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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20241003BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20241003BHJP
   E04G 7/22 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16B2/12 B
F16B45/00 Z
E04G7/22 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020066404
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021162125
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593144770
【氏名又は名称】津軽工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514204082
【氏名又は名称】株式会社フクトク
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貢
(72)【発明者】
【氏名】前田 賢治
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-150836(JP,U)
【文献】登録実用新案第3170632(JP,U)
【文献】特開2002-106517(JP,A)
【文献】実開昭59-022852(JP,U)
【文献】特開平08-284403(JP,A)
【文献】実開昭58-085044(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16B 45/00- 47/00
E04G 7/22
E04G 7/02
E04G 5/00
E04G 5/04
E04G 3/00
E04G 7/26
E04G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる柱状部と、柱状部の一端から略直角方向前方へ延びる一側フランジと、柱状部の他端から略直角方向前方へ延びる他側フランジとを有するクランプ本体と、
前記一側フランジの前方先端部に設けられためねじ部材と、
このめねじ部材にネジ係合されたおねじ部材と、
前記クランプ本体の柱状部に取り付けられた吊り部材と、
を備え、
前記吊り部材は、半長円形の環状に成形され、半長円形の開放端部において、前記クランプ本体の柱状部に回転動作可能に取り付けられており、
前記吊り部材は、柱状部の高さ方向中心位置にピン取り付けされ、当該吊り部材を回転運動させたとき、吊り部材の連続端部は一側フランジの端部及び他側フランジの端部にそれぞれ覆い被さるようになっており、
前記クランプ本体は、前記一側フランジと他側フランジとの間の空間部に被取付部材を挟み設置し、前記おねじ部材をめねじ部材に対してネジ送りすることにより前記被取付部材に固定取り付けされ、
前記クランプ本体は、前記おねじ部材をめねじ部材に対して下方向きにネジ送りするよう前記被取付部材に固定取り付けされる体勢と、前記おねじ部材をめねじ部材に対して上方向きにネジ送りするよう前記被取付部材に固定取り付けされる体勢の、いずれの体勢にも取り付け可能であり、
前記吊り部材は、前記クランプ本体のいずれの体勢においても、ピンを中心に回転運動することにより、前記連続端部が下側フランジの下方に、吊り具を吊り動作し得るように垂れ下がり、さらに、
前記ピンは、前記クランプ本体の柱状部の高さ方向中心位置に取り付けられている、
ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記おねじ部材としての固定用ボルトの先端には座金部材が取り付けられ、この座金部材は、全体が円錐台構造のさら形座金から成っており、さら形の外周部分は角形に成形されるとともに、角の部分がさら形の凹部内側に折曲されて爪部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の一部に取り付けられて他の建築部品等を支持するために使用されるクランプ装置、特に前記建築物の被取付部の状況に対応してクランプ装置自身の取り付け態様(姿勢)を変化させて他の建築部品等を支持する機能を発揮し得るクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新築陸橋などの建築物を新築したり、或いは既設陸橋などの建築物の長寿命化のためのメンテナンス工事をする場合、まず、作業床(足場)作りから開始されるのが一般的である。そのためには、作業床を設けるための前準備が必要となる。この前準備の段階で、クランプ装置(例えば「吊りチェーンクランプ」)を橋梁・鉄骨フランジにボルト締めをして固定している。建築物として陸橋を取り上げると、上記作業床を設けるための前準備は、橋梁・鉄骨の橋脚のみが残って立っているところに作業床を設ける場合に必要となる。この前準備段階で橋梁・鉄骨フランジに吊りチェーンクランプを取り付ける必要がある。上記吊りチェーンクランプの取り付け方は、専ら、吊りチェーンクランプの挟持部において橋梁・鉄骨フランジを挟み、その下に梯子などを利用して橋梁・鉄骨フランジの上側からボルトを回転させて締め付けを行っている。そのため、吊りチェーンクランプの取り付け作業は橋脚の高い位置で梯子の登り、下りをしなければならず、非常に危険を伴った作業となっていた。このような、作業床を設けるために使用されるクランプ装置の従来例としては、例えば図4に示されるものがあり、この例は吊りチェーンクランプと呼ばれるクランプ装置である。図4において符号1は従来のクランプ装置におけるクランプ本体であり、このクランプ本体1は、上下方向に延びる柱状部2と、柱状部2の上端から略直角方向前方へ延びた上側フランジ3と、柱状部2の下端から略直角方向前方へ、上記上側フランジ3と概略平行に延びた下側フランジ4とを有して成る。上側フランジ3の先端部には当該上側フランジ3を貫通して延びるネジ孔(めねじ)が形成され、このネジ孔5にはボルト6がねじ込まれている。他方、下側フランジ4の先端部には環状に成形された吊り部材7が取り付けられている。
【0003】
図5は、上記従来のクランプ装置を橋梁・鉄骨フランジに取り付けた状態を示す斜視図である。図5において、符号8は橋梁・鉄骨フランジである。上記のようなクランプ装置は、上側フランジ3と下側フランジ4の間に橋梁・鉄骨フランジ8を挟んで設置され、上方からボルト6をねじ込むことにより、下側フランジ4との間で橋梁・鉄骨フランジ8に挟み付け固定される。この状態で、チェーン吊り具10をクランプ本体1の吊り部材7に引っ掛け係合させ、クランプ装置及びチェーン吊り具10によって作業道具を吊り下げ支持するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のクランプ装置にあっては、クランプ本体1の上側フランジ3にボルト6が取り付けられる一方、下側フランジ4には環状の吊り部材7が取り付けられて、上部からはボルト6の締め付け、下部では吊り部材7に引っ掛け係合されたチェーン吊り具10によって作業道具を吊り下げ支持する構成となっているため、クランプ装置の取り付け方の変化に対応できないという不具合があった。例えば、建築作業の態様の変化により、クランプ装置を橋梁・鉄骨フランジ8に対して逆さまの体勢(天地逆姿勢)で取り付けなければならない場合、上記従来のクランプ装置では、ボルト6を下方からねじ込み操作することはできても、上部位置に来た吊り部材7を橋梁・鉄骨フランジ8の下側へ回り込ませることは極めて難しくなり、また、ボルト6の締め付け操作部位と、チェーン吊り具10の吊り下げ操作部位とが重なって作業性が悪くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上述のような従来の不具合に鑑みてなされたもので、その目的は、建築作業の態様の変化に柔軟に対応でき、作業効率の向上に貢献することが可能なクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係るクランプ装置は、上下方向に延びる柱状部と、柱状部の一端から略直角方向前方へ延びる一側フランジと、柱状部の他端から略直角方向前方へ延びる他側フランジとを有するクランプ本体と、前記一側フランジの前方先端部に設けられためねじ部材と、このめねじ部材にネジ係合されたおねじ部材と、前記クランプ本体の柱状部に取り付けられた吊り部材と、を備え、前記吊り部材は、半長円形の環状に成形され、半長円形の開放端部において、前記クランプ本体の柱状部に回転動作可能に取り付けられており、前記吊り部材は、柱状部の高さ方向中心位置にピン取り付けされ、当該吊り部材を回転運動させたとき、吊り部材の連続端部(U字形部分)は一側フランジの端部及び他側フランジの端部にそれぞれ覆い被さるようになっており、前記クランプ本体は、前記一側フランジと他側フランジとの間の空間部に被取付部材を挟み設置し、前記おねじ部材をめねじ部材に対してネジ送りすることにより前記被取付部材に固定取り付けされ、前記クランプ本体は、前記おねじ部材をめねじ部材に対して下方向きにネジ送りするよう前記被取付部材に固定取り付けされる体勢と、前記おねじ部材をめねじ部材に対して上方向きにネジ送りするよう前記被取付部材に固定取り付けされる体勢の、いずれの体勢にも取り付け可能であり、前記吊り部材は、前記クランプ本体のいずれの体勢においても、ピンを中心に回転運動することにより、前記連続端部が下側フランジの下方に、吊り具を吊り動作し得るように垂れ下がり、さらに、前記ピンは、前記クランプ本体の柱状部の高さ方向中心位置に取り付けられている、ことを要旨とする。
【0007】
また、前記クランプ本体は、前記おねじ部材をめねじ部材に対して下方向きにネジ送りすることで前記被取付部材に固定取り付けされる体勢と、前記おねじ部材をめねじ部材に対して上方向きにネジ送りすることで前記被取付部材に固定取り付けされる体勢の、いずれの体勢にも取り付け可能であり、前記吊り部材は、前記クランプ本体のいずれの体勢において、前記ピンを中心に回転運動することにより、前記連続端部が下側フランジの下方に、吊り具を吊り動作し得るように垂れ下がり、さらに、前記ピンの中心の高さ位置は、前記クランプ本体のいずれの体勢においても、前記被取付部材の厚さ内にある、ことを特徴とする。この構成において、前記ピンの中心の高さ位置は、前記被取付部材の厚さ方向の中心部分の高さ位置に近接していてもよい。
【0008】
また、前記おねじ部材としての固定用ボルトの先端には座金部材が取り付けられ、この座金部材は、全体が円錐台構造のさら形座金から成っており、さら形の外周部分は角形に成形されるとともに、角の部分がさら形の凹部内側に折曲されて爪部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクランプ装置は、取り付け態様(或いは姿勢)が変化しても、その姿勢変化の前後においてもなんら不都合なく、物品の吊り下げ機能を発揮することができるから、建築や製造の作業現場における種々の要望に応えることができ、作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るクランプ装置の構成を表す斜視図である。
図2】前記実施の形態に係るクランプ装置とチェーン吊り具とを組み合わせた作業床吊り装置を表す斜視図である。
図3図2の場合とは異なった態様による、前記実施の形態に係るクランプ装置とチェーン吊り具とを組み合わせた作業床吊り装置を表す斜視図である。
図4】従来のクランプ装置の構成を表す斜視図である。
図5】前記従来のクランプ装置とチェーン吊り具とを組み合わせた作業床吊り装置を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るクランプ装置の構成を表す斜視図である。この実施の形態に係るクランプ装置の用途は、上記従来例によるクランプ装置と同じく、吊りチェーンクランプと呼ばれるもので、建築作業現場の橋梁・鉄骨フランジ(被取付部材となる)などに取り付けられて作業道具を吊り下げ支持するために用いられる。
【0012】
図1において、符号Aは本発明のクランプ装置を示す。11はクランプ装置Aにおけるクランプ本体であり、このクランプ本体11は鋼板などの金属板材料を折り曲げ、或いはプレス成形して成り、上下方向に延びる柱状部12と、柱状部12の上端から略直角方向前方へ延びた上側フランジ13と、柱状部12の下端から略直角方向前方へ延びた下側フランジ14とを有して成る。なお、本発明においては、後述するように、クランプ装置Aが、使用状態によっては天地逆向きに設置されることがあるから、上側フランジ13、下側フランジ14は便宜上付けた名前であり、一側フランジ13、他側フランジ14というように言い換えることもできる。クランプ本体11は、折り曲げ成形により、柱状部12の背部に一定の幅を持たせた平面形状が略U字形状に形成され、上側フランジ13と下側フランジ14は、それぞれ対になった板材から成る。そして、上側フランジ13と下側フランジ14の間は、板材が切り取られた空間部となっている。上記上側フランジ13と下側フランジ14とは、互いに概略平行に延びるように成形されている。
【0013】
上側フランジ13の前方先端部には対になった板材の間にめねじ部材に相当するナット15が溶接取り付けされ、このナット15にはおねじ部材に相当する固定用ボルト16がねじ込まれている。固定用ボルト16の先端には座金部材20が取り付けられている。この座金部材20は、全体が円錐台構造のさら形座金から成っており、さら形の外周部分は角形(例えば、八角形)に成形されるとともに、角の部分がさら形の凹部内側に折曲されて爪部21が形成されている。そして、座金部材20は、円錐台の外側頂点において固定用ボルト16の先端に取り付けられ、さら形の凹部を先方向に向けている。また、クランプ本体11の柱状部12には、その高さ方向の中間部分において、半長円形の環状に成形された吊り部材17が回転動作可能に取り付けられている。吊り部材17は、半長円形であることから、一端はU字形の連続端部17aとなっている一方、他端は平行棒状の開放端部17bとなっている。そしてこの吊り部材17は、その開放端部17bにおいて、前記クランプ本体11の柱状部12にピン18などの止め具により回転動作可能に取り付けられている。吊り部材17は柱状部12の高さ方向中間部分に取り付けられているから、この吊り部材17をピン18部分を中心に概略180度程度回転運動させた場合、吊り部材17の長円形の環状体の先端(U字形の連続端部17a)は上側フランジ13と下側フランジ14の各上下端部に容易に届く(すなわち、覆い被さる)ことができる。
【0014】
上記のようなクランプ装置Aは、図2に示された取り付け態様では、上側フランジ13と下側フランジ14の間に橋梁・鉄骨フランジ8を挟んで設置され、上方から固定用ボルト16をねじ込んでネジ送りすることにより、下側フランジ14との間で橋梁・鉄骨フランジ8に挟み付け固定される。このとき、固定用ボルト16の先端に取り付けられた座金部材20は、その爪部21が橋梁・鉄骨フランジ8に食い込んで挟み付けるので、クランプ装置Aの固定はより一層確実に行われる。この状態で、チェーン吊り具10をクランプ本体11の吊り部材17に引っ掛け係合させ、クランプ装置A及びチェーン吊り具10によって作業道具を吊り下げ支持することができる。
【0015】
また、図3に示された取り付け態様は、図2に示された取り付け態様に対してクランプ装置Aを天地逆向きにしたもので、上側フランジ13が橋梁・鉄骨フランジ8に対して下側に来る一方、下側フランジ14が橋梁・鉄骨フランジ8に対して上側に来る体勢となっており、固定用ボルト16も頭部が下にあって上方向にネジ送りされるようになっている。この体勢でクランプ装置Aは上側フランジ13と下側フランジ14の間に橋梁・鉄骨フランジ8を挟んで設置され、下方から固定用ボルト16をナット15にねじ込んでネジ送りすることにより、下側フランジ14との間で橋梁・鉄骨フランジ8に挟み付け固定される。この体勢であっても、クランプ本体11の吊り部材17は、ピン18部分を中心に回転運動することにより、U字形部分が下側に垂れ下がることができる。よって、この状態で、チェーン吊り具10をクランプ本体11の吊り部材17に引っ掛け係合させ、クランプ装置A及びチェーン吊り具10によって作業道具を吊り下げ支持することができる。
【0016】
以上から、本件発明のクランプ装置Aによれば、作業内容の都合、或いは橋梁・鉄骨フランジ8との関係でクランプ装置Aのボルトを下側からねじ込まなければならないという状況が生じた場合、どのような姿勢でも吊り下げ作業を実行することができ、汎用性に優れたクランプ装置を実現することができる。
【0017】
なお本実施の形態においては、クランプ装置Aのクランプ本体11を、板金加工された金属板を折り曲げ成形した例を示して説明しているが、これとは異なり、クランプ本体11は金属棒などの材料から鍛造加工によって製作されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本件発明のクランプ装置は、建築現場の橋梁・鉄骨フランジに対して、上からのねじ込みによっても、下からのねじ込みによっても、橋梁・鉄骨フランジに確実に取り付けられて、作業床吊り機能を果たすものであり有用である。
【符号の説明】
【0019】
1,11 クランプ本体
2,12 柱状部
3,13 上側フランジ
4,14 下側フランジ
8 橋梁・鉄骨フランジ(被取付部材)
10 チェーン吊り具
15 ナット
16 固定用ボルト
17 吊り部材
17a 連続端部(U字形部分)
17b 開放端部
18 ピン

図1
図2
図3
図4
図5