(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】C4~C10オキソカルボン酸および不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸の塩を含む粉末組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20241003BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/368
A61K8/02
A61Q19/00
A61Q5/12
A61Q5/02
(21)【出願番号】P 2021553765
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2020058364
(87)【国際公開番号】W WO2020193632
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521404680
【氏名又は名称】コスファテック・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ズィーツェン,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ブラウンス,フランク
(72)【発明者】
【氏名】デホー,クリス
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02065025(EP,A2)
【文献】特開2010-270083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0022562(US,A1)
【文献】特表2017-520555(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0139527(KR,A)
【文献】特開2002-326918(JP,A)
【文献】特開2003-026528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0229291(US,A1)
【文献】国際公開第2018/064978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)レブリン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩と、
(b)p-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩とを含む組成物であって、(a)は前記組成物の総質量に対して20~95重量%の量で存在し、かつ(b)は前記組成物の総質量に対して5~50重量%の量で存在する組成物において、粉末状で存在する組成物。
【請求項2】
前記組成物がレブリン酸およびp-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩ならびに/またはアルカリ土類金属塩を含
む噴霧乾燥
混合物である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が粉末状
のレブリン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、粉末状
のp-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩と
を含む粉末混合
物であり、
前記粉末混合物における
レブリン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩とp-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩との粉末の粒径は
同じである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒径
は0.5
~100μmの範囲にあり、静的光散乱によって測定したD90値
は30~50μmの範囲にある、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属はナトリウムまたはカリウ
ムである、請求項1~
4のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルカリ金属はナトリウムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分(a)および(b)からなる、請求項1~
6のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項
2に記載の組成物を製造する方法であって、
レブリン酸および
p-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩ならびに/またはアルカリ土類金属塩を含む液体混合物を、対応する酸を溶媒に添加し、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物をさらに添加
することによって調製し、前記
液体混合物を噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成する
、前記方法。
【請求項9】
請求項
3に記載の組成物を製造する方法であって、粉末状の前記
レブリン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩と、粉末状の前記
p-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩とを混合し、前記
粉末状のレブリン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩及び前記粉末状のp-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の粒径は
同じである
、前記方法。
【請求項10】
噴霧乾燥に用いる前記液体混合物は、水
と、アルコール
と、アルカリ金属塩
とを含む溶液であり、前記アルカリ金
属はナトリウムである、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールがエタノールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
レブリン酸およびp-メトキシ安息香酸を、最初に水および/またはアルコー
ルに溶解および/または分散し、続いて、アルカリ金属水酸化
物を添加して、噴霧乾燥するための液体混合物を得る、請求項
8、10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールがエタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記液体混合物は、以下の組成物:
p-メトキシ安息香酸:5~15重量%、レブリン酸:15~40重量%、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩:5~15重量%を含む、請求項
8、
10、
11または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~
7のうちいずれか一項に記載の組成物、または請求項
8~
15のうちいずれか一項に記載の方法から得られる組成物の、化粧用組成物、皮膚科用組成物、またはパーソナルケア組成物における微生物増殖を抑制するための使用。
【請求項17】
前記
レブリン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩はレブリン酸ナトリウムであり、かつ前記
p-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩はp-メトキシ安息香酸ナトリウムである、請求項
16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レブリン酸などのC4~C10オキソカルボン酸の塩と、p-メトキシ安息香酸などの不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸の塩とを含む粉末組成物、ならびに化粧品分野における、特に化粧用および関連組成物ならびに化粧品中で微生物増殖を抑制する組成物としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の工業生産においては、材料費、保管場所、輸送費を削減し、批判を受けた材料を置き換え、労働安全を向上させるために、継続的な原料改善が必要となる。
【0003】
病原菌、酵母菌、および真菌株などの微生物の増殖を制御する抗菌物質は、製品の腐敗を防ぐため、化粧用配合物に不可欠の原料である。現地の規制法に記載されている、一般に使用される防腐剤の他に、いわゆる「Multifunctionals(多機能剤)」、すなわち、抗菌性を含むいくつかの好ましい効果を組み合わせた原材料に対する関心もますます高まっている。この種の原材料で重要なカテゴリーの一つは、何十年も前から化粧品に使用されてきた中強度の有機酸である。ここ数年、特に4-オキソ吉草酸(レブリン酸)およびp-メトキシ安息香酸(アニス酸)が、化粧品産業において大きな関心を集めている。レブリン酸(CAS番号123-76-2)は主に芳香作用と整肌作用があることから用いられている。レブリン酸にはこの他に、グラム陽性菌とグラム陰性菌(表1)に対する抗菌効率が高いという利点がある。レブリン酸は通常、マスキング効果があるために用いられるp-メトキシ安息香酸(CAS番号100-09-4)と組み合わせられる。レブリン酸と比べると、p-メトキシ安息香酸は抗菌効果が一段と強く、酵母菌やカビに対しても有効性が高い。これは表1に記載のデータから示される(米国特許出願公開第2003/0147930号明細書)(特許文献1)。
【0004】
【0005】
しかしながら、抗菌効果に優れているだけでは十分でなく、使いやすさも同様に重要である。これに関しては、いずれの有機酸にも欠点がある。レブリン酸は室温で結晶性固体であり、使用前に融解させる必要があるため、余分な時間とエネルギー資源が必要となる。p-メトキシ安息香酸は難水溶性である(20℃で0.2g/L)(p-メトキシ安息香酸のECHA Registration Dossier(欧州化学物質庁の登録資料一式):https://echa.europa.eu/de/registration-dossier/-/registered-dossier/24279/4/9)(非特許文献1)。
【0006】
パーソナルケア配合物の開発者による、原料の取り扱いや適用の利便性に対する要望が高いことから、こうした側面は特に重要である。この点で著しい欠点を有する原材料は、代替品が利用可能であれば使用しないか、あるいは予混合物の形態で用いて、溶解性の問題を回避する。
【0007】
欧州特許出願公開第1709955号明細書(特許文献2)は、グリセリンなどのポリオールと水を含む、部分的に中和された予混合物をベースにした水性用途におけるレブリン酸およびp-メトキシ安息香酸の使用に関する。本手法により、ポリオールを含まない溶液よりも高い濃度で両方の酸を水に溶解させることが可能となり、幅広い抗菌性を有する使いやすい混合物を作成できる。しかしながら、本混合物は酸の濃度が低いままで、多量の水とポリオールを追加的に含有している。水とポリオールは溶解性の問題を改善し、凝固を防ぐが、それ自体に抗菌活性はない。つまり、液体混合物の75%が水およびグリセリンで構成されていることから、有効な抗菌効果を得るには、適用濃度が約4%の液体混合物が必要となる。これは主に以下の4つの点で不利である。
- 混合物の一部である多量の水とグリセリンを輸送する運送費と環境負荷の増加
- 追加的な収納スペースの占有
- 追加的な包装材の必要性
- 天然グリセリンは、度々批判されている植物源であるパーム油に由来
【0008】
欧州では、輸送費はトラック1台で1km当たり0.5~1.5ユーロである。ドイツ連邦環境省のデータ(German Federal Environmental Agency,TREMOD calculation,2017)(非特許文献2)に基づく貨物運送の排出データを表2に示す。
【0009】
【0010】
活性成分を水とグリセリンで希釈するための追加の運送費と環境負荷は膨大である。レブリン酸とp-メトキシ安息香酸は、特にいずれも再生可能な資源から製造でき、合成防腐剤に代わる環境に優しい代替品とされていることを考えると、現在の技術水準よりも環境に配慮した代替品が望ましいことが明らかとなる。
【0011】
欧州特許出願公開第1709955号明細書(特許文献2)の教示に従って、欧州特許出願公開第2065025号明細書(特許文献3)の著者らは、当時、Dermosoft 1388(登録商標)という名称の市販品として入手可能な、グリセリンと水に混合したレブリン酸ナトリウムおよびアニス酸ナトリウムをベースとした液体組成物を防腐剤として使用している。
【0012】
したがって、本発明の目的は、特に、活性成分としてレブリン酸およびp-メトキシ安息香酸、または関連する酸を含む組成物であって、上述の不利な点を回避する組成物を提供することである。特に、該組成物は、保管、輸送、および加工に便利な形態で、特に化粧用または関連組成物および化粧品の成分として存在するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第2003/0147930号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1709955号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2065025号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】欧州化学物質庁の登録資料一式):https://echa.europa.eu/de/registration-dossier/-/registered-dossier/24279/4/9
【文献】German Federal Environmental Agency,TREMOD calculation,2017
【発明の概要】
【0015】
前述の目的は、(a)レブリン酸などのC4~C10オキソカルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩と、(b)p-メトキシ安息香酸などの不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩とを含む組成物であって、(a)が組成物の総質量に対して20~95重量%の量で存在し、かつ(b)が組成物の総質量に対して5~50重量%の量で存在する組成物において、粉末状で存在する組成物によって達成される。
【0016】
本発明の一態様に従って、組成物は、レブリン酸などのC4~C10オキソカルボン酸およびp-メトキシ安息香酸などの不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む液体混合物を噴霧乾燥することによって得られる。
【0017】
本発明の別の態様に従って、組成物は、粉末状のレブリン酸などのC4~C10オキソカルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩と、粉末状のp-メトキシ安息香酸などの不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸のアルカリ塩および/またはアルカリ土類金属塩とを組み合わせ、続いてこの2成分を混合して混合粉末を得ることによって得られ、2成分の粉末の粒径は基本的に同じである。
【0018】
別の態様に従って、本発明は、本明細書に定める組成物の製造方法に関し、レブリン酸などのC4~C10オキソカルボン酸およびp-メトキシ安息香酸などの不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む液体混合物は、対応する酸を溶媒に添加し、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物をさらに添加して液体混合物を形成し、該混合物を噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成することによって調製する。
【0019】
これにより、驚いたことに、現在の技術水準の重要な利点、すなわち高い溶解性、使いやすさ、幅広い抗菌効果を保持しながら、同時に水/ポリオール溶媒の必要性を完全に排除できることが判明した。これは、適切なプレ溶液の噴霧乾燥、または単一原料の粉砕および混合によって得られる両酸の塩の固体混合物を利用することで達成される。得られた微粉末は水溶性が高く、使いやすい混合物で、幅広い抗菌効果を示すだけでなく、水やポリオールを含まないため、現在の技術水準が大幅に向上する。さらに、グリセリンを含まないため、パーム油の問題も回避できる。
【0020】
好ましい実施形態を、以下の説明および添付の特許請求の範囲に開示する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書に開示する組成物の成分および方法のステップで構成され得る。冠詞「a」の使用は、原料の数を「1つ」に限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】最終pH値が5.5のO/Wエマルションで本発明の組成物を用いた保存効力試験の結果を示す。
【
図2】最終pH値が5.5のシャンプーで本発明の組成物を用いた保存効力試験の結果を示す。
【
図4】レブリン酸および4-メトキシ安息香酸のナトリウム塩の混合物の特定の粒度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の組成物の成分(a)は、C4~C10オキソカルボン酸、好ましくはC4~C8オキソカルボン酸、より好ましくはC4~C6オキソカルボン酸、および最も好ましくはレブリン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である。本発明の組成物の成分(b)は、不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸、好ましくはヒドロキシル、メトキシ、またはアクリル基(-OH、OCH3、-CHCHCOOH)で置換され得る、より好ましくはヒドロキシルまたはメトキシで置換され得るC4~C8芳香族酸、最も好ましくは4-メトキシ安息香酸(パラ-もしくはp-メトキシ安息香酸またはp-アニス酸とも称する)のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である。塩の調製に使用する前述の酸の具体例として、レブリン酸、安息香酸、ケイ酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、および4-メトキシ安息香酸がある。金属塩は、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択されるアルカリ金属塩であり、最も好ましくはナトリウムである。
【0024】
好ましい活性成分としてレブリン酸塩およびp-メトキシ安息香酸塩を含む、本発明による固体混合物の抗菌効率を、欧州薬局方(8.8.0)に記載の標準手順に従った保存効力試験によって、従来技術に従った対応する液体混合物の抗菌効率と比較した。結果を
図1および2に示す。液体混合物(灰色線)と粉末(黒線)のいずれも、レブリン酸塩とp-メトキシ安息香酸塩を同じ比率で含有している。微生物はそれぞれ別々に試験し、2、7、14、および28日目に計数した。試験には、レブリン酸ナトリウム、p-メトキシ安息香酸ナトリウム、水、およびグリセリンからなる4.0%の液体混合物を使用し、レブリン酸ナトリウムおよびp-メトキシ安息香酸ナトリウムからなる1.0%の乾燥粉末と比較した。微生物試験の標準偏差を考慮すると、両方の抗菌混合物が同じ有効性を示している。すなわち、溶媒を省くと、製品1g当たりの抗菌効率は、液体混合物と比べて400%向上している。
【0025】
具体的には、
図1は、最終pH値が5.5のO/Wエマルションでの保存効力試験の結果を示す。灰色線は、現在の技術水準のとおりに、水およびグリセリンに溶解したレブリン酸ナトリウムおよびp-メトキシ安息香酸ナトリウムの4.0%の液体混合物を示す。黒線は、レブリン酸ナトリウムおよびp-メトキシ安息香酸ナトリウムの1.0%の新規粉末を表す。値は、細菌については1,000,000の接種濃度、酵母菌およびカビについては500,000の接種濃度に標準化した。
【0026】
さらに、
図2は、最終pH値が5.5のシャンプーでの保存効力試験の結果を示す。灰色線は、現在の技術水準のとおりに、水およびグリセリンに溶解したレブリン酸ナトリウムおよびp-メトキシ安息香酸ナトリウムの4.0%の液体混合物を示す。黒線は、レブリン酸ナトリウムおよびp-メトキシ安息香酸ナトリウムの1.0%の新規粉末を表す。値は、細菌については1,000,000の接種濃度、酵母菌およびカビについては500,000の接種濃度に標準化した。
【0027】
注目すべきことに、本発明による粉末混合物は、水においても、エマルション、シャンプー、またはシャワージェルなど最も一般的なパーソナルケア配合物においても溶解性に優れている。例えば、p-メトキシ安息香酸ナトリウムは、pH値を低下させると溶解して抗菌活性酸に移行し得るが、この化合物の少なくとも1つの多形結晶変態は、(そのような条件下で)低い溶解性を示し、高濃度または低温で沈殿しやすい(欧州特許出願公開第1709955号明細書参照)(特許文献2)。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の塩混合物を使用すると、この挙動が生じないことを発見した。理論に縛られることなく、これは、両酸とその対応する塩の物理特性が異なることに起因する可能性がある。さらに、レブリン酸は水溶性が良好で融点が低い(33~35℃)のに対し、p-メトキシ安息香酸は水溶性が低く融点が高い(183℃)。レブリン酸のナトリウム塩の方が吸湿性がはるかに高いため、p-メトキシ安息香酸塩のナトリウム塩の方が製造が容易である。レブリン酸塩の存在により、p-メトキシ安息香酸の低溶解性結晶変態の形成を回避できるようである。これは、本発明に関連する別の利点である。
【0028】
一般に本発明の組成物は、レブリン酸などのC4~C10オキソカルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を、組成物の総質量に対して20~95重量%の量で含む。好ましい量は40~90重量%、または、より好ましくは60~80重量%である。p-メトキシ安息香酸などの不飽和または芳香族C6~C10カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩は、組成物の総質量に対して5~80重量%の量で存在する。好ましい量は10~60重量%、または、より好ましくは20~40重量%である。
【0029】
本発明による組成物の2つの製造方法を開示する。
【0030】
方法は、本発明の好ましい酸混合物、すなわちレブリン酸とパラメトキシ安息香酸の塩に関して記載している。しかしながら、以下の開示は、本発明の組成物の成分(a)および(b)のより一般的な定義にも適用されることを理解されたい。
【0031】
本発明の一実施形態では、レブリン酸およびp-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩ならびに/またはアルカリ土類金属塩、例えば、特にナトリウム塩またはカリウム塩、特にナトリウム塩を別々に製造し、その後、粉末の形態で2つの成分を混合して組み合わせる。次の2つの問題が生じる可能性がある。1)粒径が異なるために意図しない分離が起こるブラジルナッツ効果、2)両塩の吸湿性の違い。本発明に従って、粒径が均一になるように混合物を粉砕することで、ブラジルナッツ効果を回避できる。当然ながら当業者は、粒子が特定の粒度分布を示すことを理解するであろう。しかしながら、該分布は十分に狭いため上記の問題は発生しない。これは、目視検査、または静的光散乱(レーザー回折)など粒度分布を測定する周知の方法によって制御できる。例えば、ISO13322「Particle Size Analysis - Laser Diffraction Methods」に従って、3P Instruments GmbH&Co.KG(ドイツ、オーデルツハウゼン)から入手可能な0.02~2,600μmの範囲の粒子径および形状測定に適した装置、Bettersizer 2600を分析装置として使用して粒度分布を測定できる。レブリン酸ナトリウムのような吸湿性の高い物質の粉砕は、乾燥空気、窒素、アルゴンなどの水分を含まないガスの雰囲気下で混合容器を操作することで実現できる。ガスの水分含有量は100ppm未満であるものとする。水分の取り込みが促進されるため、高温を避ける必要がある。非吸湿性のp-メトキシ安息香酸塩の存在は、混合物の吸湿性を低下させるのにさらに役立つ。混合物の組成物は、レブリン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を、組成物の総質量に対して20~95重量%の量で含む。好ましい量は40~90重量%、または、より好ましくは60~80重量%である。p-メトキシ安息香酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩は、組成物の総質量に対して5~80重量%の量で存在する。好ましい量は10~60重量%、または、より好ましくは20~40重量%である。Bettersizer 2600およびDIN ISO 13320を用いて測定すると、概して約0.5~約100μmの粒径範囲が達成できる。ごく一部の粒子は、示した範囲より小さい、または大きい粒径を有することがある。通常、そのような粒子の割合は約1%以下である。
【0032】
より具体的には、好ましい粒度分布は次のD値で特徴付けられる。D10:4~10μm、D50:10~25μm、D90:30~50μm。D値は、提示した値以下の粒径を有する粒子の重量%を意味する。これは、上記に開示する方法に基づいて決定する。
【0033】
本発明の別の実施形態では、組成物は噴霧乾燥によって製造する。第1のステップでは、適切な溶媒、例えば水および/またはエタノールなどのアルコールに両酸を添加する。p-メトキシ安息香酸は、水(20℃で0.3mg/mL)中よりもエタノール(20℃で50mg/mL)中ではるかに良好な溶解性を示すため、代替の溶媒は水とアルコールの混合物となる。好ましい混合物は、70~90重量%の水と10~30重量%のアルコールからなる水溶液である。第2のステップでは、両酸の塩が形成されるまで、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基を添加してpH値を上昇させる。試験から明らかになったこととして、水を溶媒として使用する場合、酸の濃度が高いと沈殿しやすくなるため、酸の総濃度を35重量%未満とする必要がある。適切な組成の溶液は、30重量%の酸、9.75重量%の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、および60.25重量%の水からなる。次いで、この混合物を噴霧乾燥する。このような噴霧乾燥は当技術分野で既知である。
【0034】
図3は、本発明の噴霧乾燥工程の実施形態を示す。レブリン酸およびp-メトキシ安息香酸を、pH値を上げて水に溶解し、液体用容器8に添加する。混合物をポンプでディスペンサー4に送り、ヒーター6と組み合わせた送風機1から送った温風で乾燥させる。乾燥した粒子は、送風機1を装備したサイクロン分離装置3中で分離する。噴霧乾燥ステップでは、ステップを実行するのに必要な特定の熱量は、上述のように2つの酸の塩の形成中に発生する熱によってもたらし得る。
【0035】
本発明の製造方法における本実施形態の重要な利点は、まず、すべての粒子が両酸の最終混合物から構成されているため、ブラジルナッツ効果が起こり得ないことである。さらに、レブリン酸の塩の存在により、低溶解性のp-メトキシ安息香酸結晶の形成が阻止される。
【0036】
本発明に従って、パーソナルケア配合物におけるレブリン酸およびp-メトキシ安息香酸の取り扱いと適用が大幅に改善した。運送費、輸送に伴う環境負荷、包装材、保管場所を大幅に削減することができ、同時にパーム油由来の原材料を回避できる。また、抗菌効率や利用の便宜が減じることは見込まれない。
【0037】
以下の実施例に開示する実施形態によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の一実施形態によるパーソナルケア配合物における適用例を示す。固体の抗菌性混合物は、レブリン酸ナトリウムとp-メトキシ安息香酸ナトリウムの組み合わせで、比率は4:1~2:1、好ましくは3:1である。ふわふわした白色の固体混合物は噴霧乾燥によって生成し、約0.5~約100μmの粒度分布を示す。
【0039】
具体的には、粒度分布は、DIN法ISO 13320と、0.02~2,600μm(湿式分散)および0.1~2,600μm(高い検出器密度(92個)で広い散乱角範囲(0.016~165度)にわたる乾式分散)の粒度測定に適した3P Instruments社製のBettersizer 2600とを用いて測定した。本実施例において、上記の装置を用いて測定した特定の粒度分布を
図4に表す。
【実施例1】
【0040】
老化防止美容液
実施例1の老化防止美容液の成分を以下に示す。
【0041】
【0042】
この調合物は室温で調製できる。A相の全成分を合わせ、すべてが完全に溶解するまで撹拌する。Cosphaderm(登録商標)Sodium LAASをA相に添加し、必要に応じてpHを5.5±0.05に調整する。
【実施例2】
【0043】
コンディショニングシャンプー
実施例2のシャンプーの成分を以下に示す。
【0044】
【0045】
A相を合わせ、すべてが溶解するまで撹拌する。B相を合わせ、2つの相を別々に50℃まで加熱する。穏やかに撹拌しながらB相にA相を添加する。気泡が発生しないようにする。pHを5.0±0.05に調整する。
【実施例3】
【0046】
ミセラーウォーター
実施例3のミセラーウォーターの成分を以下に示す。
【0047】
【0048】
A相の全成分を、穏やかに撹拌しながら室温で混合する。B相をA相に添加する。pHを5.5±0.05に調整する。
【実施例4】
【0049】
日中用保湿クリーム
実施例4の日中用保湿クリームの成分を以下に示す。
【0050】
【0051】
A相:全成分を混ぜ合わせる。
B相:Cosphaderm(登録商標)X 34およびAristoflex AVCを、激しく撹拌しながらA相にゆっくり添加する。完全に溶解するまで、約15分間、500rpmで撹拌を続ける。次いで、80℃に加熱する。
C相:全成分を混ぜ合わせ、80℃に加熱する。
C相をA+B相に添加し、約10分間、激しく撹拌してホモジナイズする。
激しく撹拌しながら40℃未満でD相を添加する。必要に応じてpHを調整する。
【実施例5】
【0052】
敏感肌用ハンドソープ
実施例5の敏感肌用ハンドソープの成分を以下に示す。
【0053】
【0054】
調合物は室温で調製できる。A相を合わせ、すべてが完全に溶解するまで撹拌する。B相を混合してA相に添加する。撹拌しながらpHを5.5±0.05に調整する。
【実施例6】
【0055】
スージング2-in-1メイク落とし
実施例6のスージング2-in-1メイク落としの成分を以下に示す。
【0056】
【0057】
A相の全成分をゆっくり撹拌しながら室温で混合する。B相はすべてが完全に溶解するまで混合し、B相をA相に添加する。A+B相のpHを5.5±0.05に調整する。C相を合わせ、撹拌せずにA+B相に添加する。
【符号の説明】
【0058】
1 送風機
2 乾燥品
3 サイクロン分離装置
4 ディスペンサー
5 乾燥室
6 ヒーター
7 ポンプ
8 液体用容器