(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/22 20230101AFI20241003BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20241003BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20241003BHJP
B01F 35/95 20220101ALI20241003BHJP
B01F 29/60 20220101ALI20241003BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20241003BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
C02F1/22 A
B01J13/00 B
B01F23/20
B01F35/95
B01F29/60
B01F27/90
C02F1/68 520Z
C02F1/68 530A
C02F1/68 520B
C02F1/68 510A
(21)【出願番号】P 2021103279
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 宏一
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-180628(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169226(WO,A1)
【文献】特開2022-160907(JP,A)
【文献】国際公開第2022/045116(WO,A1)
【文献】特開2020-153587(JP,A)
【文献】特開2018-132209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
C02F 1/68
B01J 13/00
B01F 21/00-25/90
B01F 27/00-27/96
B01F 29/00-33/87
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)液体状態の第1流体と、気体状態の第2流体を含み、直径が1μm未満の前記第2流体の気泡が、第1の数密度で前記第1流体中に混合されている第1液を準備する工程、
(b)前記第1液を攪拌しながら冷却することにより、前記第1流体を選択的に凝固させる工程、
(c)前記(b)工程により凝固した前記第1流体と、凝固しなかった前記第1流体中に前記第2流体の前記気泡が前記第1の数密度よりも高い第2の数密度で混合されている濃縮液と、を分離する工程、
を含む、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記(b)工程は、ウルトラファインバブル液の濃縮装置で実施され、
前記ウルトラファインバブル液の濃縮装置は、
前記第1液を収容するための収容部と、
前記収容部内の前記第1液を攪拌することが可能な攪拌機構部と、
前記収容部内の前記第1液を冷却することが可能な冷却機構部と、
を備え、
前記(b)工程において、凝固した前記第1流体は、前記収容部の内面に凝固膜として成膜される、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記濃縮装置の前記攪拌機構部は、
前記収容部内で回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられる攪拌羽と、
前記回転軸を駆動させるモータと、
を備えている、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記(b)工程において前記凝固膜が成膜される前記収容部の前記内面は、曲面であり、
前記濃縮装置の前記攪拌機構部は、前記収容部が第1回転軸を中心に回転するように駆動することが可能な状態で前記収容部に接続される駆動部を備え、
前記(b)工程では、前記収容部の一部分が前記冷却機構部に冷却された状態で、前記収容部自身が回転することにより、前記収容部内の前記第1液が攪拌される、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記第1回転軸は、前記収容部内で静止した時の前記第1液の液面に対して90度未満の角度で傾斜している、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記(b)工程は、
(b1)前記第1液の一部が前記収容部に収容された状態で、前記第1液の一部を攪拌しながら冷却することにより、前記第1液の一部に含まれる前記第1流体を選択的に凝固させて、第1濃縮液を得る工程と、
(b2)前記(b1)工程の後、前記収容部内の前記第1濃縮液に前記第1液の他の一部を供給し、第2液とする工程と、
(b3)前記(b2)工程の後、前記第2液を攪拌しながら冷却することにより、前記第2液に含まれる前記第1流体を選択的に凝固させ、第2濃縮液を得る工程と、
を含んでいる、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1液には、前記第1流体よりも沸点が低い揮発性物質が溶存している、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【請求項8】
請求項2において、
前記収容部の内面には、前記第1流体の凝固物から成る第1凝固膜が前記(b)工程を開始する前に予め形成されている、ウルトラファインバブル濃縮液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルトラファインバブル濃縮液の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ウルトラファインバブル水を減圧条件下で加熱することによりウルトラファインバブル水の液体成分を気化させて、ウルトラファインバブル水に含まれるウルトラファインバブルの数密度を濃縮する技術がある(例えば非特許文献1参照)。また、非特許文献2には、高温環境および低温環境でのウルトラファインバブルの安定性について評価した結果が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Shunya Tanaka,他3名,“Concentration and Dilution of Ultrafine Bubbles in Water”,Colloids and Interfaces,(スイス),Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI),2020年11月5日
【文献】小林嵩季(新潟大院),他6名,「高温および低温環境におけるウルトラファインバブルの安定性の検討」,日本混相流学会 混相流シンポジウム 2020 講演論文集,(日本),日本混相流学会,2020年8月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウルトラファインバブル液とは、液体中に多数の微細な気泡が存在する状態の液であって、多数の気泡のそれぞれの直径が1μm未満であるものを言う。一般的には、水中に空気から成る多数の微細な気泡が存在するウルトラファインバブル水として知られ、水や炭酸水とは異なる特性を有することから、種々の産業分野での利用が検討されている。また、ウルトラファインバブル液の性能安定化、あるいはウルトラファインバブル液の取り扱いの容易性を考慮すると、ウルトラファインバブルの数密度、言い換えれば、ウルトラファインバブルの個数濃度を制御する技術が望まれる。
【0005】
ウルトラファインバブル液の製造方法としては、例えば、気液混合流体を旋回させて、気液混合流体をせん断する方法など種々の方法が知られている。ところが、一般的なウルトラファインバブル水の製造方法で得られるウルトラファインバブル液におけるウルトラファインバブルの数密度には限界がある。本願発明者は、ウルトラファインバブルの数密度が高いウルトラファインバブル液を製造する技術について検討を行っている。
【0006】
上記した特許文献1のように、ウルトラファインバブル水の液体成分を気化させて、ウルトラファインバブル水に含まれるウルトラファインバブルの数密度を濃縮する方法の場合、高濃度のウルトラファインバブル水が取得できる。
【0007】
ただし、上記した方法の場合、濃縮工程中に加熱プロセスを含んでいるため、得られるウルトラファインバブル液の特性が限定される。例えば、濃縮工程に供する被処理液に、フレーバーなどの揮発性成分が含まれている場合、加熱プロセスを施すことにより、揮発成分は気化されてしまう。
【0008】
本発明の目的は、ウルトラファインバブルの数密度が高いウルトラファインバブル液の製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態であるウルトラファインバブル濃縮液の製造方法は、以下の工程を含んでいる。
(A)液体状態の第1流体と、気体状態の第2流体を含み、直径が1μm未満の前記第2流体の気泡が、第1の濃度で前記第1流体中に混合されている第1液を準備する工程。
(B)前記第1液を攪拌しながら冷却することにより、前記第1流体を選択的に凝固させる工程。
(C)前記(B)工程により凝固した前記第1流体と、凝固しなかった前記第1流体中に前記第2流体の前記気泡が前記第1の体積濃度よりも高い第2の濃度で混合されている濃縮液と、を分離する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によれば、ウルトラファインバブルの数密度が高いウルトラファインバブル液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】水中に存在する非ウルトラファインバブルおよびウルトラファインバブルの挙動を模式的に示す説明図である。
【
図2】一実施の形態であるウルトラファインバブルの濃縮液の製造方法のフローの一例を示す説明図である。
【
図3】濃縮処理前のウルトラファインバブル液を示す断面図である。
【
図4】
図2に示す濃縮工程で利用される濃縮装置の容器内に、
図3に示す濃縮処理前のウルトラファインバブル液を濃縮装置の容器内に供給した状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す濃縮装置の攪拌機構部と冷却機構部とを同時に動作させることにより、収容部内に流体の一部が凝固膜として形成された状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図5に示す凝固膜と濃縮液とを分離した状態を模式的に示す拡大断面図である。
【
図7】
図3に対する変形例である第1液を示す断面図である。
【
図8】
図4に示す濃縮装置に対する変形例である濃縮装置の収容部内に、
図7に示す濃縮処理前のウルトラファインバブル液を濃縮装置の容器内に供給した状態を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図8に示す濃縮装置の攪拌機構部と冷却機構部とを同時に動作させることにより、収容部内に流体の一部が凝固膜として形成された状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図2に示すフローに対する変形例を示す説明図である。
【
図11】
図10に示す第1液追加工程の後の状態を示す断面図である。
【
図12】
図10に示す第2濃縮工程の後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ウルトラファインバブルについて>
図1は、水中に存在する非ウルトラファインバブルおよびウルトラファインバブルの挙動を模式的に示す説明図である。
図1に示す例では、液体10は水である。また、ウルトラファインバブル20A、および非ウルトラファインバブル20Bのそれぞれは、空気の気泡である。以下で説明する技術により製造されるウルトラファインバブル液の液体および気泡には、種々の物質を用いることができるが、以下の実施の形態では、液体10が水、ウルトラファインバブル20Aが空気である場合を取り上げて、例示的に説明する。
【0013】
図1に示す例では、液体10中にウルトラファインバブル20Aおよび非ウルトラファインバブル20Bを含む複数の気泡20が存在する。ウルトラファインバブル20A、および非ウルトラファインバブル20Bの区別は、気泡20の径により区別することができる。ウルトラファインバブル20Aの気泡径D1は、1μm未満である。非ウルトラファインバブル20Bの気泡径D2は、1μm以上である。なお、ウルトラファインバブル20Aは、気泡径が小さいので、ほぼ球体と見做せる形状を持つ。一方、非ウルトラファインバブル20Bの場合には、
図1に例示するように楕円球体など、さまざまな形状で、液体10中に存在するものも含まれる。
図1では、便宜上、楕円球体の短径を気泡径D2として示しているが、非ウルトラファインバブル20Bの気泡径D2は、非ウルトラファインバブル20Bを球体に換算した時の直径として定義される。なお、ウルトラファインバブル20Aの気泡径D1は、上記した気泡径D2と同様に、各気泡20を球体に換算した時の直径として定義される。
【0014】
図1に矢印を用いて模式的に示すように、非ウルトラファインバブル20Bは、液体10中で生じる浮力により液面10tに向かって浮上し、液面10tにおいて破裂する。
【0015】
一方、ウルトラファインバブル20Aは、気泡径D1が1μm以下と小さいので、液体10中で安定的に自身の形状を維持することができる。また、ウルトラファインバブル20Aの気泡径D1が小さいことにより、ストークスの式により算出されるウルトラファインバブル20Aの浮上速度は、ウルトラファインバブル20Aのブラウン運動による上下左右前後へのランダムな移動速度よりも遅い。この結果、ウルトラファインバブル20Aは、液面10tに向かって浮上せず、液体10中に長時間に亘って浮遊し続けることができる。
【0016】
非ウルトラファインバブル20Bのうち、気泡径D2が比較的小さい(例えば100μm以下)のものは、マイクロバブルと呼ばれ、ウルトラファインバブル20Aと総称してファインバブルと呼ばれ場合がある。以下のように視覚的に識別することができる。すなわち、マイクロバブルを含む水は、白濁している。一方、ウルトラファインバブル20Aのみを含む水は、無色透明である。これは、ウルトラファインバブル20Aの気泡径D1が小さいことにより、ウルトラファインバブル20Aのほとんどが可視光を散乱しないためである。
【0017】
<ウルトラファインバブルの数密度>
本願発明者は、ウルトラファインバブルの数密度を制御する技術について検討を行っている。「ウルトラファインバブルの数密度」とは、単位体積のウルトラファインバブル液中に含まれるウルトラファインバブルの個数である。「ウルトラファインバブルの数密度」は「ウルトラファインバブルの個数濃度」と読み替えることもできる。
【0018】
ウルトラファインバブル液中におけるウルトラファインバブルの数密度は、例えば以下のように計測することができる。代表的な計測法であるナノ粒子追跡式法では、ウルトラファインバブル液に2次元平面レーザー光を照射しブラウン運動するウルトラファインバブルからのレーザー散乱光点の撮影から視野体積中のウルトラファインバブル個数をカウントすることで数密度が求まる。
【0019】
ウルトラファインバブル液を製造する方法としては、以下のような方法がある。例えば、加圧溶解式の製造方法は、液体である第1流体中に第2流体を加圧溶解させた後、急激に減圧することにより過飽和状態を利用して第2流体を気化させることにより発泡させる方法である。気液混合流体のせん断方式の製造方法は、気体と液体とが混在した気液混合流体を粉砕することにより微細な気泡を発生させる方法である。気液混合流体を粉砕する方法には、例えば、気液混合流体を旋回させて、その旋回力を利用する方式と、スタティックミキサに気液混合流体を通過させて、そのせん断力を利用する方法と、を例示することができる。また、散気式の製造方法は、微細な孔が形成された多孔質フィルムを介して液体中に気体を供給する方法である。
【0020】
上記の方法の場合、ウルトラファインバブル液を製造することはできるが、液中のウルトラファインバブルの数密度を制御することは難しい。そこで、本願発明者は、上記に例示したような方法で得られたウルトラファインバブル液に対して希釈処理または濃縮処理を施して、ウルトラファインバブルの数密度を制御する方法ついて検討した。上記した非特許文献1に記載されるように、ウルトラファインバブル水を希釈することにより、ウルトラファインバブルの数密度を所定の値に低下させられることが判った。ウルトラファインバブルの数密度を所定の値に高めるための方法としては、上記した非特許文献1に記載されるように、エバポレータを利用し、ウルトラファインバブル水を減圧条件下で加熱して水分を気化させることによりウルトラファインバブル水を濃縮する方法がある。ただし、加熱プロセスを必要としない濃縮方法は見つかっていない。
【0021】
ウルトラファインバブル液の用途として、ウルトラファインバブル液に添加剤を加えることで付加価値を向上させられる場合がある。添加剤には種々の変形例があるが、例えばフレーバーなど、揮発性の高い添加剤の場合、濃縮時の加熱プロセスにおいて添加剤が揮発してしまう場合がある。そこで、本願発明者は、例えば、揮発性の高い材料を添加剤として含んでいるウルトラファインバブル液を濃縮することが可能な方法について検討を行った。
【0022】
<ウルトラファインバブルの濃縮液の製造方法>
以下で説明する本実施の形態のウルトラファインバブルの濃縮液の製造方法は、
図2に示すように、第1液準備工程と、濃縮工程と、分離工程と、を備えている。
図2は、本実施の形態のウルトラファインバブルの濃縮液の製造方法のフローの一例を示す説明図である。
図3は、濃縮処理前のウルトラファインバブル液を示す断面図である。
【0023】
図2に示す第1液準備工程では、
図3に示す第1液UFB1を準備する。第1液UFB1は、液体状態の流体(第1流体)11と、気体状態の流体(第2流体)21と、を含んでいる。第1液UFB1は、所謂、ウルトラファインバブル液であって、流体21の気泡21Aの直径(
図1に示す気泡径D1)は1μm未満である。流体11を含む液体30には、第1の数密度で気泡21Aが混合されている。第1液UFB1は、濃縮処理前のウルトラファインバブル液なので、第1の数密度の値は任意である。例えば、第1の数密度(1ミリリットルの第1液UFB1に含まれる気泡21Aの個数)は、例えば0.1×10
8~30×10
8/mL程度である。
【0024】
一例として、流体11から成る液体30は水であり、流体21から成る気泡21Aは、空気である。ただし、流体11および流体21に用いる物質には種々の適用例がある。例えば、変形例として後述するように、水である流体11にフレーバーなどの揮発性物質を溶存させた液体を、液体30に変えて用いることができる。また、流体21についても、空気の他、窒素や希ガスなどの不活性ガス、あるいはオゾンなどの反応性ガスを備える流体を用いることもできる。
【0025】
第1液UFB1の製造方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、上述した加圧溶解式の製造方法、気液混合流体のせん断方式の製造方法、気液混合流体を粉砕する方法、あるいは、散気式の製造方法を用いることができる。上記したいずれかの方法により、第1の数密度でウルトラファインバブルが分散されたウルトラファインバブル液である第1液UFB1が得られる。
【0026】
次に
図2に示す濃縮工程では、第1液UFB1を攪拌しながら冷却することにより、流体11を選択的に凝固させる。すなわち、本実施の形態のウルトラファインバブル濃縮液の製造方法は、冷却プロセスを利用することにより、ウルトラファインバブル液を濃縮する。
図4は、
図2に示す濃縮工程で利用される濃縮装置の収容部内に、
図3に示す濃縮処理前のウルトラファインバブル液を濃縮装置の容器内に供給した状態を模式的に示す断面図である。
図5は、
図4に示す濃縮装置の攪拌機構部と冷却機構部とを同時に動作させることにより、収容部内に流体の一部が凝固膜として形成された状態を模式的に示す断面図である。
【0027】
図2に示す濃縮工程は、例えば
図4に示す濃縮装置100により実施される。ウルトラファインバブル液の濃縮装置100は、第1液UFB1を収容するための収容部40と、収容部40内の第1液UFB1を攪拌することが可能な攪拌機構部50と、収容部40内の第1液UFB1を冷却することが可能な冷却機構部60と、を備えている。
【0028】
図4に示す例では、濃縮装置100の攪拌機構部50は、収容部40内で回転する回転軸51と、回転軸51に取り付けられる攪拌羽52と、回転軸51を駆動させるモータ53と、を備えている。濃縮装置100の冷却機構部60は、収容部40の周囲に配置される冷媒61と、冷媒61を収容する浴槽62と、を備えている。また、
図4に示す例では、浴槽62には、冷媒61の供給口62Aおよび冷媒61の排出口62Bが設けられている。供給口62Aから供給された冷媒61は、浴槽62内で対流し、排出口62Bから排出される。
【0029】
浴槽62内に充填された冷媒61は、例えば0℃以下において凝固しない液体(不凍液と呼ばれる液体)であって、0℃未満の温度に冷却されている。冷媒61の種類によっても温度は異なるが、例えば冷媒61の温度は、-20℃から-25℃程度に設定することができる。収容部40は、少なくともその一部分が浴槽62内の冷媒61に浸漬されている。これにより、収容部40を介して収容部40内の第1液UFB1が冷却される。また、モータ53を駆動させることにより、攪拌機構部50の回転軸51を回転動作させる。回転軸51は、
図4に二点鎖線で示す仮想線である回転軸VL1を中心として矢印で示す方向に回転動作する。回転軸51に取り付けられた攪拌羽52は、回転軸51の動作に伴って回転動作する。攪拌羽52は、収容部40内の第1液UFB1内に浸漬されているので、第1液UFB1は、攪拌羽52の回転動作に起因して攪拌される。
【0030】
図4に示す濃縮装置100の場合、攪拌機構部50と冷却機構部60とを同時に動作させることにより、第1液UFB1を攪拌しながら冷却することが実現される。回転軸の回転動作の回転数は特に限定されないが、例えば、300~600rpm(毎分300~600回転)程度の回転速度で回転させる方法を例示できる。
【0031】
収容部40のうち、冷媒61に浸漬された部分は冷却されている。
図5に示す例では、収容部40の内面41のうち、底面41bの全体、および側面41sの一部分(底面41bに連なる部分)が冷却されている。この冷却された部分の温度が流体11の凝固点よりも低い場合には、
図5に示すように。収容部40の底面41b(および側面41sの冷却された部分)に触れた部分から流体11が徐々に凝固し始め、凝固した流体11は、収容部40の内面41に凝固膜31として成膜される。流体11が水である場合、凝固膜31は氷である。
【0032】
この時、冷媒61の温度は、流体21の凝縮点よりも高い温度に設定されているので、流体21は液化せず、気体状態のまま残った液体30内に存在し続ける。また、本実施の形態の濃縮工程では、流体11および流体21を含む第1液UFB1(
図4参照)を継続的に攪拌しながら、液体30の一部分を徐々に凝固させる。このため、第1液UFB1を瞬間的に凝固させる場合と比較して気泡21Aが凝固膜31内に閉じ込められにくい。また、流体11の物質から成る凝固膜31が形成された場合、凝固膜31に対する濡れ性は、流体11の方が流体21よりも高い。この凝固膜31に対する濡れ性の差に起因して、気泡21Aは凝固膜31に付着し難いので、結果として凝固膜31は流体11の膜として成長し易い。このため、本実施の形態の濃縮工程によれば、流体11を選択的に凝固させることができる。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、流体11を選択的に凝固させることができる。この結果、
図5に示す残った液体30内に含まれる気泡21Aの数密度(第2の数密度)は、
図4に示す第1液UFB1に含まれる気泡21Aの数密度(第1の数密度)よりも多い。すなわち、本実施の形態の濃縮工程により、ウルトラファインバブルである気泡21Aの数密度が濃縮された、濃縮液UFB2が得られる。濃縮液UFB2の数密度は、濃縮装置100の運転時間に比例して大きくなるが、例えば、120分間運転した場合、第2の数密度は第1の数密度に対して2倍程度になることが実験的に確認された。
【0034】
次に、
図2に示す分離工程では、
図6に示すように、濃縮液UFB2と、凝固膜31とを分離する。
図6は、
図5に示す凝固膜と濃縮液とを分離した状態を模式的に示す拡大断面図である。濃縮液UFB2には、濃縮工程において凝固しなかった流体11を含む液体30中に流体21の気泡21Aが第1の数密度よりも高い第2の数密度で混合されている。すなわち、濃縮液UFB2は、ウルトラファインバブルの数密度が
図3に示す第1液UFB1と比較して濃縮された、ウルトラファインバブル濃縮液である。
【0035】
図6に示す例では、
図5に示す濃縮装置100から取り出した収容部40を反転させて、容器42内に濃縮液UFB2のみを選択的に移し替える例を示している。ただし、分離方法は、
図6に示す方法には限定されない。例えば、
図5に示す濃縮装置100内に収容部40を固定した状態で図示しないポンプなどの送液機構部を用いて濃縮液UFB2を
図6に示す容器42に移送する方法を例示できる。本実施の形態の場合、凝固膜31は個体なので、濃縮装置100と凝固膜31とを分離することは比較的容易である。
【0036】
以上の各工程により、ウルトラファインバブル濃縮液である濃縮液UFB2が得られる。収容部40内に残った凝固膜31は、例えば加熱することにより簡単に液化することができるので、液化処理を行った後で収容部40から除去することが好ましい。
【0037】
なお、本実施の形態の場合、
図5に示すように、液体30を攪拌しながら流体11を選択的に凝固させる必要があるので、凝固膜31の厚さが極端に厚くなると、攪拌羽52および回転軸51の回転動作に凝固膜31が干渉する場合がある。したがって、凝固膜31の厚さが攪拌羽52および回転軸51に接触する程厚くなる前に濃縮工程を完了し、分離工程を行った後で凝固膜31を除去することが好ましい。
【0038】
濃縮液UFB2よりもさらに高い濃縮率のウルトラファインバブル濃縮液が必要な場合には、
図6に示す濃縮液UFB2を
図3に示す第1液UFB1と見做して、
図2に示す濃縮工程および分離工程を繰り返し行うことが好ましい。濃縮工程において形成される凝固膜31の体積、および
図2に示す濃縮工程および分離工程を繰り返し行う回数を制御することにより、得られるウルトラファインバブル濃縮液におけるウルトラファインバブルの数密度を制御することができる。
【0039】
<揮発性物質を含む変形例>
次に、本実施の形態のウルトラファインバブル濃縮液の製造方法を適用して特に有効な使用例について説明する。
図7は、
図3に対する変形例である第1液を示す断面図である。
【0040】
図7に示す第1液UFB3は、液体30内に、流体11の他、流体11よりも沸点が低い揮発性物質12が溶存している点で、
図3に示す第1液UFB1と相違する。揮発性物質12は、流体11よりも揮発性が高い物質であり、例えばフレーバーである。上記したように、本実施の形態のウルトラファインバブル濃縮液の製造方法は、加熱プロセスを用いずに、ウルトラファインバブル液を濃縮することができるので、フレーバーなどの揮発性物質12を含む液体30の濃縮に用いて特に有効である。
【0041】
なお、所定の数密度に濃縮されたウルトラファインバブル濃縮液に添加物質として揮発性物質12を添加する方法の場合、濃縮工程に加熱プロセスを含めることもできる。ただし、ウルトラファインバブルの数密度が高くなる程、液体中に存在するウルトラファインバブル同士が凝集する可能性が高くなる。このため、添加物質を添加してウルトラファインバブル濃縮液中に溶け込ませる作業中に液体中に存在するウルトラファインバブル同士が凝集する可能性が高くなる。したがって、作業の容易性の観点からは、添加物質として揮発性物質12を添加する場合であっても、濃縮前の第1液UFB3の段階で揮発性物質を添加できる本実施の形態の方法は有利である。また、本実施の形態の方法の場合、例えば、液体30に果汁が含まれる場合など、原料にフレーバー成分が含まれている場合でも、フレーバーの揮発を抑制することができる。
【0042】
図7に示す第1液UFB3を用いた場合でも、
図2~
図6を用いて説明した方法と同様の方法で揮発性物質12を含む第1液UFB1におけるウルトラファインバブルの数密度を濃縮することができる。
【0043】
濃縮工程では、
図5に示す流体11中に揮発性物質12(
図7参照)が溶存した状態で凝固膜31が形成されるが、揮発性物質12は、流体11と比較して凝固点が低いので、揮発性物質12の成分は凝固膜31に含まれにくい。この結果、揮発性物質12は凝固膜31に取り込まれ難いので、残った濃縮液UFB2は、ウルトラファインバブルである気泡21Aと揮発性物質12とが濃縮された状態となる。
【0044】
<濃縮装置の変形例>
次に、
図4および
図5に示す濃縮装置100に対する変形例について説明する。
図8は、
図4に示す濃縮装置に対する変形例である濃縮装置の収容部内に、
図7に示す濃縮処理前のウルトラファインバブル液を濃縮装置の容器内に供給した状態を模式的に示す断面図である。
図9は、
図8に示す濃縮装置の攪拌機構部と冷却機構部とを同時に動作させることにより、収容部内に流体の一部が凝固膜として形成された状態を模式的に示す断面図である。なお、本セクションで説明する濃縮装置101(
図8参照)を用いてウルトラファインバブル濃縮液の製造方法の工程フローは、
図2に示す内容と同様である。したがって、以下では必要に応じて
図2を参照しながら説明する。
【0045】
図2に示す第1液準備工程は、既に説明した通りなので、重複する説明は省略する。本変形例における第1液準備工程で準備する第1液は、
図3に示す第1液UFB1でもよいし、
図7に示す第1液UFB3のように、液体30が揮発性物質12を含んでいてもよい。以下の説明では、代表例として
図7に示す第1液UFB3を用いた例を取り上げて説明する。
【0046】
図2に示す濃縮工程では、第1液UFB3を攪拌しながら冷却することにより、流体11を選択的に凝固させる。本変形例の濃縮工程は、例えば
図8に示す濃縮装置101により実施される。ウルトラファインバブル液の濃縮装置101は、第1液UFB1を収容するための収容部40と、収容部40内の第1液UFB1を攪拌することが可能な攪拌機構部50と、収容部40内の第1液UFB1を冷却することが可能な冷却機構部60と、を備えている。この点は、
図4に示す濃縮装置100と同様である。
【0047】
図8に示す変形例である濃縮装置101は、以下の点で
図4に示す濃縮装置100と相違する。濃縮装置101が備える収容部45の底面46bは、丸底になっており、側面との境界がない。濃縮工程では、底面46bを含む収容部45の内面46に流体11から成る凝固膜31(
図9参照)が形成される。言い換えれば、濃縮工程において凝固膜31が成膜される収容部45の内面46は、曲面である。また、濃縮装置101の攪拌機構部50は、収容部45が回転軸(第1回転軸)VL2を中心に回転するように駆動することが可能な状態で収容部45に接続されるモータ(駆動部)53を備えている。濃縮工程では、収容部45の一部分(底面46b)が冷却機構部60に冷却された状態で、収容部45自身が回転することにより、収容部45内の第1液UFB3が攪拌される。
【0048】
濃縮装置101の冷却機構部60は、収容部40の周囲に配置される冷媒61と、冷媒61を収容する浴槽62と、を備えている。また、
図8に示す例では、浴槽62には、冷媒61の供給口62Aおよび冷媒61の排出口62Bが設けられている。供給口62Aから供給された冷媒61は、浴槽62内で対流し、排出口62Bから排出される。冷却機構部60に関しては、
図4に示す濃縮装置100と同様である。
【0049】
浴槽62内に充填された冷媒61は、例えば0℃以下において凝固しない液体(不凍液と呼ばれる液体)であって、0℃未満の温度に冷却されている。例えば冷媒61の温度は、-20℃から-25℃程度に設定することができる。収容部45は、少なくともその一部分が浴槽62内の冷媒61に浸漬されている。これにより、収容部45を介して収容部45内の第1液UFB3が冷却される。また、モータ53を駆動させることにより、収容部45自身が回転軸VL2を回転中心として回転動作する。収容部45内に入っている第1液UFB3は、収容部45の回転動作に伴って収容部45内で動き、攪拌される。
【0050】
図8に示す濃縮装置101の場合、攪拌機構部50と冷却機構部60とを同時に動作させることにより、第1液UFB3を攪拌しながら冷却することが実現される。収容部45の回転動作の回転数は特に限定されないが、例えば、
図4を用いて説明した例と同様に300~600rpm程度の回転速度で回転させる方法を例示できる。
【0051】
第1液UFB1は、収容部45を介して冷媒61の冷熱により冷却される。このため、収容部45の内面46には流体11が選択的に凝固することにより成膜される凝固膜31が形成される点は、
図5を用いて説明した例と同様である。冷媒61の温度は、流体21の凝縮点よりも高い温度に設定されているので、流体21は液化せず、気体状態のまま残った液体30内に存在し続ける。また、本変形例においても、流体11、揮発性物質12、および流体21を含む第1液UFB3(
図8参照)を継続的に攪拌しながら、液体30の一部分を徐々に凝固させる。このため、第1液UFB3を瞬間的に凝固させる場合と比較して気泡21Aが凝固膜31内に閉じ込められにくい。また、流体11の物質から成る凝固膜31が形成された場合、凝固膜31に対する濡れ性は、流体11の方が流体21よりも高い。この凝固膜31に対する濡れ性の差に起因して、気泡21Aは凝固膜31に付着し難いので、結果として凝固膜31は流体11の膜として成長し易い。このため、本実施の形態の濃縮工程によれば、流体11を選択的に凝固させることができる。
【0052】
図4および
図5を用いて説明した例と同様に、本変形例の場合にも、流体11を選択的に凝固させることができる。この結果、
図9に示す残った液体30内に含まれる気泡21Aの数密度(第2の数密度)は、
図7に示す第1液UFB3に含まれる気泡21Aの数密度(第1の数密度)よりも多い。すなわち、本実施の形態の濃縮工程により、ウルトラファインバブルである気泡21Aの数密度が濃縮された、濃縮液UFB4が得られる。濃縮液UFB4は、ウルトラファインバブルの数密度が
図7に示す第1液UFB3と比較して濃縮された、ウルトラファインバブル濃縮液である。
【0053】
また、本変形例の場合、収容部45自身が回転動作するため、収容部45の内面46は、広範囲が冷却される。収容部45の内面46の底面46bを含む部分に凝固膜31が形成される点は、
図5を用いて説明した例と同様である。ただし、本変形例の場合、内面46のうち、凝固膜31が形成される部分の面積が
図5に示す例よりも広い。
【0054】
特に、
図8に示す例の場合、回転軸VL2は、収容部45内で静止した時の第1液UFB3の液面UFBtに対して90度未満の角度で傾斜している。
図8に示す例では、回転軸VL2は、収容部45内で静止した時の第1液UFB3の液面UFBtに対して約30度の角度で傾斜している。この場合、収容部45のうち、冷媒61内に浸漬される部分の面積が大きくなるので、凝固膜31が形成される部分の面積をより大きくすることができる。本変形例のように、凝固膜31が成膜される部分の面積を大きくできれば、1回の濃縮工程での濃縮効率を向上させることができる。
【0055】
図2に示す分離工程は、
図6を用いて説明した実施態様において、収容部40として記載した部分を収容部45に置き換えて適用することができる。このため、重複する説明は省略する。
【0056】
以上の各工程により、ウルトラファインバブル濃縮液である濃縮液UFB4が得られる。収容部45内に残った凝固膜31は、例えば加熱することにより簡単に液化することができるので、液化処理を行った後で収容部45から除去することが好ましい。
【0057】
なお、本変形例の場合、
図9に示すように、収容部45の回転により液体30を攪拌するので、
図5を用いて説明した濃縮装置100のように凝固膜31と攪拌羽52とが接触する懸念がない。したがって、残留する凝固膜31を取り除かない状態で、次の濃縮工程を実施することもできる。言い換えれば、本変形例の場合、濃縮液UFB4よりもさらに高い濃縮率のウルトラファインバブル濃縮液が必要な場合には、濃縮工程の時間を制御することにより得られるウルトラファインバブル濃縮液におけるウルトラファインバブルの数密度を制御することができる。また、変形例として分離工程を実施する前に濃縮工程を複数回繰り返して行うことができる。この変形例については後述する。
【0058】
<濃縮工程の変形例>
次に、
図2に示す濃縮工程の変形例について説明する。
図10は、
図2に示すフローに対する変形例を示す説明図である。
図11は、
図10に示す第1液追加工程の後の状態を示す断面図である。
図12は、
図10に示す第2濃縮工程の後の状態を示す断面図である。
図10に示すウルトラファインバブル濃縮液の製造方法は、濃縮工程が
図2に示すウルトラファインバブル濃縮液の製造方法と相違する。
図10に示すウルトラファインバブル濃縮液の製造方法は、濃縮工程が、第1濃縮工程と、第1液追加工程と、第2濃縮工程と、を含んでいる。
【0059】
本変形例の場合、
図3に示す第1液UFB1または
図7に示す第1液UFB3を準備する。本変形例の場合、
図2に示す方法と比較して多量のウルトラファインバブル濃縮液を製造できるので、第1液UFB1またはUFB3もこれに応じて多量に準備する。
図10に示す製造方法は、
図3~
図5を用いて説明した実施態様と、
図7~
図9を用いて説明した実施態様のいずれの場合でも適用可能である。以下では代表例として、
図7~
図9を用いて説明した例に適用した場合を取り上げて説明する。
【0060】
第1濃縮工程は、
図7に示す第1液UFB3の一部が
図8に示す収容部45に収容された状態で、第1液UFB3の一部(収容部45に入っている分)を攪拌しながら冷却することにより第1液UFB3の一部(収容部45に入っている分)に含まれる流体11を選択的に凝固させて濃縮液UFB4(
図9参照)を得る工程である。本工程での処理は、
図8および
図9を用いて説明した濃縮工程と同様なので重複する説明は省略する。本変形例の場合、第1濃縮工程は、濃縮工程の途中段階なので、濃縮液UFB4は、最終的に得られる製品ではなく、中間製品である。
【0061】
第1液追加工程は、第1濃縮工程の後、収容部45内に
図7に示す第1液UFB3の他の一部を供給し、
図11に示す第2液UFB5をとする工程である。第1液追加工程は、収容部45内に
図9に示す濃縮液UFB4が残った状態で行う。このため、濃縮液UFB4は希釈されるが、
図11に示す第2液UFB5におけるウルトラファインバブルの数密度は、
図7に示す第1液UFB3におけるウルトラファインバブルの数密度より高い。
【0062】
第2濃縮工程は、第1液追加工程の後、
図11に示す第2液UFB5が収容部45に収容された状態で、第2液UFB5を攪拌しながら冷却することにより、第2液UFB5に含まれる流体11を選択的に凝固させ、
図12に示す濃縮液UFB6を得る。
【0063】
図10に示す分離工程は、
図6を用いて説明した実施態様において、収容部40として記載した部分を収容部45に置き換えて適用することができる。このため、重複する説明は省略する。
【0064】
本変形例のように、濃縮工程において、濃縮処理を複数回に行うことにより、第1液UFB3を一度に濃縮する方法と比較して、最終的に得られるウルトラファインバブル濃縮液におけるウルトラファインバブルの数密度を高くすることができる。
【0065】
なお、
図10では、第1液準備工程と分離工程との間に、2回の濃縮工程を含む実施態様について説明した。ただし、第1液準備工程と分離工程との間に含まれる濃縮工程の回数は2回には限定されず、3回以上の場合もある。
【0066】
また、本変形例では、
図7~
図9を用いて説明した実施態様の変形例として説明したが、
図3~
図6を用いて説明した例の変形例として適用することもできる。ただし、
図5に示す濃縮装置100の場合、攪拌羽52に凝固膜31が接触してしまった場合には、十分な攪拌処理を行うことが困難になる。一方、
図8に示す濃縮装置101の場合、収容部45内には攪拌のための部材が配置されないので、濃縮装置100のような制約がない。このため、収容部45の容量を有効に活用できるという点では、
図8に示す濃縮装置101に本変形例を適用することが特に有効である。
【0067】
また、本変形例に対する応用として、以下のような変形例が考えられる。すなわち、
図10に示すフローにおいて、濃縮工程が始まる前に、収容部45の内面46に流体11の凝固物から成る凝固膜31を形成しておく方法がある。例えば、液体30に流体11以外の複数の材料が含まれている場合、複数の材料の一部の凝固点が流体11の凝固点に近い場合、濃縮工程においてその物質が凝固膜31に含まれてしまう場合がある。
【0068】
濃縮工程が始まる前に、収容部45の内面46に流体11の凝固物から成る凝固膜31が予め形成されている場合、液体30のうち、流体11に対する濡れ性が特に高くなるので、凝固し易い物質が液体30に含まれている場合でも、流体11を選択的に凝固させやすくなる。
【0069】
また、この変形例は、
図2に示す製造フローおよび
図3~
図6を用いて説明した製造フローでも適用できる。すなわち、
図5に示す濃縮装置において、収容部40の内面41に流体11の凝固物から成る凝固膜31が予め形成されている場合、液体30のうち、流体11に対する濡れ性が特に高くなるので、凝固し易い物質が液体30に含まれている場合でも、流体11を選択的に凝固させやすくなる。
【0070】
本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しな
い範囲で種々変更可能である。例えば、上記では、第2流体として空気を用い、第1流体として水を用いた例、および第1流体にフレーバーが添加された例を取り上げて説明したが、非凝縮性流体および凝縮性流体には種々の変形例を適用可能である。第2流体として、例えば、窒素や希ガスなどの不活性ガス、あるいはオゾンなどのラジカルな分子を備える流体を用いることができる。また第1流体として、例えば、燃料系の油や食品系の油を例示することができる。また例えば、上記では、種々の変形例について説明したが、実施態様の一部分を他の実施態様と組み合わせて適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、様々な産業分野で活用されているウルトラファインバブル液に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10:液体、10t,UFBt:液面、11:流体(第1流体)、12:揮発性物質、20:気泡、20A:ウルトラファインバブル、20B:非ウルトラファインバブル、21:流体(第2流体)、21A:気泡、30:液体、31:凝固膜、40,45:収容部、41,46:内面、41b,46b:底面、41s:側面、50:攪拌機構部、51:回転軸、52:攪拌羽、53:モータ(駆動部)、60:冷却機構部、61:冷媒、62:浴槽、62A:供給口、62B:排出口、100,101:濃縮装置、D1,D2:気泡径、UFB1,UFB3:第1液、UFB2、UFB4、UFB6:濃縮液、UFB5:第2液VL1,VL2:回転軸