IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リアクティブ ロボティックス ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7565096デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス
<>
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図1
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図2a
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図2b
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図3
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図4a
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図4b
  • 特許-デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】デバイスとヒトとの相互作用中における、運動モジュールを備えたデバイスの開ループ及び閉ループ制御の方法、ならびにこのような方法で制御されるデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20241003BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61H1/02 N
B25J11/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022522575
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 DE2020100943
(87)【国際公開番号】W WO2021089087
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】102019129704.4
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020102351.0
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518093178
【氏名又は名称】リアクティブ ロボティックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ペリル,ヘルフリート
(72)【発明者】
【氏名】シャリアリ,エルファン
(72)【発明者】
【氏名】ハダディン,サミ
(72)【発明者】
【氏名】ザルディカーン,ディンムハメッド
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデンブランド,ザビエル
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】ErfanShahriari et al.,Energy-based Adaptive Control and Learning for Patient-AwareRehabilitation,2019 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robotsand Systems (IROS),IEEE,2019年11月03日,pp. 5671-5678
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト(M)と相互作用する観点で、少なくとも運動モジュール(50)を備えたデバイス(1)の、開ループ及び閉ループ制御の方法であって、
エネルギーネットワークが定義され、前記エネルギーネットワークは少なくとも、
デバイス(1)及びヒト(M)のシステムの総エネルギー(S)に対する、前記デバイス(1)によって供給される単位時間当たりのエネルギー量を示す、第1のパワー成分(Pin)と、
主に前記運動モジュール(50)の支援によって実行される仕事の外側の、内部の開ループ及び閉ループ制御プロセスによる、前記デバイス(1)が損失する単位時間当たりのエネルギー量を示す、第2のパワー成分(Pdiss)と、
前記総エネルギー(S)に対する、前記ヒト(M)によって供給される単位時間当たりのエネルギー量を示す、第3のパワー成分(P)と、
から構成され、
前記エネルギーネットワーク、すなわちデバイス(1)及びヒト(M)の前記システムの総エネルギー(S)は、制御された変数として定義され、
前記デバイス(1)が、運動モジュール(50)によって前記ヒト(M)と相互作用するスピードは、制御変数(Ω)として定義され、前記運動モジュール(50)は所望の軌道(x)を通過するよう意図され、
前記エネルギーネットワークの前記総エネルギー(S)は、
前記ヒト(M)によって独立して実行された運動が、前記デバイス(1)によって当初指定された前記軌道(x)に沿った運動から逸脱するほど増加し、及び
前記ヒト(M)によって独立して実行された運動が、前記デバイス(1)によって当初指定された前記軌道(x)に沿った運動に接近するほど減少し、
前記エネルギーネットワークの前記総エネルギー(S)は、前記運動モジュール(50)の運動の間に判断され、
前記制御変数(Ω)は、判断された前記総エネルギー(S)に依拠して、前記運動モジュール(50)の運動の間に変化し、それによって前記総エネルギー(S)は、
S≦Smax-SΔのインターバルに位置された場合、前記インターバルにとどまるか、または
S>Smax-SΔのインターバルに位置された場合、S≦Smax-SΔの前記インターバルに再び接近し、ここで、
max=前記総エネルギー(S)の選択された上方境界、
Δ=Smax-Sx1、ここでSx1は、制御された変数(=総エネルギー)(S)の個々の値を表わし、x=nが、Pin>0のインターバルにおける値を指定するために使用され、x=pが、Pin<0のインターバルにおける値を指定するために使用され
前記デバイス(1)のサイクル内の運動進捗は周期的位相値φ∈[0、1]によって示され、
前記デバイス(1)の動作モードは、前記位相値(φ)に基づいた異なる領域Φ (φ)に分割され、
前記総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための制限である、運動を実行するために選択される制限(S max )は、前記デバイス(1)の運動サイクル内の運動進捗を示す前記位相値(φ)に基づいて領域(Ψ (φ))の中に分割され、したがって前記位相値(φ)の関数(S max (φ))として定義され、
前記総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための制限である、運動を実行するために選択される前記制限(S max )及び/または変数SΔ=S max -S p_x は、運動を実行している間、前記デバイス(1)の反復学習プロセスによって選択され、ここで、S p_x は、前記総エネルギー(S)の個々の値である、
方法。
【請求項2】
前記制御変数(Ω)は、
【数1】
と定義され、ここで、
γ=前記制御変数(Ω)の最大許容正値、
γ=前記制御変数(Ω)の最大許容負値(絶対値)、
S=デバイス(1)及びヒト(M)の前記システムにおける総エネルギー、
前記Smax=総エネルギー(S)の選択された上方境界、
SΔ=Smax-Sp_x、ここでSp_xは、前記制御された変数Sの個々の値を表わす、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記制御変数(Ω)は、
【数2】
と定義され、ここで、
γ=前記制御変数(Ω)の最大許容正値、
γ=前記制御変数(Ω)の最大許容負値(絶対値)、
S=デバイス(1)及びヒト(M)の前記システムにおける総エネルギー、
max=前記総エネルギー(S)の選択された上方境界、
SΔ=Smax-Sp_x、ここでSp_xは、前記制御された変数Sの個々の値を表わし、
Sδ=前記制御変数(Ω)がゼロと等しく設定されたSΔの中間領域で、ここでPin>0である、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記制御変数(Ω)は、
【数3】
と定義され、ここで、
γ=前記制御変数(Ω)の最大許容正値、
γ=前記制御変数(Ω)の最大許容負値(絶対値)、
S=デバイス(1)及びヒト(M)の前記システムにおける総エネルギー、
max=前記総エネルギー(S)の選択された上方境界、
SΔ=Smax・ζ-Sp_x、ここでSp_xは、前記制御された変数Sの個々の値を表わし、
【数4】
である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記制御変数(Ω)の変動は、判断された前記総エネルギー(S)に基づいて、特にフィルタによって、進度制限によって、及び/または前記総エネルギー(S)に対する前記制御変数(Ω)における第1の逸脱の絶対値を限定することによって、前記運動モジュール(50)の運動の間に減衰される、請求項1~のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
デバイス(1)及びヒト(M)の前記システムにおける前記総エネルギー(S)、具体的には仮想絶対エネルギー値及び実際の絶対エネルギー値を含んだ前記総エネルギー(S)は、総貯留関数S=Sce、または総貯留関数S=Sce+Seeと定義され、
前記制御逸脱のエネルギー貯留関数(Sce)は、具体的に
【数5】
と定義され、ここで、
ce=制御誤差のエネルギー貯留関数、
Mc(q)=慣性マトリクスのデカルトモーメント、
=デカルト剛性マトリクス、
ee=運動エネルギー及び位置エネルギーで構成された、前記デバイス(1)、具体的には前記運動モジュール(50)におけるエンドエフェクタの総エネルギーである、
請求項1~のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギー貯留関数(Sce)は、
前記第2のパワー成分(Pdiss)との計算によって組み合わされた、前記第1のパワー成分(Pin)によって判断されるか、または、
デバイス(1)とヒト(M)との間の相互作用力によって、具体的には前記運動モジュール(50)と前記ヒト(M)の下肢との間における力の絶対値を計測するための、力センサ(51)で計測された相互作用力によって計算される、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記総貯留関数の時間導関数は、
【数6】
であり、ここで、
in∈R=運動発生器によって生成された、前記システムの中へのパワー入力、
diss∈R=制御減衰によるパワー損失、
=デバイス(1)及びヒト(M)の前記システムに、前記ヒト(M)によって加えられたパワー、である、
請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
記デバイス(1)によって指定された運動における、前記ヒト(M)の参加状態を判断するための、学習因子(k)及び/または忘却因子(k)は、前記反復学習プロセスの範囲内で、前記学習因子(k)及び/または前記忘却因子(k)が、事前に定義された最終値に達するまで、経時的に、好ましくは直線的に変化される、請求項1~のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記制限(Smax)の値が、第1の反復ステップにおいて選択され、この値の場合、前記デバイス(1)は、運動を実行することで前記ヒト(M)を完全に支援し、前記制御変数(Ω)は1の値をとり、
前記制限(Smax)の値は、前記制御変数(Ω)が1の値を維持する限り、別の各反復ステップにおいて減少され、
前記制御変数(Ω)が1の値から逸脱すると、前記制限(Smax)の値は、次の反復ステップにおいて再び増加される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
当初の制限(Sinit(φ))を判断するために、
前記デバイス(1)が最初に、所与の制限(Smax)なく、n回の運動サイクルを通して行なわれ、
運動サイクルの回数nは、2≦n≦5のインターバルの運動サイクル、好ましくは3回の運動サイクルであり、
S(φ)のプロファイルは、プロセスにおいて記録され、
前記記録したS(φ)値の平均値がその後に当初の制限(Sinit(φ))として計算され、それは、λ・Sinit(φ)で、λ≧1の形態における前記反復学習プロセスの、第1の反復ステップにおける前記制限(Smax)の開始値としての役割を担い、
特に、前記デバイス(1)によって指定された運動における、前記ヒト(M)の参加状態を判断するための、前記学習因子(k)及び/または前記忘却因子(k)は、前記反復学習プロセスが初期化されたときに、前記当初の制限(Sinit(φ))に基づいて評価される、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
前記総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための制限である、運動を実行するために選択される制限(Smax)は、前記デバイス(1)の運動サイクル内の運動進捗を示す位相値(φ)に基づいて領域(Ψ(φ))の中に分割され、当初の制限(Sinit,i(φ))は、各領域(Ψ(φ))のために判断される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための制限である、運動を実行するために選択される制限(Smax)は、
前記デバイス(1)の運動サイクル内の運動進捗を示す、位相値(φ)に基づいて領域(Φ(φ))の中に分割され、
ここで、領域(Φ(φ))は、φstr,iからφstr,i+1までの、位相値のインターバルを示し、及び、
選択される制限(Smax(φ))は、各領域(Φ(φ))に独立して定義され、以下が領域(Φ(φ))の全ての位相値(φ)に適用され、
【数7】
請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
計画に従って、ヒト(M)の下肢の、少なくとも関節、筋肉、腱のリハビリテーションのために好適に設計された、リハビリテーション機構(30)を備え、前記ヒト(M)の下肢との動作接続に至らせることが可能な、運動モジュール(50)を使用する、デバイス(1)であって、
前記運動モジュール(50)は、
前記運動モジュール(50)及び前記ヒト(M)の間における力の絶対値を計測するための、少なくとも1つの力センサ(51)と、
前記運動モジュール(50)及び前記ヒト(M)の間における力の方向を計測するための、少なくとも1つの角度センサ(52)と、を備え、
前記デバイス(1)は、
請求項1~13に記載した方法に従って、前記デバイス(1)の開ループ及び閉ループ制御のために構成された、制御ユニット(11)を特徴とする、デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトと相互作用する観点で、運動モジュールを備えたデバイスの、開ループ及び閉ループ制御の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムは、これまで以上にヒトの生活領域における使用を見出すので、ロボットシステムのヒトとの相互作用に関して、その開ループ及び閉ループ制御と関連して要求される品質標準が同等に高くなる。これに関して、安全面は、特に医用工学において決定的な役目を担う。その目的は、治療業務に採用するためのリハビリテーション用ロボットであり、例えば運動治療及び/または初期のリハビリテーションの範囲内である。その結果、第1に、理学治療のスタップを日常業務から開放し、第2に、患者に対して初期の運動治療を促す。それは患者に個々に適応され、時間的に独立している。しかし、ロボットシステムとヒト(患者)との間の相互作用は、技術的制御システムにおいて特に高い要求が設定される。なぜなら、ヒト、特に身体障害の患者、場合によっては寝たきり状態の患者、及び/または、さらには意識不明の患者は、制御できないか、または予想できない行動でロボットシステムに作用することが多いためである。したがって、明白な制御対象は、(患者/ヒトによる)予想できない外部の影響に耐え、かつ同時に、ヒトに相互作用のための余裕を提供する、閉ループ及び開ループ制御のアルゴリズムを作ることから構成される。
【0003】
さらに、患者の健康状態またはリハビリテーションの進捗についての提示が、ヒトとリハビリテーション用ロボットとの間の相互作用を評価することによって、正確に成され得る。
【0004】
ロボット支援運動治療における治療の成功は、患者の「能動的な」参加に大きく依拠する。これに関する「能動的」とは、ロボット支援運動中の、意識的な筋肉動(能動的運動または痙攣的動作)、及び(例えば意識不明の患者の事例における)無意識の筋肉収縮/弛緩(例えば痙性)の両方として理解されることを意図する。
【0005】
医用工学における、初期のロボットシステムは、一般的に位置制御された制御システムを使用した。このシステムにおいて、ロボットによって指定された運動軌道は、厳格に観察される必要があり、運動機能が(まだ)存在する患者は、所望の運動パターンに影響を及ぼすいかなる可能性も持たなかった。このような純粋に受身的なロボット支援運動治療のコンセプトは、比較的小さい治療の成功しかもたらさなかった。
【0006】
運動治療において患者の参加を促進させるために、所謂「必要に応じた支援の」制御システムが、それ以降に開発された。これらは、患者が、ロボットシステムによって誘導された運動軌道に、ある程度まで影響を及ぼすのを可能にする。ロボットはその運動を監視し、任意選択で補正を実行するか、または時間及び空間において支援を提供する。このような「必要に応じた支援」のシステムが、治療の成功を促進させ得ることを示すことは可能であった。しかし、このような取り組みは、とりわけ、例えば事象(事故、脳血管障害、手術などの)後、数時間または数日内の患者の、ごく初期の可動化(VEM)の範囲内でも、それぞれの制御システムに特に高い要求を設定する。なぜなら、このような患者は一般的にまだ意識不明または鎮静状態にあるか、知覚障害、眩暈、及び/もしくは発作に苦しみ得るか、または運動装置を制御するときに障害を被り、制御されないか、もしくは不完全に制御された運動の可能性を増加させ得るからである。ロボットシステムの休止による(突然発生する)外乱(=力効果または所望の軌道からの逸脱)の作用に対して反応し、かつ他分野の用途における使用を見出す、力を制御された/依存制御システムは、しばしば治療の遅れと、医用工学用途の場合に治療の品の低下とを、不都合にもたらす。なぜなら、安全上の理由は、怪我のリスクを最小に抑えるために、特に敏感な患者の非特異性力の閾値(トリガ)の提供を決定するためである。これは不都合には、多くの誤った休止(ごく初期の休止)をもたらす。または、個々の閾値が設定された場合、初めにこれらを、時間を浪費して決定し、次にこれらを運動治療を通して患者の変化する身体状態に調整することが、必要となる。
【0007】
適切な開ループ及び閉ループ制御の方法のための、旧来の取り組みの例は、とりわけ以下に見られる。
-GROOTHUIS,S.S.,HAARMAN,C.J.W,TONIS,F.,STRAMIGIOLI,S.:Initial control paradigms implemented on rehabilitation system,published May 23,2018,URL:https://ec.europa.eu/research/participants/documents/downloadPublic?documentIds=080166e5b916f0de&appId=PPGMS、
-SCHINDELBECK,C.,HADDADIN,S.:Unified passivity-based Cartesian force/impedance control for rigid and flexible joint robots via task-energy tanks,2015 IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA),Seattle,WA,2015,pp.440-447(doi:10.1109/ICRA.2015.7139036)、及び
-SHARIARI,E.;JOHANNESMEIER,L.,HADDADIN,S.:Valve-based Virtual Energy Tanks:A Framework to Simultaneously Passify Controls and Embed Control Objectives,2018 Annual American Control Conference(ACC),Milwaukee,WI,2018,pp.3634-3641(doi:10.23919/ACC.2018.8431718)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】GROOTHUIS,S.S.,HAARMAN,C.J.W,TONIS,F.,STRAMIGIOLI,S.:Initial control paradigms implemented on rehabilitation system,published May 23,2018,URL:https://ec.europa.eu/research/participants/documents/downloadPublic?documentIds=080166e5b916f0de&appId=PPGMS
【文献】SCHINDELBECK,C.,HADDADIN,S.:Unified passivity-based Cartesian force/impedance control for rigid and flexible joint robots via task-energy tanks,2015 IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA),Seattle,WA,2015,pp.440-447(doi:10.1109/ICRA.2015.7139036)
【文献】SHARIARI,E.;JOHANNESMEIER,L.,HADDADIN,S.:Valve-based Virtual Energy Tanks:A Framework to Simultaneously Passify Controls and Embed Control Objectives,2018 Annual American Control Conference(ACC),Milwaukee,WI,2018,pp.3634-3641(doi:10.23919/ACC.2018.8431718)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこから進めると、本発明は、運動モジュールを備えたデバイス、詳細にはリハビリテーション用ロボットの、開ループ及び閉ループ制御の方法を提供する目標に基づく。リハビリテーション用ロボットは、先行技術よりも改善され、デバイスのヒトとの相互作用の改善だけではなく、この相互作用に基づいた所望の運動に関する、ヒトの参加に関する決定を引き出す選択肢、及びその次にデバイスを、この参加に従って制御する選択肢、も提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目標は、独立請求項1の特徴を有する方法を用いて実現される。個々に、または互いに組み合わせて使用できる、別の有利な構成及び改善は、従属請求項の主題である。
【0011】
ヒトと相互作用する観点で、少なくとも運動モジュールを備えたデバイスの、開ループ及び閉ループ制御のための、本発明による方法は、以下の点で特色を示す。
-エネルギーネットワークが定義される。このエネルギーネットワークは、
-デバイス及びヒトのシステムにおける総エネルギーSに対する、デバイスによって供給される単位時間当たりのエネルギー量を示す、第1のパワー成分Pinと、
-主に運動モジュールの支援を伴って実行される仕事の外側の、内部の開ループ及び閉ループ制御プロセスによる、デバイスが損失する単位時間当たりのエネルギー量を示す、第2のパワー成分Pdissと、
-総エネルギーSに対する、ヒトによって供給される単位時間当たりのエネルギー量を示す、第3のパワー成分Pと、
から構成される。
-エネルギーネットワーク、すなわちデバイス及びヒトのシステムにおける総エネルギーSは、制御された変数として定義される。
-デバイスが、運動モジュールによってヒトと相互作用するスピードは、制御変数Ωとして定義され、この運動モジュールは所望の軌道xを通過するよう意図される。
-エネルギーネットワークの総エネルギーSは、
-ヒトによって独立して実行された運動が、デバイスによって当初指定された軌道xに沿った運動から逸脱するほど、増加し、及び
-ヒトによって独立して実行された運動が、デバイスによって当初指定された軌道xに沿った運動に接近した場合、再び減少する。
-エネルギーネットワークの総エネルギーSは、運動モジュールの運動の間に判断される。
-制御変数Ωは、判断された総エネルギーSに依拠して、運動モジュールの運動の間に変化し、それによって、総エネルギーSは、
-インターバルS≦Smax-SΔに位置された場合、このインターバルにとどまるか、または
-インターバルS>Smax-SΔに位置された場合、インターバルS≦Smax-SΔに再び接近する。ここで、
max=総エネルギーSの選択された上方境界。
Δ=Smax-Sx1、ここでSx1は、制御された変数(=総エネルギー)Sの個々の値を表わし、x=nが、Pin>0のインターバルおける値を指定するために使用され、x=pが、Pin<0のインターバルにおける値を指定するために使用される。
【0012】
本発明による方法は、エネルギーネットワークを定義し、その結果、全体のパワーサイクル、詳細にはデバイス/ヒトのシステムにおけるエネルギーまたはパワーフローの力学を考慮することを可能にし、有利には、制御中のヒトのパフォーマンスを考慮に入れることを可能にする。デバイスのエネルギー寄与及びヒトのエネルギー寄与の両方を示す、総エネルギーSの制御/制限に基づいた、このエネルギーベースの制御方法は、有利にはヒトに、空間的及び時間的の、両方の自由度を伴うデバイスの使用を提供し、その一方で、参加状況に依拠して運動を実行し、その結果トレーニングまたはリハビリテーションの進捗を向上させる。
【0013】
定性的に、本発明による方法は、リハビリテーション機構(=医療分野における計画に従ったリハビリテーション運動を実行するよう好適に設計されたデバイス(ロボット))の例を使用して、以下のように概略を説明することができる。
【0014】
健康なヒトは、リハビリテーション機構における運動モジュールの所望の軌道によって表わされる、指定された運動に追随することができる。すなわち健康なヒトは、例えば運動モジュールの運動のスピードに正確に従うことができ、そのためヒトとデバイスとの間の相互作用力は、無視できるほど小さい。
【0015】
健常ではないヒトは、同じ精度レベルで、説明した運動モジュールの所望の運動に追随することは、通常はできない。誤差、具体的には、所望の軌道と、運動モジュール、詳細にはデバイスのエンドエフェクタによって通過される実際の軌道と、の間の逸脱が発生する。
【0016】
全体的に、3つの異なるタイプの軌道が、本出願の範囲内で区別される。「通常の軌道」は、治療者によって指定された(治療の視点から望ましい)運動のシーケンスを意味するものと理解されたい。運動が、この通常の軌道に沿って実際に実行された場合、制御変数Ωは1の値である。
【0017】
「デバイス(運動モジュール)によって指定された軌道=所望の軌道」は、運動軌道、または運動モジュール、詳細にはそのエンドエフェクタの運動のシーケンスを意味するものと理解されたい。この運動モジュールは、指定された制御アルゴリズムに従って追随するよう試みる。このような軌道に追随する必要性は、例えば制御変数Ω≠1の場合に発生する。
【0018】
「実際の軌道」は、運動モジュール、詳細にはそのエンドエフェクタの、実際に物理的に実現された運動軌道を意味するものと理解されたい。実際の軌道は、所望の軌道から逸脱し得る。なぜなら、例えばデバイスのインピーダンス制御が、ソフトになるよう設定され、ヒト(患者)が、力をデバイスのエンドエフェクタに加えることによって、デバイスのエンドエフェクタを逸らせるのを可能にするからである。類似の状態が、インピーダンス制御の代わりにアドミタンス制御を実施するときにも、当てはまる(以下参照)。
【0019】
健常ではないヒトの運動の間に発生し得る、前述の誤差は、所望の軌道からの、実際の軌道の逸脱によって表わされる。
【0020】
本発明による、開ループ及び閉ループ制御の方法の範囲内で、この誤差は、制御された変数に、特にエネルギーネットワーク、すなわちデバイス及びヒトのシステムの総エネルギーSに反映される。この場合、総エネルギーSは、上記で定義した3つのパワー成分Pin、P、及びPdissの関数である。
【0021】
自動化された治療運動が、本発明によるデバイスの支援を用いて実行されながら、この制御された変数である総エネルギーSは、次に特定の「好ましい」インターバル、具体的にはインターバルS≦Smax-SΔにとどまるよう意図される。
【0022】
この場合、変数Sに、パワー成分Pinによるデバイスによって、及びヒトのパフォーマンスPによるヒトによって、影響が及ぼされ得るか、または影響を及ぼされる。数学的に、これは数式20(以下参照)で表わすことができ、それは経時的な総エネルギーSの変化を示す。
【0023】
さらに、次に2つの場合が、開ループ及び閉ループ制御の方法の範囲内で区別される。
【0024】
第1に、総エネルギーSが既に好ましいインターバルS≦Smax-SΔにある場合である。この場合、ヒトは、恐らくは完璧ではなく、所望の軌道に従うよう対処するが、最も大きい可能性範囲に関わらず、例としてヒトは所望の運動スピードを実質的に保持する。この場合、デバイスは運動にさらなる介入を行なわず、制御変数は、Ω=1のままである。
【0025】
これが当てはまる、インターバルS≦Smax-SΔにおいて、総エネルギーSに依拠する制御変数Ωの感度は、ゼロ(または概ねゼロ)と等しいものである。制御変数Ωは変更されない。所望の軌道からの逸脱は許容される。このインターバルを、変数Smax及びSΔの好適な選択によって、制御することができる。
【0026】
第2の場合において、Sは、好ましいインターバルの外側、すなわちS>Smax-SΔである。この場合、実際の軌道と所望の軌道との間に、顕著な逸脱が存在する。例えば、これはヒトの運動が、運動モジュールによって指定された運動と比較して、(大幅に)遅すぎるか、(大幅に)速すぎることによって生じ得る。
【0027】
この場合の、本発明による方法の範囲内の目的は、総エネルギーSの減少、すなわち、変数Sを好ましいインターバルS≦Smax-SΔの中に戻すことである。
【0028】
繰り返すと、これを実現するための、2つの選択肢が存在する。
【0029】
ヒトがヒト自身で、特にヒト自身の対策を取ることによって、及びヒトが、対応した速い運動または遅い運動を実施することによって、変数Sを減らすよう対処する。このように、再び所望の軌道に接近する。このような場合、パワー線分Pはマイナスとなり、それは数式20に従って、Pの絶対値が十分大きい場合に、総エネルギーSの減少をもたらす。
【0030】
一般的に、パワー成分Pは、ヒトによって「生成された」物理的力を示す。ヒトが完璧に所望の軌道に追随する場合、すなわち実際の軌道が所望の軌道と等しい場合、それはゼロである。Pは、ヒト自身が所望の軌道に接近するよう試みる場合、マイナスである。なぜなら、位置及びスピードの誤差は、その過程において減少され、それによって総エネルギーSは減少するからである。
【0031】
または、第2の選択肢として、ヒトは上記の減少を自身で対策しないか、もしくは上記の減少に完全には対処しない。この場合デバイスは、パワー成分Pinを変更することによって総エネルギーSを減少させて、ヒトを支援する。パワー成分Pinは、所望の軌道内における、それぞれ所望のエンドエフェクタ位置におけるパワーを示す。
【0032】
数式13及び23によると、パワー成分Pinは、制御変数Ωによって影響を及ぼされ得る。次に制御変数Ωの変動は、ここでは本発明による閉ループ及び開ループ制御の方法の範囲内で固定され、これはPinの変化によって総エネルギーSを減少させ、この総エネルギーが好ましいインターバルS≦Smax-SΔに再び接近するのを可能にする。
【0033】
方法の好ましい構成において、デバイスは、計画によるヒトの下肢の、少なくとも関節、筋肉、及び腱のリハビリテーションのために好適に設計された、リハビリテーション機構であり、ヒトの下肢との動作接続に至らせることを可能にする運動モジュールを使用する。この運動モジュールは、運動モジュールとヒトの下肢との間における力の絶対値を計測するための、少なくとも1つの力センサと、運動モジュールとヒトの下肢との間における力の方向を計測するための、少なくとも1つの角度センサと、を備える。方法は、このようなリハビリテーション機構の開ループ及び閉ループ制御のために、特に好適である。なぜなら、現在のヒトの健康状態またはフィットネス状態に対して、継続的に調整するのを有利に容易にし、かつそれによってリハビリテーションの成功を最適化するからである。
【0034】
さらに、制御変数Ωを以下のように定義することに価値があることが証明されている。
【0035】
【数1】
【0036】
デバイス、特に運動モジュールの運動スピードを示す、このように定義された制御変数Ωによって、ヒトの運動参加を追跡すること、及び全体の貯留関数(S)すなわち計画に従ったシステムの総エネルギーを「形成」すること、を有利に可能にする。
【0037】
代替として、制御変数(Ω)は、以下のようにも定義され得る。
【0038】
【数2】
【0039】
制御変数(Ω)の、このような定義は、第1のパワー成分(Pin)、すなわち運動発生器によって生成された、システムの中へのパワー入力が、ゼロよりも大きい(Pin>0)インターバルと、第1のパワー成分(Pin)が、ゼロ未満(Pin<0)のインターバルと、のためのデバイスの、相互に独立した開ループ及び閉ループ制御を有利に可能にする。
【0040】
本発明による方法における、別の代替の構成において、制御変数(Ω)は、以下のように定義することができる。
【0041】
【数3】
【0042】
【数4】
【0043】
制御変数Ωの、この定義は、デバイスによって指定された運動サイクルを(直ちに)患者が追随できない時間間隔を、有利に考慮する。この場合、パラメータζの導入は、デバイスの断続的な停止または待機状態の選択肢を提供する。
【0044】
方法の好ましい構成において、制御変数Ωの変動は、判断された総エネルギーSに基づいて、特にフィルタ、進度制限、及び/または総エネルギーSに対する制御変数Ωの第1の逸脱の絶対値の限定の実施によって、運動モジュールの運動の間に減衰させることができる。総エネルギーSに対するフィードバックの結果、システムにおいて制御変数Ωを変化させるときに発生し得る、煩わしいと知覚される振動は、それによって有利に最小に抑えることができる。全体の貯留関数Sとしても言及され得る、特に総エネルギーSにおける制御変数Ωの依存が、高い感度を有する場合、このような振動が発生し得る。
【0045】
別の構成において、デバイス及びヒトのシステムにおける総エネルギー(S)は、好ましくは全体の貯留関数S=Sce、または全体の貯留関数S=Sce+Seeとして定義される。
ここで、
ce=制御誤差のエネルギー貯留関数、
ee=運動エネルギー及び位置エネルギーで構成される、デバイス、特に運動モジュールにおける、エンドエフェクタの総エネルギーである。
【0046】
この場合、制御誤差のエネルギー貯留関数が以下のように定義された場合、有利である。
ここで、
【0047】
【数5】
【0048】
さらに、総エネルギー(S)が、仮想の絶対エネルギー値、及び実際の絶対エネルギー値を備えることが有利であると、判明している。
【0049】
このような、制御誤差のエネルギー貯留関数Sceは、有利には、本システムにおけるデバイスに関連した全てのエネルギー寄与を考慮する。
【0050】
この場合、エネルギー貯留関数Sceが、第2のパワー成分Pdissとの計算によって組み合わされた、第1のパワー成分Pinによって判断されるか、またはデバイスとヒトとの間の相互作用力、特に運動モジュールとヒトの下肢との間における、力の絶対値を計測するための力センサによって計測された相互作用力によって計算される場合、有利である。
【0051】
エネルギー貯留関数Sceを判断するために、デバイスによって導入されたエネルギーを考慮すること、及びこれをデバイスの機械的構造によって「消費された」エネルギーを用いた計算によって組み合わせることは、原則的に可能となる。しかしこれは、それぞれのデバイスにおける良好なモデルが必要となる。
【0052】
エネルギー貯留関数Sceを判断するための、より簡単な方法は、デバイスとヒトとの間の相互作用力、詳細にはデバイスのエンドエフェクタにおける相互作用力の判断を介して実施される。第1に、この相互作用力は、デバイス及び軸方向トルクの運動モデルを使用して計算することができる。代替として、この相互作用力は、計測によっても判断され得る。この目的で、有利な使用が、運動モジュールとヒトの下肢との間における力の絶対値を計測するための力センサで成され得る。
【0053】
計測した相互作用力を使用して、第1に、エネルギー貯留関数Sceを直接計算することが可能で、第2に、力センサによって計測された値を、デバイスのエンドエフェクタによって採用された位置の、相互作用力を適用した結果としての理想的位置からの逸脱を判断するためにも、使用できる(アドミタンス制御の意味内-上記参照)。
【0054】
この目的で使用されたデバイスのモデルは、エンドエフェクタの挙動を、所与の剛性及び衰退を伴う仮想バネ減衰機システムとして示す。エンドエフェクタは、外力を力センサに加えた結果、仮想バネ定数に従った所望の軌道から逸らされる。次に、エネルギー貯留関数Sceを、所望の軌道からの逸脱から計算することができる。
【0055】
【0056】
方法の好ましい構成において、運動が実行されながら、デバイスの反復学習プロセスによって、運動を実行するために選択される制限(Smax)を判断する価値があることが、さらに証明されている。この制限は、総エネルギー(S)及び/または変数SΔ=Smax-Sp_xに相当する全体の貯留関数のためのものである。ここで、Sp_xは、総エネルギー(S)の個々の値である。好ましくは、この反復学習プロセス中のステップからステップに調整されるのは、制限Smaxだけではなく、詳細には変数SΔ=Smax-Sp_xに従った、関数Ω(S)のインターバル境界である。ここで、Sp_xは、総エネルギー(S)の個々の値である。
【0057】
さらに好ましくは、デバイスによって指定された運動におけるヒトの参加状態を判断するための、学習因子k及び/または忘却因子kは、反復学習プロセスの範囲内で、学習因子k及び/または忘却因子kが、事前に定義された最終値に達するまで、好ましくは経時的に直線的に変化され得る。学習因子k及び/または忘却因子kを、運動治療中において、ヒトのフィットネス状態に、詳細には治療セッション中における患者のその時の疲労状態に、最終的には動的に有利に適応させることができる。
【0058】
有利には、制限(Smax)の値を、この場合においては第1の反復ステップで選択することができる。この値の場合、デバイスは、運動を実行することでヒトを完全に支援し、制御変数(Ω)の値は1である。制限(Smax)の値は、制御変数(Ω)が1の値を維持する限り、各々別の反復ステップで減少される。制御変数(Ω)は1の値から逸脱すると、制限(Smax)の値は、次の反復ステップにおいて再び増加される。最適な制限(Smax)を判断するための、このような反復学習プロセスは、ヒトの参加能力が、例えば筋電図検査(EMG)の範囲内で必要とされるような追加のセンサを使用することなく判断されることを、有利に可能にする。有利には、ヒトのその時の健康状態またはフィットネス状態、したがってリハビリテーションの成功も、このように判断された参加能力から推定することもできる。
【0059】
本発明による方法の別の構成において、当初の制限(Sinit(φ))を判断するために、デバイスを、所与の制限(Smax)なしでn回の運動サイクルに初めに通すことができる。運動サイクルの数字nは、2≦n≦5の運動サイクルのインターバルにあり、好ましくは3運動サイクルである。S(φ)のプロファイルを、プロセスにおいて記録することができ、記録したS(φ)値の平均値をその後、当初の制限(Sinit(φ))として計算することができ、それはλ・Sinit(φ)で、λ≧1の形態における反復学習プロセスの、第1の反復ステップにおける制限(Smax)の開始値としての役割を担うことができる。デバイスによって指定された運動における、ヒトの参加状態を判断するための、学習因子(k)及び/または忘却因子(k)は、この初期化の範囲内における当初の制限(Sinit(φ))に基づいて評価することもできる。初期化は、本発明による方法における患者の特異度を、有利に増加させる。
【0060】
この場合、総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための制限である、運動を実行するために選択される制限(Smax)を、デバイスの運動サイクル内の運動進捗を示す位相値(φ)に基づいて領域(Ψ(φ))の中に分割することができ、当初の制限(Sinit,i(φ))を、各領域(Ψ(φ))のために判断することができる。
【0061】
このように当初の制限(Sinit(φ))を判断することによって、具体的には位相に依拠した方法で判断された個々の領域(Ψ(φ))のためにも、様々な臨床像を有する様々な患者が、運動治療を開始する前に、総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための制限(Smax)の開始値を、個々に自動的に判断することが、有利に可能である。
【0062】
最後に、本発明による方法の構成は、運動を実行するために制限(Smax)が選択されることは価値があることも証明されている。総エネルギー(S)に相当する全体の貯留関数のための、この制限は、デバイスの運動サイクル内の運動進捗を示す位相値(φ)に基づいて、領域(Φ(φ))の中に分割される。φstr,iからφstr,i+1までの位相値インターバルと、選択される制限(Smax(φ))とを示す領域(Φ(φ))は、各領域(Φ(φ))で独立して定義され、以下で、領域(Φ(φ))の全ての位相値(φ)に当てはまる。
【0063】
【数6】
【0064】
このように、治療者は、異なる筋肉グループを能動化させるための様々なゾーンを有利に定義することができ、これらのゾーンに従って、デバイスと、これらのゾーン内におけるデバイスの適応範囲とによって、支援効果を判断する。支援効果の範囲は、ここでは平滑関数によって示すことができ、有利には、運動のシーケンスの干渉または混乱を防止する。
【0065】
本発明は、計画に従って、ヒトの下肢の、少なくとも関節、筋肉、及び腱のリハビリテーションのために好適に設計され、ヒトの下肢との動作接続に至らせることを可能にする運動モジュールを使用する、リハビリテーション機構を備えたデバイスにも関する。この運動モジュールは、運動モジュールとヒトの下肢との間における力の絶対値を計測するための、少なくとも1つの力センサと、運動モジュールとヒトの下肢との間における力の方向を計測するための、少なくとも1つの角度センサと、を備える。このデバイスは、請求項1~14で請求するような方法によるデバイスの、開ループ及び閉ループ制御のために構成された制御ユニットを備えるという点で、特色を示す。
【0066】
本発明の追加の詳細、及び別の利点を、本発明を制限せずに、好ましい例示的な実施形態に基づいて、添付の図面と共に以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明による方法の基礎を形成する、デバイス及びヒトのシステムにおける、エネルギーフロー計画を示す図である。
図2a】制御された変数としての、総エネルギー(S)における制御変数(Ω)の、関数依存性の第1の例を示す図である。
図2b】制御された変数としての、総エネルギー(S)における制御変数(Ω)の、関数依存性の第2の例を示す図である。
図3】本発明による方法の範囲内における、例示的な学習プロセスのブロック図である。
図4a】本発明による方法を使用して制御できるデバイスの、第1の実施形態を示す図である。
図4b】本発明による方法を使用して制御できるデバイスの、第2の実施形態を示す図である。
図5】位相値(φ)に依拠した、本発明によるデバイスの開ループ及び閉ループ制御の、(φ-Sp1(=Smax))曲線の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の好ましい実施形態における以下の説明において、同じ参照記号は、同じまたは同等の構成要素を表わす。少なくとも運動モジュール50を備えたデバイス1の、開ループ及び閉ループ制御の、本発明による方法は、ヒトMとの相互作用の観点において、原則としてデバイス特有のものではなく、デバイス1、具体的にはロボットシステムの多様性における開ループ及び閉ループ制御の使用を見出すことができる。しかし、方法の使用は、患者のリハビリテーションにおける医用工学ベースの支援を提供するために使用される、ロボットシステムの開ループ及び閉ループ制御のために、特に好ましい。詳細には、損なわれた身体能力及び/または認識能力を伴う、脳血管障害または重大事故後の患者である。この点で、例示的な参照が、独国発明特許第102015117596号明細書(DE 10 2015 117 596 B3)に開示されたリハビリテーション機構で成される。
【0069】
本発明による方法を説明するために、垂直に駆動させることができるベッドと、ヒトMの脚と相互作用する2本のロボットアームとによって構成された、ロボットリハビリテーションシステムは、以下では、モデルシステムまたはデバイス1として考慮される(この点で図4a及び図4bも参照)。
【0070】
本発明による方法によって制御することができるデバイス1の、第1及び第2の実施形態が、図4a及び図4bに示される。
【0071】
このようなデバイス1は、好ましくは、計画に従って、ヒトMの下肢における少なくとも関節、筋肉、及び腱のリハビリテーションのために好適に設計され、ヒトMの下肢との動作接続に至らせることができる運動モジュール50を使用する、リハビリテーション機構30を備える。運動モジュール50は、運動モジュール50とヒトMの下肢との間における力の絶対値を計測するための、少なくとも1つの力センサ51と、運動モジュール50とヒトMの下肢との間における力の方向を計測するための、少なくとも1つの角度センサ52と、を備える。制御ユニット11では、本発明による方法に従ったデバイス1の、開ループ及び閉ループ制御が存在する。
【0072】
各ロボットアームは、好ましくは、重複決定を避けるため、及びその後にヒトMの大腿部それぞれの方向を考慮するために、n個のモータ駆動関節及び受動的端部関節を備える。ロボットアームは、制御モデルにおける以下の導関数のため、及び本発明による方法の説明のために、同一であると考慮される。したがって、これらが状況に応じて他のアームに等しく当てはまるが、説明は1本のロボットアームに限定される場合がある。
【0073】
[I)デバイス1、具体的にはロボットリハビリテーションシステムを表わすためのモデル]
ロボットシステムの運動学的構造を考慮する範囲内で、エンドエフェクタ及びロボットの関節は、xy面(座標システムの定義に関しては図4a参照)に対して水平にのみ動くものと仮定される。それによって、3次元空間(「R空間」)における、それらの運動を、xy面内の位置及びz軸周りの方向によって示すことができる。さらに、ロボットアームの最後の関節は受動的であるため、ロボットシステムのための開ループ及び閉ループ制御の方法を開発する目的のため、受動的関節x∈Rのデカルト保持/位置付けが、エンドエフェクタの位置付けx∈R図4a参照)の代わりに考慮される。F;F∈Rは、x及びxにおける力の作用(「相互作用レンチ」)を示し、この場合、xy面の直線力及びz軸周りのトルクに関する。
【0074】
ロボットのn個のモータ駆動関節、及びベッドの向きqを考慮に入れると、最後の関節を含んだロボットの座標は、q∈Rn+1として明らかになり、順運動(前進運動)は以下のように明らかになる。
(1) x=f(q)
ここで、ベッドの向きqは、qに含まれる。
【0075】
さらに、ベッドの向きは、分離したアクチュエータによって駆動されるものと仮定され、それによって、対応して導入されたトルクは、ここで説明する動的モデルでは考慮されない。
【0076】
動的モデルは以下のように示される。
【0077】
【数7】
【0078】
[II)エネルギーの検討に基づく制御方法]
本発明による制御計画は、運動が、デバイス1及びヒトMのシステム内のエネルギーフローを形成し、それによってヒトMとデバイス1との間のエネルギー伝達を制御するために、ロボット(「ロボットの所望の動作」)以下の数8の式によって実行されるよう順応させることに基づく。特定のリハビリテーション運動のために指定された、割り当てられた運動の振幅を伴う周期的軌道を考慮に入れ、軌道がロボットによって通過されるスピードは、指定されたエネルギー制限も順守されるよう調整される。このように得られた調整された軌道(「再形成された軌道」)は、次に入力として制御ユニットへ伝達され、ロボットのアクチュエータ(図1参照)のために導入されるトルク(「入力トルク」)を得るために、相互作用運動を制御する。
【0079】
【数8】
【0080】
図1は、本発明による方法の基礎を形成する、デバイス1及びヒトMのシステムにおける、エネルギーフロー計画を示す。
【0081】
以下で、制御方法における動作法則が例示的に初期設定され、モデルのためのエネルギーネットワークが、その次に導き出される。
【0082】
[a)相互作用運動の制御]
デバイス1、具体的にはロボットが、治療全体(治療運動の実行)にわたってヒトMと物理的に接触するものと仮定される。したがって、例えばデカルトインピーダンス制御などの、規格に適合した制御方法の使用が推奨される。
【0083】
以下の数9が、状況に応じてデバイス1、具体的にはロボットの、デカルト座標に示される軌道として考慮される場合、以下の関係(数10)が生じる。
【0084】
【数9】
【0085】
【数10】
【0086】
これらのマトリクスは、以下のように定義される。
【0087】
【数11】
【0088】
[b)システムにおけるエネルギーフローの説明]
数式(2)及び(6)を考慮に入れると、閉ループ制御回路の力学のために、以下が生じる。
【0089】
【数12】
【0090】
以下の制御誤差のエネルギー貯留関数は、このようなデバイス1、具体的にはこのようなロボットのために定義される。
【0091】
【数13】
【0092】
数式(10)、及び以下の数14の歪対称の特性を考慮に入れると、以下の(12)(数15)を証明することが可能である。
【0093】
【数14】
【0094】
【数15】
【0095】
図4aを考慮してさらに明らかなのは、デバイス1具体的にはロボットのエンドエフェクタのためのエネルギーフローが、同様の方法で説明できることである。エンドエフェクタの総エネルギーは、運動及び位置エネルギーを備える。
【0096】
【数16】
【0097】
ニュートンの第2の法則及びエンドエフェクタに作用する力の合計を考慮に入れると、以下が生じる。
【0098】
【数17】
【0099】
ここで、総貯留関数S∈R>0を、以下のように定義することが可能である。
【0100】
【数18】
【0101】
なお、数式(12)及び(18)を考慮に入れると、以下が生じる。
【0102】
【数19】
【0103】
図1は、数式(20)の概略の解釈を示し、本発明による開ループ及び閉ループ制御の方法の、主な特徴を説明する。本発明による開ループ及び閉ループ制御の方法によって制御されたロボットに貯蔵されたエネルギーは、軌道発生器及び制御減衰における患者の運動に接続されたパワー入力ならびに出力P、Pin、及びPdissの組み合わせた効果の結果として、経時的に変化する。デバイス1、詳細にはその運動モジュール50のスピードに相当する、周期的運動Ωの周波数、さらにはそれによる所望の(指定された)軌道xは、最大許容エネルギーSmax及び閾値Smax-SΔと比較して、貯蔵されたエネルギーSの、その時のレベルに基づいて調整される。この調整は、デバイス1及びヒトMのシステムへ/システムからの運動発生器のエネルギー入力及び出力、すなわち経時的なシステムの中へのパワー入Pinに、直接影響を及ぼす。
【0104】
[c)エネルギー制限]
通常、エネルギーベースの制御のモデル化は、受動的分析によって、システムの安定性を検査するために使用される。しかし、このようなモデルはさらなる利点、例えば具体的には、2つの独立した(部分的)システム間におけるエネルギーフローを示す、という利点を有する。これは、(デバイス1との相互作用という観点における)ヒトMの場合など、(部分的)システムのうち一方が予測できない作用をするとき、特に興味深い。
【0105】
対応した例が、SHAHRIARI,E.,KRAMBERGER,A.;GAMS,A.,UDE,A.,HADDADIN,S.:Adapting to contacts:Energy tanks and task energy for passivity-based dynamic movement primitives; 2017 IEEE-RAS 17th International Conference on Humanoid Robotics(Humanoids),Birmingham,2017,pp.136-142(doi:10.1109/HUMANOIDS.2017.8239548)に見られる。
【0106】
本発明による開ループ及び閉ループ制御の方法は、上記で導き出した、適用されるエネルギーモデルを提供し、それによって、デバイス1からヒトMに伝達されたエネルギーは制限され、かつ計画によってヒトMの運動に適合される、デバイス1の反応性レベルを提供する。
【0107】
数式(20)から進めると、制御されたデバイス1、詳細にはロボットは、チャネル(数20)及び(数21)に関して受動的であることが明らかになる。システムの全体的な安定性のために、システムにおける前述のチャネルの効果/影響を不動態化する必要がある。これを行なうための1つの選択肢は、仮想エネルギータンクを増加させることである。この仮想エネルギータンクは、これらのチャネルのために定義されている。なぜなら、計画による仮想エネルギータンクの設計は、総貯留関数Sの制限と同じであるためである。システム全体の安定性は、総貯留関数S(仮想及び実際(事実上)のエネルギーから成る、システムの総エネルギーに相当)が常に有界であると決まっている場合、保証される。
【0108】
【数20】
【0109】
【数21】
【0110】
さらに数式(20)から明らかなのは、デバイス1とヒトMとの間のエネルギーフローが、総貯留関数Sに直接依拠することである。Sの高い値は、P<0の場合いつでもヒトMに伝達され得る、貯蔵されたエネルギーの大きい絶対値として解釈することができる。数式(21)によると、これは、デバイス1によって指定(生成)された運動が、ヒトMによって加えられた力の反対である場合であり得る。デバイス1からヒトMへの、可能なエネルギー伝達サイズを、貯蔵されたエネルギーSを制限することによって、安全な範囲に制限することができる。上記で成された記述から、安定性及び安全性の要件を両方満たす、総貯留関数S(=総エネルギー)の絶対上方境界が存在することを、導き出すことが可能である。その結果、0値と前述の絶対上方境界との間の、任意の制限Smaxを定義することが可能である。Smaxの正確な選択は、ヒトMの運動と、デバイス1、具体的にロボットまたはデバイス1の運動モジュール50の、所望の指定された運動と、の間の逸脱に対する、デバイス1の反応性レベルに影響を及ぼす。
【0111】
ee<<Sと仮定すると、数式(11)及び(19)は、総貯留関数Sが、追跡誤差変数(数22)及び(数23)のサイズによって大部分が判断されるよう生じさせる。次にこれらの変数の値を、ヒトMの運動と合致した、指定された軌道を変えることによって、制御側で減少させることしかできない。適用のため、これは、より小さいSmaxの値を選ぶことによって、デバイス1が、ヒトとの相互作用の範囲内で、より反応するように導く。
【0112】
【数22】
【0113】
【数23】
【0114】
[d)エネルギーベースの運動発生器]
総貯留関数Sは、直接制御することはできない。なぜなら、ヒトMの予測できない運動の関数、すなわち数式(20)及び(21)から明らかであるように、以下の数24であるためである。しかし、数式(13)から明らかであるように、Pinによって間接的に、基準として(S-Smax)を使用してxを調整することによって、Sを制御すること、または換言すると「形成する」ことができる。この場合、エネルギーを制御または形成することで、治療者によって指定された軌道パターン、または所望の軌道振幅を変えるべきではなく、所望の運動のスピードのみを変えるべきである。理論上、軌道パターンは任意の方法で指定することができるが、特に例証目的で、以下の平滑なシヌソイド関数の使用は、その価値が証明されている。
【0115】
【数24】
【0116】
【数25】

【0117】
数式(22)及び(23)から、所望のスピード及び最終的にはシステム全体のエネルギーも、指定された軌道振幅を考慮に入れながら、Ωを調整することによって、制御または形成することができることが明白である。さらに、位相値Φを使用して、その後他の脚の運動を始動させるために、ヒトMの脚が全運動サイクルを通したことを判断することもできる。これは、互いに関する脚の、独立して混乱した運動プロファイルを、有利に防止する。
【0118】
平滑調製Ωのための運動調整法則は、最終的に以下のようにすることができる。
【0119】
【数26】
【0120】
代替として、本発明による平滑調整Ωのための好ましい運動調整法則は、以下のようにすることもできる。
【0121】
【数27】
【0122】
この場合、制御変数Ωがゼロと等しく設定される領域Sδは、インターバルPin>0におけるインターバルSΔの中間で定義される(図2a及び図2bの図における、それぞれ左側に相当)。
【0123】
図2a及び図2bは、制御された変数としての総エネルギー(S)における制御変数(Ω)の、関数依存性の第1及び第2の例をそれぞれ示す。
【0124】
Ωの標準値は1である。Sが許容制限を超過した場合、Ωの制御または変化は、Pinの値すなわちパワーフローの方向に依拠する。Pin>0である場合、すなわちデバイス1がその時点でエネルギーをシステムに供給した場合、制限は超過され、所望の指定された運動を遅くするか、または逆にするために、Ωは減少される。Pin<0である場合、すなわちエネルギー制限が、システムにヒトMがエネルギーを供給することによって超過された場合、追跡誤差すなわち(数28)及び(数29)を減少させるためにΩを増加させ、それによってエネルギーはシステムから取られ、システムは安全(安定)レベルに導かれる。図2aは、Ωを、数式(25)によるSの関数として示す。
【0125】
【数28】
【0126】
【数29】
【0127】
制御された変数としての、総エネルギーSにおける制御変数Ωの関数依存性、具体的には数式(25a)で示すことができる、第2の例は、図2bに示される。この場合、以下の関係が、図2a(右)及び図2b(左)のパラメータのために明らかになる。
p2=Smax
p1=Smax-SΔ、
n1=Smax-SΔ、
n2=Smax-SΔ+(SΔ-Sδ)/2、
n3=Smax-(SΔ-Sδ)/2、
n4=Smaxである。
【0128】
さらに、Sδがゼロと等しく設定された場合(Sδ=0)、以下が明らかになる。
【0129】
【数30】
【0130】
デバイス1の様々な反応閾値(反応性レベル)を設定するために、詳細には以下の値を、パラメータまたはパラメータ間の関係のために選択することが可能である。
【0131】
【表1】
【0132】
ここで、値Sp2は、図2aの値Smaxに相当する。値Sp1は、差Smax-SΔに相当し、上記の表から明白なように、Pin>0側における全てのパラメータSnxを設定するために使用することができる。制御変数Ωのための、この制御計画の利点は、図2aの計画とは反対に、左手側(Pin>0)におけるΩ(S)のゼロ交差が、交差ポイントではないが、「交差のインターバル」(Ω=0を伴うインターバル)であることから構成される。Ω(S)のゼロ交差、すなわちΩ(S)<0からΩ(S)>0への符号の変化は、デバイス1によって指定された運動の方向の変化に相当する。図2bに例示された事例において、この方向の変化は、図2aのような突然のものではなく、より平滑なものであり、したがってヒトMによって、より快適である。
【0133】
さらに、特定のデバイスパラメータを得るための、別のパラメータ仕様が存在する場合がある。例えば、第1の事例において、値γをゼロと等しく設定することができ、指定された運動方向を、患者が(無意識に)逆にすることを可能にする。第2に、パラメータSn2及びSn3を等しく設定することで、デバイス1の運動を不安定化にし得る。
【0134】
制御変数Ωの前述した調整、したがって本発明による方法で操作されたデバイス1による支援動作の、開ループ及び閉ループ制御は、純粋にエネルギーの考慮に基づく。しかし、時間因子を、本方法を拡張する目的のために考慮することもできる。
【0135】
本発明による方法の、この変形において、制御変数Ωは、以下のように定義することができる。
【0136】
【数31】
【0137】
この場合の因子(数32)は、デバイス1が停止している間の運動サイクル内の、時間分を示す。これは、デバイス1が動作中である場合(すなわち位相値の時間導関数φ≠0である場合)、因子(数32)はゼロに等しいことを意味する。デバイス1が停止し次第、例えば患者(ヒトM)による抵抗を考慮すると(位相値の時間導関数φ≒0)、因子(数32)は時間と共に増加する。この場合、パラメータτは、デバイス1が停止を続け得る、最大許容時間分を示す。実際、これは、患者(ヒトM)が、例えば健康状態が弱りすぎているなど、デバイス1によって指定された運動に追随できない場合、かつデバイス1が命令した運動をそれによって停止した場合に、デバイス1はτ秒の時間分まで、停止し続けることができる。数式(25c)及び(25d)を考慮に入れた場合、制限Smaxが指数関数的に増加するので、総エネルギーSのその時の値は、この時間分τが終了した後の制御変数Ω=1のインターバルの中に入る。その結果、次にデバイス1は、通常スピードの運動を継続する。
【0138】
【数32】
【0139】
[III)制御の反復学習プロセス]
既に上記で説明したように、Smaxの値が高いことは、ヒトMの運動に対するデバイス1の、及びその逆の、低い反応性レベルに相当する。したがって、所望の指定された運動は、Smaxの値が高い場合は調整されない。その代わりに、ヒトMは、運動軌道/治療者によって指令された運動軌道に従い、能動的参加の範囲、またはヒトを考慮に入れることによって、指定された運動に対する可能な抵抗の範囲(いずれの場合も変数Pによって表わされる)を伴い、デバイス1具体的にはロボットまたはデバイス1の運動モジュール50によって引張られる。このような制御は、ヒトMが自主的に脚を動かすことができない場合、及びデバイス1による大幅または完全な支援を必要とする場合、有用である。しかし、Smaxの値が減少した場合、ヒトMに対するデバイス1の反応性レベルが増加した場合(=デバイス1が迅速に反応した場合)、所望の指定された運動は、ヒトMが参加しないか、または指定された運動に抵抗する場合に調整されることを意味する。この場合、デバイス1の運動は、ヒトMが能動的に指定された運動に追随し始めるまで、遅くなるか、停止するか、または逆転される。これを実現する好ましい方法は、脚とデバイス1との間の相互作用力を低減させることから構成される。
【0140】
リハビリテーションの範囲内で、値Smaxの選択は、ヒトMの健康状態に依存する。その意図は、能動的な関わりが治癒プロセスに有利な効果を有し得ること、及び別の合併症を発症するリスクを防止し得ること、を考慮することである。この理由のため、比較的高い本来の強さを有し、かつデバイス1、具体的にはロボットまたはデバイス1の運動モジュール50に、自主的に作用することができるヒトMにとって、小さい値のSmaxを用いた制御は有利である。しかし、ヒトMが、運動に対して能動的に参加できない場合、治療運動を実行するために、Smaxの値を高い値に保たなければならない。その結果、Smaxの最適な値は、それぞれのヒトMのために最低の値から開始する。この値では、所望の指定された運動は最小限でしか変えられない。Smaxが、この法則に従って継続的に調整された場合、その結果変数Smaxは、ヒトが指定された運動に参加する能力を計測するために使用することができる。
【0141】
さらに、ヒトMの参加する強度または能力が、疲労または循環の変化の理由で、運動を実行する間に変化し得ることを、留意するべきである。したがってこれは、デバイス1の支援レベルを継続的に変化させる状態、すなわち必要な反応性レベルを継続的に変化させる状態にし得る。ヒトM、具体的には患者の最適な支援のために、(治療)運動中に、Smaxを、運動の全体のパフォーマンスに参加するヒトMの、その時の能力に対して適切に調整するべきである。この場合、ヒトMの参加状態を、追加のセンサによって、具体的には筋電図検査(EMG)の範囲内で監視することができる。しかし以下に示されるように、参加状態を、有利には別のセンサを使用せずに、デバイス1の学習アルゴリズムによって判断することもできる。
【0142】
図3は、本発明による方法の範囲内における、例示的な学習プロセスのブロック図を示す。
【0143】
比較的高い値のSmaxが、治療セッションの開始において選択される。この値は、デバイス1が運動をするヒトMを完全に支援するように高く設定され、それによって、数式(25)による所望の指定された運動に調整するための法則は「始動」されず、Ωは1の値に維持される。セッションの範囲内で、Smaxの値は反復して減少され、Ωが1の値を維持する限り、各々の通しの周期的運動(すなわち忘却アルゴリズム(「忘却プロセス」)が使用される)を伴う。Smaxの値を減少させることが、運動するヒトMの参加に対するデバイス1の感度(すなわち反応性レベル)を増加させ、もはやヒトMが、指定された運動を十分正確に追随できないよう、十分小さいSmaxの値を引き続き判断可能にし、それによって、1の値からの逸脱分だけ、制御変数Ωを「始動させる」。この場合、Smaxは、次の運動の反復のために増加される(すなわち学習プロセスを実施する)。各反復(=各運動の反復)中の、制御変数Ωの値を計測することによって、ヒトMの参加状態を判断し、それに応じてSmaxの値を調整することが可能である。数学的に、i回目の反復後の、この学習プロセスは、以下のように示すことができる。
【0144】
【数33】
【0145】
このような反復学習プロセスは、ブロック図に基づいて図3において、例示的な方法で示される。当初の軌道x は、システムに貯蔵されたエネルギー及び学習した最大許容エネルギーに基づいて、軌道発生器において調整される。
【0146】
説明した開ループ及び閉ループ制御の方法の拡張は、さらに治療者が、デバイス1の動作モードを、能動化、または訓練する筋肉もしくは筋肉グループに基づいて、異なる領域(領域Φ)に分類するのを可能にすることと、デバイス1の支援範囲(「支援レベル」)または動作モードを、標的化方式でこれら各々の領域Φのために設定することと、を可能にすることで構成され得る。デバイス1の支援の範囲、すなわち「支援レベル」は、ここでは平滑関数として定義され、それは可能な場合、デバイス1の運動の中断を回避する。本発明によると、このような開ループ及び閉ループ制御は、好ましくは数式(24)で定義したように、位相値φに基づいた領域Φへの分割に基づくことができる。
【0147】
図5は、位相値(φ)に依拠した、本発明によるデバイス1における開ループ及び閉ループ制御の、(φ-Sp1(=Smax))曲線の例を示す。
【0148】
この場合、領域Φは、φstr,iからφstr,i+1までの、位相値のインターバルを示す。運動治療を準備するために、治療者は、それぞれの患者の要望によって領域を設定することができる。詳細には、φstr,1=0、φstr,2=0.25、φstr,3=0.5、φstr,4=0.75、φstr,5=1、を伴う4つの領域Φへの分割が存在し得る。次に、独立した制限Smax,i(φ)を、これらの領域Φにおける各々のために定義することができ、以下が領域Φの全ての位相値φに当てはまる。
【0149】
【数34】
【0150】
値(数35)は、ここではそれぞれ領域Φに連結され、反復学習プロセス、具体的には上述の方法による運動治療中に改善(治療の進捗のために調整かつ最適化)させることができる。この場合、所謂平滑インターバルΔ≧0は、好ましくはそれぞれの領域Φ(φ)よりも小さい位相値φの範囲を有する。詳細には、平滑インターバルΔは、対応する領域Φ(φ)における位相値φの1/10を含み得る。例えば、ヒトMの各脚のための4つの領域Φ(φ)に分割する場合、かつ1本の脚のための位相値φにおける値の範囲が、0から1(これに関して数式24参照)である場合、個々の領域Φ(φ)のために、いずれの場合も0.25「位相ユニット」の長さをもたらし、平滑インターバルΔの0.025「位相ユニット」を伴い得る。
【0151】
【数35】
【0152】
最後に、当初の制限Sinit(φ)を判断するための、反復学習プロセスのさらなる改善として、デバイス1を、所与の制限Smaxなしでn回の運動サイクルを初めに通すことができる。運動サイクルの数字nは、2≦n≦5の運動サイクルのインターバルにあり、好ましくは3運動サイクルである。この場合、S(φ)のプロファイルは、好ましくは記録され、記録されたS(φ)値の平均値は、その後当初の制限Sinit(φ)として計算される。次にこの当初の制限Sinit(φ)は、反復学習プロセスの第1の反復ステップにおいて、制限(Smax)の開始値として使用される。具体的には上述のように、λ・Sinit(φ)でλ≧1の形態である。「Smaxの第1の値」として、当初の制限Sinit(φ)のこの自動的な判断は、患者の健康状態を個々に、確実に、かつ迅速に判断する点で、非常に様々な開始ポイントを伴う様々な患者のために好適な開始値を、有利に可能にする。
【0153】
本発明は、少なくとも運動モジュール50を備えたデバイス1の、開ループ及び閉ループ制御の方法に関する。ヒトMとの運動モジュール50の相互作用という観点から、この方法は、デバイス1及びヒトMを備えたシステムにおいて総エネルギー(S)の量を監視することを可能にする、エネルギーベースの制御計画に基づき、デバイス1またはその運動モジュール50が動くスピードを示す計測された制御変数Ωに依存する。方法は、有利には、デバイス1及びヒトMを備えたシステムにおいて、全体のパワーサイクル、詳細にはエネルギーまたはパワーフローの力学を考慮し、かつ閉ループ制御中のヒトMのパフォーマンスを考慮に入れる。方法は、有利には、追加のセンサなしに反復学習プロセスで、デバイス1を使用するヒトMの参加状態を判断することも可能にする。
【符号の説明】
【0154】
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5