(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】高電圧高速スイッチング装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/296 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20241003BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20241003BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03K17/296 E
H01L29/80 H
(21)【出願番号】P 2020535334
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 IL2018051021
(87)【国際公開番号】W WO2019049158
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-29
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520079429
【氏名又は名称】ヴィスアイシー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ,デービッド
(72)【発明者】
【氏名】ブーニン,イリア
(72)【発明者】
【氏名】ドゥビンスキー,オレグ
【合議体】
【審判長】馬場 慎
【審判官】千葉 輝久
【審判官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111732(WO,A1)
【文献】特開2015-162845(JP,A)
【文献】特開2016-139781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/80
H02M1/00-1/44
H03K17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧電源をスイッチングするための装置であって、前記高電圧電源は前記装置に印加され、前記装置は、
第1のスイッチング素子から始まり最後のスイッチング素子で終端する直列接続の複数のスイッチング素子であって、前記装置により前記高電圧電源
への結合が可能になる、スイッチング素子と、
前記スイッチング素子に結合された電圧リミッタと、
スイッチング時間同期装置と、
を備え、
前記第1のスイッチング素子は、前記装置のスイッチング状態を変更するための制御信号を直接受信するように構成され、前記第1のスイッチング素子は、前記直列接続の
全ての連続する前記スイッチング素子のスイッチング状態のカスケード式遷移を
開始するように構成され、前記スイッチング時間同期装置は、連続する前記スイッチング素子の前記スイッチング状態への遷移を時間同期させるように構成され、前記電圧リミッタは、前記遷移中に発生する前記スイッチング素子の最大動作電圧を超える過電圧を制限するように構成され、前記複数のスイッチング素子はノーマリーオン型のものである、装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、トランジスタである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、各個々の前記スイッチング素子のそれぞれの電圧降下間で前記高電圧電源の印加電圧を均等に分配するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のスイッチング素子は、前記装置の前記スイッチング状態の前記変更を可能にするための前記制御信号を送信するように構成されたコントローラに結合するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子の個々のスイッチング素子のそれぞれの阻止電圧は、前記高電圧電源の印加電圧より低い、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチング時間同期装置は、個々の前記スイッチング素子の前記スイッチング状態間の遷移時間を低減するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電圧リミッタは、前記スイッチング素子間での前記高電圧電源の印加電圧の均一な分配を容易にするようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電圧リミッタは、前記スイッチング素子の各々の電圧降下をそれぞれの降伏電圧未満に制限するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記スイッチング素子は、高速スイッチングトランジスタである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電圧リミッタおよび前記スイッチング時間同期装置は、2つの連続する前記スイッチング素子を結合する結合点で前記スイッチング素子と結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電圧リミッタは、前記スイッチング素子間での前記高電圧電源の印加電圧の均一な分配を維持するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記スイッチング時間同期装置は、前記スイッチング素子の前記スイッチング状態の時間同期を可能にするための
信号を生成するように構成される、
請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記直列接続の前記スイッチング素子のそれぞれに並列に接続された少なくとも1つの並列接続スイッチング素子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記スイッチング素子の各々は、少なくとも1つの前記並列接続スイッチング素子に並列に接続される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記スイッチング素子は、
電界効果トランジスタ(FET)、
接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET)、および
窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)
から成るリストから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記高速スイッチングトランジスタの各々は、ゲート端子、ソース端子、およびドレイン端子を含み、前記直列接続の結合は、1つの高速スイッチングトランジスタの前記ドレイン端子を、前記直列接続における連続する高速スイッチングトランジスタの前記ソース端子に順次接続することを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記電圧リミッタは、前記直列接続の第2のスイッチング素子の前記ゲート端子に接続された少なくとも1つの逆バイアスダイオードを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記スイッチング時間同期装置は、前記直列接続の前記第2のスイッチング素子の前記ゲート端子に接続された少なくとも1つのコンデンサを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記逆バイアスダイオードと前記コンデンサは、並列に接続される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記電圧リミッタは、前記逆バイアスダイオードとのダイオード・抵抗器直列接続を形成する抵抗器をさらに含み、前記ダイオード・抵抗器直列接続の一方の分岐は、2つの連続する前記スイッチング素子間の結合点に接続される、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記逆バイアスダイオードの逆降伏電圧は、前記高電圧電源の印加電圧を前記2つの連続する前記スイッチング素子間で等しく分圧するように選択される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記スイッチング時間同期装置は、前記ダイオード・抵抗器直列接続の結合点で結合されたゲート端子と、前記コンデンサと並列に接続されたドレイン端子およびソース端子とを含むスイッチングトランジスタをさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記スイッチング時間同期装置は、前記スイッチング素子の前記スイッチング状態の前記遷移が同時に発生するように前記遷移を同期させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
それぞれの前記高速スイッチングトランジスタのそれぞれの前記ゲート端子に直列接続された電流制限抵抗器をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記スイッチング時間同期装置は、コンデンサを含み、前記電圧リミッタは、前記コンデンサに並列接続された逆バイアスダイオードを含み、そのことにより、一方の分岐が2つの連続する前記スイッチング素子間の結合点で結合されたダイオード・コンデンサ並列回路が形成される、請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記ダイオード・コンデンサ並列回路の他方の分岐は、抵抗器と結合される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記逆バイアスダイオードは、ツェナーダイオード、および過渡電圧抑制(TVS)ダイオードから選択されたタイプのダイオードである、請求項19に記載の装置。
【請求項28】
前記スイッチングトランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、およびバイポーラ接合トランジスタ(BJT)から選択されたタイプのトランジスタである、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記装置は、前記高電圧電源および負荷を含む直列接続の対のスイッチングを可能にし、前記直列接続の対の一方の分岐は前記スイッチング素子のうちの1つと結合することができ、他方の分岐は前記装置の共通接地と結合することができ、そのことにより、前記スイッチング素子の各々は、
ボルトにおける前記高電圧電源のスイッチング素子の数の逆数に等しい前記高電圧電源の印加電圧を維持する、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記スイッチング素子は、ドレイン端子、ソース端子、基板の上のバッファ層の上にあるチャネル層の上の2次元電子ガス(2DEG)領域の上にあるバリア層の上のゲート端子を含む物理的構造を有する窒化ガリウム(GaN)トランジスタである、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
前記バッファ層は、(1)GaN/AlGaN層、(2)GaN/AlGaN炭素ドープGaN層および非意図的にドープされている(UID)GaNチャネルのいずれかから構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記物理的構造は、前記スイッチング素子間で同じであり、前記スイッチング素子間の電圧降下の均等化を可能にする、請求項31に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、全般に、スイッチング装置に関し、特に、高電圧高速スイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、電動車両、レーダシステム、電動機制御装置、無中断電力供給システムなどの様々なシステムおよび装置は、高電圧の電源を含む電源から供給される比較的大量の電力を必要とする。このような装置への電圧の供給は、典型的には、半導体スイッチング装置を介して制御され得る。
【0003】
高電圧半導体スイッチング装置は、当技術分野で一般的に知られている。例えば、このような従来技術のアーキテクチャの1つは、例えば、2つ以上のトランジスタを使用する「カスコード」構成を採用している。カスコード構成により、スイッチング装置の両端間の電圧を各々のトランジスタの個々の降伏電圧よりも高くすることができる。ここで
図1を参照する。
図1は、当技術分野で周知の例示的な高電圧半導体スイッチング装置(全体が10で示されている)の概略図である。スイッチング装置10は、直列構成を採用している。スイッチング装置10は、2つのスイッチング回路、すなわち、第1のスイッチング素子12
1と第2のスイッチング素子12
2とを含む。第1のスイッチング素子12
1は、トランジスタ14
1と、第1の抵抗器16
1と、第2の抵抗器16
2と、第1のコンデンサ20
1と、第2のコンデンサ20
2とを含む。第1のスイッチング素子12
1および第2のスイッチング素子12
2はそれぞれ、例えば、トランジスタ14
1およびトランジスタ14
2のようなトランジスタである。トランジスタ14
1は、基板端子22
1と、ドレイン端子(D)24
1と、ゲート端子(G)26
1と、ソース端子(S)28
1とを含む。トランジスタ14
2は、シリコン基板端子22
2と、ドレイン端子(D)24
2と、ゲート端子(G)26
2と、ソース端子(S)28
2とを含む。トランジスタ14
1は、「ノーマリーオン」または「ノーマリーオフ」として選択され得る。同様に、トランジスタ14
2は、トランジスタ14
1の標準状態に関係なく、「ノーマリーオン」または「ノーマリーオフ」として選択され得る。
【0004】
高電圧半導体スイッチング装置10は、3つの動作状態を有する。第1の状態は、「静止状態」とも呼ばれる「オフ状態」である。「オフ状態」では、トランジスタ141およびトランジスタ142のうちの少なくとも一方は、「オフ状態」にある。第2の状態は、「オン状態」である。「オン状態」では、トランジスタ141およびトランジスタ142の両方が「オン状態」にある。第3の状態は、トランジスタ141およびトランジスタ142が「オフ状態」から「オン状態」に切り替えられ、また「オン状態」から「オフ状態」に切り替えられるときに発生する過渡状態である。2つのトランジスタは、同じ状態にある必要がある。
【0005】
ソース端子281は、ドレイン端子242と結合される。抵抗器161の一方の端子はドレイン241と結合され、抵抗器161の他方の端子はソース281と結合される。また、抵抗器162の一方の端子はドレイン242と結合され、抵抗器162の他方の端子はソース282と結合される。同様に、コンデンサ201の一方の端子はドレイン241と結合され、コンデンサ201の他方の端子はソース281と結合される。同様に、コンデンサ202の一方の端子はドレイン242と結合され、コンデンサ202の他方の端子はソース282と結合される。
【0006】
典型的には、抵抗器161、抵抗器181、抵抗器162、および抵抗器182の値はそれぞれ、メガオーム(MΩ)のオーダーである。抵抗器161と抵抗器162は、典型的には、メガオーム(MΩ)のオーダーの等しい値を示す。コンデンサ201とコンデンサ202も、等しい値を示す。抵抗器161および抵抗器162は、分圧器からのコンデンサ201およびコンデンサ202と共に、トランジスタ141およびトランジスタ142の両端間の実質的に等しい定常過渡電圧を可能にする。
【0007】
Springettの米国特許出願公開第2012/0262220(A1)号明細書は、カスコード配置のノーマリーオフ型トランジスタおよびノーマリーオン型トランジスタを含むスイッチング装置を開示している。スイッチング装置はさらに、ノーマリーオン型素子のゲートとノーマリーオフ型素子のソースとの間に接続されたコンデンサと、コンデンサと並列に接続されたツェナーダイオードとを含む。ノーマリーオン型素子は、SiC JFETのようなJFETであり得る。ノーマリーオフ型素子は、Si MOSFETのようなMOSFETであり得る。ノーマリーオン型素子は、高電圧素子であり、ノーマリーオフ型素子は、低電圧素子である。装置をオフにすると、コンデンサが充電され、その両端の電圧がツェナーダイオードの降伏電圧の電圧になる。ノーマリーオフ型MOSFETをオンにすると(すなわち、制御電圧によって)、ノーマリーオン型JFETのソースが接地され、ノーマリーオン型素子のVgsが正になり、ノーマリーオン型JFETがオフになる。
【0008】
「Switch with Series-Connected MOS-FETs」と題された、Stenglらの米国特許第4,459,498号は、少なくとも2つの直列接続されたパワーMOS-FET(「FET1」および「FET2」と表記される)を有するスイッチを開示している。FET1のドレインは、FET2のソース端子に接続される。FET1のゲートは、制御電圧に接続される。第2の入力端子は、FET1のソースの電位にある。FET1のゲートは、ダイオードを介してFET2のゲートにさらに接続される。ダイオードは、少なくともFET2の降伏電圧と同じ高さのカットオフ電圧を有する。FET2のゲートは、抵抗器を介してそのソースに電気的に接続される。抵抗器を越えてシャントされるのは、FET2の入力容量であり、これは、破線の接続で象徴的に示されている。FET1のゲートに対して正の電圧パルスが印加されると、FET1は導通状態になり、トランジスタ間の接続点における電位が降下する。トランジスタ間の電位接続点が、FET2のゲート電圧および制御電圧がダイオードの閾値電圧よりも低くなるようなレベルまで降下すると、ダイオードは導通し始め、FET2は導通状態になる。スイッチをオフにするために、負の電圧パルスがFET1のゲートに印加され、プロセスが逆にされる。
【0009】
Stenglが開示しているさらに別の例によれば、ツェナーダイオードがFET2のドレインとゲートの間に接続され、別のダイオードが反対の極性に接続される。このツェナーダイオードは、FET2の降伏電圧よりも僅かに小さいツェナー電圧を有する。FET1のゲートに入力電圧が印加されると、FET1は導通状態になる。トランジスタ間の接続点の電位が降下し、電流がツェナーダイオードを流れることができる(すなわち、ツェナーダイオードがブレークダウンしたとき)。この電流は、抵抗器上に電圧降下を生じさせ、これがFET2の入力容量を充電する。カットオフ電圧を超えると、FET2は、動作電圧全体が印加されることなく、導通状態になる。FET2に印加される電圧がツェナー電圧を下回った場合、ツェナーダイオードは遮断状態になり、FET2はダイオードを介して導通状態で維持される。スイッチが開放される(すなわち、切断される)と、FET1は遮断され、ツェナーダイオード8は遮断状態になる。ダイオードは同様に遮断され、入力容量が抵抗を介して放電され得る。これにより、FET2も遮断される。
【0010】
Bielaらによる、「Balancing Circuit for 5kV/50ns Pulsed Power Switch Based on SiC-JFET Super Cascode」と題された公報は、補助要素を有するSiC-JFETトランジスタのスーパーカスコードアーキテクチャを開示しており、これは、トランジスタ両端の電圧降下を静的かつ動的に平衡化するものである。カスコード内の2つの隣接トランジスタのゲートは、Siダイオードを介して接続され、ダイオードのアノードは、一方のトランジスタのゲートに接続され、カソードは、カスコード内の隣のトランジスタのゲートに接続される。トランジスタ全体の静電圧分布を制御するために、ダイオードを流れる特定のリーク電流が必要となる。JFETパラメータとは無関係にこのリーク電流を確保するために、各々のトランジスタのゲートとソースとの間に抵抗器が接続される。したがって、リーク電流は、主に、抵抗値とJFETのピンチオフ電圧(オフ状態の抵抗器の両端間の電圧降下に等しい)とによって定義される。トランジスタの両端間の電圧を動的に平衡化し、過電圧を回避し、スイッチング過渡時のJFETの同期を達成するために、抵抗器と直列のコンデンサがダイオードと並列に接続される。
【発明の概要】
【0011】
本開示の技術の目的は、複数のスイッチング素子、電圧リミッタ、およびスイッチング時間同期装置を含む、高電圧電源をスイッチングするための新奇な装置を提供することである。スイッチング素子は、直列で結合され、第1のスイッチング素子から始まり、最後のスイッチング素子で終端する。該装置は、高電圧電源とスイッチング素子のうちの少なくとも選択された1つとの結合を可能にする。電圧リミッタは、スイッチング素子と結合される。第1のスイッチング素子は、該装置のスイッチング状態を変化させるための制御信号を直接受信するように構成される。第1のスイッチング素子は、直列接続の連続するスイッチング素子のスイッチング状態のカスケード式遷移を容易にするように構成され、スイッチング時間同期装置は、連続するスイッチング素子のスイッチング状態への遷移が有効になる時間を同期させるように構成される。電圧リミッタは、遷移の間にスイッチング素子に対する過電圧条件を制限するように構成される。
【0012】
本開示の技術は、図面と併せて以下の詳細な説明から、さらに十分に理解され、評価されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】当技術分野で周知の例示的な高電圧半導体スイッチング装置の概略図である。
【
図2A】本開示の技術の一実施形態に従って構築され、動作可能である高電圧スイッチング装置の概略ブロック図である。
【
図2B】本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である高電圧スイッチング装置の別の構成の概略ブロック図である。
【
図2C】本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である高電圧スイッチング装置のさらに別の構成の概略ブロック図である。
【
図3A】本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である
図2Bの高電圧スイッチング装置120の特定の基本的な実施態様(全体が140で示されている)の概略図である。
【
図3B】本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である
図2Bの高電圧スイッチング装置の特定の実施態様の概略図である。
【
図4】高電圧スイッチング装置の典型的なスイッチング時間特性を示すプロットである。
【
図5】
図4のスイッチング時間特性の立ち上がり時間の詳細図を示すプロットである。
【
図6】
図4のスイッチング時間特性の立ち下がり時間の詳細図を示すプロットである。
【
図7】
図2Aの高電圧スイッチング装置の別の実施態様の概略図である。
【
図8】
図2A~
図2Cの高電圧スイッチング装置のさらに別の実施態様の概略図である。
【
図9】本開示の技術に従って構築され、動作可能である
図2A~
図2Cの高電圧スイッチング装置の概略ブロック図であり、高電圧電源を有する高電圧スイッチング装置と負荷との間の別の結合構成を示す図である。
【
図10A】本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能であるGaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)の物理的構造の概略図である。
【
図10B】
図10Aのトランジスタの物理的構造の一部に関連する等価回路の概略図である。
【
図10C】本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である、直列構成で接続された
図10Aのタイプの2つのトランジスタの等価回路の概略図である。
【
図11】
図10Aおよび
図10BのGaN HEMTトランジスタのバッファ層を流れるリーク電流のI-V曲線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の技術は、スイッチング過渡現象(すなわち、「オン」状態と「オフ」状態との間の動的遷移)を最小限にし、ひいては、より長いスイッチング時間に関連するエネルギー損失を低減するために、超高速時間(すなわち、およそ10ナノ秒のオーダー)で高電圧(典型的には>1kV)をスイッチングするための装置を提供することによって、従来技術の不利点を克服する。例えば、従来技術の直列接続された高電圧スイッチング装置は、典型的には、「古典的なカスコード構成」を使用し、この場合、初期または第1のスイッチングトランジスタ(例えば、直列接続の他のスイッチング素子とは異なる金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET))が、ゲートが接地された後続のスイッチングトランジスタに(すなわち、そのソース端子に)接続される(すなわち、ドレイン端子を介して)。MOSFETは、高電圧電源のスイッチングに関与し、変調のために使用される。本開示の技術は、直列構成(古典的なカスケード構成ではない)で結合された複数のスイッチング素子(例えば、トランジスタ)を採用し、直列接続の第1のスイッチング素子は、(例えば、トリガ信号によって)直接変調されるように構成され、直列接続の残りのスイッチング素子と違いはない。直接変調は、スイッチング素子の特徴的な高速スイッチング時間を利用する。 さらに、本開示の技術は、スイッチング時間同期装置および電圧リミッタを含む。スイッチング時間同期装置は、それ自体がスイッチング素子(例えば、最小エネルギースイッチング損失を示すノーマリーオフ型トランジスタ)を組み込んでおり、スイッチング素子のスイッチング時間を同期させ、そのことによりスイッチング時間遷移、エネルギー損失(例えば、抵抗性、容量など)、およびスイッチング遷移中のスイッチング素子間の不均一電圧分担の可能性を最小限にするように構成され、動作可能である。電圧リミッタは、特にスイッチング遷移中に、スイッチング素子のそれぞれの降伏電圧を超える過電圧の発生を阻止し、抑制するように構成され、動作可能であり、したがって、スイッチング素子自体を損傷から保護する。さらに、本開示の技術の高電圧スイッチング装置はさらに、スイッチング電圧(すなわち、印加される高電圧電源)を個別のスイッチング素子間で実質的に等しく分配し、そのことにより、電圧平衡回路(例えば、N倍の数のスイッチング素子間で、約N倍の阻止電圧を均等に供給する)を実現するように構成され、動作可能である。換言すれば、カスケード直列接続されたスイッチング素子全体の印加される高電圧電源の電圧降下は、個々のスイッチング素子のそれぞれの電圧降下に均等に分配される。さらに、カスコード構成のトランジスタのスイッチング状態間の遷移が連続的に(すなわち、非同時に、時間遅延/ずれ/リードを示す)生じる従来技術の「古典的なカスコード構成」とは対照的に、本開示の技術は、実質的に同時に(すなわち、実際に、比較的長いスイッチング時間に関連するエネルギー損失を低減する、数ナノ秒のオーダーで)発生するように、直列にカスケード接続されたスイッチング素子のスイッチング遷移を同期させるように構成され、動作可能である。
【0015】
ここで
図2Aを参照する。
図2Aは、本開示の技術の一実施形態に従って構築され、動作可能である高電圧スイッチング装置(全体が100で示されている)の概略ブロック図である。高電圧スイッチング装置100は、複数のスイッチング素子104
1、104
2、104
3、…、104
N(ここで、N≧2は正の整数である)と、電圧リミッタ・スイッチング時間同期装置(VL-STS)106とを含む。VL-STS106は、スイッチング時間同期装置108および電圧リミッタ110を含む。高電圧スイッチング装置100は、典型的には、コントローラ112および高電圧電源114(電気負荷116に電力供給する)を含む周辺機器と結合されるように構成され、動作可能である。高電圧スイッチング装置100は、周辺機器と共に、
図2Aでは、まとめて102で表される。
【0016】
スイッチング素子104
1、104
2、104
3、…、104
Nは、
図2Aに示されているように、直列接続の第1のスイッチング素子(すなわち、スイッチング素子104
1)は、直列接続の第2のスイッチング素子(すなわち、スイッチング素子104
2)と結合され、直列接続の第2のスイッチング素子(すなわち、スイッチング素子104
2)は、直列接続の第3のスイッチング素子(すなわち、スイッチング素子104
3)と結合される、などと続き、最後に、直列接続の最後のスイッチング素子(N番目)(すなわち、スイッチング素子104
N)と結合されるというように、順次直列構成(例えば、カスケード)で結合される。VL-STS106は、スイッチング素子104
2、104
3、…、104
Nと結合される(すなわち、
図2Aに示されているように、スイッチング素子104
1とは結合されない)。スイッチング素子104
1は、コントローラ112と結合されるように構成され、動作可能である。コントローラ112は、異なる制御されたスイッチング状態間の高電圧スイッチング装置100の動作をトリガするように構成され、動作可能である。一般に、用語「スイッチング状態」は、スイッチングに関連する高電圧スイッチング装置100の特定の動作モードを定義する状態のことである。例えば、単純なケースでは、高電圧スイッチング装置100は、2つの安定したスイッチング状態(例えば、「オン」および「オフ」)と、2つの安定したスイッチング状態間の中間の瞬間的な遷移状態とを含む。より一般的な例では、高電圧スイッチング装置100は、多くの安定したスイッチング状態と、対応する中間の瞬間的な遷移状態とを含み得る。高電圧スイッチング装置100は、次に、電力供給負荷116に対する高電圧電源114の接続(すなわち、閉回路)と切断(すなわち、開回路)との間で切り替えるように構成され、動作可能である。特に、直列接続のスイッチング素子の組み合わされた動作は、高電圧電源114をスイッチングするように構成され、動作可能であり、高電圧電源114の電圧は、個々のスイッチング素子の電圧維持能力(例えば、阻止電圧)よりも高い(すなわち、個々のスイッチング素子の阻止電圧は、高電圧スイッチング装置100に印加される高電圧電源114の電圧(すなわち、「印加電圧」)よりも低い)。
【0017】
高電圧スイッチング装置100の制御された異なるスイッチング状態間でスイッチングするために、コントローラ112は、制御信号(図示せず)(例えば、パルス、パルス幅変調(PWM)信号、特定の波形、電圧、特定の値の電流など)を生成するように構成され、この制御信号は、直列接続のスイッチング素子の第1のスイッチング素子(すなわち、スイッチング素子1041)によって受信される。制御信号は、スイッチング素子1041の電流スイッチング状態(例えば、有効、無効)を変更する(例えば、「オフ」から「オン」、またはその逆)ように構成され、動作可能である。スイッチング素子1041は、制御信号を受信すると、直列接続のスイッチング素子1041に続いて接続されたスイッチング素子、すなわち、スイッチング素子1042の電流スイッチング状態を変化させるように構成され、動作可能であり、スイッチング素子1042は、スイッチング素子1042に続いて接続されたスイッチング素子、すなわち、スイッチング素子1043の電流スイッチング状態を変化させるように構成され、動作可能である、などのように、最後は、直列接続の最後のスイッチング素子、すなわち、スイッチング素子104Nまでカスケード式に続く。VL-STS106および特にそのスイッチング時間同期装置108は、スイッチング素子1041、1042、1043、…、104Nがスイッチング状態を変更する時間を同期させるように構成され、動作可能であり、同時に遷移時間を最小限にし、ひいては、より長い遷移時間に関連する潜在的なエネルギー損失を低減する。スイッチング時間同期装置108は、典型的には、電子タイミング機構、例えば、時間制御回路(または、各々のスイッチング素子に関連付けられた複数の時間制御回路)、個別の時間制御装置(または複数の個別の時間制御装置)などとして具現化される。
【0018】
一般的なVL-STS106および電圧リミッタ110は、特に、スイッチングプロセスにおけるスイッチング素子のそれぞれの最大動作電圧(例えば、降伏電圧または阻止電圧)を超え得る過電圧の発生の可能性の抑制(すなわち、制限、制約)を含むスイッチングプロセスにおける電圧過渡現象発生の可能性の制限および抑制を含む、スイッチング素子に対する過電圧条件を制限するように構成される。電圧リミッタ110はさらに、スイッチング素子1041、1042、1043、…、104N間のソース電圧の均等な分配を可能にするように構成され、動作可能である。基本的に、好適な実施態様では、高電圧電源の電圧は、スイッチング素子1041、1042、1043、…、104N間で実質的に等しく維持され、分配される。あるいは、別の実装態様によれば、高電圧電源の電圧は、各々のスイッチング素子に関して最大動作電圧(例えば、降伏電圧)を超えない限り、スイッチング素子1041、1042、1043、…、104N間で不均一に分配される。換言すれば、電圧リミッタ110は、スイッチング素子の各々の電圧降下を、それぞれの降伏電圧を下回るように制限するように構成される。スイッチング素子1041、1042、1043、…、104Nは、典型的には、以下例示的な実施態様でより詳細に説明されるように、高速スイッチングトランジスタの形で具現化される。
【0019】
図2Aに示されている高電圧スイッチング装置100は、本開示の技術の原理と一致する代替構成を有し得る。ここでさらに
図2Bを参照する。
図2Bは、本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能であるスイッチング装置の別の構成(全体が120で示されている)の概略ブロック図である。
図2Bは、高電圧スイッチング装置120を示しており、これは、
図2Aの高電圧スイッチング装置100と同様である。高電圧スイッチング装置120は、周辺機器と共に、
図2Bでは、まとめて122で表される。
図2Bに示されている
図2Aと同じ番号の構成要素は同一であり、同一の機能を有する。
図2Bに示されている構成は、VL-STS106が、2つの連続するスイッチング素子間の結合点においてスイッチング素子104
1、104
2、104
3、…、104
Nと結合されるという点で、
図2Aに示されている構成とは異なる。具体的には、VL-STS106は、スイッチング素子104
1およびスイッチング素子104
2とそれらの相互接続点において結合され、スイッチング素子104
2およびスイッチング素子104
3とそれらの相互接続点において結合されるなど、スイッチング素子104
N-1と104
N-1およびスイッチング素子
Nに至るまで同様の形で結合される。電圧リミッタ110は、スイッチングプロセス中に個々のスイッチング素子に損傷を与え得る過電圧の蒸散を制限および抑制し、スイッチング素子間の高電圧電源114の均等な分布を可能にし、維持するように構成される。スイッチング時間同期装置108は、連続するスイッチング素子のスイッチング状態への遷移が有効になる時間を同期させるように構成される。一実施態様によれば、スイッチング時間同期装置108は、スイッチング素子104
2、104
3、…、104
Nと結合し、スイッチング素子のスイッチング状態への遷移のトリガを時間的に同期させるように構成され、動作可能である。別の実装態様によれば、スイッチング時間同期装置108は、スイッチング素子のスイッチング状態の時間同期(すなわち、スイッチング状態への遷移のトリガ)を可能にする少なくとも1つの基準時間信号を生成するように構成され、動作可能である。
【0020】
ここでさらに
図2Cを参照する。
図2Cは、本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である高電圧スイッチング装置のさらに別の構成(全体が130で示されている)の概略ブロック図である。
図2Cは、高電圧スイッチング装置130を示しており、これは、高電圧スイッチング装置100(
図2A)および高電圧スイッチング装置120(
図2B)と同様である。高電圧スイッチング装置130は、周辺機器と共に、
図2Cでは、まとめて132で表される。
図2Bに示されている
図2Aと同じ番号の構成要素は同一であり、同一の機能を有する。高電圧スイッチング装置130の構成は、一般に、N行×M列(N×M)のスイッチング素子を含む(Mは正の整数である)。参照番号104の下付き添字は、行(1~Nの範囲)を表し、上付き添字は、列(1~Mの範囲)を表す。同じ行のスイッチング素子は、互いに並列に結合され(すなわち、本明細書では「並列スイッチング素子」、「並列接続スイッチング素子」、および「並列結合スイッチング素子」と同義で示されている)、同じ列のスイッチング素子は、直列に互いに結合される。例えば、スイッチング素子104
1
1は、スイッチング素子104
1
2と並列に結合され(すなわち、同じ行番号1を共有し)、また、スイッチング素子104
2
1と直列に結合される(すなわち、同じ列番号1を共有する)。高出力スイッチング装置130のスイッチング素子の構成は、比較的大きい電流(すなわち、例えば、
図2Aおよび
図2Bの構成において示されているような各行の1つのスイッチング素子によって維持され得る電流よりも大きい電流)がスイッチングされる必要がある場合に利用されるように構成され、動作可能である。
図2Cに示されている構成により、並列結合されたスイッチング素子の各々の間で大電流を分割することができるようになる。簡略化のため、
図2Cは、各行にM個のスイッチング素子が存在する特殊なケースを示しているが、本開示の技術は、並列結合されたスイッチング素子のそれぞれの可変数M
1、M
2、M
3、…、M
Nを有する各行(1~N)のより一般的な配置に適合している。
図2Aおよび
図2Bは、典型的には比較的小さい電流に使用される、1行ごと(すなわち、M=1)に1つのスイッチング素子を有する単純なケース(すなわち、各々のスイッチング素子がそこを流れる電流を維持することができる)を示す。
【0021】
図2A、
図2B、および
図2Cは、本開示の技術の詳細を説明するために、高電圧電源114を有する高電圧スイッチング装置100と負荷116との間の特定の例示的な結合構成のみを示している。以下で、他の可能な結合構成(
図9)について説明する。
【0022】
次に、
図3A、
図3B、および
図4を参照する。
図3Aは、本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である
図2Bの高電圧スイッチング装置120の特定の基本的な実施態様(全体が140で示されている)の概略図である。
図3Bは、本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である
図2Bの高電圧スイッチング装置120の特定の実施態様(全体が150で示されている)の概略図である。
図4は、高電圧スイッチング装置の典型的なスイッチング時間特性を示すプロット(全体が180で示されている)である。
【0023】
図3Aを参照すると、高電圧
スイッチング装置140は、トランジスタ154
1(「U1」)、154
2(「U2」)として具現化された2つのスイッチング素子、および電圧リミッタ・スイッチング時間同期装置(VL-STS)144を含み、VL-STS144は、複数の個別の素子を介して実装される。具体的には、VL-STS144は、コンデンサ146(「C1」)と、逆バイアスダイオード148(「D1」)とを含む。高電圧スイッチング装置140は、典型的には、コントローラ168(「V1」)および高電圧電源170(V2)(例えば、電気負荷172(「R
L」)を駆動する)を含む周辺機器と結合されるように構成され、動作可能である。高電圧スイッチング装置140は、周辺機器と共に、
図3Aでは、まとめて142で表される。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2の各々は、ゲート(G)、ソース(S)、およびドレイン(D)の3つの端子を含む。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、一般に、本明細書では単に「トランジスタ」と呼ばれ、特に、通常は(デプレッションモード)ノーマリーオン型電界効果トランジスタ(FET)、接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET)(
図3Aおよび
図3Bに示されている)、GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)トランジスタなどとして具現化される。
【0024】
トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、直列構成で結合され、トランジスタ154
2のソース端子はトランジスタ154
1のドレイン端子に接続され、(ソース-ドレイン)相互接続点は点「A」と示される。(
図3Aおよび
図3Bに示されている回路に関連する全ての基準点は、イタリック体で示されていることに留意されたい)。トランジスタ154
1は、ソース端子が接地される一般的なソース構成である。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2はそれぞれ、本明細書では、「第1のトランジスタ」および「第2のトランジスタ」とも呼ばれる。本開示の技術を説明するために、2つのトランジスタのみが示されているが、一般性を失うことなく、本開示の技術の原理は、一般に、N≧2のトランジスタにも同様に適用される。
図3Aおよび
図3Bに示されている2トランジスタ構成では、第2のトランジスタ(すなわち、トランジスタ154
2)は、「最後のトランジスタ」とも呼ばれ、または一般に、(一般的にN個のトランジスタの)直列接続の「N番目のトランジスタ」とも呼ばれる。
【0025】
ダイオード148およびコンデンサ146は、並列に接続されるので、この並列結合の一方の分岐がトランジスタ154
2のゲート端子と結合され、他方の分岐が接地される。具体的には、ダイオード148のカソード端子は、トランジスタ154
2
のゲート端子と結合され、ダイオード148のアノード端子は、トランジスタ154
1(すなわち、直列接続のより小さい番号のトランジスタ)のソース端子に接続される。
図3Aは、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2が(デプレッションモード)ノーマリー「オン」型(すなわち、ドレイン端子とソース端子との間が導通状態である)JFETになるように選択された、高電圧スイッチング装置140の典型的な実施態様を示す。
【0026】
初期状態では、高電圧電源170は、
図3Aに示されているように、点「D」で(電気負荷172を介して)高電圧スイッチング装置140に印加される。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、それぞれのドレイン端子とソース端子との間で導通状態であり、接地に対する点「A」の電圧は、0である。この初期状態では、トランジスタ154
2のゲート端子とソース端子との間の電位差は0である、すなわち、v
gs(U2)≒0である。高電圧スイッチング装置140を「オフ」状態にするために、コントローラ168は、制御信号(例えば、電圧がトランジスタ154
1のピンチオフ電圧V
P(U1)に少なくとも等しいか、または逆方向にそれを超える(すなわち、実質的にパルスの持続時間の間)、逆バイアス電圧波形(例えば、パルス))を生成することによって、高電圧スイッチング装置140のスイッチング状態を制御するように構成され、動作可能である。ピンチオフ状態では、チャネルは可動キャリアが枯渇状態になり、したがって、非導通状態になり、トランジスタ154
1はオフになり、接地に対する点「A」の電位差が0から電圧V2へと上昇する。トランジスタ154
2は、ゲートがソースに追従するように構成されるので、このことが、ひいては、コンデンサ146の充電中に、トランジスタ154
2のゲートの電圧を上昇させる。したがって、コンデンサ146は、ゲート・ソース追従機構の時間のずれを除去するか、または少なくとも低減するように構成され、動作可能である。トランジスタ154
2のゲートとソースとの間の立ち上がり電位差がピンチオフ電圧V
P(U2)に達すると、トランジスタ154
2はオフに切り替わる(すなわち、ソースとドレインとの間が非導通状態になる)。同時に、点「A」における電圧上昇は、ダイオード148上の電圧降下によって制限され、ダイオード148は、一般に、逆バイアスダイオード(例えば、ツェナーダイオード、過渡電圧抑制(TVS)ダイオードのような過渡電圧抑制装置(TVS)など)であるように選択される。ダイオード148の電圧定格(すなわち、逆降伏電圧)は、その動作が、点「A」における電圧をトランジスタ154
1の降伏電圧未満に維持するように選択される(すなわち、そのことによって、トランジスタ154
1を過電圧から保護する)。したがって、ダイオード148は、VL-STS144の電圧リミッタとして構成され、動作可能であり、コンデンサ146は、VL-STS144のスイッチング時間同期装置として(すなわち、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2のスイッチング状態を時間同期させるために)構成され、動作可能である。
【0027】
高電圧スイッチング装置140を「オン」状態にするために、コントローラ168は、例えば、ピンチオフ電圧未満であるトランジスタ1541のゲート端子とソース端子との間の電位差(例えば、vgs(U1)=0)を誘導することによって、制御信号を生成する(あるいは、オフにする、遮断するなど)ように構成され、動作可能である。その結果、トランジスタ1541は、導通状態になり、そのドレイン端子は、点Aにおける電圧と共に、接地状態になり、点Aにおける電圧が、ダイオード148の電圧降下未満になり、ダイオード148を停止させる。トランジスタ1542のソースにおける電圧降下の後に、コンデンサ146を介して効果的に放電するそのゲート上の対応する電圧降下が生じる。
【0028】
したがって、
図3Aの高電圧スイッチング装置140の基本構成の一般的なケースによれば、N>2個のスイッチング素子(例えば、トランジスタ154
1、154
2、…、154
N(N>2図示せず))が存在する場合、N-1個の電圧リミッタ(例えば、逆バイアスダイオード)およびN-1個のスイッチング時間同期装置(例えば、コンデンサ)はそれぞれ、それらの両端のうちの一端でN-1個のゲート端子(例えば、第2のトランジスタから最後のトランジスタ154
2、…、154
N)にそれぞれ結合され、他端で、それより若い番号(添字)のトランジスタの前のソース端子に接続される。例えば、N=3(図示せず)の場合、2つの電圧リミッタおよび2つのスイッチング時間同期装置があり、第1の電圧リミッタおよび第1のスイッチング時間同期装置は、それらの両端のうちの一端で第2のスイッチング素子(例えば、トランジスタ154
2)のゲート端子に接続され、他端が第1のスイッチング素子(例えば、トランジスタ154
1)のゲート端子に接続される。第2の電圧リミッタおよび第2のスイッチング時間同期装置は、それらの両端のうちの一端で第3のスイッチング素子(例えば、トランジスタ154
3、図示せず)のゲート端子に接続され、他端が第2のスイッチング素子(例えば、トランジスタ154
2、すなわち、その添字(2)はトランジスタ154
3の添字(3)より若い番号である)のゲート端子に接続される。あるいは、電圧リミッタおよびスイッチング時間同期装置はそれぞれ、それらの両端のうちの一端でスイッチング素子のそれぞれのゲート端子に接続され、他端が接地される。
【0029】
図3Bを参照すると、高電圧装置150は、トランジスタ154
1(「U1」)、トランジスタ154
2(「U2」)として具現化された2つのスイッチング素子、および電圧リミッタ・スイッチング時間同期装置(VL-STS)156を含み、VL-STS156は、複数の個別の素子を介して実装される。具体的には、VL-STS156は、トランジスタ158(「M1」)と、ツェナーダイオード162(「D2」)と、コンデンサ160(「C2」)と、抵抗器164(「R1」)とを含む。(ツェナーダイオード162は、一般に、逆バイアスダイオード、TVSなどによって実装され得る)。高電圧スイッチング装置150は、典型的には、コントローラ168(「V1」)および高電圧電源170(V2)(電気負荷172(「R
L」)を駆動する)を含む周辺機器と結合されるように構成され、動作可能である。高電圧スイッチング装置150は、周辺機器と共に、
図3Aおよび
図3Bでは、まとめて152で表される。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2の各々は、ゲート(G)、ソース(S)、およびドレイン(D)の3つの端子を含む。トランジスタ158は、一般に、ゲート(G)、ソース(S)、およびドレイン(D)の3つの端子の他に、ボディ(B)端子をさらに含む。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、典型的には、ノーマリーオン型電界効果トランジスタ(FET)、接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET)、GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)トランジスタなどとして具現化される。同様に、トランジスタ158は、一般に、「トランジスタ」とも呼ばれ、典型的には、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)などとして具現化される。トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、典型的には、超高速(例えば、ナノ秒)の高電圧スイッチング能力(例えば、数100ボルト)のため、窒化ガリウム(GaN)タイプのトランジスタであるように選択される。低い温度係数を示すようなGaNによって生まれる固有の利点の他に、GaNトランジスタはさらに、極めて小さいゲート・ドレイン容量、顕著に小さいゲート全電荷量、ならびに0ソース・ドレイン回復電荷量を示す。
【0030】
図3Aと同様に、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、直列構成で結合され、トランジスタ154
2のソース端子は、トランジスタ154
1のドレイン端子に接続される。トランジスタ154
1は、ソース端子が接地される一般的なソース構成である。ツェナーダイオード162のカソード端子は、点「A」におけるトランジスタ154
1とトランジスタ154
2との間の上述のソース・ドレイン相互接続部、(すなわち、トランジスタ154
1のソース端子およびトランジスタ154
2のドレイン端子)と結合され、ツェナーダイオード162のアノード端子は、点「B」で抵抗器164の一方の端子と直列に結合され、その他方の端子は接地される。したがって、直列接続されたツェナーダイオード162および抵抗器164の一方の分岐は、2つの連続する前記スイッチング素子間の結合点(すなわち、点「A」)に接続され、他方の分岐は、トランジスタ154
1のゲート端子に接続される。あるいは、N>2個のスイッチング素子(
図3Bには図示せず)の一般的なカスケードの場合、各々のN-1個の直列接続されたツェナーダイオードおよび抵抗器の他方の分岐は接地される。トランジスタ158のゲート端子は、点「B」でツェナーダイオード162のアノード端子および抵抗器と結合される。トランジスタ158のソース端子および(任意でボディ端子)は接地され、ドレイン端子はトランジスタ154
1のゲート端子およびコンデンサ160の一方の端子の両方と結合される。コンデンサ160の他方の端子は接地される。したがって、コンデンサ160は、スイッチングトランジスタ158のドレイン端子とソース端子との間に接続される。
図3Bは、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2がJFETとして選択され、トランジスタ158がn型MOSFETとして選択された、高電圧スイッチング装置150の典型的な実施態様を示す。さらに、この構成では、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、ノーマリー「オン」型であり(すなわち、ドレイン端子とソース端子との間で導通状態であり)、トランジスタ158は、ノーマリー「オフ」型である(すなわち、ドレイン端子とソース端子との間が非導通状態である)。
図3Bには、2つの直列接続されたスイッチングトランジスタ(154
1および154
2)のみが示されているが、高電圧スイッチング装置150の回路構成は、本開示の技術の原理に従って、3個以上の直列接続されたスイッチングトランジスタに一般化され得る。
【0031】
初期状態では、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2は、それぞれのドレイン端子とソース端子との間で導通状態であり、接地に対する点「A」の電圧は0である。この初期状態では、トランジスタ154
2のゲート端子とソース端子との間の電位差は0である、すなわち、v
gs(U2)≒0である。
図4は、時間の関数として、接地に対するそれぞれ点Dにおける電圧(すなわち、V
D)および点Aにおける電圧(V
A)の電圧(
図4)をプロットしたグラフ182、184を示す。初期状態(時間t=0)では、
図3Bに示されるように、V
A≒V
D≒0である。
【0032】
高電圧スイッチング装置150を「オン」状態にするために、コントローラ168は、少なくともトランジスタ1541のゲート端子とソース端子との間の電位差を引き起こすことによって、高電圧スイッチング装置150のスイッチング状態を制御するように構成され、動作可能である。特定の時間において、コントローラ168は、制御信号、例えば、逆バイアス電圧波形(例えば、電圧がトランジスタ1541のピンチオフ電圧VP(U1)に少なくとも等しいか、または逆方向にそれを超える(すなわち、実質的にパルスの持続時間の間)、n型チャネルGaN HEMTのための負電圧パルスの形)を生成するように構成される。ピンチオフ状態では、チャネルは可動キャリアが枯渇状態になり、ひいては非導通状態になり、トランジスタ1541はオフに切り替えられる(すなわち、そのドレイン端子とソース端子との間で効果的に電流が流れない)。その結果、接地に対する点「A」の電位差は、0から電圧V2へと上昇し始める。トランジスタ1542は、ゲートがソースに追従するように構成されるので、このことが、ひいては、コンデンサ160の充電中に、トランジスタ1542のゲートの電圧を上昇させる。したがって、コンデンサ160は、ゲート・ソース追従機構の時間のずれを除去するか、または少なくとも低減するように構成され、動作可能である。トランジスタ1542のゲートとソースとの間の立ち上がり電位差がピンチオフ電圧VP(U2)に達すると、トランジスタ1542はオフに切り替わる(すなわち、ソースとドレインとの間が非導通状態になる)。
【0033】
同時に、点「A」における電圧上昇は、ツェナーダイオード162のツェナー電圧と抵抗器164の電圧降下(すなわち、V
B)との和によって制限される。結果として、抵抗器164の立ち上がり電圧降下は、閾値電圧V
t(M1)を超えるトランジスタ158のゲート端子とソース端子との間の電位差(すなわち、V
GS(M1))を誘導し、このことが、トランジスタ158をオンに切り替える(すなわち、ドレイン端子とソース端子との間が導通状態になる)。抵抗器164の値は、抵抗器164の電圧降下がV
t(M1)を超えることができるように選択される。さらに、ツェナーダイオード162のツェナー電圧定格および抵抗器164の抵抗は、それらの組み合わされた動作が点「A」の電圧をトランジスタ154
1の降伏電圧を下回るように効果的に維持するように選択される(すなわち、そのことによって、トランジスタ154
1を過電圧から保護する)。典型的には、ツェナーダイオード162の値は、以下でより詳細に説明するように、トランジスタ154
1とトランジスタ154
2との間でほぼ等しく阻止電圧を分圧するように選択される。VL-STS156(
図3B)の電圧リミッタ110(
図2A~
図2C)は、主に、ツェナーダイオード162(
図3B)によって実装される。VL-STS156(
図3B)のスイッチング時間同期装置108(
図2A)は、主に、コンデンサ160(
図3B)によって実装される。
【0034】
より一般的には、一実装態様によれば、トランジスタ1541およびトランジスタ1542は、ほぼ同様の特性(たとえば、トランジスタパラメータを定義する物理的特性、仕様および定格)を有するように選択される。このような実装態様によれば、トランジスタ1541およびトランジスタ1542上のドレイン・ソース間電圧降下は、等しくなるように構成される(すなわち、各々が非常に大きい電気抵抗を示すスイッチオフ状態において、平衡化される)。例えば、V2=800Vの場合、各々のトランジスタ1541およびトランジスタ1542の電圧降下は、VD(U1)≒VD(U2)≒400V(それぞれの降伏電圧未満になるように選択される)である。別の実装態様によれば、トランジスタ1541およびトランジスタ1542は、トランジスタがそのような高い阻止電圧(すなわち、ブレークダウンが起こるドレイン・ソース間電圧)を維持することができると仮定して、異なるドレイン・ソース間電圧降下(たとえば、VD(U1)=550V、VD(U2)=650V)を有するように構成される。
【0035】
次に
図5を参照する。
図5は、
図4のスイッチング時間特性の立ち上り時間の詳細図を示すプロット(全体が190で示されている)である。
図5は、時間の関数として、点Dにおける電圧(すなわち、V
D)および点Aにおける電圧(V
A)の電圧をプロットしたグラフ182、184を含む
図4のスイッチング時間特性の詳細な時間スケール拡大図である。
図5に示されているように、V
DおよびV
Aの電圧立ち上がり時間は、ほぼ同時に起こる。特に、V
Aの場合、電圧は、約38ns(ナノ秒)において0Vから上昇し始めて、約86nsにおいて約370Vに至る(すなわち、48nsで)。同様に、V
Dは、約38nsにおいて0Vから上昇し始めて、約88nsにおいて約800Vに至る(すなわち、50nsで)。800V電圧は、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2にわたって、分散されて実質的に平衡化された電圧降下によって、効果的に維持される。高電圧スイッチング装置150は、4nsの個別のスイッチング素子(トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2)間の同期のための許容差を達成する。
【0036】
高電圧スイッチング装置150を「オフ」状態にするために、コントローラ168は、例えば、ピンチオフ電圧未満であるトランジスタ1541のゲート端子とソース端子との間の電位差(例えば、vgs(U1)=0)を誘導することによって、制御信号を生成する(あるいは、オフにする、遮断するなど)ように構成され、動作可能である。その結果、トランジスタ1541は、導通状態になり(すなわち、「オン」状態になり)、トランジスタ1541のドレイン端子は、点Aにおける電圧と共に、接地状態になり、点Aにおける電圧が、ツェナーダイオード162のツェナー電圧降下未満になり、ツェナーダイオード162を停止させる。点Bにおける0に向かう電圧の低下は、それに対応して、トランジスタ1542がオフになる(すなわち、ドレイン端子とソース端子との間が非導通状態になる)までトランジスタ1542のvgs(M1)を低下させる。
【0037】
同時に、トランジスタ1542のソースの電圧低下の後、それに対応して、コンデンサ160を介して効果的に放電するそのゲート上の電圧低下が生じる。したがって、コンデンサ160は、ゲート・ソース追従機構の時間のずれを低減する。トランジスタ1542のゲートとソースと間の電位差の低下は、ピンチオフ電圧VP(U2)を下回るまで低下するので、トランジスタ1542はオンに切り替わる(すなわち、ソースとドレインとの間が導通状態になる)。
【0038】
次に
図6を参照する。
図6は、
図4のスイッチング時間特性の立ち下がり時間の詳細図を示すプロット(全体が192で示されている)である。
図6は、時間の関数として、点Dにおける電圧(すなわち、V
D)および点Aにおける電圧(V
A)の電圧をプロットしたグラフ182、184を含む
図4のスイッチング時間特性の詳細な時間スケール拡大図である。
図6に示されているように、V
DおよびV
Aの電圧立ち下がり時間は、ほぼ同時に起こる。特に、V
A(破線で示されている)の場合、電圧は、約45ns(ナノ秒)において約370Vから低下し始めて、約75nsにおいて約0Vに至る(すなわち、30nsで)。同様に、V
D(実線で示されている)は、45nsにおいて約800Vから低下し始めて、約75nsにおいて0Vに至る(すなわち、30nsで)。800Vは、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2にわたって、分散されて実質的に平衡化された電圧降下によって、効果的に維持される。
【0039】
ここで
図7を参照する。
図7は、
図2の高電圧スイッチング装置の別の実施態様(全体が200で示されている)の概略図である。
図7は、高電圧スイッチング装置200を示しており、これは、各々がトランジスタ154
1およびトランジスタ154
2のゲート端子に直列接続された追加の抵抗器204(「R2」)、206(「R3」)以外は、
図3Bの高電圧スイッチング装置100の構成、動作、および機能と実質的に同様である。
図3Bに示されているのと同じ番号が付された構成要素は、同じ機能を有する。
図3Bの高電圧スイッチング装置100と同様に、高電圧スイッチング装置200は、周辺機器(すなわち、コントローラ112、高電圧電源114、および負荷116)と結合されるように構成され、動作可能である。高電圧スイッチング装置200は、周辺機器と共に、
図7では、まとめて202で表される。抵抗器204、206(本明細書では「電流制限抵抗器」とも呼ばれる)はそれぞれ、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2のそれぞれのゲートを流れる電流を制限するように構成され、動作する。
【0040】
ここで
図8を参照する。
図8は、
図2A~
図2Cの高電圧スイッチング装置のさらに別の実施態様(全体が220で示されている)の概略図である。
図8は、高電圧スイッチング装置220を示しており、これは、ツェナーダイオード162と並列になるように移動されるコンデンサ160(C2)(
図3B)(ここではコンデンサ226(C3)と示されている)以外は、
図3Bの高電圧スイッチング装置100の構成、動作、および機能と実質的に同様である。
図8において、
図3Bに示されているのと同じ番号が付された構成要素は、同じ機能を有する。
図3Bの高電圧スイッチング装置100と同様に、高電圧スイッチング装置220は、周辺機器(すなわち、コントローラ168、高電圧電源160、および負荷172)と結合されるように構成され、動作可能である。高電圧スイッチング装置220は、周辺機器と共に、
図8では、まとめて222で表される。高電圧スイッチング装置220は、コンデンサ226がツェナーダイオード162と並列にされる(さらにコンデンサ160が除去される)ことによって、高電圧スイッチング装置100(
図1、
図2Aおよび
図2B)と同様に機能する。本質的には、トランジスタ154
1が(コントローラ168から制御信号を受信した後に)オフに切り替わることで、接地に対する点「A」の電位差は、0から電圧V2へと上昇する。コンデンサ226は、ツェナーダイオード162が作動状態になる前に、抵抗器164で形成された直列RC回路を介して充電を開始する。結果として、抵抗器164の立ち上がり電圧降下(すなわち、点「B」の電圧)は、閾値電圧V
t(M1)を超えるトランジスタ158のゲート端子とソース端子との間の電位差(すなわち、V
GS(M1))を誘導し、このことが、トランジスタ158をオンに切り替える。点「A」の立ち上がり電圧は、最終的にツェナー電圧を越えて、ツェナーダイオード162を導通状態にする。点「A」における電圧上昇は、ツェナーダイオード162のツェナー電圧と抵抗器164の電圧降下(すなわち、V
B)との和によって制限される。したがって、コンデンサ226は、トランジスタ154
1およびトランジスタ154
2のスイッチング時間を効果的に同期させるように、トランジスタ158のスイッチングを容易にし、促進するように構成され、動作可能である。スイッチング時間同期装置108(
図2A)は、主に、コンデンサ226(
図8)によって実装される。電圧リミッタ110(
図2A~
図2C)は、主に、ツェナーダイオード162(
図3B)によって実装される。
【0041】
ここで、
図9を参照する。
図9は、本開示の技術に従って構築され、動作可能である
図2Aの高電圧スイッチング装置の概略ブロック図であり、高電圧電源を有する高電圧スイッチング装置と負荷との間の別の結合構成を示す図である。
図9は、
図2Aの高電圧スイッチング装置100、高電圧電源114、および負荷116を示す。高電圧電源114および負荷116は、互いに直列に結合され得、一般に、スイッチング素子104
1、104
2、104
3、…、104
Nと結合するように構成され、動作可能である。高電圧スイッチング装置100は、対の一方の端子(分岐)がスイッチング素子#1(104
1)~#N(104
N)のいずれか1つに結合され、対の別の端子(分岐)が高電圧スイッチング装置100の共通接地と結合されるように、高電圧電源114・負荷116の対が結合されるのを可能にする。
図2A、
図2B、および
図2Cに示されている特定の例示的な結合構成は、スイッチング素子104
1、104
2、104
3、…、104
Nの阻止電圧の合計の全範囲(すなわち、「最大阻止電圧」)が使用される、典型的な実施態様を示している。
図9に示されているさらに一般的な結合構成は、最大阻止電圧未満の(または最大阻止電圧に等しい)阻止電圧が実現され得るケースを示している。例えば、本開示の技術に従う電圧平衡構成は、スイッチング電圧がスイッチング素子104
1、104
2、104
3、…、104
Nの電圧降下にほぼ均等に分配され、そのことにより、各々のスイッチング素子がスイッチング電圧の1/Nにほぼ等しい阻止電圧を維持する構成である。この実施例によれば、高電圧電源・負荷対の任意のスイッチング素子への結合は、共通接地に対する異なるスイッチング素子の範囲に含まれるスイッチング素子の数の約N倍に等しい阻止電圧のスイッチングを可能にする。例えば、高電圧電源・負荷対のスイッチング素子104
3への結合構成は、スイッチング素子の阻止電圧の3倍の阻止電圧のスイッチング(すなわち、電圧平衡回路において)を可能にするであろう。各々のスイッチング素子が異なる阻止電圧を有する非電圧平衡回路の場合、またはスイッチング電圧がスイッチング素子間で等しく分配される場合、高電圧電源100は、それぞれのスイッチング素子の個々の阻止電圧の合計である値を有するスイッチング電圧のスイッチングを可能にするであろう。
【0042】
次に
図10A、
図10B、
図10C、および
図11を参照する。
図10Aは、本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能であるGaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)トランジスタの物理的構造(全体が250で示されている)の概略図である。
図10Bは、
図10Aのトランジスタの物理的構造の一部に関連する等価回路(全体が270で示されている)の概略図である。
図10Cは、本開示の技術の実施形態に従って構築され、動作可能である、直列構成で接続された
図10Aのタイプの2つのトランジスタの等価回路(全体が300で示されている)の概略図である。
図11は、
図10Aおよび
図10BのGaN HEMTトランジスタのバッファ層を流れるリーク電流のI-V曲線の概略図である。
図10Aおよび
図10Bは、ソース端子252、ゲート端子254、ドレイン端子256、基板層258、バッファ層260、チャネル層262、2次元電子ガス(2DEG)領域264、およびバリア層266を含むGaNトランジスタ250を示す。基板層258の組成は、GaN/AlGaN層から構成されるバッファ層260がエピタキシャルに成長する(例えば、GaN-on-Si、GaN-on-SiC)のを可能にする材料を含む、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)などを含む可能な材料のリストから選択される。バッファ層260は、典型的には、超格子GaN/AlGaN炭素ドープGaN層、および非意図的にドープされている(UID)GaNチャネルから構成される。チャネル層262は、GaNから構成される。上部AlGaNバリア層は、下部UID GaN層との界面において圧電電荷-2DEGを誘導する。炭素ドープ層は、p型ドープ材料のように挙動し、2DEG264(すなわち、電子の運動が2次元である)の対応するnチャネルとのpn接合を形成する。バリア層266は、
図10Aに示されるように、チャネル層262の上に配置される。
【0043】
本開示の技術の原理によれば、高出力スイッチング装置(例えば、100、200、220)で使用されるトランジスタ250の物理的構造は、スイッチング電圧が直列結合されたトランジスタ間でほぼ均等に分配され、そのことにより電圧平衡回路が実現されるように、自己平衡特性を可能にする。この自己平衡特性の促進は、少なくとも部分的にバッファ層260の固有の特性によって実現される。バッファ層260の等価回路は、例えば、
図10Bに示されているように表現され得る。
図10Bは、トランジスタの物理的構造内の異なる層にわたる例示的な等価回路の個別の構成要素を示す。特に、等価回路は、抵抗器R
BUFFER(すなわち、基板層258の電気抵抗を表す)、コンデンサC
DS(すなわち、ドレイン・ソース間の容量を表す)、抵抗器R
DS(すなわち、ドレイン・ソース間の抵抗を表す)、トランスコンダクタンスg
Mの表示、抵抗器R
S(すなわち、ソースの抵抗を表す)、抵抗器R
SG(すなわち、ソース・ゲート間の抵抗を表す)、コンデンサC
GS(すなわち、ゲート・ソース間の容量を表す)、コンデンサC
G(すなわち、ゲートの容量を表す)、抵抗器R
G(すなわち、ゲートの抵抗を表す)、抵抗器R
DG(すなわち、ドレイン・ゲート間の抵抗を表す)、コンデンサC
DG(すなわち、ドレイン・ゲート間の容量を表す)、および抵抗器R
D(ドレインの抵抗を表す)を含む。
【0044】
図10Cをさらに参照すると、2つの同様のトランジスタ302
1、302
2は、トランジスタ302
1のドレイン端子(D)がトランジスタ302
2のソース端子(S)に接続されるように、直列構成で互いに接続される。トランジスタ302
1、302
2は、実際には、それらの間にわずかな統計的変動があり得るが、同一の物理的構造、特性、機能、および等価回路を有する。本開示の技術の特定の実施態様によれば、トランジスタ302
1、302
2はそれぞれ、
図3のトランジスタ154
1、154
2に対応する。実際に、それぞれの等価回路および構成要素によって示されるトランジスタの類似性は、トランジスタ302
1、302
2の各々の電圧降下、ならびに
図2A、
図2B、
図2C、
図3、
図7、
図8、
図9に示されているスイッチング素子の電圧降下の均等化に関与する分圧器構成を可能にする。同じ物理的構造およびサイズを有するトランジスタ(たとえば、
図10Aおよび
図10Bに示されている)ならびに同じ等価回路(
図10Cに示されている)の使用は、電圧平衡回路の実現をさらに可能にする。
図11は、ソースから基板へバッファ層260を流れるリーク電流およびリーク電流と電圧V
sb(Si基板上へのバイアス)との関係のI-V(電流-電圧)曲線350の一例を示す。初期電流降下は、トラップ充填効果に関連しており、ダイオードのような電流挙動を裏付ける。
【0045】
本開示の技術は、上記で具体的に示され、説明されたものに限定されないことを当業者は理解するであろう。むしろ、本開示の技術の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。