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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】感光性ポリイミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/037 20060101AFI20241003BHJP
   G03F 7/012 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03F7/037 501
G03F7/012
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021524910
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022220
(87)【国際公開番号】W WO2020246565
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019106246
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397025417
【氏名又は名称】株式会社ピーアイ技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 鉄秋
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 稲太郎
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特許第5216179(JP,B2)
【文献】特開昭62-056948(JP,A)
【文献】特開昭62-179563(JP,A)
【文献】特開平08-137105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/037
G03F 7/012
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)溶剤可溶性ポリイミド及び(B)ジアジド化合物を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、
前記(A)溶剤可溶性ポリイミドが、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、(b)フェニルインダン構造を有する芳香族ジアミンの残基を主鎖中に有するブロック共重合体であり、
前記(B)ジアジド化合物の含有量が、前記(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部である感光性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
(A)溶剤可溶性ポリイミド及び(B)ジアジド化合物を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、
前記(A)溶剤可溶性ポリイミドが、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、インダン構造を有する芳香族ジアミン、及びポリシロキサン構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基を主鎖中に有するブロック共重合体であり、
前記(B)ジアジド化合物が、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンであり、
前記(B)ジアジド化合物の含有量が、前記(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部である感光性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】
(A)溶剤可溶性ポリイミド、(B)ジアジド化合物、(C)エポキシ樹脂、及び(D)光塩基発生剤を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、
前記(A)溶剤可溶性ポリイミドが、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、インダン構造を有する芳香族ジアミン、及びポリシロキサン構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基を主鎖中に有するブロック共重合体であり、
前記(B)ジアジド化合物の含有量が、前記(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部である感光性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ネガ型溶剤現像組成物であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物で被覆した基板を紫外線照射により露光し、未露光部を現像除去することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜、パッシベーション膜又は表面保護膜を有する半導体パッケージ、電子素子、表示素子又は有機多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ポリイミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージ基板においては、FC-CSPやFC-BGAから、低背化、電気特性(R,L,C)の向上、反りの低減化が可能なFan-out Wafer Level Package(FO-WLP)への移行が盛んに検討されており、FO-WLPの一部は量産化されている。このFO-WLPに使用される有機材料でキー材料となるのが封止材料と各種の保護膜材料であり、この保護膜材料として感光性ポリイミドが使用されている。
【0003】
感光性ポリイミドはいくつかの感光性付与方式があることが知られており(特許文献1)、画像形成プロセスからポジ型とネガ型に大別される。ポジ型はネガ型より高感度であるが、光分解反応を用いるために光反応による物性向上が期待し難い。一方、ネガ型は露光部分が光架橋反応を起こし現像処理後に残存するため、耐薬品性や耐熱性が向上し易いという特徴がある。そのため、ネガ型の方が、永久絶縁膜として用いた場合に感度に多少の問題はあるが、信頼性に優れたものを提供することができる。
【0004】
ネガ型感光性ポリイミドは、ポリアミック酸等の前駆体に感光性基を導入し、光反応後に加熱イミド化を行う方法と、閉環されたポリイミド自体に感光性を持たせる方法に大別される。当該分野で実用化されている代表的な方法は、ポリアミック酸のヒドロキシアクリレートとエステル結合されたもの(特許文献2)や、ポリアミック酸にアミノアクリレート等を配合して感光性基を塩結合で導入するもの(特許文献3)である。
【0005】
また、閉環されたポリイミド自体に感光性を持たせる方法としては、ベンゾフェノン構造を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合反応によって得られるポリイミド共重合体を用いる方法(特許文献4)や、二段階重縮合により合成した溶剤可溶性のポリイミドブロック共重合体の側鎖にアクリロイル基を付加させる方法(特許文献5)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】福田健一,上田充,高分子論文集,vol63,No.9,pp.561-576
【文献】特公昭55-41422号公報
【文献】特開昭54-145794号公報
【文献】特開平5-39281号公報
【文献】特開2000-147768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体パッケージ基板等への要求は年々厳しさを増しており、FO-WLPにおいても例外ではなく、パターンの細線化、接続ビアの小径化、多層化等が要求されている。これらの要求に対応するため、感光性ポリイミドについても、感度の向上や薄膜の信頼性に加え、FO-WLPの最大の課題であるコストの低減に深く関与する、大パネルサイズでの反りの減少や寸法安定性の向上が求められている。
【0008】
しかし、現在実用化されているポリアミック酸を用い光反応後に加熱イミド化を行う方法は、イミド化のために高温(例えば、350~450℃)を要し、その際に脱水収縮や感光性基の脱離又は揮散が起こり、大きな膜ベリが発生する。これは、半導体パッケージや電子素子の製造プロセスにおいて、反りや寸法安定性に大きな影響を与え、保存安定性も低下する要因となっていた。
【0009】
また、閉環されたポリイミドを用いる場合でも、現像時には現像液可溶性であるとともに、感光後には感光部が現像液不溶性となる構造とする必要があるという課題があり、従来報告されている方法では、露光・現像性が不十分であるという問題があった。
【0010】
このように半導体パッケージ基板等の保護膜材料としては、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、且つ、良好な膜物性と感度の向上を達成し得る感光性ポリイミドが求められていた。
【0011】
本発明は、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得る感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、閉環されたポリイミドとして、ベンゾフェノン構造を有する芳香族酸二無水物と特定のジアミンを主鎖中に有する構造のブロック共重合体を用い、更にこのポリイミドと特定量のジアジド化合物を組み合わせることにより、現像時の溶剤可溶性と光架橋後の溶剤不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得る感光性ポリイミド樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)(A)溶剤可溶性ポリイミド及び(B)ジアジド化合物を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、前記(A)溶剤可溶性ポリイミドが、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、(b)フェニルインダン構造を有する芳香族ジアミンの残基を主鎖中に有するブロック共重合体であり、前記(B)ジアジド化合物の含有量が、前記(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部である感光性ポリイミド樹脂組成物。
(2)(A)溶剤可溶性ポリイミド及び(B)ジアジド化合物を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、前記(A)溶剤可溶性ポリイミドが、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、インダン構造を有する芳香族ジアミン、及びポリシロキサン構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基を主鎖中に有するブロック共重合体であり、前記(B)ジアジド化合物が、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンであり、前記(B)ジアジド化合物の含有量が、前記(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部である感光性ポリイミド樹脂組成物。
(3)(A)溶剤可溶性ポリイミド、(B)ジアジド化合物、(C)エポキシ樹脂、及び(D)光塩基発生剤を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、前記(A)溶剤可溶性ポリイミドが、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、インダン構造を有する芳香族ジアミン、及びポリシロキサン構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基を主鎖中に有するブロック共重合体であり、前記(B)ジアジド化合物の含有量が、前記(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部である感光性ポリイミド樹脂組成物。
(4)前記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ネガ型溶剤現像組成物であることを特徴とする、(1)~()のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)(1)~()のいずれかに記載の樹脂組成物で被覆した基板を紫外線照射により露光し、未露光部を現像除去することを特徴とするパターン形成方法。
(6)(1)~()のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜、パッシベーション膜又は表面保護膜を有する半導体パッケージ、電子素子、表示素子又は有機多層配線基板。


【発明の効果】
【0014】
本発明により、高温でのイミド化が必要なポリアミック酸を用いなくても、閉環した感光性ポリイミドと特定量のジアジド化合物を用いることにより、現像時の溶剤可溶性と光架橋後の溶剤不溶性の両方を備え、且つ、ポリアミック酸を用いた感光性ポリイミドと同等以上の良好な膜物性と高い感度を達成し得る感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
従来使用されていたベンゾフェノン骨格を有するポリイミドを用いた場合には、ベンゾフェノン部と隣接アルキル基との水素引き抜き架橋の量子収率が低く十分な架橋構造が得られなかったが、本発明においてポリイミド樹脂組成物にジアジド化合物を添加することによりポリイミドの十分な架橋構造を実現することができる。
【0016】
更に、ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された膜の厚みが大きい場合、例えば、10μm以上の場合には、ポリイミド樹脂組成物に光塩基発生剤とエポキシ樹脂を含有させて、光塩基発生剤によりエポキシ樹脂を光架橋させることにより十分な架橋構造を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、(A)溶剤可溶性ポリイミド及び(B)ジアジド化合物を必須成分として含有する樹脂組成物である。
【0018】
(A)溶剤可溶性ポリイミド
本発明における(A)溶剤可溶性ポリイミドは、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族酸二無水物と、(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミン、及び(b-3)ポリシロキサン構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン(b)を主鎖中に有するブロック共重合体である。
【0019】
具体的には、本発明の(A)溶剤可溶性ポリイミドは、下記一般式[I]~[III]で表される繰返し単位のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を有するブロック共重合体である。
【0020】
【化1】
(式中、Zは芳香族テトラカルボン酸二無水物残基であり、Arはアミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基である)
【0021】
【化2】
(式中、Zは芳香族テトラカルボン酸二無水物残基であり、Arはインダン構造を有する芳香族ジアミン残基である)
【0022】
【化3】
(式中、Zは芳香族テトラカルボン酸二無水物残基であり、Arはポリシロキサン構造を有するジアミン残基である)
【0023】
本発明において、上記一般式[I]中のZ、上記一般式[II]中のZ、上記一般式[III]中のZのうちの少なくとも1つは、(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基であるが、Z、Z及びZはいずれも(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基であるのが好ましい。
【0024】
本発明における(a)ベンゾフェノン構造を有する芳香族酸二無水物残基となる芳香族酸二無水物としては、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,5,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)等が挙げられる。BTDA系ポリイミドは、光架橋によりモルフォロジーも変化する。すなわち凝集状態の緻密化が起こるとされている。このことは、耐薬品性や耐熱性の向上にも寄与する。
【0025】
ベンゾフェノン構造を有する芳香族酸二無水物は、溶剤可溶性ポリイミドを構成する全ての芳香族酸二無水物の10mol%以上、45mol%以上、更には50mol%以上含有させることが好ましい。ベンゾフェノン構造を有する芳香族酸二無水物の含有量が10mol%未満の場合には、光架橋後のポリイミド樹脂組成物の耐溶剤性が低下し、感度が低くなる傾向がある。
【0026】
上記一般式[I]~[III]におけるZ、Z及びZのベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基以外の例としては、特に制限はないが、ピロメリット酸ジ無水物、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0027】
また、(A)溶剤可溶性ポリイミドは、上記一般式[I]~[III]以外の、芳香族テトラカルボン酸二無水物残基とジアミン残基からなる繰返し単位を有していてもよい。
【0028】
(b)ジアミン
(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン
本発明におけるアミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基(Ar)としては、アミノ基のオルト位に炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、好ましくは炭素数1~5、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基を有する芳香族ジアミン残基が挙げられ、具体的には下記式(1)~(3)で表される構造であるものが挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
上記式(1)において、遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)は互いに相対的にメタ位またはパラ位に存在する。
上記式(2)において、遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)は好ましくはR11に対してメタ位またはパラ位に存在し、RとRは遊離結合の2つのオルト位に結合している。R11は-O-,-S-,-SS-,-SO-,-SO-,-CO-,-COO-,-NH-,-CONH-,-CON-アルキル基-(アルキル基の炭素数nは1~6),-CON-ベンジル基-を表す。
上記式(3)において、遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)は2-,3-,6-または7-位に存在し、RとRは遊離結合の2つのオルト位に結合している。
上記式(1)~(3)において、RとRは炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、好ましくは炭素数1~5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
【0031】
本発明において、アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基(Ar)は、(A)溶剤可溶性ポリイミドを構成する全てのジアミン中に30mol%以上、更には50mol%以上、特には70mol%以上含有させることが好ましい。50mol%未満では架橋密度が低下する傾向がある。
【0032】
(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミン
本発明において、インダン構造を有する芳香族ジアミン残基(Ar)とは、下記のインダン骨格に、下記式(IV)又は(V)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0033】
【化5】
【0034】
上記式(IV)において、RとRは炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基又は炭素数2~12のアルコキシアルキル基を表し、RとRは遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)の2つのオルト位に結合していることが好ましい。
【0035】
【化6】
【0036】
上記式(V)において、R,R及びRは独立して水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、Rの各々及びRの各々は独立して水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。具体例としては、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンが挙げられる。
本発明においては、上記式(V)で表されるフェニルインダン構造を有する芳香族ジアミン残基を主鎖中に有する溶剤可溶性ポリイミドが好ましい。
【0037】
本発明におけるインダン構造を有する芳香族ジアミン残基(Ar)は、(A)溶剤可溶性ポリイミドを構成する全てのジアミン中に50mol%以上、更には60mol%以上、特には70mol%以上含有させることが好ましい。50mol%未満では架橋密度が低下する傾向がある。
【0038】
(b-3)ポリシロキサン構造を有するジアミン残基(Ar
本発明におけるポリシロキサン構造を有するジアミン残基(Ar)としては、α,ω-ビス(2-アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0039】
本発明におけるポリシロキサン構造を有するジアミン残基(Ar)は、(A)溶剤可溶性ポリイミドを構成する全てのジアミン中に2.0~30mol%含有させることが好ましく、5.0~20mol%含有させることが更に好ましい。ポリシロキサン構造を有するジアミンの含有量が30mol%を超えると、溶剤溶解性が高くなりすぎる場合があり、Tgも低下する傾向がある。
【0040】
(A)溶剤可溶性ポリイミドの合成方法
溶剤可溶性ポリイミドの合成方法は公知の方法を用いればよく、特に制限されないが、上述したテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンをほぼ等量用いて、有機極性溶媒中、触媒及び脱水剤の存在下、160~200℃で数時間反応させることにより、溶剤可溶性のポリイミドを合成できる。有機極性溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、N,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、テトラヒドロチオフェン-1,1-オキシド等が用いられる。
【0041】
本発明における(A)溶剤可溶性ポリイミドは、ブロック共重合体であり、必要に応じてブロック共重合反応を行うことにより合成することができる。例えば、二段階の逐次添加反応によって製造することができ、第一段階でテトラカルボン酸ジ無水物と芳香族ジアミンからポリイミドオリゴマーを合成し、次いで第二段階で、更にテトラカルボン酸ジ無水物及び/又は芳香族ジアミンを添加して、重縮合させてブロック共重合ポリイミドとすることができる。
【0042】
ブロック共重合反応の触媒としては、ラクトンの平衡反応を利用した二成分系の酸-塩基触媒を用いることにより、脱水イミド化反応を促進することができる。具体的には、γ-バレロラクトンとピリジン又はN-メチルモルホリンの二成分系触媒を用いる。下記式に示すように、イミド化が進むにつれて水が生成し、生成した水がラクトンの平衡に関与して、酸-塩基触媒となり触媒作用を示す。
【0043】
【化7】
【0044】
イミド化反応によって生成する水は、極性溶媒中に共存するトルエン又はキシレン等の脱水剤と共沸によって系外に除かれる。反応が完結すると溶液中の水が除去され、酸-塩基触媒はγ-バレロラクトンとピリジン又はN-メチルモルホリンとなり系外に除去される。このようにして高純度のポリイミド溶液を得ることができる。
【0045】
他の二成分系触媒としては、シュウ酸又はマロン酸とピリジン又はN-メチルモルホリンを用いることができる。160~200℃の反応溶液中で、シュウ酸塩又はマロン酸塩は酸触媒としてイミド化反応を促進する。生成したポリイミド溶媒中には触媒量のシュウ酸又はマロン酸が残留する。このポリイミド溶液を基材に塗布した後に200℃以上に加熱し、脱溶媒を行って製膜をする時に、ポリイミド中に残存するシュウ酸又はマロン酸は、下記式に示すように熱分解し、ガスとして系外に除かれる。
【0046】
【化8】
【0047】
以上の方法により、高純度の(A)溶剤可溶性ポリイミドを得ることができる。シュウ酸-ピリジン系触媒は、バレロラクトン-ピリジン系触媒に比べて活性が強く、短時間で高分子量のポリイミドを生成することができる。
【0048】
本発明における「溶剤可溶性」なる用語は、ポリイミドの合成において使用する有機極性溶媒と、後述する膜に使用する溶剤に対して使用する用語であり、100gの溶剤中に5g以上溶解するポリイミドであることを意味する。ここで、溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素等の極性溶媒が挙げられる。
【0049】
上記のように合成された(A)溶剤可溶性ポリイミドは、上記有機極性溶媒又は後述する膜に使用する溶剤に、例えば、固形分が10~30重量%となるよう溶解させた溶液の状態で用いることができる。(A)溶剤可溶性ポリイミドの分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量として1万~40万が好ましい。この範囲であると良好な溶剤可溶性と膜物性及び絶縁性を達成できる。(A)溶剤可溶性ポリイミドの適正な粘度は、固形分が20~40重量%の場合で、好ましくは2~10Pa・s/25℃である。また、溶剤可溶性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)(TMA測定法による)は200℃以上が好ましく、250℃以上が更に好ましい。
【0050】
溶液中の(A)溶剤可溶性ポリイミドの濃度は5~50重量%が好ましく、さらに好ましくは10~40重量%である。なお、上記のラクトンと塩基から成る触媒系を用いた直接イミド化反応により得られるポリイミドは、極性溶媒中に溶解した溶液の形態で得ることができ、しかも、ポリイミドの濃度も上記の好ましい範囲内とすることができるので、製造されたポリイミド溶液をそのままの状態で好ましく用いることができる。
【0051】
製造されたポリイミド溶液は、所望により、希釈剤を用いてさらに希釈することができる。希釈剤としては、溶解性を著しく損なわないような溶剤、例えば、ジオキサン、ジオキソラン、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、アニソール、安息香酸メチル、酢酸エチル等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0052】
(B)ジアジド化合物
本発明においては、感光性ポリイミド樹脂組成物にもう1つの必須成分として(B)ジアジド化合物を添加することにより、露光・現像性が顕著に向上するという効果がある。
【0053】
(B)ジアジド化合物としては、4,4’-ジアジドベンザルアセトフェノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-t-アミルシクロヘキサノン、4,4’-ジアジドジフェニルスルホン、4,4’-ジアジドジフェニルエーテル、4,4’-ジアジドフェニルスルフィド、4,4’-ジアジドジフェニルメタン等が挙げられる。これらの中でもアジドベンザルシクロヘキサノン構造を有するものが好ましく、架橋性及び保存安定性の観点から、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンが特に優れる。
【0054】
(B)ジアジド化合物は、感光性ポリイミド樹脂組成物中に、(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部、更には5.0~100重量部、特には10.0~80重量部含有させることが好ましい。2.0重量部未満では架橋密度が低下する傾向があり、150重量部を超えると膜物性が低下する傾向がある。架橋性を補完するために、ジアジリン化合物やマレイミド又はビスマレイミド化合物を併用しても良い。
【0055】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は低波長側では光透過性に劣るため、特に厚膜仕様の場合、パターン形状がネガ型溶剤現像で見られる逆テーパーになり易い。これを改善するために、異なる感光架橋長方式の感光性モノマー又はポリマーを併用することも効果があることを見出した。その中でも、本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の成分として特に効果があるのは、感光性ポリイミド樹脂組成物との相溶性に優れる(C)エポキシ樹脂と(D)光塩基発生剤の組み合わせであることを見出した。
【0056】
(C)エポキシ樹脂
(C)エポキシ樹脂としては、特に限定されることはなく、光塩基発生剤との反応性や感光性ポリイミド樹脂組成物との相溶性により選択することができ、エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラツク型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、結晶性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を用いることができ、それらの高分子エポキシ樹脂を用いることもできる。感光性ポリイミド樹脂組成物中の(C)エポキシ樹脂の含有量は、(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2~50重量部が好ましく、2~20部が最も好ましい。
【0057】
(D)光塩基発生剤
(D)光塩基発生剤は、紫外線の照射によってアニオン(塩基)を発生する成分であり、非イオン型とイオン型に大別される。非イオン型としては、光吸収して第1級アミンや第2級アミン、イミダゾール等を発生するものがあり、イオン型にはアミジン、グアニジン、ホスファゼン等の有機強塩基を発生するものがある。
(D)光塩基発生剤は、(C)エポキシ樹脂との反応において第1級アミンや第2級アミンを発生するものは連鎖的な反応が起こりにくいため、非イオン型ではイミダゾール、イオン型ではアミジン、グアニジン等を発生するものが好適である。
【0058】
本発明における(D)光塩基発生剤としては市販品を使用することができる。例えば、WPBG-018、WPBG-140、WPBG-266、WPBG-300、WPBG-345、WPBG-027、WPBG-165(以上、富士フィルム和光純薬社製)等が挙げられる。
感光性ポリイミド樹脂組成物中の(D)光塩基発生剤の含有量は、(C)エポキシ樹脂に対し0.5~8重量%が好ましく、1~6重量%がより好ましい。
【0059】
(光増感剤)
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物には、それぞれの最終用途に適合させるために光増感剤を含有させてパターン解像の感度を高めることができる。光増感剤としては、特に長波長(>350nm)側に作用するものが好ましい。光増感剤としては、例えば、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等が挙げられる。光増感剤の含有量は感光性ポリイミド樹脂組成物に対し0.3~2重量%程度が好ましい。
【0060】
アントラセン系増感剤の具体例としては、例えば、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジイソプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジペンチルオキシアントラセン、9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、9,10-ビス(2-メトキシエトキシ)アントラセン、9,10-ビス(2-エトキシエトキシ)アントラセン、9,10-ビス(2-ブトキシエトキシ)アントラセン、9,10-ビス(3-ブトキシプロポキシ)アントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10ジメトキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジイソプロポキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジブトキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジペンチルオキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、等が挙げられる。
アントラセン系増感剤としては市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、「アントラキュアー UVS-1331」、「アントラキュアー UVS-1101」「アントラキュアー UVS-1221」(以上、川崎化成工業社製)等が挙げられる。
【0061】
また、チオキサントン系増感剤としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、クロロプロポキシチオキサントン等が挙げられる。チオキサントン系増感剤としては市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、「KAYACURE DETX-S」(日本化薬社製)、「Speedcure ITX」、「Speedcure DETX」、「Speedcure CPTX」(以上、LAMBSON社製)等が挙げられる。
【0062】
(その他の添加剤)
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物には、通常の感光性ポリイミド樹脂組成物中に添加される改質剤、例えば、カップリング剤、可塑剤、膜形成樹脂、界面活性剤、安定剤、スペクトル感度調節剤等を添加してもよい。とりわけ、基板に対するポリイミドの密着性がよくない場合には、カップリング剤、特に例えばビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸等のシランカップリング剤を添加することにより基板への密着性を良好にすることができる。この場合、シランカップリング剤の添加量は、感光性ポリイミド樹脂組成物の0.1~5重量%が好ましい。
【0063】
また、銅又は銅合金からなる基板を用いる場合には、基板変色を抑制するために、感光性ポリイミド樹脂組成物にアゾール化合物を配合することができる。アゾール化合物としては、例えば、1H-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアール、4-メチル-1H-ベンゾトリアール、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアール及び4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアール等が挙げられる。この場合、アゾール化合物の添加量は、感光性ポリイミド樹脂組成物の0.1~1重量%が好ましい。
【0064】
更に、銅上の変色を抑制するために、感光性ポリイミド樹脂組成物にヒンダードフェノール化合物を配合することができる。
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン及び、1,3,5-トリス(4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
この場合、ヒンダードフェノール化合物の添加量は、感光性ポリイミド樹脂組成物の0.1~2重量%が好ましい。また、その他の併用可能な樹脂としては、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。
【0065】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、基材上への適用に適した溶液の形態とすることができる。この場合、溶剤としては、イミド化反応の溶媒として用いられる、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素等の極性溶媒を用いることができる。
【0066】
感光性ポリイミドパターンの製造方法
上述した成分を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、基板上に感光性ポリイミドパターンを製造することができる。具体的には、(1)上述した本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程と、(2)該樹脂層を露光する工程と、(3)該露光後の樹脂層を現像して、電子部品の絶縁材料、並びに半導体パッケージにおけるパッシベーション膜、バッファーコート膜及び層間絶縁膜等の感光性ポリイミドパターンを形成する工程と、(4)該感光性ポリイミドパターンを加熱処理することによって永久絶縁膜として完成させる工程とを含む方法により、感光性ポリイミドパターンを製造することができる。
【0067】
以下、各工程の典型的な態様について説明する。
(1)感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程:
本工程では、本発明の感光性樹脂組成物をシリコンウェハー、金属基板、セラミック基板、有機基板等の基材上に塗布し、必要に応じてその後乾燥させて樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
【0068】
必要に応じて、感光性樹脂組成物から成る塗膜を乾燥させることができる。乾燥方法としては、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。具体的には、風乾又は加熱乾燥を行う場合、20~140℃で1~30分間の条件で乾燥を行うことができる。本発明の感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限定されない。
【0069】
(2)樹脂層を露光する工程:
本工程では、上記工程(1)で形成した樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク若しくはレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。この後、光感度の向上等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる露光後ベーク及び/又は現像前ベークを施してもよい。ベーク条件の範囲は、温度は40~120℃であり、時間は10~240秒間が好ましいが、本発明の感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限定されない。
【0070】
(3)露光後の樹脂層を現像して感光性ポリイミドパターンを形成する工程:
本工程においては、露光後の感光性樹脂層の未露光部を現像除去する。現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、感光性ポリイミドパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。
【0071】
現像に使用される現像液としては、感光性樹脂組成物に対する良溶媒、又は該良溶媒と貧溶媒との組合せが好ましい。例えば、良溶媒としては、N-メチルピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等が好ましい。貧溶媒としてはトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、感光性樹脂組成物中のポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整することが好ましい。また、良溶媒と貧溶媒のそれぞれについて、2種以上の溶媒、例えば数種類を組合せて用いることもできる。
【0072】
(4)感光性ポリイミドパターンを加熱処理することによって、永久絶縁膜として完成させる工程:
本工程では、上記現像により得られた感光性ポリイミドパターンを加熱することによって、永久絶縁膜として完成させる。即ち、ポリアミック酸タイプと違い、既にイミド化が終了しているため、溶剤等の残留物を取り除くことにより永久絶縁膜として完成できる。加熱硬化の方法としては、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、含有溶剤等を蒸発させる十分な条件であり、例えば150~250℃で30分~2時間程度の条件で行うことができる。加熱の際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0073】
以上のようにして形成された感光性ポリイミドパターンは、半導体パッケージ、電子素子、表示素子又は有機多層配線基板の層間絶縁膜、パッシベーション膜又は表面保護膜として使用することができる。
【実施例
【0074】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(ブロック共重合ポリイミドの合成)
合成実施例1
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下、BTDAという)64.45g(0.2モル)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(0.1モル)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、BTDA48.33g(0.15モル)、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン44.57g(0.25モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0076】
合成実施例2
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(0.1モル)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、BTDA48.33g(0.15モル)、5,7-ジアミノ-1,1,4,6-テトラメチルインダン51.08g(0.25モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0077】
合成実施例3
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(0.1モル)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物44.13g(0.15モル)、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン44.57g(0.25モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0078】
合成実施例4
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン26.64g(0.1モル)(フェニルインダン構造含有芳香族ジアミン)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、BTDA48.33g(0.15モル)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン66,60g(0.25モル)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0079】
合成実施例5
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、2,4-ジアミノトルエン12.22g(0.1モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、BTDA48.33g(0.15モル)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン66.60g(0.25モル)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0080】
合成実施例6
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン15.98g(0.06モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン9.94g(0.04モル)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で30分間攪拌した後、180℃に昇温し、1時間攪拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、BTDA48.33g(0.15モル)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン66.60g(0.25モル)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0081】
合成比較例1
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物58.84g(0.2モル)、
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(0.1モル)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却後、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物48.33g(0.15モル)、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン44.57g(0.25モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0082】
合成比較例2
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、2,4-ジアミノトルエン12.22g(0.1モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
空冷後、BTDA48.33g(0.15モル)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン73.08g(0.25モル)(芳香族エーテル結合含有芳香族ジアミン)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0083】
(感光性ポリイミド樹脂組成物の調製)
以下の実施例及び比較例において、「部」は「重量部」を意味する。
実施例1~6
合成実施例1~6のブロック共重合ポリイミド溶液(固形分20重量%)500部に、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン20部、9,10-ジブトキシアントラセン1部、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン1部、5-メチル-1H-ベンゾトリアール0.1部、1,3,5-トリス(4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン1部を加え、安息香酸メチルに溶解して固形分20%の感光性樹脂組成物とした。
【0084】
実施例7
実施例1(合成実施例1のポリイミド溶液を使用)において、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンの代わりに2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノンを用いたこと以外は同様の方法を用いて感光性樹脂組成物を調製した。
【0085】
実施例8
実施例1(合成実施例1のポリイミド溶液を使用)において、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンの代わりに4,4’-ジアジドベンザルアセトフェノンを用いたこと以外は同様の方法を用いて感光性樹脂組成物を調製した。
【0086】
実施例9
実施例1(合成実施例1のポリイミド溶液を使用)において、更にYX-6954BH30(高分子エポキシ;三菱ケミカル社製)16.7部、WPBG-300(光塩基発生剤:富士フィルム和光純薬社製)0.25部を加えたこと以外は同様の方法を用いて感光性樹脂組成物を調製した。
【0087】
実施例10
実施例1(合成実施例1のポリイミド溶液を使用)において、更にTEPIC-VL(3官能エポキシ:日産化学工業社製)5部、WPBG-300(光塩基発生剤:富士フィルム和光純薬社製)0.25部を加えたこと以外は同様の方法を用いて感光性樹脂組成物を調製した。
【0088】
比較例1
実施例7(合成実施例1のポリイミド溶液を使用)において、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノンを用いなかったこと以外は同様の方法を用いて感光性樹脂組成物を調製した。
【0089】
比較例2
実施例7(合成実施例1のポリイミド溶液を使用)において、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノンを20部の代わりに1.5部用いたこと以外は同様の方法を用いて感光性樹脂組成物を調製した。
【0090】
(ポリイミド樹脂組成物の性能評価)
1.機械的強度、熱膨張係数及び5%熱重量減少温度
実施例1~10及び比較例1~2で得られた樹脂組成物を、6インチシリコンウェハーに最終乾燥後の膜厚さが15~17μmとなるようにスピンコートし、90℃360秒間プリベークを行った後、高圧水銀灯を用いて、i線換算で2,500mJ/cm全波長露光を行い、シクロペンタノン溶液に120秒間浸漬した後に、200℃(又は180℃)で90分間加熱乾燥を行い、乾燥樹脂膜を作製した。
この樹脂乾燥膜をフッ化水素酸によりウェハーから剥離して、機械的強度、熱膨張係数及び5%熱重量減少温度測定用の試験サンプルとした。
【0091】
2.密着強度
上記で作製したシリコンウェハー上に形成した乾燥樹脂膜を用いる。
(1)試験面にカッターナイフを用いて、素地に達する11本の切り傷をつけ100個の碁盤目を作る。カッターガイドを使用し、切り傷の間隔は1mmとする。
(2)碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を標準図と比較して評価する。常態とHAST(80℃×85%RH)における240時間後の密着強度を判定する。
【0092】
3.残膜率
実施例1~10及び比較例1~2で得られた樹脂組成物を、6インチシリコンウェハーに最終乾燥後の膜厚さが5~7μm及び10~12μmとなるようにスピンコートし、90℃で240秒間及び90℃で300秒間プリベークを行った後に膜厚計で厚さ(t)を測定する。次に高圧水銀灯を用いて、i線換算で1,000(又は2,500)mJ/cm全波長露光を行い、シクロペンタノン溶液に120秒間浸漬した後に膜厚計で厚さ(t)を測定する。更に200℃(又は180℃)で90分間加熱乾燥を行い、その後に膜厚計で厚さ(t)を測定する。これらの測定値から、t/t1、/t及びt/tを計算し残膜率とした。
【0093】
4.露光・現像性
パターン評価は以下の方法により行った。
(1)解像度
実施例1~10及び比較例1~2で得られた樹脂組成物を6インチのシリコンウェハー上に滴下して30秒間回転塗布し、次いで、90℃のホットプレートで240秒間プリベークした。この時、ベーク後の膜厚が約6~8μmとなるよう塗布回転を調節した。次いで、高圧水銀灯を用いて露光した。i線にて測定した露光量は1,000mJ/cmであった。その後、シクロペンタノンで現像し、次いでリンスしてから200℃(又は180℃)で90分間加熱乾燥した。L/S=5/5,10/10,15/15,20/20,30/30,50/50μm、正方形ビアホールパターン10,15,20,30,40,50μmのうち解像している最小のものを解像度とした。
【0094】
(2)パターンエッジ残渣、クラック
上記(1)と同様の方法でパターン加工を行い、まず、現像後の膜表面に異常がないかを目視で観察した。次に、光学顕微鏡で15μmの正方形ビアホールパターンを観察し、パターンのコーナーにひびが入っている場合をクラックありとした。更に、L/S=15/15のパターンエッジを観察し、現像残りが発生している場合を残渣ありとした。
【0095】
実施例1~10及び比較例1~2で得られた樹脂組成物の評価結果を下記表1及び表2に示す。比較例1~2で得られた樹脂組成物は、残膜率及び露光現像性の評価において、露光後にシクロペンタノン溶液に浸漬させると膜が溶解した。この結果は、比較例1~2で得られた樹脂組成物は、光架橋後に良好な溶剤不溶性を備えていなかったことを示している。そのため、比較例1~2で得られた樹脂組成物のTg、熱膨張係数、5%熱重量減少温度、機械強度、密着強度は、樹脂組成物をシクロペンタノン溶液に浸漬させずにサンプルを作製し評価を行った。一方、実施例1~10で得られた樹脂組成物は、現像時の溶剤可溶性と光架橋後の溶剤不溶性の両方を備えると共に、良好な膜物性と高い感度を達成したことが分かる。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物は、例えば、FO-WLP,WLP等の半導体パッケージ、薄膜磁気ヘッド,薄膜インダクタ,コモンモードチョークコイル等の薄膜磁気素子等の電子素子、TFT液晶素子,カラーフィルター素子,有機EL素子等の表示素子及び有機多層配線基板等の製造に有用であり、感光性材料の分野で好適に利用することができる。