(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08F 222/40 20060101AFI20241003BHJP
C08F 212/34 20060101ALI20241003BHJP
C08G 73/22 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08F222/40
C08F212/34
C08G73/22
H01L21/60 311Z
(21)【出願番号】P 2021527756
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025143
(87)【国際公開番号】W WO2020262581
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019122429
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】関戸 隆人
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 源希
(72)【発明者】
【氏名】高野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木田 剛
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04826929(US,A)
【文献】国際公開第2018/212116(WO,A1)
【文献】特開2002-030041(JP,A)
【文献】特開2008-111111(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006894(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108219134(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00- 73/26
C08F 212/00-212/36
C08G 222/00-222/40
H01L 21/00- 21/98
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内の末端に下記式(1)で表される構成単位を含む、プロペニル基含有樹脂(A)と、
前記プロペニル基含有樹脂(A)以外の、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と、
硬化促進剤(C)と、
前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)以外の、熱硬化性化合物(F)と、を含み、
前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)が、マレイミド基及びシトラコンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種を含
み、
前記熱硬化性化合物(F)が、ベンゾオキサジン化合物を含み、
前記プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基と、前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基との比率(プロペニル基:重合性官能基)が、1:1~1:7であり、
前記硬化促進剤(C)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部~10質量部である、
プリアプライドアンダーフィル材用フィルム。
【化1】
(式(1)中、-*は、結合手を示す。)。
【請求項2】
前記プロペニル基含有樹脂(A)の質量平均分子量が、300~10,000である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記プロペニル基含有樹脂(A)が、下記式(2)で表される樹脂を含む、請求項1又は2に記載のフィルム。
【化2】
(式(2)中、Wは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~15の炭化水素基を表す。Uは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n
1は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。)。
【請求項4】
前記プロペニル基含有樹脂(A)が、下記式(3)で表される樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【化3】
(式(3)中、Yは、各々独立に、炭素数1~6の炭化水素基を表す。Xは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n
2は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。)。
【請求項5】
前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)が、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、下記式(4)で表されるマレイミド化合物、下記式(5)で表されるマレイミド化合物、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、下記式(7)で表されるマレイミド化合物、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(9)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【化4】
(式(4)中、R
1は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、n
3は1~10の整数を示す。)。
【化5】
(式(5)中、n
4は、1~30の整数を示す。)。
【化6】
(式(6)中、R
2は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R
3は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。)。
【化7】
(式(7)中、R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、lは、各々独立に、1~3の整数を示し、n
5は、1~10の整数を示す。)。
【化8】
(式(8)中、R
5及びR
7は、各々独立に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を示し、R
6は、各々独立に、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を示し、n
6は、1~10の整数を示す。)。
【化9】
(式(9)中、R
8は、各々独立に、アルキレン基を示し、R
9は、各々独立に、アルキレン基、下記式(10)で表される基、式「-SO
2-」で表される基、「-CO-」で表される基、下記式(11)で表される基、酸素原子、又は単結合を示し、n
7は、1~10の整数を示す。)。
【化10】
(式(10)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基であり、n
8は、0~5の整数を示す。)。
【化11】
【請求項6】
前記硬化促進剤(C)が、熱ラジカル重合開始剤(D)及びイミダゾール化合物(E)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記熱ラジカル重合開始剤(D)の10時間半減期温度が、100℃以上である、請求項
6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記熱ラジカル重合開始剤(D)が、有機過酸化物を含む、請求項
6又は
7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記熱ラジカル重合開始剤(D)が、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、又はハイドロパーオキサイド骨格を有する、請求項
6~
8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記熱ラジカル重合開始剤(D)が、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert―ブチルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項
6~
9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
前記
ベンゾオキサジン化合物が、400以上の分子量を有する、請求項1
~10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記ベンゾオキサジン化合物が、下記式(12)で表される化合物、下記式(13)で表される化合物、下記式(14)で表される化合物、及び下記式(15)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1
~11のいずれか一項に記載のフィルム。
【化12】
(式(12)中、R
10は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R
11は、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(t)で表される1価~4価の有機基を示し、n
9は、1~4の整数を示す。)。
【化13】
(式(13)中、R
12は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R
13は、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(t)で表される1価~4価の有機基を示し、n
10は、1~4の整数を示す。)。
【化14】
(式(14)中、R
14は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有してよいフェニル基を表す。)。
【化15】
(式(15)中、R
15は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有してよいフェニル基を表す。)。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
(式(a)~(t)中、R
aは、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R
bは、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
【請求項13】
前記ベンゾオキサジン化合物が、下記式(23)で表される化合物、及び下記式(24)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1
~12のいずれか一項に記載のフィルム。
【化23】
(式(23)中、R
16は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、oは、各々独立に、1~4の整数を示し、R
17は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、pは、各々独立に、1~4の整数を示し、T
1は、アルキレン基、下記式(10)で表される基、式「-SO
2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化24】
(式(24)中、R
18は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、qは、各々独立に、1~3の整数を示し、R
19は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、rは、各々独立に、1~5の整数を示し、T
2は、アルキレン基、下記式(10)で表される基、式「-SO
2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化25】
(式(10)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基であり、n
8は、0~5の整数を示す。)。
【請求項14】
前記熱硬化性化合物(F)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、1質量部~100質量部である、請求項1
~13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
無機充填材(G)を更に含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
前記無機充填材(G)の平均粒子径が、3μm以下である、請求項
15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記無機充填材(G)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項
15又は
16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記無機充填材(G)が、シリカである、請求項
15~
17のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記無機充填材(G)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、500質量部以下である、請求項
15~
18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
フラックス機能を有する有機化合物(H)を更に含む、請求項1~
19のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
フラックス機能を有する有機化合物(H)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、5質量部~80質量部である、請求項
20に記載のフィルム。
【請求項22】
厚さが、10μm~100μmである、請求項1~
21のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項23】
支持基材と、
前記支持基材上に積層された請求項1~
22のいずれか一項に記載のフィルムを含む層と、を備える積層体。
【請求項24】
半導体ウェハと、
前記半導体ウェハに積層された請求項
23に記載の積層体と、を備え、
前記フィルムを含む層が、前記半導体ウェハに積層された、フィルム層付き半導体ウェハ。
【請求項25】
半導体搭載用基板と、
前記半導体搭載用基板に積層された請求項
23に記載の積層体と、を備え、
前記フィルムを含む層が、前記半導体搭載用基板に積層された、フィルム層付き半導体搭載用基板。
【請求項26】
請求項
24に記載のフィルム層付き半導体ウェハ、及び/又は、請求項
25に記載のフィルム層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、フィルムを用いた積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置に関する。詳しくは、本発明は、プリアプライドアンダーフィル材として有用なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化、及び高性能化に伴い、半導体チップ(以下、「チップ」と略す場合がある。)を半導体搭載用基板(以下、「基板」と略す場合がある。)に搭載する方法として、フリップチップ実装が注目されている。フリップチップ実装においては、チップと基板を接合した後、チップと基板の間隙にアンダーフィル材を充填し、硬化させる工法が一般的である。しかし、半導体装置の小型化や高性能化に伴い、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化が進み、アンダーフィル材の充填の長時間化による作業性の悪化や未充填等の充填不良の発生が問題となっている。これに対し、チップ又は基板にプリアプライドアンダーフィル材を供給した後、チップと基板との接合と、アンダーフィル材の充填とを同時に行う工法が検討されている。
【0003】
アンダーフィル材は、チップ、及び基板と直接接触する部材であることから、アンダーフィル材に求められる重要な特性として、半導体装置を製造、及び使用される環境において、チップ、及び基板とアンダーフィル材との間のアンダーフィル未充填部分が抑制されること(以下、「低ボイド性」と称す場合がある。)や、チップ、及び基板とアンダーフィル材との良好な接着性(以下、「チップ接着性」と略す場合がある。)が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、主樹脂にラジカル重合性モノマーを使用したプリアプライドアンダーフィル材が記載されている。この特許文献1には、チップとの接着性向上を目的にしたシランカップリング剤の配合についての記載がある。
【0005】
特許文献2には、エポキシ樹脂、イミダゾール化合物、及びマレイミド化合物を含むアンダーフィル材が記載されている。
【0006】
特許文献3には、エポキシ化合物、カルボキシル基含有フラックス成分を使用するプリアプライドアンダーフィル材が記載されており、接着について言及されている。
【0007】
特許文献4には、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤を必須成分とする樹脂組成物が記載されており、熱硬化後の樹脂組成物において高い密着性が得られたと記載されている。
【0008】
特許文献5には、プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、特定の構造を有するマレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、及び無機充填材(C)を含むプリント配線基板用樹脂組成物についての記載がある。
【0009】
特許文献6には、脂肪族エポキシ化合物、及びベンゾオキサジン化合物を硬化主剤として含有し、かつ、フェノール系硬化剤を含む電子部品用接着剤についての記載がある。
【0010】
特許文献7には、熱硬化性化合物、前記熱硬化性化合物と反応可能な官能基を含むポリマー、及び熱硬化剤とを含有し、ボンディング温度での溶融粘度が10Pa・s~15000Pa・sであり、ボンディング温度でのゲルタイムが10秒以上であり、かつ、240℃でのゲルタイムが1秒~10秒である接着剤組成物についての記載がある。
【0011】
特許文献8には、シート状熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法の記載がある。
【0012】
また、チップと基板とを、酸化されやすい金属、例えば、はんだや銅を介して接合する場合、接合の阻害要因となる金属酸化膜を接合部から除去し、良好な金属接合を得ることを目的として、プリアプライドアンダーフィル材にカルボン酸などに由来するフラックス成分を添加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特表2015-503220号公報
【文献】特表2014-521754号公報
【文献】特開2013-112730号公報
【文献】特開2003-221443号公報
【文献】特開2016-196548号公報
【文献】特開2013-008800号公報
【文献】特開2011-157529号公報
【文献】特開2006-245242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、一般的にラジカル重合性モノマーは硬化が速く、配合したシランカップリング剤の接着部位の運動性がチップ表面のシラノール基と、十分な数の結合を形成する前に重合が進んだ主樹脂により律速されてしまう。その結果、特許文献1に記載のプリアプライドアンダーフィル材では、チップ、及びプリント配線板などの基板とアンダーフィル材との間において、十分な低ボイド性、及び良好なチップ接着性が得られない。また、ラジカル重合性モノマーは硬化が速いため、樹脂組成物がチップ表面に存在する凹凸に埋まる前に硬化するので、特許文献1に記載のプリアプライドアンダーフィル材では、接着性向上の上で有用となるアンカー効果が十分に得られないという問題もある。
【0015】
特許文献2に記載の材料は、ポリイミドパッシベーション膜にしか作用しないことから、適用範囲が狭いという問題がある。
【0016】
特許文献3に記載の技術において、室温であってもカルボキシル基含有化合物は、エポキシ化合物とわずかに反応が進行し、保管中にフラックス活性が経時的に低下する。そのため、特許文献3に記載のプリアプライドアンダーフィル材は、接合安定性が低く、量産性に乏しいという問題がある。
【0017】
特許文献4に記載の技術においては、マレイミド樹脂の吸水率が高いため、吸湿処理後のチップ接着性が大幅に低下するという問題がある。接着性が不十分であると、剥離界面から水が浸入し、絶縁信頼性が大きく低下する。また、マレイミド樹脂のみでも、低ボイド性と、チップ接着性との両立は困難である。
【0018】
特許文献5では、フラックス活性に関する記載はなく、また、フラックス成分についても記載がない。そのため、特許文献5に記載の樹脂組成物では、良好な金属接合は得られないとの問題がある。
【0019】
特許文献6では、エポキシ化合物の接着性は高いが、エポキシ化合物はフラックス成分とも反応してしまい、良好な金属接合を得るために十分なフラックス活性が得られないという問題がある。
【0020】
特許文献7の接着剤組成物では、フラックス性を有する熱硬化剤を含むが、実施例において、エポキシ化合物、及びエポキシ基を含むポリマーが使用されており、ボンディング温度より低温で両者が反応してしまうため十分なフラックス活性を得ることが難しい。
【0021】
特許文献8においても、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が好適であることが記載されているが、前記のとおり、エポキシ化合物はフラックス成分とも反応してしまい、良好な金属接合を得るために十分なフラックス活性が得られないという問題もある。
【0022】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、硬化性、低ボイド性、及びチップ接着性に優れる、フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、前記問題点を解決のため鋭意検討した結果、特定のプロペニル基含有樹脂(A)と、特定のラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と、硬化促進剤(C)とを含むフィルムが、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0024】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
【0025】
[1]
分子内の末端に下記式(1)で表される構成単位を含む、プロペニル基含有樹脂(A)と、前記プロペニル基含有樹脂(A)以外の、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、含み、前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)が、マレイミド基及びシトラコンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種を含む、フィルム。
【0026】
【0027】
(式(1)中、-*は、結合手を示す。)。
[2]
前記プロペニル基含有樹脂(A)の質量平均分子量が、300~10,000である、[1]に記載のフィルム。
[3]
前記プロペニル基含有樹脂(A)が、下記式(2)で表される樹脂を含む、[1]又は[2]に記載のフィルム。
【0028】
【0029】
(式(2)中、Wは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~15の炭化水素基を表す。Uは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n1は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。)。
【0030】
[4]
前記プロペニル基含有樹脂(A)が、下記式(3)で表される樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のフィルム。
【0031】
【0032】
(式(3)中、Yは、各々独立に、炭素数1~6の炭化水素基を表す。Xは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n2は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。)。
【0033】
[5]
前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)が、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、下記式(4)で表されるマレイミド化合物、下記式(5)で表されるマレイミド化合物、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、下記式(7)で表されるマレイミド化合物、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(9)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のフィルム。
【0034】
【0035】
(式(4)中、R1は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、n3は1~10の整数を示す。)。
【0036】
【0037】
(式(5)中、n4は、1~30の整数を示す。)。
【0038】
【0039】
(式(6)中、R2は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R3は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。)。
【0040】
【0041】
(式(7)中、R4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、lは、各々独立に、1~3の整数を示し、n5は、1~10の整数を示す。)。
【0042】
【0043】
(式(8)中、R5及びR7は、各々独立に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を示し、R6は、各々独立に、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を示し、n6は、1~10の整数を示す。)。
【0044】
【0045】
(式(9)中、R8は、各々独立に、アルキレン基を示し、R9は、各々独立に、アルキレン基、下記式(10)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、下記式(11)で表される基、酸素原子、又は単結合を示し、n7は、1~10の整数を示す。)。
【0046】
【0047】
(式(10)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基であり、n8は、0~5の整数を示す。)。
【0048】
【0049】
[6]
前記プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基と、前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基との比率(プロペニル基:重合性官能基)が、1:1~1:7である、[1]~[5]のいずれかに記載のフィルム。
[7]
前記硬化促進剤(C)が、熱ラジカル重合開始剤(D)及びイミダゾール化合物(E)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8]
前記熱ラジカル重合開始剤(D)の10時間半減期温度が、100℃以上である、[7]に記載のフィルム。
[9]
前記熱ラジカル重合開始剤(D)が、有機過酸化物を含む、[7]又は[8]に記載のフィルム。
[10]
前記熱ラジカル重合開始剤(D)が、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、又はハイドロパーオキサイド骨格を含む、[7]~[9]のいずれかに記載のフィルム。
[11]
前記熱ラジカル重合開始剤(D)が、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert―ブチルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、[7]~[10]のいずれかに記載のフィルム。
【0050】
[12]
前記硬化促進剤(C)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部~10質量部である、[1]~[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13]
前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)以外の、熱硬化性化合物(F)を更に含む、[1]~[12]のいずれかに記載のフィルム。
[14]
前記熱硬化性化合物(F)が、400以上の分子量を有する、[13]に記載のフィルム。
[15]
前記熱硬化性化合物(F)が、ベンゾオキサジン化合物を含む、[13]又は[14]に記載のフィルム。
【0051】
[16]
前記ベンゾオキサジン化合物が、下記式(12)で表される化合物、下記式(13)で表される化合物、下記式(14)で表される化合物、及び下記式(15)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[15]に記載のフィルム。
【0052】
【0053】
(式(12)中、R10は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R11は、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(t)で表される1価~4価の有機基を示し、n9は、1~4の整数を示す。)。
【0054】
【0055】
(式(13)中、R12は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R13は、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(t)で表される1価~4価の有機基を示し、n10は、1~4の整数を示す。)。
【0056】
【0057】
(式(14)中、R14は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有してよいフェニル基を表す。)。
【0058】
【0059】
(式(15)中、R15は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有してよいフェニル基を表す。)。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
(式(a)~(t)中、Raは、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Rbは、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
【0068】
[17]
前記ベンゾオキサジン化合物が、下記式(23)で表される化合物、及び下記式(24)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[14]又は[15]に記載のフィルム。
【0069】
【0070】
(式(23)中、R16は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、oは、各々独立に、1~4の整数を示し、R17は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、pは、各々独立に、1~4の整数を示し、T1は、アルキレン基、下記式(10)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【0071】
【0072】
(式(24)中、R18は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、qは、各々独立に、1~3の整数を示し、R19は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、rは、各々独立に、1~5の整数を示し、T2は、アルキレン基、下記式(10)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【0073】
【0074】
(式(10)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基であり、n8は、0~5の整数を示す。)。
【0075】
[18]
前記熱硬化性化合物(F)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、1質量部~100質量部である、[13]~[17]のいずれかに記載のフィルム。
[19]
無機充填材(G)を更に含む、[1]~[18]のいずれかに記載のフィルム。
[20]
前記無機充填材(G)の平均粒子径が、3μm以下である、[19]に記載のフィルム。
[21]
前記無機充填材(G)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、[19]又は[20]に記載のフィルム。
【0076】
[22]
前記無機充填材(G)が、シリカである、[19]~[21]のいずれかに記載のフィルム。
[23]
前記無機充填材(G)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、500質量部以下である、[19]~[22]のいずれかに記載のフィルム。
[24]
フラックス機能を有する有機化合物(H)を更に含む、[1]~[23]のいずれかに記載のフィルム。
[25]
フラックス機能を有する有機化合物(H)の含有量が、前記プロペニル基含有樹脂(A)及び前記ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、5質量部~80質量部である、[24]に記載のフィルム。
[26]
厚さが、10μm~100μmである、[1]~[25]のいずれかに記載のフィルム。
【0077】
[27]
プリアプライドアンダーフィル材用である、[1]~[26]のいずれかに記載のフィルム。
[28]
支持基材と、前記支持基材上に積層された[1]~[27]のいずれかに記載のフィルムを含む層と、を備える積層体。
[29]
半導体ウェハと、前記半導体ウェハに積層された[28]に記載の積層体と、を備え、前記フィルムを含む層が、前記半導体ウェハに積層された、フィルム層付き半導体ウェハ。
[30]
半導体搭載用基板と、前記半導体搭載用基板に積層された[28]に記載の積層体と、を備え、前記フィルムを含む層が、前記半導体搭載用基板に積層された、フィルム層付き半導体搭載用基板。
[31]
[29]に記載のフィルム層付き半導体ウェハ、及び/又は、[30]に記載のフィルム層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、硬化性、低ボイド性、及びチップ接着性に優れる、フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0080】
本実施形態の一態様によれば、フィルムは、特定のプロペニル基含有樹脂(A)と、特定のラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と、硬化促進剤(C)とを含む。前記フィルムは、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、プリアプライドアンダーフィル材用であることが好ましい。
【0081】
本実施形態の別の態様は、熱硬化性化合物(F)を更に含むフィルムである。
【0082】
本実施形態の別の態様は、無機充填材(G)を更に含むフィルムである。
【0083】
本実施形態の別の態様は、フラックス機能を有する有機化合物(H)を更に含むフィルムである。
【0084】
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」の両方を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」の両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味し、「(メタ)アリル」とは「アリル」及びそれに対応する「メタアリル」の両方を意味する。
【0085】
[フィルム]
本実施形態のフィルムは、好適にはチップのフリップチップ実装に使用されるプリアプライドアンダーフィル材として用いられるフィルムであって、分子内の末端に式(1)で表される構成単位を含む、プロペニル基含有樹脂(A)と、プロペニル基含有樹脂(A)以外の、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、含む。ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)は、マレイミド基及びシトラコンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性化合物(F)、無機充填材(G)、及びフラックス機能を有する有機化合物(H)の少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0086】
本実施形態において、硬化性、低ボイド性、及びチップ接着性に優れる、プリアプライドアンダーフィル材に用いるのに好適なフィルムが得られる理由について定かではないが、本発明者らは次のように推定している。本実施形態のフィルムにおいて、分子内の末端にプロペニル基を含むプロペニル基含有樹脂(A)を使用することで、好適な溶融粘度を有しながら、プロペニル基同士の反応、及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)に含まれる、マレイミド基及び/又はシトラコンイミド基と、プロペニル基と、の反応が促進される。それにより、本実施形態のフィルムは、好適な溶融粘度を有しながら、かつ、優れた硬化性により硬化物の架橋密度が上がるので、チップ、及び基板とアンダーフィル材との間にフィルムが広がりながら、アンダーフィル未充填部分が抑制される。そのため、低ボイド性と、優れたチップ接着性が得られる。特に、本発明者らは、フリップチップ実装において、チップ、及び基板とアンダーフィル材との熱圧着時に発生するボイドを抑制するためには、フィルムの硬化開始温度と、熱圧着時の温度におけるフィルムの溶融粘度とが重要であることを見出した。本実施形態のフィルムは、熱圧着時の温度において適度な溶融粘度を有し、かつ、優れた硬化性を有するため、硬化開始温度にて、迅速に、基板とチップとの間に溶融した樹脂組成物が広がり、硬化することができる。そのため、本実施形態のフィルムによれば、低ボイド性と、優れたチップ接着性が得られる。更に、プロペニル基含有樹脂(A)が、ヒドロキシル基を含むことで、チップ及び基板などの被接着体とアンダーフィル材とのチップ接着性を向上させることが可能となると推定している。
【0087】
〔プロペニル基含有樹脂(A)〕
本実施形態のフィルムは、プロペニル基含有樹脂(A)を含む。プロペニル基含有樹脂(A)は、基本骨格として、分子内の末端に式(1)で表される構成単位を含めば、特に限定されない。
【0088】
【0089】
式(1)中、-*は、結合手を示し、重合体の主鎖と結合する。
【0090】
プロペニル基含有樹脂(A)は、末端に反応性の高いプロペニル基を含むため、硬化過程において、プロペニル基同士の反応、並びにマレイミド基及びシトラコンイミド基とプロペニル基との反応が生じやすい。そのため、得られる硬化物の架橋密度が上がり、低ボイド性が得られ、更に、耐熱性(ガラス転移温度)も向上する。また、極性基を有しているため、チップ及び基板など被接着体とアンダーフィル材とのチップ接着性も向上する。
【0091】
プロペニル基含有樹脂(A)の主鎖である重合体は、アルケニル基及びヒドロキシ基を含めば、特に限定されない。
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、プロペニル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。これらの中でも、プロペニル基が好ましい。
【0092】
重合体としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリフェニルメタン型フェノール、テトラキスフェノール、ノボラック型フェノール、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を含むフェノール(ビフェニル型フェノール)等のフェノール環にアルケニル基を含む重合体が挙げられる。これらの重合体には、置換基を有していてもよい。また、これらの重合体は、1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。
このような置換基としては、ハロゲン原子、及び直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基が挙げられる。直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基には、置換基として、アルケニル基を含むことが好ましい。アルケニル基については、前述のとおりである。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、及びt-ヘキシル基が挙げられる。
環状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族環状炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、及びシクロドデシル基等の単環式脂肪族炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環式脂肪族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、及びフェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
【0093】
プロペニル基含有樹脂(A)は、特に限定されないが、フリップチップ実装中において、プロペニル基含有樹脂(A)の揮発によるボイドを防ぐ観点から、プロペニル基含有樹脂(A)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で、300~10,000であることが好ましく、400~7,000であることがより好ましく、更には1,000~3,000であることがより好ましい
【0094】
プロペニル基含有樹脂(A)は、式(2)で表される樹脂を含むことが好ましい。本実施形態のフィルムにこのようなプロペニル基含有樹脂(A)を含むと、優れた耐熱性が得られる。
【0095】
【0096】
式(2)中、Wは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~15の炭化水素基を表す。Uは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n1は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。
【0097】
式(2)において、Wは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~15の炭化水素基を表す。Wにおける置換基としては、芳香環を含むことが好ましく、この場合、プロペニル基含有樹脂(A)は、式(3)で表されることが好ましい。
また、式(2)におけるWとしては、芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数10~15の芳香族炭化水素基がより好ましい。Wは、特に限定されないが、例えば、次の構造が挙げられる。これらの構造は、1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0098】
【0099】
これらの中でも、Wは、耐熱性の点から、アルキル型ビフェニル骨格を含むことが好ましい。
【0100】
式(2)において、分子内におけるアルケニル基の数は、Uと末端のプロペニル基との合計に対して、20%以上がプロペニル基であることが好ましい。式(2)において、分子内におけるアルケニル基の40%以上がプロペニル基であることが好ましく、60%以上がプロペニル基であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、100%以下である。分子内におけるアルケニル基が前記範囲にあると、優れた硬化性が得られる。
式(2)において、プロペニル基以外のUは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。プロペニル基以外のUとしては、硬化性を好適に制御できる点から、水素原子が好ましい。
【0101】
式(2)において、n1は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。n1は、硬化性を好適に制御できる点から、その平均値が1~10の実数であることが好ましく、その平均値が1~6の実数であることがより好ましい。
【0102】
式(2)におけるWが置換基として芳香環を含む場合、プロペニル基含有樹脂(A)は、式(3)で表されることが好ましい。
【0103】
【0104】
式(3)中、Yは、各々独立に、炭素数1~6の炭化水素基を表す。Xは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n2は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。
【0105】
式(3)において、Yは、各々独立に、炭素数1~6の2価の炭化水素基を表す。Yは、炭素数1~6の2価の炭化水素基にある水素原子の1つが、アルケニル基を含むフェノール環に置換された構造である。Yとしては、特に限定されないが、炭素数1~6であって、直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基であることが好ましい。
直鎖状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、及びヘキシレン基が挙げられる。分岐鎖状の炭化水素基としては、例えば、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、及び-C(CH2CH3)2-のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-C(CH2CH3)2-CH2-のアルキルエチレン基が挙げられる。
環状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、及びシクロヘキシレン基が挙げられる。
これらの炭化水素基は、1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0106】
これらの中でも、Yは、後述のラジカル重合性樹脂又は化合物(B)等の他の樹脂と良好な相溶性が得られる点から、メチレン基が好ましい。
【0107】
式(3)において、分子内におけるアルケニル基の数は、Xと末端のプロペニル基との合計に対して、20%以上がプロペニル基であることが好ましい。式(3)において、分子内におけるアルケニル基の40%以上がプロペニル基であることが好ましく、60%以上がプロペニル基であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、100%以下である。分子内におけるアルケニル基が前記範囲にあると、優れた硬化性が得られる。
式(3)において、プロペニル基以外のXは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。炭素数2~6のアルケニル基としては、前記のとおりである。プロペニル基以外のUとしては、硬化性を好適に制御できる点から、水素原子が好ましい。
【0108】
式(2)において、n2は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。n1は、硬化性を好適に制御できる点から、その平均値が1~10の実数であることが好ましく、その平均値が1~6の実数であることがより好ましい。
【0109】
式(2)又は式(3)で表されるプロペニル基含有樹脂(A)の製造方法は、特に限定されず公知の方法で製造できる。
製造方法としては、例えば、原料してフェノール樹脂を用いた方法が挙げられる。フェノール樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリフェニルメタン型フェノール、テトラキスフェノール、ノボラック型フェノール、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を含むフェノール(ビフェニル型フェノール)、及びトリフェニルメタン骨格を含むフェノール(トリフェニルメタン型フェノール)が挙げられる。
製造方法では、これらのフェノール樹脂中におけるヒドロキシル基をアリル化することでアリルエーテル体を合成し、その後、得られたアリルエーテル基をプロペニルエーテル基へ転移反応することで得られる。また、得られたアリルエーテル基をクライゼン転移反応によりアリル化フェノールを得て、その後、公知の方法に従って、アリル基をプロペニル基に転移反応することでも得られる。
【0110】
プロペニル基含有樹脂(A)としては、式(25)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂、及び式(26)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂が好ましい。このようなプロペニル基含有樹脂(A)としては、市販品を用いてもよく、例えば、式(25)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂として、群栄化学工業(株)製のBPN01-S(商品名、質量平均分子量:1830)が挙げられ、式(26)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂としては、群栄化学工業(株)製のTPMP01(商品名、質量平均分子量:2371)が挙げられる。
【0111】
【0112】
式(25)は、n11が1~10の混合物である。
【0113】
【0114】
式(26)は、n12が1~10の混合物である。
【0115】
〔ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)〕
本実施形態のフィルムには、優れた絶縁信頼性及び耐熱性が得られる点から、プロペニル基含有樹脂(A)と異なり、分子内に、マレイミド基及びシトラコンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)を含む。ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)は、後述の硬化促進剤(C)と共に、プロペニル基含有樹脂(A)と反応性を示せば特に限定されない。ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)としては、後述のフラックス機能を有する有機化合物(H)と反応性を示さないことが好ましい。これらラジカル重合性樹脂又は化合物(B)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0116】
ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)としては、プロペニル基含有樹脂(A)と優れた反応性が得られ、また、優れた、絶縁性信頼性及び耐熱性が得られる点から、分子内に、マレイミド基を含むことがより好ましい。
【0117】
マレイミド化合物が好ましい理由は定かではないが、本発明者らは、次のように推定している。すなわち、本発明者らは、マレイミド化合物は、プロペニル基含有樹脂(A)と、より優れた反応性を有するため、優れた硬化性が得られ、硬化物の架橋密度が上がるので、チップ、及び基板とアンダーフィル材との間のアンダーフィル未充填部分が抑制され、低ボイド性が得られる。また、このため、より一層優れた、絶縁信頼性及び耐熱性も得られると推定している
【0118】
マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)としては、分子中に1個以上のマレイミド基を含む樹脂又は化合物であれば、特に限定されない。マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、式(4)で表されるマレイミド化合物、式(5)で表されるマレイミド化合物、式(6)で表されるマレイミド化合物、式(7)で表されるマレイミド化合物、式(8)で表されるマレイミド化合物、及び式(9)で表されるマレイミド化合物などが挙げられる。マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)は、マレイミド化合物を重合して得られるプレポリマー、及びマレイミド化合物をアミン化合物等の他の化合物と重合して得られるプレポリマー等の形で、フィルムに含有させることもできる。
【0119】
これらの中でも、有機溶剤への溶解性の観点から、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、式(4)で表されるマレイミド化合物、式(5)で表されるマレイミド化合物、式(6)で表されるマレイミド化合物、式(7)で表されるマレイミド化合物、式(8)で表されるマレイミド化合物、及び式(9)で表されるマレイミド化合物が好ましく、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、式(4)で表されるマレイミド化合物、式(5)で表されるマレイミド化合物、式(6)で表されるマレイミド化合物、式(7)で表されるマレイミド化合物、式(8)で表されるマレイミド化合物、及び式(9)で表されるマレイミド化合物がより好ましい。式(6)で表されるマレイミド化合物としては、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが、好ましい。
【0120】
【0121】
式(4)中、R1は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、本実施形態による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水素原子であることが好ましい。また、式(4)中、n3は、1~10の整数を示す。n3の上限値は、有機溶剤への溶解性の観点から、上限値は7であることが好ましい。
【0122】
【0123】
式(5)中、n4は、1~30の整数を示す。本実施形態による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、n4は、7~30の整数であることが好ましく、7~18の整数であることがより好ましい。
【0124】
【0125】
式(6)中、R2は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。
式(6)中、R3は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。
【0126】
【0127】
式(7)中、R4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、lは、各々独立に、1~3の整数を示し、n5は、1~10の整数を示す。
炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられる。式(7)で表されるマレイミド化合物は、フィルムを硬化した硬化物の弾性率を低減させることができるため、好ましい。
【0128】
【0129】
式(8)中、R5及びR7は、各々独立に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を示す。R6は、各々独立に、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を示す。n6は、1~10の整数を示す。
R5及びR7共に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基としては、例えば、8以上の炭素原子を含む、置換又は非置換の2価の炭化水素基が挙げられる。置換又は非置換の2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、置換又は非置換の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の分岐状脂肪族炭化水素基、及び置換又は非置換の環状脂肪族炭化水素基が挙げられる。例えば、オクチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、及びオクタデカメチレン基が挙げられる。
R6において、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10である脂環基、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10である芳香族基、及び置換又は非置換の、環を構成する原子数が4~10である複素環基が挙げられる。なお、環を構成する原子数とは、環状に連結している原子の数であって、側鎖の置換基等の原子数は含まれない。置換又は非置換の脂環基における脂環部分の基としては、例えば、2価又は2価以上の、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、及びシクロデシル基が挙げられる。また、置換基がアルキル基である場合、アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数3~10のアルキル基がより好ましい。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、テキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。アルキル基置換のアルキル基は、1つでもよく、2以上であってもよい。
【0130】
【0131】
式(9)中、R8は、各々独立に、アルキレン基を示す。R9は、各々独立に、アルキレン基、式(10)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、式(11)で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。n7は1~10の整数を示す。
R8及びR9における、アルキレン基は、共に前記のとおりである。
【0132】
【0133】
式(10)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基である。n8は、0~5の整数を示す。n8は、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
Zにおいて、アルキレン基及び芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基については、前記のとおりである。
【0134】
【0135】
マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)としては、有機溶剤に対して良好な溶解性及び可撓性の観点から、式(5)で表されるマレイミド化合物が好ましく、式(5)で表されるマレイミド化合物と共に、更に2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、式(6)で表されるマレイミド化合物、及び式(7)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のマレイミド化合物を含むことがより好ましく、式(5)で表されるマレイミド化合物、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、式(6)で表されるマレイミド化合物、及び式(7)で表されるマレイミド化合物の全てを含むことが更に好ましい。
【0136】
また、前記のとおり、フリップチップ実装において、チップ、及び基板とアンダーフィル材との熱圧着時に発生するボイドを抑制するためには、フィルムの硬化開始温度と、熱圧着時の温度におけるフィルムの溶融粘度とが重要である。この点、熱圧着時の温度において適度な溶融粘度を有し、かつ、優れた硬化性を有することから、マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)としては、プロペニル基含有樹脂(A)と共に、式(7)で表されるマレイミド化合物を用いることが好ましく、プロペニル基含有樹脂(A)及び式(7)で表されるマレイミド化合物と共に、更に2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、式(5)で表されるマレイミド化合物、及び式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のマレイミド化合物を含むことがより好ましく、プロペニル基含有樹脂(A)、式(5)で表されるマレイミド化合物、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、式(6)で表されるマレイミド化合物、及び式(7)で表されるマレイミド化合物の全てを含むことが更に好ましい。プロペニル基含有樹脂(A)と、このようなマレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)とを含むことで、本実施形態のフィルムは、より迅速に、基板とチップとの間に溶融した樹脂組成物が広がり、硬化することができ、低ボイド性と優れた接着性を得ることができるため、好ましい。
【0137】
マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)は、市販品を用いてもよく、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI-80(商品名)が挙げられる。式(4)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、大和化成工業(株)社製BMI-2300(商品名)が挙げられる。式(5)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI-1000P(商品名、式(5)中のn4=14(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製BMI-650P(商品名、式(5)中のn4=9(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製BMI-250P(商品名、式(5)中のn4=3~8(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製CUA-4(商品名、式(5)中のn4=1)等が挙げられる。式(6)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI-70(商品名)が挙げられる。式(7)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、日本化薬(株)社製MIR-3000-70MT(商品名、式(7)中のR4が全て水素原子であり、n5が1~10の混合物である)が挙げられる。式(8)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules inc.社製BMI-5000(商品名)が挙げられる。式(9)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules inc.社製BMI-6000(商品名)が挙げられる。
【0138】
ラジカル重合性基としてシトラコンイミド基を含む、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)としては、分子中に1個以上のシトラコンイミド基を含む樹脂又は化合物であれば、特に限定されない。例えば、o-フェニレンビスシトラコンイミド、m-フェニレンビスシトラコンイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、4,4-ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2-ビス[4-(4-シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、1,3-キシリレンビス(シトラコンイミド、N-[3-ビス(トリメチルシリル)アミノ-1-プロピル]シトラコンイミド、N-[3-ビス(トリエチルシリル)アミノ-1-プロピル]シトラコンイミド、N-[3-ビス(トリフェニルシリル)アミノ-1-プロピル]シトラコンイミド、N,N’-(m-フェニレンジメチレン)ジシトラコンイミド、及びN-[3-(メチリデンスクシンイミドメチル)ベンジル]シトラコンイミドが挙げられる。シトラコンイミド基を含む樹脂又は化合物(B)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0139】
本実施形態のフィルムにおいて、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基との比率(プロペニル基:重合性官能基)は、より一層優れた、硬化性、低ボイド性、及びチップ接着性が得られる点から、1:1~1:7であることが好ましく、1:1.3~1:5であることがより好ましく、1:1.5~1:4であることが更に好ましい。なお、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基とは、マレイミド基及び/又はシトラコンイミド基を示す。また、本実施形態において、比率(プロペニル基:重合性官能基)は、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基の量(以下、「プロペニル基量」と称す)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基の量(以下、「重合性官能基量」と称す)を用いて算出される。プロペニル基量は、プロペニル基含有樹脂(A)の配合量をプロペニル基含有樹脂(A)の官能基当量で除すことで算出される。重合性官能基量は、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の配合量をラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の官能基当量で除すことで算出される。複数のプロペニル基含有樹脂(A)が存在する場合は、それぞれの樹脂について、上記の算出方法にて、それぞれのプロペニル基量を求め、これらの量を加算した値をプロペニル基量とする。同様に、複数のラジカル重合性樹脂又は化合物(B)が存在する場合は、それぞれの樹脂又は化合物について、上記の算出方法にて、それぞれの重合性官能基量を求め、これらの量を加算した値を重合性官能基量とする。
【0140】
本実施形態のフィルムにおいて、マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)として式(5)で表されるマレイミド化合物を含む場合には、特に限定されないが、有機溶剤への良好な溶解性及び良好な可撓性が得られる点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びマレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、式(5)で表されるマレイミド化合物を5質量部~60質量部で含むことが好ましく、25質量部~55質量部で含むことがより好ましい。
本実施形態のフィルムにおいて、マレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)が、式(5)で表されるマレイミド化合物、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、式(6)で表されるマレイミド化合物、及び式(7)で表されるマレイミド化合物を含む場合には、特に限定されないが、より一層優れた、硬化性、低ボイド性、及びより一層優れたチップ接着性が得られる点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びマレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、プロペニル基含有樹脂(A)を10質量部~35質量部、式(5)で表されるマレイミド化合物を25質量部~55質量部、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを2質量部~25質量部、式(6)で表されるマレイミド化合物を2質量部~25質量部、及び式(7)で表されるマレイミド化合物を15質量部~40質量部でそれぞれ含むことが好ましい。
【0141】
〔硬化促進剤(C)〕
本実施形態のフィルムには、硬化速度を好適に調整でき、また、優れた低ボイド性が得られる点から、硬化促進剤(C)を含む。硬化促進剤(C)は、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の硬化を促進できる化合物であれば、特に限定されない。硬化促進剤(C)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0142】
硬化促進剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、熱ラジカル重合開始剤(D)、イミダゾール化合物(E)、並びにトリエチルアミン及びトリブチルアミン等の第3級アミンが挙げられる。これらの中でも、良好な硬化速度が得られる点から、熱ラジカル重合開始剤(D)及びイミダゾール化合物(E)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、熱ラジカル重合開始剤(D)及びイミダゾール化合物(E)の両方を含むことがより好ましい。
【0143】
本実施形態において、硬化促進剤(C)の含有量は、特に限定されないが、良好な硬化速度が得られる点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部~10質量部で含むことが好ましく、0.05質量部~8質量部で含むことがより好ましい。
【0144】
(熱ラジカル重合開始剤(D))
熱ラジカル重合開始剤(D)は、熱により、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基、及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の重合性官能基を重合させることができる活性物質(ラジカル)を放出する化合物であれば特に限定されず、公知の熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。熱ラジカル重合開始剤(D)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0145】
本実施形態において、熱ラジカル重合開始剤(D)の10時間半減期温度は、特に限定されないが、100℃以上であることが好ましく、製造性の観点から、110℃以上であることがより好ましい。本実施形態において、製造時の溶剤除去工程の高温化を図ることができるため、熱ラジカル重合開始剤(D)は、前記の範囲の10時間半減期温度を満たすことが好ましい。
【0146】
熱ラジカル重合開始剤(D)としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキサイド、及びシクロヘキサノンパーオキサイドのケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、及び2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンのパーオキシケタール;tert―ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルハイドロパーオキサイドのハイドロパーオキサイド;ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、及びジ-t-ブチルパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド、及びジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイドのジアシルパーオキサイド;ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、及びジイソプロピルパーオキシジカーボネートのパーオキシジカーボネート;2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネートのパーオキシエステル等の有機過酸化物;2,2'-アゾビスブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2‘-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
本実施形態においては、良好な硬化速度が得られる点から、有機過酸化物が好ましく、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、及びハイドロパーオキサイド骨格を含む有機過酸化物がより好ましく、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert―ブチルハイドロパーオキサイドが、好適な硬化速度に加えて、フィルムなどの作製時においても失活しない好適な製造性を有する点から、更に好ましい。
【0147】
本実施形態のフィルムにおいて、熱ラジカル重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、良好な硬化速度が得られる点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部~10質量部で含むことが好ましく、0.05質量部~8質量部で含むことがより好ましい。
【0148】
(イミダゾール化合物(E))
イミダゾール化合物(E)は、プロペニル基含有樹脂(A)、及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の硬化を促進できるイミダゾール化合物であれば、特に限定されず、公知のイミダゾール化合物を用いることができる。イミダゾール化合物(E)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0149】
イミダゾール化合物(E)としては、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等の第3級アミン、及びそれらの誘導体が挙げられる。中でも、硬化速度の調整が容易である点から、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
【0150】
本実施形態のフィルムにおいて、イミダゾール化合物(E)の含有量は、特に限定されないが、硬化速度の調整が容易である点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部~10質量部で含むことが好ましく、0.05質量部~8質量部で含むことがより好ましい。
【0151】
〔熱硬化性化合物(F)〕
本実施形態のフィルムには、特に限定されないが、硬化速度の調整が容易である点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)以外の、熱硬化性化合物(F)を更に含むことが好ましい。熱硬化性化合物(F)としては、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と反応性を示す化合物であれば、公知の化合物を用いることができ、特に限定されない。熱硬化性化合物(F)としては、後述のフラックス機能を有する有機化合物(H)と反応性を示さないことが好ましい。
【0152】
熱硬化性化合物(F)の分子量は、特に限定されないが、フリップチップ実装中において、熱硬化性化合物(F)の揮発によるボイドを防ぐ観点から、400以上であることが好ましい。一方、より十分なフラックス活性を得る観点から、熱硬化性化合物(F)の分子量は、10,000以下であることが好ましい。
【0153】
このような熱硬化性化合物(F)としては、特に限定されないが、アルケニル基を含む化合物、(メタ)アクリロイル基を含む化合物、及びベンゾオキサジン化合物が挙げられる。熱硬化性化合物(F)の中でも、優れた、難燃性、耐熱性、接着性、及び有機溶剤への溶解性が得られる点から、ベンゾオキサジン化合物を含むことが好ましい。これらの熱硬化性化合物(F)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0154】
アルケニル基を含む化合物としては、分子中に1個以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物であれば、特に限定されず、例えば、ビニル基を含む化合物、及び(メタ)アリル基を含む化合物が挙げられる。
【0155】
ビニル基を含む化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、スチレン、及びスチレン誘導体が挙げられる。これらのビニル基を含む化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0156】
(メタ)アリル基を含む化合物としては、分子中に1個以上の(メタ)アリル基を含む化合物であれば、特に限定されない。例えば、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルトリメリテート、テトラ(メタ)アリルピロメリテート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル、2,2’-ジ(メタ)アリルビスフェノールA、(メタ)アリルフェノールノボラック、及びビフェニレン型(メタ)アリルフェノールが挙げられる。これらの(メタ)アリル基を含む化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0157】
(メタ)アクリロイル基を含む化合物としては、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を含む化合物であれば、特に限定されない。(メタ)アクリロイル基を含む化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。必要により、例えば、ハイドロキノン、及びメチルエーテルハイドロキノン類の重合禁止剤を適宜用いてもよい。これらの(メタ)アクリロイル基を含む化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0158】
ベンゾオキサジン化合物としては、基本骨格としてオキサジン環を有していれば、特に限定されない。本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物には、ナフトオキサジン化合物などの多環オキサジン骨格を含む化合物も含まれる。ベンゾオキサジン化合物は、加熱により揮発性の副生成物を発生することはなく、ベンゾオキサジン環が開環重合して好適に硬化する。硬化物は、耐熱性、耐水性、及び難燃性に優れる。また、ベンゾオキサジン化合物は、開環重合時に極性基であるフェノール性水酸基、及び第3級アミノ基が生成されるため、高いチップ接着性及び基板接着性が期待できる。ベンゾオキサジン化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0159】
ベンゾオキサジン化合物としては、式(12)で表される化合物、式(13)で表される化合物、式(14)で表される化合物、及び式(15)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物中には、モノマーが重合して生成したオリゴマーなどを含んでいてもよい。
【0160】
【0161】
式(12)中、R10は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。R11は、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は一般式(a)~(t)で表される1価~4価の有機基を示す。n9は、1~4の整数を示す。
【0162】
R10及びR11共に、アリール基としては、炭素原子数6~18のアリール基であることが好ましい。このようなアリール基として、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、及びアントリル基が挙げられる。中でも、フェニル基がより好ましい。これらのアリール基は、炭素原子数1~4の低級アルキル基を1個以上、好ましくは、1~3個の範囲で有する。そのような低級アルキル基を含むアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、及びメチルナフチル基などを挙げることができる。
【0163】
R10及びR11共に、アラルキル基は、ベンジル基、及びフェネチル基であることが好ましい。これらは、そのフェニル基上に炭素原子数1~4の低級アルキル基を1個以上、好ましくは、1~3個の範囲で有する。
【0164】
R10及びR11共に、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、プロペニル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、アリル基、及びプロペニル基が好ましく、アリル基がより好ましい。
【0165】
R10及びR11共に、アルキル基としては、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基である。炭素原子数3以上のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、テキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0166】
R10及びR11共に、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基が挙げられる。好ましくは、シクロヘキシル基である。
【0167】
【0168】
式(13)中、R12は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。R13は、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は一般式(a)~(t)で表される1価~4価の有機基を示す。n10は1~4の整数を示す。
【0169】
R12及びR13共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0170】
【0171】
式(14)中、R14は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0172】
R14における、アルキル基及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0173】
置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4-メチルフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、及び4-メトキシフェニル基の一置換フェニル基;3,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、及び3,5-ジメトキシフェニル基の二置換フェニル基;3,4,5-トリメチルフェニル基の三置換フェニル基;2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、及び4-メチル-2-ナフチル基の置換基を有していてもよい2-ナフチル基が挙げられる。
【0174】
【0175】
式(15)中、R15は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0176】
R15における、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基については、前記のとおりである。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
一般式(a)~(t)中、Raは、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。Rbは、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。
【0185】
Ra及びRb共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0186】
ベンゾオキサジン化合物としては、優れた、難燃性、及び耐熱性が得られる点から、式(23)で表される化合物、及び式(24)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが、溶剤溶解性の観点から、好ましい。
【0187】
【0188】
式(23)中、R16は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。oは、各々独立に、1~4の整数を示す。R17は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。pは、各々独立に、1~4の整数を示す。T1は、アルキレン基、式(10)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。
【0189】
R16及びR17共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0190】
T1におけるアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、及びオクタデシレン基が挙げられる。分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、及び-C(CH2CH3)2-のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-C(CH2CH3)2-CH2-のアルキルエチレン基が挙げられる。
【0191】
【0192】
式(24)中、R18は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。qは、各々独立に、1~3の整数を示す。R19は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。rは、各々独立に、1~5の整数を示す。T2は、アルキレン基、式(10)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。
【0193】
R18及びR19共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については前記のとおりである。T2におけるアルキレン基については、前記のとおりである。
【0194】
【0195】
式(10)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基である。n8は、0~5の整数を示す。n8は、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0196】
Zにおけるアルキレン基については、前記のとおりである。
【0197】
芳香族環を含む炭素数6~30の炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレイン、インダセン、ターフェニル、アセナフチレン、及びフェナレンの芳香族性を含む化合物の核から水素原子を2つ除いた2価の基が挙げられる。
【0198】
ベンゾオキサジン化合物としては、市販のものを使用してもよく、例えば、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製、3,3'-(メチレン-1,4-ジフェニレン)ビス(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、水酸基当量:217、分子量:434)、及びF-a型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製、2,2-ビス(3,4-ジヒドロ-2H-3-フェニル-1,3-ベンゾオキサジニル)メタン、水酸基当量:217、分子量:434)が挙げられる。
【0199】
これらのベンゾオキサジン化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0200】
本実施形態のフィルムが、熱硬化性化合物(F)を含む場合、熱硬化性化合物(F)の含有量は、特に限定されないが、良好な、チップ接着性、及び可撓性を有する点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、1質量部~100質量部であることが好ましく、5質量部~80質量部であることがより好ましく、10質量部~60質量部であることが更に好ましい。
【0201】
〔無機充填材(G)〕
本実施形態のフィルムには、耐燃性の向上、熱伝導率の向上、及び熱膨張率の低減のため、無機充填材(G)を更に含むことが好ましい。無機充填材を使用することにより、フィルム等の耐燃性、及び熱伝導率を向上させ、熱膨張率を低減することができる。
【0202】
無機充填材(G)の平均粒径は、特に限定されないが、本実施形態のフィルムをプリアプライドアンダーフィル材として用いる場合、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化に対応する観点からは、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。その平均粒径の下限値は、特に限定されないが、例えば、10nmである。なお、本実施形態において、無機充填材(G)の「平均粒径」とは、無機充填材(G)のメジアン径を意味するものとする。ここでメジアン径とは、ある粒径を基準として粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒径が大きい側の粒子の体積と、より粒径が小さい側の粒子の体積とが、全粉体の夫々50%を占めるような粒径を意味する。無機充填材(G)の平均粒径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0203】
無機充填材(G)としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等のシリカ;ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、及び窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物;酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物;炭酸カルシウム、及び硫酸カルシウム等のカルシウム化合物;酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物;窒化ホウ素;硫酸バリウム;天然タルク、及び焼成タルク等のタルク;マイカ;短繊維状ガラス、球状ガラス、及び微粉末ガラス(例えば、Eガラス、Tガラス、Dガラス)等のガラスが挙げられる。また、本実施形態のフィルムに導電性又は異方導電性を付与したい場合には、無機充填材(G)として、例えば、金、銀、ニッケル、銅、錫合金、及びパラジウムの金属粒子を使用してもよい。
【0204】
これらの中でも、本実施形態のフィルムの耐燃性の向上及び熱膨張率の低減の観点から、無機充填材(G)としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましく、その中でもシリカが更に好ましい。シリカとしては、例えば、デンカ(株)製のSFP-120MC(商品名)、及びSFP-130MC(商品名)、(株)アドマテックス製の0.3μmSX-CM1(商品名)、0.3μmSX-EM1(商品名)、0.3μmSV-EM1(商品名)、SC1050-MLQ(商品名)、SC2050-MNU(商品名)、SC2050-MTX(商品名)、2.2μmSC6103-SQ(商品名)、SE2053-SQ(商品名)、Y50SZ-AM1(商品名)、YA050C-MJE(商品名)、YA050C-MJF(商品名)、及びYA050C-MJA(商品名)が挙げられる。
【0205】
これらの無機充填材(G)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0206】
無機充填材(G)は、シランカップリング剤で表面処理されたものを用いてもよい。
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系シランカップリング剤;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノシラン系シランカップリング剤;トリメトキシフェニルシラン等のフェニルシラン系シランカップリング剤;イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0207】
本実施形態のフィルムが、無機充填材(G)を含む場合、無機充填材(G)の含有量は、特に限定されないが、フィルムの耐燃性の向上、及び熱膨張率の低減をしつつ、プリアプライドアンダーフィル材の接合時の流動性を確保する観点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。また、その含有量は、10質量部以上とすることが好ましく、20質量部以上とすることがより好ましく、50質量部以上とすることが更に好ましい。
【0208】
〔フラックス機能を有する有機化合物(H)〕
本実施形態のフィルムには、フリップチップ実装中においてフラックス活性を発現させるため、フラックス機能を有する有機化合物(H)を更に含むことが好ましい。フラックス機能を有する有機化合物(H)は、分子中に1個以上の酸性部位を含む有機化合物であれば、特に限定されない。酸性部位としては、例えば、リン酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、及びスルホン酸基が好ましく、本実施形態のフィルムをプリアプライドアンダーフィル材として用いた半導体装置において、接合部を構成するはんだや銅等の金属のマイグレーション、及び腐食をより有効に防止する観点から、フェノール性水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。フラックス機能を有する有機化合物(H)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0209】
フラックス機能を有する有機化合物(H)は、特に限定されないが、接合部の酸化膜の除去を十分行うために、酸解離定数pKaが、3.8~15.0であることが好ましく、ワニス及び樹脂積層体の保存安定性とフラックス活性の両立の観点から、4.0~14.0であることがより好ましい。
【0210】
本実施形態のフィルムにおけるフラックス機能を有する有機化合物(H)は、特に限定されないが、フリップチップ実装中においてフラックス活性が発現する前に揮発してしまうこと、すなわち接合部の酸化膜を除去する前にフラックス機能を有する有機化合物(H)が揮発してしまうことを防ぐ観点から、分子量が200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましい。酸としての運動性を有し、十分なフラックス活性を得るためには、分子量8000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
【0211】
フラックス機能を有する有機化合物(H)としては、特に限定されないが、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸変性樹脂、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びフェノールフタリンが挙げられる。これらのフラックス機能を有する有機化合物(H)は、溶剤溶解性及び保存安定性の観点から、好ましい。
【0212】
これらの中でも、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)による失活を防ぐ観点からは、デヒドロアビエチン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸変性樹脂、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、及びN,N'-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンがより好ましい。デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸変性樹脂、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、及びN,N'-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンは、比較的反応性が低いことから、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)との反応がほとんど起こらず、酸化膜の除去に必要となる十分なフラックス活性が維持される観点から更に好ましい。
【0213】
フラックス機能を有する有機化合物(H)としては、市販のものを使用してもよく、例えば、マルキードNo32(荒川化学工業(株)製、(商品名)、酸価:140以下)、マルキードNo31(荒川化学工業(株)製、(商品名)酸価:200以下)、及びマルキードNo33(荒川化学工業(株)製、(商品名)酸価:290~320)が挙げられる。
【0214】
本実施形態のフィルムが、フラックス機能を有する有機化合物(H)を含む場合、フラックス機能を有する有機化合物(H)の含有量は、特に限定されないが、フィルムのフラックス活性と、積層体を形成して使用する際に重要な特性の一つとなる可撓性を両立する観点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、5質量部~80質量部であることが好ましく、5質量部~60質量部であることがより好ましく、20質量部~50質量部であることが更に好ましい。
【0215】
〔その他の成分〕
本実施形態のフィルムでは、プロペニル基含有樹脂(A)、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)、熱ラジカル重合開始剤(D)及びイミダゾール化合物(E)等の硬化促進剤(C)、熱硬化性化合物(F)、無機充填材(G)、及びフラックス機能を有する有機化合物(H)の他に、その他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0216】
その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、可撓性付与成分が挙げられる。可撓性付与成分は、フィルムを含む層に対して可撓性を付与できるような成分であれば、特に限定されないが、例えば、プロペニル基含有樹脂(A)、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)、熱硬化性化合物(F)、及びフラックス機能を有する有機化合物(H)以外の、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、(メタ)アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリウレタン、ポリプロピレン、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー、及びシリコーン樹脂等の熱可塑性の高分子化合物が挙げられる。これらの可撓性付与成分は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0217】
本実施形態のフィルムには、その他の成分として、樹脂と無機充填材との界面の接着性の向上、及び吸湿耐熱性の向上を目的として、シランカップリング剤を含むこともできる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系シランカップリング剤;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノシラン系シランカップリング剤;トリメトキシフェニルシラン等のフェニルシラン系シランカップリング剤;イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
シランカップリング剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性の向上、及びフリップチップ実装時の揮発量の低減観点から、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部~20質量部であることが好ましい。
【0218】
本実施形態のフィルムには、その他の成分として、積層体の製造性向上及び充填材の分散性等の目的として、湿潤分散剤を含むこともできる。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、特に限定されない。例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk(登録商標)-110(商品名)、同-111(商品名)、同-180(商品名)、同-161(商品名)、BYK-W996(商品名)、同-W9010(商品名)、及び同-W903(商品名)が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
湿潤分散剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、積層体の製造性向上の観点からは、無機充填材(G)100質量部に対して、0.1質量部~5質量部とすることが好ましく、0.5質量部~3質量部とすることがより好ましい。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が前記比率を満たすことが好ましい。
【0219】
その他の成分として、本実施形態のフィルムには、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、難燃剤、及びイオントラップ剤が挙げられる。光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤;アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;チタノセン系光重合開始剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態のフィルムにおいて、その他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、通常、プロペニル基含有樹脂(A)及びラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、それぞれ0.01質量部~10質量部である。
【0220】
〔フィルム〕
本実施形態のフィルムは、硬化性に優れ、低ボイド性、及び優れたチップ接着性を有する。また、本実施形態のフィルムを支持基材上に塗布することにより、低ボイド性、及びチップ接着性に優れた、フォルムを含む層を含む積層体を提供することができる。本実施形態のフィルムを、積層体の形態で使用するプリアプライドアンダーフィル材として用いた場合、低ボイド性、及びチップ接着性に優れ、加えて、フラックス活性、接合性、及び絶縁信頼性にも優れる。このように、本実施形態のフィルムは、各種の優れた特徴を有し、特に硬化性、低ボイド性、及びチップ接着性を高い水準で満足させることができることから、プリアプライドアンダーフィル材としてより有用である。
【0221】
本実施形態のフィルムは、プリアプライドアンダーフィル材用として好適であることから、半硬化状態(Bステージ)であることが好ましい。フィルムが半硬化状態であることにより、優れた、低ボイド性及びチップ接着性を得ることができる。本実施形態において、半硬化状態(Bステージ)とは、フィルム中に含まれる各成分が、積極的に反応(硬化)を始めてはいないが、フィルムが乾燥状態、すなわち、粘着性がない程度まで、加熱して溶媒を揮発させている状態を称し、加熱しなくても硬化せずに溶媒が揮発したのみの状態も含まれる。本実施形態において、半硬化状態(Bステージ)の最低溶融粘度は、プリアプライドアンダーフィル材用として好適であることから、通常、30,000Pa・s未満である。なお、本実施形態において、最低溶融粘度は、実施例の記載の方法で測定することができる。
【0222】
本実施形態のフィルムは、プロペニル基含有樹脂(A)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)と、熱ラジカル重合開始剤(D)及びイミダゾール化合物(E)等の硬化促進剤(C)と、必要に応じて、熱硬化性化合物(F)と、無機充填材(G)と、フラックス機能を有する有機化合物(H)と、その他の成分とを適宜混合することにより調製される。必要に応じて、これらの成分を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスの形態とし、このワニスを支持基材上に塗布、及び乾燥することで得ることができる。具体的な製造方法については、後述の積層体の製造方法、及び実施例を参考にできる。本実施形態のフィルムは、乾燥後、支持基材より剥離して用いてもよく、支持基材と共に用いてもよい。
有機溶剤は、前記の成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、かつ、本実施形態のフィルムの所期の効果を損なわないものであれば特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略す場合がある。)、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等のアミド類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0223】
支持基材は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、樹脂フィルムであることが好ましい。支持基材としては、特に限定されないが、樹脂フィルムを使用することができる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン-酸化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリイミド、並びにポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含むフィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、ポリイミド、及びポリアミドが好ましく、ポリエステルの一種である、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0224】
本実施形態のフィルムの厚さは、特に限定されないが、実装時の接続端子間におけるアンダーフィル材の充填性を確保する点から、10μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましい。
【0225】
[積層体]
本実施形態の積層体は、支持基材と、支持基材上に積層された本実施形態のフィルムを含む層と、を備える。このような積層体は、本実施形態のフィルムが、支持基材に添着されて得られる。
【0226】
支持基材の厚さは、特に限定されないが、積層体の製造性、例えば、支持基材にフィルムを塗布する場合の塗布厚の安定性と、積層体の搬送性の点から、10μm~100μmであることが好ましい。支持基板の厚さの下限としては、積層体を製造する際の歩留り確保の点から、12μm以上であることがより好ましくは、25μm以上であることが更に好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。支持基板の厚さの上限としては、支持基材が最終的に半導体装置の構成部材として存在することなく、工程の途中で剥離される点と、積層体の製造コストの点から、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
【0227】
支持基材上に、本実施形態のフィルムを含む層(以下、単に「フィルム層」ともいう。)を形成して本実施形態の積層体を製造する方法としては、特に限定されない。そのような製造方法として、例えば、本実施形態のフィルムを有機溶剤に溶解又は分散させたワニスを、支持基材の表面に塗布し、加熱、及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して本実施形態のフィルムを固化させ、フィルム層を形成する手法が挙げられる。乾燥条件は、特に限定されないが、フィルム層に対する有機溶剤の含有比率が、フィルム層の総量(100質量部)に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下となるように乾燥させる。かかる乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒の種類と配合量によっても異なる。例えば、プロペニル基含有樹脂(A)及びマレイミド基を含むラジカル重合性樹脂又は化合物(B)の合計100質量部に対して、10質量部~300質量部のメチルエチルケトンを含むワニスの場合、1気圧下で90℃~160℃の加熱条件下で2分~10分程度の乾燥が目安となる。なお、上記フィルム層は、絶縁層として機能し得るものである。
【0228】
[フィルム層付き半導体ウェハ、及びフィルム層付き半導体搭載用基板]
本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハは、半導体ウェハと、その半導体ウェハに積層された本実施形態の積層体とを備え、フィルムを含む層が、半導体ウェハに積層される。また、本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板は、半導体搭載用基板と、その半導体搭載用基板に積層された本実施形態の積層体とを備え、フィルムを含む層が、半導体搭載用基板に積層される。
【0229】
本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハを作製する方法は、特に限定されないが、例えば、半導体ウェハの電極が形成された面、すなわち基板との接合が行われる面に、本実施形態の積層体のフィルム層が対向するよう貼り合わせることで得られる。また、本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板を作製する方法は、特に限定されないが、例えば、半導体搭載用基板のチップ搭載側の面に、本実施形態の積層体のフィルム層が対向するよう貼り合わせることで得られる。
【0230】
本実施形態の積層体を半導体ウェハ又は半導体搭載用基板に貼り合わせる方法としては、特に限定されないが、真空加圧式ラミネータを好適に使用することができる。この場合、本実施形態の積層体に対してゴム等の弾性体を介して加圧し、貼り合わせる方法が好ましい。ラミネート条件としては、当業界で一般に使用されている条件であれば、特に限定されないが、例えば、50℃~140℃の温度、1kgf/cm2~11kgf/cm2の範囲の接触圧力、並びに20hPa以下の雰囲気減圧下で行われる。ラミネート工程の後に、金属板による熱プレスにより、貼り合わされた積層体の平滑化を行ってもよい。ラミネート工程、及び平滑化工程は、市販されている真空加圧式ラミネータによって連続的に行うことができる。半導体ウェハ又は半導体搭載用基板に貼り付けられた積層体は、いずれの場合もチップのフリップチップ実装前までに支持基材の除去が行われる。
【0231】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハ、及び/又は本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板を備える。本実施形態の半導体装置を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハを研削等の手段で薄化、及びダイシングソー等による個片化を行い、フィルム層付きチップとし、これを半導体搭載用基板に搭載する手法が挙げられる。また、本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板に、チップを搭載してもよい。フィルム層付きチップを半導体搭載用基板に搭載する方法、及び半導体チップをフィルム層付き半導体搭載用基板に搭載する方法では、熱圧着工法に対応したフリップチップボンダを好適に使用することができる。また、本実施形態ではチップを半導体搭載用基板にフリップチップ実装する場合を便宜的に説明しているが、チップをフリップチップ実装しつつ、本実施形態のフィルムを適用する対象は、半導体搭載用基板以外とすることも可能である。例えば、本実施形態のフィルムは、半導体ウェハ上へチップを搭載する際の半導体ウェハとチップとの接合部や、TSV(Through Silicon Via)等を経由してチップ間接続を行うチップ積層体の、各チップ間の接合部に使用することも可能であり、いずれの場合も本発明による優位性を得ることができる。
【実施例】
【0232】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0233】
[フィルム及び積層体の作製]
(実施例1)
プロペニル基含有樹脂(A)として、式(25)で表されるプロペニル基含有樹脂(BPN01-S(商品名)、群栄化学工業(株)製、質量平均分子量:1830)のメチルエチルケトン(MEK)溶液(不揮発分50%)60質量部(不揮発分換算で30質量部)、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)として、式(5)で表されるマレイミド化合物(BMI-1000P(商品名)、ケイ・アイ化成(株)製)33質量部、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70(商品名)、ケイ・アイ化成(株)製)のメチルエチルケトン(MEK)溶液(不揮発分50質量%)14質量部(不揮発分換算で7質量部)、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(BMI-80(商品名)、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)14質量部(不揮発分換算で7質量部)、式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名)、日本化薬(株)製、不揮発分30質量%)77質量部(不揮発分換算で23質量部)、熱硬化性化合物(F)として、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成工業(株)製、(商品名)、3,3'-(メチレン-1,4-ジフェニレン)ビス(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、水酸基当量:217、分子量:434)のMEK溶液(不揮発分50質量%)66質量部(不揮発分換算で33質量部)、フラックス機能を有する有機化合物(H)として、ロジン変性マレイン酸樹脂(マルキードNo32(商品名)、荒川化学工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)54質量部(不揮発分換算で27質量部)、無機充填材(G)として、スラリーシリカ(YA050C-MJE(商品名)、固形分50質量%、平均粒子径:50nm、(株)アドマテックス製)のMEK溶液266質量部(不揮発分換算で133質量部)、熱ラジカル重合開始剤(D)として、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシド(ジクミルパーオキサイド、キシダ化学(株)製、10時間半減期温度:116.4℃)1質量部、イミダゾール化合物(E)として、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製)4質量部を混合し、高速攪拌装置を用いて40分間撹拌して、ワニスを得た(MEK量:264質量部)。なお、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基(eq./100g-樹脂)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基(マレイミド基)(eq./100g-樹脂)との比率(プロペニル基:重合性官能基)は、1:2であった。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38(商品名)、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。なお、フィルム層は、半硬化状態(Bステージ化)であった。
【0234】
(実施例2)
プロペニル基含有樹脂(A)として、式(25)で表されるプロペニル基含有樹脂(BPN01-S(商品名))60質量部(不揮発分換算で30質量部)の代わりに、式(26)で表されるプロペニル基含有樹脂(TPMP01(商品名)、群栄化学工業(株)製、質量平均分子量:2371)のMEK溶液(不揮発分50%)42質量部(不揮発分換算で21質量部)を配合し、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)として、式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名))77質量部(不揮発分換算で23質量部)を107質量部(不揮発分換算で32質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。なお、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基(eq./100g-樹脂)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基(マレイミド基)(eq./100g-樹脂)との比率(プロペニル基:重合性官能基)は、1:2であった。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。なお、フィルム層は、半硬化状態(Bステージ化)であった。
【0235】
(実施例3)
プロペニル基含有樹脂(A)として、式(25)で表されるプロペニル基含有樹脂(BPN01-S(商品名))60質量部(不揮発分換算で30質量部)を22質量部(不揮発分換算で11質量部)に変更し、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)として、式(5)で表されるマレイミド化合物(BMI-1000P(商品名))33質量部を47質量部に変更し、式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名))77質量部(不揮発分換算で23質量部)を93質量部(不揮発分換算で28質量部)に変更し、フラックス機能を有する有機化合物(H)として、ロジン変性マレイン酸樹脂(マルキードNo32(商品名))54質量部(不揮発分換算で27質量部)を80質量部(不揮発分換算で40質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。なお、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基(eq./100g-樹脂)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基(マレイミド基)(eq./100g-樹脂)との比率(プロペニル基:重合性官能基)は、1:7であった。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。なお、フィルム層は、半硬化状態(Bステージ化)であった。
【0236】
(実施例4)
ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)として、式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名))を配合せず、マレイミド化合物(ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、BMI-70(商品名))7質量部(不揮発分換算で14質量部)を36質量部(不揮発分換算で18質量部)に、マレイミド化合物(2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、BMI-80(商品名))7質量部(不揮発分換算で14質量部)を38質量部(不揮発分換算で19質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。なお、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基(eq./100g-樹脂)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基(マレイミド基)(eq./100g-樹脂)との比率(プロペニル基:重合性官能基)は、1:2であった。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。なお、フィルム層は、半硬化状態(Bステージ化)であった。
【0237】
(実施例5)
ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)として、式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名))77質量部(不揮発分換算で23質量部)の代わりに、式(4)で表されるマレイミド化合物(BMI-2300(商品名)、大和化成工業(株))77質量部(不揮発分換算で23質量部)を配合した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。なお、プロペニル基含有樹脂(A)におけるプロペニル基(eq./100g-樹脂)と、ラジカル重合性樹脂又は化合物(B)における重合性官能基(マレイミド基)(eq./100g-樹脂)との比率(プロペニル基:重合性官能基)は、1:2であった。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。なお、フィルム層は、半硬化状態(Bステージ化)であった。
【0238】
(比較例1)
式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名))77質量部(不揮発分換算で23質量部)を177質量部(不揮発分換算で53質量部)に変更し、式(25)で表されるプロペニル基含有樹脂(BPN01-S(商品名))を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0239】
(比較例2)
式(25)で表されるプロペニル基含有樹脂(BPN01-S(商品名))60質量部(不揮発分換算で30質量部)の代わりに、式(27)で表されるビニル基含有樹脂(LVA01(商品名)、群栄化学工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50%)36質量部(不揮発分換算で18質量部)を配合し、式(7)で表されるマレイミド化合物(MIR-3000-70MT(商品名))77質量部(不揮発分換算で23質量部)を117質量部(不揮発分換算で35質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0240】
【0241】
このワニスを用いて、実施例1と同様にして、ワニスから得られたフィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0242】
[積層体の評価]
(1)硬化性
実施例1~5、並びに比較例1及び2で得られた積層体における、ワニスから得られたフィルム層を粉砕して、樹脂粉を得た。得られた樹脂粉について、示差走査熱量測定装置(Q100(商品名)、TAインスツルメンツ(株)製)を用いて、30℃~350℃の範囲における発熱量を測定した。120℃の時の発熱量(W/g)が、0.01W/g以上の場合をAとし、0.006W/g以上0.01W/g未満の場合をBとし、0.006W/g未満の場合をCとして、硬化性を評価した。発熱量が0.01W/g以上であると、フリップチップボンダを用いた半導体チップ実装において優れた充填性を持ったフィルムが得られる。結果を表1に示す。
【0243】
(2)ボイド
実施例1~5、並びに比較例1及び2で得られた積層体を8mm×8mmの正方形に切断し、切断後の積層体における、ワニスから得られたフィルム層を評価用基板上に積層し、ラミネートした。その後、積層体におけるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。その後、フリップチップボンダ(LFB-2301(商品名)、(株)新川製)を用いて、ステージ温度70℃、ボンドヘッド温度260℃、荷重50N、及び時間6秒の条件で、銅とはんだで構成されるCuピラーを電極に持つ半導体チップ上に、剥離面のフィルム層を熱圧着し、実装を行った。実装後のサンプル(半導体チップ/フィルム層/評価用基板)を超音波精密探傷画像処理装置(μ-SDS(商品名)、(株)KJTD製)を用いて、半導体チップ実装部の範囲におけるフィルム層のボイドの有無を確認した。ボイドの割合が10%未満の場合をAとし、10%以上30%未満を場合Bとし、30%以上の場合をCとして、評価した。ボイドの割合が10%未満であると、絶縁信頼性が高い積層体が得られる。結果を表1に示す。
【0244】
(3)チップ接着性
実施例1~5、並びに比較例1及び2で得られた積層体を8mm×8mmの正方形に切断し、評価用基板の面に対して、切断後の積層体における、ワニスから得られたフィルム層を積層し、ラミネートした。その後、積層体におけるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。その後、フリップチップボンダ(LFB-2301(商品名)、(株)新川製)を用いて、ステージ温度70℃、ボンドヘッド温度260℃、荷重50N、及び時間6秒の条件で、銅とはんだで構成されるCuピラーを電極に持つ半導体チップ上に、剥離面のフィルム層を熱圧着し、実装を行った。実装後のサンプル(半導体チップ/フィルム層/評価用基板)の中央部の断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(JCM-6000Plus(商品名)、日本電子(株)製)を用いて、その断面において、半導体チップとフィルム層との界面における剥離を確認した。剥離の割合が1%未満の場合をAとし、1%以上20%未満の場合をBとして、20%以上の場合をCとして、評価した。剥離の割合が1%未満であると、絶縁信頼性が高い積層体が得られる。結果を表1に示す。なお、表1において、半導体実装時にボイドが多く、フィルム層が半導体チップ近傍に存在している部分が少ないため、チップ接着性が測定できない場合、「-」と記載した。
【0245】
(4)最低溶融粘度
実施例1~5、並びに比較例1及び2で得られた積層体における、ワニスから得られたフィルム層を粉砕して得られた樹脂粉を1g測りとり、錠剤成形器(SSP-10A(商品名)、(株)島津製作所製)を用いて、圧力20kN、時間5分の条件で、直径25mm、厚さ1.5mmのタブレット状に成形し、レオメータ(ARES-G2(商品名)、TAインスツルメンツ(株)製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で40℃~260℃の範囲における粘度を測定した。最低溶融粘度が10,000Pa・s以上30,000Pa・s未満の場合をAとして、最低溶融粘度が30,000Pa・s以上、又は10,000Pa・s未満の場合をBとして記載した。結果を表1に示す。
【0246】
【0247】
本出願は、2019月6月28日出願の日本特許出願(特願2019-122429)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本実施形態のフィルムは、硬化性、低ボイド性、及びチップ接着性に優れる等、各種の効果を発揮することから、プリアプライドアンダーフィル材料として好適である。また、本実施形態のフィルムは、フラックス活性にも優れることから、チップと基板との接合、チップと半導体ウェハとの接合、チップとチップとの接合によって得られる積層体において、長期的な使用にも耐え得る高い信頼性を付与することができる。