(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ノズル体
(51)【国際特許分類】
B24C 5/04 20060101AFI20241003BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C5/02 C
(21)【出願番号】P 2022197330
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2023-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591205732
【氏名又は名称】マコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】徳長 靖
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勇雄
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特許第3540713(JP,B2)
【文献】特許第4210076(JP,B2)
【文献】特開2000-317837(JP,A)
【文献】特許第6101672(JP,B2)
【文献】特開2019-005725(JP,A)
【文献】特許第5910933(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/04
B24C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と液体とが混合されたスラリが導入されて一時貯留されるスラリ貯留室と、加圧エアが導入されて一時貯留されるエア貯留室と、前記スラリ貯留室及び前記エア貯留室と連通すると共に、前記スラリと前記加圧エアとが混合された帯状の噴射材を
前記噴射材による処理を実施する際の移動方向と直交する方向であるワークの幅方向に沿って延びるスリット状の噴射口から噴射する通過経路を有するノズル体であって、
前記エア貯留室は、前記通過経路の前記噴射口との反対端に連通し、
前記スラリ貯留室は、前記通過経路の側方に開口するスラリ合流経路を介して前記通過経路と連通し、
前記スラリ合流経路は、前記スラリ貯留室の下端から接線方向に延びるスラリ貯留室開口部と、前記スラリ貯留室開口部と連通すると共に、前記通過経路に対して鋭角の合流角度を有して交差する合流経路とを有し、
前記合流経路は、前記幅方向に沿って延びるスリット状に形成されることを特徴とするノズル体。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル体において、
前記合流経路の前記合流角度は、30°から60°であることを特徴とするノズル体。
【請求項3】
請求項1に記載のノズル体において、
前記スラリ貯留室は、前記幅方向の両端部に
前記スラリ貯留室の幅方向を狭くするスペーサ部材が取り付けられることを特徴とするノズル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射材をワーク等に対して噴射するノズル体に関し、特に噴射材としてスラリとエアとを混合した噴射材を用いるウェットブラスト用のノズル体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体と砥粒とを混合したスラリを準備し、このスラリを圧縮エアを使って被加工物に噴射することにより被加工物の表面を処理するウェットブラスト処理方法が行われている。このウェットブラスト処理は、湿式ブラストや液体ホーニングとも呼ばれている。
【0003】
ここで、ウェットブラスト処理は、均一に且つ高出力でスラリをワーク等に衝突させることが重要となる場合がある。例えば、ワークの表面にスラリに含まれるショット(砥粒など)を衝突させることで、ワークの機械的性質を変化させるピーニング処理を行う場合には、ショットの衝突エネルギが高く且つワークの表面に均一に衝突することができることが要求されている。
【0004】
このようにウェットブラストを広範囲に高出力でかつ均一に噴射することができるノズル体として、特許文献1や特許文献2に記載されたノズル体が知られている。
【0005】
特許文献1に記載されたノズル体は、砥粒と液体とが混合されたスラリが導入されて一時貯溜されるスラリ貯溜室の近傍にエア噴射通路が設けられ、このエア噴射通路を加圧エアが通過することによりスラリ貯溜室から所定長さを有する導出通路を介してスラリが導出され、該スラリと前記加圧エアとが混合室に送られて混合され、この加圧エアとスラリとが混合された噴射材をスリット状の噴射部から噴射するノズル体であって、前記導出通路を、小孔が該導出通路の長さ方向に並設される多孔構造に設けられている。
【0006】
また、特許文献2に記載されたノズル体は、粒体と液体とが混合されたスラリが導入されて一時貯留されるスラリ貯留室が設けられ、また、加圧エアが導入されて一時貯留されるエア貯留室が設けられ、このエア貯留室にはエア噴射通路が連設され、前記エア貯留室に貯留された前記加圧エアが前記エア噴射通路から混合室に導入されることにより前記スラリ貯留室から前記スラリが前記混合室に導出されて該スラリと前記加圧エアとが混合され、この加圧エアとスラリとが混合された噴射材をスリット状噴射口からワークに噴射するノズル体であって、前記スリット状噴射口は前記ワークの長さ方向に短く且つ巾方向に長い開口形状であり、前記混合室と前記スリット状噴射口との間には、前記噴射材が直進可能な通過経路が設けられるとともに、前記エア噴射通路と前記通過経路と前記スリット状噴射口との位置関係は直線状に設定されており、前記エア噴射通路は、小孔を並設した多孔構造に設けられ、前記エア噴射通路の加圧エア通過方向と直交する方向の通路断面積は、前記小孔の加圧エア通過方向と直交する方向の通路断面積の和であり、前記スリット状噴射口の開口面積と、前記エア噴射通路の加圧エア通過方向と直交する方向の通路断面積との比が、2.0乃至1.0:1.0に設定され、更に、前記エア噴射通路の通路断面積と、前記エア貯留室における前記加圧エアの加圧エア通過方向と直交する方向通過断面積との比が、1.0:3.0以上に設定されている。
【0007】
特許文献1に記載されたノズル体は、導出通路を、小孔が該導出通路の長さ方向に並設される多孔構造に設けられているので、非常に長尺なスリット状の噴射口からでも砥粒と液体と加圧エアとを均一な混合状態で噴射することができる。
【0008】
特許文献2に記載されたノズル体は、スリット状噴射口の開口面積、エア噴射通路の通路断面積及びエア貯留室における加圧エアの通過方向と直交する方向通路断面積との比率を適切に設定することで、ピーニング処理において、加圧エアの圧力を高めた場合であっても、ウェットブラストを高出力で且つ均一に噴射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3540713号公報
【文献】特許第4210076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
また、ワークに対する高強度化や軽量化の要求が高まるにつれ、高強度の材料に置き換えたり、熱処理を施すことによりこれらの要求を実現してきたが、更なる高強度化のために材料表面に機械的な応力を付与することで、同じ材料及び同じ重量であっても強度を高めることができるピーニング工法が注目されている。
【0011】
しかし、ピーニング工法としてウェットブラストを使用する場合、ワークの表面に効果的かつ効率的に応力を付与するために、投射材として比重が高いもの(例えば6以上のもの)を使用し、高濃度(例えば、30Vol%(72重量%)以上)で投射することが効果的であるところ、従来のノズル体を用いた場合、高比重の投射材を用いた場合には、慣性力の影響により、ノズルの開口部の幅方向に投射材の偏りが生じ、処理の均一性が損なわれ、高濃度の投射材を用いた場合には、ノズル体内の各種通路においてスラリの閉塞が生じやすくなり、高比重・高濃度のスラリを用いたピーニング工法を実用化する上で課題を有していた。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高比重及び/又は高濃度の投射材を用いた場合であっても、処理の均一性を損なうことがなく、スラリの閉塞などの問題が生じることがないノズル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係るノズル体は、砥粒と液体とが混合されたスラリが導入されて一時貯留されるスラリ貯留室と、加圧エアが導入されて一時貯留されるエア貯留室と、前記スラリ貯留室及び前記エア貯留室と連通すると共に、前記スラリと前記加圧エアとが混合された帯状の噴射材を前記噴射材による処理を実施する際の移動方向と直交する方向であるワークの幅方向に沿って延びるスリット状の噴射口から噴射する通過経路を有するノズル体であって、前記エア貯留室は、前記通過経路の前記噴射口との反対端に連通し、前記スラリ貯留室は、前記通過経路の側方に開口するスラリ合流経路を介して前記通過経路と連通し、前記スラリ合流経路は、前記スラリ貯留室の下端から接線方向に延びるスラリ貯留室開口部と、前記スラリ貯留室開口部と連通すると共に、前記通過経路に対して鋭角の合流角度を有して交差する合流経路とを有し、前記合流経路は、前記幅方向に沿って延びるスリット状に形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るノズル体において、前記合流経路の前記合流角度は、30°から60°であると好適である。
【0015】
また、本発明に係るノズル体において、前記スラリ貯留室は、前記幅方向の両端部に前記スラリ貯留室の幅方向を狭くするスペーサ部材が取り付けられると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るノズル体によれば、スラリ合流経路は、スラリ貯留室の下端から接線方向に延びるスラリ貯留室開口部と、スラリ貯留室開口部と連通すると共に、通過経路に対して所定の角度を有して交差する合流経路とを有し、合流経路は、ワークの幅方向に沿って延びるスリット状に形成されるので、高比重や高濃度の投射材を用いた場合であっても、ノズル体の噴射口の幅方向におけるスラリの均一性を改善することができ、通過経路やスラリ合流経路におけるスラリの閉塞を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るノズル体を用いたウェットブラスト処理装置の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係るノズル体の分解斜視図。
【
図5】本発明の実施形態に係るノズル体の試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るノズル体を用いたウェットブラスト処理装置の斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係るノズル体の分解斜視図であり、
図3は、本発明の実施形態に係るノズル体の断面図であり、
図4は、
図3におけるA-A断面図であり、
図5は、本発明の実施形態に係るノズル体の試験結果を示すグラフである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るノズル体10は、ウェットブラスト処理装置1に好適に用いられる。ウェットブラスト処理装置1は、保持部2が保持したワークWの表面に噴射材5を噴射してワークWに表面処理を施す。ノズル体10は、ワークWの幅方向に延びるスリット状噴射口11から噴射材5を帯状に噴射する。
【0021】
噴射材5は、液体と砥粒とを混合した混合物であるスラリを用いると好適である。スラリに含まれる液体は、後述する砥粒を被加工物の表面に運ぶ役割を果たすものである。したがってこの役割を果たすことが可能であれば、引火性のある物質を除きいかなる液体をも用いることができる。具体的には、環境面への配慮やコストの関係から水を用いることが好ましい。
【0022】
砥粒は、上記液体によって被加工物表面に運ばれ、被加工物表面に対し所望の加工を施す役割を果たすものである。したがってこの役割を果たすことが可能であればいかなる砥粒をも用いることができる。
【0023】
具体的には、砥粒の材質としては、セラミックス、樹脂、および金属などを挙げることができ、より具体的には、アルミナ、ガラス、ジルコニア、およびステンレスなどを挙げることができる。また、砥粒の形状としては、多角形状、球形状、真球形状などを挙げることができる。また、砥粒の大きさとしては、1μm程度から300μm程度のものを適宜選択して用いることができる。なお、本実施形態に係るノズル体10においては、高比重(例えば6以上)の砥粒を用いると好適であり、砥粒の径は、例えば250μm程度のものを用いると好適である。
【0024】
砥粒のスラリ全体に対する含有割合についても特に限定されることはなく、被加工物の材質や加工面積、さらには所望する加工の程度などに応じて適宜設計可能である。たとえば、スラリ全体の体積に対して30vol%(72重量%)以上の高濃度とすると好適である。この場合、ワークWに対しより効果的かつ効率的に応力を付与することができる。
【0025】
また、スラリは、上記液体および砥粒の他に、種々の機能を有する混合材を用いることができ、例えば、防錆剤を含有することも可能である。ウェットブラスト加工方法において用いられるスラリ中に防錆剤を含有することにより、被加工物の表面に従来通りのウェットブラスト加工を施すと同時に、防錆効果をも付与することが可能となる。また、防錆剤に変えて、各成分の作用効果を阻害しない程度において、各種添加剤を添加してしてもよい。
【0026】
図2に示すように、ノズル体10は、ワークWの幅方向(左右方向、処理を実施する際の移動方向と直交する方向)に長く前後方向(処理を実施する際の移動方向)に短い長尺部材20と、この長尺部材20の下部に垂設状態で連設されると共に、下端にスリット状噴射口11を有する幅方向に長く肉薄の長尺の板状部材30と、長尺部材20の上部に被嵌状態に連設されるブロック状の被嵌部材40とから構成されている。
【0027】
図3に示すように、長尺部材20の内部には所定の間隔で形成された孔状の貫通経路21が複数設けられている。貫通経路21は、例えば、φ2.5程度に形成されていると好適であり、その上部には後述する前体41に形成され、該貫通経路21に加圧エアを導入するエア噴射通路43が隣接して設けられている。
【0028】
また、長尺部材20の側方(後述する後体42との対向面側)には、通過経路31の上端に鉛直方向に対して斜めに交差する合流経路22が形成されている。合流経路22の傾斜角度は、30°から60°に形成されると好適であり、さらにより好適には、45°程度に形成されるとよい。なお、合流経路22は、貫通経路21と異なり幅方向に長いスリット状に形成されていると好適である。さらに、長尺部材20の下方には、側方から垂下して延びる一対の係合部23が形成されている。
【0029】
板状部材30は、下端に形成されたスリット状噴射口11に連通し且つ噴射材5が直進可能な通過経路31が設けられている。また、板状部材30の上端には、長尺部材20に形成された一対の係合部23,23と係合する凸部32が形成されている。さらに、板状部材30の側方には、一対の係合凸部33が形成されている。
【0030】
なお、エア噴射通路43の開口部、貫通経路21、通過経路31及びスリット状噴射口11との位置関係は直線状に設定されている。
【0031】
被嵌部材40は、前体41及び後体42とから形成されており、長尺部材20及び板状部材30を幅方向と直交する方向に挟持している。また、被嵌部材40の前体41及び後体42のそれぞれには、板状部材30に形成された係合凸部33と係合する突起部44,44が形成されている。
【0032】
前体41は、加圧エアが導入されて一時貯留されるエア貯留室45と、当該エア貯留室45に加圧エアを導入するエア導入口46並びに、エア貯留室45と連通するエア噴射通路43が形成されている。
【0033】
図2に示すように、エア貯留室45は、前体41の幅方向に延設して形成されており、エア導入口46は、単一又は幅方向に沿って所定の間隔で複数(本実施形態に係るノズル体10では、2つ)形成されている。なお、
図4に示すように、被嵌部材40の幅方向両端には、蓋体12がシール部材13を介して取り付けられており、当該蓋体12によってエア貯留室45は幅方向に閉塞されている。
【0034】
また、エア噴射通路43は、基端側がエア貯留室45の後体42側の側壁から後体42に向かって貫通する貫通路として形成されており、より好適には、エア噴射通路43は、エア貯留室45の上方端から接線方向に延設されると好適である。また、エア噴射通路43の先端側は、後体42と組み合わせた際に、長尺部材20の貫通経路21と連通している。
【0035】
後体42は、スラリが導入されて一時貯留されるスラリ貯留室47と、当該スラリ貯留室47にスラリを導入するスラリ導入口48並びに、スラリ貯留室47と連通するスラリ貯留室開口部49が形成されている。
【0036】
図2に示すように、スラリ貯留室47は、後体42の幅方向に延設して形成されており、スラリ導入口48は、単一又は幅方向に沿って所定の間隔で複数(本実施形態に係るノズル体10では、2つ)形成されている。なお、
図4に示すように、被嵌部材40の幅方向両端には、蓋体12がシール部材13を介して取り付けられており、当該蓋体12によってスラリ貯留室47は幅方向に閉塞されている。
【0037】
また、スラリ貯留室開口部49は、基端側がスラリ貯留室47の前体41側の側壁から前体41に向かって貫通する貫通路として形成されている。また、スラリ貯留室開口部49は、スラリ貯留室47の下端から接線方向に延びて形成され、先端側が長尺部材20の合流経路22と連通している。なお、本実施形態に係るノズル体10は、スラリ貯留室開口部49と合流経路22とによってスラリ合流経路50を構成している。
【0038】
また、上記各構成のうち、スラリの通過する経路(スラリ貯留室47の内壁、スラリ貯留室開口部49の内壁等)には、ウレタンゴム等からなる保護層が形成されている。この保護層は、スラリ(特に粒体)により該スラリの通過する経路が研磨されてしまうことを防止するものであり、この保護層の存在によってノズル体10の寿命が数倍に延びることが確認されている。
【0039】
また、
図4に示すように、スラリ貯留室開口部49は、幅方向に長いスリット状に形成されており、スラリ貯留室47の幅方向の両端部には、スペーサ部材51が取り付けられ、スラリ導入口48から導入されたスラリがスラリ貯留室47内で滞留することを防止している。
【0040】
このように構成されたノズル体10は、スラリ貯留室47に導入されたスラリがスラリ合流経路50を介して通過経路31に側方から斜めに導入され、通過経路31の上端から導入された加圧エアと混合されることで噴射材5としてスリット状噴射口11から噴射される。このとき、スラリは、加圧エアによる負圧によってスラリ合流経路50から通過経路31に吸い出される。
【0041】
また、本実施形態に係るノズル体10は、スラリ貯留室47の下端から接線方向に延びるスラリ貯留室開口部49と通過経路31に対して傾斜して合流する合流経路22とからなるスラリ合流経路50を有しているので、スラリの導入から噴射までの経路にスラリが滞留して閉塞することがない。
【0042】
さらに、スラリ貯留室開口部49がスリット状に形成されているので、ノズル体10内のスラリの流路抵抗を減らすこととで閉塞を防止すると共に、スラリに比重の高い投射材を用いた場合であっても、低濃度の場合は均一性を改善すると共に、高濃度では閉塞を抑制することができる。したがって、スラリの濃度に関わらず、効率的かつ効果的なピーニング処理を行うことができる。
【0043】
[実施例]
次に、実施例を参照して本発明についてさらに詳しく説明を行う。まず、本実施形態に係るノズル体10を用いて、高比重投射材を用いたスラリを噴射して閉塞の有無を確認した。また、比較例として同様の条件で従来のノズル体を用いて閉塞の有無を確認した。テストの条件は以下のとおりである。
比重:6.05、中心粒子径:250μm(212~300μm)、エア圧:0.4MPa、スラリ圧:0.24MPa
【0044】
ノズル体の閉塞の有無は、ノズル体内の通過経路の圧力上昇が所定の閾値を超えているか否かで確認を行った。その結果、従来のノズル体では、高比重投射材を用いるとノズル体に閉塞が生じるところ、本実施形態に係るノズル体10は、高比重投射材を用いた場合であってもノズル体10の閉塞は生じないことが確認できた。
【0045】
また、上記閉塞確認の確認結果、高比重の投射材を用いた場合に高濃度(40vol%(80重量%))においても本実施形態に係るノズル体10におけるスラリの閉塞が確認されなかった。
【0046】
次に、長尺部材の合流経路の傾斜角度によって噴射口から噴射される噴射材の幅方向における噴射材の濃度の均一性を確認した。
【0047】
噴射材の濃度の均一性は、ノズル体10のスリット状噴射口11の幅方向に沿って所定の間隔で噴射されるスラリの濃度を測定し、幅方向のスラリ濃度の最高値と最低値の差を平均値で除した値×100(%)を均一性を示す値として用いた。
【0048】
その結果、
図5に示すように、本実施形態に係るノズル体10は、濃度が20vol%(60重量%)のような低濃度の場合(実施例1)では、従来のノズル体と比較して均一性が大幅に向上していることが確認でき、例えば、合流角度が35°から55°において均一性が40%を下回っており、より良好であることが確認できる。これに対し、濃度が40vol%(80重量%)の場合(実施例2)は、合流角度が30°から60°の範囲でも均一性が非常に良好であることが確認できる。これに対し、従来のノズル体は、濃度が20vol%(60重量%)のような低濃度(比較例1)及び30vol%(72重量%)のような高濃度(比較例2)のいずれの場合も均一性が本実施形態に係るノズル体10よりも均一性が悪化していることが確認できた。
【0049】
このように構成された本実施形態に係るノズル体10は、スラリに高比重の投射材を用いた場合であっても、低濃度でノズル幅方向の均一性が良好であり、高濃度でノズル体10内の閉塞を生じることがない。
【0050】
また、本実施形態に係るノズル体10は、被嵌部材40の前体41にエア貯留室45を形成し、後体42にスラリ貯留室47を形成した場合について説明を行ったが、前体41にスラリ貯留室47を設け、後体42にエア貯留室45を設けても構わない。また、上記実施例では、高比重の投射材を用いた場合について説明を行ったが、従来同様の低比重の投射材を用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
1 ウェットブラスト処理装置, 2 保持部, 5 噴射材, 10 ノズル体, 11 スリット状噴射口, 12 蓋体, 20 長尺部材, 21 貫通経路, 22 合流経路, 23 係合部, 30 板状部材, 31 通過経路, 32 凸部, 33 係合凸部, 40 被嵌部材, 41 前体, 42 後体, 43 エア噴射通路, 44 突起部, 45 エア貯留室, 46 エア導入口, 47 スラリ貯留室, 48 スラリ導入口, 49 スラリ貯留室開口部, 50 スラリ合流経路, 51 スペーサ部材, W ワーク。