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  • 特許-運搬車両の誘導方法及び誘導装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】運搬車両の誘導方法及び誘導装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241003BHJP
   G05D 1/242 20240101ALI20241003BHJP
   G05D 1/248 20240101ALI20241003BHJP
【FI】
G05D1/43
G05D1/242
G05D1/248
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024075168
(22)【出願日】2024-05-07
【審査請求日】2024-05-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日:令和6年3月27日、ウェブサイトのアドレス:https://gekkou.ai/slam-space/
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521069308
【氏名又は名称】テクトレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】肖 書芳
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-083777(JP,A)
【文献】特開2022-054331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G05D 1/242
G05D 1/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外においてはGNSSデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御するとともに、屋内においてはLIDARデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御する方法であり
前記屋内と前記屋外との境界に相当するポイントであって前記GNSSデータ信号を受信可能なポイントにおいて前記運搬車両の走行の制御の切り替えが行われ、
前記ポイントは、前記LIDARデータ信号が用いられて生成される前記運搬車両の周辺の形状データにおける平面座標の値と前記GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標との両方が対応づけられている地点として設定されて、前記境界に相当する同一の地点を表す、前記LIDARデータ信号が用いられて生成される前記運搬車両の周辺の形状データにおける平面座標の値と前記GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標との両方を有し、
前記ポイントを介して、前記屋内の空間のエリアマップとしての、前記LIDARデータ信号が用いられて生成される前記運搬車両の周辺の形状データと、前記屋外の空間のマップとしての、前記GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標の情報を有する地図と、がひとつながりのマップとして繋げられて合成される、
ことを特徴とする運搬車両の誘導方法。
【請求項2】
前記屋外においてRTK-GNSS、PPP-RTK、及びCLASの補強情報を用いたPPP-RTKのうちのいずれかを用いて前記運搬車両の走行を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運搬車両の誘導方法。
【請求項3】
屋外においてGNSSデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御する第1走行制御部と、屋内においてLIDARデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御する第2走行制御部と、を有
前記屋内と前記屋外との境界に相当するポイントであって前記GNSSデータ信号を受信可能なポイントにおいて前記第2走行制御部による制御と前記第1走行制御部による制御との切り替えが行われ、
前記ポイントは、前記LIDARデータ信号が用いられて生成される前記運搬車両の周辺の形状データにおける平面座標の値と前記GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標との両方が対応づけられている地点として設定されて、前記境界に相当する同一の地点を表す、前記LIDARデータ信号が用いられて生成される前記運搬車両の周辺の形状データにおける平面座標の値と前記GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標との両方を有し、
前記ポイントを介して、前記屋内の空間のエリアマップとしての、前記LIDARデータ信号が用いられて生成される前記運搬車両の周辺の形状データと、前記屋外の空間のマップとしての、前記GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標の情報を有する地図と、がひとつながりのマップとして繋げられて合成される、
ことを特徴とする運搬車両の誘導装置。
【請求項4】
前記屋外においてRTK-GNSS、PPP-RTK、及びCLASの補強情報を用いたPPP-RTKのうちのいずれかを用いて前記運搬車両の走行を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の運搬車両の誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両の誘導方法及び誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無人車両の誘導走行を制御する従来の技術として、GPS衛星から送信される信号を無人車両で受信し、受信した信号に基づいて自己の車両の位置を計測し、この計測車両位置と目標走行コース上の逐次の通過点の目標位置との位置ずれが制御誤差の許容範囲内に入るように制御して、無人車両を誘導走行させる無人車両の誘導走行制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-210378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフトなどを利用して荷物を運搬する場合には、例えば、屋内に保管されている荷物を引き取り、屋外に駐車している運送車両(例えば、トラック)の近傍まで走行し、運送車両の荷台へと荷物を積み込むことが想定される。すなわち、フォークリフトなどを利用して荷物を運搬する場合には、フォークリフトが屋内と屋外とを行き来することが想定される。
【0005】
しかしながら、上記の従来の技術のようにGPS衛星から送信される信号を利用する場合には、GPS衛星から送出される電波が建屋の天井や壁に遮断されてしまうため、屋内ではGPSの衛星測位によって位置情報を把握することができない、という問題がある。
【0006】
そこで本発明は、1つの側面では、屋内と屋外とを行き来する自走式の荷役運搬車両の誘導走行の制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る運搬車両の誘導方法は、屋外においてはGNSSデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御するとともに、屋内においてはLIDARデータ信号を用いて走行を制御する、ようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る運搬車両の誘導方法は、前記屋外と前記屋内との境界において前記GNSSデータ信号を用いる走行制御と前記LIDARデータ信号を用いる走行制御とを切り替える、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る運搬車両の誘導方法は、前記屋外においてRTK-GNSS、PPP-RTK、及びCLASの補強情報を用いたPPP-RTKのうちのいずれかを用いて前記運搬車両の走行を制御する、ようにしてもよい。
【0010】
また、本発明に係る運搬車両の誘導装置は、屋外においてGNSSデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御する手段と、屋内においてLIDARデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御する手段と、を有する、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る運搬車両の誘導装置は、前記屋外と前記屋内との境界において前記GNSSデータ信号を用いる走行制御と前記LIDARデータ信号を用いる走行制御とが切り替えられる、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る運搬車両の誘導装置は、前記屋外においてRTK-GNSS、PPP-RTK、及びCLASの補強情報を用いたPPP-RTKのうちのいずれかを用いて前記運搬車両の走行を制御する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1つの側面では、屋内と屋外とを行き来する自走式の荷役運搬車両の誘導走行の制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る運搬車両の誘導装置の全体構成の概略図である。
図2図1の運搬車両の誘導装置が搭載されている運搬車両が移動する範囲を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。下記の実施の形態では、本発明に係る運搬車両の誘導装置が運搬車両9に搭載され、運搬車両9の誘導走行の制御に本発明に係る運搬車両の誘導方法が適用される場合を例に挙げて説明する。
【0016】
運搬車両9は、屋内と屋外とを行き来する車両であり、荷物、貨物を運搬、搬送、運送する車両であってよく、例えば、走行機構を備えるとともにフォークなどを上下させるマストを備えた自走式荷役運搬車両であり、具体的にはフォークリフトであってよい。
【0017】
運搬車両9は、自動走行(別言すると、自律走行、自動運転)が可能であるように構成され、したがって無人であってよいものの、作業者が搭乗してもよい。
【0018】
下記の実施の形態では、運搬車両9が、倉庫100の中(即ち、屋内)に保管されている荷物300を引き取り、引き取った荷物300を倉庫100の外(即ち、屋外)に駐車して待機している運送車両200(例えば、トラック)まで運搬して積み込む場合を例に挙げて説明する(図2参照)。運搬車両9は、すなわち、屋内である倉庫100の中と屋外の運送車両200との間を行き来する。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明に係る運搬車両の誘導装置の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る運搬車両の誘導装置1の全体構成の概略図である。
【0020】
実施の形態にかかる運搬車両の誘導装置1は、電波受信部2と、周囲検知部3と、荷役検知部4と、自動制御部5と、を有する。
【0021】
電波受信部2は、GNSS(Global Navigation Satellite System;衛星測位システム)受信機であり、GNSS衛星から送出される電波を受信する。
【0022】
電波受信部2は、運搬車両9のうち、GNSS衛星から送出される電波を受信し易い箇所、具体的には、上方に障害物が無く上方空間が開けている箇所に設置される。
【0023】
GNSS衛星から送出される電波を受信した電波受信部2から出力されるデータ信号(「GNSSデータ信号」と称する)が用いられて、運搬車両の誘導装置1の位置、延いては、運搬車両の誘導装置1が搭載されている運搬車両9の位置が計算される。運搬車両の誘導装置1(延いては、運搬車両9)の位置は、緯度及び経度の組合せを少なくとも含む位置座標として計算される。
【0024】
電波受信部2は、相互に異なる位置に配置される複数のGNSS受信機から構成されるようにしてよい。この場合、運搬車両9に対する複数のGNSS受信機どうしの位置関係と、これら複数のGNSS受信機各々から出力されるデータ信号(即ち、GNSSデータ信号)に基づくこれら複数のGNSS受信機それぞれの位置座標とに基づいて、運搬車両9の向きが特定されうる。
【0025】
周囲検知部3は、運搬車両9の周囲に存在する物体を検知するための機序である。周囲検知部3は、3次元LIDAR(LIDAR:Laser Imaging Detection And Ranging;レーザー画像検出と測距)として構成される。
【0026】
周囲検知部3は、周囲にレーザーを照射し、レーザーが到達した物体の表面で反射した光を受光することにより、任意の一点(例えば、3次元LIDARセンサ)から物体の表面上の各点までの距離、及び、任意の一点(例えば、3次元LIDARセンサ)を基点とした物体の表面上の各点の方向などを計算する。レーザーが到達した地点(箇所)は、物体の表面の一部を表す点である。
【0027】
周囲検知部3は、運搬車両9のうち、周囲に対してレーザーを照射し易い(また、反射光を受光し易い)箇所、具体的には、3次元LIDARセンサと運搬車両9の特に前方及び側方との間に障害物が無く、運搬車両9の特に前方空間及び側方空間が開けている箇所に設置される。
【0028】
周囲検知部3は、物体の表面上の各点について、任意の一点(例えば、3次元LIDARセンサ)を原点とする3次元直交座標系における点の座標を計算する。周囲検知部3により、すなわち、3次元直交座標系における座標を各々が有する複数の点の集合である3次元点群データが取得される。
【0029】
周囲検知部3は、3次元点群データを自動制御部5へと出力する。
【0030】
荷役検知部4は、荷物の引取り及び載置(別言すると、積込み)に関係する、周囲に存在する物(「荷役関係物」と称する)の位置を検知する。荷役検知部4は、荷役関係物として、例えば、荷物が積載されているパレットを検知したりパレットを載置する(別言すると、積み込む)トラックの荷台を検知したりする。
【0031】
荷役検知部4は、荷役関係物の存在(具体的には、位置)が検知可能であれば特定の機器、機序には限定されないものの、例えば、カメラ又はレーザセンサなどであってよい。
【0032】
荷役検知部4は、例えば、運搬車両9がフォークリフトである場合、フォークリフトのうち、少なくともフォークの周りの荷役関係物を捕捉し検知しうる箇所に設置される。荷役検知部4は、例えば、バックレストやフォークに対して設置されてよい。
【0033】
(機能構成)
自動制御部5は、運搬車両9の荷役動作及び走行に関する制御を行う。自動制御部5は、具体的には、運搬車両9の、倉庫100の中(即ち、屋内)に保管されている荷物を引き取る動作、引き取った荷物を倉庫100の外(即ち、屋外)に駐車して待機している運送車両200(例えば、トラック)まで運搬する走行、及び、運搬した荷物を運送車両200の荷台201へと積み込む動作に関する制御を行う。
【0034】
自動制御部5は、また、運搬車両9の、倉庫100の外(即ち、屋外)に駐車して待機している運送車両200(例えば、トラック)の荷台201に積み込まれている荷物を引き取る動作、引き取った荷物を倉庫100の中(即ち、屋内)へと運搬する走行、及び、運搬した荷物を倉庫100の中の所定の場所に載置する動作に関する制御を行う。
【0035】
自動制御部5は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって構成される制御部6、作業領域(メモリ)を提供するRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリによって構成される揮発性記憶部51、及び、記憶領域(ストレージ)を提供するROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリによって構成される不揮発性記憶部52を含む。必要に応じて、SSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を備えるようにしてもよい。
【0036】
自動制御部5は、例えば、プロセッサ、揮発性メモリ、及び不揮発性メモリを含むコンピュータによって構成されてよい。
【0037】
不揮発性記憶部52(又は、必要に応じて備えられる補助記憶装置)に、プロセッサによって構成される制御部6によって読み出されて実行されるコンピュータプログラムである運搬車両の誘導プログラム53が記憶され格納される。プロセッサによって構成される制御部6において運搬車両の誘導プログラム53が実行されることにより、コンピュータが機能して自動制御部5による運搬車両9の荷役動作及び走行の制御が実現される。
【0038】
自動制御部5は、例えば、荷物の引取りに関する一連の作業を実行するように運搬車両9の自動的な(別言すると、自律的な)荷役動作及び走行を制御し、また、荷物の載置(別言すると、積込み)に関する一連の作業を実行するように運搬車両9の自動的な(別言すると、自律的な)荷役動作及び走行を制御する。
【0039】
不揮発性記憶部52(又は、必要に応じて備えられる補助記憶装置)に、また、倉庫100の出入口101と運送車両200とを含む範囲の、具体的には、倉庫100の出入口101と運送車両200との間における運搬車両9の走行経路を含む範囲の2次元マップのデータ、及び、倉庫100の出入口101と運送車両200との間における運搬車両9の走行経路のデータが予め記憶され格納される。運搬車両9の走行経路を含む、運搬車両9が移動する場所に関する情報、データは、2次元マップ上のポイント(平面座標)として与えられるようにしてもよい。そして、2次元マップ上のポイント(平面座標)が繋げられることにより、運搬車両9の目的地点や経由地点/通過地点が特定されたり、走行経路が構成されたりするようにしてもよい。
【0040】
2次元マップのデータは、具体的には、緯度及び経度のデータであってよい。また、運搬車両9の走行経路を含む、運搬車両9が移動する場所に関する情報、データは、倉庫100の出入口101と運送車両200との緯度及び経度の組合せであってもよく、また、倉庫100の出入口101と運送車両200との間において運搬車両9が経由/通過する地点の緯度及び経度の組合せ(必要に応じて、複数の組合せ)であってもよい。
【0041】
不揮発性記憶部52(又は、必要に応じて備えられる補助記憶装置)に、さらに、倉庫100の内側空間(尚、少なくとも倉庫100の出入口101と倉庫100の中の荷物が保管されている場所との間の空間を含む)の2次元マップ若しくは3次元マップ(「エリアマップ」と称する)のデータ、及び、倉庫100の出入口101と倉庫100の中の荷物が保管されている場所との間における運搬車両9の走行経路のデータが予め記憶され格納される。運搬車両9の走行経路を含む、運搬車両9が移動する場所に関する情報、データは、エリアマップ上のポイント(平面座標)として与えられるようにしてもよい。そして、エリアマップ上のポイント(平面座標)が繋げられることにより、運搬車両9の目的地点や経由地点/通過地点が特定されたり、走行経路が構成されたりするようにしてもよい。
【0042】
制御部6は、第1走行制御部61、第2走行制御部62、及び動作制御部63を含む。
【0043】
制御部6の第1走行制御部61は、電波受信部2から出力され伝送される、GNSS衛星から送出される電波に含まれている情報に相当するデータ信号(即ち、GNSSデータ信号)の入力を受け、受信したGNSSデータ信号の内容に基づいて解析処理、演算処理を行い、屋外における運搬車両9の走行に纏わる制御を行う。
【0044】
第1走行制御部61は、GNSSを使用し且つ追加的にRTKを使用して、すなわちRTK-GNSS(RTK:Real Time Kinematic;リアルタイムキネマティック)を用いて、屋外における運搬車両9の走行に纏わる制御を行うようにしてもよい。第1走行制御部61は、ほかにも、PPP-RTK(PPP:Precise Point Positioning;精密単独測位)や、CLASの補強情報を用いたPPP-RTK(CLAS:Centimeter Level Augmentation Service;センチメーター級測位補強サービス)を用いるようにしてもよい。
【0045】
第2走行制御部62は、周囲検知部3から出力され伝送される、運搬車両9の周囲(さらに言えば、倉庫100の中)の3次元点群データに相当するデータ信号(「LIDARデータ信号」と称する)の入力を受け、受信したLIDARデータ信号の内容に基づいて解析処理、演算処理を行い、屋内における運搬車両9の走行に纏わる制御を行う。
【0046】
動作制御部63は、荷役検知部4から出力され伝送される、運搬車両9の周り(具体的には例えば、フォークリフトの少なくともフォークの周り)の荷役関係物の位置の情報に相当するデータ信号(即ち、LIDARデータ信号)の入力を受け、受信したLIDARデータ信号の内容に基づいて解析処理、演算処理を行い、運搬車両9の荷役動作(具体的には例えば、荷物の引取り、載置、及び積込みの際のフォークの動作)に纏わる制御を行う。
【0047】
(荷役動作及び走行)
実施の形態に係る運搬車両の誘導装置1は、屋外においてGNSSデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御する手段としての第1走行制御部61と、屋内においてLIDARデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御する手段としての第2走行制御部62と、を有する、ようにしている。
【0048】
また、実施の形態に係る運搬車両の誘導方法は、屋外においてはGNSSデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御するとともに、屋内においてはLIDARデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御する、ようにしている。
【0049】
図2は、実施の形態に係る運搬車両の誘導装置1が搭載されている運搬車両9が移動する範囲を模式的に示す平面図である。
【0050】
下記の説明では、運搬車両9がフォークリフトであるとして説明する。下記の説明では、具体的には、運搬車両9としてのフォークリフトが、倉庫100の中(即ち、屋内)の積荷置き場103に保管されている荷物300を引き取り、引き取った荷物300を、倉庫100の外(即ち、屋外)の荷役場400に駐車して待機している運送車両200(例えば、トラック)の荷台201まで運搬して載置する場合の、運搬車両9の荷役動作及び走行について説明する。
【0051】
運搬車両9としてのフォークリフトは、バックレストに支持されて、少なくとも上下方向に沿って、追加的に更に前後方向や左右方向にも沿って、移動可能なフォークを有する。運搬車両9としてのフォークリフトは、フォークを移動させることにより、荷物300が載置される荷役台であるパレット301の穴へとフォークを挿入してパレット301を引き取り、また、パレット301を所定の場所に載置してパレット301の穴からフォークを引き抜く。
【0052】
運搬車両9は、3次元LIDARセンサを含む周囲検知部3から出力されるLIDARデータ信号が用いられて、具体的には、3次元LIDARセンサを含む周囲検知部3によって取得される周囲の3次元点群データに基づいて、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)を利用して、自己位置の推定に基づいた、周囲の物体や構造物(図に示す例では例えば、壁104、柱105)などに関する環境地図/背景地図を生成する。自己位置の推定は、例えば、LIDARから得られる現在の周辺の形状データ(即ち、環境地図/背景地図の少なく一部に相当する)をエリアマップの形状と比較することによって行われるようにしてもよい。
【0053】
エリアマップが予め与えられない状況では、LIDARから得られる幾何学的な形状データが継ぎ足されていくことにより、エリアマップが生成されるようにしてもよい。具体的には、LIDARから得られる幾何学的な形状データに基づいて既に(例えば、運搬車両9の初期位置で)生成されたエリアマップが用いられて運搬車両9の自己位置の推定が行われ、それを基準として新たな形状データが追加されてエリアマップの領域が拡げられていくようにしてよい。
【0054】
運搬車両9の走行経路を含む、運搬車両9が移動する場所に関する情報、データについて、当該情報、データがエリアマップ上のポイント(平面座標)として与えられている場合には、当該のエリアマップ上のポイント(平面座標)が、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)上のポイント(平面座標)へと変換されて(言い換えると、相互に対応づけられて)用いられるようにしてよい。LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)における平面座標の値は、任意の一点/地点を原点とする2次元直交座標系における座標の値である。なお、走行経路は、例えば、起点及び終点、並びにこれら基点と終点との間における経由地点/通過地点の集まりとして与えられ、これら起点、経由地点/通過地点、及び終点を繋いだ線として与えられる。
【0055】
運搬車両9の走行経路を含む、運搬車両9が移動する場所に関する情報、データについて、或いは、LIDARから得られる幾何学的な形状データが継ぎ足されていくことによってエリアマップが生成される場合には、生成されたエリアマップ上のポイント(平面座標の値)として与えられて用いられるようにしてもよい。
【0056】
運搬車両9の走行経路を含む、運搬車両9が移動する場所に関する情報、データについて、或いは、運搬車両9を手動操作で移動させながら、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)における自身の位置の平面座標の値を記録させ、記録させた平面座標を繋いだ線として走行経路が与えられるようにしてもよい。
【0057】
運搬車両9の自動制御部5は運搬車両の誘導プログラム53に従って動作し、まず、制御部6の動作制御部63が、荷物300の引取りに関するシーケンスに則って、倉庫100の中の積荷置き場103に保管されている、荷物300が積載されているパレット301を引き取る。
【0058】
この際、荷役検知部4によって捕捉され検知される、少なくともフォークの周りの荷役関係物(特に、パレット301及び当該パレット301の穴)の位置に関する情報が用いられつつ、動作制御部63の制御により、荷物300が積載されているパレット301の穴へとフォークが挿入されてパレット301が引き取られる。
【0059】
続いて、制御部6の第2走行制御部62が、倉庫100の中における荷物300の運搬に関するシーケンスに則って、積荷置き場103から倉庫100の出入口101へと走行し、荷物300が積載されているパレット301を運搬する。
【0060】
この際、3次元LIDARセンサを含む周囲検知部3から出力されるLIDARデータ信号が用いられつつ、具体的には、3次元LIDARセンサを含む周囲検知部3によって取得される周囲の3次元点群データが用いられつつ、第2走行制御部62の制御により、運搬車両9は、積荷置き場103から倉庫100の出入口101へとパレット301を運搬する。
【0061】
運搬車両9が倉庫100の出入口101まで到達すると、制御部6の第2走行制御部62による制御から第1走行制御部61による制御へと切り替わる。
【0062】
制御部6の第2走行制御部62による制御と第1走行制御部61による制御との切り替えは、倉庫100の出入口101の境界102の近傍で行われる。具体的には、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)における倉庫100の出入口101の境界102に相当するポイント(或いは、境界102の近傍のポイント)であって、GNSS衛星から送出される電波を受信可能なポイント(「切替えポイント」と称する)において、第2走行制御部62による制御と第1走行制御部61による制御との切り替えが行われる。
【0063】
切替えポイントは、すなわち、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)における平面座標の値と、GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標(具体的には、緯度及び経度の組合せ)との両方が対応づけられている(言い換えると、両方を有している)地点として設定される。すなわち、切替えポイントは、倉庫100の出入口101の境界102に相当する(或いは、境界102の近傍における)同一の地点/位置を表す、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)における平面座標の値と、GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標(具体的には、緯度及び経度の組合せ)との両方を有する。
【0064】
そして、切替えポイントを介して、倉庫100の内側空間のエリアマップ(即ち、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図))と、倉庫100の外側空間のマップ(即ち、GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標の情報を有する地図)との2つのマップがひとつながりのマップとして繋げられて合成されることが可能となる。
【0065】
例えば、運搬車両9が倉庫100内の積荷置き場103から倉庫100の出入口101の境界102まで移動して切替えポイントへと到達すると、制御部6の第2走行制御部62による制御から第1走行制御部61による制御へと切り替わる。また、運搬車両9が倉庫100の外から倉庫100の出入口101まで移動して切替えポイントへと到達すると、制御部6の第1走行制御部61による制御から第2走行制御部62による制御へと切り替わる。
【0066】
なお、第2走行制御部62による制御と第1走行制御部61による制御との切り替えが行われる切替えポイントに相当する、LIDARデータ信号が用いられて生成される周辺の形状データ(環境地図/背景地図)におけるポイント(平面座標の値)と、GNSSデータ信号が用いられて計算される位置座標の情報を有する地図におけるポイント(具体的には、緯度及び経度の組合せ)とが、例えば不揮発性記憶部52に予め記憶されるようにしてもよい。
【0067】
運搬車両9が倉庫100の出入口101の境界102を越えると、GNSS衛星から送出される電波を受信した電波受信部2から出力されるGNSSデータ信号が用いられて、運搬車両の誘導装置1の位置、延いては、運搬車両の誘導装置1が搭載されている運搬車両9の位置(具体的には例えば、緯度及び経度)が計算される。
【0068】
そして、第1走行制御部61が、倉庫100の外における荷物300の運搬に関するシーケンスに則って、倉庫100の出入口101から倉庫100の外の荷役場400に駐車して待機している運送車両200へと走行し、荷物300が積載されているパレット301を運搬する。
【0069】
この際、GNSS衛星から送出される電波を受信した電波受信部2から出力されるGNSSデータ信号が用いられつつ、第1走行制御部61の制御により、運搬車両9は、倉庫100の出入口101から倉庫100の外の運送車両200までパレット301を運搬する。
【0070】
さらに、制御部6の動作制御部63が、荷物300の載置に関するシーケンスに則って、荷物300が積載されているパレット301を運搬車両9の荷台201へと載置する。
【0071】
この際、荷役検知部4によって捕捉され検知される、少なくともフォークの周りの荷役関係物(特に、運送車両200の荷台201、及びパレット301)の位置に関する情報が用いられつつ、動作制御部63の制御により、荷物300が積載されているパレット301を運送車両200の荷台201に降ろして載置するとともにパレット301の穴からフォークが引き取られる。
【0072】
運搬車両9は、荷物300が積載されている新たなパレット301及び積込みを引き続き行う場合には、制御部6の第1走行制御部61及び第2走行制御部62の制御により、運送車両200から倉庫100の出入口101を通過して倉庫100の中の積荷置き場103へと走行し、動作制御部63の制御により、積荷置き場103に保管されている、荷物300が積載されている新たなパレット301を引き取る。
【0073】
そして、運搬車両9は、制御部6の第2走行制御部62及び第1走行制御部61の制御により、積荷置き場103から倉庫100の出入口101を通過して倉庫100の外の運送車両200へと走行し、動作制御部63の制御により、荷物300が積載されているパレット301を運搬車両9の荷台201へと載置する。
【0074】
(作用効果)
実施の形態に係る運搬車両の誘導方法や運搬車両の誘導装置1によれば、屋外においてはGNSSデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御するとともに、屋内においてはLIDARデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御するようにしているので、屋内と屋外とを行き来する自走式の荷役運搬車両の誘導走行の制御を的確に行うことが可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 運搬車両の誘導装置
2 電波受信部
3 周囲検知部
4 荷役検知部
5 自動制御部
51 揮発性記憶部
52 不揮発性記憶部
53 誘導プログラム
6 制御部
61 第1走行制御部
62 第2走行制御部
63 動作制御部
9 運搬車両
100 倉庫
101 出入口
102 境界
103 積荷置き場
200 運送車両
201 荷台
300 荷物
301 パレット
400 荷役場
【要約】
【課題】屋内と屋外とを行き来する自走式の荷役運搬車両の誘導走行の制御を的確に行う。
【解決手段】運搬車両の誘導装置1は、屋外においてGNSSデータ信号を用いて運搬車両9の走行を制御する第1走行制御部61と、屋内においてLIDARデータ信号を用いて運搬車両の走行を制御する第2走行制御部62と、を有する、ようにしている。
【選択図】図1
図1
図2