり、前記R1-1、R1-2及びR1-3は、独立してC1~C4アルキルであり、好ましくはメチルであり、前記1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルは、好ましくは
【0105】
【0106】
であり、前記1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルは、好ましくは
【0107】
【0108】
であり、L2は、
【0109】
【0110】
であり、L3は、
【0111】
【0112】
である。
【0113】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つ化合物である。
【0114】
【0115】
【0116】
又は
【0117】
【0118】
ただし、Abは、B7-H3抗体又はB7-H3抗体の変異体であり、mは、7.47、7.48、7.52、7.62、7.64、7.65、7.67、7.72、7.78、7.83又は7.85である。
【0119】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つ化合物である。
【0120】
【0121】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.64であり、
【0122】
【0123】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.67であり、
【0124】
【0125】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.83であり、
【0126】
【0127】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.65であり、
【0128】
【0129】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.78であり、
【0130】
【0131】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.62であり、
【0132】
【0133】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.48であり、
【0134】
【0135】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.52であり、
【0136】
【0137】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.47であり、
【0138】
【0139】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.85であり、又は
【0140】
【0141】
、Abは、B7-H3抗体であり、mは、好ましくは7.72である。
【0142】
本発明はまた、式IIで表される化合物とAb-水素を下記に示されるカップリング反応を実行させるステップを含む、抗体薬物複合体の製造方法を提供する。
【0143】
【0144】
ただし、前記L1、L2、L3、R1、p及びAbの定義は上記で記載した通りである。
【0145】
本発明において、前記カップリング反応の条件及び操作は、当技術分野におけるカップリング反応の通常の条件及び操作であってもよい。
【0146】
本発明はまた、物質X及び医薬補助剤を含む、医薬組成物を提供し、前記物質Xは、上記抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である。
【0147】
前記医薬組成物において、前記上記の物質Xの使用量は、治療有効量であってもよい。
【0148】
本発明はまた、B7-H3タンパク質阻害剤の製造における上記の物質X又は上記の医薬組成物の使用を提供する。
【0149】
本発明はまた、腫瘍を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、上記の物質X又は上記の医薬組成物の使用を提供し、前記腫瘍は、好ましくはB7-H3陽性腫瘍である。前記B7-H3陽性腫瘍は、好ましくはB7-H3陽性肺癌、卵巣癌、黒色腫、膵臓癌、乳癌、脳神経膠腫、前立腺癌及び胃癌の1つ又は複数である。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態において、前記肺癌において、肺癌細胞は、NCI-1703細胞又はCalu-6細胞であり、
本発明のいくつかの実施形態において、前記卵巣癌において、卵巣癌細胞は、PA-1細胞であり、
本発明のいくつかの実施形態において、前記黒色腫において、黒色腫細胞は、A375細胞であり、
本発明のいくつかの実施形態において、前記膵臓癌において、膵臓癌細胞は、Hs-700T細胞であり、
本発明のいくつかの実施形態において、前記乳癌において、乳癌細胞は、MDA-MB-468細胞であり、
本発明のいくつかの実施形態において、前記脳神経膠腫において、脳神経膠腫細胞は、LN-229細胞であり、
本発明のいくつかの実施形態において、前記胃癌において、胃癌細胞は、NCI-N87細胞である。
【0151】
別途に説明しない限り、本発明の明細書及び請求の範囲で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0152】
前記の医薬賦形剤は、医薬製造分野で広く使用されている賦形剤であってもよい。賦形剤は主に、安全、安定及び機能的な医薬組成物を提供するために使用され、更に対象に投与後に有効成分を所望の速度で溶解できるようにする方法、又は対象への組成物の投与後の有効成分の効果的な吸収が促進されるようにする方法を提供することができる。前記医薬賦形剤は、不活性充填剤であってもよく、又は特定の機能、例えば、当該組成物の全体的なpHを安定化させるか又は組成物の有効成分の分解を防ぐ機能を提供する。前記医薬賦形剤には、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、可溶化剤、安定剤、賦形剤及び界面活性剤着色剤、矯味剤及び甘味料の1つ又は複数が含まれる。
【0153】
用語「薬学的に許容される」とは、一般に無毒で、安全で、また患者への使用に適した塩、溶媒、助剤などを指す。前記の「患者」は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0154】
用語「薬学に許容される塩」とは、本発明の化合物と比較的に無毒で、薬学的に許容される酸又は塩基で製造された塩を指す。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の薬学的に許容される塩基とこれらの化合物の中性の形態と接触させることで塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、ビスマス塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は、適切な不活性溶媒において十分な量の薬学的に許容される酸とこれらの化合物の中性形態と接触させることで酸付加塩を得ることができる。前記薬学的に許容される酸は、無機酸を含み、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、リン酸、亜リン酸、硫酸などが含まれるが、これらに限定されない。前記薬学的に許容される酸は、有機酸を含み、前記有機酸は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、イソニコチン酸、酸性クエン酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素、アスコルビン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、糖酸、ギ酸、エタンスルホン酸、パモ酸(即ち、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、アミノ酸(グルタミン酸、アルギニンなど)などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物に比較的酸性及び比較的塩基性の官能基が含まれる場合、塩基付加塩又は酸付加塩に転換することができる。具体的にはBerge et al., 「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)、又は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth, ed., Wiley-VCH, 2002)を参照できる。
【0155】
用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物を化学量論的又は非化学量論的量の溶媒と組み合わせることによって形成される物質を指す。溶媒和物中の溶媒分子は、規則的又は非規則的配置で存在することができる。前記溶媒は、水、メタノール、エタノールなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
天然又は天然配列のB7-H3は、自然から分離することができるか、或いは組換えDNA技術、化学合成、又は上記及び同様の技術の組み合わせによって製造することができる。
【0157】
ここで、抗体は最も広い意味で解釈され、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識領域を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂肪、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる。具体的には、所望の生物学的活性を有する限り、完全なのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体及び抗体フラグメントが含まれる。本発明の抗体の変異体とは、天然ポリペプチドと同等の生物学的活性が保持されているという条件で、アミノ酸配列の突然変異体、及び天然ポリペプチドの共有結合誘導体を指す。アミノ酸配列突然変異体と天然アミノ酸配列との違いは、一般に、天然アミノ酸配列中の1つ又は複数のアミノ酸が置換されるか、又はポリペプチド配列での1つ又は複数のアミノ酸が欠失及び/又は挿入されることである。欠失突然変異体には、天然ポリペプチドの断片と、N末端及び/又はC末端切断型突然変異体が含まれる。一般に、アミノ酸配列突然変異体は、天然の配列と比較して、少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%)の相同性を有する。
【0158】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、又はこれらの技術の組み合わせ、或いはこの分野で既知の他の技術など、当該分野で既知の技術を用いて製造することができる。
【0159】
用語「抗体薬物複合体比」(drug-antibody ratio、即ちDAR)についての説明する。L-Dは抗体上の結合点と反応する基であり、Lはリンカーであり、DはLに連結された抗体に更に結合する細胞傷害性薬剤であり、本発明においてDはDxdであり、各抗体がDに最終的に結合するDARの数をmで表され、又はmはDと結合した単一抗体の数を表すこともできる。いくつかの実施形態において、mは、実際には、2~8、4~8又は6~8の間に位置する平均値であり、又はmは、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか1つの整数であり、1つの実施形態において、mは、2、4、6、又は8の平均値であり、他の実施形態において、mは、2、3、4、5、6、7又は8の平均値である。
【0160】
リンカーとは、抗体と薬物との間を直接的又は間接的連結する部分を指す。リンカーのmAbへの結合は、表面リジン、酸化炭水化物への還元カップリング、及び鎖間ジスルフィド結合によって放出されるシステイン残基の還元など、様々な方法で実現できる。様々なADC結合系は当技術分野で周知であり、ヒドラゾン、ジスルフィド及びペプチドベースの結合を含む。
【0161】
用語「治療」又はほかの類似の同義語が、例え癌等に適用される場合、患者の体内の癌細胞の数を減らすか、又は除去すること、又は癌の症状を軽減するための過程またはプロセスを指す。癌又は他の増殖性障害における「治療」は、必ずしも癌細胞又は他の障害が実際に解消されること、細胞又は障害の数が実際に減少すること、又は、癌又は他の障害の症状が実際に減少することを意味するわけではない。通常、成功の可能性が低くても、がんの治療法が実行されるが、患者の病歴と推定生存期間を考慮すると、全体的に有益な行動方針をもたらすと考えられる。
【0162】
用語「予防」とは、疾患又は障害を獲得又は発症するリスクを低減することを指す。
【0163】
用語「シクロアルキル」とは、単環式シクロアルキルを含む、3~20個の炭素原子を有する飽和環式炭化水素原子団(例えば、C3~C6シクロアルキル)を指す。シクロアルキルは3~20個の炭素原子を含み、好ましくは3~10個の炭素原子を含み、より好ましくは3~6個の炭素原子を含む。シクロアルキルの実例にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルなどが含まれが、これらに限定されない。
【0164】
用語「アルキル」とは、特定の数の炭素原子数を含む直鎖又は分岐鎖アルキルを指す。アルキルの実例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル及び類似したアルキルが含まれる。
【0165】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0166】
用語「ヘテロアリール」とは、1、2、3又は4つの独立してN、O及びSから選択される、ヘテロ原子を含むアリール(又は芳香環)を指し、フリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ジアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルなどの単環式芳香族系であってもよい。
【0167】
用語「アリール」とは、任意の安定な単環式又は二環式炭素環を指し、その中ではすべての環はいずれも芳香族である。上記アリール単位の実例はフェニル、又はナフチルを含む。
【0168】
前記好ましい条件は、当技術分野の通常の知識を違反しない限り、任意に組み合わせて、本発明の各々の好ましい実施例を得ることができる。
【0169】
特に説明しない限り、本発明における室温は20~30℃を指す。
【0170】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【発明の効果】
【0171】
本発明の積極的な進歩効果は:
1.本発明により提供されるB7-H3抗体を含む抗体薬物複合体は、良好なターゲティングを有し、B7-H3などを発現する各種腫瘍細胞に対して良好な阻害効果を有する。
2.体内研究により、本発明の抗体薬物複合体は、より優れた体外細胞毒性、体内抗腫瘍活性を有することを示す。
3.本発明の抗体薬物複合体は良好な溶解性、良好な創薬可能性を有し、カップリング製造過程において沈殿などの異常現象がなく、抗体薬物複合体の製造に非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【
図1】FDA016抗体の軽鎖、重鎖の発現ベクターの構築を示し、その中でAb-Lは、抗体の軽鎖であり、Ab-Hは抗体の重鎖である。
【発明を実施するための形態】
【0173】
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれる。
【0174】
略語の説明:
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
CHO チャイニーズハムスター卵巣細胞
HTRF 均質時間分解蛍光法
PB リン酸緩衝液
EDTA エチレンジアミン四酢酸
TECP トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン
DMSO ジメチルスルホキシド
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
HATU 2-(7-アザベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
v/v V/V、体積比
UV 紫外線可視光
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
BSA ウシ血清アルブミン
rpm 回/分(一分間に回転する回転数)
FBS ウシ胎児血清
【実施例】
【0175】
実施例1:B7-H3抗体の製造
【0176】
本発明では、親和性が高く、B7-H3を特異的に標的とするモノクローナル抗体FDA016を選択し、その軽鎖のアミノ酸配列は配列番号1に示される通りであり、その重鎖のアミノ酸配列は配列番号2に示される通りである。FDA016の軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列は、全遺伝子合成(Suzhou Genewiz)によって取得した。EcoR I及びHind III(TAKARAから購入)二重酵素切断によってそれぞれpV81担体に構築し(
図1)、ライゲーションによってTrans1-T1コンピテントセルに形質転換し(Beijing TransGen Biotechから購入、商品番号:CD501-03)、PCR同定のためにクローンを選択し、検査、配列確認し、培養・増幅した陽性クローンを血漿から抽出して、抗体軽鎖の真核生物発現血漿FDA016-L/pV81及び抗体重鎖の真核生物発現血漿FDA016-H/pV81を得、これら2つの血漿をXbaI(Takaraから購入、商品番号:1093S)で酵素切断して線状化させ、軽鎖、重鎖の真核生物発現血漿の比は1.5/1であり、電気ショックにより懸濁増殖適応のCHO細胞(ATCCから購入)に形質転換し、電気ショック後の細胞を2000~5000細胞/ウェルで96ウェルプレートに連結し、3週間培養した後、HTRF法(均質時間分解蛍光法)によって発現量を測定し、その中から発現量が上位10位の細胞プールを選択して増幅した後、凍結保存した。細胞を125mlの振盪フラスコ(30mlの培養体積)で復蘇させ、37℃、5.0%のCO
2、130rpmで振盪培養し、3日後に1000mlの振盪フラスコ(300mlの培養体積)に拡張し、37℃、5.0%のCO
2、130rpmで振盪培養し、4日目から1日おきに初期培養体積の5~8%のフィード培地の追加を開始し、10~12日間培養した後に培養を終了し、回収液を9500rpmで15分間遠心分離して、細胞沈殿を除去し、上清を収集し、更に0.22μm濾膜で濾過し、処理された試料をMabSelectアフィニティークロマトグラフィーカラム(GEから購入)で精製して抗体FDA016を得た。
【0177】
FDA016の軽鎖アミノ酸配列は下記の通りである:
【0178】
配列番号1:
1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESIYSYLAWYQQKPGKAPKLLVYN
51 TKTLPEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPPWTFG
101 QGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWK
151 VDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQ
201 GLSSPVTKSFNRGEC
【0179】
FDA016の重鎖アミノ酸配列は下記の通りである:
【0180】
配列番号2:
【0181】
1 EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLEWVAT
51 INSGGSNTYYPDSLKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARHD
101 GGAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYF
151 PEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYIC
201 NVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDT
251 LMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTY
301 RVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYT
351 LPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDS
401 DGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0182】
実施例2:リンカー-薬物複合体の合成
実施例2-1:LE12の合成
【0183】
【0184】
中間体2の合成: (S)-2-アジドプロピオン酸(10g、86.9mmol)及び4-アミノベンジルアルコール(21.40g、173.8mmol)を300mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(体積比2:1)に溶解させ、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(21.49g、86.9mmol)を加え、室温で5時間反応させた後、溶媒を減圧蒸発させ、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:酢酸エチル=1:1(v/v)]で精製して中間体2(16.3g、収率:85%)を得、ESI-MS m / z:221(M + H)であった。
【0185】
中間体3の合成:
中間体2(15g、68.2mmol)及びビス(p-ニトロフェニル)カーボネート(22.82g、75.02mmol)を混合して200mLの無水N、N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、25mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。液体クロマトグラフィー-質量分析で原料の反応完了をモニターした後、メチルアミン塩酸塩(6.91g、102.3mmol)を加え、室温で1時間反応を続けた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、200mLの水、200mLの酢酸エチルを加え、溶液を分離した後有機相を収集し、有機相を乾燥させた後に濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:酢酸エチル=10:1(v/v)]で精製して中間体3(18.9g、収率:100%)を得、ESI-MS m / z:278( M + H)であった。
【0186】
中間体5の合成:
中間体3(10g、36.1mmol)及びパラホルムアルデヒド(1.63g、54.2mmol)を混合して150mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、トリメチルクロロシラン(6.28g、57.76mmol)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させ中間体4の粗溶液を得、サンプリングしてメタノールを加えてクエンチングさせた後、液体質量分析法で反応をモニタリングし、反応終了後、反応液を濾過し、濾液にヒドロキシ酢酸tert-ブチル(9.54g、72.2mmol)及びトリエチルアミン(10mL、72.2mmol)を加え、室温で2時間反応を続けた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[石油エーテル:酢酸エチル=3:1(v/v)]で精製して中間体5(11.2g、収率:74%)を得、ESI-MS m / z:422( M + H)であった。
【0187】
中間体6の合成:
中間体5(10g、23.8mmol)を80mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、80mLの水を加えた後、トリス(2-カルボキシエチルホスフィン)塩酸塩(13.6g、47.6mmol)を加え、室温で4時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留してテトラヒドロフランを除去し、酢酸エチルを加えて抽出した後、得られた有機相を乾燥させ、減圧蒸発して溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体6(8.1g、収率:86%)を得、ESI-MS m/z:396(M+H)であった。
【0188】
中間体8の合成:
中間体6(5g、12.7mmol)を60mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(v/v=2:1)に溶解させ、3mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、同じ体積の水及び酢酸エチルを加え、有機相を乾燥させた後、濃縮し、得られた粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0189】
上記のステップで得られた粗生成物を50mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、Fmoc-バリンヒドロキシスクシンイミドエステル(8.3g、19.1mmol)、トリエチルアミン(5mL)を加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体8(5.4g、収率:64%)を得、ESI-MS m/ z:661(M+H)であった。
【0190】
中間体9の合成:
中間体8(1g、1.5mmol)及びExatecanメシル酸塩(0.568g、1mmol)を30mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに混合し、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(1.14g、3.0mmol)、2mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒のを除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体9(0.94g、収率:87%)を得、ESI-MS m/ z:1078(M+H)であった。
【0191】
化合物LE12の合成:
中間体9(1g、0.929mmol)を20mLの無水DMFに溶解させ、0.5mLの1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エンを加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、6-(マレイミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステル(428.5mg、1.39mmol)を直接に加え、室温で1時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=8:1(v/v)]で精製して表題化合物(0.7g、収率:73%)を得、ESI-MS m/z:1035(M+H)であった。
【0192】
実施例2-2:化合物LE13の合成
【0193】
【0194】
中間体14の合成
市販の中間体12(267mg、0.8mmol)及びパラホルムアルデヒド(50mg、1.6mmol)を混合して20mlの無水ジクロロメタンに溶解させ、トリメチルクロロシラン(0.3ml、3.4mmol)をゆっくりと加え、添加完了後室温で2時間反応させた。その後、サンプリングし、メタノールを加えてクエンチングさせた後、液体質量分析法で反応をモニタリングし、反応終了後に反応溶液を濾過し、濾液にグリコール酸tert-ブチル(211mg、1.6mmol)及び0.5mlのペンピジン(Pempidine)を加え、室温で約2時間反応を続け、反応終了後、減圧下で蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=20:1(v/v)]で精製して中間体14(260mg、収率:68%)を得、ESI-MS m/z:479(M+H)であった。
【0195】
中間体15の合成
中間体14(238mg、0.50mmol)を6mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(v/v=2:1)に溶解させ、0.3mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、同じ体積の水及び酢酸エチルを加え、有機相を乾燥させた後、濃縮し、得られた粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0196】
中間体16の合成
上記のステップで得られた粗生成物及びExatecanメシル酸塩(170mg、0.30mmol)を5mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに混合し、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(341mg、0.90mmol)、0.60mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体16(210mg、収率:83%)を得、ESI-MS m/ z:840(M+H)であった。
【0197】
中間体17の合成
中間体16(100mg、0.12mmol)を15mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、3mLの水を加えた後、1mol/Lのトリエチルホスフィン水溶液0.3mLを加え、室温で4時間反応させた。反応の終了をモニタリングした後、反応溶液を減圧蒸留してテトラヒドロフランを除去し、残りの水溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて、pHを中性に調節し、ジクロロメタンを加えて抽出し、得られた有機相を乾燥させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体17(69mg、収率:71%)を得、ESI-MS m/z:814(M+H)であった。
【0198】
化合物LE13の合成
前ステップの合成法で得られた中間体17(120mg、0.15mmol)及び市販の原料MC-V(102mg、0.33mmol)を40mLのジクロロメタンに混合し、縮合剤2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(82mg、0.33mmol)を加え、室温で一晩反応させ、反応終了後、溶媒を減圧蒸留し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して化合物LE13(116mg、収率:70%)を得、ESI-MS m/z:1106.5(M+H)であった。
【0199】
実施例2-3:化合物LE14の合成
【0200】
【0201】
中間体19の合成
市販の中間体18(300mg、0.8mmol)とパラホルムアルデヒド(50mg、1.6mmol)を混合して20mlの無水ジクロロメタンに溶解させ、トリメチルクロロシラン(0.3ml、3.4mmol)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させ、サンプリングし、メタノールを加えてクエンチングさせた後、液体質量分析法で反応をモニタリングした。反応終了後、反応溶液を濾過し、濾液にグリコール酸tert-ブチル(211mg、1.6mmol)及びトリエチルアミン(0.22m、1.6mmol)を加え、室温で約2時間反応を続け、反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=20:1(v/v)]で精製して中間体19(349mg、収率:85%)を得た。ESI-MS m/z:514(M+H),1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.13 (s, 1H), 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.35 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.91 (s, 2H), 4.25 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.99 (d, J = 42.5 Hz, 2H), 3.85 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.40 (dd, J = 18.5, 7.6 Hz, 2H), 2.89 (d, J = 48.6 Hz, 3H), 1.65 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.46 (s, 9H)。
【0202】
中間体20の合成
中間体19(257mg、0.50mmol)を6mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(v/v=2:1)に溶解させ、0.3mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、同じ体積の水及び酢酸エチルを加え、有機相を乾燥させた後、濃縮し、得られた粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0203】
得られた粗生成物及びExatecanメシル酸塩(170mg、0.30mmol)を5mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに混合し、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(341mg、0.90mmol)、0.06mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=20:1(v/v)]で精製して中間体20(212mg、収率:81%)を得た。ESI-MS m/ z:875(M+H)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.27 (d, J = 34.7 Hz, 1H), 7.63 - 7.35 (m, 5H), 7.21 - 7.10 (m, 1H), 5.71 - 5.48 (m, 2H), 5.24 - 4.95 (m, 3H), 4.95 - 4.72 (m, 4H), 4.45 (s, 1H), 4.33 - 3.97 (m, 3H), 3.75 (s, 2H), 3.39 - 2.99 (m, 4H), 2.76 (d, J = 15.3 Hz, 3H), 2.43 - 2.15 (m, 5H), 2.04 (s, 1H), 1.94 - 1.75 (m, 2H), 1.62 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.11 - 0.89 (m, 3H)。
【0204】
中間体21の合成
中間体20(77mg、0.09mmol)を12mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、3mLの水を加えた後、1mol/Lのトリエチルホスフィン水溶液を0.3mL加え、室温で4時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留してテトラヒドロフランを除去し、残りの水溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて、pHを中性に調節し、ジクロロメタンを加えて抽出し、得られた有機相を乾燥させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体21(53mg、収率:69%)を得た。ESI-MS m/z:849(M+H)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.52 (s, 1H), 7.79 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 7.67 - 7.55 (m, 2H), 7.47 - 7.21 (m, 3H), 6.51 (s, 1H), 5.60 (s, 1H), 5.52 - 5.32 (m, 2H), 5.30 - 5.11 (m, 2H), 5.11 - 4.94 (m, 2H), 4.94 - 4.74 (m, 2H), 4.02 (s, 2H), 3.81 - 3.66 (m, 2H), 3.60 - 3.35 (m, 4H), 3.24 - 3.08 (m, 2H), 2.94 (d, J = 30.8 Hz, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.28 - 2.04 (m,2H), 2.00 - 1.73 (m, 2H), 1.22 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.96 - 0.70 (m, 3H)。
【0205】
化合物LE14の合成
中間体21(134mg、0.16mmol)及び市販の原料MC-V(102mg、0.33mmol)を40mLのジクロロメタンに混合し、縮合剤2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(82mg、0.33mmol)を加え、室温で一晩反応させ、反応終了後、溶媒を減圧蒸留し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して化合物LE14(137mg、収率:75%)を得た。ESI-MS m/z:1141.4(M+H)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.97 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.27 - 8.09 (m, 1H), 7.88 - 7.70 (m, 2H), 7.63 - 7.51 (m, 2H), 7.28 (s, 3H), 6.99 (s, 2H), 6.51 (s, 1H), 5.59 (s, 1H), 5.50 - 5.32 (m, 2H), 5.17 (s, 2H), 4.98 (s, 2H), 4.85 (d, J = 17.3 Hz, 2H), 4.43 - 4.33 (m, 1H), 4.21 - 4.12 (m, 1H), 4.03 (s, 2H), 3.74 - 3.64 (m, 2H), 3.20 - 3.03 (m, 3H), 3.02 - 2.84 (m, 4H), 2.36 (s, 3H), 2.23 - 2.09 (m, 4H), 2.01 - 1.90 (m, 1H), 1.90 - 1.78 (m, 2H), 1.55 - 1.39 (m, 4H), 1.30 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.23 - 1.11 (m, 2H), 0.93 - 0.77 (m, 9H)。
【0206】
実施例2-4:化合物LE15-LE20の合成
【0207】
【0208】
中間体VIは、Fmoc-L-バリン-L-アラニンを出発原料として、実施例2-1の中間体3の合成方法のステップa及びbを参照し、ステップbのメチルアミン塩酸塩を対応する市販のアミノ化合物に置き換えることにより製造された。後続のステップは中間体VIから出発し、実施例2-1のステップc、d、f及びhと同様な方法に従って、中間体9と似ている中間体IXを得、次に実施例6のステップi及びjと同様な方法に従って処理し、アミノ保護基を除去し、その後、異なる市販のマレイミドと縮合することにより最終生成物を得た。使用したアミノ化合物及びマレイミドの構造は表1に示された通りである。化合物LE15:灰白色の固体、ESI-MS m/z:1121.2(M+H);化合物LE16:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1167.1(M+H);化合物LE17:黄色固体、ESI-MS m/z:1132.3(M+H);化合物LE18:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1305.4(M+H);化合物LE19:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1307.4(M+H);化合物LE20:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1337.6(M+H)。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
実施例2-5:化合物LE21とLE22の合成
【0217】
【0218】
化合物DXD-1の合成
市販のExatecanメシル酸塩(0.568g、1mmol)及び市販の2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)酢酸(CAS:105459-05-0、0.38g、2mmol)を混合して20mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、縮合剤HATU(0.76g、2mmol)及び1mLのピリジンを加えて、室温で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=50:1(v/v)]で精製して表題化合物DXD-1(0.55g、収率:90%)を得た。ESI-MS m/z:608.1(M+H)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.73 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.05 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 5.80 - 5.62 (m, 2H), 5.41 - 5.14 (m, 4H), 4.29 - 4.15 (m, 2H), 4.08-4.03 (m, 1H), 3.27 - 3.07 (m, 2H), 2.45 (s, 3H), 2.38 - 2.28 (m, 2H), 1.96 - 1.81 (m, 2H), 1.04 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.80 (s, 9H), 0.11 (s, 3H), 0.03 (s, 3H).
【0219】
中間体Vの製造
中間体Vは、実施例2-1の化合物4の製造方法を参照し、ステップbのメチルアミン塩酸塩を、対応する市販のアミノ化合物で置き換えることにより得られた。
【0220】
LE21-LE22の合成
中間体VとDXD-1を反応させ、10%のトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン溶液処理により中間体Xを得、次に、中間体Xを実施例2-1の化合物5の後続ステップe、g、i及びjを参照して反応させ:中間体Xを還元してアミノ化合物を得、得られたアミノ化合物とFmoc-バリンヒドロキシスクシンイミドエステルを縮合させ、得られた生成物のFmoc保護基を除去し、得られたアミノ生成物を更に6-(マレイミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステルと反応させて最終生成物を得た。化合物LE21:黄色固体、ESI-MS m / z:1141.2(M + H);化合物LE22:黄色固体、ESI-MS m / z:1106.6(M + H)。
【0221】
【0222】
【0223】
実施例2-6:化合物LS13の合成
実施例2-4のLE15の合成方法を参照して、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)を中間体VII(R1はメチルスルホンエチルである)と反応させた後、脱保護し、縮合などのステップで、化合物LS13を得た:1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.92 (d, J = 22.4 Hz, 1H), 8.14 (s, 1H), 8.08 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.70 - 7.50 (m, 3H), 7.47 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.27 (s, 1H), 7.20 (s, 1H), 6.98 (s, 2H), 6.51 (s, 1H), 5.61 (s, 2H), 5.48 - 5.35 (m, 2H), 5.27 (s, 2H), 5.10 (d, J = 20.6 Hz, 2H), 4.36 (s, 1H), 4.21 - 4.07 (m, 1H), 3.84 (s, 2H), 3.48 (s, 2H), 3.21 - 2.92 (m, 6H), 2.25 - 2.04 (m, 2H), 2.04 - 1.78 (m, 3H), 1.55 - 1.36 (m, 4H), 1.36 - 1.10 (m, 9H), 0.95 - 0.71 (m, 10H)。
【0224】
【0225】
実施例2-7:化合物GGFG-Dxdの合成
化合物GGFG-Dxdは、WO2015146132A1で報告された既知の合成方法を参照して製造された。ESI-MS m/z:1034.5(M+H),1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.61 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 8.50 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.28 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.05 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.99 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.25 - 7.16 (m, 5H), 6.98 (s, 2H), 6.51 (s, 1H), 5.59 (dt, J = 7.4, 4.1 Hz, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.20 (s, 2H), 4.64 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 4.53 - 4.40 (m, 1H), 4.02 (s, 2H), 3.74 - 3.37 (m, 8H), 3.18 - 3.00 (m, 2H), 3.04 - 2.97 (m, 1H), 2.77 (dd, J = 13.5, 9.4 Hz, 1H), 2.38 (s, 3H), 2.19 (dd, J = 14.9, 8.5 Hz, 2H), 2.11 - 2.05 (m, 2H), 1.86 (dd, J = 14.0, 6.7 Hz, 2H), 1.45 (s, 4H), 1.20 - 1.14 (m, 2H), 0.87 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
【0226】
【0227】
実施例3:抗体薬物複合体の製造
実施例1の方法に従って製造したB7-H3の抗体FDA016をG25脱塩カラムを用いて、50mMのPB/1.0mMのEDTA緩衝液(pH7.0)に置換し、12当量のTECPを加え、37℃で2時間撹拌し、抗体鎖間のジスルフィド結合を完全に開き、リン酸を用いて還元された抗体溶液のpHを6.0に調節し、水浴温度を25℃に下げ、カップリング反応を準備した。上記の実施例2の方法に従って製造したリンカー-薬物複合体LE12-LE22、LS13及びGGFG-DxdをそれぞれDMSOに溶解させ、中から12当量のリンカー-薬物複合体を吸引し、還元後の抗体溶液に一滴ずつ滴下し、DMSOを補充して、その最終濃度を10%(v/v)にし、25℃で0.5時間攪拌して反応させ、反応の終了後、0.22umメンブレンで試料を濾過した。タンジェンシャルフロー限外濾過システムで精製し、非結合小分子を除去し、緩衝液は50mMのPB/1.0mMのEDTA溶液(pH6.0)であり、精製後、最終濃度6%のショ糖を加え、-20℃の冷蔵庫で保存した。UV法で280nm及び370nmでの吸光度値をそれぞれ測定し、DAR値を計算し、結果を下記の表2に示される通りである。
【0228】
本実施例と同様な操作ステップでカップリング反応を実行し、試料はいずれも最も高いDAR(即ちオーバーカップリング)で製造し、各カップリング反応が発生する時の沈殿生成状況を観察し、各カップリング反応完了後のポリマー比率及び回収率を算出し、得られた結果は表2に示される通りである。
【0229】
【0230】
実際の研究では、リンカー-薬物複合体のGGFG-Dxdが他の抗体とカップリングする場合に沈殿が生じ、ポリマー比率が高く、普遍性がないことを発見した。一方、本技術的解決策における大部分のリンカー-薬物複合体を、いずれもF016を含む異なる抗体とカップリングを試し、沈殿は生じず、且つポリマー比率も正常な範囲にあったことから、本発明の抗体薬物複合体は、良好な溶解性及び創薬可能性を有していることを表し、カップリング過程で沈殿が生じないことも、抗体薬物複合体の製造に有益である。
【0231】
効果実施例1:抗体薬物複合体の体外殺傷活性評価
Calu-6(ATCC)細胞を体外活性検出に使用する細胞株として選択し、96ウェル細胞培養プレートに2000細胞/ウェルで播種し、20~24時間培養した。実施例3の方法に従って製造した抗体薬物複合体を10%のFBSを含むL15細胞培地で1000、166.7、55.6、18.6、6.17、2.06、0.69、0.23、0.08、0.008及び0nMの11個の濃度勾配の試験品溶液に調製し、希釈した試験品溶液100μl/ウェルを取り、細胞を接種した培養プレートに加え、37℃、5%のCO2インキュベータに入れて144時間培養した後CellTiter-Glo(R)Luminescent Cell Viability Assay Reagent(promega,G9243)(50μl/ウェル)を加え、500rpmで室温で10分間振とうして均一に混合し、SpectraMaxLマイクロプレートリーダーで(OD570nm、2s間隔で読み取る)データを読み取り、IC50結果を算出し、結果は表3に示される通りである。
【0232】
上記と同様の方法を使用して、ATCCから購入したNCI-N87、A375、Hs-700T、LN-229、MDA-MB-468、PA-1及びRajiの複数の腫瘍細胞に対する各抗体薬物複合体の細胞毒死滅活性を測定し、結果は表3に示される通りである。表3の結果により、本発明で提供される抗体薬物複合体はCalu-6、NCI-N87、A375、Hs-700T、LN-229、MDA-MB-468及びPA-1などの細胞に対して優れた体外死滅活性を有していることが分かる。しかし、Raji陰性細胞に対しては死滅活性がなく、製造したADCが特異的な標的殺傷活性を有していることを示した。
【0233】
【0234】
効果実施例2:体外血漿安定性試験
本実施例では、ヒト血漿における実施例3の方法に従って製造された抗体薬物複合体の安定性を評価した。具体的には、本実施例では、実施例3の抗体薬物複合体の一部をヒト血漿に加え、37℃の水浴に1、3、7、14、21、28日間置き、内部標準(イキシノテカンを内部標準物質とする)を入れて抽出し、高速液体クロマトグラフィーにより遊離薬物の放出量を検出し、結果は表7に示される通りである。
【0235】
【0236】
血漿安定性の結果は、本発明で提供される抗体薬物複合体が優れた血漿安定性を有することを示している。
【0237】
効果実施例3:リンカー-薬物複合体の体外酵素切断実験
【0238】
リンカー-薬物複合体(LE14及びGGFG-Dxd)及びカテプシンBは3つの異なるpH(5.0、6.0、7.0)緩衝液で共に培養され、異なる時点でサンプリングして高速液体クロマトグラフィー-質量分析計に入れ、外部標準法(DXDを外部標準とする)により薬物の放出率を確定した。試験結果(表5に示される通りである)は、GGFG-Dxdが使用されるpH範囲においてより遅い消化速度を有する一方で、本発明のリンカー-薬物複合体LE14は、pH5.0~pH7.0の範囲において迅速に酵素切断できることを示した。
【0239】
【0240】
効果実施例4:FDA016-LS13の体外酵素切断実験
【0241】
実験細胞株としてNCI-N87細胞株を選択し、試料をカテプシンB系(100mMの酢酸ナトリウム-酢酸緩衝液、4mMのジチオスレイトール、pH5.0)で、37℃で4時間培養後、得られた試料を培地で異なる濃度に希釈して、SN-38濃度70nM~0.003nMで8個の濃度(1.5~10倍希釈)に設定し、細胞株の殺傷(阻害)能力の変化を144時間観察し、CellTiter-Glo(R)LuminescentCellViabilityAssay化学発光染色を使用して、蛍光データを読み取り、IC50数値を計算した。
【0242】
以上のカテプシンB反応系で37℃で4時間培養した酵素切断試料を適量のエタノールで沈殿させて、タンパク質を除去し、高速液体クロマトグラフィーで放出された小分子化合物を検出し、同量のSN-38を基準として、4時間の放出率を測定した結果、99%の放出率を達した。
【0243】
試験結果(表6に示される通りである)は、酵素切断後のFDA016-LS13の細胞毒性活性は等量のSN-38とほぼ同じであることを示し、また、FDA016-LS13がカテプシンBの作用下でSN-38をほぼ完全に放出して効果的に機能したが、FDA016-LS13のリソソームへのエンドサイトーシスにより予測できない変化を引き起こし、SN-38が効果的に機能できない可能性があることを示した。
【0244】
【0245】
効果実施例5:Calu-6ヒト肺癌モデルにおけるFDA016-LE14の抗腫瘍活性試験
6~8週齢のメスBalb/c nudeマウスを選択し、100ulのPBS溶液に溶解させた5×106ヒト肺癌細胞(Calu-6)を首の右側と背中に皮下注射し、腫瘍が平均体積150~200mm3に成長した後、腫瘍の大きさ及びマウスの体重に応じて無作為に5つの群に分け、各群に6匹の動物とし、それぞれブランク対照群、5mg/kgのFDA016-GGFG-Dxd群、10mg/kgのFDA016-GGFG-Dxd群、5mg/kgのFDA016-LE14群及び10mg/kgのFDA016-LE14群であり、週に1回腹腔内投与した。週2回実験動物の体重と腫瘍の体積を測量し、実験中の動物の生存状態を観察した。結果は表7に示される通りであり、ブランク対照群マウスは投与終了後の平均腫瘍体は2107.51mm3であった。試験薬物5.0mg/kgのFDA016-GGFG-Dxd治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は72.35mm3であり、10mg/kgのFDA016-GGFG-Dxd治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は3.28mm3であった。試験薬物5.0mg/kgのFDA016-LE14治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は50.48mm3であり、10mg/kgのFDA016-LE14治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は0.00mm3であった。実験結果は、FDA016-LE14が比較的良好な体内抗腫瘍活性を持っていることを示し、同時にすべての実験マウスは死亡状況がなく、体重減少がなく、FDA016-LE14が非常に良い安全性を持っていることを示した。
【0246】
【配列表】