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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車載用制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20241003BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241003BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J7/10 B
H02J7/34 D
B60R16/04 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023553866
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2021038194
(87)【国際公開番号】W WO2023062808
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 一翔
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-092476(JP,A)
【文献】特開2006-54976(JP,A)
【文献】特開2021-68546(JP,A)
【文献】国際公開第2014/111999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H02J 7/34
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、前記電源部とは異なる蓄電部と、前記電源部から負荷へ電力を供給する経路である電力路と、前記電源部から供給される電力に基づいて前記蓄電部に電流を供給する充電動作を行う充電部と、前記蓄電部から供給される電力に基づいて前記負荷側に電流を流す放電動作を行う放電部と、前記電力路に設けられるスイッチと、を備える車載システムに用いられ、前記充電部による前記充電動作及び前記放電部による前記放電動作を制御する車載用制御装置であって、
前記電力路は、前記スイッチよりも前記電源部側の第1電力路と、前記スイッチよりも前記負荷側の第2電力路と、を有し、
前記充電部は、前記第1電力路と前記蓄電部との間に設けられ、
前記放電部は、前記蓄電部と前記第2電力路との間に設けられ、
前記充電部及び前記放電部を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記第1電力路の電圧が閾値電圧よりも高い値である場合に前記スイッチをオン状態とし、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧以下である場合に前記スイッチをオフ状態とし且つ前記放電部に前記放電動作を行わせ、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧以下で且つ前記蓄電部の電圧が所定値以下となった場合に、前記放電部による前記放電動作と前記充電部による前記充電動作とを並行して行わせ、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧よりも低い第2閾値電圧以下となった場合に、前記放電部に前記放電動作を行わせつつ前記充電部に前記充電動作を停止させる
車載用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記放電動作と前記充電動作とを並行して行わせる期間において、前記充電部が前記蓄電部に向けて供給する電力が、前記放電部が放電によって供給する電力以上となるように制御する
請求項1に記載の車載用制御装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記閾値電圧以下の値である
請求項1又は請求項3に記載の車載用制御装置。
【請求項7】
前記放電部は、前記負荷側へ放電電流を供給する経路である出力導電路と、前記蓄電部に基づく入力電圧を変換して前記出力導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換回路と、を有し、
更に、前記出力導電路から前記第2電力路への電力供給を遮断し得る遮断部が設けられ、
前記制御部は、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧を超えている状態でも、前記電圧変換回路に前記電圧変換動作を行わせ、
前記遮断部は、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧以下になった場合に、前記出力導電路から前記第2電力路へ電流を流す
請求項1、請求項3及び請求項4のいずれか一項に記載の車載用制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧を超えている状態では前記放電動作を停止させ、前記第1電力路の電圧が前記閾値電圧以下になった場合に前記放電動作を開始させる
請求項1、請求項3及び請求項4のいずれか一項に記載の車載用制御装置。
【請求項9】
前記スイッチはFETからなり、
前記スイッチと前記負荷との間の接続部と前記放電部との間に放電路が設けられ、
前記放電部は、前記放電路に電流を流すように前記放電動作を行い、
前記スイッチは、オフ状態のときに自身を介して前記負荷側から前記電源部側へ電流が流れることを遮断し、オン状態のときに許容する
請求項1、請求項3、請求項4、請求項7及び請求項8のいずれか一項に記載の車載用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バックアップ機能を有する電源装置が開示されている。この電源装置は、電源部(交流電源)が動作中であれば、AC-DC変換電源から提供された電力を用いて負荷回路に電力を供給し、電源部(交流電源)が停止中である場合に、蓄電部(バッテリ)に蓄積された電力を用いて負荷回路に電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-24288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、蓄電部(バッテリ)の利用が電源部(交流電源)の停止中に限られている。
【0005】
本開示は、電源部とは別に設けられた蓄電部の利用範囲を広げることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用制御装置は、電源部と、前記電源部とは異なる蓄電部と、前記電源部から負荷へ電力を供給する経路である電力路と、前記電源部から供給される電力に基づいて前記蓄電部に電流を供給する充電動作を行う充電部と、前記蓄電部から供給される電力に基づいて前記負荷側に電流を流す放電動作を行う放電部と、を備える車載システムに用いられ、前記充電部による前記充電動作及び前記放電部による前記放電動作を制御する車載用制御装置であって、
前記充電部及び前記放電部を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記電力路の電圧が閾値電圧以下である場合に前記放電部に前記放電動作を行わせ、前記蓄電部の電圧が所定値以下である場合に前記充電部に前記充電動作を行わせる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電源部とは別に設けられた蓄電部の利用範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の車載システムを概略的に示す構成図である。
図2図2は、電源部から負荷及び蓄電部に電力を供給する状態の車載システムを概念的に示す説明図である。
図3図3は、電源部から負荷に電力を供給しつつ、放電動作を行う状態の車載システムを概念的に示す説明図である。
図4図4は、電源部から負荷への電力供給が十分である状態から不足する状態に遷移するときの車載システムの状態をあらわすタイミングチャートである。
図5図5は、放電動作を行う状態の車載システムを概念的に示す説明図である。
図6図6は、放電動作と充電動作とを並行して行う状態の車載システムを概念的に示す説明図である。
図7図7は、電源部が電力供給している状態から電源部に基づく電力供給が停止する状態に遷移するときの車載システムの状態をあらわすタイミングチャートである。
図8図8は、電源部からの電力供給が停止した状態において放電動作を行う状態の車載システムを概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕本開示の車載用制御装置は、電源部と、前記電源部とは異なる蓄電部と、前記電源部から負荷へ電力を供給する経路である電力路と、前記電源部から供給される電力に基づいて前記蓄電部に電流を供給する充電動作を行う充電部と、前記蓄電部から供給される電力に基づいて前記負荷側に電流を流す放電動作を行う放電部と、を備える車載システムに用いられ、前記充電部による前記充電動作及び前記放電部による前記放電動作を制御する車載用制御装置であって、
前記充電部及び前記放電部を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記電力路の電圧が閾値電圧以下である場合に前記放電部に前記放電動作を行わせ、前記蓄電部の電圧が所定値以下である場合に前記充電部に前記充電動作を行わせる。
【0011】
電源部からの電力供給が停止しなくとも、負荷に対する供給電力が不足する場合が生じ得る。その原因としては、例えば電源部の劣化や複数の負荷が同時に動作することなどが想定される。
こうした事態に備え、上記車載用制御装置は、電力路からの電力供給が停止されていなくとも、電力路の電圧が閾値電圧以下である場合に、放電部に放電動作を行わせるようにしている。このため、上記車載用制御装置は、蓄電部を利用して、負荷に供給される電力が不足することを抑制することができる。但し、電源部からの電力供給が停止していない状態で蓄電部の電力を消費すると、電源部からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷に行わせることができなくなるおそれがある。この点、上記車載用制御装置は、蓄電部の電圧が所定値以下である場合に充電部に充電動作を行わせる。このため、電源部10からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷に行わせることができなくなるという事態の発生を抑制することができる。
【0012】
〔2〕前記制御部は、所定条件が成立した場合に、前記放電部による前記放電動作と前記充電部による前記充電動作とを並行して行わせるようにしてもよい。
【0013】
上記車載用制御装置は、所定条件が成立した場合に放電動作と充電動作とを並行して行わせることで、電源部からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷に行わせることができなくなるという事態の発生をより確実に抑制することができる。
【0014】
〔3〕前記制御部は、前記放電動作と前記充電動作とを並行して行わせる期間において、前記充電部が前記蓄電部に向けて供給する電力が、前記放電部が放電によって供給する電力以上となるように制御するようにしてもよい。
【0015】
上記車載用制御装置は、放電部が放電によって供給する電力以上の電力を蓄電部に向けて供給することで、蓄電部の電圧がそれ以上低下しないようにすることができ、その結果、電源部からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷に行わせることができなくなるという事態の発生をより確実に抑制することができる。
【0016】
〔4〕前記所定値は、前記閾値電圧以下の値であってもよい。
【0017】
上記車載用制御装置は、蓄電部の電圧が閾値電圧以下の値に設定された所定値以下である場合に充電部に充電動作を行わせることができる。
【0018】
〔5〕前記制御部は、前記電力路の電圧が前記閾値電圧よりも低い第2閾値電圧以下である場合に所定処理を行ってもよい。
【0019】
上記車載用制御装置は、電力路の電圧が閾値電圧よりも更に低い第2閾値電圧以下である場合に、所定処理を行うことができる。このため、上記車載用制御装置は、例えば電源部からの電力供給が停止した場合に、所定処理を行うことができる。
【0020】
〔6〕前記制御部は、前記所定処理において、前記放電部に前記放電動作を行わせつつ前記充電部に前記充電動作を停止させてもよい。
【0021】
上記車載用制御装置は、電力路の電圧が第2閾値電圧以下である場合に、放電部に放電動作を行わせつつ、充電部に充電動作を停止させることができる。このため、蓄電部が充電部を介して電力路に短絡することを回避しつつ、蓄電部に基づく電力を負荷に供給することができる。
【0022】
〔7〕前記放電部は、前記負荷側へ放電電流を供給する経路である出力導電路と、前記蓄電部に基づく入力電圧を変換して前記出力導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換回路と、を有していてもよい。更に、前記出力導電路から前記負荷側の経路への電力供給を遮断し得る遮断部が設けられていてもよい。前記制御部は、前記電力路の電圧が前記閾値電圧を超えている状態でも、前記電圧変換回路に前記電圧変換動作を行わせてもよい。前記遮断部は、前記電力路の電圧が前記閾値電圧以下になった場合に、前記出力導電路から前記負荷側の経路へ電流を流す構成であってもよい。
【0023】
上記車載用制御装置は、電力路の電圧が閾値電圧を超えている状態でも電圧変換回路に電圧変換動作を行わせておくことで、電力路の電圧が閾値電圧以下になった場合に即座に所望の放電電流を負荷側に流すことができる。
【0024】
〔8〕前記制御部は、前記電力路の電圧が前記閾値電圧を超えている状態では前記放電動作を停止させ、前記電力路の電圧が前記閾値電圧以下になった場合に前記放電動作を開始させてもよい。
【0025】
上記車載用制御装置は、電力路の電圧が閾値電圧を超えている状態では放電動作を停止させることで、消費電力を抑制することができる。
【0026】
〔9〕前記電力路には、FETからなるスイッチが設けられていてもよい。前記スイッチと前記負荷との間の接続部と前記放電部との間に放電路が設けられていてもよい。前記放電部は、前記放電路に電流を流すように前記放電動作を行ってもよい。前記スイッチは、オフ状態のときに自身を介して前記負荷側から前記電源部側へ電流が流れることを遮断し、オン状態のときに許容してもよい。
【0027】
上記車載用制御装置は、FETからなるスイッチをオフ状態にすることで、放電部から放電路に流れた電流が電源部側へ流れることを防止することができる。
【0028】
〔10〕本開示のプログラムは、
車載システムに用いられる車載用制御装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記車載システムは、電源部と、前記電源部とは異なる蓄電部と、前記電源部から負荷へ電力を供給する経路である電力路と、前記電源部から供給される電力に基づいて前記蓄電部に電流を供給する充電動作を行う充電部と、前記蓄電部から供給される電力に基づいて前記負荷側に電流を流す放電動作を行う放電部と、を備えるシステムであり、
前記電力路の電圧が閾値電圧以下である場合に前記放電部に前記放電動作を行わせるステップと、
前記蓄電部の電圧が所定値以下である場合に前記充電部に前記充電動作を行わせるステップと、を含む。
【0029】
〔11〕本開示の車両の制御方法は、
車載システムに用いられる車載用制御装置のコンピュータが実行する制御方法であって、
前記車載システムは、電源部と、前記電源部とは異なる蓄電部と、前記電源部から負荷へ電力を供給する経路である電力路と、前記電源部から供給される電力に基づいて前記蓄電部に電流を供給する充電動作を行う充電部と、前記蓄電部から供給される電力に基づいて前記負荷側に電流を流す放電動作を行う放電部と、を備えるシステムであり、
前記電力路の電圧が閾値電圧以下である場合に前記放電部に前記放電動作を行わせるステップと、
前記蓄電部の電圧が所定値以下である場合に前記充電部に前記充電動作を行わせるステップと、を含む。
【0030】
<第1実施形態>
図1に示す車載システム100は、電源部10と、負荷11と、電力路80と、を備えている。電源部10は、複数種類の負荷へ電力を供給する主電源として機能する。電源部10は、例えば鉛バッテリ等の公知の車載バッテリとして構成されている。負荷11は、例えば電源部10に基づく電力供給が停止した場合に、後述する蓄電部13から供給される電力に基づいて停止時に対応した動作を行う負荷である。「停止時に対応した動作」は、例えば、車両が安全に停止するために必要な動作である。負荷11は、例えばシフトバイワイヤ制御システム、電子制御ブレーキシステムなどである。電力路80は、電源部10から負荷11へ電力を供給する経路である。
【0031】
車載システム100は、第1スイッチ12を備えている。第1スイッチ12は、例えばFET(Field Effect Transistor)として構成されている。第1スイッチ12は、「スイッチ」の一例に相当する。第1スイッチ12は、オフ状態のときに自身を介して負荷11側から電源部10側へ電流が流れることを遮断し、オン状態のときに許容する。第1スイッチ12は、電力路80に設けられている。電力路80は、第1スイッチ12よりも電源部10側の第1電力路81と、第1スイッチ12よりも負荷11側の第2電力路82と、を有している。第2電力路82は、「スイッチと負荷との間の接続部」の一例に相当する。
【0032】
車載システム100は、蓄電部13と、導電路83と、を備えている。蓄電部13は、例えば、電気二重層キャパシタ(EDLC)等の公知の蓄電手段によって構成されている。蓄電部13は、電源部10に基づく電力供給が不足した場合に負荷11に向けて電力を供給するバックアップ電源として機能する。蓄電部13は、導電路83に電気的に接続されている。導電路83には、蓄電部13の電圧が印加される。なお、本明細書において、「電気的に接続されている」には、スイッチング素子を介して電気的に接続される構成も含まれる。
【0033】
車載システム100は、充電部20と、放電部30と、を備えている。充電部20は、第1電力路81と蓄電部13との間に設けられ、電源部10から供給される電力に基づいて蓄電部13に電流を供給する充電動作を行う。充電部20は、第2スイッチ21と、抵抗部22と、を有している。第2スイッチ21は、例えばFET(Field Effect Transistor)として構成されている。抵抗部22は、例えば抵抗器として構成されている。第2スイッチ21と抵抗部22は、互いに直列に接続されている。第2スイッチ21は、抵抗部22よりも電源部10側に配置されている。第2スイッチ21の一端は、第1電力路81に電気的に接続されている。抵抗部22の一端は、導電路83を介して蓄電部13に電気的に接続されている。第2スイッチ21の他端は、抵抗部22の他端に電気的に接続されている。充電部20は、第2スイッチ21がオン状態となることで充電動作を行い、第2スイッチ21がオフ状態となることで充電動作を停止する。
【0034】
放電部30は、蓄電部13と第2電力路82との間に設けられ、蓄電部13から供給される電力に基づいて負荷11側に電流を流す放電動作を行う。放電部30は、出力導電路31と、電圧変換回路32と、を有している。出力導電路31は、負荷11側へ放電電流を供給する経路である。出力導電路31の一端は、後述する放電路84を介して第2電力路82に電気的に接続されている。電圧変換回路32の一端は、導電路83を介して蓄電部13に電気的に接続されており、電圧変換回路32の他端は、出力導電路31の他端に電気的に接続されている。電圧変換回路32は、蓄電部13に基づく入力電圧を変換して出力導電路31に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う。電圧変換回路32は、例えばDCDCコンバータ(例えば昇圧型のDCDCコンバータ)であり、蓄電部13に基づく入力電圧を昇圧して出力導電路31に出力電圧を印加する。放電部30は、電圧変換回路32が電圧変換動作を行うことで放電動作を行い、電圧変換回路32が電圧変換動作を停止することで放電動作を停止する。
【0035】
車載システム100は、放電路84と、遮断部14と、を備えている。放電路84は、第2電力路82と放電部30との間に設けられている。遮断部14は、放電路84に設けられている。遮断部14は、例えばスイッチング素子、より具体的には、FET(Field Effect Transistor)として構成されている。遮断部14は、出力導電路31から負荷11側の経路(例えば第2電力路82)への電流の流れを遮断し得る。遮断部14は、自身を介して出力導電路31から負荷11側の経路(例えば第2電力路82)へ電流が流れることを遮断する遮断状態(本実施形態ではオフ状態)と、許容する許容状態(本実施形態ではオン状態)とに切り替わる。遮断部14は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1を超えている状態では遮断状態となり、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下になった場合に許容状態に切り替わる。第1閾値電圧Vth1は、負荷11の動作に必要な電圧以上の値であり、0Vよりも大きい値である。第1閾値電圧Vth1は、「閾値電圧」の一例に相当する。
【0036】
車載システム100は、第1電圧検出部51と、第2電圧検出部52と、第3電圧検出部53と、を有している。第1電圧検出部51、第2電圧検出部52及び第3電圧検出部53は、それぞれ公知の電圧検出回路として構成されている。第1電圧検出部51は、電力路80(より具体的には第1電力路81)の電圧を検出し、検出値を特定可能な信号を出力する。第2電圧検出部52は、導電路83の電圧、つまり蓄電部13の電圧を検出し、検出値を特定可能な信号を出力する。第3電圧検出部53は、出力導電路31の電圧を検出し、検出値を特定可能な信号を出力する。
【0037】
車載システム100は、車載用制御装置60を備えている。車載用制御装置60は、車載システム100に用いられ、充電部20による充電動作及び放電部30による放電動作を制御する。車載用制御装置60は、制御部61を有している。
【0038】
制御部61は、例えばMCU(Micro Controller Unit)として構成されている。制御部61には、第1電圧検出部51、第2電圧検出部52及び第3電圧検出部53から出力された信号が入力される。制御部61は、これらの信号に基づいて電力路80(より具体的には第1電力路81)の電圧、蓄電部13の電圧、及び出力導電路31の電圧(つまり放電部30の出力電圧)を特定する。
【0039】
制御部61は、第1スイッチ12、遮断部14、充電部20、及び放電部30を制御する。制御部61は、例えば充電部20の第2スイッチ21をデューティ制御することで、電源部10側から蓄電部13側に供給される電力を調整し得る。制御部61は、例えば出力導電路31に印加される電圧が第1閾値電圧Vth1となるように電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせる。
【0040】
制御部61は、電力路80(より具体的には第1電力路81)の電圧が第1閾値電圧Vth1以下である場合に放電部30に放電動作を行わせ、蓄電部13の電圧が所定値Vth3以下である場合に充電部20に充電動作を行わせる。本実施形態では、所定値Vth3は、0Vよりも大きい値であり、第1閾値電圧Vth1よりも小さい値である。
【0041】
制御部61は、所定条件が成立した場合に放電部30による放電動作と、充電部20による充電動作とを並行して行わせる。本実施形態では、制御部61は、電力路80(より具体的には第1電力路81)の電圧が第1閾値電圧Vth1を超えている状態でも、電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせる。つまり、所定条件は、本実施形態では、蓄電部13の電圧が所定値Vth3以下になったことである。
【0042】
制御部61は、放電動作と充電動作とを並行して行わせる期間において、充電部20が蓄電部13に向けて供給する電力が、放電部30が放電によって供給する電力以上となるように制御する。具体的な制御方法は限定されない。例えば、制御部61は、放電部30が放電によって供給する単位時間当たりの電力を算出し、充電部20が蓄電部13に向けて供給する単位時間当たりの電力がその算出値以上となるように充電部20に充電動作を行わせてもよい。「放電部30が放電によって供給する単位時間当たりの電力」は、例えば出力導電路31の電圧と、出力導電路31を流れる電流と、に基づいて算出されてもよい。「充電部20が蓄電部13に向けて供給する単位時間当たりの電力」は、例えば充電部20と導電路83との間の経路の電圧と、その経路を流れる電流と、に基づいて算出されてもよい。また、別の例として、制御部61は、蓄電部13の電圧が、上記所定条件が成立したときの蓄電部13の電圧以上となるように充電部20に充電動作を行わせてもよい。
【0043】
制御部61は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1よりも低い第2閾値電圧Vth2以下である場合に所定処理を行う。第2閾値電圧Vth2は、0Vよりも以上の値である。制御部61は、所定処理において、放電部30に放電動作を行わせつつ充電部20に充電動作を停止させる。
【0044】
制御部61は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1を超えている状態でも、電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせる。制御部61は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1を超えている状態では、遮断部14を遮断状態とし、且つ電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせる。そして、制御部61は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下となった場合に、電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせたまま、遮断部14を許容状態に切り替える。これにより、車載用制御装置60は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下となった場合に、所望の放電電流を遮断部14から負荷11側に即座に流すことができる。
【0045】
次の説明は、車載用制御装置60の動作に関する。
制御部61は、開始条件が成立した場合に、図2に示されるように、第1スイッチ12をオン状態とし、充電部20に充電動作を行わせる。つまり、制御部61は、第1スイッチ12及び第2スイッチ21をオン状態とする。これにより、電源部10から供給される電力に基づいて、負荷11及び蓄電部13に電力が供給される。また、充電部20による開始条件は、例えば、車載システム100が搭載される車両の始動スイッチがオン状態に切り替わったことであってもよい。始動スイッチは、例えばイグニッションスイッチである。「始動スイッチがオン状態に切り替わったこと」は、例えば、始動スイッチのオンオフ状態を特定可能なオンオフ信号が制御部61に入力される構成とし、このオンオフ信号に基づいて制御部61が判定するようにしてもよい。
【0046】
制御部61は、充電完了条件が成立した場合に、図3に示されるように、充電部20による充電動作を停止させ、放電部30に放電動作を行わせる。つまり、制御部61は、第2スイッチ21をオフ状態とし、電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせる。これにより、出力導電路31に、第1閾値電圧Vth1が印加される。但し、放電部30側から負荷11側への電流の流れは、遮断部14によって遮断される。充電完了条件は、例えば、蓄電部13の電圧が充電完了電圧に到達したことである。充電完了電圧は、所定値Vth3以上の値である。
【0047】
図4には、図3に示す状態から、電源部10から負荷11に供給される電力が不足する状態に遷移するときの車載システム100の状態をあらわすタイミングチャートが示されている。図4のタイミングt0では、図3に示す状態となっている。すなわち、電力路80の電圧は、第1閾値電圧Vth1よりも高い値に維持されている。第1スイッチ12は、オン状態となっている。放電部30は、放電動作を行っている。出力導電路31の電圧は、第1閾値電圧Vth1に維持されている。遮断部14は、遮断状態になっている。蓄電部13の電圧は、所定値Vth3よりも高い値となっている。充電部20は、充電動作を停止している。負荷11の電圧は、第1閾値電圧Vth1よりも高い値になっている。
【0048】
タイミングt1になると、複数の負荷が同時に動作することなどに起因して、電力路80の電圧が低下し始める。そして、タイミングt2になると、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下になる。このため、制御部61は、図5に示されるように、第1スイッチ12をオフ状態に切り替え、遮断部14を許容状態に切り替える。その結果、遮断部14は、出力導電路31から負荷11側の経路(例えば第2電力路82)へ電流を流す。これにより、蓄電部13に基づく電力が、負荷11に供給される。
【0049】
蓄電部13に基づく電力が負荷11に供給されると、蓄電部13の電圧が徐々に低下する。そして、タイミングt3になると、蓄電部13の電圧が所定値Vth3以下になる。このため、制御部61は、図6に示されるように、充電部20に充電動作を開始させる。制御部61は、充電部20が蓄電部13に向けて供給する電力が、放電部30が放電によって供給する電力となるように制御する。これにより、蓄電部13の電圧は、第1閾値電圧Vth1に維持される。
【0050】
また、図7には、図3に示す状態から、電源部10からの電力供給が停止する状態に遷移するときの車載システム100の状態をあらわすタイミングチャートが示されている。図7のタイミングt10では、図3に示す状態となっている。
【0051】
タイミングt11になると、複数の負荷が同時に動作することなどに起因して、電力路80の電圧が低下し始める。そして、タイミングt12になると、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下になる。このため、制御部61は、図5に示されるように、第1スイッチ12をオフ状態に切り替え、遮断部14を許容状態に切り替える。その結果、遮断部14は、出力導電路31から負荷11側の経路(例えば第2電力路82)へ電流を流す。これにより、蓄電部13に基づく電力が、負荷11に供給される。
【0052】
蓄電部13に基づく電力が負荷11に供給されると、蓄電部13の電圧が徐々に低下する。そして、タイミングt13になると、蓄電部13の電圧が所定値Vth3以下になる。このため、制御部61は、図6に示されるように、充電部20に充電動作を開始させる。制御部61は、充電部20が蓄電部13に向けて供給する電力が、放電部30が放電によって供給する電力となるように制御する。これにより、蓄電部13の電圧は、第1閾値電圧Vth1に維持される。
【0053】
タイミングt14になると、電力路80の電圧が第2閾値電圧Vth2以下になる。このため、制御部61は、所定処理を行う。つまり、制御部61は、図8に示されるように、充電部20に充電動作を停止させる。これにより、蓄電部13から流れる電流が、充電部20を介して電源部10側に流れることを防止することができる。
【0054】
以上の説明は、車載用制御装置60の効果に関する。
電源部10からの電力供給が停止しなくとも、負荷11に対する供給電力が不足する場合が生じ得る。その原因としては、例えば電源部10の劣化や複数の負荷11が同時に動作することなどが想定される。
こうした事態に備え、車載用制御装置60は、電力路80からの電力供給が停止されていなくとも、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下である場合に、放電部30に放電動作を行わせるようにしている。このため、車載用制御装置60は、蓄電部13を利用して、負荷11に供給される電力が不足することを抑制することができる。但し、電源部10からの電力供給が停止していない状態で蓄電部13の電力を消費すると、電源部10からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷11に行わせることができなくなるおそれがある。この点、車載用制御装置60は、蓄電部13の電圧が所定値Vth3以下である場合に充電部20に充電動作を行わせる。このため、電源部10からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷11に行わせることができなくなるという事態の発生を抑制することができる。
【0055】
更に、車載用制御装置60は、所定条件が成立した場合に放電動作と充電動作とを並行して行わせることで、電源部10からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷11に行わせることができなくなるという事態の発生をより確実に抑制することができる。
【0056】
更に、車載用制御装置60は、放電部30が放電によって供給する電力以上の電力を蓄電部13に向けて供給することで、蓄電部13の電圧がそれ以上低下しないようにすることができ、その結果、電源部10からの電力供給が停止したときに停止時に対応した動作を負荷11に行わせることができなくなるという事態の発生をより確実に抑制することができる。
【0057】
更に、車載用制御装置60は、蓄電部13の電圧が第1閾値電圧Vth1以下の値に設定された所定値Vth3以下である場合に充電部20に充電動作を行わせることができる。
【0058】
更に、車載用制御装置60は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1よりも更に低い第2閾値電圧Vth2以下である場合に、放電部30に放電動作を行わせつつ、充電部20に充電動作を停止させることができる。このため、蓄電部13が充電部20を介して電力路80に短絡することを回避しつつ、蓄電部13に基づく電力を負荷11に供給することができる。
【0059】
更に、車載用制御装置60は、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1を超えている状態でも電圧変換回路32に電圧変換動作を行わせておくことで、電力路80の電圧が第1閾値電圧Vth1以下になった場合に即座に所望の放電電流を負荷11側に流すことができる。
【0060】
更に、車載用制御装置60は、FETからなる第1スイッチ12をオフ状態にすることで、放電部30から放電路84に流れた電流が電源部10側へ流れることを防止することができる。
【0061】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、所定値が第1閾値電圧よりも小さい値であったが、第1閾値電圧と同じ値であってもよいし、第1閾値電圧よりも大きい値であってもよい。
【0063】
上記実施形態では、所定条件が、「蓄電部の電圧が所定値以下になったこと」であったが、別の条件であってもよい。例えば、所定条件は、「電力路の電圧が第1閾値電圧以下になったこと」であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、制御部は、所定処理において、放電部に放電動作を行わせつつ充電部に充電動作を停止させる構成であったが、別の構成であってもよい。例えば、制御部は、所定処理において、外部に報知信号を出力するようにしてもよい。この構成によれば、報知信号を受信した外部装置によって、電力の電圧が第2閾値以下になったことを車両のユーザなどに報知することができる。
【0065】
上記実施形態では、遮断部がスイッチング素子であったが、電力路の電圧が第1閾値電圧を超えている状態において出力導電路から負荷側の経路への電力供給を遮断し得る素子であれば、別の構成であってもよい。例えば、遮断部は、ダイオードであってもよい。ダイオードのアノードは、放電部側の経路に電気的に接続され、カソードは、第2電力路側の経路に電気的に接続される。
【0066】
上記実施形態の第1スイッチは、負荷側から電源部側への電流の流れを遮断し得る素子であれば別の素子に置き換えてもよい。例えば、第1スイッチは、ダイオードに置き換えてもよい。ダイオードのアノードは、第1電力路に電気的に接続され、カソードは、第2電力路に電気的に接続される。
【0067】
上記実施形態の制御部は、電力路の電圧が第1閾値電圧を超えている状態でも、電圧変換回路に電圧変換動作を行わせる構成であったが、別の構成であってもよい。例えば、制御部は、電力路の電圧が第1閾値電圧を超えている状態では、放電部(例えば電圧変換回路)に放電動作(例えば電圧変換動作)を停止させ、電力路の電圧が第1閾値電圧以下となった場合に放電部(例えば電圧変換回路)に放電動作(電圧変換動作)を開始させるようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態の充電部は、第2スイッチと抵抗部とを有する構成であったが、別の構成であってもよい。例えば、充電部は、電圧変換回路(例えばDCDCコンバータ)であってもよい。
【0069】
上記実施形態の放電部は、電圧変換回路を有する構成であったが、別の構成であってもよい。例えば、放電部は、スイッチング素子であってもよい。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
10…電源部
11…負荷
12…第1スイッチ(スイッチ)
13…蓄電部
14…遮断部
20…充電部
21…第2スイッチ
22…抵抗部
30…放電部
31…出力導電路
32…電圧変換回路
51…第1電圧検出部
52…第2電圧検出部
53…第3電圧検出部
60…車載用制御装置
61…制御部
80…電力路
81…第1電力路
82…第2電力路
83…導電路
84…放電路
100…車載システム
Vth1…第1閾値電圧(閾値電圧)
Vth2…第2閾値電圧
Vth3…所定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8