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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】無電極点火を有するレーザ駆動光源
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/04 20060101AFI20241002BHJP
   H01S 3/091 20060101ALI20241002BHJP
   H01S 3/1115 20230101ALI20241002BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20241002BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 61/54 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 61/16 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 61/12 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01J65/04 Z
H01S3/091
H01S3/1115
H05G2/00 K
G03F7/20 503
H01J61/54 Z
H01J61/16 N
H01J61/12 J
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2023566951
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 US2022029536
(87)【国際公開番号】W WO2022251000
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】17/328,433
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507005768
【氏名又は名称】エナジェティック・テクノロジー・インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】205 Lowell Street, Wilmington, MA 01887 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】パートロウ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】スミス ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ベセン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】浅井 昭典
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-035039(JP,A)
【文献】特開2011-082473(JP,A)
【文献】特開2018-125227(JP,A)
【文献】米国特許第10770282(US,B1)
【文献】米国特許第10964523(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/04
H01S 3/091
H01S 3/1115
H05G 2/00
G03F 7/20
H01J 61/54
H01J 61/16
H01J 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)連続波(CW)維持光を出力で発生させるレーザ源と、
b)ポンプ光を出力で発生させるポンプレーザと、
c)前記ポンプレーザの前記出力で発生した前記ポンプ光を受け取るように配置されたQ-スイッチレーザ結晶であって、前記発生したポンプ光に応答してパルスレーザ光を出力で発生させるQ-スイッチレーザ結晶と、
d)前記パルスレーザ光を、第1の軸線に沿って、イオン化ガスを含むガス充填バルブの絶縁破壊領域に投射する、前記パルスレーザ光の経路に配置された第1の光学要素と、
e)前記CW維持光を、第2の軸線に沿って、前記イオン化ガスを含む前記ガス充填バルブのCWプラズマ領域に投射する、前記CW維持光の経路に配置された第2の光学要素と、
f)前記CWプラズマ領域に少なくとも部分的に位置するCWプラズマによって発生したプラズマ光を検出し、検出信号を出力で発生させる検出器と、
g)前記検出器の前記出力に電気的に接続された入力、及び前記ポンプレーザの制御入力に電気的に接続された出力を有するコントローラであって、前記検出信号が閾値レベルを超えた後の時間遅延内に前記パルスレーザ光を消滅させるように、前記Q-スイッチレーザ結晶への前記ポンプ光を制御する制御信号を発生させるコントローラと
を備える、無電極レーザ駆動光源。
【請求項2】
前記検出信号が、前記プラズマ光の出力を表し、前記閾値レベルが、動作電力に対する前記プラズマ光の前記出力の所望の割合である、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項3】
前記所望の割合が公称で50%である、請求項2に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項4】
前記所望の割合が公称で90%である、請求項2に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項5】
前記所望の割合が30%~95%の範囲である、請求項2に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項6】
前記パルスレーザ光のパルス間の期間が、前記時間遅延よりも長い、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項7】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、前記パルスレーザ光のパルス間の期間が前記時間遅延よりも長くなるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項8】
前記コントローラが、前記時間遅延が前記パルスレーザ光の1つのパルス期間よりも短くなるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項9】
前記発生したポンプ光の経路及び前記発生したパルスレーザ光の経路に配置された第3の光学要素をさらに備え、前記第3の光学要素が、前記発生したポンプ光を前記発生したパルスレーザ光から分離するように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項10】
前記第3の光学要素がダイクロイック要素を備える、請求項9に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項11】
前記第3の光学要素が、前記発生したポンプ光を反射するように構成されている、請求項9に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項12】
前記第3の光学要素が、前記発生したパルスレーザ光を透過するように構成されている、請求項9に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項13】
前記第1の軸線と前記第2の軸線とが同じ軸線である、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項14】
前記第1の軸線と前記第2の軸線とが異なる軸線である、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項15】
前記第1の軸線と前記第2の軸線とが同一線上にある、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項16】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、前記パルスレーザ光のパルス繰返数が1kHz~20kHzの範囲であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項17】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、前記パルスレーザ光のパルス繰返数が1kHz以下であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項18】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、前記パルスレーザ光のパルスエネルギーが50μジュール~500μジュールの範囲であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項19】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、前記パルスレーザ光のパルスエネルギーが500μジュール~5mジュールの範囲であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項20】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、前記パルスレーザ光のパルス持続時間が0.1ns~10nsの範囲であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項21】
前記レーザ源が、前記CW維持光の出力が5W~50Wの範囲であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項22】
前記レーザ源が、前記CW維持光の出力が5W~1500Wの範囲であるように構成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項23】
前記第1の光学要素が集束レンズを備える、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項24】
前記第2の光学要素が集束レンズを備える、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項25】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、利得部分と飽和性吸収体部分とを含む、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項26】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、ガラスホスト、イットリウムアルミニウムガーネットホスト、又はスピネルホストのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項27】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、クロムドーパント、コバルトドーパント、又はバナジウムドーパントのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項28】
前記Q-スイッチレーザ結晶が狭帯域フィルタを備える、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項29】
前記狭帯域フィルタが、前記プラズマ光の少なくとも一部を反射する、請求項28に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項30】
前記狭帯域フィルタが、キセノンスペクトルの波長を遮る、請求項28に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項31】
前記Q-スイッチレーザ結晶が、一面にコーティングを含む、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項32】
前記ガス充填バルブがキセノンガスを含む、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項33】
前記ガス充填バルブが球形に形成されている、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項34】
前記ガス充填バルブの圧力が、20atm~50atmの範囲の圧力を含む、請求項1に記載の無電極レーザ駆動光源。
【請求項35】
a)連続波(CW)維持光を使用して、ガス充填バルブ内のガスに電磁エネルギーを供給するステップと、
b)レーザパルスが発生するように、レーザポンプ放射をQ-スイッチレーザ結晶に供給するステップと、
c)前記Q-スイッチレーザ結晶によって発生した前記レーザパルスを、前記ガス充填バルブ内の前記ガスに供給することにより、絶縁破壊領域にパルスプラズマを形成するステップと、
d)前記絶縁破壊領域に前記パルスプラズマを形成するステップに応答して、前記ガスに前記供給された電磁エネルギーを使用して、プラズマ光が前記ガス充填バルブから放射されるようにCWプラズマ領域にCWプラズマを発生させるステップと、
e)前記放射されたプラズマ光の一部を検出し、検出信号を発生させるステップと、
f)前記検出信号が閾値レベルを超えた後の時間遅延内に、前記Q-スイッチレーザ結晶への前記レーザポンプ放射を消滅させることにより、前記レーザパルスを消滅させるステップと
を含む、無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項36】
前記発生した検出信号が、前記プラズマ光の出力を表し、前記閾値レベルが、動作電力に対する前記プラズマ光の前記出力の所望の割合である、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項37】
前記絶縁破壊領域と前記CWプラズマ領域とが、空間において重なっている、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項38】
前記絶縁破壊領域と前記CWプラズマ領域とが、物理的に離れている、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項39】
前記時間遅延が、前記レーザパルスの1つのパルス期間よりも短い、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項40】
前記レーザパルスのパルスエネルギーが50μジュール~500μジュールの範囲である、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項41】
前記レーザパルスのパルスエネルギーが500μジュール~5mジュールの範囲である、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項42】
前記レーザパルスのパルス持続時間が0.1ns~10nsの範囲である、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。
【請求項43】
前記CW維持光の出力が5W~1500Wの範囲である、請求項35に記載の無電極高輝度プラズマ光源を点火させる方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成のみを目的としており、本出願に記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0002】
[序文]
[0002]例えば、スペクトルの極紫外領域から可視領域及び赤外領域までのスペクトル領域にわたって高輝度を提供するレーザ駆動光源が、高い信頼性及び長い寿命で利用可能である。このような高輝度光源の様々な例が、Wilmington、MAにあるEnergetiq,a Hamamatsu Companyによって製造されている。
【0003】
[0003]生物学、化学、気候、及び物理学を含む様々な分野で、例えば、半導体計測、センサ較正及び試験、成形光の作成、表面計測、分光学、並びにその他の光学測定の応用を含む応用のための高輝度光源の需要が高まっている。したがって、例えば、この重要な種類の広帯域光源のサイズ、コスト、複雑さ、信頼性、安定性、及び効率を向上させることができる高輝度光源の進歩が必要である。
【0004】
[0001]以下の詳細な説明において、好ましい例示的な実施形態による本教示を、そのさらなる利点と共に、添付図面と併せてより詳細に説明する。当業者は、以下に記載する図面が例示のみを目的とするものであることを理解するだろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、概して本教示の原理を示すことを重視する。図面は、出願人の教示の範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】[0002]本教示による、1本の軸線に沿ってガス充填バルブに投射されるパルスレーザ光と、異なる軸線に沿ってガス充填バルブに投射されるCWレーザ光とを使用する無電極レーザ駆動光源の実施形態を示す図である。
図1B】[0003]本教示による、1本の軸線に沿ってガス充填バルブに投射されるパルスレーザ光と、同じ軸線に沿ってガス充填バルブに投射されるCWレーザ光とを使用する無電極レーザ駆動光源の実施形態を示す図である。
図2A】[0004]パルスレーザ励起のみによる発光を示す、本教示による無電極レーザ駆動光源の実施形態のガス充填バルブの画像である。
図2B】[0005]CWレーザ励起のみによる発光を示す、図2Aに示すガス充填バルブの画像である。
図3】[0006]本教示による無電極レーザ駆動光源のプラズマを点火させる方法のステップのフロー図である。
図4】[0007]本教示による無電極レーザ駆動光源からのパルスレーザ照明、ポンプレーザ照明、及びプラズマ発光のそれぞれの一連のオシロスコープトレースを示す図である。
図5A】[0008]本教示による、利得領域及び飽和性吸収体領域を含むQ-スイッチ結晶の実施形態を示す図である。
図5B】[0009]本教示による無電極レーザ駆動光源で使用するのに適した、曲面を有するYAGベースの受動Q-スイッチレーザロッドの実施形態を示す図である。
図6】[0010]本教示による無電極レーザ駆動光源の実施形態で使用される準CWポンプパルスのパルス長の関数としての、ガス絶縁破壊を生じさせるのに十分なレーザパルスを発生させるポンプレーザのパルスエネルギー及びポンプ電流閾値のグラフである。
図7】[0011]本教示による無電極レーザ駆動光源の実施形態で使用される集束レンズアセンブリを有する裸バルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[様々な実施形態の説明]
[0012]以下で、添付図面に示す例示的な実施形態を参照しながら、本教示をより詳細に説明する。本教示を様々な実施形態及び例と併せて説明するが、本教示はそのような実施形態に限定されることを意図したものではない。それどころか、当業者によって理解されるように、本教示は、様々な代替形態、修正、及び均等物を包含する。本明細書の教示を利用できる当業者は、本明細書に記載される本開示の範囲内における、追加の実装形態、修正、及び実施形態、並びに他の使用分野を認識するだろう。
【0007】
[0013]本明細書における「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本教示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所に「一実施形態」という表現が現れることは、必ずしもすべて同じ実施形態に言及するものではない。
【0008】
[0014]本教示の方法の個々のステップは、本教示が実施可能である限り、任意の順序で及び/又は同時に実行することができることを理解すべきである。さらに、本教示の装置及び方法は、本教示が実施可能である限り、記載される実施形態のうちの任意の数又はすべてを含むことができることを理解すべきである。
【0009】
[0015]レーザ駆動光源は、CWレーザを使用して、ガスプラズマを、広帯域光学光を発生させるのに必要な高い温度まで直接加熱する。高輝度レーザ駆動光源は、高電圧電極を使用してプラズマを維持する光源と比べて重要な利点を有する。レーザ駆動源は、例えば、アークランプデバイスで使用される電気放電プラズマとは対照的に、光放電プラズマに依存する。電気放電ランプでは、電極材料が蒸発し、ランプの寿命にわたって放電の特性を変化させることがある。これは、ランプの寿命を短くする。また、電極ベースのシステムは、光源の熱応力、機械応力、及び電気応力を引き起こす。既知のレーザ駆動光源は、プラズマを維持するために電極に依拠しないが、それでもプラズマ点火のために電極を使用する。
【0010】
[0016]電極に依拠する既知の光源は、重大な制限を有することがある。例えば、電極ベースの光源は、ランプヘッドのサイズの限度及びバルブを取り付けることができる方法に関する制限を有することがある。電極ベースの光源は、寄生アークを避けるように設計されなければならず、ランプヘッドは、電極及び点火回路のための十分な容積を有して構成される必要がある。電極ベースの光源は、例えば、電極のガラス金属シールが最大充填圧力を制限することがあるため、バルブの低温充填圧力に関する制約を有する。また、電極ベースの光源では、バルブのサイズがより大きいことがあり、バルブ充填圧力に影響を及ぼすことがある。電極ベースの光源はまた、適応可能なバルブの形状が限られる。これは、例えば、電極ベースの光源が、電極を配置、固定、及び接続する必要があるからである。これらの設計の制約により、光源にノイズが生じることがある。
【0011】
[0017]したがって、無電極点火を有するレーザ駆動光源を提供することは、他の利点に加えて、高い信頼性、高い性能、コスト削減、複雑さの低減につながり得る。光学照明によりプラズマを点火させるには、プラズマを点火させるために使用される光源及び関連する光供給機構の入念な設計及び制御が必要である。本教示の1つの特徴は、無電極点火を有するレーザ駆動光源を提供することである。このような光源では、プラズマは、光学照明によって点火され、既知のレーザ駆動高輝度光源のように電極により提供される電気エネルギーによって点火されるのではない。
【0012】
[0018]無電極レーザ駆動光源の多くの特徴及び利点がある。無電極光源は、従来技術の光源よりも高い最大充填圧力を有する、より小さいバルブを使用して実装することができる。特に、ある一定のレーザ出力様式で、充填圧力が高いほど輝度が高くなり得る。無電極光源には、電極材料からの汚染がない。加えて、ランプ形状の幾何学的制限がより少ない。一般に、同じ特性について、より小さいランプヘッドを使用することができる。また、電力を供給すべき能動電気部品がないことにより、関連する電源、制御電子機器、及び電気接続部の必要性が低下し、必要な部品数が大幅に減少する。しかしながら、無電極レーザ駆動光源の一部の実施形態を、電極点火を有していないレーザ駆動光源の既存のランプパッケージに実装することができる。これは、少なくとも部分的には、無電極デバイスが、電極でレーザ発振するレーザ駆動光源よりも概して複雑でなく小さいからである。
【0013】
[0019]図1Aは、本教示による、1本の軸線106に沿ってガス充填バルブ104に投射されるパルスレーザ光102と、異なる軸線110に沿ってガス充填バルブ104に投射されるCWレーザ光108とを使用する無電極レーザ駆動光源100の実施形態を示す。パルスレーザ光102は、Q-スイッチ結晶112を使用して発生し、Q-スイッチ結晶112は、ポンプレーザ116により発生したポンプレーザ光114によって励起される。結合光学系118を使用して、ポンプレーザ光114をQ-スイッチ結晶112に結合する。光学要素120を使用して、Q-スイッチ結晶112で発生したパルスレーザ光102をバルブ104に向け、ポンプレーザ光114をバルブから離れるように向ける。一部の実施形態において、光学要素120は、ダイクロイック光学要素である。プラズマ絶縁破壊領域126に供給されるパルスレーザ光102からのエネルギーが、プラズマを点火させる。
【0014】
[0020]CWレーザが、CWレーザ光108を発生させる。光学要素124が、CW維持光を、バルブ104のプラズマ絶縁破壊領域126を含む領域に投射する及び/又は集束させる。一部の実施形態において、光学要素124は、レンズなどの集束要素である。光学要素128が、パルスレーザ光102を、バルブ104のプラズマ絶縁破壊領域126を含む領域に投射する及び/又は集束させる。一部の実施形態において、光学要素128は、レンズなどの集束要素である。パルスレーザ光によって照明される領域は、パルス照明領域と呼ばれ、Q-スイッチ結晶112からの光学光を向けるために使用される投射要素に基づく明確な位置及び形状を有する。プラズマ絶縁破壊領域126に供給されるパルスレーザ光102からのエネルギーが、プラズマを点火させる。CW維持光によって照明される領域は、CW維持照明領域と呼ばれ、CWレーザ122からの光学光を向けるために使用される投射要素に基づく明確な位置及び形状を有する。プラズマ絶縁破壊領域126に供給されるCWレーザ光108からのエネルギーが、プラズマを維持する。
【0015】
[0021]プラズマ絶縁破壊領域126は、CWプラズマ光130を発生させる。CWプラズマ光130は、検出器132に入射する。CWプラズマ光130を、光学要素120によって、又は自由空間を介して、及び/又は他の光透過手段によって、検出器132に向けることができる。検出器132は、コントローラ134に接続された出力で検出信号を発生させる。コントローラ134は、ポンプレーザ116の制御入力に接続されている。コントローラ134は、Q-スイッチレーザ結晶112に向けられたポンプ光114のパラメータを制御する制御信号を発生させる。一部の実施形態において、コントローラ134は、検出器132からの検出信号が予め定められた閾値レベルを超えた後の時間遅延内にパルスレーザ光102を消滅させるような方法で、ポンプレーザ116及びポンプ光114のパラメータを制御するように構成されている。
【0016】
[0022]プラズマ絶縁破壊領域126でプラズマを点火させるために、高ピーク出力のパルス光102が必要である。しかしながら、維持CWプラズマ光130を発生させるためには、パルス光はある一定の閾値を超えてはならず、プラズマ光が予め定められた閾値に達した後の予め定められた遅延後にパルスがプラズマに存在する場合に生じることができる。パルス光が多すぎると、プラズマが消滅することがある。閾値に達する前にパルス光を消滅させることによって、CW維持光108のみを照射することにより、プラズマ光を維持することができる。
【0017】
[0023]一部の実施形態において、パルス光のパルスのうちのある一定の数、例えば、1つ又は複数が、プラズマを点火させるために必要であるが、点火後の追加のパルスは、プラズマを消滅させる。したがって、プラズマ光130が検出器132で検出されると、パルスは、点火パルス後に次のパルスが発生する前に消滅する。この構成は、本教示の本態様の単なる一例であることを理解すべきである。プラズマ光130の発生に対する様々な遅延後にポンプ光114を消滅させる様々なアルゴリズム及び閾値を、本教示によるシステムによって使用することができる。これらのパラメータは、例えば、ガスの種類、密度、及び/又は温度を含む様々な要因に依存する。また、これらのパラメータは、パルス光及びCW維持光108の相対出力に依存する。また、これらのパラメータは、光学要素124、128の集束及び他の光学特性に依存する。加えて、これらのパラメータは、プラズマ絶縁破壊領域のCW維持光108及び/又はパルス光102のエネルギー密度に依存する。
【0018】
[0024]本教示の1つの特徴は、パルス光及びCW維持光の軸線が、様々な相対位置をとることができることである。例えば、図1Aを参照すると、軸線106、110は、公称で直交している。パルス光とCW光とが同じ軸線にあるように、無電極レーザ駆動光源を構成することも可能である。
【0019】
[0025]図1Bは、本教示による、1本の軸線に沿ってガス充填バルブ154に投射されるパルスレーザ光152と、同じ軸線に沿ってガス充填バルブに投射されるCWレーザ光156とを使用する無電極レーザ駆動光源150の実施形態を示す。無電極レーザ駆動光源150は、図1Aの無電極レーザ駆動光源100と多くの共通する要素を共有する。Q-スイッチ結晶158が、ポンプレーザ162により発生したポンプレーザ光160によって励起される。一部の実施形態において、公称で光をコリメートするコリメーションパッケージである結合光学系164が、ポンプレーザ162により発生した光を受け取り、Q-スイッチ結晶158に向ける。
【0020】
[0026]光学要素166を使用して、Q-スイッチ結晶158で発生したパルスレーザ光152をバルブ154に向ける。光学要素166は、ポンプレーザ光160をバルブ154から離れるように向ける(例えば反射する)ことができる。一部の実施形態において、光学要素166、168は、ダイクロイック光学要素である。一部の実施形態において、光学要素166は、パルス光波長152を有する光を透過し、CWレーザ光156も透過する。CWレーザ170は、CWレーザ光156を発生させる。光学要素172が、CW維持光156及びパルスレーザ光152を、バルブ154のプラズマ絶縁破壊領域174を含む領域に投射する及び/又は集束させる。一部の実施形態において、光学要素172は、レンズなどの集束要素である。
【0021】
[0027]プラズマ絶縁破壊領域174は、CWプラズマ光176を発生させる。CWプラズマ光176は、検出器178に入射する。CWプラズマ光176を、光学要素166によって、又は自由空間を介して、及び/又は他の光透過手段によって、検出器178に向けることができる。検出器178は、検出されたCWプラズマ光に応答して、出力で検出信号を発生させる。検出器178の出力は、コントローラ180に接続されている。コントローラ180は、ポンプレーザ162の制御入力に接続されている。コントローラ180は、Q-スイッチレーザ結晶158に向けられたポンプ光160のパラメータを制御する制御信号を発生させる。一部の実施形態において、コントローラ180は、検出器178からの検出信号が予め定められた閾値レベルを超えた後の時間遅延内にパルスレーザ光152を消滅させるような方法で、ポンプレーザ162及びポンプ光160の関連するパラメータを制御するように構成されている。一部の実施形態において、CWレーザ170からの光は、コリメーションパッケージ182を使用してコリメートされる。1つ又は複数の光学要素を含み得る光学要素184を使用して、ポンプレーザ光160をQ-スイッチ結晶158上に集束させる。
【0022】
[0028]本教示の別の特徴は、一部の実施形態において、プラズマ領域に独立した照明領域を形成するように、パルス光及びCW維持光を向けることができることである。必要に応じて、2つの照明領域は別個であっても、一部若しくは全部が重なっていてもよい。パルス照明領域及びCW維持照明領域の相対位置及び形状の制御を使用して、これら2つの光源によって供給されるエネルギーの特定の空間分布をもたらすことができる。本明細書でさらに説明するように、CW維持光及びパルス光のそれぞれのエネルギー密度が、プラズマの点火及び維持可能性に影響を及ぼす。したがって、パルス照明領域及びCW維持照明領域の相対位置及び形状を制御できることにより、プラズマに与えられるエネルギー密度プロファイルの制御が可能になる。この配置は、パルス照明領域で発生した点火プラズマが、安定したCWプラズマとしてCW照明領域に移行する能力に影響を及ぼす。
【0023】
[0029]図2Aは、パルスレーザ励起のみによる発光を示す、本教示による無電極レーザ駆動光源の実施形態のガス充填バルブの画像200である。両方の画像202、204が側面から示されているが、パルス照明領域及びCWレーザの焦点の位置の3次元配置を示すために、これらの画像の角度がずれている。パルス照明領域の範囲及び位置が、これらの画像202、204に見えている。パルス絶縁破壊の位置はパルスエネルギーによって決まることに留意されたい。エネルギーが増加すると、絶縁破壊位置はパルスレーザに向かって移動する。パルス光に対する、及びCWレーザの焦点に対する、パルスレーザ絶縁破壊プラズマの3次元位置合わせによって、より低いCWレーザ出力及び/又はより低いパルスエネルギーで方法を実行することができる。
【0024】
[0030]図2Bは、CWレーザ励起のみによる発光を示す、図2Aに示すガス充填バルブの画像250である。両方の画像252、254が側面から示されているが、パルス照明領域及びCWレーザの焦点の位置の3次元配置を示すために、これらの画像の角度がずれている。パルス照明領域の範囲及び位置が、これらの画像252、254に見えている。図2Aの画像202、204のパルス照明領域の輪郭256、258も示されている。本実施形態において、パルス照明領域及びCW維持照明領域の相対位置及び形状は、2つの領域が別個であり重ならないようなものになっている。光が密に集束するほど、パルス照明領域は小さくなり、照明によってプラズマに供給されるパルスエネルギーの密度が高くなる。
【0025】
[0031]図2A図2Bの画像は、プラズマ点火をもたらすパルスの動作パラメータを決定するための実験中に集めたものである。以下で、実験条件のいくつかの詳細について説明する。例えば、2kHzのパルス繰返数及び1nsの持続時間パルスで、キセノンガスが充填されたバルブにおいて、135~225マイクロジュールのエネルギー範囲にわたって安定したプラズマ点火を実現することができる。パルス光は、1064nmの波長を有していた。この実験構成の特定の例について、安定したCWプラズマを実現するための絶縁破壊光に対する閾値エネルギーは、135マイクロジュールであった。さらに、210マイクロジュールで、プラズマが点火され、最終的に安定することができるが、安定した動作より前にCWプラズマの点火及び消滅があってもよい。225マイクロジュールで点火を実現することも可能である。240マイクロジュールを越えると、一部の構成で、CWプラズマは安定しなくなった。パルス光照明及びCW光照明の相対位置が重要である。パルスレーザの光軸線に沿ってバルブとCWレーザとの位置合わせを調節することにより、点火を改善する、又は「止める」。CWプラズマの点火後、CWレーザ出力を、8~10ワットまで下げ、それでもCWレーザプラズマを維持することができた。15.5ワットを超えるCWレーザ出力の任意の値で、パルスからCWへの確実な移行が生じた。CWレーザ出力の上限はなかった。当業者により理解されるように、ビーム品質が、所与のレーザ出力についてガスに供給されるエネルギーに影響を及ぼす。
【0026】
[0032]本教示の無電極点火の別の特徴は、CWプラズマ点火を2ステッププロセスとして実施できるという認識である。第1のステップで、レーザパルスを印加することにより、キセノンガスが絶縁破壊する。第2のステップで、パルスプラズマから維持CWプラズマへの移行又は「ハンドオフ」がある。次に、維持プラズマの発生開始後にパルスレーザ光の遮断が行われると、ハンドオフが成功する。例えば、CWプラズマの「第1の光」の遮断を行うことによって、ハンドオフを実現することができる。後続のパルスがCWプラズマ光を破壊することがあるため、点火後の追加のパルスより前にパルス光を遮断することが重要である。許容できるパルスの数は、CWプラズマ光の出力によって決まる。一部の実施形態において、パルス光は、点火パルス後の期間の次のパルスが消滅するように十分に短い時間遅延で消滅する。
【0027】
[0033]図3は、本教示による無電極レーザ駆動光源のプラズマを点火させる方法のステップのフロー図300である。フロー図300は、ガス充填バルブに含まれるプラズマ領域へのエネルギーの供給を制御して、高輝度光を発生させるステップを示し、プラズマが、従来技術の高輝度光源のように電極によって供給される電気エネルギーによってではなく、照明によって点火される。第1のステップ302で、連続CWレーザ光を使用して、電磁エネルギーがバルブ内のガスに供給される。これを、CW維持光と呼ぶことができる。一部の実施形態において、ガスはキセノンガスである。第2のステップ304で、ポンプレーザ光をQ-スイッチ結晶に供給することによって、レーザパルスが発生する。本教示の1つの特徴は、Q-スイッチ結晶によって供給されるパルスを、結晶へのポンプ光の照射を制御することによって制御することができるという認識である。第3のステップ306で、レーザパルスはバルブ内のガスに供給され、ガスに絶縁破壊領域が形成される。第4のステップ308で、パルス光によって発生したイオン及び電子の適切な密度に達したときに、バルブに供給されたCWレーザ光が吸収される。第5のステップ310で、CWレーザ光の吸収により、イオン及び電子に通電し、プラズマ領域で高輝度光を放射するCWプラズマを発生させる。すなわち、CW維持光によって供給された電磁エネルギーにより、バルブからCWプラズマ光が発生する。
【0028】
[0034]第6のステップ312で、バルブから放射された高輝度光の一部が、検出器で検出される。検出器は、受け取ったCWプラズマ光の一部に応答して、プラズマ検出信号を発生させる。この信号を、コントローラに供給することができる。第7のステップ314で、プラズマ検出信号が予め定められた閾値を超えると、ポンプレーザが停止される。ポンプの停止により、パルスが中断される。すなわち、パルス光は、Q-スイッチ結晶から届くポンプ光の停止に応答して、消滅する。一部の実施形態において、コントローラは、レーザポンプを停止させる。第8のステップ316で、CWプラズマは、CW維持光を使用して維持される。一部の実施形態において、CW連続光は、公称で、高パルス繰返数でパルスレーザ動作によって発生する連続光源であることに留意する。
【0029】
[0035]本教示の無電極点火を有するレーザ駆動高輝度源の様々な実施形態は、ガスに供給される光の異なるパラメータを使用する。例えば、Q-スイッチレーザパルスの繰返数を制御することができる。ガスに供給されるパルス光のパルスエネルギーを制御することができる。Q-スイッチレーザパルスの持続時間を制御することもできる。加えて、CWレーザ光の出力も制御される。一部の実施形態において、パルスレーザ光のパルス繰返数は、1kHz~20kHzである。
【0030】
[0036]実験的及び/又は理論的評価は、例えば、パルスレーザ光のパルス繰返数が1kHz以下であるようにQ-スイッチレーザ結晶が構成されているときに、良質なCWプラズマを供給することができると判定した。パルスレーザ光のパルスエネルギーが50マイクロジュール~500マイクロジュールの範囲であるようにQ-スイッチレーザ結晶が構成されているときに、連続波プラズマを発生させることができる。
【0031】
[0037]連続波プラズマは、特定の構成に応じた様々なパルスエネルギー、パルス持続時間、及びCW出力条件で発生する。例えば、パルスレーザ光のパルスエネルギーが500マイクロジュール~5ミリジュールの範囲であるようにQ-スイッチレーザ結晶が構成されているときに、連続波プラズマが発生する。加えて、パルスレーザ光のパルス持続時間が0.1ns~10nsの範囲であるようにQ-スイッチレーザ結晶が構成されているときに、連続波プラズマを発生させることができる。CW維持光の出力が5W~50Wの範囲であるようにCWレーザ源が構成されているときに、連続波プラズマを発生させることもできる。CW維持光の出力が5W~1500Wの範囲であるようにCWレーザ源が構成されているときに、連続波プラズマを発生させることもできる。上記の範囲は、動作範囲の単なる例であり、本教示を限定することを意図したものではない。
【0032】
[0038]本教示の1つの特徴は、CWプラズマの検出を使用して、点火パルスレーザ光を制御できることである。一部の実施形態において、この制御は、プラズマの点火後のCWプラズマのパルスの消滅又は他の望ましくない影響を防ぐ。図4は、本教示による無電極レーザ駆動光源からのパルスレーザ照明、ポンプレーザ照明、及びプラズマ発光のそれぞれの一連のオシロスコープトレース400を示す。一連のオシロスコープトレース400は、本教示の無電極レーザ駆動光源の実施形態におけるレーザ動作及びプラズマ光発生のタイミングを示す。図4で、測定パルスレーザ照明トレース402、測定ポンプレーザ照明トレース404、及び測定プラズマ発光トレース406が、一連のオシロスコープトレース400の時間の関数として示されている。トレース404に示すポンプ光の存在は、パルス光トレース402に見える2つのパルス408、410を発生させる。第2のパルス410後にプラズマ点火が始まり、トレース406に示す測定CWプラズマ光を増加させる。
【0033】
[0039]これらのデータを生成するシステムで使用されるコントローラは、トレース406に示す検出CWプラズマ光が閾値412に達したときに、ポンプを停止414させるように構成されている。Q-スイッチ結晶からの消滅したパルスが、トレース402に示されている。図4の一連のオシロスコープトレース400に示す条件の代わりに、又はこれに加えて、様々な制御構成が可能である。ポンプレーザの停止又はポンプレーザ光の消滅は、公称で、CWプラズマ光の閾値に達した直後に生じるように構成されている。ポンプレーザの停止又はポンプレーザ光の消滅は、CWプラズマ光の閾値に達した後の予め定められた遅延後に生じるように構成されていてもよい。本教示による様々な方法において、様々な閾値を使用して所望の性能を実現することができる。
【0034】
[0040]一部の実施形態において、検出信号は、プラズマ光の出力を表し、閾値は、動作電力に対するプラズマ光の出力の所望の割合であるように選択される。一部の実施形態において、所望の割合は公称で50%である。他の実施形態において、所望の割合は公称で90%である。さらに他の実施形態において、所望の割合は30%~95%である。
【0035】
[0041]予め定められた遅延を、パルスレーザ光のパルス期間との特定の関係を有するように選択することができる。これにより、パルスシーケンスのうちの次のパルスが発生する前にポンプが遮断されるようにすることができる。一部の実施形態において、パルスレーザ光のパルス間の期間は、時間遅延よりも長い。一部の実施形態において、コントローラは、時間遅延がパルスレーザ光の1つのパルス期間よりも短くなるように構成されている。Q-スイッチ結晶及び/又はポンプ構成及び出力レベルを、パルス期間を制御するように調節できることを理解すべきである。
【0036】
[0042]本教示の1つの特徴は、異なる既知のQ-スイッチ結晶を使用できることである。パルス光の波長は、バルブのガス種の絶縁破壊を生じさせるのに適切なものでなければならない。図5Aは、本教示による、利得領域502及び飽和性吸収体領域504を含むQ-スイッチ結晶500の実施形態を示す。当業者により理解されるように、異なるホスト材料及びドーパントを使用して、適切な利得領域502及び飽和性吸収体領域504を設けることができる。例えば、結晶500は、ガラスホスト、イットリウムアルミニウムガーネットホスト、又はスピネルホストであり得るホスト材料を有することができる。例えば、結晶500は、イッテルビウムドーパント、クロムドーパント、コバルトドーパント、又はバナジウムドーパントであり得る、利得領域502及び飽和性吸収体領域504の一方又は両方のドーパントを有することができる。Q-スイッチ結晶は、例えば、プラズマ光の少なくとも一部を反射し、及び/又はキセノンスペクトルの波長を遮るために使用可能な狭帯域フィルタを備えることもできる。一部の実施形態において、Q-スイッチレーザ結晶は、一面にコーティングを有する。このコーティングは、例えば、保護コーティング、反射コーティング、及び/又は反射防止コーティングであってもよい。
【0037】
[0043]図5Bは、本教示による無電極レーザ駆動光源で使用するのに適した、曲面552を有するイットリウムアルミニウムガーネットベースの(YAGベースの)受動Q-スイッチレーザロッド550の実施形態を示す。飽和性吸収体領域554は、イットリウムアルミニウムガーネットホストのクロムドーパントである。利得領域556は、イットリウムアルミニウムガーネットホストのイッテルビウムドーパントである。ドーパント及びホストは、パルス光の波長並びにパルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間の設定に寄与する。飽和性吸収体領域の長さ558(L2)、利得領域の長さ560(L1)、及び結晶の幅562(W)は、例えば、パルス繰返数、パルス持続時間、パルスエネルギーを含む所望の出力パルスパラメータを提供するように選択される。
【0038】
[0044]Q-スイッチ結晶は、実証済みの技術である。例えば、Q-スイッチ結晶は、既知の受動Q-スイッチマイクロチップレーザで使用されている。1つの特定の例として、図5Bに関して説明した結晶550と同様の、飽和性吸収体領域の長さ558(L2)=1.36mm、利得領域の長さ560(L1)=3mm、及び結晶の幅562(W)=3mmを有する結晶を使用するマイクロチップレーザは、74マイクロジュールのエネルギーを有する1.6nsのパルスを14kHの繰返数で供給し、970nmの波長のポンプレーザで10Wのポンプ出力から実現された。ポンプ出力の増加と共に、平均出力電力及び発生パルス繰返数を、ポンプ出力9.3Wについて、それぞれ1W及び13.6kHzまで増加させることができる。目につく熱ロールオーバなく、最大出力電力に達することができる。平均パルス幅1.58±0.04nsを実現することもできる。実際には、パルスエネルギー73.8±0.7μJ及びピーク出力値46.0±0.8kWをそれぞれ実現することができた。本教示の1つの特徴は、Q-スイッチ結晶500、550によって提供される、このような高可用性の小型で確実な光パルス源によって実現可能なパルス光パラメータを用いて、無電極点火を実現できることである。
【0039】
[0045]ポンプ効率及びパルス出力は、利得結晶502、556、ドーピング要素(例えばYB又はNd)、ドーピングのパーセンテージ、並びに直径及び長さを含む、結晶500、550の様々な特性によって決まる。飽和性吸収体結晶504、552については、ドーピング要素(例えばCr又はV)、ドーピングのパーセンテージ、初期吸収のパーセント、直径及び/又は長さである。一部の実施形態において、ポンプ波長及びパルス光波長の反射コーティング及び/又は透過コーティングが、結晶500、550の1つ又は複数の端部に設けられている。例えば、Yb:YAG-Cr:YAG結合結晶は、940nmについて高透過であり、1030nmについて高反射であるコーティングを、Yb:YAG端部に含むことができる。また、結晶は、Cr:YAG端部に、1030nmで部分的にのみ反射するコーティングを有することができる(すなわち出力カプラ)。多くのQ-スイッチレーザが、入射するポンプレーザとは反対側の端部に飽和性吸収体及び出力カプラを持つポンプ構成を有しているが、無電極点火のためのパルスQ-スイッチ結晶は、飽和性吸収体端部ではなくポンプ入力端部に出力カプラを有することができる。
【0040】
[0046]結晶500、550の一部の実施形態は、Yb及びCr YAGの周りに非ドープ端部を有することができ、これを非吸収ミラーと呼ぶことができる。このような構成は、熱的過負荷及びファセットの破損を避ける。利得領域502、556で、Nd:YAGの利得媒体は一般的なものであり、比較的コストが低い。Nd:YAGの利得領域502、556は、808nmで励起され、1064nmで発光する。Yb:YAGの利得領域502、556は、あまり一般的なものではなく、より高価である。この材料は、940nm又は970nmの波長で励起され、1030nmで発光する。このようなYb:YAG結晶は、最も一般的には、940nmの励起に適応するようにコーティングされる。940nmについてコーティングされた結晶は、970nmではうまく機能することができない(例えば、940nmのコーティングは、970nmでは60%しか透過しない)。加えて、940nmの波長光は、一般に、970nmの光よりも1030nmからの分離が容易である。Ybドープガラスを975nmで励起することも可能である。このポンプ波長は、既知のレーザ駆動光源レーザ波長で使用されるものと同じである。
【0041】
[0047]本教示による無電極点火のためにパルス光を発生させるQ-スイッチ結晶の設計のいくつかの重要な特徴には、例えば、レーザ波長の選択、コーティング、利得部分、飽和性吸収体部分の配置の順序、並びにポンプパルス入力及び出力の方向が含まれる。他の重要な特徴には、ポンプビームとプラズマビームとの結合/分離、及びQ-スイッチ結晶によって発生するパルスからCWレーザを保護する必要性への対応が含まれる。図1A図1Bを再び参照すると、光源100、150の異なる実施形態は、これらの設計選択に影響を及ぼすポンプレーザ116、162、Q-スイッチ結晶112、158、及びCWレーザ122、170の位置について異なる構成を有する。加えて、パルスエネルギーが高いため、結晶の取付け及び関連する熱管理が、重要な考慮事項である。
【0042】
[0048]図6は、本教示による無電極レーザ駆動光源の実施形態で使用される準CW(QCW)ポンプパルスのパルス長の関数としての、ガス絶縁破壊を生じさせるのに十分なレーザパルスを発生させるポンプレーザのパルスエネルギー及びポンプ電流閾値のグラフ600である。すなわち、パルス長は、準CWポンプ光信号を発生させるために使用される繰り返しのパルスの幅(例えば、方形波信号のパルスの幅)である。グラフ600は、キセノンガスを含むバルブに関する測定値を表す。グラフ600は、例示的な動作点を示し、動作がパルス持続時間の範囲にわたって行われ得ることを示す。閾値は、500マイクロ秒のパルス長を超えている。本教示の光源の様々な実施形態が、この例示的なデータに示すものとは異なるパラメータで動作し得ることに留意されたい。特定の例としての、キセノンガスが充填された22気圧の低温バルブのパルス点火及び移行ハンドオフの動作パラメータのいくつかの例は、以下の通りである。(1)CW移行ハンドオフを、980nmの波長で14Wという低さのCWレーザ出力で実現することができ、(2)CW移行ハンドオフを、972nmという低さのCWレーザ光中心波長で実現することができ、(3)略瞬間的なCW移行ハンドオフを、975nmという低さのCWレーザ光中心波長で実現することができ、4)CW移行ハンドオフを、50ワットという高さのCWレーザ出力で実現することができる。980nmでのレーザスペクトルの内容がゼロになると、移行ハンドオフは、数秒から1分又は2分かかることがある。CWレーザ出力が20ワットであるとき、中心波長の変動は、順調な移行ハンドオフの980nmの中心波長から1~2nm外れる。30気圧の低温充填バルブを用いて、CWレーザからの30ワット及び976nmの中心波長でCW移行ハンドオフを実現することが可能である。一般に、点火は、低圧バルブよりも高圧バルブを用いた方が強くなる。例えば、30atm超の圧力のバルブは、一般に、約22atmの圧力のバルブよりも強い点火を有する。
【0043】
[0049]図7は、本教示による無電極レーザ駆動光源の実施形態で使用される集束レンズアセンブリ704、706を有する裸バルブ702を含むバルブシステム700を示す。プラズマ領域708が示されている。集束レンズアセンブリ704、706は、互いに90度を向く平面に構成されている。一方のアセンブリ704は、パルス光をバルブ702のプラズマ領域708に向け、他方のアセンブリ706は、CW維持光をバルブ702のプラズマ領域708に向ける。本明細書で説明したように、プラズマ領域708のパルス照明及びCW維持照明の形状は、同じであっても異なっていてもよい。プラズマ領域708のパルス照明及びCW維持照明の位置は、重なっていても別個であってもよい。一部の実施形態において、バルブ702にキセノンガスが充填されている。一部の実施形態において、バルブ702は球形に形成されている。また、一部の実施形態において、ガスが充填されたバルブ702の圧力は、20atm~50atmの圧力であり得る。
【0044】
[均等物]
[0050]出願人の教示を様々な実施形態と共に説明したが、出願人の教示は、このような実施形態に限定されることを意図したものではない。それどころか、出願人の教示は、当業者によって理解される様々な代替形態、修正、及び均等物を包含し、これは、本教示の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。

図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7