(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回転体の回転機構
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20241003BHJP
F16C 19/50 20060101ALI20241003BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K5/173 Z
F16C19/50
F16C19/16
(21)【出願番号】P 2024081971
(22)【出願日】2024-05-20
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523365550
【氏名又は名称】株式会社ゲットクリーンエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100100918
【氏名又は名称】大橋 公治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 豊道
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-086694(JP,A)
【文献】実開昭62-098460(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0204904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C19/16
F16C19/50
H02K5/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を備える回転体の、容器内での回転を支持する回転機構であって、
前記回転体を間にして、前記回転軸の二箇所に固定された円盤状部材と、
前記容器の内壁に配置されて、前記円盤状部材の外周部分と係合する係合部材と、
を備え、
前記円盤状部材は、前記外周部分に近づく程、前記円盤状部材の厚さが薄くなるように互いに接近する
第一及び第二の傾斜面を有し、
前記係合部材は、
互いに接触する二つの球体が、前記回転軸の延伸方向と平行する方向に配列された球体対と、
複数の前記球体対を収容するリング状の収容空間を備え、内周側に、前記円盤状部材の前記傾斜面を前記収容空間に挿入するための挿入口を備える環状枠体と、
を具備し、
前記挿入口から前記収容空間に挿入された前記円盤状部材の前記
第一の傾斜面
が、前記球体対を構成する二つの球体の
一方の球体に接触し
、前記円盤状部材の前記第二の傾斜面が、前記二つの球体の他方の球体に接触している、回転機構。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機構であって、
前記環状枠体の前記収容空間内に、前記球体対が三組以上収容されている、回転機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターや発電機等の回転体を効率的に回転させる回転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、
図10(a)に示すように、回転軸12を中心に回転する回転子11と、この回転子11を回転可能に収容する円筒状容器30とを備えるモーターが記載されている。
【0003】
回転軸12には、
図10(c)に示すように、円盤状部品20が、回転子11の上側及び下側に装着されており、一方、容器30の内部には、
図10(b)に示すように、各円盤状部品20と係合する係合部40が配置されている。
【0004】
図11に示すように、円盤状部品20は、その周縁が、三角形の断面を持つ環状体21に取り囲まれている。この環状体21は、三角形状を成す断面の一つの頂点が突出し、他の二つの頂点が円盤状部品20の周縁部に接続するように円盤状部品20と一体化されている。
【0005】
一方、容器30に配置された係合部40には、環状体21の突出した頂点を受け入れる凹部41が形成されている。
そのため、回転軸12は、環状体21の頂点が係合部40の凹部41に接触した状態で回転する。
【0006】
このモーターは、上側がS極、下側がN極の半円筒形状の永久磁石11(a)と、上側がN極、下側がS極の半円筒形状の永久磁石11(b)とを組み合わせて円筒形状の回転子11が構成されている。また、回転子11と対向する容器30の内面位置には複数のコイル50が配置されている。そして、コイル50への供給電流を制御することにより回転子11が回転する。
【0007】
このように、容器内で回転子が回転する機器は、数多く存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の回転機構では、回転軸12に固定された円盤状部品20と、容器30に固定された係合部40との接触面積を小さくすることで、円盤状部品20と係合部40との滑り摩擦力を小さくし、回転軸12の回転効率を高めている。
【0010】
しかし、この円盤状部品20と係合部40との接触は、滑り接触であるため、摩擦係数を小さくすることに限界があり、回転軸12の回転効率を充分に高めることが難しい。
本発明は、回転体の回転効率を更に高めることができる回転機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転軸を備える回転体の、容器内での回転を支持する回転機構であって、回転体を間にして、前記回転軸の二箇所に固定された円盤状部材と、前記容器の内壁に配置されて、前記円盤状部材の外周部分と係合する係合部材と、を備えている。前記円盤状部材は、前記外周部分に近づく程、前記円盤状部材の厚さが薄くなるように互いに接近する第一及び第二の傾斜面を有している。また、前記係合部材は、互いに接触する二つの球体が、前記回転軸の延伸方向と平行する方向に配列された球体対と、複数の前記球体対を収容するリング状の収容空間を備える環状枠体と、を具備している。この環状枠体は、内周側に、前記円盤状部材の前記傾斜面を前記収容空間に挿入するための挿入口を有している。そして、前記挿入口から前記収容空間に挿入された前記円盤状部材の前記第一の傾斜面が、前記球体対を構成する二つの球体の一方の球体に接触し、前記円盤状部材の前記第二の傾斜面が、前記二つの球体の他方の球体に接触している。
【0012】
この回転機構では、回転軸が回転すると、回転軸に固定された円盤状部材が回転し、この円盤状部材の傾斜面に接触する係合部材の球体対が、係合部材の収容空間内を、滑ることなく、転動する。この傾斜面と球体対との転がり接触は、滑り接触に比べて摩擦係数が小さいため、回転体の回転効率が向上する。
【0013】
また、本発明の回転機構では、前記環状枠体の前記収容空間内に、前記球体対が三組以上収容されている。
そうすることで、回転軸は、容器に対して安定して回転する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の回転機構では、回転軸に固定された回転体の効率的な回転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例における円盤状部材及び係合部材の断面図。
【
図2】係合部材の環状枠体を形成する構成部品を示す図。
【
図3】環状枠体の下側部材に、球体対の一つ目の球体を配置した状態を示す断面図。
【
図4】
図3の状態に、回転軸に固定された円盤状部材を重ねた状態を示す断面図。
【
図5】
図4の状態に、球体対の二つ目の球体を重ねた状態を示す断面図。
【
図10】特許文献1に記載されたモーターを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の回転機構の実施形態について説明する。
【0017】
本発明の回転機構における円盤状部材60は、特許文献1の回転機構の円盤状部品20(
図10C)と同様に、回転子11が固定された回転軸12の回転子11より上側の箇所及び回転子11より下側の箇所の二箇所に固定されている。
また、本発明の回転機構における係合部材70は、特許文献1の回転機構の係合部40(
図10b)と同様に、回転子11を収容する容器30内部の、円盤状部材60と係合する二箇所に配置されている。
【0018】
円盤状部材60は、
図1に示すように、外周に近づく程、円盤状部材60の厚さが薄くなるように互いに接近する、リング状の傾斜面61、62を備えている。このリング状の傾斜面61,62の部分を、この明細書では、円盤状部材60の「外周近傍部分」と称する。
【0019】
一方、係合部材70は、円盤状部材60の外周近傍部分を形成する傾斜面61,62に接する球体71(1)、71(2)の対と、球体71(1)、71(2)の収容空間を形成するリング状の環状枠体73とを有している。球体71(1)、71(2)は、環状枠体73内で回転軸12の延伸方向と平行する方向に配列され、互いに接触している。
また、リング状の環状枠体73は、内周側に、円盤状部材60の外周近傍部分が挿入される挿入口を有し、この挿入口から環状枠体73の収容空間に挿入された円盤状部材60の外周近傍部分は、その先端が球体71(1)、71(2)に接触している。
【0020】
回転軸12に固定された円盤状部材60と、係合部材70とを
図1の状態に組合わせることが出来るように、係合部材70の環状枠体73は、
図2に示すように、下方枠体73(1)と上方枠体73(2)とで構成されている。
図8は、
図2の上方枠体73(2)を取り外したときの平面図を示している。この図では、球体71(1)が、球体71(2)の下に隠れている。
【0021】
図8では、球体71(1)、球体71(2)が、下方枠体73(1)のリング上に等間隔に四組存在する場合を示している。
この球体71(1)、球体71(2)の対は、円盤状部材60が固定された回転軸12の回転を安定化するために、環状枠体73のリング内に三組以上設ける必要がある。
【0022】
図3は、下方枠体73(1)のリング上に球体対の内の球体71(1)を配置した状態の断面図を示している。
図6は、その平面図を示している。
【0023】
次に、
図4に示すように、
図3の状態の球体71(1)に対して、円盤状部材60の外周近傍部分の傾斜面62が接するように、円盤状部材60を固定した回転軸12を配置する。
図7は、その平面図を示している。
なお、このとき、上方枠体73(2)は、予め、その中央孔に回転軸12を挿通し、回転軸12の上方に退避させておく。
【0024】
次に、
図5に示すように、
図4の状態の円盤状部材60の傾斜面61に接するように、球体71(2)を配置する。
図8は、その平面図を示している。
【0025】
次に、
図2に示すように、回転軸12の上方に退避させていた上方枠体73(2)を下方枠体73(1)に結合する。
図9は、その平面図を示している。
【0026】
上方枠体73(2)及び下方枠体73(1)から成る環状枠体73に収容された球体71(1)、71(2)の対は、互いに接触すると共に、円盤状部材60の外周近傍部分の先端に接触する。また、球体71(1)は、更に、下方枠体73(1)の底面に接触し、球体71(2)は、更に、上方枠体73(2)の天井面に接触する。
【0027】
回転軸12が回転し、円盤状部材60が回転すると、円盤状部材60の外周近傍部分の先端に接触する球体71(1)及び球体71(2)は、リング状の環状枠体73内を、滑ることなく、転動する。
このとき、円盤状部材60の外周近傍部分と球体71(1)及び球体71(2)との接触は、転がり接触であり、また、球体71(1)と球体71(2)との相互接触や、球体71(1)と下方枠体73(1)の底面との接触、及び、球体71(2)と上方枠体73(2)の天井面との接触も転がり接触が生じている。
そのため、摩擦抵抗が、滑り接触に比べて極めて小さく、回転軸の効率的な回転が可能になる。
【0028】
なお、球体71(1)、71(2)の配列方向に平行な環状枠体73の内面と、球体71(1)、71(2)との間には滑り接触が発生するが、球と平面との接触面積は小さいため、大きな摩擦抵抗は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の回転機構は、発電機やモーター等、多くの回転体に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
11 回転子
11(a) 永久磁石
11(b) 永久磁石
12 回転軸
20 円盤状部品
21 環状体
30 円筒状容器
40 係合部
41 凹部
50 コイル
60 円盤状部材
61 傾斜面(外周近傍部分)
62 傾斜面(外周近傍部分)
70 係合部材
71(1) 球体
71(2) 球体
73 環状枠体
73(1) 下方枠体
73(2) 上方枠体
【要約】
【課題】 回転体の回転効率が高い回転機構を提供する。
【解決手段】 回転軸12に固定された円盤状部材60と、円盤状部材の外周部分と係合する係合部材70と、を備え、円盤状部材は、外周部分に近づく程、円盤状部材の厚さが薄くなるように互いに接近する傾斜面61,62を有している。係合部材は、互いに接触する二つの球体71(1)、71(2)が、回転軸と平行する方向に配列された球体対と、複数の球体対を収容するリング状の収容空間を備える環状枠体73と、を具備する。環状枠体は、内周側に、円盤状部材の傾斜面を収容空間に挿入するための挿入口を有する。収容空間に挿入された円盤状部材の傾斜面の一部が、二つの球体のそれぞれに接触している。球体対71(1)、71(2)は、傾斜面61,62及び環状枠体73の上下面に対して、滑ることなく転動するため、摩擦抵抗が小さい。
【選択図】
図1