(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16K31/06 305Z
F16K31/06 305L
F16K31/06 305V
(21)【出願番号】P 2024077997
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 大輔
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190429(JP,A)
【文献】特開2022-112146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁室に連通する流入路、前記主弁室内に配置された主弁座、及び流出路を備えた弁本体と、
パイロット弁口を備え、前記主弁座に着座又は離間することで前記流出路を開閉可能である主弁体と、
前記パイロット弁口を開閉可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体を駆動可能な駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、
電磁コイルと、
前記電磁コイルの中心軸方向に移動可能なプランジャと、
前記弁本体に固定され、前記電磁コイルの電磁力により前記プランジャを吸引可能な吸引子と、
前記パイロット弁体を前記パイロット弁口から離間する離間方向に付勢する第一コイルばね及び第二コイルばねと、
を有し、
前記プランジャと前記吸引子との間の前記中心軸方向の距離であるギャップが所定値以下の場合、前記パイロット弁体は前記第一コイルばね及び前記第二コイルばねによって付勢され、
前記ギャップが前記所定値より大きい場合、前記パイロット弁体は前記第一コイルばねによって付勢されることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記第一コイルばねは、全ストロークで弾性力を発揮し、
前記第二コイルばねは、前記ギャップが前記所定値以下の場合に弾性力を発揮する、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第一コイルばね及び前記第二コイルばねは、少なくとも一部が前記中心軸方向に直交する方向から見て重なるように配置されている、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記第一コイルばねの弾性係数は、前記第二コイルばねの弾性係数よりも小さい、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記駆動部は、前記第一コイルばねの弾性力を受けるリング形状の第一ばね受部材と、前記第二コイルばねの弾性力を受けるリング形状の第二ばね受部材と、を有し、
前記パイロット弁体は、前記第一ばね受部材が当接される第一段差面と、前記第一段差面より外側に位置し、前記第二ばね受部材の内周側が当接される第二段差面と、を有し、
前記吸引子は、前記第二ばね受部材の外周側が当接される第三段差面を有し、
前記パイロット弁体は、
前記第一段差面において、前記第一ばね受部材を介して前記第一コイルばねによって前記離間方向に付勢され、
前記ギャップが所定値以下の場合、前記第二段差面において、前記第二ばね受部材の内周側を介して前記第二コイルばねによって前記離間方向に付勢され、
前記ギャップが前記所定値より大きい場合、前記第二ばね受部材の外周側が前記第三段差面に当接することにより、前記第二コイルばねによって前記離間方向に付勢されない、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記電磁コイルの通電時に、前記第二段差面は前記第三段差面よりも前記パイロット弁口側に位置し、
前記電磁コイルの非通電時に、前記第二段差面は前記第三段差面よりも前記プランジャ側に位置する、請求項5に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記駆動部は、前記第一コイルばね及び前記第二コイルばねを支持するリング形状の支持部材を有し、
前記第一コイルばね及び前記第二コイルばねは、前記支持部材を介して、前記弁本体に当接されている、請求項1に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁コイルの通電をオンしてプランジャと吸引子の間の吸引力によりパイロット弁体をパイロット弁口に向かって押し下げて閉弁し、電磁コイルの通電をオフしてコイルばねによりパイロット弁体をパイロット弁口から押し上げて開弁する、通電時閉型の電磁弁が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パイロット流入路とパイロット流出路の差圧が高い場合でも開弁できるようにするためには、コイルばねの弾性力を大きくする必要がある。しかしながら、コイルばねの弾性力を大きくすると、閉弁するためのプランジャと吸引子の間の吸引力を大きくする必要があり、電磁弁が大型化してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、小型で高差圧でも開閉可能な電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電磁弁は、
主弁室に連通する流入路、前記主弁室内に配置された主弁座、及び流出路を備えた弁本体と、
パイロット弁口を備え、前記主弁座に着座又は離間することで前記流出路を開閉可能である主弁体と、
前記パイロット弁口を開閉可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体を駆動可能な駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、
電磁コイルと、
前記電磁コイルの中心軸方向に移動可能なプランジャと、
前記弁本体に固定され、前記電磁コイルの電磁力により前記プランジャを吸引可能な吸引子と、
前記パイロット弁体を前記パイロット弁口から離間する離間方向に付勢する第一コイルばね及び第二コイルばねと、
を有し、
前記プランジャと前記吸引子との間の前記中心軸方向の距離であるギャップが所定値以下の場合、前記パイロット弁体は前記第一コイルばね及び前記第二コイルばねによって付勢され、
前記ギャップが前記所定値より大きい場合、前記パイロット弁体は前記第一コイルばねによって付勢される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小型で高差圧でも開閉可能な電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る電磁弁の非通電時における縦断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る電磁弁の通電時における縦断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る電磁弁の非通電時における部分縦断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る電磁弁の通電時における部分縦断面図である。
【
図5】参考例に係る電磁弁のギャップと荷重の関係を示すグラフである。
【
図6】本開示の実施形態に係る電磁弁のギャップと荷重の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された構成と同一の参照番号を有する構成については、説明の便宜上、その説明は省略する。なお、以下の実施形態の説明において、上下方向は、
図1~4の紙面内における方向を示すものであり、これによって本開示の技術的範囲を狭める解釈が為されるものではない。
【0010】
<電磁弁の内部構造>
図1、2を用いて、電磁弁の内部構造について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る電磁弁の非通電時における縦断面図である。
図2は、本開示の実施形態に係る電磁弁の通電時における縦断面図である。
【0011】
図1、2に示すように、本実施例の電磁弁1は、高圧冷媒などの流体を制御するパイロット式電磁弁であり、弁本体10と、主弁体20と、パイロット弁体30と、駆動部40と、を有する。弁本体10と、主弁体20と、パイロット弁体30と、駆動部40は、中心軸方向Yに同軸に設けられている。
【0012】
弁本体10は、中心軸方向Yに延びる略円筒状の部材であり、主弁体20が収容される内部空間を有する。内部空間は、主弁体20によって、主弁体20よりも下方に位置する主弁室11と、主弁体20よりも上方に位置する背圧室21と、に区切られている。弁本体10は、主弁室11に左右方向に連通する流入路12と、主弁室11から下方向に延びる流出路13を有する。流出路13の開口部には、流出路13を囲むように、主弁室11に向かって突出した円筒状の主弁座14が形成されている。
【0013】
主弁体20は、中心軸方向Yに延びる略円筒形状であり、弁本体10の内部空間内を上下方向に移動可能に設けられている。主弁体20は、主弁座14に着座又は離間することで流出路13を開閉可能である。そのため、流入路12から流入した流体は、主弁体20が開弁状態の場合、主弁室11を経由して流出路13へと流出し、主弁体20が閉弁状態の場合、流出路13へと流出せずに主弁室11で留まる。
【0014】
主弁体20は、上下方向に延びるパイロット流入路22を有する。主弁室11に流入した流体の一部は、パイロット流入路22を経由して、背圧室21に流入する。また、主弁体20は、上下方向に延びるパイロット流出路23を有する。パイロット流出路23は、背圧室21側にパイロット弁口25を有する。主弁体20の上面には、パイロット弁口25を囲むようにパイロット弁座24が形成されている。
【0015】
パイロット弁体30は、略円柱形状であり、パイロット弁座24に着座又は離間することでパイロット弁口25を開閉可能である。また、パイロット弁体30は、吸引子44の内部に配置され、弁軸43を介してプランジャ42に接続されている。パイロット弁口25が開弁状態の場合、背圧室21内の流体はパイロット流出路23へと流出し、パイロット弁口25が閉弁状態の場合、背圧室21内の流体はパイロット流出路23へと流出せずに背圧室21で留まる。
【0016】
駆動部40は、電磁コイル41と、プランジャ42と、弁軸43と、吸引子44と、円筒支持部49と、を有する。プランジャ42は、電磁コイル41の内側に円筒支持部49によって上下方向に移動可能に支持されている。吸引子44は、略円筒形状を有し、プランジャ42と上下方向に対向するように配置され、円筒支持部49及び弁本体10によって固定支持されている。弁軸43は、中心軸方向Yに延びる略円柱形状を有し、弁軸43の上部がプランジャ42に固定されていて、弁軸43の下部が吸引子44の内部に上下方向に移動可能に配置されている。電磁コイル41は不図示の外部電源に接続されており、電磁コイル41に駆動電流を流すことでプランジャ42と吸引子44とが互いに引き寄せられる電磁力を発生させる。
図2に示すように、電磁力によりプランジャ42は吸引子44側へと引き下げられて、弁軸43を介してパイロット弁体30を押し下げて、パイロット弁口25を閉弁することができる。このとき、プランジャ42と吸引子44との間の中心軸方向Yの距離をギャップGと定義すると、ギャップGは小さくなる。
【0017】
吸引子44とパイロット弁体30との間の空間には、中心軸方向Yに伸縮可能な円筒状の第一コイルばね46a、第二コイルばね46bが設けられている。第一コイルばね46a、第二コイルばね46bは、ともにパイロット弁体30をパイロット弁口25から離間する離間方向に付勢する。また、第二コイルばね46bは、第一コイルばね46aよりも径方向外側に位置し、第一コイルばね46a、第二コイルばね46bの少なくとも一部が、中心軸方向Yに直交する方向Xから見て重なるように配置されている。
【0018】
パイロット弁口25が閉弁状態から開弁状態に移行する際、背圧室21に流体が流入されており、背圧室21とパイロット流出路23との差圧ΔPが生じる。そのため、差圧ΔPがあってもパイロット弁口25を開弁できるように、差圧ΔPよりも大きい付勢力でパイロット弁体30を離間方向に付勢する必要がある。そのため、上記のように、吸引子44の内部に、第一コイルばね46a、第二コイルばね46bが設けられている。
【0019】
<コイルばねの組付け構造>
次に、
図3、4を用いて、第一コイルばね46a、第二コイルばね46bの組付け構造について詳細に説明する。
図3は、本開示の実施形態に係る電磁弁の非通電時における部分縦断面図である。
図4は、本開示の実施形態に係る電磁弁の通電時における部分縦断面図である。
【0020】
図3、4に示すように、パイロット弁体30は、略円柱形状であり、中心軸方向Yに沿って互いに径が異なる小径部30aと、中径部30bと、大径部30cと、を有する。小径部30aの内径は中径部30bの内径よりも小さく、中径部30bの内径は大径部30cの内径よりも小さい。小径部30aと、中径部30bと、大径部30cは、下方から上方に向かって連続している。また、パイロット弁体30は、小径部30aと中径部30bの境界において下方を臨む第一段差面31を有し、中径部30bと大径部30cの境界において下方を臨む第二段差面32を有する。中心軸方向Yにおいて、第一段差面31は第二段差面32よりもパイロット弁口25側に位置し、中心軸方向Yに直交する方向Xにおいて、第一段差面31は第二段差面32よりも径方向内側に位置する。
【0021】
図3、4に示すように、吸引子44は、内側面において、中心軸方向Yに沿って互いに径が異なる第一内側面44aと、第二内側面44bと、第三内側面44cと、を有する。第一内側面44aの内径は第二内側面44bの内径よりも大きく、第二内側面44bの内径は第三内側面44cの内径よりも大きい。第一内側面44aと、第二内側面44bと、第三内側面44cは、下方から上方に向かって連続している。また、吸引子44は、第一内側面44aと第二内側面44bの境界において、下方を臨む第三段差面45を有する。
【0022】
吸引子44の内部空間には、支持部材47cが設けられている。支持部材47cは、第二コイルばね46bより径が大きいリング形状の板部材であって、吸引子44の底部48によって固定支持される。支持部材47cは、第一コイルばね46a、第二コイルばね46bの下端を支持する。そのため、第一コイルばね46a及び第二コイルばね46bの下端は、支持部材47cを介して弁本体10に当接される。
【0023】
また、吸引子44の内部空間には、第一ばね受部材47aと、第二ばね受部材47bが設けられている。第一ばね受部材47aは、第一コイルばね46aより外径が大きいリング形状であって、第一コイルばね46aとパイロット弁体30の第一段差面31との間に設けられている。第二ばね受部材47bは、第二コイルばね46bより外径が大きいリング形状であって、第二コイルばね46bと吸引子44の第三段差面45との間に設けられている。第二ばね受部材47bの内径は、中径部30bの径よりも大きく、大径部30cの径よりも小さいため、第二ばね受部材の内周側が第二段差面32に、第二ばね受部材の外周側が第三段差面45に当接し得る構成となっている。そのため、第一コイルばね46aの上端は、第一ばね受部材47aを介してパイロット弁体30に当接され、第二コイルばね46bの上端は、第二ばね受部材47bを介してパイロット弁体30又は吸引子44に当接される。
【0024】
図3に示すように、電磁弁の非通電時では、電磁コイル41の電磁力が発生しておらず、プランジャ42は吸引子44側へと引き下げられていない。そのため、ギャップGは所定値Gthよりも大きくなり、パイロット弁体30は押し下げられず、パイロット弁口25は開弁状態となる。このとき、中心軸方向Yにおいて、第二段差面32は、第三段差面45よりもプランジャ42側に位置し、第二ばね受部材47bは、第二段差面32に当接せず、第三段差面45に当接する。つまり、第一コイルばね46aは、パイロット弁体30をパイロット弁口25から離間する離間方向に付勢するが、第二コイルばね46bは、パイロット弁体30を付勢しない。なお、所定値Gthは第二ばね受け部材49bがパイロット弁体30の第二段差面32に当接を開始するときのギャップGである。
【0025】
図4に示すように、電磁弁の通電時では、電磁コイル41の電磁力が発生し、プランジャ42は吸引子44側へと引き下げられる。そのため、ギャップGは所定値Gthよりも小さくなり、パイロット弁体30は押し下げられる。このとき、中心軸方向Yにおいて、第二段差面32は、第三段差面45よりもパイロット弁口25側に位置し、第二ばね受部材47bは、第三段差面45に当接せず、第二段差面32に当接する。つまり、第一コイルばね46a及び第二コイルばね46bは、それぞれパイロット弁体30をパイロット弁口25から離間する離間方向に付勢する。
【0026】
このように、本実施形態に係る電磁弁は、ギャップGが所定値Gth以下の場合、パイロット弁体30が第一コイルばね46a及び第二コイルばね46bによって付勢され、ギャップGが所定値Gthより大きい場合、パイロット弁体30が第一コイルばね46aによって付勢される。より詳細には、パイロット弁体30は、第一段差面31において、第一ばね受部材47aを介して第一コイルばね46aによってパイロット弁口25から離間する離間方向に付勢される。また、ギャップGが所定値Gth以下の場合、パイロット弁体30は、第二段差面32において、第二ばね受部材47bの内周側を介して第二コイルばね46bによってパイロット弁口25から離間する離間方向に付勢される。ギャップGが所定値Gthより大きい場合、第二ばね受部材47bの外周側が第三段差面45に当接することにより、パイロット弁体30は第二コイルばね46bによって離間方向に付勢されない。
【0027】
<パイロット弁体にかかる荷重>
本実施形態に係る電磁弁のパイロット弁体にかかる荷重について説明するために、まず、参考例に係るの電磁弁のパイロット弁体にかかる荷重について
図5を用いて説明する。参考例にかかる電磁弁は、本実施形態の電磁弁において第一コイルばね46a及び第二コイルばね46bのうち第一コイルばね46aのみを備える構成である。
図5は、参考例に係る電磁弁のギャップと荷重の関係を示すグラフである。
図5において、横軸にギャップGを、縦軸にパイロット弁体30にかかる荷重Fを示す。
【0028】
参考例に係る電磁弁において、パイロット弁体30には、プランジャ42と吸引子44の間の吸引力SFによるパイロット弁口25側への荷重と、第一コイルばね46aの弾性力S1によるプランジャ42側への荷重がかかる。
図5に示すように、ギャップGが小さくなると、吸引力SFは非線形に増加し、弾性力S1は線形に増加する。パイロット弁体30がパイロット弁口25を開弁するためには、常に吸引力SFが弾性力S1よりも大きい必要がある。
【0029】
ここで、パイロット弁口25が閉弁状態から開弁状態に移行する際の背圧室21とパイロット流出路23との差圧ΔPが大きい場合、パイロット弁口25を開弁できるように、第一コイルばね46aの弾性係数を大きくして弾性力S1を弾性力S1’のように大きくすることが考えられる。しかし、第一コイルばね46aの弾性力を大きくすると、
図5に示すように、吸引力SFよりも弾性力S1’の方が大きくなる区間Tが生じてしまい、パイロット弁口25を閉弁できない。したがって、第一コイルばね46aの弾性力を大きくするためには、プランジャ42と吸引子44の間の吸引力SFも大きくする必要があり、電磁弁が大型化してしまう。
【0030】
次に、本実施形態に係る電磁弁のパイロット弁体にかかる荷重について
図6を用いて説明する。
図6は、本開示の実施形態に係る電磁弁のギャップと荷重の関係を示すグラフである。
図6において、横軸にギャップGを、縦軸にパイロット弁体30にかかる荷重Fを示す。
【0031】
本開示の実施形態に係る電磁弁1において、パイロット弁体30には、プランジャ42と吸引子44の間の吸引力SFによるパイロット弁口25側への荷重と、第一コイルばね46aの弾性力S1及び第二コイルばね46bの弾性力S2によるプランジャ42側への荷重がかかる。
図6に示すように、第一コイルばね46aは全ストロークで弾性力S1を発揮するが、第二コイルばね46bはギャップGが所定値Gth以下の場合に弾性力S2を発揮する。そのため、ギャップGが所定値Gthより大きい区間では弾性力を弾性力S1に抑えて、ギャップGが0以上Gth以下の区間では弾性力を弾性力S1+S2に大きくすることができる。ここで、少なくともギャップGが0以上Gth以下の区間において、第一コイルばね46aの弾性係数は、第二コイルばね46bの弾性係数よりも小さくてもよい。なお、
図5、6において、ギャップG1は電磁弁1が閉弁されたときのギャップGを、ギャップG2は電磁弁1が開弁となったときのギャップGを示す。また、第一コイルばね46aの全ストロークとは、電磁弁1の開弁状態から閉弁状態に遷移するまでの第一コイルばね46aの圧縮長さを意味する。
【0032】
このように、パイロット弁口25が閉弁状態から開弁状態に移行する際、背圧室21とパイロット流出路23との差圧ΔPが大きい場合でも、パイロット弁口25を開弁することが可能であり、コイルばねのパイロット弁体30への付勢力は吸引子44の吸引力SFより常に小さいため、吸引力SFを大きくする必要がない。したがって、電磁弁1を大型化することなく、パイロット弁口25を開閉することができる。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0034】
1:電磁弁
10:弁本体
11:主弁室
12:流入路
13:流出路
14:主弁座
20:主弁体
21:背圧室
22:パイロット流入路
23:パイロット流出路
24:パイロット弁座
25:パイロット弁口
30:パイロット弁体
30a:小径部
30b:中径部
30c:大径部
31:第一段差面
32:第二段差面
40:駆動部
41:電磁コイル
42:プランジャ
43:弁軸
44:吸引子
44a:第一内側面
44b:第二内側面
44c:第三内側面
45:第三段差面
46a:第一コイルばね
46b:第二コイルばね
47a:第一ばね受部材
47b:第二ばね受部材
47c:支持部材
48:底部
49:円筒支持部
【要約】
【課題】小型で高差圧でも開閉可能な電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁1は、主弁室11に連通する流入路12、主弁室11内に配置された主弁座14、及び流出路13を備えた弁本体10と、パイロット弁口25を備え、主弁座14に着座又は離間することで流出路13を開閉可能である主弁体20と、パイロット弁口25を開閉可能なパイロット弁体30と、パイロット弁体30を駆動可能な駆動部40と、を備える。駆動部40は、電磁コイル41と、電磁コイル41の中心軸方向Yに移動可能なプランジャ42と、弁本体10に固定され、電磁コイル41の電磁力によりプランジャ42を吸引可能な吸引子44と、パイロット弁体30をパイロット弁口25から離間する離間方向に付勢する第一コイルばね46a及び第二コイルばね46bと、を有する。
【選択図】
図1