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特許7565106N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む脾臓肥大化抑制剤
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  • 特許-N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む脾臓肥大化抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む脾臓肥大化抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20241003BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/7012 20060101ALI20241003BHJP
   A23K 20/121 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P37/08
A61P1/00
A61K31/7012
A23K20/121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023093160
(22)【出願日】2023-06-06
【審査請求日】2023-07-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日:令和4年12月4日 集会名:第20回日本機能性食品医用学会総会
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載日:令和4年10月 掲載アドレス:http://www.jsmuff.com/soukai2022/?page_id=27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:令和4年11月15日 刊行物名:機能性食品と薬理栄養、Vol.16、No.3(通巻93号)、第192頁
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513266962
【氏名又は名称】株式会社G-Foods貿易
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 睦行
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 剛
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111587945(CN,A)
【文献】特開平02-048529(JP,A)
【文献】国際公開第96/002255(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114452360(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0070515(KR,A)
【文献】国際公開第2023/176950(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
AGRICOLA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩を含む、脾臓肥大化抑制剤。
【請求項2】
アレルギー反応が、食物アレルギー反応である、請求項1に記載の脾臓肥大化抑制剤。
【請求項3】
食物アレルギー反応が、鶏卵に対する食物アレルギー反応である、請求項2に記載の脾臓肥大化抑制剤。
【請求項4】
経口投与用の、請求項1に記載の脾臓肥大化抑制剤。
【請求項5】
アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩を含む飲食品。
【請求項6】
アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩を含む飼料。
【請求項7】
アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩を含む医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む、脾臓肥大化抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーは、GellとCoombsの分類法により大きく4つの型(I~IV型)に分類される。これらのうちI型アレルギーは、免疫グロブリンE(IgE)依存性のアレルギーであり、アレルゲンが体内に侵入してから比較的短時間に症状が現れるため、即時的アレルギーとも称される。
【0003】
I型アレルギー反応は、感作が成立する感作相の反応と、症状が惹起される惹起相の反応からなる。感作相では、体内に侵入したアレルゲンに特異的なIgEが産生され、体中の組織(血管周囲、皮膚、皮下組織、肺、消化管、肝臓、脾臓等)に広く存在する肥満細胞の表面上のIgE受容体に結合し、感作が成立する。惹起相では、感作が成立したアレルゲンが再度体内に侵入し、肥満細胞上のアレルゲン特異的IgEにアレルゲンが結合し、それによってヒスタミンやロイコトリエン等の炎症性メディエーターが肥満細胞から放出され、アレルギー症状が惹起される。
【0004】
食物アレルギーは、一般的にI型アレルギーに分類される。食物アレルギーのアレルゲンは主にタンパク質であり、小麦、大豆、鶏卵、牛乳、甲殻類、果物、そば、魚類、ピーナッツ等の様々な食品に対するアレルギーが報告されている。食物アレルギーの中では特に鶏卵アレルギーの割合が多く、0歳児では食物アレルギー患者の50%以上が鶏卵アレルギーと言われている。
【0005】
食物アレルギー患者は近年増加傾向にあり、日本では、全人口の1~2%の人々が何らかの食物アレルギーを有していると言われている。食物アレルギーの有病率は特に乳幼児において高く、5~10%であるが、乳幼児の食物アレルギーは成長に伴い耐性を獲得することにより自然に治ることがあるのに対し、大人の食物アレルギーは、耐性を獲得しにくく、原因食品の継続的な除去が必要な場合が多い。
【0006】
食物アレルギーの症状は、皮膚、呼吸器、粘膜、消化器、又は神経等に現れるが、これらの症状が複数の臓器にわたり全身に現れる状態であるアナフィラキシーは生命に危機を与える場合がある。
【0007】
現在、この現代病というべき食物アレルギーに対しては、経口免疫負荷療法等の治療が行われているが、必ずしも満足いく結果は得られていない。また、アレルギー症状を改善する薬剤として抗ヒスタミン薬等が使用されているが、抗ヒスタミン薬は眠気等の副作用を有する。したがって、食物アレルギーをはじめとするアレルギーを抑制することができる物質がさらに求められている。
【0008】
また、食物アレルギー等のアレルギーは、脾臓の肥大化を伴う場合がある。脾臓の肥大化は、胃を圧迫することによる食欲低下、膨満感、腹痛、背部痛等の症状をもたらす場合があるが、これまでに脾臓の肥大化を抑制する作用を有する物質は見つかっていない。したがって、脾臓の肥大化を抑制する物質も必要とされている。
【0009】
一方、シアル酸は、ノイラミン酸(炭素原子9個で分子内にカルボキシル基を有する酸性アミノ糖類)の誘導体の総称であり、N-アセチルノイラミン酸やN-グリコリルノイラミン酸など、50種類以上が同定されている。シアル酸は主に動物界に広く分布している。ヒトにおけるシアル酸は、N-アセチルノイラミン酸であり、グルコースから数ステップをかけて生合成される。N-アセチルノイラミン酸は、特に赤血球、血管、気道、神経や、母乳及び唾液等の外分泌液に存在する。N-アセチルノイラミン酸は、主に細胞膜上の糖脂質や糖タンパク質の末端に存在し、細胞間情報伝達等の機能を担っている。N-アセチルノイラミン酸が細胞膜上の糖脂質や糖タンパク質の末端に存在することで細胞膜が負電荷を帯びることから、N-アセチルノイラミン酸は赤血球の凝集を防止する作用も有する。
【0010】
N-アセチルノイラミン酸は、炎症などの障害が生じた際、切断酵素により糖鎖から切断され遊離することから炎症の生体マーカーとして使用されている。また、特許文献1には、N-アセチルノイラミン酸がウイルス又は細菌感染後の損傷を受けた呼吸器細胞の生存能力の回復を促進することができ、咳等の呼吸状態の治療に使用し得ることが記載されている。
【0011】
しかしながら、N-アセチルノイラミン酸の作用は未だ十分に解明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2012-531445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、効果的な脾臓肥大化抑制剤又は食物アレルギー反応抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、N-アセチルノイラミン酸が、アレルギー反応に伴う脾臓の肥大化及びアレルゲン特異的IgEの産生を抑制することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む、脾臓肥大化抑制剤。
[2] アレルギー反応が、食物アレルギー反応である、[1]に記載の脾臓肥大化抑制剤。
[3] 食物アレルギー反応が、鶏卵に対する食物アレルギー反応である、[2]に記載の脾臓肥大化抑制剤。
[4] 経口投与用の、[1]~[3]のいずれかに記載の脾臓肥大化抑制剤。
[5] 食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む、食物アレルギー反応抑制剤。
[6] 食物アレルギー反応が、鶏卵に対する食物アレルギー反応である、[5]に記載の食物アレルギー反応抑制剤。
[7] 経口投与用の、[5]又は[6]に記載の食物アレルギー反応抑制剤。
[8] 食物アレルギーを発症するリスクを低減するための、[5]~[7]のいずれかに記載の食物アレルギー反応抑制剤。
[9] アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む飲食品。
[10] アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む飼料。
[11] アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む医薬品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アレルギー反応に伴う脾臓の肥大化、又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、N-アセチルノイラミン酸(NANA)を添加していない飼料又はNANAを添加した飼料を与えて飼育したマウスに生理食塩水又はOVAを投与した場合のマウスの脾臓重量を示すグラフである。
図2図2は、NANAを添加していない飼料又はNANAを添加した飼料を与えて飼育したマウスに生理食塩水又はOVAを投与した場合の血漿総IgE濃度を示すグラフである。
図3図3は、NANAを添加していない飼料又はNANAを添加した飼料を与えて飼育したマウスに生理食塩水又はOVAを投与した場合の血漿OVA特異的IgE濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルのアレルギー反応又はそれに関連する病的状態の抑制用途に関する。本発明は特に、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルの脾臓肥大化抑制用途及び食物アレルギー反応抑制用途に関する。
【0020】
(1) 脾臓肥大化抑制剤
本発明は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む、脾臓肥大化抑制剤(以下、「本発明の脾臓肥大化抑制剤」とも称する)に関する。本発明の脾臓肥大化抑制剤は、特に、アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するためのものであり得る。
【0021】
本明細書において「N-アセチルノイラミン酸」は、シアル酸の1種であり、ノイラミン酸の5位のアミノ基がアセチル化された物質である。
【0022】
本明細書において「塩」は、薬学的に許容可能な塩であればよく、特に限定されないが、例えば金属塩、アンモニウム塩、及びアミン塩等を挙げることができる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、並びに亜鉛塩が挙げられる。
【0023】
本明細書において「エステル」は、薬学的に許容可能なエステルであればよく、特に限定されないが、例えばリン酸エステル、硫酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、コハク酸エステル、パルミチン酸エステル、安息香酸エステル等を挙げることができる。N-アセチルノイラミン酸のエステルは、例えば、N-アセチルノイラミン酸のカルボキシル基(-COOH)中の水素原子がメチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)等のアルキル基で置換されたものであり得る。N-アセチルノイラミン酸のエステルはまた、例えば、N-アセチルノイラミン酸の5つの水酸基のうち少なくとも1つの水酸基(-OH)中の水素原子がアセチル基(COCH3-)、スルホ基(-SO3H)又はリン酸基(-PO3H2)で置換されたものであり得る。
【0024】
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、例えば、
式(I):
【化1】
[式中、
R1は、水素原子及びC1~C5アルキル基からなる群から選択され、
R2~R6は、それぞれ独立して、水素原子、-COR7、スルホ基(-SO3H)、及びリン酸基(-PO3H2)からなる群から選択され、
R7は、C1~C5アルキル基である。]
で示される化合物又はその塩であり得る。
【0025】
上記式(I)において、波線は、-COOR1と-OR2とに結合した炭素原子がS配置又はR配置のいずれかであることを示す。また、Acはアセチル基(-COCH3)を示す。
【0026】
本明細書において、「C1~C5アルキル基」とは、炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル基を意味する。C1~C5アルキル基(C1、C2、C3、C4、又はC5アルキル基)としては、メチル基(-CH3)、エチル基(-C2H5)、プロピル基(-C3H7)、ブチル基(-C4H9)、及びペンチル基(-C5H11)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
一実施形態では、上記式(I)において、R1は、好ましくは水素原子、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)、より好ましくは水素原子である。また、一実施形態では、上記式(I)において、R2~R6は、好ましくは水素原子、アセチル基(-COCH3)、スルホ基(-SO3H)、又はリン酸基(-PO3H2)、より好ましくは水素原子である。
【0028】
一実施形態では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。一実施形態では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、単離又は精製されたN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルであってもよい。一実施形態では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、モノマーの形態であってもよい。一実施形態では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、ポリマー(例えばホモポリマー)の形態であってもよい。
【0029】
N-アセチルノイラミン酸は、例えば、燕窩等の天然物から抽出する方法により得ることができる。N-アセチルノイラミン酸はまた、N-アセチルグルコサミン及びピルビン酸を原料とした酵素合成法により製造することができる。或いは、N-アセチルノイラミン酸は、遺伝子組み換えされた大腸菌等の微生物を用いた方法により製造することもできる。これらのN-アセチルノイラミン酸の抽出方法又は製造方法では、N-アセチルノイラミン酸は主にN-アセチルノイラミン酸を含むポリマーとして得られるが、これを酸加水分解又は酵素分解することによりN-アセチルノイラミン酸のモノマーを含む混合物を得ることができる。さらに、この混合物から吸着樹脂、イオン交換樹脂、限外ろ過、又は浸透膜等を用いてN-アセチルノイラミン酸を精製することができ、精製されたN-アセチルノイラミン酸は噴霧乾燥又は凍結乾燥等により固形化することができる。
【0030】
N-アセチルノイラミン酸は市販されており、例えば、富士フイルム和光純薬、東京化成工業、Sigma Aldrich等から入手することができる。
【0031】
N-アセチルノイラミン酸の塩又はエステルは常法にしたがって製造することができる。例えば、N-アセチルノイラミン酸の塩であるN-アセチルノイラミン酸ナトリウム、並びにN-アセチルノイラミン酸のエステルであるN-アセチルノイラミン酸エチル及び5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-o-アセチル-ノイラミン酸エチルは、特表2012-531445等に記載の通りに製造することができる。
【0032】
後述の実施例に示すように、N-アセチルノイラミン酸は脾臓肥大化抑制作用、特にアレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制する作用を有する。N-アセチルノイラミン酸の類似化合物であるN-アセチルノイラミン酸の塩及びエステルもN-アセチルノイラミン酸と同様の作用を有する。したがって、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、脾臓肥大化抑制剤、特にアレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための脾臓肥大化抑制剤の有効成分として用いることができる。
【0033】
最近の研究では、食物アレルギーの発生時、脾臓において前駆細胞から肥満細胞への分化及び肥満細胞の著しい増殖が起こることが示唆されている(Shota Toyoshima et al., 2017, International Immunology, Vol. 29, No. 1, pp. 31-45)。したがって、理論に縛られないが、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、脾臓における肥満細胞の増殖を抑制することによって上述の脾臓肥大化抑制作用を示すと考えられる。
【0034】
本明細書において、「脾臓」は、リンパ球の産生、老化した赤血球の破壊と除去、白血球及び血小板等の血液成分の貯蔵、乳幼児期の血球産生といった機能を有する臓器である。脾臓は、抗原特異的T細胞応答及びB細胞による抗体産生が起こる組織の1つであり、脾臓での免疫応答はアレルギーの発症にも重要な役割を果たすことが知られている。
【0035】
本明細書において、「脾臓肥大化」は、脾臓重量又は脾臓体積の増大を意味する。脾臓肥大化は、アレルギー反応に伴う脾臓肥大化、例えばアレルギー反応による脾臓肥大化であってもよい。脾臓肥大化は、正常時(例えばアレルギー反応が生じていない時)の脾臓重量又は脾臓体積に対する脾臓重量又は脾臓体積の増大であり得る。
【0036】
本明細書において「アレルギー」とは、特定の抗原に対する免疫系の異常な反応に基づく全身的又は局所的な障害を意味する。本明細書において「アレルギー反応」とは、特定の抗原に対する免疫系の異常な反応を意味する。
【0037】
本明細書において、「アレルゲン」とは、アレルギーの原因となる抗原を意味する。アレルゲンは、例えば、経口、経粘膜、経気道、経皮、経静脈等の経路により体内に侵入するアレルゲンであり得る。アレルゲンはタンパク質であってもよい。アレルゲンは、例えば、ほこり、カビ、ダニ、花粉、食物、ハチ毒等に含まれるアレルゲンであり得るが、好ましくは、食物に含まれるアレルゲン(即ち、食物アレルゲン)であり得る。食物アレルゲンとしては、例えば、小麦、大豆、鶏卵、牛乳、甲殻類、果物、そば、魚類、ピーナッツ等の食物に含まれるタンパク質、例えば、プロラミン(例えば、グリアジン等)、グルテニン、卵白アルブミン(例えば、ニワトリ卵白アルブミン等)、オボムコイド、オボトランスフェリン、リゾチーム、カゼイン、βラクトグロブリン、トロポミオシン、PR-10(Pathogenesis-related protein-10)、プロフィリン、バルブアルブミン等が挙げられる。
【0038】
本明細書において、アレルギー反応は、例えば、食物アレルゲンに対するアレルギー反応(食物アレルギー反応)、例えば、鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。アレルギー反応は、例えば、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。
【0039】
後述の実施例に示すように、脾臓肥大化抑制効果は、例えば、脾臓重量を指標として判定することができる。例えば、被験物質(N-アセチルノイラミン酸若しくはその塩若しくはエステル、又は本発明の脾臓肥大化抑制剤)を添加した又は添加していない飼料の摂取下でマウスを約3週間飼育した後、アレルゲン(例えば卵白アルブミン)を含む又は含まない生理食塩水をマウスに腹腔内投与する。その後約2週間後にマウスを解剖して脾臓重量を測定する。(以下、被験物質を摂取せずアレルゲンを投与されなかったマウスを「被験物質非摂取アレルゲン非投与マウス」、被験物質を摂取せずアレルゲンを投与されたマウスを「被験物質非摂取アレルゲン投与マウス」、被験物質を摂取しアレルゲンを投与されなかったマウスを「被験物質摂取アレルゲン非投与マウス」、被験物質を摂取しアレルゲンを投与されたマウスを「被験物質摂取アレルゲン投与マウス」と称する場合もある。)Tukeyの多重比較による統計解析の結果、被験物質非摂取アレルゲン非投与マウスの脾臓重量に対し被験物質非摂取アレルゲン投与マウスの脾臓重量が有意に増加しているが、被験物質摂取アレルゲン非投与マウスの脾臓重量に対し被験物質摂取アレルゲン投与マウスの脾臓重量が有意に増加していない場合には、被験物質は脾臓肥大化抑制効果(特にアレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制する効果)を有すると判定できる。
【0040】
脾臓の肥大化は、胃を圧迫することによる食欲低下、膨満感、腹痛、背部痛等の症状をもたらし得る。したがって、本発明の脾臓肥大化抑制剤は、例えば、脾臓の肥大化によりもたらされる症状(胃を圧迫することによる食欲低下、膨満感、腹痛、背部痛等)の発症の予防又は軽減のために使用し得る。
【0041】
また、脾臓の肥大化が進行すると、脾臓への血液供給が不足し、十分な血液が供給されなくなった部分が損傷を受け、出血や壊死を起こすことがあるが、これは脾臓の機能低下、ひいては細菌又はウイルス感染に対する防御能力の低下をもたらし得る。したがって、本発明の脾臓肥大化抑制剤はまた、脾臓の肥大化によりもたらされる脾臓の機能低下の予防又は軽減のために使用し得る。
【0042】
本発明の脾臓肥大化抑制剤はまた、添加剤(例えば、担体(固体や液体担体など)、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味剤、着色剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤)等をさらに含んでもよい。添加剤としては、例えば、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール、デキストリン、食物繊維、タルク、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、砂糖、アスコルビン酸、クエン酸、ポリエチレングリコール、グリセリン、動物及び植物油脂等が挙げられる。本発明の脾臓肥大化抑制剤は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルに加え、他の薬理活性を有する薬理成分を含んでもよい。本発明の脾臓肥大化抑制剤は、組成物であってもよい。
【0043】
本発明の脾臓肥大化抑制剤は、燕窩を含んでもよいが、含まなくてもよい。
【0044】
本発明の脾臓肥大化抑制剤は、任意の投与経路で投与すればよいが、例えば、経口的に投与することができる。好ましい実施形態では、本発明の脾臓肥大化抑制剤は、経口投与用であり得る。
【0045】
本発明の脾臓肥大化抑制剤の投与の対象(被験体)としては、ヒト、家畜(ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等)、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ等)、実験動物(マウス、ラット、サル等)等を含む任意の哺乳動物を挙げることができるが、好ましくはヒトである。本発明において、対象は、幼体であってもよく、成体であってもよい。対象はまた、オスであってもよく、メスであってもよい。対象は、食物アレルギーを発症するリスクが高い対象であってもよい。食物アレルギーを発症するリスクが高い対象としては、例えば、食物アレルギーの遺伝的又は環境的素因を有する対象、アレルギーの既往歴を有する対象等が挙げられる。
【0046】
本発明の脾臓肥大化抑制剤は、その投与経路や対象の年齢、体重、症状等の種々の要因を考慮して、その投与量または摂取量を適宜設定することができる。
【0047】
本発明の脾臓肥大化抑制剤は、有効量のN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含み得る。本発明の脾臓肥大化抑制剤は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、又は70重量%以上、99.99重量%以下、99重量%以下、又は90重量%以下含み得る。本発明の脾臓肥大化抑制剤は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを20重量%~99.99重量%、30重量%~99.99重量%、40重量%~99.99重量%、50重量%~99.99重量%、60重量%~99.99重量%、70重量%~99.99重量%、20重量%~99重量%、30重量%~99重量%、40重量%~99重量%、50重量%~99重量%、60重量%~99重量%、70重量%~99重量%、20重量%~90重量%、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、50重量%~90重量%、60重量%~90重量%、又は70重量%~90重量%含み得る。
【0048】
本発明の脾臓肥大化抑制剤は、単回投与してもよく、数時間~数か月の間隔で複数回投与してもよい。
【0049】
(2) 食物アレルギー反応抑制剤
上述の通り、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、アレルギー反応に伴う脾臓における肥満細胞の増殖を抑制することができると考えられる。また、後述の実施例に示すように、N-アセチルノイラミン酸は、アレルゲン特異的IgEの産生を抑制することもでき、その類似物質であるN-アセチルノイラミン酸の塩又はエステルも同様の作用を有する。
【0050】
このようなN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルの作用(脾臓における肥満細胞の増殖の抑制や、アレルゲン特異的IgEの産生の抑制)は、肥満細胞が関与するIgE依存性のI型アレルギー反応である食物アレルギー反応の抑制をもたらすため、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは食物アレルギー反応抑制剤の有効成分としても使用し得る。したがって、本発明は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む、食物アレルギー反応抑制剤(以下、「本発明の食物アレルギー反応抑制剤」とも称する。)をも提供する。
【0051】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤において、「N-アセチルノイラミン酸」「塩」、「エステル」、「食物アレルギー反応」との用語の意味は、「(1) 脾臓肥大化抑制剤」に記載した通りである。本発明の食物アレルギー反応抑制剤において、食物アレルギー反応は、特に限定されないが、例えば、鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。食物アレルギー反応はまた、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。本発明の食物アレルギー反応抑制剤において、食物アレルギー反応は、特にI型アレルギー反応、即ち即時型食物アレルギー反応である。
【0052】
本明細書において、「I型アレルギー」とは、GellとCoombsの分類法によりI型に分類されるアレルギーを意味する。I型アレルギーは、IgE依存性のアレルギーであり、アレルゲンが体内に侵入してから比較的短時間(1時間未満)に症状が現れるため、即時型アレルギーとも称される。I型アレルギーの症状は、皮膚、呼吸器、粘膜、消化器、又は神経等に現れ得る。I型アレルギーの症状は、典型的には以下の通りである。
皮膚症状:かゆみ、じんましん、むくみ、発赤、湿疹等
呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさ、喘鳴等
粘膜症状:目の充血又は腫れ、涙、かゆみ、口の中、唇、又は舌の違和感又は腫れ等
消化器症状:下痢、吐き気・嘔吐、血便等
神経症状:頭痛、元気がなくなる、意識もうろうとなる等
【0053】
I型アレルギー反応は、感作が成立する感作相の反応と、症状が惹起される惹起相の反応からなる。感作相の反応は、アレルゲンの体内への侵入からアレルゲンへの感作の成立までの一連の反応、具体的には、樹状細胞によるアレルゲンの取り込みと取り込んだアレルゲンのT細胞への提示、活性化したT細胞とB細胞の相互作用、B細胞の形質細胞への分化、アレルゲン特異的IgEの産生、アレルゲン特異的IgEの肥満細胞表面上のIgE受容体への結合(即ち、アレルゲンへの感作の成立)等を包含する。惹起相の反応は、感作が成立したアレルゲンの体内への侵入から症状の惹起までの一連の反応、具体的には、肥満細胞上のアレルゲン特異的IgEへのアレルゲンの結合、肥満細胞からのヒスタミンやロイコトリエン等の炎症性メディエーターの放出、アレルギー症状の発症等を包含する。
【0054】
アレルゲン特異的IgEの産生を抑制する本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、特に、食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するために使用し得る。本発明の食物アレルギー反応抑制剤において、「アレルゲン」との用語の意味は、「(1) 脾臓肥大化抑制剤」に記載した通りである。本明細書において、「食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作」とは、アレルゲン特異的IgEが産生され、肥満細胞表面上のIgE受容体に結合している状態を意味する。
【0055】
本明細書において、「食物アレルギー反応抑制」は、食物アレルギー反応を抑制することを意味し、食物アレルギー反応の感作相及び/又は惹起相の反応を抑制することを包含する。
【0056】
後述の実施例に示すように、食物アレルギー反応抑制効果は、例えば、血漿IgE濃度を指標として判定することができる。例えば、被験物質(N-アセチルノイラミン酸若しくはその塩若しくはエステル、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤)を添加した又は添加していない飼料の摂取下でマウスを約3週間飼育した後、アレルゲン(例えば卵白アルブミン)を含む又は含まない生理食塩水をマウスに腹腔内投与する。約2週間後にマウスを解剖して血漿アレルゲン特異的IgE濃度を測定する。t検定による統計解析の結果、被験物質非摂取アレルゲン非投与マウスの血漿アレルゲン特異的IgE濃度に対し被験物質非摂取アレルゲン投与マウスの血漿アレルゲン特異的IgE濃度が有意に増加しているが、被験物質摂取アレルゲン非投与マウスの血漿アレルゲン特異的IgE濃度に対し被験物質摂取アレルゲン投与マウスの血漿アレルゲン特異的IgE濃度が有意に増加していない場合には、被験物質は食物アレルギー反応抑制効果を有すると判定できる。
【0057】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、例えば、脾臓における肥満細胞の増殖、及び/又はアレルゲン特異的IgEの産生を抑制することによって、食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するためのものであり得る。
【0058】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルに加え、他の薬理活性を有する薬理成分を含んでもよい。本発明の食物アレルギー反応抑制剤はまた、添加剤(例えば、担体(固体や液体担体など)、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味剤、着色剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤)等をさらに含んでもよい。添加剤としては、例えば、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール、デキストリン、食物繊維、タルク、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、砂糖、アスコルビン酸、クエン酸、ポリエチレングリコール、グリセリン、動物及び植物油脂等が挙げられる。本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、組成物であり得る。
【0059】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、燕窩を含んでもよいが、含まなくてもよい。
【0060】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤の投与の経路、投与の対象、投与量又は摂取量は、本発明の脾臓肥大化抑制剤と同様である。本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、例えば、経口投与用であり得る。
【0061】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、単離又は精製されたN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルであり得る。本発明の食物アレルギー反応抑制剤において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルはまた、モノマーの形態であり得る。
【0062】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、有効量のN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含み得る。本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、又は70重量%以上、99.99重量%以下、99重量%以下、又は90重量%以下含み得る。本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを20重量%~99.99重量%、30重量%~99.99重量%、40重量%~99.99重量%、50重量%~99.99重量%、60重量%~99.99重量%、70重量%~99.99重量%、20重量%~99重量%、30重量%~99重量%、40重量%~99重量%、50重量%~99重量%、60重量%~99重量%、70重量%~99重量%、20重量%~90重量%、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、50重量%~90重量%、60重量%~90重量%、又は70重量%~90重量%含み得る。
【0063】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、単回投与してもよく、数時間~数か月の間隔で複数回投与してもよい。
【0064】
本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、食物アレルギー反応の初期段階であるアレルゲンへの感作を抑制することができることから、食物アレルギーを発症するリスクを低減するため、又は食物アレルギーの発症を予防するために使用することができる。例えば、本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、食物アレルギーを有していない対象において、食物アレルギーを発症するリスクを低減するために、又は食物アレルギーの発症を予防するために使用することができる。本発明の食物アレルギー反応抑制剤はまた、あるアレルゲンに対する食物アレルギーを有している対象において、別のアレルゲンに対する食物アレルギーを発症するリスクを低減するために、又は別のアレルゲンに対する食物アレルギーの発症を予防するために使用することもできる。
【0065】
一実施形態では、本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、食物アレルギー反応を抑制し、かつ脾臓肥大化を抑制するためのものであり得る。一実施形態では、本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制し、かつアレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するためのものであり得る。
【0066】
(3) 飲食品
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、飲食品に添加することができる。したがって、本発明は、脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含む飲食品(以下、「本発明の飲食品」とも称する。)をも提供する。
【0067】
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含む本発明の飲食品は、上述の本発明の脾臓肥大化抑制剤又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤と同じ用途に使用することができる。本発明の飲食品は、例えば、アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するためのものであり得る。本発明の飲食品において、アレルギー反応は、食物アレルギー反応、例えば鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。アレルギー反応はまた、例えば、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。
【0068】
本発明の飲食品において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、単離又は精製されたN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルであり得る。本発明の飲食品において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルはまた、モノマーの形態であり得る。
【0069】
本発明の飲食品は、有効量のN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含み得る。本発明の飲食品は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下含み得る。本発明の飲食品は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%~90重量%、0.1重量%~90重量%、1重量%~90重量%、10重量%~90重量%、20重量%~90重量%、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、50重量%~90重量%、0.01重量%~80重量%、0.1重量%~80重量%、1重量%~80重量%、10重量%~80重量%、20重量%~80重量%、30重量%~80重量%、40重量%~80重量%、50重量%~80重量%、0.01重量%~70重量%、0.1重量%~70重量%、1重量%~70重量%、10重量%~70重量%、20重量%~70重量%、30重量%~70重量%、40重量%~70重量%、50重量%~70重量%、0.01重量%~60重量%、0.1重量%~60重量%、1重量%~60重量%、10重量%~60重量%、20重量%~60重量%、30重量%~60重量%、40重量%~60重量%、又は50重量%~60重量%含み得る。
【0070】
本発明の飲食品は、飲食品の製造で許容される添加剤(食品添加物;例えば、担体(固体や液体担体など)、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味剤、着色剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤)等をさらに含んでもよい。
【0071】
本発明の飲食品は、加工食品、惣菜、菓子、調味料、飲料等、例えば、ゼリー、プリン、グミ、ガム、飴、果汁飲料、発酵乳、お茶、炭酸飲料の任意の形態であってもよい。本発明の飲食品は、好ましくは、機能性食品であってもよい。
【0072】
本発明において「機能性食品」とは、生体に所定の機能性を付与できる食品をいい、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)、機能性表示食品、栄養機能食品を含む保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル、液剤等の各種の剤形のもの)、美容食品(例えば、ダイエット食品)等の、健康食品の全般を包含している。また、本発明において「機能性食品」は、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含している。
【0073】
本発明の飲食品は、固体、液体、混合物、懸濁液、ペースト、ゲル、粉末、顆粒、カプセル等の任意の形態に調製されたものであってよい。また、本発明の飲食品は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含ませればよい。具体的には、本発明の飲食品は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤をカプセルに封入してもよいし、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を可食フィルムや食用コーティング剤などで包み込んでもよいし、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤に適切な賦形剤等を配合(添加)した後に、錠剤等の任意の形態に成形してもよい。本発明の飲食品は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤と他の食品原料とを含む組成物を加工することにより製造してもよい。そして、本発明の飲食品は、例えば、各種の食品(飲料、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、加工食品、その他の市販食品等)にN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を配合(添加)することによって製造することもできる。
【0074】
本発明の飲食品は、その投与の対象(被験体)を上述した本発明の脾臓肥大化抑制剤又は食物アレルギー反応抑制剤の投与の対象(被験体)と同様に設定することができるが、本発明の飲食品の投与の対象は、特にヒトである。
【0075】
(4) 飼料
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、飼料に添加することができる。したがって、本発明は、脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含む飼料(以下、「本発明の飼料」とも称する。)をも提供する。
【0076】
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含む本発明の飼料は、上述の本発明の脾臓肥大化抑制剤又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤と同じ用途に使用することができる。本発明の飼料は、例えば、アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するためのものであり得る。本発明の飼料において、アレルギー反応は、食物アレルギー反応、例えば鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。アレルギー反応はまた、例えば、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。
【0077】
本発明の飼料において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、単離又は精製されたN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルであり得る。本発明の飼料において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルはまた、モノマーの形態であり得る。
【0078】
本発明の飼料は、有効量のN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含み得る。本発明の飼料は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下含み得る。本発明の飼料は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%~90重量%、0.1重量%~90重量%、1重量%~90重量%、10重量%~90重量%、20重量%~90重量%、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、50重量%~90重量%、0.01重量%~80重量%、0.1重量%~80重量%、1重量%~80重量%、10重量%~80重量%、20重量%~80重量%、30重量%~80重量%、40重量%~80重量%、50重量%~80重量%、0.01重量%~70重量%、0.1重量%~70重量%、1重量%~70重量%、10重量%~70重量%、20重量%~70重量%、30重量%~70重量%、40重量%~70重量%、50重量%~70重量%、0.01重量%~60重量%、0.1重量%~60重量%、1重量%~60重量%、10重量%~60重量%、20重量%~60重量%、30重量%~60重量%、40重量%~60重量%、又は50重量%~60重量%含み得る。
【0079】
本発明の飼料は、飼料の製造で許容される添加剤(飼料添加物;例えば、担体(固体や液体担体など)、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味剤、着色剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤)等をさらに含んでもよい。
【0080】
本発明の飼料は、固体、液体、混合物、懸濁液、ペースト、ゲル、粉末、顆粒、カプセル等の任意の形態に調製されたものであってよい。また、本発明の飼料は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含ませればよい。本発明の飼料は、例えば、上述の本発明の飲食品の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0081】
本発明の飼料の投与の対象(被験体)としては、家畜(ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等)、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ等)、実験動物(マウス、ラット、サル等)等を含む任意の非ヒト哺乳動物を挙げることができる。本発明において、対象は、幼体であってもよく、成体であってもよい。対象はまた、オスであってもよく、メスであってもよい。対象は、食物アレルギーを発症するリスクが高い対象であってもよい。食物アレルギーを発症するリスクが高い対象としては、例えば、食物アレルギーの遺伝的又は環境的素因を有する対象、アレルギーの既往歴を有する対象等が挙げられる。
【0082】
(5) 医薬品
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤は、医薬品に添加することができる。したがって、本発明は、脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応を抑制するための、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含む医薬品(以下、「本発明の医薬品」とも称する。)をも提供する。
【0083】
N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤を含む本発明の医薬品は、上述の本発明の脾臓肥大化抑制剤又は本発明の食物アレルギー反応抑制剤と同じ用途に使用することができる。本発明の医薬品は、例えば、アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するための、及び/又は食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するためのものであり得る。本発明の医薬品において、アレルギー反応は、食物アレルギー反応、例えば鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。アレルギー反応はまた、例えば、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。
【0084】
本発明の医薬品において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルは、単離又は精製されたN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルであり得る。本発明の医薬品において、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルはまた、モノマーの形態であり得る。
【0085】
本発明の医薬品は、有効量のN-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含み得る。本発明の医薬品は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下含み得る。本発明の医薬品は、例えば、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを0.01重量%~90重量%、0.1重量%~90重量%、1重量%~90重量%、10重量%~90重量%、20重量%~90重量%、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、50重量%~90重量%、0.01重量%~80重量%、0.1重量%~80重量%、1重量%~80重量%、10重量%~80重量%、20重量%~80重量%、30重量%~80重量%、40重量%~80重量%、50重量%~80重量%、0.01重量%~70重量%、0.1重量%~70重量%、1重量%~70重量%、10重量%~70重量%、20重量%~70重量%、30重量%~70重量%、40重量%~70重量%、50重量%~70重量%、0.01重量%~60重量%、0.1重量%~60重量%、1重量%~60重量%、10重量%~60重量%、20重量%~60重量%、30重量%~60重量%、40重量%~60重量%、又は50重量%~60重量%含み得る。
【0086】
本発明の医薬品は、製薬上で許容される添加剤(医薬品添加物;例えば、担体(固体や液体担体など)、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味剤、着色剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤)等をさらに含んでもよい。このとき、添加剤等は、製剤の剤形に応じて適宜選択することができる。
【0087】
本発明の医薬品は、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液体製剤、ジェル剤、エアロゾル剤等の任意の剤形に製剤化されたものであってよい。なお、医薬品を液体製剤として用いる場合には、それを使用する直前に、例えば、生理食塩水で再構成することを意図した乾燥物として製剤化することもできる。また、本発明の医薬品は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルの配合量を適宜設定することができ、剤形、添加剤、対象の疾患の重症度等によって、その配合量を変更することができる。本発明の医薬品の好ましい投与経路としては、以下に限定されないが、経口投与が挙げられる。本発明の医薬品は、例えば、経口投与用であり得る。
【0088】
本発明の医薬品は、その投与の対象(被験体)を上述した本発明の脾臓肥大化抑制剤又は食物アレルギー反応抑制剤の投与の対象(被験体)と同様に設定することができる。
【0089】
(6) 脾臓肥大化抑制方法
本発明はまた、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品を対象に投与することを含む、対象において脾臓肥大化を抑制するための方法(以下、「本発明の脾臓肥大化抑制方法」とも称する。)を提供する。本発明の脾臓肥大化抑制方法は、例えば、アレルギー反応に伴う脾臓肥大化を抑制するためのものであり得る。
【0090】
本発明の脾臓肥大化抑制方法において、アレルギー反応は、食物アレルギー反応、例えば鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。アレルギー反応はまた、例えば、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。
【0091】
本発明の脾臓肥大化抑制方法では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品の投与の経路、投与の対象、投与量は、本発明の脾臓肥大化抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品に関して述べた通りである。本発明の脾臓肥大化抑制方法では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品は、例えば、経口投与される。
【0092】
本発明の脾臓肥大化抑制方法では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の脾臓肥大化抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品は、単回投与してもよく、数時間~数か月の間隔で複数回投与してもよい。
【0093】
(7) 食物アレルギー反応抑制方法
本発明はまた、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の食物アレルギー反応抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品を対象に投与することを含む、対象において食物アレルギー反応を抑制するための方法(以下、「本発明の食物アレルギー反応抑制方法」とも称する。)を提供する。本発明の食物アレルギー反応抑制方法は、例えば、食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するためのものであり得る。本発明のアレルギー反応抑制剤において、食物アレルギー反応は、例えば鶏卵に対する食物アレルギー反応であってもよい。食物アレルギー反応はまた、例えば、ニワトリ卵白アルブミン等の卵白アルブミンに対する食物アレルギー反応であってもよい。本発明の食物アレルギー反応抑制方法は、アレルゲン特異的IgEの産生を抑制することによって、食物アレルギー反応におけるアレルゲンへの感作を抑制するためのものであってもよい。
【0094】
本発明の食物アレルギー反応抑制方法では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の食物アレルギー反応抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品の投与の経路、投与の対象、投与量は、本発明の食物アレルギー反応抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品に関して述べた通りである。本発明の食物アレルギー反応抑制方法では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の食物アレルギー反応抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品は、例えば、経口投与される。
【0095】
本発明の食物アレルギー反応抑制方法では、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステル、本発明の食物アレルギー反応抑制剤、飲食品、飼料、又は医薬品は、単回投与してもよく、数時間~数か月の間隔で複数回投与してもよい。
【実施例
【0096】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
<N-アセチルノイラミン酸による脾臓肥大化抑制効果及びアレルギー反応抑制効果>
卵白アレルギーモデルマウスを用いて、N-アセチルノイラミン酸による脾臓肥大化抑制効果及びアレルギー反応抑制効果を調べた。
【0098】
具体的には、6週齢の雄性Balb/cマウス(日本チャールス・リバー株式会社)を1週間予備飼育した後、0.1重量%のN-アセチルノイラミン酸を含む飼料を与える群とN-アセチルノイラミン酸を含まない飼料を与える群に分け、3週間飼育した(n=12)。飼料としては、市販の固形飼料(CRF-1;オリエンタル酵母工業株式会社)を用いた。N-アセチルノイラミン酸としては、富士フイルム和光純薬から入手したN-アセチルノイラミン酸(含量99.4%)を用いた。飼料は自由摂取により与えた。3週間の飼育期間中、週1回24時間分の糞を採取し、糞中のIgA濃度を測定した。
【0099】
3週間の飼育期間後、各群をさらに鶏卵由来卵白アルブミン(OVA)(アレルゲン)を投与する群と生理食塩水を投与する群の2群に分け、前者にはOVA 20μgを添加した生理食塩水 200μLを、後者にはOVAを添加していない生理食塩水 200μLを腹腔内投与した(n=6)。2週間後、マウスの体重を測定した後、マウスを解剖し、各臓器(肝臓、脾臓、腎臓、及び白色脂肪組織)の重量と血漿中の総IgE濃度及びOVA特異的IgE濃度を測定した。また、解剖直前の糞中のIgA濃度を測定した。
【0100】
体重及び各臓器の重量の測定結果を以下の表1及び図1に示す。
【0101】
Tukeyの多重比較の結果、N-アセチルノイラミン酸(NANA)を与えなかったマウスでは、OVA投与により脾臓重量が有意に増加した。それに対し、N-アセチルノイラミン酸を与えたマウスでは、このようなOVA投与による脾臓重量の有意な増加が見られなかった。これらの結果及び後述の図2及び3から、N-アセチルノイラミン酸の摂取は、アレルギー反応に伴う脾臓の肥大化を抑制することが示された。
【0102】
最近の研究では、食物アレルギーの発生時、脾臓において前駆細胞から肥満細胞への分化及び肥満細胞の著しい増殖が起こることが示唆されている(Shota Toyoshima et al., 2017, International Immunology, Vol. 29, No. 1, pp. 31-45)。そのため、上記の脾臓の肥大化は、肥満細胞の増殖によるものであり、N-アセチルノイラミン酸はこのような肥満細胞の増殖を抑制したと考えられる。
【0103】
【表1】
【0104】
血漿中の総IgE濃度の測定結果を図2に示す。血漿総IgE濃度は、N-アセチルノイラミン酸を与えなかったマウスにおいてOVA投与により増大したが、N-アセチルノイラミン酸を与えたマウスではその増加が抑制されていた(図2)。
【0105】
血漿中のOVA特異的IgE濃度の測定結果を図3に示す。t検定の結果、血漿OVA特異的IgE濃度は、N-アセチルノイラミン酸を与えなかったマウスではOVA投与により有意に増大したが、N-アセチルノイラミン酸を与えたマウスではこのようなOVA投与による有意な増加は見られなかった(図3)。また、N-アセチルノイラミン酸を与えたマウスにOVAを投与した場合の血漿OVA特異的IgE濃度は、N-アセチルノイラミン酸を与えなかったマウスにOVAを投与した場合の血漿OVA特異的IgE濃度に比べ、低下傾向を示した。これらの結果は、N-アセチルノイラミン酸の摂取によって、食物アレルギー反応の初期段階であるアレルゲンへの感作が抑制され、食物アレルギーを発症するリスクが低減されることを示している。
【0106】
なお、摂餌量及び運動量については、上記の4つの群の間に相違は見られなかった。
【0107】
また、OVA投与前の糞中のIgA濃度には各群間で有意な差が見られなかった。解剖直前の糞中のIgA濃度についても、各群間で大きな相違は見られなかった。
【要約】
【課題】効果的な脾臓肥大化抑制剤又は食物アレルギー反応抑制剤の提供。
【解決手段】本発明は、N-アセチルノイラミン酸又はその塩若しくはエステルを含む、脾臓肥大化抑制剤、又は食物アレルギー反応抑制剤に関する。
【選択図】図1
図1
図2
図3