(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】契約書面審査支援システム、契約書面審査支援方法、及び契約書面審査支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/18
(21)【出願番号】P 2019207582
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517299951
【氏名又は名称】GVA TECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-064055(JP,A)
【文献】特開2010-231743(JP,A)
【文献】特開平11-250152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
契約書面の審査支援を行うためのシステムであって、
複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持するためのID保持部と、
契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持する確認事項保持部と、
契約書面の入力を受け付ける契約書面入力受付部と、
一の利用者従業者IDを有する第一のユーザから前記契約類型の選択を受け付ける確認事項選択受付部と、
選択を受け付けた前記契約類型に対応する前記確認事項について、前記第一のユーザから第一の審査結果の入力を受け付ける第一審査結果入力受付部と、
入力された前記第一の審査結果を、利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有する第二のユーザに宛てて通知する審査結果通知部と、
前記第二のユーザから前記選択を受け付けた契約類型に対応する前記確認事項についての第二の審査結果の入力を受け付ける第二審査結果入力受付部と、
前記第二の審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持する審査結果保持部と、
を有する契約書面審査支援システム。
【請求項2】
審査結果保持部は、審査結果を契約書面に加え、当該契約書面に記録された取引相手又は契約種別を表す契約関連情報と関連付けて保持する契約関連情報保持手段を有する請求項1に記載に契約書面審査支援システム。
【請求項3】
確認事項保持部は、確認事項の全部又は一部の変更依頼を受け付けて保持する確認事項変更受付手段をさらに有する請求項
1又は2に記載の契約書面審査支援システム。
【請求項4】
契約書面入力受付部にて受け付けた契約書面のうち、確認事項選択受付部にて受け付けた確認事項の所定の内容に対応する領域を強調表示するための強調表示部をさらに有する請求項
1から3のいずれか一に記載の契約書面審査支援システム。
【請求項5】
複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持するためのID保持部と、契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持する確認事項保持部とを有するコンピュータを用いた契約書面審査支援システムの動作方法であって、
契約書面の入力を受け付ける契約書面入力受付ステップと、
一の利用者従業者IDを有する第一のユーザかから前記契約類型の選択を受け付ける確認事項選択受付ステップと、
選択を受け付けた前記契約類型に対応する前記確認事項について、前記第一のユーザから第一の審査結果の入力を受け付ける第一審査結果入力受付ステップと、
入力された前記第一の審査結果を、利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有する第二のユーザに宛てて通知する審査結果通知ステップと、
前記第二のユーザから前記選択を受け付けた契約類型に対応する前記確認事項についての第二の審査結果の入力を受け付ける第二審査結果入力受付ステップと、
前記第二の審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持するための審査結果格納ステップと、
を有する契約書面審査支援システムの動作方法。
【請求項6】
複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持するためのID保持部と、契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持する確認事項保持部とを有する契約書面審査支援システムをコンピュータにて実行可能にするためのプログラムであって、
契約書面の入力を受け付ける契約書面入力受付ステップと、
一の利用者従業者IDを有する第一のユーザから前記契約類型の選択を受け付ける確認事項選択受付ステップと、
選択を受け付けた前記契約類型に対応する前記確認事項について、前記第一のユーザから第一の審査結果の入力を受け付ける第一審査結果入力受付ステップと、
入力された前記第一の審査結果を、利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有する第二のユーザに宛てて通知する審査結果通知ステップと、
前記第二のユーザから前記選択を受け付けた契約類型に対応する前記確認事項についての第二の審査結果の入力を受け付ける第二審査結果入力受付ステップと、
前記第二の審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持するための審査結果格納ステップと、
を
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、契約書面の審査を支援するためのシステム、同システムを動作させるための方法及びプログラムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
企業が経済活動を行ううえで、契約書の取り交わしは重要な意味を持つ。そこで各企業の事業担当者は、取引相手から契約書を受領すると、その内容が自社にとり有利か不利かを吟味して、必要に応じて加除修正の対応をとるかどうかの検討が必要になる場合が少なくない。しかしながら事業担当者は、契約書審査や法務といった専門分野に関する知識が十分でなく、またそれらの業務に対応した経験に乏しいことも少なく、社内の法務担当者や社外の弁護士等の専門家に契約審査業務の助力を得ることが少なくない。
ただこのようなプロセスは契約締結のスピードを損なうことにつながりかねず、かねてから事業担当者から、契約審査業務の効率化を技術的に解決することに対する要望が少なくなかった。
【0003】
そこで従来から、契約審査において必要な知識や経験をもつ専門家に対し、不明点の質問や対応依頼を電子的手段でスピーディーに行ったりする技術が開示されていたり、社内で疑問点が生じそうな事項ないし過去に疑問が呈され解消された事項等の情報を記録して契約審査時に閲覧可能にしたりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-123154
【文献】https://www.holmescloud.com/products/knowledge/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている先行技術は、専門家に対する導線を技術的に確保したにすぎず、専門家の回答や対応を待たざるを得ないため、待ち時間がかかったり、回答を得るための補足の情報提供等が五月雨式に発生する可能性があったりするなど、業務効率化に資するとはいいがたかった。
【0006】
また、非特許文献1に記載されている先行技術は、社内の知見を予め記録しておき、契約審査の際に確認できるようにしているものの、結局のところ専門的知識・経験に乏しい事業担当者がそれらの記録を見ながら契約審査をしなければならないという点においては、従来からの課題を解決できているとはいいがたかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決すべく、本発明は、複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持するためのID保持部と、契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持する確認事項保持部と、契約書面の入力を受け付ける契約書面入力受付部と、一の利用者従業者IDを有するユーザの管理する端末から確認事項保持部にて保持される確認事項の選択を受け付ける確認事項選択受付部と、選択を受け付けた確認事項と関連付けて契約書面の審査結果の入力を受け付ける第一審査結果入力受付部と、入力された審査結果のうち少なくとも確認事項を確認したか否かに関する情報である確認完了情報を利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有するユーザに宛てて通知する審査結果通知部と、当該他の利用者従業者IDを有するユーザから契約書面の審査結果の入力を受け付ける第二審査結果入力受付部と、第二審査結果入力受付部にて受け付けた審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持する審査結果保持部と、を有する契約書面審査支援システムなどを提案する。
【発明の効果】
【0008】
主に以上のような構成をとる本発明によって、社内で事業に精通した一次審査者と契約審査に精通した二次審査者との間で、必要最低限の連絡を行うことで効率的な契約審査業務を遂行することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の契約書面審査支援システムを用いてユーザ端末の表示画面の一例を示す図
【
図2】実施形態1の契約書面審査支援システムの機能ブロックの一例を示す図
【
図3】実施形態1の契約書面審査支援システムにて保持され契約審査を行う際に選択のうえ表示出力される確認事項の一例を示す図
【
図4】実施形態1の契約書面審査支援システムにて保持され契約審査を行う際に選択のうえ表示出力される確認事項の別の一例を示す図
【
図5】実施形態1の契約書面審査支援システムを用いて契約審査を行う際の表示画面の一例を示す図であって確認事項選択の一例を示す図
【
図6】実施形態1の契約書面審査支援システムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図
【
図7】実施形態1の契約書面審査支援システムにおける処理の流れの一例を示す図
【
図8】実施形態2の契約書面審査支援システムの機能ブロックの一例を示す図
【
図9】実施形態2の契約書面審査支援システムにおける処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず
図1を示す。
図1は本発明の概要を示す図で、文書編集ソフトを起動して「開発業務委託基本契約書」の審査を行う場合の一例を示した図である。画面を左右に分割する枠線の相対的左側には該当する契約書面のデータが表示されており、枠線の相対的右側には当該契約書面審査のために選択された確認事項の一部が表示されている。
【0011】
より具体的には、確認事項の一部が表示されている領域に「(請負・権利移転)開発業務委託契約書」と表示されているように、ここでは請負としての法的性質を有し、開発結果たる成果物に関する知的財産権その他の権利については、発注者に移転することを念頭に置いた確認事項が表示されている。
【0012】
そして同領域には、表示されている確認事項が6パターンあるうちの1つであることを示す「1/6通」という表記もあり、確認事項は法的性質や取引の実態に即して複数パターンの中から選択することが可能となっている。
【0013】
なお、
図1に表示されている画面は、本発明を用いて契約審査を行う利用者従業者のうち、一次審査を行う者が利用する端末における表示画面を想定している。ただし、同図において示される画面は二次審査を行うものが利用する端末における表示画面に表示される内容としても不適切ではなく、具体的な表示態様は本発明の技術的特徴を同じくする範囲内において適宜変更可能である。
【0014】
以下、本発明の各実施形態について図面とともに説明する。まず実施形態と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。まず、実施形態1は、主に請求項1、2、3、5、6などに対応する。実施形態2は、主に請求項4などに対応する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、技術常識に従って特許請求の範囲の各請求項に記載の技術的思想を有し、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
【0015】
<<実施形態1>>
<概要>
図2は、本実施形態の契約書面審査支援システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「契約書面審査支援システム」0200は、「ID保持部」0201と、「確認事項保持部」0202と、「契約書面入力受付部」0203と、「確認事項選択受付部」0204と、「第一審査結果入力受付部」0205と、「審査結果通知部」0206と、「第二審査結果入力受付部」0207と、「審査結果保持部」0208と、を有する。
【0016】
なお、以下で詳しく説明する契約書面審査支援システムは、その機能の一又は複数の機能を複数の装置にて実現するようにも構成され得るものであって、その機能ブロックは、いずれもハードウェア又はソフトウェアとして実現され得る。コンピュータを用いるものを例にすれば、CPUやメインメモリ、GPU、TPU、画像メモリ、バス、二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ)、キーボードや操作ボタン、タッチパネル、タッチパネルをタッチするための電子ペンなどの各種入力デバイス、マイク、ディスプレイその他各種出力デバイス、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらのハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他のアプリケーションプログラムなどが挙げられる。
【0017】
そしてメインメモリ上に展開したプログラムに従った演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力されメモリやハードウェア上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、前記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。ここで、上記プログラムは、モジュール化された複数のプログラムとして実現されてもよいし、2以上のプログラムを組み合わせて一のプログラムとして実現されても良い。
【0018】
<機能的構成>
「ID保持部」0201は、複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持するように構成されている。利用者従業者IDは従業員や役員、当該利用者にて業務委託のもと従事している者など、利用者において契約書面を取り扱う可能性のある者に付与されることが考えられ、個々の利用者従業者IDは随時追加・削除が可能となっている。
【0019】
本発明においては、一の利用者IDと複数の利用者従業者IDとが紐づけられていることが特徴の一つである。すなわち、利用者従業者IDをもつユーザは、特定の利用者IDに紐づけられる契約書面の審査についてのみ本発明を利用することが可能なように構成されている。当該構成を採用することにより、契約書面の審査という、対外的な秘密性を担保することが可能になる。
【0020】
なお、利用者従業者IDを付与するにあたっては、個々の利用者従業者IDの内容として、各種の権限を設定することも考えられる。具体的には、審査支援対象として用いることができる契約書面の類型を限定する権限や、後記確認事項の編集権限など、本発明の利用権限を調整する観点からの権限設定を行うことが考えられる。当該構成を採用することにより、多くの利用者従業者間で、その用途や必要性に応じた好適な環境下で本発明を利用することが可能になる。
【0021】
「確認事項保持部」0202は、契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持するように構成されている。ここでいう確認事項とは、契約書面の審査を行う際の要チェック事項をリスト化したチェックリストの形式であったり、利用者の立場に拠った契約書面のひな型の形式であったり、過去取引において利用者が特定の相手方と締結した締結済契約書面の形式であったりすることが考えられる。より具体的には、契約書面を構成する各条項に含まれる要検討事項(例えば、「秘密情報の定義」「損害賠償」「成果物の知的財産権の帰属」「裁判管轄」などの契約交渉上論点になる事項)単位で確認すべき事項を一又は複数まとめた形式にて保持される。確認事項がこれらの形式で保持されることにより、利用者従業者は、当該契約書面のチェックの拠り所を参考にしながら契約書面審査を行うことができるようになる。
【0022】
なお、確認事項は上記チェックリストや契約書面等の情報として保持されることが求められるが、必ずしもそれ以外の形式での保持を許容しない趣旨ではない。具体的には、利用者が当該契約類型の契約書面を審査する際に必要な業界知識や法知識、特定の取引相手の属性情報など、契約類型に直接結びつくとは言い難いが契約審査を行うにあたっては把握しておくべき情報である周辺情報もここでいう確認事項に含まれうる。また、利用者内で複数の利用者従業者間で行われた、過去の特定の契約類型の契約書審査におけるやり取りの記録である社内ナレッジ情報も確認事項に含まれうる。これらの情報をも確認事項として保持することを可能にすることにより、契約審査の局面でより実効性のある業務環境を提供することが可能になる。
【0023】
ここで
図3を示す。同図は本実施形態の契約書面審査支援システムにて保持され、契約審査を行う際に選択のうえ表示出力される確認事項の一例を示す図である。同図では
図1を用いて説明した契約書面審査と同様のケースを想定しているところ、枠線の相対的右側の領域に「知的財産権等の取扱い」という項目のあと、「解説」という領域が形成され、その下部に「確認ポイント」「リスク」などのタイトルのもと種々のコメントが記入されている。これはつまり、契約書面を構成する各条項に含まれる要検討事項として知的財産権等の取り扱いに関する事項が記録されている様子を示しており、当該記録されているコメントの内容を表示出力することにより、利用者従業者が審査を行う際に、知的財産権等の取り扱いについての条文をチェックする際に、どのような観点から、どのような着地点を見据えて契約審査を行えばよいかを判断するための参照情報とすることができる。
【0024】
またここで
図4を示す。同図もまた
図3と同様に本実施形態の契約書面審査支援システムにて保持され、契約審査を行う際に選択のうえ表示出力される確認事項の別の一例を示す図である。同図枠線の相対的右側の領域には、「第6条(検収)」「第9条(成果物の検査)」「第10条(納入及び検査)」「第11条(納品物の検収)」などの項目が表示され、各項目の下部にはそれぞれ、当該項目と紐づけて日付と会社名が表記されている。これらの表記は、本発明の利用者が過去取引で特定の相手方と締結した締結済契約書面のうち検査・検収を内容とする条文内容を確認事項として表示している様子が示されている。同図には表示領域の関係で明記されていないものの、各条文の右側に表記されている矢印のマークをクリックすることにより、当該領域に格納されていた過去取引における当該項目の詳細な条文が表示されるように構成されてもよい。当該構成を採用することで、利用者従業者は、過去取引における検査・検収に関する条文の内容を確認しつつ、そのまま視線を横に移動するだけで、今回の契約書における検査・検収に関する条項の審査を行うことができる。
【0025】
ここで、保持対象となる確認事項は契約類型単位で保持されることを特徴とする。具体的に言えば、「秘密保持契約書」「売買契約」「共同研究契約」「ライセンス契約」などのように契約種別によって類型化される場合や、「売主」「買主」「ライセンサー」「ライセンシー」などのように契約当事者の立場ごとによって類型化される場合、さらには「取引金額100万円以上」「相手方が上場企業」「海外案件」などのように取引条件ないし取引環境に応じて類型化される場合などが考えられる。そしてこれらの類型化は、それぞれ単独の条件が独立して保持の条件される場合のみならず、それぞれの条件が複合的に類型化されて保持される場合があってもよい。すなわち、「契約類型単位で保持」という場合には、「売買契約ごとに保持」という場合はもちろん「相手方が上場企業であり、自社の立場がライセンサーであるライセンス契約」「知的財産権の帰属が争点となる契約」などのように種々の要素が含まれる場合を一の契約類型単位とすることをも含む。
【0026】
ここで述べたような確認事項は、保持される際に当該確認事項が備える一又は複数の契約類型と紐づけられる上記のような特徴を、それぞれ識別子として備えたうえで保持されることが望ましい。当該構成を採用することにより、後記確認事項選択受付部における選択処理を容易にすることができる。
【0027】
さらに、ここまで述べてきた確認事項は、それぞれが独立して保持される場合のみならず、相互に関連付けて保持されていてもよい。例えば、それぞれ一又は複数の識別子を共通して有する別個の確認事項をそれぞれ関連付けて保持するように構成してもよい。当該構成を採用することにより、利用者従業者の選択意思が及ばない確認事項についても、その必要に応じて当該利用者従業者に提示することを容易にすることができる。
【0028】
また、確認事項保持部において確認事項の全部又は一部の変更依頼を受け付けて保持する確認事項変更受付手段を有するように構成されてもよい。例えば、利用者従業者(特に契約審査業務に精通した利用者従業者等)が所定の確認事項を用いて契約審査を行った際に、当該契約審査を通じて確認事項の内容に違和感をもつような場合が考えられる。取引相手や業界、法令改正その他の外部環境や、自社事業戦略その他の内部環境の変化により既に保持されている確認事項をアップデートする必要性は常に潜在的に存在する。そこで例えば、一の契約審査を行いその審査結果を保持する際に、当該審査結果を踏まえた確認事項変更を受け付ける処理を可能にすることで、確認事項がより契約審査の実態に即した、すなわち使用に耐えうる情報であり続けることが可能になる。
【0029】
「契約書面入力受付部」0203は、契約書面の入力を受け付けるように構成されている。具体的には、Word(登録商標)などの文書編集プログラムにより閲覧可能な形式の契約書面データ又はpdfなどの文書閲覧形式データの契約書面をアップロードすることによることが考えられる。
【0030】
なおここでは、契約書面の入力を受け付けるタイミングで、入力処理を行う際に利用者IDないし利用者従業者IDの認証処理が行われることが望ましい。具体的には、ログイン処理を経ることによって、どの利用者ないしどの利用者従業者が当該契約書面の入力処理を行ったかを識別可能にすることが望ましい。当該構成を採用することにより、後記確認事項の選択を受け付ける際に、あらかじめ認証された利用者IDと紐づいた確認事項の選択を好適に受け付けることが可能になる。
【0031】
入力を受け付ける契約書面は、新たな取引に関するものである場合もあれば、すでに契約審査が継続している取引に関する契約書面である場合もある。すなわち、すでに社内で本発明を利用するなどして契約審査が行われたうえで、当該審査結果を踏まえ取引相手と再交渉しているような場合において、当該再交渉結果を踏まえた契約審査を再度行うような場合である。当該ケースのような場合においては、契約書面入力を受け付ける際に「再チェック」などのようにすでにいちど契約審査が行われている旨を当該事情の詳細等も提示可能な形式にて提供される情報である再交渉情報の入力もあわせて受け付けるようにすることが望ましい。再交渉情報は再交渉の事実を知らせる方法、再交渉対象となっている事項の強調表示、再交渉となった背景事情のテキスト表示その他の適宜の方法により審査を行うユーザに対し提示されることが考えられ、当該構成を採用することにより、一次審査者、二次審査者に対し、ともに焦点を絞った効率的な契約審査をより効率的に行う環境を提供することができる。
【0032】
なお、本発明においては、各機能のうち一部を、上記法契約書面を閲覧、作成又は編集するために用いられる文書編集プログラムのアドインモジュールとして提供することが可能である。この場合には、当該アドインモジュールを起動するタイミングその他所定のタイミングで、すでに起動されている文書編集プログラムにより展開されている契約書面データを読取る方法により当該契約書面の入力を受け付けるように構成されてもよい。
【0033】
「確認事項選択受付部」0204は、一の利用者従業者IDを有するユーザの管理する端末から確認事項保持部にて保持される確認事項の選択を受け付けるように構成されている。具体的な選択受付の態様としては、すでに説明したように、保持されている確認事項に紐づけられた識別子を検索処理することにより当該検索結果からの選択を受け付ける方法が考えられる。そのほかにも例えば、契約書面のタイトルに記載されている表示を自然言語処理その他の手段によって読取り、当該読取結果を踏まえて該当すると思われる確認事項を一又は複数提示し、当該提示内容から選択を受け付ける方法などがあってもよい。当該構成を採用することにより、専門知識の欠如その他の理由により識別子の検索が不得手な利用者従業者であっても、好適な確認事項の選択を行うことが可能になる。
【0034】
なお、ここで選択可能な確認事項は必ずしも一である必要はなく、複数の確認事項を選択することも可能である。具体的には、すでに説明したように、選択した一又は複数の確認事項のみならず、それらの確認事項と識別子その他の要素で関連付けて保持されている他の確認事項を、当該選択された確認事項とともに提供可能とすることも可能である。
【0035】
ここで
図5を示す。同図は本実施形態の契約書面審査支援システムを用いて契約審査を行う際の表示画面の一例を示す図であって、確認事項選択の一例を示す図である。同図の表示は
図1を用いて説明した契約書面の審査を行う場合を想定した表示例であるところ、枠線右側の領域に「契約書類型」「立場」「検索条件1」「検索条件2」「対象契約書」という項目表記が表示されており、それらの各項目に紐づいて「システム開発契約」、「受託側」、「アプリ」、「1,000万~1億」「ライセンス型」が選択されている様子が示されている。
【0036】
同図においてはつまり、確認事項として、「受注金額が1000万円から1億円までのアプリに関するシステム開発に関する契約書の審査を行う場合であって、当該業務を受託者として受け、成果物についてはライセンス提供するようなケースを想定しての確認事項」の選択を受け付けていることになる。このように、あらかじめ設定された選択肢を選択して確認事項を選択する場合もあれば、上述した識別子を用いた検索処理などを通じて確認事項を選択するような場合もあってよい。
【0037】
「第一審査結果入力受付部」0205は、選択を受け付けた確認事項と関連付けて契約書面の審査結果の入力を受け付けるように構成されている。ここでいう審査結果の入力とは、利用者従業者から契約書面に記載される種々の事項について、利用者として受諾できるか否かの判断結果の入力であったり、記載事項修正の要否・可否及びそれら修正の具体的内容であったりすることが考えられ、具体的な入力態様は特に限定されない。
【0038】
ここで審査結果の入力受付は、選択を受け付けた確認事項と関連付けて行われることが求められる。具体的には選択された確認事項の体裁に依存することにはなるが、例えば確認事項がチェックリストとして提供されている場合には、当該チェックリストの各項目へのチェック処理あるいはチェックができない(つまり応諾できない)場合に考えられる対応策の入力処理などにより審査結果が入力されることになると考えられる。確認事項が契約書面のひな型や過去契約の形式にて提供される場合には、当該確認事項を構成する各検討事項と審査対象となる契約書面のうち検討対象となる事項との差分の有無及び当該差分の評価が入力されることになる。
【0039】
ここで、審査結果の入力態様としては、できる限り自由なテキスト入力の態様を基本とするのではなく、チェックリストへのチェック処理あるいは、既存のひな型や過去契約書の所定の記載内容との差分の有無の入力のように、機械的に画一的な処理ができる態様によることが望ましい。これは、本発明の第一審査結果入力受付部を通じて審査結果を入力する利用者従業者が、契約審査業務に精通しているとは言い難い営業担当者等であることが想定されるためである。
【0040】
このような利用者従業者についてはまず、チェックリストを利用してチェックができる項目については自身でチェック処理を行ったり、過去の取引実績や自社のスタンスを踏まえれれば容易に判断が可能な事項については自身で対応の要否及び対応態様については入力処理を行ったりすることが、契約審査の迅速な一次処理の観点からは好ましい。別の観点からすると、法的観点からの契約審査ではなく、ビジネスの個別性の観点からは法務担当者等の管理部門の者より営業担当者の方が詳しいことも多く、その観点からも利用者としては、営業担当者が一次処理を行うことのメリットを享受することができる。
【0041】
いずれにしても当該構成を採用することにより、個別取引に精通した利用者従業者に迅速に契約書面の一次審査を行わせ、別途の観点からの審査が必要な利用者従業者に対し、効率的な二次審査のための環境を提供することが可能になる。
【0042】
ちなみに、ここで利用者従業者による審査結果の入力内容を、当該審査した契約類型と関連付けて新たな確認事項としたり、既存の確認事項に付加したりすることも可能である。その際には、具体的な契約内容(取引相手や取引時期、取引条件等)や対応した利用者従業者IDについて識別子と関連付けておくことも可能とすることが考えられ、このように具体的な取引における契約審査の経緯を確認事項として保持することを可能にすることにより、当該契約審査の事実そのものがナレッジとして利用者内部に蓄積され、以後の審査業務への活用が容易になる。
【0043】
「審査結果通知部」0206は、入力された審査結果のうち少なくとも確認事項を確認したか否かに関する情報である確認完了情報を利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有するユーザ に宛てて通知するように構成されている。ここで「利用者IDを同じくする他の利用者従業者ID」は、契約書面の二次審査者と位置付けられる。
【0044】
ここでいう「少なくとも確認事項を確認したか否か」とは、すでに利用者従業者間で共有されている確認事項を用いた契約審査の結果を提供することで、二次審査を行う利用者従業者にとって、自身が当該契約審査において確認すべき事項を明確に認識可能とすることを意味している。具体的には、確認事項がチェックリストの形式で選択されている場合には、当該チェックリストを用いたチェック処理の有無及び当該チェック処理の状況等が通知される。当該構成により、二次チェックを行う利用者従業者に対し、自身がどの程度の工数をかけ、どの点に注力して当該契約審査を行えばよいかの把握を容易にさせることができる。
【0045】
なお、もちろん審査結果通知部では、上記確認事項を確認したか否かに加え、種々の情報をも通知してもよい。具体的には、一次審査者である利用者従業者によって特に二次審査者に対して検討を要するとして入力された事項である要検討事項(テキストデータである場合もあれば、識別子その他所定のチェック可能なリストから選択処理されたデータである場合もありうる)が一又は複数入力されている場合もありうる。これらの場合は、すでに登録されている各種の識別子と紐づけるなどして、抽象的な疑問ではなく、個別の取引における契約審査における、過去事例との異同等具体的な疑問として二次審査者に要検討事項を伝えることが可能になる。いずれにしても、当該構成を採用することにより、二次審査は漫然と契約書審査の依頼を受け付けるのではなく、具体的な取引と紐づいた実効性のある契約審査を、その必要な範囲に限定して受け付けることができるようになる。
【0046】
「第二審査結果入力受付部」0207は、審査結果通知部にて通知先となった他の利用者従業者IDを有するユーザから契約書面の審査結果の入力を受け付けるように構成されている。ここでいう「他の利用者従業者IDを有するユーザ」とは、上述してきた二次審査者たる利用者従業者である。すなわち、第二審査結果入力受付部における処理に先立っては、当該入力受付対象となる利用者従業者IDを識別する処理が必要となり、より具体的にはログイン認証等の処理が行われることになる。
【0047】
ここで、第二審査結果入力受付部では、特定の確認事項を確認したか否かに関する情報である確認完了情報の通知を前提とした処理を行うため、改めて確認事項の選択を受け付ける処理は必須ではない。一次審査を行う過程で用いられた確認事項が適切に選択されたデータであれば、敢えて改めて確認事項を選択する必要はないからである。しかし、そもそも一次審査にて確認事項の選択に誤りがある場合、二次審査を行う際に改めて確認事項の選択を行って当該確認事項に従い契約審査を行う必要が生じる。この場合には、第二審査結果入力受付部における処理に先立ち、確認事項選択受付部にて改めて確認事項の選択を受け付けるように構成されてもよい。
【0048】
なお、ここでいう審査結果の入力とは、第一審査結果入力受付部にて受け付けた審査結果の入力態様と同じ態様である場合もあれば、異なる入力態様であってもよい。すなわち、利用者従業者から契約書面に記載される種々の事項について、利用者として受諾できるか否かの判断結果の入力であったり、記載事項修正の要否・可否及びそれら修正の具体的内容であったりすることが考えられる。
【0049】
ここでもし利用者として受諾できるか否かの破断結果の入力結果が、当該契約書面を用いた契約締結自体に影響する内容である場合には、当該契約締結の諾否を示す情報である諾否情報を紐づけて出力する諾否情報出力部を設け、当該諾否情報を所定の端末に宛てて出力してもよい。当該構成を採用することにより、本発明を契約審査のための機能に加え、契約締結、あるいは契約管理のための機能を備える発明として位置づけることができ、より利用者の契約業務を効率化することが可能になる。
【0050】
なお、ここでの入力結果が契約締結を否とする内容である場合には、否である理由を表す情報である契約不可情報を入力したうえで、当該契約書面の一次審査者たるユーザに向けて当該契約不可情報を出力することが考えられる。一次審査者としては、当該契約不可情報の内容を踏まえ、取引相手方と更なる契約締結のための交渉を行うことになる。
なお、上述した再交渉情報は、当該時点で二次審査者たるユーザによって入力されてもよい。二次審査者としては再交渉が必須と判断しているのであって、この場合再交渉情報と契約不可情報とはその内容の全部又は一部が一致ないし重複する場合もありうる。
【0051】
「審査結果保持部」0208は、第二審査結果入力受付部にて受け付けた審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持するように構成されている。ここで出力される審査結果は、すでに述べた諾否情報のほか、新たに生成される確認事項、既存の確認事項の加除修正、その他の態様であることが考えられる。そしてこれらの審査結果が特定の取引と紐づく契約書面と関連付けて保持されることにより、当該契約書面審査の経緯ないし審査結果が自社内部にナレッジとして蓄積されることとなる。
【0052】
なおこの時、すでに述べた各種情報に紐づいている識別子や第二審査結果入力受付部における審査結果に特有の情報(例えば第二次審査者たる利用者従業者IDや当該二次審査を行った日付)を更なる識別子として紐づけて保管することにより、以後の契約書審査業務の際に当該保持された審査結果を参照しながらより実効性のある審査を容易にすることができる。より具体的にいうと、審査結果保持部にて、契約書面に加え当該契約書面に記録された取引相手又は契約種別を表す契約関連情報と関連付けて保持する契約関連情報保持手段を備えることにより、知見が十分でない利用者従業者であっても、各種取引を開始する際に過去の取引履歴ないし取引実績を踏まえ契約審査業務に着手する過程を円滑にすることができる。
【0053】
なおここで保持された審査結果は、その全部又は一部を適宜の態様により出力することが可能である。具体的には、画面表示出力、pdf出力、紙出力その他利用者の選択に応じて出力することを可能にすることで、審査結果をどの利用者従業者であっても確認し、契約審査業務の効率化に活用することができる。
【0054】
<具体的な構成>
ここで
図6を示す。同図は本実施形態の契約書面審査支援システムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図である。各装置はいずれも、それぞれ各種演算処理を実行するための「CPU」0601と、「記憶装置(記憶媒体)」0602と、「メインメモリ」0603と、「入力インターフェース」0604、「出力インターフェース」0605、「ネットワークインターフェース」0606と、を備え、入出力インターフェースを介して、例えば「タッチパネル」0607や「ディスプレイ」0608などの外部周辺装置と情報の送受信を行う。また、ネットワークインターフェースを介して「利用者従業者端末」0609などの外部装置と情報の送受信を行う。このネットワークインターフェースの具体的な態様は有線、無線を問わず、また、通信方法も直接、間接を問わない。よって特定の外部装置ないし同装置の利用者と紐づけられた第三者の管理するサーバとの間で情報の送受信を行ういわゆるクラウドコンピューティングの形式を採用することも可能である。
【0055】
記憶装置には以下で説明するような各種プログラムが格納されており、CPUはこれら各種プログラムをメインメモリのワーク領域内に読み出して展開、実行する。なお、これらの構成は、「システムバス」0699などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う(以上の構成の基本的な構成は、以下で説明する他の装置のいずれについても同様である。
【0056】
(ID保持部の具体的な構成)
ID保持部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「ID保持プログラム」0610をメインメモリに読み出して実行し、コンピュータの記憶領域に利用者IDを特定の利用者に関する情報と紐づけて保持するとともに、当該利用者IDの情報をさらに一又は複数の利用者従業者IDと紐づけて所定単位ごとに定められたアドレスに格納する。確認事項は、本発明の作用であるか否かを問わず、内部あるいは外部の端末から書込まれあるいは作成され、変更されうる。利用者従業者IDは、内部あるいは外部の端末から書込まれあるいは作成され、変更される。
【0057】
(確認事項保持部の具体的な構成)
確認事項保持部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、特にコンピュータの記憶領域に確認事項を構成するテキストデータ、画像データその他所定形式のデータを格納することにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「確認事項保持プログラム」0620をメインメモリに読み出して実行し、確認事項のデータを所定単位ごとに定められたアドレスに格納する。確認事項は、本発明の作用であるか否かを問わず、内部あるいは外部の端末から書込まれあるいは作成され、変更されうる。
【0058】
(契約書面入力受付部の具体的な構成)
契約書面入力受付部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、外部端末から契約書面の入力を受け付けるように構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「契約書面入力受付プログラム」0630をメインメモリに読み出して実行し、テキストデータを所定単位ごとに定められたアドレスに格納する。条項データは、内部あるいは外部の端末から書込まれあるいは作成され、変更される。
【0059】
(確認事項選択受付部の具体的な構成)
確認事項選択受付部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「確認事項選択受付プログラム」0640をメインメモリに読み出して実行し、保持されている確認事項の選択要求を受け付ける処理を行うとともに、当該受け付けた確認事項を読み出す処理を行う。
【0060】
(第一審査結果入力受付部の具体的な構成)
第一審査結果入力受付部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「第一審査結果入力受付プログラム」0650をメインメモリに読み出して実行し、確認事項選択受付プログラムの実行により受け付けた確認事項と関連付けて契約書面の審査結果の入力を受け付けるとともに、当該入力結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0061】
(審査結果通知部の具体的な構成)
審査結果通知部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「審査結果通知プログラム」0660をメインメモリに読み出して実行し、第一審査結果入力受付プログラムの実行を通じて入力された審査結果のうち少なくとも確認事項を確認したか否かに関する情報である確認完了情報を利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有するユーザに宛てて通知する処理を行う。具体的な通知処理の態様については適宜設定変更を受け付けることが可能である。
【0062】
(第二審査結果入力受付部の具体的な構成)
第二審査結果入力受付部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「第二審査結果入力受付プログラム」0670をメインメモリに読み出して実行し、審査結果通知プログラムの実行による通知先である利用者従業者IDを有するユーザから契約書面の審査結果の入力を受け付ける処理を行う。
【0063】
(審査結果保持部の具体的な構成)
審査結果保持部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、特にコンピュータの記憶領域に審査結果を格納することにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「審査結果保持プログラム」0680をメインメモリに読み出して実行し、第二審査結果入力受付プログラムの実行を通じて受け付けた審査結果を、契約書面と関連付けてメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0064】
なお、審査結果保持部においては、審査結果保持プログラムを実行する際に「契約関連情報保持サブプログラム」をメインメモリに読みだして実行することにより、審査結果を、契約書面に加え当該契約書面に記録された取引相手又は契約種別を表す契約関連情報と関連付けて保持しメインメモリの所定のアドレスに格納する処理を行うことも可能である。
【0065】
<処理の流れ>
図7は、本実施形態の契約書面審査支援システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0701では、複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持する(ID保持ステップ)とともに、ステップS0702では、契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持する(確認事項保持ステップ)。なお、ID保持ステップ及び確認事項保持ステップは、いちど実行されると、以後どのステップにおいても実行され、各種のIDや確認事項の加除変更を受け付けることができる。
次にステップS0703では、契約書面の入力を受け付け(契約書面入力受付ステップ)、ステップS0704では、一の利用者従業者IDを有するユーザの管理する端末から確認事項保持部にて保持される確認事項の選択を受け付ける(確認事項選択受付ステップ)。その後ステップS0705にて、確認事項選択受付ステップにて選択を受け付けた確認事項と関連付けて契約書面の審査結果の入力を受け付ける(第一審査結果入力受付ステップ)。
さらにステップS0706では、入力された審査結果のうち少なくとも確認事項を確認したか否かに関する情報である確認完了情報を利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有するユーザに宛てて通知し(審査結果通知ステップ)、その後ステップS0707にて当該他の利用者従業者IDを有するユーザから契約書面の審査結果の入力を受け付ける(第二審査結果入力受付ステップ)。
【0066】
なお、ここで審査結果として再度の審査を行う必要があると判断される場合には、ステップS0708の処理を行わず、契約不可情報を付してステップS0705以降の処理を再度行うよう促す処理を行うこともでき、その場合にはステップS0705の処理に戻る。
【0067】
そしてステップS0708では、第二審査結果入力受付ステップにて入力を受け付けた審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持する(審査結果保持ステップ)。
【0068】
<効果>
以上の構成を採用する契約書面審査支援システムを利用することにより、社内で事業に精通した一次審査者と契約審査に精通した二次審査者との間で、必要最低限の連絡を行うことで効率的な契約審査業務を遂行することが容易になる。
【0069】
<<実施形態2>>
<概要>
本実施形態の契約書面審査支援システムは、基本的には実施形態1に記載の契約書面審査支援システムの技術的特徴と同様であるが、契約書面入力受付部にて受け付けた契約書面のうち、確認事項選択受付部にて受け付けた確認事項の所定の内容に対応する領域を強調表示するための強調表示部をさらに有する点を更なる技術的特徴として備えている。以下では、実施形態1で言及した点とは異なる上記特徴について詳しく説明をする。
【0070】
<機能的構成>
図8は、本実施形態の契約書面審査支援システムを一のコンピュータ(装置)で実現した場合の機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「契約書面審査支援システム」0800は、「ID保持部」0801と、「確認事項保持部」0802と、「契約書面入力受付部」0803と、「確認事項選択受付部」0804と、「第一審査結果入力受付部」0805と、「審査結果通知部」0806と、「第二審査結果入力受付部」0807と、「審査結果保持部」0808と、「強調表示部」0809と、を有する。基本的な構成は、実施形態1の
図2を用いて説明した契約書面審査支援システムと共通するため、以下では相違点である「強調表示部」0809の機能について説明する。
【0071】
「強調表示部」0809は、契約書面入力受付部にて受け付けた契約書面のうち、確認事項選択受付部にて受け付けた確認事項の所定の内容に対応する領域を強調表示するように構成されている。ここでいう具体的な強調表示の態様としては、確認事項の内容に応じた実質的な態様、もしくは確認事項の内容を問わない形式的な態様をはじめ種々のものが考えられる。形式的な態様について言えば、例えば、確認事項に応じて確認すべき契約書面中の所定単位をマーカ表示、太字表示、文字色変更表示、拡大表示その他ほかの契約書面中の表示と相対的に視認しやすくするように表示することが考えられる。当該構成を採用すれば、複雑な構成がありえ、かつ様々な文章にて表現されうる契約書面のうち、どこを審査すべきかの把握容易性を高めることが可能になる。
【0072】
また、契約書面を構成する文章に対して適宜の自然言語処理を行うことでその意味内容を把握し、当該処理結果を用いて、契約書面中確認事項の所定の意味内容に対応した文章表現を含む領域をほかの契約書面中の表示と相対的に視認しやすくするように表示することも考えられる。より具体的にいうと、確認事項がチェックリストを構成している場合、当該リストの各項目のうち一を選択すると、契約書面中に当該選択した項目の意味内容を含む文章の存否を検索するとともに、当該検索結果として抽出される文章を含む領域又は当該抽出される文章を特定するに足りる文章前又は文章後の領域が視認しやすくなるよう、契約書面データの画面表示を走査その他の処理を行うような仕組みが考えられる。特に文章量の多い契約書面を審査する場合には、相手方がどこにどのような内容の条項を入れ込んでいるかわかりづらいことも少なくなく、当該構成を採用すれば、利用者従業者が見逃してしまいがちな確認事項の確認し漏れの回避を容易にできる。
【0073】
強調表示部にて実行される強調表示は、ユーザからの強調表示を求める情報の入力受付を通じて実行される場合もあれば、契約書面と確認事項の選択を受け付けた後にユーザから特段の要求を受けることなく実行される場合があってもよい。ユーザからの要求を受け付ける場合には、例えば、これから確認すべき事項と、すでに確認が完了した事項とで強調表示の態様を変えるなどの所定の条件に対応した強調表示を行うように構成されてもよい。当該構成を採用することにより、真にユーザにとり好適な審査環境を提供することが可能になる。
【0074】
なお強調表示部は、第一審査結果入力受付部を通じて審査結果を取得する場合に加え、第二審査結果入力受付部を通じて審査結果を取得する場合にもその機能を実現可能である。それぞれの審査結果を取得するに際して特に強調表示の態様を変化変更する必要はないが、例えば、第二審査結果入力受付部にて審査結果を受け付けるに際しては、第一審査結果入力受付部を通じて審査結果を受け付ける際の強調表示の履歴が把握可能に表示する構成も考えられる。当該構成を採用すれば、二次審査者が契約審査を行う際に、一次審査者がどのような観点から契約審査を行ったのかをより客観的に把握可能にすることができる。
【0075】
<具体的な構成>
本実施形態の契約書面審査支援システムを構成する各装置のハードウェア構成は、基本的には、図※を用いて説明した実施形態1の契約書面審査支援システムにおけるハードウェア構成と同様である。そこで以下については、これまで説明していない「強調表示部」の具体的な処理について説明する。
【0076】
(強調表示部の具体的な構成)
強調表示部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「強調表示プログラム」をメインメモリに読み出して実行し、確認事項選択受付ステップの実行により受け付けた確認事項の所定の内容に対応する領域を強調表示するための処理を行う。
【0077】
<処理の流れ>
図9は、本実施形態の契約書面審査支援システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0901では、複数の利用者従業者IDを一の利用者IDと紐づけて保持する(ID保持ステップ)とともに、ステップS0902では、契約書面の記録内容に対応する確認事項を契約類型単位で保持する(確認事項保持ステップ)。
次にステップS0903では、契約書面の入力を受け付け(契約書面入力受付ステップ)、ステップS0904では、一の利用者従業者IDを有するユーザの管理する端末から確認事項保持部にて保持される確認事項の選択を受け付ける(確認事項選択受付ステップ)。その後ステップS0905にて、確認事項選択受付ステップにて選択を受け付けた確認事項と関連付けて契約書面の審査結果の入力を受け付ける(第一審査結果入力受付ステップ)。このときステップS0906として、確認事項選択受付ステップにて受け付けた確認事項の所定の内容に対応する領域を強調表示する処理を行う(強調表示ステップ)。
さらにステップS0907では、入力された審査結果のうち少なくとも確認事項を確認したか否かに関する情報である確認完了情報を利用者IDを同じくする他の利用者従業者IDを有するユーザに宛てて通知し(審査結果通知ステップ)、その後ステップS0908にて当該他の利用者従業者IDを有するユーザから契約書面の審査結果の入力を受け付ける(第二審査結果入力受付ステップ)。そしてステップS0909では、第二審査結果入力受付ステップにて入力を受け付けた審査結果を、当該契約書面と関連付けて保持する(審査結果保持ステップ)。
【0078】
なおここで強調表示ステップは、第二審査結果入力受付ステップの実行に際して実行することも可能で、同ステップと第一審査結果入力受付ステップとの実行に際してともに実行することも可能である。
【0079】
<効果>
本実施形態の契約書面審査支援システムを用いることにより、実施形態1の契約書面審査支援システムを用いる場合に比べ、より契約審査における「抜け漏れ」のリスクを低減し実効性ある審査業務の環境を提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
0200・・・契約書面審査支援システム、0201・・・ID保持部、0202・・・確認事項保持部、0203・・・契約書面入力受付部、0204・・・確認事項選択受付部、0205・・・第一審査結果入力受付部、0206・・・審査結果通知部、0207・・・第二審査結果入力受付部、0208・・・審査結果保持部