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  • 特許-開口補強部材及び開口補強方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】開口補強部材及び開口補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04C3/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021012293
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115628
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】502019645
【氏名又は名称】吉田鋼業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福本 義之
(72)【発明者】
【氏名】浅井 英克
(72)【発明者】
【氏名】安井 雅明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 清
(72)【発明者】
【氏名】藤田 佳広
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147901(JP,A)
【文献】特開平05-331964(JP,A)
【文献】特開2001-317159(JP,A)
【文献】特開2006-342604(JP,A)
【文献】特開2003-200292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00-3/46
E04C 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨梁のウェブに形成された貫通孔の周囲に接合されて前記貫通孔の周囲を補強する開口補強部材であって、
前記貫通孔の周縁部に固定される円筒形状の円筒部と、
前記円筒部の外周に接する複数の辺部を有し、前記円筒部と溶接で一体化される角形枠部とを備えたことを特徴とする開口補強部材。
【請求項2】
鉄骨梁のウェブに形成された貫通孔の周囲に接合されて前記貫通孔の周囲を補強する開口補強方法であって、
前記貫通孔の周縁部に固定される円筒形状の円筒部と、前記円筒部の外周に接する複数の辺部を有する角形枠部とを備える開口補強部材を、前記貫通孔の周囲に溶接で固定することを特徴とする開口補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨梁のウェブに形成された貫通孔を補強する開口補強部材及び開口補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼等の鉄骨梁において、配管や配線を通過させるため、ウェブ部に貫通孔を形成することがある。この場合、梁のせん断力の低下を抑制するために、補強部材が設けられる(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の梁貫通孔補強方法においては、リング状補強部材の傾斜面を梁材の貫通孔の内面に当接させ、梁材のウェブ部分に仮止固定されているリング状補強部材の傾斜面と貫通孔の内周面との間を溶接固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-174311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、リング状の補強部材を用いることにより、せん断強度を向上させることはできる。しかしながら、鉄骨梁の曲げ強度や軸力強度に対して十分に補強することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する補強部材は、鉄骨梁のウェブに形成された貫通孔の周囲に接合されて前記貫通孔の周囲を補強する開口補強部材であって、前記貫通孔の周縁部に固定される円筒形状の円筒部と、前記円筒部の外周に接する複数の辺部を有し、前記円筒部と溶接で一体化される角形枠部とを備える。
また、上記課題を解決する開口補強方法は、鉄骨梁のウェブに形成された貫通孔の周囲に接合されて前記貫通孔の周囲を補強する開口補強方法であって、前記貫通孔の周縁部に固定される円筒形状の円筒部と、前記円筒部の外周に接する複数の辺部を有する角形枠部とを備える開口補強部材を、前記貫通孔の周囲に溶接で固定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開口部を有する鉄骨梁のせん断強度、曲げ強度及び軸力強度を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の開口補強部材により開口部を補強した鉄骨梁の斜視図。
図2】実施形態の開口補強部材により開口部を補強した鉄骨梁の正面図。
図3】実施形態の開口補強部材により開口部を補強した鉄骨梁の側面断面図。
図4】第1変更例における開口補強部材により開口部を補強した鉄骨梁の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図3を用いて、開口補強部材及び開口補強方法を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、鉄骨梁10は、上下のフランジ部11及びこれらを接続するウェブ12を備えるH形鋼で構成される。このウェブ12には、配管や配線を通過させるために、円形の貫通孔15が形成されている。
【0009】
図2に示すように、本実施形態の開口補強部材20は、円筒部21と角形枠部25とを備える。円筒部21は、貫通孔15より数ミリ大きい円形のリング形状である。円筒部21に接合された角形枠部25は、鉄骨梁10の軸方向に平行となるように配置された正方形の枠形状であって、4個の構成部材26により構成される。各構成部材26は、所定の長さの角形鋼管を、線対称及び点対称となる周上で4等分して作製する。各構成部材26は、2個の直線の辺部26eと、これら辺部26eが90度で円弧により一体化された角部26cとを有する。
【0010】
そして、構成部材26の辺部26eの一端部を、円筒部21の外周に、溶接部W1で溶着させる。この結果、4個の構成部材26は、円筒部21の外周に4箇所で接する角丸正方形状(角形)の角形枠部25を形成する。本実施形態では、円筒部21の厚さt1と角形枠部25の厚さt2は同じである。
更に、図3に示すように、本実施形態では、円筒部21の高さH1と角形枠部25の高さH2は同じである。
【0011】
そして、図1に示すように、上述した構成の開口補強部材20を、円筒部21が貫通孔15の周縁部に位置するように配置して溶接する。
具体的には、図2に示すように、円筒部21と角形枠部25との間で溶接部W1に接する溶接部W2において、鉄骨梁10に溶着する。ここで、円筒部21の高さH1(及び角形枠部25の高さH2)の80%程度の立ち上げ溶接により溶接部W2を形成する。更に、円筒部21の外周であって溶接部W2同士を連結する溶接部分と、角形枠部25の外周縁部の溶接部分とにおいて、鉄骨梁10に溶着する。この結果、溶接部W2や円筒部21及び角形枠部25の外周縁部の溶接部分の溶接によって、開口補強部材20が鉄骨梁10の片面に固定される。
【0012】
(作用)
本実施形態の開口補強部材20は、円筒部21に角形枠部25が接する。これにより、角形枠部25を構成する直線辺部が、円筒部21を介して鉄骨梁10の軸方向及び梁せい方向に配置されるので、鉄骨梁10のせん断、曲げ及び軸力を補強する。
【0013】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、角形枠部25が、貫通孔15の周縁部の円筒部21に一体固定されるので、円筒部21が受ける力を角形枠部25が支持することにより、鉄骨梁10のせん断強度を向上させることができる。
【0014】
(2)本実施形態では、円筒部21と角形枠部25とを溶接で一体化した開口補強部材20を、鉄骨梁10のウェブ12の片面に固定する。これにより、鉄骨梁10の片側からの溶接によって開口補強部材20を固定できるので、施工が容易である。
【0015】
(3)本実施形態では、開口補強部材20の角形枠部25は、2個の直線の辺部26eと、これら辺部26eが90度で円弧により一体化された角部26cとを有する構成部材26で構成する。これにより、角形枠部25の辺部26eが、鉄骨梁10の軸方向及び梁せい方向に延在するので、鉄骨梁10の曲げ強度や軸力強度を向上させることができる。
【0016】
(4)本実施形態では、開口補強部材20の構成部材26として、角形鋼管を1/4に分割した部材を用いる。これにより、角形鋼管を用いて、開口補強部材20を構成することができる。また、構成部材26の辺部26eの長さを調整することにより、貫通孔15の周縁部に配置される円筒部21の大きさに対応させることができる。
(5)本実施形態では、開口補強部材20の角形枠部25は、角丸四角形状を有する。これにより、角形枠部25の角における応力集中を抑制することができる。
【0017】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、開口補強部材20の角形枠部25は、角形鋼管を4等分した構成部材26を用いて構成した。開口補強部材の角形枠部は、分割していない角形鋼管により構成してもよい。なお、角形枠部とは四角形の枠形状の部分を言う。
【0018】
この場合、図4に示す開口補強部材30は、鉄骨梁10の貫通孔15の周縁部に配置される円筒部31と、円筒部31の4箇所に直線部が接する角形枠部35とを備える。角形枠部35は、角形鋼管で構成され、溶接部W3における溶接で、円筒部31に一体固定される。この溶接部W3は、円筒部31と角形枠部35との間で、これらが接する部分の周囲に設けられた溶接部分である。そして、開口補強部材30は、円筒部31の外周縁部における溶接部分や角形枠部35の外周縁部における溶接部分で鉄骨梁10に溶接される。なお、開口補強部材30の円筒部31を鉄骨梁10に溶接した後、後から角形枠部35を鉄骨梁10及び円筒部31に溶接してもよい。また、開口補強部材30の円筒部31と角形枠部35との間に隙間が生じる場合には、この隙間の部分を、溶接で接合させてもよいし、接合部材を間に介在させた溶接で接合させてもよい。
【0019】
・上記実施形態においては、開口補強部材20を、溶接部W2や円筒部21の外周縁部における溶接部分や角形枠部25の外周縁部における溶接部分で溶接して鉄骨梁10に固定した。開口補強部材20を鉄骨梁10に固定するための溶接個所は、これらに限られない。例えば、円筒部21の外周縁部の溶接部分を省略したり、角形枠部25の外周縁部を離散的に溶接したり、角形枠部25の内周縁部を溶接したりしてもよい。
【0020】
・上記実施形態においては、円筒部21と角形枠部25とを一体固定した開口補強部材20を、貫通孔15の周縁部に円筒部21を配置させて、溶接により固定した。円筒部と角形枠部は、予め一体化させる代わりに、円筒部と角形枠部とを、鉄骨梁に別々に溶接して固定してもよい。具体的には、鉄骨梁の貫通孔の周縁部に円筒部を溶接する。そして、角形枠部を、円筒部の外周に接するように、鉄骨梁と円筒部に溶接して固定する。ここで、角形枠部を、円筒部と直接、溶接して固定してもよいし、鉄骨梁との溶接を介して円筒部と溶接固定してもよい。円筒部と角形枠部とが直接、溶接されていなくても、円筒部と角形枠部とを、鉄骨梁の溶接部を介して一体化させて開口補強部材を構成できればよい。
【0021】
・上記実施形態では、開口補強部材20は、鉄骨梁10の片面に設けた。開口補強部材20を、鉄骨梁10の両面に設けてもよい。
・上記実施形態では、開口補強部材20の円筒部21及び角形枠部25の構成部材26は、同じ厚さt1,t2で、同じ高さH1,H2を有する。円筒部と角形枠部とは、同じ厚さや同じ高さである場合に限られない。例えば、せん断力や曲げ力に応じて、角形枠部の厚さが円筒部の厚さよりも大きい開口補強部材としてもよいし、円筒部の高さが角形枠部の高さより高い開口補強部材としてもよい。
【0022】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記角形枠部は、角形鋼管の角を構成する2辺の辺部を含む複数の構成部材を備え、
前記構成部材において隣接配置される端部と前記円筒部とが溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の開口補強部材。
(b)前記角形枠部の角から前記円筒部までの距離が、前記角形枠部の辺部の半分以下であることを特徴とする請求項1又は(a)に記載の開口補強部材。
【0023】
(c)鉄骨梁のウェブに形成された貫通孔の周囲を補強する開口補強方法であって、前記貫通孔の周縁部に円筒形状の円筒部を溶接により固定し、前記円筒部の外周に接するように配置される複数の辺部を有する角形枠部を、溶接を介して前記円筒部に固定することにより、前記円筒部と前記角形枠部とを備えた開口補強部材を、前記貫通孔の周縁部に一体固定することを特徴とする開口補強方法。
【符号の説明】
【0024】
H1,H2…高さ、t1,t2…厚さ、W1,W2,W3…溶接部、10…鉄骨梁、11…フランジ部、12…ウェブ、15…貫通孔、20,30…開口補強部材、21,31…円筒部、25,35…角形枠部、26…構成部材、26c…角部、26e…辺部。
図1
図2
図3
図4