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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】貯留槽
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/10 20060101AFI20241002BHJP
   C10B 41/00 20060101ALI20241002BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C02F11/10 ZAB
C10B41/00
G21F9/10 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024057659
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】杉峯 健太
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012061(JP,A)
【文献】特表2001-503083(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/10
C10B 41/00
G21F 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物を受け入れて炭化物処理を行う貯留槽であって、
前記炭化物を上部から投入する投入口と、前記炭化物を下部から排出する排出口と、を有する槽本体と、
前記槽本体の側壁から内部空間へ向けて突出した突出部を有する棒状部材と、を備え、
前記棒状部材は、前記突出部への前記炭化物の堆積及び滞留を防止する堆積滞留防止構造を有し、
前記堆積滞留防止構造は、前記突出部の上部を覆うカバー部材であり、
前記カバー部材は、
前記突出部の上方に設けられた頂部と、
前記頂部から前記突出部の接線方向に向かって、互いに異なる方向に傾斜する2つの 傾斜部と、が前記突出部の全長に亘って形成されており、
前記棒状部材は、気体又は液体が流通する配管で構成される棒状部材、若しくは、センサで構成される棒状部材である、
貯留槽。
【請求項2】
前記傾斜部の一部は、前記突出部に当接している請求項に記載の貯留槽。
【請求項3】
前記カバー部材及び前記突出部により囲まれる空間には、前記炭化物が存在しないよう構成されている請求項に記載の貯留槽。
【請求項4】
前記カバー部材及び前記突出部により囲まれる空間には、充填材が充填されている請求項に記載の貯留槽。
【請求項5】
前記カバー部材の上面には、前記炭化物の付着性を低下させるコーティング層が含まれている請求項の何れか一項に記載の貯留槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留槽に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥等の有機性廃棄物は、例えば加熱により炭化処理されて燃料として再利用されている。このようにして得た有機性廃棄物の炭化物は、炭化処理直後はその粒子表面に活性の高い表面官能基を有しており、そのままでは自己発熱性を有することが知られている。そのため、貯蔵時の安全性を確保すべく、貯留槽にて自己発熱性を低下させる処理(いわゆる、エージング処理、以下では、単に「炭化物処理」と称する場合がある)がされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、貯留槽における炭化物の温度制御を適切に行うべく、貯留槽の槽内温度を計測する温度センサを有し、温度センサで検知した温度に基づいて貯留槽に供給される処理用ガスの供給速度を調整する供給速度調整部を有する炭化物処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-12061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の温度センサは、貯留槽の内部空間に向かって貯留槽の側壁から突出しているため、その突出した部分には貯留槽に供給される炭化物が堆積し、炭化物が設定された期間を超えて貯留槽内に滞留する可能性があった。炭化物は自己発熱性を有するため、温度センサ上に炭化物が設定された期間を超えて滞留すると、想定以上に高温となる可能性もある。また、堆積した炭化物によって突出部分が長期間加熱されることにより温度センサが疲労破壊する可能性もあった。
【0006】
そこで、貯留槽の内部空間へ突出した配管やセンサ上への炭化物の堆積及び滞留を防止できる貯留槽が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貯留槽の特徴構成は、炭化物を受け入れて炭化物処理を行う貯留槽であって、前記炭化物を上部から投入する投入口と、前記炭化物を下部から排出する排出口と、を有する槽本体と、前記槽本体の側壁から内部空間へ向けて突出した突出部を有し、気体又は液体が流通する配管、若しくはセンサで構成される棒状部材と、を備え、前記棒状部材は、前記突出部への前記炭化物の堆積及び滞留を防止する堆積滞留防止構造を有している点にある。
【0008】
本構成によれば、配管若しくはセンサで構成される棒状部材が、貯留槽の側壁から内部空間へ向けて突出した突出部への炭化物の堆積及び滞留を防止する堆積滞留防止構造を有するので、突出部に炭化物が堆積して滞留することが防止される。これにより、炭化物が設定された期間を超えて貯留槽内に滞留することがないので、炭化物が想定以上に高温となることを抑制可能である。また、突出部に炭化物が堆積及び滞留しないので、突出部に過度な耐熱性を要求する必要がなく、突出部に使用する材料の幅を広げることができる。
【0009】
他の特徴構成は、前記堆積滞留防止構造が、前記突出部の上部を覆うカバー部材であり、前記カバー部材は、平面視において前記突出部と重複し、前記突出部の上方に設けられた頂部と、前記頂部から前記突出部の接線方向に向かって、互いに異なる方向に傾斜する2つの傾斜部と、が前記突出部の全長に亘って形成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、カバー部材が突出部の上部を覆っているので、投入口から投入された炭化物は、突出部ではなくカバー部材に接触する。そして、カバー部材が頂部と傾斜部とを有しているので、炭化物は自重によって傾斜部の傾斜に沿って上方から下方へと移動し、カバー部材に堆積しない。このため、炭化物が設定された期間を超えて貯留槽内に滞留することがないので、炭化物が想定以上に高温となることを抑制できるとともに、カバー部材が想定以上に加熱されることの防止が可能となる。
【0011】
他の特徴構成は、前記傾斜部の一部が、前記突出部に当接している点にある。
【0012】
本構成によれば、傾斜部の一部が突出部と当接しているので、傾斜部に沿って移動した炭化物が突出部に堆積することがない。これにより、炭化物と突出部の接触を低減できる。
【0013】
他の特徴構成は、前記カバー部材及び前記突出部により囲まれる空間には、前記炭化物が存在しないよう構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、カバー部材及び突出部により囲まれる空間には、炭化物が存在しないよう構成されているので、貯留槽内に炭化物が堆積して突出部及びカバー部材が炭化物に覆われたとしても、炭化物が当該空間に侵入することがない。これにより、突出部における炭化物の堆積及び滞留を防止できる。
【0015】
他の特徴構成は、前記カバー部材及び前記突出部により囲まれる空間には、充填材が充填されている点にある。
【0016】
本構成によれば、カバー部材及び突出部により囲まれる空間には、充填材が充填されているので、貯留槽内に炭化物が堆積して突出部及びカバー部材が炭化物に覆われたとしても、炭化物が当該空間に侵入することがない。これにより、突出部における炭化物の堆積及び滞留を防止できる。
【0017】
他の特徴構成は、前記カバー部材の上面には、前記炭化物の付着性を低下させるコーティング層が含まれている点にある。
【0018】
本構成によれば、カバー部材の上面には、炭化物の付着性を低下させるコーティング層が含まれているので、炭化物はカバー部材に付着し難く、カバー部材に接触した炭化物は傾斜に沿って滑り落ちやすい。このため、カバー部材における炭化物の堆積及び滞留を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】有機汚泥リサイクルシステムの構成図である。
図2】貯留槽の説明図である。
図3】貯留槽の内部空間へ向けて突出した配管の突出部の斜視図である。
図4】配管の突出部の断面図である。
図5】その他の実施形態に係る配管の突出部の断面図である。
図6】その他の実施形態に係る配管の突出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る貯留槽の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
〔全体構成〕
本発明に係る貯留槽3は、図1に示すように、例えば、下水汚泥などの有機汚泥をリサイクル燃料Fとして利用する有機汚泥リサイクルシステム200の炭化物処理に用いられる。貯留槽3は、有機汚泥リサイクルシステム200の備える炭化物処理装置100に配置されている。本実施形態では、有機汚泥リサイクルシステム200に、あらかじめ乾燥しペレット状に造粒された有機汚泥である乾燥汚泥Lが供給される場合を例示して説明する。有機汚泥リサイクルシステム200は、乾燥汚泥Lを炭化などして、リサイクル燃料Fを得る。
【0022】
炭化物処理装置100は、乾燥汚泥Lから得た炭化物Mを受け容れて、炭化物Mの自己発熱性を低下させる処理(いわゆる、エージング処理(低温酸化処理)、以下では、「炭化物処理」と称する)を行う。
【0023】
有機汚泥リサイクルシステム200は、炭化物処理装置100に加えて、主として炭化炉10と、冷却器20と、ストックタンク27とを備える。
【0024】
乾燥汚泥Lは、例えば押し出し造粒法により円筒ペレット状に造粒されている。これは、乾燥汚泥Lもしくは乾燥汚泥Lから得た炭化物Mやリサイクル燃料Fの粒子形状、かさ密度などの粒子物性を均質化して、有機汚泥リサイクルシステム200や炭化物処理装置100における炭化物Mなどのハンドリング性や炭化物処理の均一性を向上させるためである。なお、乾燥汚泥Lは、球状など他の形状に造粒するものであってもよいし、造粒されていなくてもよい。
【0025】
乾燥汚泥Lは、炭化炉10に供給されて炭化される。これにより円筒ペレット状の炭化物Mを得る。炭化炉10から排出された炭化物Mは冷却器20で加湿および冷却される。その後、炭化物処理装置100に所定時間貯留される。炭化物処理装置100は、貯留された炭化物Mに所定時間酸素を含有する処理用ガスG(酸素含有ガスの一例)を通気して、炭化物処理を行う(図2も参照)。炭化物処理された炭化物Mは、安全にタンクなどに貯留可能なリサイクル燃料Fとなり、炭化物処理装置100から排出される。炭化物処理装置100から排出されたリサイクル燃料Fは、市場への出荷に備えてストックタンク27に貯留される。以下では、炭化炉10からストックタンク27に向かう炭化物Mもしくはリサイクル燃料Fの搬送経路の下流側を単に下流側と称し、その逆を上流側と称する。
【0026】
〔炭化炉〕
炭化炉10は、乾燥汚泥Lを低酸素雰囲気下で加熱(以下では、「炭化処理」と称する場合がある)して炭化物Mを得る装置である。炭化炉10は、ロータリーキルンで構成されている。炭化炉10は、ロータリーキルン方式のほか流動床式やスクリュー式などでもよい。炭化炉10は、乾燥汚泥Lを温度250℃から600℃程度で炭化処理する。
【0027】
本実施形態において炭化炉10では、炭化処理の際、乾燥汚泥Lから可燃性の乾留ガスが生成する。当該乾留ガスは、例えば二次燃焼炉12に供給されて燃焼された後、排熱回収機やスクラバなどの排ガス処理設備13を経て燃焼排気Efとして外部に排出される。炭化物Mは、炭化炉10から排出された後、シュート11などを介して冷却器20に投入される。
【0028】
〔冷却器〕
冷却器20は、炭化物Mを冷却する装置である。本実施形態における冷却器20は、ケーシング内に設けたスクリューによって炭化物Mを移動させるスクリュー搬送装置に冷却水CWを供給するノズル20Eを取り付けた装置である。本実施形態では、冷却器20は、炭化物Mをスクリューで一方向に搬送し、当該搬送される炭化物Mに冷却水CWを噴霧供給している。
【0029】
冷却器20の内部の炭化物Mは、冷却水CWの蒸発潜熱により冷却される。本実施形態では、炭化物Mは60℃未満まで急冷される。本実施形態では、冷却水CWの噴霧供給により、炭化物Mは冷却されると共に加湿される。本実施形態では、炭化物Mが、ドライベース(完全に乾燥した炭化物重量に対する重量比)で5%から20%、特に好ましくは13%から17%程度の水分となるように加湿される。なお、冷却器20の外側に、冷媒が内部に流通するジャケットを設け、冷却器20の内部の炭化物Mを間接的に冷却する方式を併用してもよい。
【0030】
本実施形態における冷却器20には、炭化物Mの流れと対向する向きに、窒素などの不活性ガスである冷却ガスCGが通流されている。冷却器20では、冷却ガスCG、及び、冷却水CWの水蒸気に加えて、一酸化炭素ガスなどの可燃性ガスや臭気を有するガスが生じる。そのため、冷却器20の排気を、排気管14を介して二次燃焼炉12に導入している。冷却された炭化物Mは、冷却器20からフライトコンベヤ22に供給される。本実施形態では、炭化物Mが、冷却器20とフライトコンベヤ22の投入口(図示せず)とを仕切るロータリーバルブ21を介してフライトコンベヤ22に供給される。
【0031】
冷却器20から排出された炭化物Mは、フライトコンベヤ22によりクッションタンク23に搬送され、クッションタンク23から炭化物処理装置100に供給される。本実施形態では、クッションタンク23に搬送された炭化物Mは、例えばロータリーバルブ(不図示)又は配管を介して炭化物処理装置100に供給される。なお、フライトコンベヤ22などを用いる代わりに、冷却器20から排出された炭化物Mを、シュートなどを経て炭化物処理装置100に供給してもよい。また、フライトコンベヤ22で搬送する代わりに、空気輸送、ベルトコンベヤ、バケットコンベヤなどを用いて搬送してもよい。
【0032】
〔炭化物処理装置〕
炭化物処理装置100は、炭化物Mを炭化物処理して、リサイクル燃料Fを得る装置である。炭化物処理装置100で得たリサイクル燃料Fは、フライトコンベヤ25によりクッションタンク26に輸送される。この際、フライトコンベヤ25の上流にはチラーから冷媒が供給されている熱交換器などの空気冷却装置25aが配置され、この空気冷却装置25aで冷却された空気Aを用いてリサイクル燃料Fを冷却する場合がある。リサイクル燃料Fは、クッションタンク26からストックタンク27に投入されて出荷時まで保管される。なお、クッションタンク26を省略してシュートなどを経てストックタンク27にリサイクル燃料Fを直接投入してもよいし、フライトコンベヤ25で搬送する代わりに、空気輸送、ベルトコンベヤ、バケットコンベヤなどを用いて搬送してもよい。また、クッションタンク26やストックタンク27を省略して、搬送されたリサイクル燃料Fが利用先設備へ直接的に供給されるようにしてもよい。
【0033】
炭化物処理装置100は、図2に示すように、炭化物Mを貯留して炭化物処理を行う貯留槽3と、貯留槽3に貯留された炭化物Mの堆積物Bに処理用ガスGを通気(給気)する通気部4と、を備えている。また、炭化物処理装置100は、貯留槽3の内部温度を計測する槽内温度計を有している。貯留槽3の内部温度とは、堆積物Bの温度を計測した値のことをいう。炭化物処理装置100は、槽内温度計だけでなく、貯留槽3に供給される処理用ガスGのガス温度を計測するガス温度計や、貯留槽3に供給される処理用ガスGのガス流量を計測するガス流量計測計、又は貯留槽3に投入される前の炭化物Mの温度(投入前温度)を計測する機器を有していてもよい。槽内温度計は、公知の温度センサで構成されているため、詳細な説明を省略する。
【0034】
なお、図1に示すように、処理用ガスGは空気Aなどの酸素を含有する第一処理用ガスG1を少なくとも含む気体である。本実施形態における通気部4は、第一処理用ガスG1と第二処理用ガスG2とを混合した処理用ガスGを給気している。第二処理用ガスG2は、不活性ガス(例えば窒素)を含有する気体である。処理用ガスGの酸素濃度は第一処理用ガスG1と第二処理用ガスG2との混合比で決定されるため、処理用ガスGの酸素濃度は第二処理用ガスG2の混合割合が大きいほど小さい値となる。この通気部4は、第一処理用ガスG1を供給するための第一ファン41と、第二処理用ガスG2を供給するための第二ファン42とを含む。なお、第二処理用ガスG2を供給するための第二ファン42を省略して一定量の第二処理用ガスG2を供給してもよいし、第二ファン42に代えてバルブ等で供給量を調整してもよい。
【0035】
炭化物処理装置100は、炭化物Mを貯留槽3に貯留する貯留工程と、炭化物Mの堆積物Bに酸素を含有する処理用ガスGを通気する通気工程と、炭化物Mを所定時間滞留させて排出する排出工程とを行って、炭化物Mの炭化物処理を実現し、リサイクル燃料Fを得る。
【0036】
〔貯留槽〕
図2に示すように、貯留槽3は、炭化物Mを鉛直方向(下から上に順)に積み増して層状に貯留する金属製の容器である。また、貯留槽3は当該層状に貯留した炭化物Mを、層状態を維持しつつ次工程に供給する供給容器である。貯留槽3は、貯留槽3の槽本体30の内部空間30Aに炭化物Mを投入する投入口31と、貯留槽3の内部空間30Aからリサイクル燃料Fを排出する排出口32と、緊急時に炭化物Mを排出可能な緊急排出口35と、を有する。
【0037】
本実施形態の貯留槽3の槽本体30は、断面形状が円形で下部が窄む槽であり、下部の窄む角度(コーン角度)は、排出口32から排出される炭化物M(リサイクル燃料F)の槽内滞留時間が均一になるように設定されている。なお、貯留槽3の槽内における上部と下部との境界近傍であって、貯留槽3の径方向の中央付近に、陣笠形状の邪魔板(いわゆる、コーンバッフル)を設けて、炭化物M(リサイクル燃料F)の槽内滞留時間が均一になるようにしてもよい。
【0038】
貯留槽3は、槽本体30の上端部に投入口31を有する。投入口31は、貯留槽3の内部空間30Aと繋がる供給管を含んでおり、当該供給管に設けられたロータリーバルブを含んでいてもよい。投入口31にロータリーバルブを含む場合は、上流側の雰囲気と縁切りされた状態で炭化物Mを貯留槽3の内部空間30Aに投入することができる。本実施形態では、投入口31に一定の供給速度で連続的に炭化物Mが供給される。
【0039】
貯留槽3は、槽本体30の下端部に排出口32を有する。排出口32は、貯留槽3の内部空間30Aとつながる排出管32bと、排出管32bに設けられた炭化物M(リサイクル燃料F)の排出装置としてのロータリーバルブ32aとを有する。
【0040】
排出管32bは、円筒状の管であり、槽本体30の下端部から下方に向けて設けられている。貯留槽3は、ロータリーバルブ32aにより、下流側の雰囲気と縁切りされた状態で、リサイクル燃料Fを貯留槽3の内部空間30Aから貯留槽3の下方に排出することができる。この排出口32から連続的にリサイクル燃料Fが排出される。
【0041】
この貯留槽3には、一定の供給速度で連続的に炭化物Mが投入されて、貯留槽3から、連続的にリサイクル燃料Fが排出される。炭化物M(リサイクル燃料F)の貯留槽3での平均滞留時間は、例えば2~4日(48時間~96時間)となるように制御される。滞留時間は、炭化物Mからリサイクル燃料Fを得るために必要十分な長さが設定されている。滞留時間が短すぎると、炭化物Mの自己発熱性を十分に低下せしめることができず、リサイクル燃料Fの安全性を担保できない。滞留時間が長すぎると、リサイクル燃料Fの生産効率が低下して不経済となるため好ましくない。
【0042】
貯留槽3は、側壁に、処理用ガスGを内部空間30Aに導入し堆積物Bに酸素を含有する処理用ガスGを供給する複数(本実施形態においては12つ)の配管34(棒状部材の一例)を有する。本実施形態の配管34は、貯留槽3の側壁の上下方向に亘る複数箇所に設けられているとよく、貯留槽3の上部、中央付近、又は下部の側壁のいずれかに接続されているとよい。配管34は、貯留槽3の側面外側から槽本体30の壁部を貫通して、貯留槽3の槽内の内部にその先端が配置されるように、槽本体30の径方向に沿って取り付けられている。従って、配管34は、貯留槽3の側壁から内部空間30Aへ向けて突出した突出部34aを有している。複数の配管34の、貯留槽3の内部空間30Aへの挿入深さはそれぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0043】
配管34から供給された処理用ガスGは、貯留槽3の下部から上部に亘って堆積物Bの粒子層に均一に通気される。処理用ガスGは、堆積物Bの粒子層を通過しつつ炭化物Mの粒子表面と固気接触し、当該粒子表面における表面官能基などを酸化する。なお、貯留槽3の下部の側壁に接続された配管34は、貯留槽3の底壁に接続されていてもよい。
【0044】
なお、貯留槽3の側壁には、貯留槽3の内部空間30Aに窒素などの不活性ガス、若しくは冷却流体等の液体を供給する配管が設けられていてもよい。これらの配管についても配管34と同様に、貯留槽3の内部空間30Aにその先端が配置されるように槽本体30に取り付けられているとよい。
【0045】
貯留槽3の堆積物Bは、粒子層から成る複数の層領域を形成している。堆積物Bの粒子層を通過した処理用ガスGは、貯留槽3の上端部に設けられた排気管33から排気ガスEとして外部に排気される。排気ガスEは、二次燃焼炉12(図1参照)などに導入されて浄化された後、大気に排出される。
【0046】
貯留槽3には、槽内温度計のセンサプローブである複数(本実施形態においては3つ)の温度センサT(棒状部材、センサの一例)が取り付けられている。本実施形態における温度センサTは、先端に温度検出素子を有する棒状のセンサプローブであり、測温抵抗体を用いている。なお、温度センサTは、熱電対や、その他のセンサを用いてもよい。
【0047】
温度センサTは、貯留槽3の側壁に設置されている。温度センサTは、棒状のセンサプローブを貯留槽3の側面外側から槽本体30の壁部に貫通させ、貯留槽3の槽内の内部にセンサの先端が配置されるように、槽本体30の径方向に沿って取り付けられている。従って、温度センサTは、貯留槽3の側壁から内部空間30Aへ向けて突出した突出部Taを有している。なお、温度センサTは、槽本体30の径方向に沿うように取り付けられる場合に限られず、槽本体30の鉛直方向に対して上向きもしくは下向きに傾斜するように取り付けてもよいし、槽本体30の径方向に対して傾斜するように取り付けてもよい。
【0048】
複数の温度センサTの、貯留槽3の内部空間30Aへの挿入深さはそれぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。一の温度センサTの先端が堆積物Bの中心付近にあり、他の温度センサTの先端が堆積物Bの外周付近にあると、堆積物Bの内部温度を正確に測定することができる。
【0049】
〔堆積滞留防止構造〕
貯留槽3には、上部に設けられた投入口31から炭化物Mが投入されるので、貯留槽3の側壁から内部空間30Aに向けて突出している温度センサTの突出部Taや、配管34の突出部34aには炭化物Mが堆積しやすい。炭化物Mは自己発熱性を有しているので、突出部Ta,34a上に炭化物Mが長期間滞留すると、炭化物Mが想定以上に高温となる可能性がある。また、突出部Ta,34a上に堆積した炭化物Mによって長期間加熱されることによりこれらが疲労破壊するおそれもある。そこで、温度センサT及び配管34は、突出部Ta,34aの上に炭化物Mが堆積、滞留しないよう堆積滞留防止構造を有している。
【0050】
堆積滞留防止構造は、図2図4に示すように、突出部Ta,34aの上部を覆うカバー部材5である。カバー部材5は、頂部51と一対の傾斜部52,52とを有しており、頂部51及び傾斜部52は、突出部Ta,34aの全長に亘ってこれらの上部を覆っている。カバー部材5の一端は、槽本体30の側面に接続されている。頂部51は、図4に示すように、突出部Ta,34aの上方に設けられており、突出部Ta,34aの平面視(上方から突出部Ta,34aを視た場合の方向視)において突出部Ta,34aと重複する。すなわち、頂部51は、突出部Ta,34aとは接触していない。頂部51は、上に凸の角張った山形状であってもよく、上方に膨らんだ滑らかに湾曲した曲面を有していてもよい。
【0051】
一対の傾斜部52,52は、頂部51から突出部Ta,34aの接線方向に向かって互いに異なる方向に傾斜している。傾斜とは、水平面に対して傾いていることを指す。また、接線方向とは、傾斜部52及び突出部Ta,34aの接点Pと頂部51とにより規定される方向だけでなく、接点Pの近傍の点と頂部51とにより規定される方向も含む。従って、傾斜部52は突出部Ta,34aと接触していなくてもよい。また、頂部51から傾斜部52の先端までの長さは特に制限されず、先端が接点Pと同位置にあってもよいし、接点Pよりも下方に向かって傾斜方向に沿って延出していてもよい。頂部51及び傾斜部52は金属や樹脂によって一体形成されているとよい。
【0052】
本実施形態においては、図4に示すように、頂部51が突出部Ta,34aの中心軸を有する鉛直面上に配置されている。すなわち、一対の傾斜部52,52は鉛直面に対して対称に配置されている。頂部51と突出部Ta,34aとの離間距離は任意に定めることができるが、当該離間距離が短いと傾斜部52の鉛直面に対する傾斜角度θが小さくなり、炭化物Mが突出部Ta,34a上を滑らずに堆積してしまう。また、当該離間距離が長いと傾斜部52の傾斜角度θは大きくなるが、傾斜部52の寸法が大きくなるので、カバー部材5を有する配管34又は温度センサTを槽本体30へ取り付ける際に槽本体30の外周に形成する挿入口が大きくなってしまう。そこで、頂部51と突出部Ta,34aとの離間距離は、傾斜部52の傾斜角度θが堆積物Bの安息角以下となるように決められるとよい。具体的には、傾斜部52の傾斜角度θは、45°以下であるとよく、好ましくは30°以下、より好ましくは15°以下であるとよい。
【0053】
本実施形態においては、傾斜部52が突出部Ta,34aと接点Pで当接しているため、投入口31から投入された炭化物Mが、カバー部材5及び突出部Ta,34aにより囲まれる空間5Aに入り込みにくい。また、傾斜部52は、接点Pよりも下方に向かって傾斜方向に沿って延出している。一方で、貯留槽3に炭化物Mが投入されて貯留槽3の上部まで炭化物Mが堆積すると、突出部Ta,34aが堆積物Bによって覆われることがある。この場合には、カバー部材5の延出部分と突出部Ta,34aとの間に炭化物Mが入り込みやすいので、傾斜部52の先端は接点Pの近傍に設けられているとよい。
【0054】
図3に示すように、カバー部材5の、内部空間30A側の端部と突出部Ta,34aの端部との間には、カバー部材5及び突出部Ta,34aにより囲まれる空間5Aと内部空間30Aとを仕切る仕切壁53が配置されている。仕切壁53は突出部Ta,34aの突出方向に対して垂直な面を有しており、カバー部材5及び突出部Ta,34aの端部と同一平面に設けられる。これにより、カバー部材5及び突出部Ta,34aにより囲まれる空間5Aと内部空間30Aとが非連通状態となり、空間5Aに炭化物Mが入り込むことがないので、突出部Ta,34aの上面への炭化物Mの堆積が防止される。
【0055】
なお、カバー部材5及び突出部Ta,34aにより囲まれる空間5Aには充填材が充填されていてもよい。充填材とは、例えば耐熱性を有するセラミックス等を用いるとよい。これにより、カバー部材5の一部が破損した場合であっても、充填剤が炭化物Mと突出部Ta,34aとの接触を防止するので、突出部Ta,34a上に炭化物Mが滞留することを抑制できる。なお、充填材とカバー部材5が一体形成されていてもよい。すなわち、カバー部材5は空間5Aを有さないよう、その断面が略三角柱状に形成されていてもよい。
【0056】
カバー部材5の表面、すなわち頂部51及び傾斜部52の表面には、炭化物Mが傾斜方向に沿って滑りやすいよう、コーティング層が形成されていてもよい。コーティング層は、カバー部材5の表面における炭化物Mが滑り落ちやすくなるようなものであれば種類を問わず、例えば、フッ素等によりコーティングされるとよい。これにより、カバー部材5と炭化物Mとの付着性が低下し、カバー部材5上から炭化物Mが滑り落ちやすくなるので、突出部Ta,34a上に炭化物Mが堆積及び滞留することを防止できる。
【0057】
〔その他の実施形態〕
(a)上記実施形態では、傾斜部52,52は突出部Ta,34aの鉛直面に対して対称に配置されているとしたが、傾斜部52,52は鉛直面に対して対称に配置されていなくてもよく、図5に示すように、一方の傾斜部52の傾斜角度と他方の傾斜部52の傾斜角度が異なっていてもよい。
【0058】
(b)上記実施形態では、突出部として温度センサTの突出部Ta及び配管34の突出部34aを例示したが、貯留槽3の槽本体30に対して水等を供給する水配管が内部空間30Aに突出していてもよく、このような水配管の突出部に対してカバー部材5が配置されていてもよい。
【0059】
(c)上記実施形態では、突出部Ta,34aは槽本体30の側壁から内部空間30Aへ向かって突出しているとしたが、槽本体30の底壁から内部空間30Aへ向かって突出していてもよい。この場合には、図6に示すように、突出部Ta,34aの上端部を覆うようにカバー部材5が設けられているとよい。(c)の実施形態においては、カバー部材5は円錐状であるとよく、カバー部材5の下端と突出部Ta,34aとは接触していない。また、突出部Ta,34aの軸方向視におけるカバー部材5の下端が描く底面は、突出部Ta,34aの管径よりも大きいとよい。これにより、カバー部材5が突出部Ta,34aを覆いながらも、突出部Ta,34aの上端面と内部空間30Aとが連通するので、炭化物Mの堆積を防ぎつつ槽本体30へのガスの導入や温度測定等を行うことができる。
【0060】
(d)上記実施形態では、貯留槽3において堆積滞留防止構造を有している配管34及び温度センサTを設けたが、これらはストックタンク27に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、貯留槽の内部空間へ突出した配管やセンサ上への炭化物の堆積及び滞留を防止することのできる貯留槽に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
3 :貯留槽
5 :カバー部材
5A :空間
30 :槽本体
30A :内部空間
31 :投入口
32 :排出口
34 :配管(棒状部材)
34a :突出部
51 :頂部
52 :傾斜部
M :炭化物
T :温度センサ(棒状部材)
Ta :突出部


【要約】
【課題】貯留槽の内部空間へ突出した配管やセンサ上への炭化物の堆積及び滞留を防止することのできる貯留槽を提供する。
【解決手段】炭化物Mを受け入れて炭化物処理を行う貯留槽3は、炭化物Mを上部から投入する投入口31と、炭化物Mを下部から排出する排出口32と、を有する槽本体30と、槽本体30の側壁から内部空間30Aへ向けて突出した突出部34a,Taを有し、気体又は液体が流通する配管34、若しくはセンサTで構成される棒状部材と、を備え、棒状部材は、突出部34a,Taへの炭化物Mの堆積及び滞留を防止する堆積滞留防止構造を有している。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6