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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】がんの治療又は予防用医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K39/395 U
A61K31/497
A61K31/4985
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2024505170
(86)(22)【出願日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2023015683
(87)【国際公開番号】W WO2023204259
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】22207829.7
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】P 2022069320
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】坂田 清明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 仁志
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第22/019329(WO,A1)
【文献】国際公開第22/018875(WO,A1)
【文献】国際公開第21/149776(WO,A1)
【文献】Cancer Res,2020年,80 (16_Suppl.),Abstract CT143
【文献】Cancer Sci.,2021年,12(10):4166-4175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤でり、
前記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、医薬。
【化1】
【請求項2】
下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、SHP2阻害剤でり、
前記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、医薬。
【化2】
【請求項3】
下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、VEGF阻害剤でり、
前記VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物、並びにベバシズマブ、ラムシルマブ、及びアフリベルセプトからなる群より選択される少なくとも一種である、医薬。
【化3】
【請求項4】
下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、PD-1系結合アンタゴニストでり、
前記PD-1系結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ、ラムブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、PDR001、REGN2810、BGBA317、SHR-1210、AMP-514(MEDI0680)、AMP-224、INCB086550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブ、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びイムノアドヘシンからなる群から選択される少なくとも一種である、医薬。
【化4】
【請求項5】
分子標的剤を含み、下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤でり、
前記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、医薬。
【化5】
【請求項6】
分子標的剤を含み、下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、SHP2阻害剤でり、
前記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、医薬。
【化6】
【請求項7】
分子標的剤を含み、下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、VEGF阻害剤でり、
前記VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物、並びにベバシズマブ、ラムシルマブ、及びアフリベルセプトからなる群より選択される少なくとも一種である、医薬。
【化7】
【請求項8】
分子標的剤を含み、下記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬であって、
前記分子標的剤は、PD-1系結合アンタゴニストでり、
前記PD-1系結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ、ラムブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、PDR001、REGN2810、BGBA317、SHR-1210、AMP-514(MEDI0680)、AMP-224、INCB086550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブ、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びイムノアドヘシンからなる群から選択される少なくとも一種である、医薬。
【化8】
【請求項9】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、前記分子標的剤とがキットとして提供される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、前記分子標的剤とが同時又は別々に併用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、前記分子標的剤とが配合剤として投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物の塩である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記塩は、ナトリウム塩である、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項15】
前記がんは、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部がん、白血病、悪性リンパ腫及び多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、ソトラシブである、請求項1又はに記載の医薬。
【請求項17】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、アダグラシブである、請求項1又はに記載の医薬。
【請求項18】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、請求項2又は6に記載の医薬。
【請求項19】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、請求項又はに記載の医薬。
【請求項20】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、GDC-1971である、請求項又はに記載の医薬。
【請求項21】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、ベバシズマブである、請求項又はに記載の医薬。
【請求項22】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物又はその塩であり、前記分子標的剤は、アテゾリズマブである、請求項又はに記載の医薬。
【請求項23】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、ソトラシブである、請求項1又はに記載の医薬。
【請求項24】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、アダグラシブである、請求項1又はに記載の医薬。
【請求項25】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、請求項2又は6に記載の医薬。
【請求項26】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、請求項又はに記載の医薬。
【請求項27】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、GDC-1971である、請求項又はに記載の医薬。
【請求項28】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、ベバシズマブである、請求項又はに記載の医薬。
【請求項29】
前記式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物のナトリウム塩であり、前記分子標的剤は、アテゾリズマブである、請求項又はに記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療又は予防用医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、遺伝子に異常が生じることにより、細胞が無制御に増殖する疾患である。がんの内科的治療法としては化学療法があり、様々な抗がん剤が用いられている。近年では、抗がん剤として、あるがん細胞に特異的に発現している分子、又は、がん細胞において発現が亢進している分子に特異的に作用する分子標的剤が多数開発されている。分子標的剤としては、例えば、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ等の抗体医薬(特許文献1)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ等の低分子医薬(特許文献2)、抗腫瘍活性を有するアリールアミド誘導体(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開第2018-076369号公報
【文献】特開第2021-063014号公報
【文献】国際公開第2021/149776号
【非特許文献】
【0004】
【文献】S.I.Ou, et al., “A12 The SHP2Inhibitor RMC-4630 in Patients with KRAS-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer:Preliminary Evaluation of a First-in-Man Phase 1 Clinical Trial”, Journal ofThoracic Oncology Volume 15, Issue 2, Supplement, February 2020, P.S15-S16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の中、がんの治療又は予防について、薬効の優れる医薬が求められているのが現状である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、がんの治療又は予防に優れた効果を発揮する医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の[1]~[130]を包含する。
[1]下記式1で表される化合物(「化合物1」ともいう。)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬。
【化1】
[2]分子標的剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬。
[3]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、上記分子標的剤とがキットとして提供される、[1]又は[2]に記載の医薬。
[4]化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と分子標的剤とを対象に投与する、がんの治療又は予防方法。
[5]分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防における使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
[6]化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防における使用のための分子標的剤。
[7]分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬の製造のための、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の使用。
[8]化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬の製造のための、分子標的剤の使用。
[9]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、上記分子標的剤とが同時又は別々に併用される、[1]~[8]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[10]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、上記分子標的剤とが配合剤として投与される、[1]~[9]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[11]上記分子標的剤は、MAPK/ERK経路阻害剤である、[1]~[10]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[12]上記分子標的剤は、KRAS阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種である、[1]~[11]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[13]上記分子標的剤は、KRAS阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤又はPD-1系結合アンタゴニストである、[1]~[12]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[14]上記KRAS阻害剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[12]又は[13]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[15]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[14]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[16]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[14]又は[15]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[17]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[14]又は[15]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[18]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブである、[14]、[15]、及び[17]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[19]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[12]~[18]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[20]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[12]~[19]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[21]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[12]~[20]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[22]上記SHP2阻害剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[12]~[20]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[23]上記SHP2阻害剤は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[12]~[20]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[24]上記VEGF阻害剤は、ベバシズマブである、[12]~[23]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[25]上記PD-1系結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である、[12]~[24]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[26]上記分子標的剤は、KRAS阻害剤である、[1]~[13]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[27]上記KRAS阻害剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[26]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[28]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[27]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[29]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[27]又は[28]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[30]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[27]又は[28]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[31]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブである、[27]、[28]、及び[30]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[32]上記分子標的剤は、SHP2阻害剤である、[1]~[13]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[33]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[32]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[34]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[32]又は[33]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[35]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[32]~[34]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[36]上記SHP2阻害剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[32]~[34]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[37]上記SHP2阻害剤は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[32]~[34]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[38]上記分子標的剤は、VEGF阻害剤である、[1]~[13]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[39]上記VEGF阻害剤は、ベバシズマブである[38]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[40]上記分子標的剤は、PD-1系結合アンタゴニストである、[1]~[13]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[41]上記PD-1系結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である[40]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[42]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1の塩である、[1]~[41]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[43]上記塩は、ナトリウム塩である、[42]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[44]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記分子標的剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[1]~[14]及び[19]~[27]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[45]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[44]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[46]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[44]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[47]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記分子標的剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[1]~[21]、[24]、[25]、及び[32]~[35]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[48]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記分子標的剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[1]~[20]、[22]、[24]、[25]、[32]~[34]、及び[36]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[49]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記分子標的剤は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[1]~[20]、[23]~[25]、[32]~[34]、及び[37]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[50]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記分子標的剤は、ベバシズマブである、[1]~[25]、[38]、及び[39]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[51]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記分子標的剤は、抗PD-L1抗体である、[1]~[25]、[40]、及び[41]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[52]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1である、[1]~[41]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[53]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記分子標的剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[1]~[14]及び[19]~[27]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[54]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[53]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[55]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[53]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[56]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記分子標的剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[1]~[21]、[24]、[25]、及び[32]~[35]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[57]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記分子標的剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[1]~[20]、[22]、[24]、[25]、[32]~[34]、及び[36]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[58]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記分子標的剤は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[1]~[20]、[23]~[25]、[32]~[34]、及び[37]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[59]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記分子標的剤は、ベバシズマブである、[1]~[25]、[38]、及び[39]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[60]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記分子標的剤は、抗PD-L1抗体である、[1]~[25]、[40]、及び[41]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[61]上記がんは、固形がん又は血液がんである、[1]~[60]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[62]上記がんは、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部がん、白血病、悪性リンパ腫及び多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]~[61]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[63]上記がんは、RAS遺伝子又はMAPK/ERK経路の異常に関連するがんである、[1]~[62]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[64]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路の異常な活性化である、[63]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[65]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路のたんぱく質の発現増加による異常な活性化である、[63]又は[64]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[66]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路の遺伝子変異による異常な活性化である、[63]~[65]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[67]上記MAPK/ERK経路の異常がRAF遺伝子の異常である、[63]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のための分子標的剤、或いは、使用。
[68]下記式1で表される化合物(「化合物1」ともいう。)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種と併用される、がんの治療又は予防用医薬。
【化2】
[69]KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬。
[70]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種とがキットとして提供される、[68]又は[69]に記載の医薬。
[71]化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種とを対象に投与する、がんの治療又は予防方法。
[72]KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種と併用される、がんの治療又は予防における使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
[73]化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防における使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種。
[74]KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種と併用される、がんの治療又は予防用医薬の製造のための、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の使用。
[75]化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬の製造のための、KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種の使用。
[76]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種とが同時又は別々に併用される、[68]~[75]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[77]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種とが配合剤として投与される、[68]~[76]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[78]上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤又はVEGF阻害剤である、[68]~[77]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[79]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[68]~[78]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[80]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[79]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[81]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[79]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[82]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブである、[68]~[79]及び[81]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[83]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[68]~[82]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[84]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[68]~[83]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[85]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[86]上記SHP2阻害剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[87]上記SHP2阻害剤は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[88]上記VEGF阻害剤は、ベバシズマブである、[68]~[87]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[89]上記PD-1系結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である、[68]~[88]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[90]上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[68]~[89]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[91]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[90]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[92]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[90]又は[91]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[93]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[90]又は[91]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[94]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブである、[90]、[91]、及び[93]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[95]上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、SHP2阻害剤である、[68]~[89]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[96]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[95]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[97]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[95]又は[96]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[98]上記SHP2阻害剤は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[95]~[97]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[99]上記SHP2阻害剤は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[95]~[97]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[100]上記SHP2阻害剤は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[95]~[97]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[101]上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、VEGF阻害剤である、[68]~[89]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[102]上記VEGF阻害剤は、ベバシズマブである[101]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[103]上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、PD-1系結合アンタゴニストである、[68]~[89]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[104]上記PD-1系結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である[103]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[105]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1の塩である、[68]~[104]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[106]上記塩は、ナトリウム塩である、[105]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[107]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[68]~[78]及び[83]~[90]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[108]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[107]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[109]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[107]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[110]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[85]、[88]、[89]、及び[95]~[98]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[111]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]、[86]、[88]、[89]、[95]~[97]、及び[99]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[112]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]、[87]~[89]、[95]~[97]、及び[100]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[113]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、ベバシズマブである、[68]~[89]、[101]、及び[102]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[114]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1のナトリウム塩であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、抗PD-L1抗体である、[68]~[89]、[103]、及び[104]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[115]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1である、[68]~[104]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[116]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、KRAS-G12C選択的阻害剤である、[68]~[78]、及び[83]~[90]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[117]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[116]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[118]上記KRAS-G12C選択的阻害剤は、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[116]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[119]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、RMC-4550若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[85]、[88]、[89]、及び[95]~[98]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[120]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、TNO155若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]、[86]、[88]、[89]、[95]~[97]、及び[99]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[121]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、[68]~[84]、[87]~[89]、[95]~[97]、及び[100]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[122]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、ベバシズマブである、[68]~[89]、[101]、及び[102]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[123]上記化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上記化合物1であり、上記KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種は、抗PD-L1抗体である、[68]~[89]、[103]、及び[104]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[124]上記がんは、固形がん又は血液がんである、[68]~[123]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[125]上記がんは、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部がん、白血病、悪性リンパ腫及び多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種である、[68]~[124]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[126]上記がんは、RAS遺伝子又はMAPK/ERK経路の異常に関連するがんである、[68]~[125]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[127]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路の異常な活性化である、[126]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[128]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路のたんぱく質の発現増加による異常な活性化である、[126]又は[127]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[129]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路の遺伝子変異による異常な活性化である、[126]~[128]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
[130]上記MAPK/ERK経路の異常がRAF遺伝子の異常である、[126]に記載の医薬、方法、使用のための化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、使用のためのKRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種、或いは、使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、がんの治療又は予防に優れた効果を発揮する医薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、化合物1とソトラシブ又はアダグラシブとを併用した場合のRASシグナル阻害活性を示す電気泳動像である。
図2図2は、化合物1とTNO155とを併用した場合のRASシグナル阻害活性を示す電気泳動像である。
図3図3は、化合物1とGDC-1971とを併用した場合のRASシグナル阻害活性を示す電気泳動像である。
図4図4は、化合物1とソトラシブ又はアダグラシブとを併用した場合の細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。
図5図5の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H2122に対して、化合物1とTNO155とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図6図6の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H358に対して、化合物1とTNO155とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図7図7の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H2122に対して、化合物1とRMC-4550とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図8図8の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H358に対して、化合物1とRMC-4550とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図9図9の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H1373に対して、化合物1とTNO155とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。なお、図9(a)における破線は、TNO155の最高処理濃度10μMと化合物1単剤のIC50とをつないだものである。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図10図10の(a)、(b)及び(c)は、細胞株HCC-1171に対して、化合物1とTNO155とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図11図11の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H23に対して、化合物1とTNO155とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図12図12の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H1373に対して、化合物1とGDC-1971とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図13図13の(a)、(b)及び(c)は、細胞株A-427に対して、化合物1とGDC-1971とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図14図14の(a)、(b)及び(c)は、細胞株NCI-H1944に対して、化合物1とGDC-1971とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図15図15の(a)、(b)及び(c)は、細胞株GP2dに対して、化合物1とGDC-1971とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図16図16の(a)、(b)及び(c)は、細胞株HPACに対して、化合物1とGDC-1971とを併用した場合の細胞増殖阻害活性を示す図である。(a)は細胞増殖阻害活性をアイソボログラムによって解析した結果を示す。(b)は増殖抑制率を示す図である。(c)はEOBを示す図である。
図17図17は、化合物1のナトリウム塩とソトラシブ又はアダグラシブとを併用した場合の抗腫瘍活性及びマウスの体重変化率を示すグラフである。
図18図18は、化合物1のナトリウム塩とベバシズマブとを併用した場合の抗腫瘍活性を示すグラフである。
図19A図19Aは、細胞株NCI-H1373に対して、化合物1のナトリウム塩とTNO155とを併用した場合の抗腫瘍活性を示すグラフである。
図19B図19Bは、細胞株NCI-H358に対して、化合物1のナトリウム塩とTNO155とを併用した場合の抗腫瘍活性を示すグラフである。
図19C図19Cは、細胞株NCI-H441に対して、化合物1のナトリウム塩とTNO155とを併用した場合の抗腫瘍活性を示すグラフである。
図20図20は、化合物1のナトリウム塩と抗PD-L1抗体とを併用した場合の抗腫瘍活性を示すグラフである。(a)はCT26を用いた結果、(b)はmLU6054を用いた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の治療又は予防用医薬、及び、治療又は予防方法は、ヒトに対して投与又は適用されるものであってよい。本明細書において、範囲を示す「~」とはその両端の値を含み、例えば、「A~B」は、A以上であり、かつB以下である範囲を意味する。本明細書において、「約」という用語は、数値と組み合わせて使用される場合、その数値の+10%及び10%の範囲を意味する。本発明において、「及び/又は」との用語の意義は、「及び」と「又は」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば、「A、B、及び/又はC」には、以下の7通りのバリエーションが含まれる;(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)A及びB、(v)A及びC、(vi)B及びC、(vii)A、B、及びC。本明細書において、「それらの溶媒和物」とは、化合物1の溶媒和物、分子標的剤の溶媒和物、化合物1の塩の溶媒和物、又は分子標的剤の塩の溶媒和物を意味する。
【0011】
本発明の一実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、分子標的剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。好ましくは、分子標的剤はMAPK/ERK経路阻害剤である。より好ましくは、分子標的剤は、KRAS阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される一種である。
【化3】
【0012】
本発明の他の実施形態は、分子標的剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。好ましくは、分子標的剤はMAPK/ERK経路阻害剤である。より好ましくは、分子標的剤は、KRAS阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤、及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群から選択される一種である。
【0013】
本発明の一実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、MAPK/ERK経路阻害剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0014】
本発明の他の実施形態は、MAPK/ERK経路阻害剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0015】
本発明の一実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、KRAS阻害剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0016】
本発明の他の実施形態は、KRAS阻害剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0017】
本発明の一実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、SHP2阻害剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0018】
本発明の他の実施形態は、SHP2阻害剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物であることがより好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、VEGF阻害剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0020】
本発明の他の実施形態は、VEGF阻害剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物、並びに抗VEGF抗体からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、抗VEGF抗体であってよく、ベバシズマブ、ラムシルマブ、又はアフリベルセプトであってよい。VEGF阻害剤は、抗VEGF抗体であることが好ましく、ベバシズマブであることがより好ましい。
【0021】
本発明の他の実施形態は、PD-1系結合アンタゴニストを含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。PD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体であってよく、MDX-1106(ニボルマブ(Nivolumab))、MK-3475(ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ラムブロリズマブ(Lambrolizumab))、CT-011(ピディリズマブ(Pidilizumab))、PDR001、REGN2810、BGBA317、SHR-1210、AMP-514(MEDI0680)及びAMP-224からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。PD-L1結合アンタゴニストは、低分子であってよく、分子量が2000g/mol以下である低分子であってよく、INCB086550、若しくはそれらの塩又はそれらの溶媒和物であってよく、抗PD-L1抗体であってよく、YW243.55.S70、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブ(Avelumab)、及びMEDI4736(デュルバルマブ(Durvalumab))からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体であってよく、イムノアドヘシンであってよい。PD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト又はPD-L1結合アンタゴニストであることが好ましく、PD-L1結合アンタゴニストであることがより好ましい。PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体であることが好ましく、MDX-1106(ニボルマブ)、又はMK-3475(ペンブロリズマブ)であることがより好ましい。PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体であることが好ましく、アテゾリズマブであることがより好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含み、KRAS-G12C選択的阻害剤と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。
【0023】
本発明の他の実施形態は、KRAS-G12C選択的阻害剤を含み、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と併用される、がんの治療又は予防用医薬である。KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物であってよく、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物であってよい。KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0024】
化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、分子標的剤とはキットとして提供されてよい。本発明の更に他の実施形態は、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する製剤と、分子標的剤とを含むキットということもできる。上述した医薬はキットとして提供されてよい。本発明の別の実施形態は、医薬を含むキットであってよい。
【0025】
「併用」とは、二以上の成分を組み合せて用いることを意味する。例えば、化合物1若しくはその塩又はそれらの溶媒和物(以下、「第一成分」ということもある。)及び分子標的剤(以下、「第二成分」ということもある。)の併用とは、「第一成分及び第二成分を含む単一の製剤として投与する態様」(すなわち、第一成分と第二成分とが配合剤として併用される態様)と、「第一成分及び第二成分がそれぞれ別個の製剤として同時に又は別々に投与される態様」とを含む。後者の態様においては、第一成分を含有する製剤を先に投与してもよいし、第二成分を含有する製剤を先に投与してもよい。後者の態様は、「第一成分及び第二成分を別々に製剤化して、同一投与経路で同時に投与する態様」、「第一成分及び第二成分を別々に製剤化して、同一投与経路で時間差をつけて別々に投与する態様」、「第一成分及び第二成分を別々に製剤化して、異なる投与経路(同一患者の異なる部位から投与する)で同時に投与する態様」及び「第一成分及び第二成分を別々に製剤化して、異なる投与経路で時間差をつけて別々に投与する態様」のいずれかとしてよい。「第一成分及び第二成分を別々に製剤化して、同一投与経路で同時に投与する態様」の場合、投与直前に両製剤を混合してもよい。「別々に」とは、ある製剤を他の製剤の投与前又は投与後に投与することを意味する。
【0026】
言い換えれば、「併用」とは、一方の成分が患者の体内に存在している状態で他の成分を患者の体内に存在させる使用方法ともいえる。すなわち、患者の体内、例えば血中において第一成分及び第二成分が同時に存在するように投与される態様が好ましく、患者に対して、ある製剤を同時に投与するか、ある製剤を投与してから48時間以内に他の製剤を投与する態様が好ましい。
【0027】
化合物1は、2-(4-シクロプロピル-2-フルオロ-アニリノ)-3,4-ジフルオロ-5-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチル]ベンズアミド、2-(4-シクロプロピル-2-フルオロ-アニリノ)-3,4-ジフルオロ-5-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチル]ベンズアミド(CAS番号:2677856-11-8)である。
【0028】
第一成分は、化合物1、化合物1の塩、化合物1の塩の溶媒和物、又は化合物1の溶媒和物であってよい。
【0029】
化合物1の塩としては、製剤学的に許容される塩が挙げられ、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;アルギニンなどのアミノ酸との塩等を挙げることができる。これらの塩は、例えば、化合物1を酸又は塩基と接触させることにより製造される。なお、本明細書において、溶媒和物は、化合物1が溶媒と共に単一の分子集団を形成していれば特に限定されないが、薬剤の投与に伴って服用(摂取)可能な溶媒により形成される溶媒和物である。溶媒和物の例としては、水和物、アルコール水和物(エタノール水和物、メタノール水和物、1-プロパノール水和物、2-プロパノール水和物等)、ジメチルスルホキシド等の単一溶媒との溶媒和物だけでなく、1分子の化合物1と複数分子の溶媒とが溶媒和物を形成したものや、1分子の化合物1と複数種の溶媒とが溶媒和物を形成したものを挙げることができる。溶媒が水の場合は、溶媒和物は、水和物と呼ばれる。溶媒和物は、例えば、化合物1を溶媒と接触させることにより製造され、塩の溶媒和物は、例えば、化合物1の塩を溶媒と接触させることにより製造される。化合物1の塩又は化合物1若しくは化合物1の塩の溶媒和物は、化合物1(フリー体)と同様にすべて活性体である。化合物1の塩は、ナトリウム塩であることが好ましく、例えば化合物1は下記式(2)で表されるナトリウム塩を形成し得る。後述する分子標的剤についても、化合物1の塩として例示された塩又は溶媒和物の形態であってよく、当該分子標的剤の塩又は溶媒和物は、化合物1の塩又は溶媒和物の製造方法として例示された製造方法により得ることができる。
【化4】
【0030】
第一成分には、結晶多形が存在することもあるが、いずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよい。第一成分には、非晶質体も含まれる。
【0031】
第一成分の投与量は、投与される対象の体重1kg当たり、1回につき0.0001~50mg(0.0001~50mg/kg/day)が好ましく、0.001~2mg/kg/dayがより好ましく、0.002~0.2mg/kg/dayが更に好ましい。第一成分の投与量がこれらの範囲にあると、がんの治療又は予防効果がより高まる。第一成分の投与回数は、例えば、1日1回、1日2回、又は1日3回とすることができるが、1日1回がより好ましい。
【0032】
第一成分は、例えば、国際公開第2021/149776号公報に記載の方法に従って製造することができる。
【0033】
本明細書において、「分子標的剤」とは、抗腫瘍効果を持つ薬剤であって特定のたんぱく質を特異的に阻害する薬剤を意味する。本明細書においては、分子標的剤には化合物1及びその塩並びにそれらの溶媒和物は含まれない。分子標的剤としては、MAPK/ERK経路阻害剤等が挙げられ、MAPK/ERK経路阻害剤はがんの治療または予防用医薬として使用され得る。本明細書中で、「MAPK/ERK経路阻害剤」は、MAPK/ERKシグナルに関与する標的の阻害剤を指し、増殖因子及びその受容体の阻害剤、並びにキナーゼ阻害剤を含む。例えば、MAPK/ERK経路阻害剤としては、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS阻害剤、NRAS阻害剤、HRAS阻害剤、KRAS-GTP阻害剤、NRAS-GTP阻害剤、HRAS-GTP阻害剤、KRAS-G12C阻害剤、ERK阻害剤、AKT阻害剤、及びMEK阻害剤を挙げることができる。分子標的剤は、KRAS阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種であってよく、KRAS阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤又はPD-1系結合アンタゴニストであってもよい。KRAS阻害剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤であってよい。この場合、分子標的剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤及びPD-1系結合アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも一種であってよく、KRAS-G12C選択的阻害剤、SHP2阻害剤、VEGF阻害剤又はPD-1系結合アンタゴニストであってもよい。分子標的剤は、KRAS-G12C選択的阻害剤であることが好ましい。KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、ソトラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物であってよく、アダグラシブ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物であってよい。KRAS-G12C選択的阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。分子標的剤は、SHP2阻害剤であることが好ましい。SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、SHP099、NSC-87877、RMC-4630、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。SHP2阻害剤は、RMC-4550、TNO155、GDC-1971及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、GDC-1971若しくはその塩又はそれらの溶媒和物であることがより好ましい。VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブ及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物、並びに抗VEGF抗体からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、抗VEGF抗体であってよく、ベバシズマブ、ラムシルマブ、又はアフリベルセプトであってよい。VEGF阻害剤は、抗VEGF抗体であることが好ましく、ベバシズマブであることがより好ましい。PD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト又はPD-L1結合アンタゴニストであることが好ましく、PD-L1結合アンタゴニストであることがより好ましい。PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体であることが好ましく、MDX-1106(ニボルマブ)、又はMK-3475(ペンブロリズマブ)であることがより好ましい。PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体であることが好ましく、アテゾリズマブであることがより好ましい。
【0034】
分子標的剤は、商業的供給業者から手に入れることもできるし、公知の方法に従って製造することもできる。
【0035】
ソトラシブ(CAS番号:2296729-00-3、4-((S)-4-アクリロイル-2-メチルピペラジン-1-イル)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンは、下記式(3)で表される化合物である。ソトラシブは、AMG510、又はLumakrasとして用いられている。
【化5】
【0036】
アダグラシブ(CAS番号:2326521-71-3、MRTX849、2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-1-(2-フルオロアクリロイル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリルは、下記式(4)で表される化合物である。
【化6】
【0037】
RMC-4550(CAS番号:2172651-73-7、3-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカ-8-イル]-6-(2,3-ジクロロフェニル)-5-メチル-2-ピラジンメタノール)は、下記式(5)で表される化合物である。
【化7】
【0038】
TNO155(CAS番号:1801765-04-7、(3S,4S)-8-(6-アミノ-5-((2-アミノ-3-クロロピリジン-4-イル)チオ)ピラジン-2-イル)-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-4-アミン)は、下記式(6)で表される化合物である。
【化8】
【0039】
SHP099(CAS番号:1801747-42-1、6-(4-アミノ-4-メチル-1-ピペリジニル)-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2-ピラジンアミン)は、下記式(7)で表される化合物である。
【化9】
【0040】
NSC-87877(CAS番号:56990-57-9、8-ヒドロキシ-7-[2-(6-スルホ-2-ナフタレニル)ジアゼニル]-5-キノリンスルホン酸)は、下記式(8)で表される化合物である。
【化10】
【0041】
RMC-4630は、非特許文献1に記載されている化合物である。
【0042】
ソラフェニブ(CAS番号:284461-73-0、4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミドは、下記式(9)で表される化合物である。ソラフェニブは、ソラフェニブトシル酸塩、又はネクサバールとして用いられている。
【化11】
【0043】
パゾパニブ(CAS番号:444731-52-6、5-[[4-[(2,3-ジメチルインダゾール-6-イル)-メチル-アミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-ベンゼンスルホンアミドは、下記式(10)で表される化合物である。パゾパニブは、パゾパニブ塩酸塩、又はヴォトリエントとして用いられている。
【化12】
【0044】
スニチニブ(CAS番号:557795-19-4、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-5-[(Z)-(5-フルオロ-2-オキソ-インドリン-3-イリデン)メチル]-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、下記式(11)で表される化合物である。スニチニブは、スニチニブリンゴ酸塩、又はスーテントとして用いられている。
【化13】
【0045】
アキシチニブ(CAS番号:319460-85-0 、N-メチル-2-[[3-[(E)-2-(2-ピリジル)ビニル]-1H-インダゾール-6-イル]スルファニル]ベンズアミドは、下記式(12)で表される化合物である。アキシチニブは、インライタとして用いられている。
【化14】
【0046】
レゴラフェニブ(CAS番号:755037-03-7、4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]-3-フルオロ-フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミド)は、下記式(13)で表される化合物である。レゴラフェニブは、レゴラフェニブ水和物、又はスチバーガとして用いられている。
【化15】
【0047】
ベバシズマブは、日本医薬品一般的名称(Japanese Accepted Names for Pharmaceuticals、略してJAN)ベバシズマブ、またはCAS Registry番号216974-75-3、またはINN名Bevacizumabで示される抗体である。ベバシズマブはまた、遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体であり、マウス抗ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体の相補性決定部、ヒトフレームワーク部及びヒトIgG1の定常部からなる。Bevacizumabは,チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。ベバシズマブは、453個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本及び214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本で構成される糖タンパク質(分子量:約149,000)である。「ベバシズマブ」には、バイオシミラーのベバシズマブも含まれている。
【0048】
GDC-1971(CAS番号:2377352-49-1、(R)-1’-(3-(3,4-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-1(2H)-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピラジン-6-イル)-3H-スピロ[ベンゾフラン-2,4’-ピペリジン]-3-アミンは、下記式(14)で表される化合物である。
【化16】
【0049】
分子標的剤の投与量は、投与される対象の体重1kg当たり、1日0.005~300mg(0.005~300mg/kg/day)が好ましく、0.01~250mg/kg/dayがより好ましく、0.02~200mg/kg/dayが更に好ましい。分子標的剤の投与量がこれらの範囲にあると、がんの治療又は予防効果がより高まる。分子標的剤の投与回数は、例えば、1週間に1回以上とすることができ、1週間に2回とすることができる。
【0050】
第一成分及び第二成分の投与量は、投与される対象の体重1kg当たり、それぞれ、第一成分が0.0001~50mg/kg/day及び第二成分が0.005~300mg/kg/dayが好ましく、第一成分が0.001~2mg/kg/day及び第二成分が0.01~250mg/kg/dayがより好ましく、第一成分が0.002~0.2mg/kg/day及び第二成分が0.02~200mg/kg/dayが更に好ましい。第一成分及び第二成分の投与量がこれらの範囲にあると、がんの治療又は予防効果がより高まる。用量及び用法は、AUC、Cmax等の血中薬物濃度及び患者の状態を観察しながら、適宜調節することができる。適切な投与量及び投与回数(投与頻度)は、例えば、分子標的薬の添付文書を参照することもできる。
【0051】
本発明において、投与方法としては、経口的、直腸的、非経口的(静脈内的、筋肉内的、皮下的、経皮吸収的)、槽内的、膣内的、腹腔内的、膀胱内的、又は局所的(注射、点滴、散剤、軟膏、ゲル又はクリーム)投与及び吸入(口腔内又は鼻スプレー)などが挙げられる。その投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、水性及び非水性の経口用溶液及び懸濁液、及び個々の投与量に小分けするのに適応した容器に充填した非経口用溶液が挙げられる。また投与形態は、皮下移植のような調節された放出処方物を包含する種々の投与方法に適応させることもできる。上述した投与方法は、第一成分と第二成分とに等しく適用できる。第一成分及び第二成分は薬剤として使用することができ、製剤または配合剤として投与することができる。
【0052】
第一成分を、例えば上記の投与方法のいずれかとし、第二成分を、例えば第一成分の投与方法と同一又は異なる投与方法とすることができる。第一成分と第二成分との投与の間隔は、例えば0日~14日の間隔、0日~10日の間隔、又は0日~7日の間隔とすることができる。投与の間隔は、例えば、AUC、Cmax、Tmax、消失半減期、対象の健康状態を指標に決定できる。例えば、第一成分が経口(錠剤、カプセル剤等)及び第二成分が点滴でそれぞれ投与されることができる。例えば、第一成分及び第二成分がいずれも経口(錠剤、カプセル剤等)で投与されることもできる。例えば、第一成分が点滴及び第二成分が経口(錠剤、カプセル剤等)でそれぞれ投与されることもできる。例えば、第一成分及び第二成分がいずれも点滴で投与されることもできる。このような場合、第一成分及び第二成分は、1日2回、1日1回、1週1回、2週1回などの任意の間隔で投与されてよい。より具体的には、第一成分と第二成分とがいずれも1日1回投与されてよく、この場合、食前、食間、又は食後に投与されてよい。食前、食間、又は食後とは、朝食、昼食、夕食、夜食、又は間食のいずれかの食前、食間、又は食後であってよい。第一成分と第二成分との投与間隔が24時間以内であれば、両者が1日1回投与されたことになりうる。必要に応じて、第一成分及び第二成分がそれぞれ、1日2回及び1日1回投与されること、1日1回及び1日1回投与されること、1日1回及び1日2回投与されること、1日1回及び2日に1回投与されること、1日1回及び3日に1回投与されること、1日1回及び7日に1回投与されること、並びに、1日2回及び7日に1回投与されることもある。必要に応じて、化合物1及び/又は分子標的剤の、AUC、Cmax、Tmaxもしくは消失半減期、又は患者の健康状態に基づき、第二成分の投与間隔のみを増減することも、第一成分の投与間隔のみを増減することもできる。第一成分の投与開始日に第二成分を投与開始してもよく、第一成分の投与開始日と第二成分の投与開始日とが別であってもよい。投与期間は7日間を1クールとし、総クール数は1クール以上とすることができ、2クール以上とすることもできる。また、各クールは連続して行っても、休薬期間を設けてもよい。クールの途中で休薬期間を設けてもよい。必要に応じて、クール中に第一成分のみを継続投与して第二成分を休薬することも、第一成分のみを休薬して第二成分を継続投与することもできる。第一成分及び第二成分を、同じ錠剤、カプセル剤等に含めることもできる。
【0053】
本発明において、医薬製剤は、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物や分子標的剤などの有効成分に対して、医薬的に許容し得る担体を導入し、公知の方法で製剤化することができる。製剤化には、通常用いられる、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、着香料及び必要に応じて安定剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、保存剤、酸化防止剤などを使用することができ、一般に医薬製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することができる。製剤においては、医薬品に使用される有効成分を、公知の方法により、その使用方法や使用目的に応じて、最適な形状や性状、すなわち剤形に加工することができる。一般的に使用される剤形には、注射剤、懸濁剤、乳剤、点眼剤等の液状の医薬品製剤(液剤)及び錠剤、散剤、細粒、顆粒、コーティング錠、カプセル剤、ドライシロップ、トローチ剤、坐剤等の固形の医薬品製剤(固形製剤)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、化合物1若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物や分子標的剤に例示される有効成分を含む製剤を本発明の医薬として使用することができる。
【0054】
本発明の治療又は予防用医薬は、第一成分及び第二成分のいずれか又は両方を、医薬として許容される添加剤と混合して用いてもよい。医薬として許容される添加剤は、当業者であれば周知な添加剤を適宜選択し、必要に応じて複数の添加剤を適宜用いることができる。添加剤は、経口剤又は注射剤によって、適宜選択され、例えば水、エタノール、生理食塩水、流動パラフィン、界面活性剤、ショ糖等と混合したものであってよく、得られた混合物をカプセルに封入したものであってよい。
【0055】
がんは、固形がん及び血液がんに分類することができ、いずれのタイプも、制御不能に増殖する異常な細胞で構成される。固形がんは1つ又は多数の腫瘤を形成するが、血液がんは血流を介して全身を循環する。がんの例としては、固形がん及び血液がんが挙げられる。がんは、例えば、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部がん、白血病、悪性リンパ腫及び多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。好ましくは、がんは、肺がん、卵巣がん、大腸がん、及び膵がんからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0056】
がんは、RAS遺伝子の異常又はMAPK/ERK経路の異常に関連するがんであってよい。MAPK/ERK経路の異常としては、MAPK/ERK経路の異常な活性化が挙げられ、MAPK/ERK経路上に存在するたんぱく質が発現増加することによるMAPK/ERK経路の異常な活性化、MAPK/ERK経路上に存在するたんぱく質をコードする遺伝子の変異によるMAPK/ERK経路の異常な活性化、RAF遺伝子の異常によるMAPK/ERK経路の異常な活性化等が例示される。
【0057】
「異常」とは、細胞内のさまざまな染色体、遺伝子、タンパク質、及びシグナル伝達カスケードが正常な働きや制御から乖離している状態を指し、通常、これらの恒常的活性化が引き金となって起こる。
【0058】
「異常な活性化」とは、細胞内のさまざまな染色体、遺伝子、タンパク質及びシグナルカスケードが正常細胞よりも活性化されている状態を指し、例えば、遺伝子の変異が原因の1つである場合があり(Cancer Metastasis Rev, 2013, 32, 147-162)、細胞における変異体の関与を直接定量的に測定するために、例えば、LC/MS-MSベースアッセイによって細胞活性化を測定することができる(Cancer Discov., 2016, 6, 316-329)。
【0059】
「タンパク質の発現増加」とは、MAPK/ERK経路に関与するタンパク質(例えば、KRAS、NRAS、HRAS、KRAS-GTP、NRAS-GTP、HRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKT、及びpMEK)の発現増加等、生細胞におけるタンパク質の合成及び発現増加をいう。タンパク質が発現増加していることは、ウェスタンブロット法や免疫組織化学染色(IHC)等によりタンパク質を測定し、正常細胞のタンパク質と比較することにより確認することができる(Nat.Rev.Drug Discov., 2020, 19,533-552, Molecular Cytogenetics, 2015, 8:103)。
【0060】
「遺伝子の変異」とは、ある塩基配列の特定の塩基が、対応する野生型の塩基配列の塩基と異なることを意味する。
【0061】
本発明における「がんの治療」は、個体のがん細胞数が減少すること、がん細胞の増殖が抑制されること、腫瘍体積が減少すること、腫瘍重量が減少すること、がん細胞の転移を抑制すること、またはがんに起因する様々な症状が改善されることを意味する。また、本発明における「がんの予防」は、減少したがん細胞が再度増殖することによるがん細胞数の増加を防止すること、増殖が抑制されたがん細胞の再増殖を防止すること、減少した腫瘍の体積又は重量が再度増大することを防止すること、を意味する。
【実施例
【0062】
本発明の内容を以下の実施例でさらに説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。全ての化合物および試薬は商業的供給業者から入手するか、公知の方法を用いて合成した。本実施例において、分子標的剤を併用化合物と呼称することがある。本実施例において、「化合物1のナトリウム塩」とは、上記式(2)で表される化合物である。図17においては、「化合物1のナトリウム塩」は「化合物1」と略した。
【0063】
化合物1(2-(4-シクロプロピル-2-フルオロ-アニリノ)-3,4-ジフルオロ-5-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチル]ベンズアミド)及びそのナトリウム塩は、国際公開第2021/149776号公報に記載の方法に準じて製造した。分子標的剤(ソトラシブ、アダグラシブ、TNO155、RMC-4550、GDC-1971及びベバシズマブ)は、商業的供給業者または製造元より供給された。抗PD-L1抗体は市販抗PD-L1抗体(BioXCell社、clone:10F.9G2)の定常領域をマウスに変更したものを作製し、使用した。
【0064】
<薬理学的試験例>
(実施例1:In vitro RASシグナル阻害活性評価)
化合物1、ソトラシブ、アダグラシブ、TNO155又はGDC-1971の単剤処理と、化合物1及びソトラシブの併用処理、化合物1及びアダグラシブの併用処理、化合物1及びTNO155の併用処理、並びに化合物1及びGDC-1971の併用処理とが、ヒトがん細胞に与える影響を評価した。より具体的には、ヒトがん細胞内で、上述した単剤処理及び併用処理がMEK及びERKのリン酸化に与える影響、及び、KRASとGTPとの結合に与える影響を、ウェスタンブロット法により評価した。
【0065】
ヒトがん細胞としては、KRAS変異陽性ヒト肺がん細胞株NCI-H2122(KRAS-G12C変異)、NCI-H1373(KRAS-G12C変異)、NCI-H441(KRAS-G12V変異)及びHPAC(KRAS-G12D)(いずれもATCC)を用いた。これら細胞を培地が入った3次元培養プレートPrimeSurface(住友ベークライト)に播種した。使用した培地は表2に示す。細胞が播種された上記プレートを、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した。その後、3nmol/L、10nmol/L、30nmol/L、若しくは300nmol/Lの化合物1、200nmol/Lのソトラシブ、1000nmol/Lのアダグラシブ、1000nmol/LのTNO155、100nmol/LのGDC-1971、300nmol/Lの化合物1及び200nmol/Lのソトラシブ、300nmol/Lの化合物1及び1000nmol/Lのアダグラシブ、10nmol/L若しくは30nmol/Lの化合物1及び1000nmol/LのTNO155、又は、3nmol/L若しくは10nmol/Lの化合物1及び100nmol/LのGDC-1971を細胞に添加した(ここで示された濃度はいずれも最終濃度である。)。これらの単剤処理又は併用処理がなされたプレートを、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで培養し、4時間、24時間又は72時間が経過した時点で細胞を回収した。回収した細胞をプロテアーゼ及びフォスファターゼ阻害剤(ThermoFisher Scientific)を含んだCell Lysis Buffer(Cell Signaling Technology)で溶解し、たんぱく質溶液を得た。
【0066】
得られたたんぱく質溶液の一部から、Active Ras Pull-Down and Detection Kit (ThermoFisher Scientific)により、RASの活性化フォームであるRAS-GTPを回収した。得られたRAS-GTP濃縮溶液と、上記たんぱく質溶液とを用いてSDS-PAGEを実施し、Trans-Blot Turbo Transfer System (Bio-Rad Laboratories)により、泳動されたたんぱく質をPVDF膜に転写した。ブロッキング後、PVDF膜を一次抗体及び二次抗体にこの順で反応させた。Chemi-lumi One Super(ナカライテスク)によりたんぱく質のバンドを化学発光させ、ChemiDoc Touch Imaging System(Bio-Rad Laboratories)により、上記バンドを検出した。
【0067】
使用した一次抗体(4℃、一晩反応)及び二次抗体(室温、45分から60分反応)、各抗体の希釈率を表1に示す。RASシグナル阻害活性評価を行ったウェスタンブロッティングの結果を図1図2及び図3に示す。「KRAS-GTP」は、GTPと結合したKRASを表す。「pMEK」及び「pERK」はそれぞれリン酸化されたMEK及びERKを表す。図1から、化合物1を単剤で処理してから4時間後及び24時間後にpMEK及びpERKが抑制されたことが分かった。ソトラシブ又はアダグラシブを単剤で処理してから4時間後では、KRAS-GTP、pMEK及びpERKが抑制されていたものの、24時間後にはpERKの抑制が減弱したことが認められた。一方で、化合物1とソトラシブ又はアダグラシブとの併用投処理により、pERKは併用処理してから24時間後においても抑制されることが示された。図2及び図3から、化合物1、TNO155又はGDC-1971を単剤で処理することによりpMEK、pERK、DUSP4及びDUSP6が抑制されるものの、pMEK及びpERKの抑制は時間が経過するにつれて減弱する傾向にあることが分かった。化合物1とTNO155又はGDC-1971との併用投処理した際のpMEK、pERK、DUSP4及びDUSP6の抑制の程度は単剤処理と比べて強くなり、時間経過による抑制の減弱が起こりにくくなることが示された。
【0068】
【表1】
【0069】
(実施例2:細胞増殖阻害活性評価)
化合物1、ソトラシブ、アダグラシブ、TNO155、RMC-4550、又はGDC-1971の単剤処理、及び、化合物1とこれらの分子標的剤(併用化合物)との併用処理が、ヒトがん細胞の増殖に与える影響を生存細胞のATP量測定によって評価した。これらの併用化合物及び化合物1については、ジメチルスルホキシド(DMSO)でそれぞれの希釈系列を作製した。ジメチルスルホキシドのみ、あるいは、併用化合物及び/又は化合物1を、液体分注機Echo(LABCYTE)を用いて、U底96穴プレート又はU底384穴プレートに分注した。ジメチルスルホキシドのみ添加したウェル(ジメチルスルホキシド処理ウェル)、あるいは、併用化合物及び/又は化合物1を添加したウェル(化合物処理ウェル)に、表2に記載の、KRAS変異陽性ヒトがん細胞株NCI-H2122、NCI-H358、若しくはMIA PaCa-2(いずれもATCC)、NCI-H1373、NCI-H23、NCI-H1944、A-427、若しくはHPAC(いずれもATCC)、HCC-1171(KCLB)又はGP2d(ECACC)を播種した。がん細胞が播種されたプレートを、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで培養した。培養開始から所定期間経過後に、プレートにCellTitorGlo2.0(Promega)を添加し、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いてATP量を測定した。下記式(1)を用いて細胞増殖阻害活性(Proliferation inhibition(%))を算出した。ここで、所定期間は、併用化合物としてTNO155を用い、細胞株としてNCI-H1373、HCC-1171及びNCI-H23を用いた場合には6日間、その他の場合には7日間とした。
【0070】
【表2】
【0071】
細胞増殖阻害活性(%)=(1-(T-V)/(V-V))×100…(1)
T:化合物処理ウェルの上記所定期間経過後時点におけるATPシグナル値
V:ジメチルスルホキシド処理ウェルの上記所定期間経過後時点におけるATPシグナル値
:細胞未播種ウェルのATPシグナル値
【0072】
併用化合物(ここではソトラシブ又はアダグラシブ)又は化合物1の添加濃度に対する細胞増殖阻害活性をプロットして(不図示)、細胞増殖阻害活性が80%となる併用化合物又は化合物1の濃度(IC80)を算出した。
【0073】
併用処理の効果を評価するため、アイソボログラム(Isobologram)を使用した。結果を図4(a)~(f)に示す。図4(a)、(b)は、細胞株NCI-H2122を用いた細胞増殖阻害活性評価の結果を示すアイソボログラムである。図4(c)、(d)は、細胞株NCI-H358を用いた細胞増殖阻害活性評価の結果を示すアイソボログラムである。図4(e)、(f)は、細胞株MIA PaCa-2を用いた細胞増殖阻害活性評価の結果を示すアイソボログラムである。図4(a)、(c)、(e)では併用化合物としてソトラシブが処理された。図4(b)、(d)、(f)では併用化合物としてアダグラシブが処理された。図4(a)~(f)において、グラフの横軸は化合物1の最終濃度(μmol/L)であり、縦軸はソトラシブ又はアダグラシブの最終濃度(μmol/L)である。図4(a)~(f)中の破線は、化合物1とソトラシブ又はアダグラシブとの相互作用が相加的である場合の、化合物1の濃度とソトラシブ又はアダグラシブの濃度との全ての組み合わせを示す。化合物1の濃度に対する、ソトラシブ又はアダグラシブのIC80をグラフにプロットした。それらのプロットがアイソボログラムの破線よりも下側に位置した場合、化合物1とソトラシブ又はアダグラシブとを組み合わせた場合に相乗効果があると判断した。
【0074】
細胞増殖阻害活性が50%となる併用化合物(ここではTNO155、RMC-4550、又はGDC-1971)又は化合物1の濃度(IC50)を算出した。IC50に関しても、IC80と同様にアイソボログラムによる解析を行った。アイソボログラムによる解析結果を図5~16の(a)に示した。図5の各図は、細胞株NCI-H2122を用い、併用化合物としてTNO155を処理した場合の結果を示す。図6の各図は、細胞株NCI-H358を用い、併用化合物としてTNO155を処理した場合の結果を示す。図7の各図は、細胞株NCI-H2122を用い、併用化合物としてRMC-4550を処理した場合の結果を示す。図8の各図は、細胞株NCI-H358を用い、併用化合物としてRMC-4550を処理した場合の結果を示す。図9の各図は、細胞株NCI-H1373を用い、併用化合物としてTNO155を処理した場合の結果を示す。図10の各図は、細胞株HCC-1171を用い、併用化合物としてTNO155を処理した場合の結果を示す。図11の各図は、細胞株NCI-H23を用い、併用化合物としてTNO155を処理した場合の結果を示す。図12の各図は、細胞株NCI-H1373を用い、併用化合物としてGDC-1971を処理した場合の結果を示す。図13の各図は、細胞株A-427を用い、併用化合物としてGDC-1971を処理した場合の結果を示す。図14の各図は、細胞株NCI-H1944を用い、併用化合物としてGDC-1971を処理した場合の結果を示す。図15の各図は、細胞株GP2dを用い、併用化合物としてGDC-1971を処理した場合の結果を示す。図16の各図は、細胞株HPACを用い、併用化合物としてGDC-1971を処理した場合の結果を示す。図5~16の(a)において、プロット(実線及び/又は点)が破線の下側に位置したことから、化合物1と併用化合物との併用は、相乗的な増殖抑制効果を示すことが分かった。
【0075】
ブリス独立性モデルを使用して、化合物1と、併用化合物(ここではTNO155、RMC-4550、又はGDC-1971)との併用効果を評価した。まず、ブリスインデックス(EBliss)を下記式(2)を用いて算出した。Eは化合物1をある濃度Cで単剤処理した場合の細胞増殖阻害活性(%)である。Eは併用化合物をある濃度Cで単剤処理した場合の細胞増殖阻害活性(%)である。EBlissは、化合物1と併用化合物との併用による効果が相加的である場合の計算値(理論値)である。
Bliss=E+E-(E×E)÷100…(2)
【0076】
次に、下記式(3)に従ってExcess over Bliss score(EOB)を求めた。Excess over Bliss score(EOB)は、化合物1及び併用化合物を併用処理した場合に得られた細胞増殖阻害EA+B(%)と、上記式(2)により得られたブリスインデックスとの差である。EOBが正の値である場合は相乗効果があると判定した。
EOB=EA+B-EBliss…(3)
【0077】
EOBを図5~16の(c)に示した。全体として正のEOBを示す濃度の組み合わせが多いことから、化合物1と併用化合物との併用は相乗的な増殖抑制効果を持つことが示された。
【0078】
(実施例3:in vivo抗腫瘍活性評価)
化合物1のナトリウム塩、ソトラシブ、又はアダグラシブを単剤投与した場合、及び、化合物1のナトリウム塩とこれらの分子標的剤(併用化合物)のそれぞれとを併用投与した場合の、in vivo抗腫瘍活性及び体重変化率を評価した。この評価には、KRAS-G12C変異陽性ヒトがん細胞株MIA PaCa-2又はNCI-H2122(いずれもATCC)を移植したゼノグラフトマウスを用いた。ゼノグラフトマウスは、ヌードマウスの皮下に1匹あたり5×10個のヒト細胞を移植して作製した。細胞移植後、腫瘍体積が200~340mmに到達した時点で、マウスを1群8匹に群分けした。
【0079】
MIA PaCa-2移植モデルでは、化合物1のナトリウム塩及びソトラシブを単剤投与又は併用投与した。化合物1のナトリウム塩及び/又はソトラシブは、1日1回、14日間経口で投与した。化合物1のナトリウム塩は、10% DMSO/10% Cremphor EL/15% HP-β-CD(2-hydroxypropyl―β―cyclodextrin)/15% Polyethlen Glycol-400/50% 注射用蒸留水(溶媒A)に溶解させて投与した。ソトラシブは、1% HPMC(hydroxypropyl methyl cellulose)/1% Tween80/98% 注射用蒸留水(溶媒B)に溶解させて投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、溶媒Bを20ml/kgで投与した。ソトラシブの単剤投与群では、ソトラシブを10mg/kgで、及び、溶媒Aを20ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びソトラシブの併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、ソトラシブを10mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Aを20ml/kgで、及び、溶媒Bを20ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、ソトラシブ、溶媒A、及び/又は溶媒Bは、1日1回、14日間経口で投与した。投与期間終了後に22日間の観察期間を設けた。
【0080】
NCI-H2122移植モデルでは、化合物1のナトリウム塩及びアダグラシブを単剤投与又は併用投与した。化合物1のナトリウム塩及び/又はアダグラシブは、1日1回21日間経口で投与した。化合物1のナトリウム塩は、溶媒Aに溶解させて投与した。アダグラシブは、注射用蒸留水で調製した50mM Citrate buffer(pH5.0)/10%HP-β-CD(2-hydroxypropyl―β―cyclodextrin)(溶媒C)に溶解させて投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kg又は0.75mg/kgで、及び、溶媒Cを20ml/kgで投与した。アダグラシブの単剤投与群では、アダグラシブを100mg/kgで、及び、溶媒Aを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びアダグラシブの併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kg又は0.75mg/kgで、及び、アダグラシブを100mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Aを10ml/kgで、及び、溶媒Cを20ml/kg投与した。化合物1のナトリウム塩、アダグラシブ、溶媒A、及び/又は溶媒Cは、1日1回21日間経口で投与した。
【0081】
下記式(4)を用いてマウスの腫瘍体積を算出し、in vivo抗腫瘍活性評価の結果を図17(a)、及び(c)に示した。図17(a)、及び(b)は細胞株MIA PaCa-2を用いた実験結果、図17(c)、及び(d)は細胞株NCI-H2122を用いた実験結果である。図17(a)、及び(c)の縦軸は、腫瘍体積(Tumor volume(mm))であり、横軸は細胞移植後の日数である。腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)…(4)
【0082】
図17(a)、及び(c)から、Control群と比較し、化合物1のナトリウム塩の単剤投与群、ソトラシブ又はアダグラシブの単剤投与群、及び、化合物1のナトリウム塩とソトラシブ又はアダグラシブとの併用投与群では、腫瘍体積の増加が抑制されたことが分かった。さらに、併用投与群では、単剤投与群と比較して腫瘍体積増加の抑制度合いが大きいことから、化合物1のナトリウム塩とソトラシブ又はアダグラシブとを併用することによって、in vivo抗腫瘍活性が増強されることが示された。
【0083】
マウスの体重を測定し、図17(b)、及び(d)に、化合物1のナトリウム塩、併用化合物、溶媒A、溶媒B及び/又は溶媒Cの投与開始日の体重を基準とした、マウスの体重変化率を示した。図17(b)、及び(d)の縦軸は体重変化率(Relative body weight change(%))であり、横軸は細胞移植後の日数である。図17(b)において、単剤投与群及び併用投与群では、顕著な体重減少が認められなかった。また、図17(d)において、併用投与群では、単剤投与群と比較して、体重減少が軽減されることが確認された。
【0084】
(実施例4:in vivo抗腫瘍活性評価)
化合物1のナトリウム塩とベバシズマブの併用によるin vivo抗腫瘍活性を、KRAS変異陽性ヒトがん細胞株NCI-H441(ATCC)を移植したヌードマウスおよびKRAS変異陽性ヒトがん細胞株OV56(ECACC)を移植したSCIDマウスを用いて評価した。マウスの皮下に1匹あたり各細胞を5×10個で移植し、腫瘍体積が200~300mmに到達した時点で、マウスを1群5匹に群分けした。
【0085】
NCI-H441移植モデル及びOV56移植モデルでは、化合物1のナトリウム塩及びベバシズマブを単剤投与又は併用投与した。化合物1のナトリウム塩は、溶媒Aに溶解させて投与した。ベバシズマブは、生理食塩水で希釈して投与した。
【0086】
NCI-H441移植モデルでは、以下のように投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.0625mg/kgで投与した。ベバシズマブの単剤投与群では、ベバシズマブを2.5mg/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びベバシズマブの併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.0625mg/kgで、及び、ベバシズマブを2.5mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Aを20ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、及び、溶媒Aは、1日1回、10日間経口で投与した。ベバシズマブは、週に2回のペースで腹腔内注射にて投与した。
【0087】
OV56移植モデルでは以下のように投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、生理食塩水を10ml/kgで投与した。ベバシズマブの単剤投与群では、ベバシズマブを2.5mg/kgで、及び、溶媒Aを20ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びベバシズマブの併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、ベバシズマブを2.5mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Aを20ml/kgで、及び、生理食塩水を10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、及び、溶媒Aは、1日1回、10日間経口で投与した。ベバシズマブ、及び、生理食塩水は、週に2回のペースで腹腔内注射にて投与した。
【0088】
式(4)を用いてマウスの腫瘍体積を算出し、in vivo抗腫瘍活性評価の結果を図18(a)、及び(b)に示した。図18(a)は細胞株NCI-H441を用いた実験結果、図18(b)は細胞株OV56を用いた実験結果である。図18(a)、及び(b)の縦軸は、腫瘍体積(Tumor volume(mm))であり、横軸は細胞移植後の日数である。
【0089】
図18(a)、及び(b)から、Control群と比較し、化合物1のナトリウム塩の単剤投与群、ベバシズマブの単剤投与群、及び、化合物1のナトリウム塩とベバシズマブとの併用投与群では、腫瘍体積の増加が抑制されたことが分かった。さらに、併用投与群では、単剤投与群と比較して腫瘍体積増加の抑制度合いが大きいことから、化合物1のナトリウム塩とベバシズマブとを併用することによって、in vivo抗腫瘍活性が増強されることが示された。
【0090】
(実施例5:in vivo抗腫瘍活性評価)
化合物1のナトリウム塩とTNO155の併用によるin vivo抗腫瘍活性を、KRAS変異陽性ヒトがん細胞株NCI-H1373、NCI-H358及びNCI-H441(いずれもATCC)のいずれかを移植したヌードマウスを用いて評価した。マウスの皮下に1匹あたり5×10個でNCI-H1373細胞を、1×10個でNCI-H358細胞を、又は5×10個でNCI-H441細胞を移植し、腫瘍体積がおおよそ150~300mmに到達した時点で、マウスを1群5匹に群分けした。
【0091】
NCI-H1373、NCI-H358及びNCI-H441移植モデルでは、化合物1のナトリウム塩及びTNO155を単剤投与又は併用投与した。化合物1のナトリウム塩は、溶媒Aに溶解させて投与した。TNO155は、注射用蒸留水で調製した0.5% Tween 80、0.5% methyl cellulose(溶媒D)で希釈して投与した。
【0092】
NCI-H1373移植モデルでは、以下のように投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、溶媒Dを10ml/kgで投与した。TNO155の単剤投与群では、TNO155を10mg/kgで、及び、注射用蒸留水で調製した10% DMSO、5% Cremophor EL(溶媒E)を10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びTNO155の併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、TNO155を10mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Eを10ml/kgで、溶媒Dを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、及び、溶媒Eは、1日1回、30日間経口で投与した。TNO155、及び、溶媒Dは、1日2回、30日間経口で投与した。
【0093】
NCI-H358移植モデルでは、以下のように投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、溶媒Dを10ml/kgで投与した。TNO155の単剤投与群では、TNO155を5mg/kgで、及び、溶媒Aを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びTNO155の併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.25mg/kgで、及び、TNO155を5mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Aを10ml/kgで、溶媒Dを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、及び、溶媒Aは、1日1回、21日間経口で投与した。TNO155、及び、溶媒Dは、1日2回、21日間経口で投与した。
【0094】
NCI-H441移植モデルでは、以下のように投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.125mg/kg又は0.25mg/kgで、及び、溶媒Dを10ml/kgで投与した。TNO155の単剤投与群では、TNO155を5mg/kg又は10mg/kgで、及び、溶媒Aを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及びTNO155の併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を0.125mg/kg又は0.25mg/kgで、及び、TNO155を5mg/kg又は10mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Aを10ml/kgで、溶媒Dを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、及び、溶媒Aは、1日1回、13日間経口で投与した。TNO155、及び、溶媒Dは、1日2回、13日間経口で投与した。
【0095】
式(4)を用いてマウスの腫瘍体積を算出し、in vivo抗腫瘍活性評価の結果を図19A図19B、及び図19Cに示した。図19Aは細胞株NCI-H1373を用いた実験結果、図19Bは細胞株NCI-H358を用いた実験結果、図19Cは細胞株NCI-H441を用いた実験結果である。図19C(a)は、化合物1のナトリウム塩の投与量が0.125mg/kgかつTNO155の投与量が5mg/kgの実験結果であり、図19C(b)は、化合物1のナトリウム塩の投与量が0.125mg/kgかつTNO155の投与量が10mg/kgの実験結果であり、図19C(c)は、化合物1のナトリウム塩の投与量が0.25mg/kgかつTNO155の投与量が5mg/kgの実験結果であり、図19C(d)は、化合物1のナトリウム塩の投与量が0.25mg/kgかつTNO155の投与量が10mg/kgの実験結果である。また、図19C(a)~(d)において、「化合物1」は、化合物1のナトリウム塩の単剤投与群を表し、「TNO」はTNO155の単剤投与群を表し、「Combo」は化合物1のナトリウム塩及びTNO155の併用投与群を表し、「Control」はControl群を表す。図19A図19B、及び図19Cの縦軸は、腫瘍体積(Tumor volume(mm))であり、横軸は細胞移植後又は投与開始後の日数である。
【0096】
図19A図19B、及び図19Cから、Control群と比較し、化合物1のナトリウム塩の単剤投与群、TNO155の単剤投与群、及び、化合物1のナトリウム塩とTNO155との併用投与群では、腫瘍体積の増加が抑制されたことが分かった。さらに、併用投与群では、単剤投与群と比較して腫瘍体積増加の抑制度合いが大きいことから、化合物1のナトリウム塩とTNO155とを併用することによって、in vivo抗腫瘍活性が増強されることが示された。
【0097】
(実施例6:in vivo抗腫瘍活性評価)
化合物1のナトリウム塩と抗PD-L1抗体の併用によるin vivo抗腫瘍活性を、KRAS変異陽性マウス結腸がん細胞株CT26(Crown Bioscience)を移植したBALB/Cマウス及びKRAS変異陽性マウス肺がん組織片mLU6054(Crown Bioscience)を移植したC57BL/6Jマウスを用いて評価した。マウスの皮下に1匹あたり5×10個のCT26細胞又は直径2~3mmのmLU6054組織片を移植し、腫瘍体積がおおよそ60~85mmに到達した時点で、マウスを1群8匹に群分けした。
【0098】
CT26及びmLU6054移植モデルでは、化合物1のナトリウム塩及び抗PD-L1抗体を単剤投与又は併用投与した。化合物1のナトリウム塩は、溶媒Eに溶解させて投与した。抗PD-L1抗体は、PBSで希釈して投与した。
【0099】
CT26及びmLU6054移植モデルでは、以下のように投与した。化合物1のナトリウム塩の単剤投与群では、化合物1のナトリウム塩を1mg/kgで、及び、PBSを10ml/kgで投与した。抗PD-L1抗体の単剤投与群では、抗PD-L1抗体を10mg/kgで、及び、溶媒Eを20ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩及び抗PD-L1抗体の併用投与群では、化合物1のナトリウム塩を1mg/kgで、及び、抗PD-L1抗体を10mg/kgで投与した。Control群には、溶媒Eを20ml/kgで、及び、PBSを10ml/kgで投与した。化合物1のナトリウム塩、及び、溶媒Eは、1日1回、21日間経口で投与した。抗PD-L1抗体、及び、PBSは、週2回、21日間静脈注射で投与した。
【0100】
式(4)を用いてマウスの腫瘍体積を算出し、in vivo抗腫瘍活性評価の結果を図20(a)、及び(b)に示した。図20(a)はCT26を用いた実験結果、図20(b)はmLU6054を用いた実験結果である。図20(a)、及び(b)の縦軸は、腫瘍体積(Tumor volume(mm))であり、横軸は投与開始後の日数である。
【0101】
図20(a)、及び(b)から、Control群と比較し、化合物1のナトリウム塩の単剤投与群、抗PD-L1抗体の単剤投与群、及び、化合物1のナトリウム塩と抗PD-L1抗体との併用投与群では、腫瘍体積の増加が抑制されたことが分かった。さらに、併用投与群では、単剤投与群と比較して腫瘍体積増加の抑制度合いが大きいことから、化合物1のナトリウム塩と抗PD-L1抗体とを併用することによって、in vivo抗腫瘍活性が増強されることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20