(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】固定用装具及び患部固定用キット
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20241003BHJP
A61F 13/04 20060101ALI20241003BHJP
A61F 13/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61F5/01 N
A61F13/04 D
A61F13/06 A
(21)【出願番号】P 2020040652
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】川原 あい
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518526(JP,A)
【文献】特表平05-503860(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176428(JP,U)
【文献】特開2009-261855(JP,A)
【文献】特開2019-170434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-02
A61F 13/04、06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部の固定に用いられる、硬化性樹脂を含む固定部材と、
前記固定部材を取り外し可能に収容する本体と、
前記本体を前記患部に取り付ける取り付け部材と、
前記本体に設置される少なくとも1つの支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記固定部材と対向する位置に設置され、
前記固定部材が硬化する際に生じるしわを低減し、
前記固定部材
は、前記本体に収容された状態で、患部に固定し採型
される、固定用装具。
【請求項2】
前記支持部材は、患部の屈曲方向に沿って設置される、請求項1に記載の固定用装具。
【請求項3】
前記支持部材は、合成樹脂を含み、可撓性を有する、請求項1又は2に記載の固定用装具。
【請求項4】
前記支持部材は、それぞれ並んで複数設置される、請求項1から3のいずれかに記載の固定用装具。
【請求項5】
パッド部材をさらに備え、
前記パッド部材は、前記支持部材と対向する位置に設置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の固定用装具。
【請求項6】
前記患部は、関節である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固定用装具。
【請求項7】
前記関節は、膝関節である、請求項6に記載の固定用装具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の固定用装具と、
仰臥位において膝及び/又は足首に当接させるクッション部材と、
を備えた、患部固定用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定用装具及び患部固定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば整形外科領域の医療現場等において、患者の患部に合った形状に形成したキャストステーを装具に備え付け、患部を迅速に固定する処置が行われている。このような装具として、例えば、特許文献1には、水と反応して硬化する軟質材料が入った袋を有する整形外科用ギブスが開示されている。特許文献1に記載の整形外科用ギブスでは、水を注入することによって、軟質材料を肢の形状に合わせて硬化させ、副木としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような軟質材料製ギプスでは、比較的面積の大きい患部に用いる場合、材料の硬化の工程において、固定部材(副木)にしわが発生することがある。このしわにより、固定用装具のフィット性及び強度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、固定部材に生じるしわを低減する固定用装具を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態である固定用装具は、患部の固定に用いられる、硬化性樹脂を含む固定部材と、前記固定部材を取り外し可能に収容する本体と、前記本体を前記患部に取り付ける取り付け部材と、前記本体に設置される少なくとも1つの支持部材と、を備える。前記支持部材は、前記固定部材と対向する位置に設置されている。
前記支持部材は、合成樹脂を含み、可撓性を有していてもよい。
前記支持部材は、それぞれ並んで複数設置されていてもよい。
また、本発明の一実施形態である固定用装具は、パッド部材をさらに備える。前記パッド部材は、前記支持部材と対向する位置に設置されていてもよい。
前記患部が、関節であってもよい。
前記関節が、膝関節であってもよい。
更に、本発明の一実施形態である患部固定用キットは、前記固定用装具と、仰臥位において膝及び/又は足首に当接させるクッション部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定部材に生じるしわを低減する固定用装具が提供できる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る固定用装具の各ベルト部を開いた状態を示す外側面の模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る固定用装具の各ベルト部を開いた状態を示す内側面の模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る固定用装具の内部を示す模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る固定用装具を患部に装着した状態を示す側面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る固定用装具の内部を示す模式図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る固定用装具の内側面の模式図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る固定用装具の断面を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る患部固定用キットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲がこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【0010】
以下の実施形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った用語で構成を説明することがある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、完全に平行な状態から例えば数%程度ずれた状態を含むことも意味する。他の「略」を伴った用語についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0011】
(第1実施形態)
(1)固定用装具
本発明の第1実施形態に係る固定用装具について
図1~3を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る固定用装具の各ベルト部を開いた状態を示す外側(患部に当接しない側)面の模式図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る固定用装具の各ベルト部を開いた状態を示す内側(患部に当接する側)面の模式図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る固定用装具の内部を示す模式図である。
【0012】
図1~3に示すように、固定用装具10は、患部の固定に用いられる、硬化性樹脂を含む固定部材1と、固定部材1を取り外し可能に収容する本体2と、本体2を患部に取り付ける取り付け部材31~36と、本体2に設置される少なくとも1つの支持部材23と、を備えている。
【0013】
固定部材1は、強度を出すために略板状であり、例えば、水などの硬化剤又は光によって硬化する材料又は熱で軟化し成形可能な材料で作製される。より具体的には、固定部材1は、繊維材料の複数の層を積層させた基材に、樹脂を保持させたものであり、患部に当接させ採型した後、硬化させることにより患部を固定することが可能となる。ここで、基材の繊維材料としては、例えばプラスチック繊維又はガラス繊維などの基布等を用いることができる。また、樹脂としては、例えば、光により硬化する光硬化性樹脂、又は含水後、乾燥させることにより硬化するポリウレタン樹脂などの水硬化性樹脂、熱で軟化し成形可能な熱可塑性樹脂等を用いることができる。より具体的には、水硬化性樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー、触媒、及びその他の添加物からなるポリウレタンプレポリマー組成物が好適に用いられる。光硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などのアクリレート樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。更に、固定部材1は、その表面の一部又は全部が、天然繊維又は化学繊維などの繊維で作られた不織布、織布、又は編布により覆われていてもよい。この場合、これら不織布、織布、又は編布は、固定部材1を患部に当接させて採型する際の保護膜としても機能し得る。
【0014】
このような固定部材1によれば、所望の形状に変形後、固定部材1の全体が硬化するようになっている。これにより、固定部材1は個体差がある装着者の患部の形状に適した形状へと成形されるようになっている。そのため、固定部材1のずれが防止できる。
【0015】
本体2の形状は、固定部材1を収容することができれば特に限定されないが、本実施形態において、本体2は、固定部材1を収容する収容部21と、収容部21を保持し、患部に当接するカバー部22と、を備える。収容部21の寸法は、その内部に固定部材1を収容できるよう固定部材1の寸法に合わせて設定され、カバー部22の寸法は、患部の一部又は全部を覆うように設定される。収容部21とカバー部22との間は、開閉可能なポケット状に形成され、その間に前述した固定部材1が取り外し可能に収容される。なお、収容部21とカバー部22との間の形状は、一辺が開閉可能なポケット又はL字に開閉可能なポケットを採用することができ、ポケット部分は、フラップ、チャック、又は面ファスナー等で閉じることができる構造としてもよい。
【0016】
本体2は、例えば編布、織布、又は不織布などの繊維材料を適宜編成、縫製、及び/又は積層して構成することができ、伸縮性や弾性を持たせてよい。具体的には、本体2は、例えば、ダブルラッセル生地、平編生地、ゴム編(リブ編)生地、パール編生地、タック編生地、丸編生地、横編生地、トリコット生地、ラッセル生地、パイル編生地、又は添え糸編生地等で作製される。本体2を構成する編布、織布、又は不織布等の繊維素材は、天然繊維、化学繊維、及び/又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。また、固定部材1として水硬化性樹脂を用いる場合、カバー部22の素材は、例えばナイロンあるいはポリエステル等の撥水加工された素材であることが好ましい。これにより、硬化のため、水硬化性樹脂に含ませた水分がカバー部22を介して患部に伝わることを低減することができる。
【0017】
取り付け部材の形状は、本体2を患部に取り付けることができれば特に限定されないが、本実施形態の取り付け部材は、第1~第6ベルト部31~36からなる。また、第1ベルト部31及び第2ベルト部32のそれぞれの一端は、例えば面ファスナー等により本体2に着脱自在に取り付けることができる。第1ベルト部31及び第2ベルト部32のそれぞれの他端は、縫い付け等により本体2に固定される。また、第3~第6ベルト部33~36のそれぞれの一端は、例えばベルトループ等を通り、面ファスナー等により本体2に対して着脱自在に取り付けることができる。第3~第6ベルト部33~36は、ベルトループ等を介することにより、患部の周囲サイズ(太さ)に適合することができる。第3~第6ベルト部33~36それぞれの他端は、縫い付け等により本体2に固定される。なお、本実施形態においてはベルト部の数は6つであるが、ベルト部の数はこれに限定されず、患部への取り付けが可能な数であればよい。また、取り付け部材31~36において、面ファスナーの代わりに、例えばフックやボタン等が用いられてもよい。
【0018】
支持部材23は、
図3に示すように、カバー部22の外側(患部Nから離れた側)面に設置される。支持部材23の上から収容部21が取り付けられるため、支持部材23は外観からは視認されない状態である。なお、支持部材23は、カバー部22の内側(患部N側)面に設置されていてもよく、その場合、患部Nに支持部材23が接触しないよう、支持部材23を覆う被覆部(不図示)をさらに備える。
【0019】
支持部材23は、本体2において固定部材1と対向する位置に設置される。固定部材1の形状が略長方形であるとき、支持部材23は、例えば長手方向に伸びた形状であり、固定部材1の長手方向に垂直な方向(短手方向・幅方向)において固定部材1の中央に設置されていることが好ましい。
【0020】
支持部材23は、合成樹脂が含まれ、可撓性を有していることが好ましい。支持部材23の素材には、例えば発泡プラスチック等を用いることができる。あるいは、支持部材23として金属製板が用いられてもよい。特に好ましくは、支持部材23は、合成樹脂製である。支持部材23の座屈強度は、好ましくは6N以上であり、より好ましくは8N以上であり、最も好ましくは10N以上である。なお、本明細書において、座屈強度とは、サンプルサイズ10mm×150mm、チャック間距離50mmの条件で、サンプルをオートグラフのチャックに取り付け、長軸方向に圧縮速度100mm/分で座屈させた時の最大荷重である。
【0021】
なお、支持部材23の長手方向の長さや長手方向に垂直な方向(短手方向・幅方向)の長さは、特に限定されない。支持部材23の長手方向の長さは、固定部材1の長手方向の長さと略同一、あるいはそれ以上であることが好ましい。支持部材23の長手方向に垂直な方向の長さは、固定部材1の長手方向に垂直な方向の長さと略同一、あるいはそれ以上であってもよい。また、支持部材23の形状は、特に限定されない。例えば、
図3においては、支持部材23は長手方向に伸びた形状となっている。しかし、支持部材23は、長手方向に垂直な方向に伸びた形状であってもよい。例えば患部が腰椎、頚椎、又は体幹等であるとき、支持部材23は、長手方向に垂直な方向に伸びた形状であり得る。さらには、支持部材23の形状は、例えば十字形等であってもよい。
【0022】
ここで、患部への固定用装具10の取り付けについて
図4を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る固定用装具を患部Nに装着した状態を示す側面図である。
図4において、患部Nの一例として膝関節が示されている。固定用装具10は、屈曲あるいは伸展させた状態の患部に取り付けられる。
【0023】
固定用装具10の取り付け手順について説明する。始めに、固定用装具10に収容される固定部材1の準備を行う。ここで、本例における固定部材1は、水硬化性樹脂を用いたものとする。まず、採型前の固定部材1を含水させる。その後、含水させた固定部材1の余分な水分を除去し、
図1に示すように本体2の収容部21とカバー部22の間のポケットに固定部材1を挿入する。最後に、取り付け部材である第1~第6ベルト部31~36を用いて、
図4に示すように患部Nに固定し、固定部材1を採型する。
【0024】
固定部材1は外側(患部Nから離れた側)面に配置される。そのため、硬化性樹脂として水硬化性樹脂を用いる場合、カバー部22の素材が撥水加工された素材であることにより、硬化性樹脂に含まれる水分がカバー部22を介して患部Nに伝わることを低減することができる。そのため、固定用装具10の装着感が向上する。
【0025】
なお、固定用装具10が取り付けられる患部Nは、膝関節に限定されない。固定用装具10は、屈曲あるいは伸展する、例えば肘関節あるいは手指の関節等の関節に取り付けることができる。あるいは、固定用装具10は、固定が必要な腰椎、頚椎、又は体幹等に取り付けることができる。
【0026】
次に、本実施形態に係る固定用装具10の作用について、説明する。従来、固定部材1が患部Nに沿って屈曲した状態で装着されると、カバー部22の生地が屈曲方向に縮むことにより、カバー部22の生地にしわができ、カバー部22に近接して硬化する固定部材1にしわが生じやすくなる。このしわにより、固定用装具のフィット性及び強度が低下するおそれがある。さらには、固定部材1が折れて破損するおそれがある。
【0027】
本実施形態に係る固定用装具10では、支持部材23が上記のような構造であることにより、支持部材23がカバー部22の生地を伸ばした状態に保つことで、固定部材1に生じるしわを低減できる。したがって、固定用装具のフィット性及び強度が向上する。さらには、固定部材1が折れて破損することが低減される。
【0028】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る固定用装具10について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る固定用装具の内部を示す模式図である。第1実施形態に係る固定用装具10は、1つの支持部材23を備える構成であったが、本実施形態の固定用装具10は、複数の支持部材23を備える。それ以外の構成要素については、第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0029】
図5に示すように、複数の支持部材23のそれぞれは、並んで設置される。複数の支持部材23のそれぞれは、略平行に設置される。複数の支持部材23のそれぞれは、本体2において固定部材1と対向する位置に配置される。
【0030】
これにより、複数の支持部材23のそれぞれは、屈曲方向にカバー部22の生地が縮まないよう、カバー部22の生地を伸ばした状態に保つことで、固定部材1に生じるしわを低減できる。したがって、固定部材1が折れて破損することが低減される。
【0031】
複数の支持部材23のそれぞれの座屈強度は、略同一でもよいし、異なっていてもよい。例えば、固定部材1において長手方向に垂直な方向に弧形を形成させるために、中央の支持部材23の座屈強度が、他の支持部材23の座屈強度と異なっていてもよい。
【0032】
支持部材23の数は、固定部材1の大きさに対応して適宜に定められ得る。
図5では一例として3本の支持部材23が示されているが、支持部材23の数は3本に限られない。
【0033】
(第3実施形態)
次に、
図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る固定用装具10について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る固定用装具の内側面の模式図である。第3実施形態に係る固定用装具10は、パッド部材24をさらに備え、カバー部22が第1生地25及び第2生地26からなる構成を有する。それ以外の構成要素については、第2実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、固定用装具10は、点線で示すパッド部材24をさらに備える。パッド部材24は、本体2において固定部材1と対向する位置に配置される。パッド部材24が支持部材23と接して配置される場合、パッド部材24は、支持部材23の一部を覆っていてもよい。固定部材1の形状が略長方形であるとき、パッド部材24は、固定部材1の長手方向と垂直な方向の中央に設置されることが好ましい。
【0035】
パッド部材24の形状は、特に限定されないが、固定部材1の形状が略長方形であるとき、パッド部材24は、例えば長手方向に伸びた形状であり得る。
【0036】
ここで、それぞれの構成要素の位置関係について
図7を参照しつつ説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係る固定用装具の断面を示す模式図である。
図7に示すように、内側(患部Nに当接する側)面にカバー部22が設置される。外側(患部Nに当接しない側)面に固定部材1及び収容部21が配置される。
【0037】
本実施形態において、カバー部22は、第1生地25と、第2生地26とを備え、第1生地25と第2生地26との間に支持部材23と、パッド部材24とが配置される。より具体的には、患部N側から、第2生地26、パッド部材24、支持部材23、第1生地25の順に積層される。パッド部材24は、支持部材23および第1生地25を挟んで、固定部材1と対向する位置に設置される。支持部材23は、固定部材1よりも内側(患部N側)に設置される。また、これら順序は限られず、患部N側から、例えば第2生地26、パッド部材24、第1生地25、支持部材23、固定部材1、収容部21の順で積層されていてもよく、同様にしわを低減させることができる。
【0038】
第2生地26は、第1生地25より厚く形成されていることが好ましい。第2生地26は、適度な弾性を有しており、固定部材1の長手方向と垂直な方向に伸縮性がある素材であることが好ましい。
【0039】
パッド部材24は、適度な弾性を有していることが好ましい。パッド部材24の素材として、例えばウレタン等を用いることができる。なお、図示を省略するが、パッド部材24を複数備え、それらを積層した構成としてもよい。
【0040】
第1生地25は、上述したように撥水加工された素材であることが好ましい。これにより、硬化性樹脂に含まれる水分が本体2を介して患部に伝わることを低減することができる。そのため、固定用装具10の装着感が向上する。
【0041】
このような固定用装具10の構成により、第2生地26、パッド部材24、支持部材23、及び第2生地26を介して、固定部材1を患部Nに押し当てるようにして沿わせることができる。さらには、適度な弾性を有しているパッド部材24により、固定部材1において長手方向と垂直な方向に弧形が形成され、支持部材23により第2生地26が縮まないように保持される。その結果、固定部材1に生じるしわを低減できる。したがって、固定部材1が折れて破損することが低減される。
【0042】
さらに、パッド部材24が固定部材1を押すことにより、固定部材1において長手方向と垂直な方向に弧形が形成される。これにより、固定部材1の強度が高くなる。したがって、固定部材1が折れて破損することが低減される。
【0043】
(患部固定用キットK)
図8は、本発明の一実施形態に係る患部固定用キットKの模式図である。本実施形態に係る患部固定用キットKは、前述した固定部材1と、前述した本体2と、前述した取り付け部材31~36と、仰臥位において膝及び/又は足首に当接させるクッション部材4と、を備える。以下、クッション部材4について詳細に説明する。
【0044】
クッション部材4の形状は、仰臥位において患部Nの回旋を防止することができ、かつ、膝及び/又は足首に当接させることができれば特に限定されない。
図8に示すように、例えば枕などの形状とし、これを踵骨側から足首に当てることで、下肢が回旋しにくくなり、ベッドレスト中等に患部Nに対する固定部材1の位置がずれることを低減することができる。
【0045】
また、クッション部材4は、固定部材1を任意の角度に硬化させるために用いてもよい。この場合、クッション部材4を、例えば膝下又は腕下等に置き、患部Nを屈曲させることにより、屈曲した患部Nに当接した固定部材1は、クッション部材4により形成された患部Nの角度で採型される。
【0046】
なお、本発明は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
患部の固定に用いられる、硬化性樹脂を含む固定部材と、
前記固定部材を取り外し可能に収容する本体と、
前記本体を前記患部に取り付ける取り付け部材と、
前記本体に設置される少なくとも1つの支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記固定部材と対向する位置に設置されている、固定用装具。
[2]
前記支持部材は、合成樹脂を含み、可撓性を有する、[1]に記載の固定用装具。
[3]
前記支持部材は、それぞれ並んで複数設置される、[1]又は[2]に記載の固定用装具。
[4]
パッド部材をさらに備え、
前記パッド部材は、前記支持部材と対向する位置に設置される、
[1]~[3]のいずれか一つに記載の固定用装具。
[5]
前記患部は、関節である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の固定用装具。
[6]
前記関節は、膝関節である、[5]に記載の固定用装具。
[7]
[1]~[6]のいずれか一つに記載の固定用装具と、
仰臥位において膝及び/又は足首に当接させるクッション部材と、
を備えた、患部固定用キット。
【符号の説明】
【0047】
1:固定部材
10:固定用装具
2:本体
21:収容部
22:カバー部
23:支持部材
24:パッド部材
25:第1生地
26:第2生地
31~36:第1~第6ベルト部
4:クッション部材
K:患部固定用キット
N:患部