(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】広告配信装置、広告配信方法及び広告配信プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20241003BHJP
H04H 60/46 20080101ALI20241003BHJP
H04H 60/63 20080101ALI20241003BHJP
H04H 60/66 20080101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q30/0241 396
H04H60/46
H04H60/63
H04H60/66
(21)【出願番号】P 2019123064
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-03-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月26日にQubits Europe 2019にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】518135412
【氏名又は名称】株式会社リクルート
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 耕太郎
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】古川 哲也
【審判官】梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004375(JP,A)
【文献】特開2017-054436(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235568(WO,A1)
【文献】谷口 行信,ディジタルサイネージの放映計画最適化,電子情報通信学会論文誌(J94-D),社団法人電子情報通信学会,2011年11月1日,Vol.J94-D,No.11,pp.1866-1875,ISSN:1880-4535
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
H04H60/00-60/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局の集合Tに含まれる1つの放送局jが放送する複数の番組の集合をP
j
、前記集合Tに含まれる全ての放送局についてのP
j
の集合をP、Pに含まれる1つの番組をpとし、番組pに配信する広告の回数をw
pと仮定し、複数の視聴者のうちの視聴者vが番組pの視聴中に前記広告を視聴する割合の推定値r
v,pと前記w
pを用いて、
前記Pに含まれる番組p全体で視聴者vが前記広告を視聴する回数の期待値を算出する第1算出部と、
前記複数の視聴者のうち、前記期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出する第2算出部と、
番組pに前記広告を
1回配信する費用をb
p、
放送局jが放送する複数の番組に対して前記広告を配信するための予算をB
jとした場合に、集合Tに含まれる
各放送局
jにおいて
、前記P
j
に含まれる全ての番組pについてのb
pとw
pの積
の和が予算B
j以下となる条件のもと、
前記Pに含まれる番組p全体で視聴者vが前記広告を視聴する回数の期待値が前記閾値以上となる視聴者の数が最も大きくなるように、各々の番組に配信する前記広告の回数w
pの最適解を算出する決定部と、
を備える広告配信装置。
【請求項2】
前記決定部による前記最適解の算出の後、前記期待値に基づいて、前記複数の視聴者の中から1以上の視聴者を選択し、選択された視聴者が各々の番組において前記広告を視聴する割合に基づいて、前記複数の番組の中から1以上の番組を選択する選択部と、
各々の番組に配信する前記広告の回数を所定回数だけ増やすか否かを表す第1二値変数と、各々の番組に配信する前記広告の回数を所定回数だけ減らすか否かを表す第2二値変数とを調整し、
集合Tに含まれる各放送局jにおいて、前記P
j
に含まれる全ての番組pについてのb
p
とw
p
の積の和が予算B
j
以下となる条件のもと、前記選択された視聴者のうち、前記期待値が前記閾値以上となる視聴者の数が
前記決定部において得られた最適解での視聴者の数よりも大きくなるように、前記第1二値変数及び前記第2二値変数の組合せを最適化する修正部とを備え、
前記修正部は、前記選択された視聴者のうち、前記期待値が前記閾値以上となる視聴者の数を表す項を含むハミルトニアンの基底状態を量子アニーリングによって求めることで、前記第1二値変数及び前記第2二値変数の組合せを最適化する、
請求項1に記載の広告配信装置。
【請求項3】
前記ハミルトニアンは、前記期待値が前記閾値以上であるか否かを表す第3二値変数の一次項と、前記第1二値変数、前記第2二値変数及び前記第3二値変数の二次項とを含む、
請求項2に記載の広告配信装置。
【請求項4】
前記第3二値変数は、前記選択された視聴者が前記期待値を表す複数の二値変数の一部であり、
前記ハミルトニアンは、前記複数の二値変数に関する第1の拘束条件を表す項を含み、
前記第1の拘束条件は、前記複数の二値変数によって前記期待値が表されるように拘束する、
請求項3に記載の広告配信装置。
【請求項5】
前記ハミルトニアンは、前記第1二値変数及び前記第2二値変数を含む
予算に関する第2の拘束条件を表す項を含み、
前記第2の拘束条件は、前記広告の回数の修正による
集合Tに含まれる各放送局jの予算B
j
の変化が±0となるように拘束する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の広告配信装置。
【請求項6】
前記決定部は、貪欲法によって、
集合Tに含まれる各放送局jにおいて、前記P
j
に含まれる全ての番組pについてのb
p
とw
p
の積の和が予算B
j
以下となる条件のもと、前記期待値が前記閾値以上となる視聴者の数がより大きくなるように、各々の番組に配信する前記広告の回数を最適化する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の広告配信装置。
【請求項7】
コンピュータが、放送局の集合Tに含まれる1つの放送局jが放送する複数の番組の集合をP
j
、前記集合Tに含まれる全ての放送局についてのP
j
の集合をP、Pに含まれる1つの番組をpとし、番組pに配信する広告の回数をw
pと仮定し、複数の視聴者のうちの視聴者vが番組pの視聴中に前記広告を視聴する割合の推定値r
v,pと前記w
pを用いて、
前記Pに含まれる番組p全体で視聴者vが前記広告を視聴する回数の期待値を算出することと、
コンピュータが、前記複数の視聴者のうち、前記期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出することと、
コンピュータが、番組pに前記広告を
1回配信する費用をb
p、
放送局jが放送する複数の番組に対して前記広告を配信するための予算をB
jとした場合に、集合Tに含まれる
各放送局
jにおいて
、前記P
j
に含まれる全ての番組pについてのb
pとw
pの積
の和が予算B
j以下となる条件のもと、
前記Pに含まれる番組p全体で視聴者vが前記広告を視聴する回数の期待値が前記閾値以上となる視聴者の数が最も大きくなるように、各々の番組に配信する前記広告の回数w
pの最適解を算出することと、
を含む広告配信方法。
【請求項8】
広告配信装置に備えられた演算部を、
放送局の集合Tに含まれる1つの放送局jが放送する複数の番組の集合をP
j
、前記集合Tに含まれる全ての放送局についてのP
j
の集合をP、Pに含まれる1つの番組をpとし、番組pに配信する広告の回数をw
pと仮定し、複数の視聴者のうちの視聴者vが番組pの視聴中に前記広告を視聴する割合の推定値r
v,pと前記w
pを用いて、
前記Pに含まれる番組p全体で視聴者vが前記広告を視聴する回数の期待値を算出する第1算出部、
前記複数の視聴者のうち、前記期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出する第2算出部、及び
番組pに前記広告を
1回配信する費用をb
p、
放送局jが放送する複数の番組に対して前記広告を配信するための予算をB
jとした場合に、集合Tに含まれる
各放送局
jにおいて
、前記P
j
に含まれる全ての番組pについてのb
pとw
pの積
の和が予算B
j以下となる条件のもと、
前記Pに含まれる番組p全体で視聴者vが前記広告を視聴する回数の期待値が前記閾値以上となる視聴者の数が最も大きくなるように、各々の番組に配信する前記広告の回数w
pの最適解を算出する決定部、
として機能させる広告配信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告配信装置、広告配信方法及び広告配信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ、ラジオ及びインターネット等の放送媒体を通じて、商品やサービスの広告が配信されている。広告主又は広告会社は、広告を視聴させたいターゲット及び広告の費用を勘案して、広告を放送する時間枠を決定する。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ターゲット視聴率を所定の精度よりも高い精度で予測する高度視聴率予測装置と、広告枠毎に広告枠に対する素材の割り付けを再配分し、再配分後の各広告枠の素材指定を送信するターゲットアクチュアル最適化装置とを備える広告枠最適化システムが記載されている。
【0004】
また、下記非特許文献1には、ブランドを認知するために必要とされる広告の視聴回数に関する研究結果が記載されている。下記非特許文献1によれば、ブランドを認知するために必要とされる広告の視聴回数は、3~4回である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Igor Makienko, "Effective frequency estimates in local media planning practice," Journal of Targeting, Measurement and Analysis for Marketing, Volume 20, Issue 1, pp 57-65, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
広告を、いずれの番組に、何回放送するかを決定する場合、予算の制約条件を満たすように、広告が視聴される回数の全視聴者に関する期待値を最大化するという方法を用いることが考えられる。このような最適化問題は、例えば貪欲法を用いて解くことができる。
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載されているように、商品やサービスのブランドを認知させるためには、広告の視聴回数が3~4回程度となればよく、必ずしも視聴回数を最大化しなくてもよいことがある。仮に、広告の配信回数を増やしても、既にブランドを認知している視聴者の広告視聴回数が増えるだけであれば、予算を効率的に使用できていないことになる。
【0009】
そこで、本発明は、より多くの視聴者にブランドが認知されるように広告を配信することができる広告配信装置、広告配信方法及び広告配信プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る広告配信装置は、複数の番組に配信する広告の回数を仮定して、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を算出する第1算出部と、複数の視聴者のうち、期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出する第2算出部と、所定の予算内で、期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を決定する決定部と、を備える。
【0011】
この態様によれば、複数の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数が大きくなるように、複数の番組に配信する広告の回数を決定することで、より多くの視聴者にブランドが認知されるように広告を配信することができる。
【0012】
上記態様において、期待値に基づいて、複数の視聴者のうち一部の視聴者を選択する選択部と、所定の予算内で、一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を修正する修正部と、をさらに備えてもよい。
【0013】
この態様によれば、広告を視聴する回数の期待値が閾値付近である一部の視聴者について、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を修正することで、複数の視聴者全員について最適化する場合よりも計算量を抑えつつ、ブランドを認知する視聴者がより多くなるように広告を配信することができる。
【0014】
上記態様において、選択部は、一部の視聴者が複数の番組において広告を視聴する割合に基づいて、複数の番組のうち一部の番組を選択し、修正部は、所定の予算内で、一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、一部の番組に配信する広告の回数を修正してもよい。
【0015】
この態様によれば、一部の視聴者が複数の番組において広告を視聴する割合に基づいて選択された一部の番組について、配信する広告の回数を修正することで、複数の番組全てについて最適化する場合よりも計算量を抑えつつ、ブランドを認知する視聴者がより多くなるように広告を配信することができる。
【0016】
上記態様において、修正部は、複数の番組に配信する広告の回数を所定回数だけ増やすか否かを表す第1二値変数と、複数の番組に配信する広告の回数を所定回数だけ減らすか否かを表す第2二値変数とを調整し、所定の予算内で、一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、第1二値変数及び第2二値変数の組合せを最適化してもよい。
【0017】
この態様によれば、配信する広告の回数の修正を二値変数で表すことで、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくする問題を、組合せ最適化問題として定式化して解くことができる。
【0018】
上記態様において、修正部は、一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を表す項を含むハミルトニアンの基底状態を量子アニーリングによって求めることで、第1二値変数及び第2二値変数の組合せを最適化してもよい。
【0019】
この態様によれば、第1二値変数及び第2二値変数の組合せ最適化問題を量子アニーリングによって解くことで、より正確な解をより高速に求めることができる。
【0020】
上記態様において、ハミルトニアンは、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上であるか否かを表す第3二値変数の一次項と、第1二値変数、第2二値変数及び第3二値変数の二次項とを含んでもよい。
【0021】
この態様によれば、第1二値変数、第2二値変数及び第3二値変数の関係を適切に保ち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である視聴者の数を増やすような解を求めることができる。
【0022】
上記態様において、第3二値変数は、一部の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を表す複数の二値変数の一部であり、ハミルトニアンは、複数の二値変数に関する拘束条件を表す項を含んでもよい。
【0023】
この態様によれば、第3二値変数と、一部の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を表す複数の二値変数との関係を適切に保ち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である視聴者の数を増やすような解を求めることができる。
【0024】
上記態様において、ハミルトニアンは、第1二値変数及び第2二値変数を含む所定の予算に関する拘束条件を表す項を含んでもよい。
【0025】
この態様によれば、所定の予算内で、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である視聴者の数を増やすような解を求めることができる。
【0026】
上記態様において、決定部は、貪欲法によって、複数の番組に配信する広告の回数を決定してもよい。
【0027】
この態様によれば、比較的計算量の少ない方法で、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数の近似解を求めることができる。
【0028】
本発明の他の態様に係る広告配信方法は、複数の番組に配信する広告の回数を仮定して、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を算出することと、複数の視聴者のうち、期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出することと、所定の予算内で、期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を決定することと、を含む。
【0029】
この態様によれば、複数の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数が大きくなるように、複数の番組に配信する広告の回数を決定することで、より多くの視聴者にブランドが認知されるように広告を配信することができる。
【0030】
本発明の他の態様に係る広告配信プログラムは、広告配信装置に備えられた演算部を、複数の番組に配信する広告の回数を仮定して、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を算出する第1算出部、複数の視聴者のうち、期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出する第2算出部、及び所定の予算内で、期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を決定する決定部、として機能させる。
【0031】
この態様によれば、複数の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数が大きくなるように、複数の番組に配信する広告の回数を決定することで、より多くの視聴者にブランドが認知されるように広告を配信することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、より多くの視聴者にブランドが認知されるように広告を配信することができる広告配信装置、広告配信方法及び広告配信プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る広告配信システムのネットワーク構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る広告配信装置の機能ブロックを示す図である。
【
図3】本実施形態に係る広告配信装置の物理的構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る広告配信装置によるブランド認知者の増加率と、比較例におけるブランド認知者の増加率とを示す図である。
【
図5】本実施形態に係る広告配信装置による修正前後における複数の視聴者による広告の視聴回数を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る広告配信装置によるテストスコアと予算削減率の関係を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る広告配信装置により実行される広告配信処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る広告配信システム100のネットワーク構成を示す図である。広告配信システム100は、広告配信装置10、ユーザ端末20及び量子アニーリングマシン30を含む。広告配信装置10、ユーザ端末20及び量子アニーリングマシン30は、インターネット等の通信ネットワークNを介して互いに通信可能に構成される。
【0036】
広告配信装置10は、汎用のコンピュータで構成され、複数の番組に配信する広告の回数を決定する。ここで、複数の番組は、テレビ、ラジオ及びインターネットを含む放送媒体で放送される番組であり、広告は、番組の途中に放送される。広告配信装置10は、ユーザ端末20から受け付けた予算に収まるように、複数の番組に配信する広告の回数を決定する。
【0037】
ユーザ端末20は、汎用のコンピュータで構成され、広告主又は広告会社により用いられる。広告主又は広告会社は、ユーザ端末20を用いて、広告の内容及び予算を広告配信装置10に伝送し、広告配信装置10により決定された複数の番組に配信する広告の回数を閲覧する。
【0038】
量子アニーリングマシン30は、イジングモデルのハミルトニアンの基底状態を求める専用コンピュータであり、広告配信装置10により指定されたハミルトニアンの基底状態を求める。広告配信装置10は、複数の視聴者のうち広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数が大きくなるように、近似解法を用いて、複数の番組に配信する広告の回数を決定する。そして、広告配信装置10は、一部の視聴者及び一部の番組に関するハミルトニアンを設定し、量子アニーリングマシン30に当該ハミルトニアンの基底状態を求めさせることで、複数の番組に配信する広告の回数を修正する。
【0039】
なお、量子アニーリングマシン30は、イジングマシンに置き換えることができる。ここで、イジングマシンとは、二値変数を引数とするイジングモデルの目的関数(ハミルトニアン)を最小化又は最大化する二値変数の値を確率的に求める装置である。二値変数は、古典ビットや量子ビットで実現されてよい。イジングマシンは、目的関数がイジングモデルの形式でハードウェアによって実装された非ノイマン型コンピュータであってよく、自然計算(natural computing)を実行する計算機であってよい。イジングマシンは、量子アニーリングマシン30の他、FPGA(Field-Programmable Gate Array)によって構成されてよく、二値変数を引数とする目的関数を最小化又は最大化する二値変数の値を確率的に求めるものであればどのようなハードウェアによって構成されるものであってもよく、目的関数の最小又は最大を求める過程において量子現象を利用していてもよいし、利用していなくてもよい。
【0040】
図2は、本実施形態に係る広告配信装置10の機能ブロックを示す図である。広告配信装置10は、取得部11、第1算出部12、第2算出部13、決定部14、選択部15及び修正部16を備える。
【0041】
取得部11は、ユーザ端末20から、広告の内容及び予算を取得する。取得部11は、外部機器から、複数の視聴者に関する複数の番組の視聴率を取得してもよい。
【0042】
第1算出部12は、複数の番組に配信する広告の回数を仮定して、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を算出する。ここで、複数の番組の集合をPと表し、1つの番組をpと表し、番組pに配信する広告の回数をwpと表し、視聴者をvと表し、視聴者vが番組pにおいて広告を視聴する割合をrv,pと表すとき、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値は、以下の数式(1)のように表される。
【0043】
【0044】
第1算出部12は、視聴者vが番組pにおいて広告を視聴する割合rv,pを、rv,p=rv,p
PRGM×rv,p
Adによって推定してよい。ここで、rv,p
PRGMは、視聴者vが番組pを視聴する確率であり、例えば、Christopher C. Johnson, "Logistic Matrix Factorization for Implicit Feedback Data,"Advances in Neural Information Processing Systems, 27, 2014.に記載されたlogistic matrix factorizationを用いて推定されてよい。また、rv,p
Adは、視聴者vが番組pを視聴している場合に、視聴者vが番組pにおいて広告を視聴する条件付き確率であり、rv,p
Ad=(番組pにおいて広告が視聴される平均回数)/(番組pにおける広告の数)によって推定されてよい。
【0045】
もっとも、第1算出部12は、視聴者vが番組pにおいて広告を視聴する割合rv,pを、rv,p=(視聴者vが番組pで広告を視聴した回数)/(番組pにおける広告の数)によって推定してもよい。また、第1算出部12は、視聴者vが番組pにおいて広告を視聴する割合rv,pを他の方法で推定してもよい。
【0046】
第2算出部13は、複数の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出する。ここで、閾値は、非特許文献1に基づき、3又は4に設定してよいが、他の実数であってもよい。閾値をkと表し、複数の視聴者の集合をVと表し、ステップ関数をHと表すとき、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数は、以下の数式(2)のように表される。なお、ステップ関数は、x≦0の場合にH(x)=0であり、x>0の場合にH(x)=1となる関数である。
【0047】
【0048】
決定部14は、所定の予算内で、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を決定する。ここで、番組pに広告を配信する費用をbpと表し、複数の放送局の集合をTと表し、1つの放送局をjと表し、放送局jが放送する複数の番組の集合をPjと表し、放送局jに関する予算をBjと表すとき、決定部14は、以下の数式(3)で表される最適化問題の解(又は近似解)となるwpを算出する。
【0049】
【0050】
このように、本実施形態に係る広告配信装置10によれば、複数の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数が大きくなるように、複数の番組に配信する広告の回数を決定することで、より多くの視聴者にブランドが認知されるように広告を配信することができる。
【0051】
決定部14は、貪欲法によって、複数の番組に配信する広告の回数を決定してよい。決定部14は、例えば、複数の番組いずれかに広告を一回配信する場合における数式(2)の値(広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数)を算出し、(数式(2)の値)/bpが最も大きくなる番組を、広告の配信先に決定する。同様に、決定部14は、いずれかの番組に広告が一回配信されている状況で、複数の番組いずれかに広告を一回配信する場合における数式(2)の値を算出し、(数式(2)の値)/bpが最も大きくなる番組を、広告の配信先に決定する。決定部14は、このような処理を、予算が尽きるまで繰り返して、複数の番組に配信する広告の回数wpの近似解を得る。このようにして、比較的計算量の少ない方法で、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数の近似解を求めることができる。
【0052】
選択部15は、広告を視聴する回数の期待値に基づいて、複数の視聴者のうち一部の視聴者を選択する。選択部15は、数式(1)で表される広告を視聴する回数の期待値が、[k1,k2]の範囲に属する場合に、当該期待値に対応する視聴者を、一部の視聴者として選択してよい。ここで、任意の正の実数mを用いて、k1=k-m及びk2=k+mと設定してよいが、2つの正の実数m及びnを用いて、k1=k-m及びk2=k+nと設定してもよい。
【0053】
修正部16は、所定の予算内で、選択された一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を修正する。これにより、広告を視聴する回数の期待値が閾値付近である一部の視聴者について、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、複数の番組に配信する広告の回数を修正することで、複数の視聴者全員について最適化する場合よりも計算量を抑えつつ、ブランドを認知する視聴者がより多くなるように広告を配信することができる。
【0054】
選択部15は、選択された一部の視聴者が複数の番組において広告を視聴する割合に基づいて、複数の番組のうち一部の番組を選択してもよい。選択された一部の視聴者の集合をVsubと表すとき、選択部15は、Σv∈Vsubrv,pの値が上位所定割合である番組pを選択してよい。そして、修正部16は、所定の予算内で、選択された一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、一部の番組に配信する広告の回数を修正してよい。これにより、一部の視聴者が複数の番組において広告を視聴する割合に基づいて選択された一部の番組について、配信する広告の回数を修正することで、複数の番組全てについて最適化する場合よりも計算量を抑えつつ、ブランドを認知する視聴者がより多くなるように広告を配信することができる。
【0055】
修正部16は、複数の番組に配信する広告の回数を所定回数だけ増やすか否かを表す第1二値変数と、複数の番組に配信する広告の回数を所定回数だけ減らすか否かを表す第2二値変数とを調整し、所定の予算内で、選択された一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、第1二値変数及び第2二値変数の組合せを最適化してよい。このように、配信する広告の回数の修正を二値変数で表すことで、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくする問題を、組合せ最適化問題として定式化して解くことができる。
【0056】
修正部16は、選択された一部の視聴者のうち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を表す項を含むハミルトニアンの基底状態を量子アニーリングによって求めることで、第1二値変数及び第2二値変数の組合せを最適化してよい。修正部16は、以下の数式(4)で表されるハミルトニアンを量子アニーリングマシン30に設定して、基底状態を求めることで、第1二値変数及び第2二値変数の組合せを最適化してよい。ここで、番組pに配信する広告の回数を所定回数だけ増やすか否かを表す第1二値変数をyp
+と表し、番組pに配信する広告の回数を所定回数だけ減らすか否かを表す第2二値変数をyp
-と表している。また、決定部14により決定された複数の番組に配信する広告の回数における数式(1)の値をcvと表し、選択された一部の番組の集合をPsubと表し、3つのパラメータをα,β,γと表している。
【0057】
【0058】
ハミルトニアンの第二項によって、I(xv)は、視聴者vが広告を視聴する回数の期待値を修正後の値となる。ここで、閾値k=4の場合、I(xv)=xv,1+xv,2+xv,3+xv,4で定義される。そして、視聴者vが広告を視聴する回数の期待値が1(I(xv)=1)の場合を、xv,1=1,xv,2=0,xv,3=0,xv,4=0と表し、視聴者vが広告を視聴する回数の期待値が2(I(xv)=2)の場合を、xv,1=1,xv,2=1,xv,3=0,xv,4=0と表し、視聴者vが広告を視聴する回数の期待値が3(I(xv)=3)の場合を、xv,1=1,xv,2=1,xv,3=1,xv,4=0と表し、視聴者vが広告を視聴する回数の期待値が4(I(xv)=4)の場合を、xv,1=1,xv,2=1,xv,3=1,xv,4=1と表す。このようなエンコード方法をオーダーエンコーディングと呼ぶ。なお、整数値をとるI(xv)を複数の二値変数で表すエンコード方法は他にも存在し、他のエンコード方法を用いてもよい。
【0059】
オーダーエンコーディングを用いることで、xv,4が1であるか否かによって、視聴者vが広告を視聴する回数の期待値が閾値(上記の例ではk=4)以上であるか否かを判定することができる。ハミルトニアンの第一項は、xv,kが1である視聴者vが多いほど小さい値となり、Vsubに属する全ての視聴者について広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である場合に基底状態となることを表している。このようにして、第1二値変数yp
+及び第2二値変数yp
-の組合せ最適化問題を量子アニーリングによって解くことで、より正確な解をより高速に求めることができる。また、より正確な解をより少ない消費電力で求めることができる。
【0060】
ハミルトニアンは、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上であるか否かを表す第3二値変数xv,kの一次項と、第1二値変数yp
+、第2二値変数yp
-及び第3二値変数xv,kの二次項とを含む。これにより、第1二値変数、第2二値変数及び第3二値変数の関係を適切に保ち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である視聴者の数を増やすような解を求めることができる。
【0061】
第3二値変数xv,kは、一部の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を表す複数の二値変数xv,1~xv,kの一部であり、ハミルトニアンは、複数の二値変数xv,1~xv,kに関する拘束条件を表す項を含む。具体的には、複数の二値変数xv,1~xv,kに関する拘束条件を表す項は、第四項であり、複数の二値変数xv,1~xv,kについてオーダーエンコーディングによってI(xv)が表されるように拘束する項である。これにより、第3二値変数と、一部の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を表す複数の二値変数との関係を適切に保ち、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である視聴者の数を増やすような解を求めることができる。
【0062】
ハミルトニアンは、第1二値変数yp
+及び第2二値変数yp
-を含む所定の予算に関する拘束条件を表す項を含む。具体的には、所定の予算に関する拘束条件を表す項は、第三項であり、広告の回数の修正によって予算の変化が±0となるように拘束している。これにより、所定の予算内で、広告を視聴する回数の期待値が閾値以上である視聴者の数を増やすような解を求めることができる。
【0063】
図3は、本実施形態に係る広告配信装置10の物理的構成を示す図である。広告配信装置10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では広告配信装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、広告配信装置10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、
図3で示す構成は一例であり、広告配信装置10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0064】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、複数の番組に配信する広告の回数を決定するプログラム(広告配信プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bに格納したりする。
【0065】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラム、複数の視聴者の視聴履歴といったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0066】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば広告配信プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0067】
通信部10dは、広告配信装置10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークNに接続されてよい。
【0068】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0069】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、例えば、どの番組に何回広告を配信するかを表示してよい。
【0070】
広告配信プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。広告配信装置10では、CPU10aが広告配信プログラムを実行することにより、
図2を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、広告配信装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0071】
図4は、本実施形態に係る広告配信装置10によるブランド認知者の増加率と、比較例におけるブランド認知者の増加率とを示す図である。同図では、決定部14により決定された複数の番組に配信する広告の回数を、本実施形態に係る広告配信装置10によって量子アニーリングマシン30を用いて修正した場合を実線で示し、比較例としてシミュレーテッドアニーリングを用いて修正した場合を破線で示している。同図の縦軸は、広告回数の修正前後におけるブランド認知者の増加率を示し、横軸は、アニーリング回数を示している。なお、同図では、選択部15によって選択された一部の視聴者に関するブランド認知者の増加率を示している。
【0072】
本実施形態に係る広告配信装置10によれば、量子アニーリングマシン30を用いて広告の回数を修正することで、ブランド認知者を約20%増加させることができる。一方、シミュレーテッドアニーリングを用いて広告の回数を修正すると、ブランド認知者を約13%増加させることができるが、本実施形態に係る広告配信装置10ほどの効果が得られないことが確認できる。また、本実施形態に係る広告配信装置10によれば、アニーリング回数が200回程度で、比較例においてアニーリングを2000回程度行った場合よりもブランド認知者の増加率が大きくなることが確認できる。
【0073】
図5は、本実施形態に係る広告配信装置10による修正前後における複数の視聴者による広告の視聴回数を示す図である。同図では、横軸に視聴者IDを示し、縦軸に広告視聴回数の期待値を示している。同図に示す実線の棒グラフは、本実施形態に係る広告配信装置10によって広告回数を修正した後における、視聴者の広告視聴回数の期待値を示している。また、破線の棒グラフは、本実施形態に係る広告配信装置10によって広告回数を修正する前における、視聴者の広告視聴回数の期待値を示している。また、同図では、ブランド認知に至る閾値k=4を図示している。
【0074】
視聴者IDが1,6,7,14,15,18,21である7名について、広告配信装置10による広告回数の修正によって、広告視聴回数の期待値が、ブランド認知に至る閾値未満から閾値以上に改善していることが確認できる。広告回数の修正前には、視聴者IDが22~30である9名がブランド認知者であり、その割合は9/30=0.3である。一方、広告回数の修正後には、ブランド認知者が15名に増加し、その割合は15/30=0.5である。このように、本実施形態に係る広告配信装置10によれば、予算を変えずに広告の配分を最適化することで、ブランド認知者の数をほぼ倍にすることができ、全体の半数の視聴者がブランドを認知している状態にすることができる。
【0075】
図6は、本実施形態に係る広告配信装置10によるテストスコアと予算削減率の関係を示す図である。同図では、縦軸にブランド認知者の数と正の相関を有するテストスコアを示し、横軸に予算削減率を示し、本実施形態に係る広告配信装置10によるテストスコアと予算削減率の関係を実線で示している。予算を削減すると、広告を配信できる回数が少なくなるため、テストスコアは低下する。
【0076】
同図では、予算が1.0の場合に、人によって複数の番組に配信する広告の回数を決定した場合のテストスコア(約265)と、第1比較例の手法で広告の回数を決定した場合のテストスコア(約280)と、第2比較例の手法で広告の回数を決定した場合のテストスコア(約298)と、第3比較例の手法で広告の回数を決定した場合のテストスコア(約302)と、を示している。
【0077】
本実施形態に係る広告配信装置10によるテストスコアと予算削減率の関係を参照すると、予算が1.0である人による決定は、予算を1.0から0.72に削減して本実施形態に係る広告配信装置10による広告回数の決定を行った場合と同等のテストスコアであることが確認できる。また、予算が1.0である第1比較例のテストスコアは、予算が0.81である本実施形態に係る広告配信装置10によるテストスコアと同等であり、予算が1.0である第2比較例のテストスコアは、予算が0.9である本実施形態に係る広告配信装置10によるテストスコアと同等であり、予算が1.0である第3比較例のテストスコアは、予算が0.96である本実施形態に係る広告配信装置10によるテストスコアと同等であることが確認できる。このように、本実施形態に係る広告配信装置10によれば、従来手法と同等のブランド認知効果を、より少ない予算で達成することができる。
【0078】
図7は、本実施形態に係る広告配信装置10により実行される広告配信処理のフローチャートである。はじめに、広告配信装置10は、広告主から配信する広告と予算を受け付ける(S10)。
【0079】
次に、広告配信装置10は、複数の番組に配信する広告の回数を仮定して、複数の視聴者が広告を視聴する回数の期待値を算出する(S11)。そして、広告配信装置10は、複数の視聴者のうち、広告の視聴回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を算出し(S12)、予算内で、広告の視聴回数の期待値が閾値以上となる視聴者の数を大きくするように、貪欲法により、複数の番組に配信する広告の回数を決定する(S13)。なお、広告配信装置10は、貪欲法以外のアルゴリズムを用いて、複数の番組に配信する広告の回数を決定してもよい。
【0080】
その後、広告配信装置10は、広告の視聴回数の期待値に基づいて、複数の視聴者のうち一部の視聴者を選択し(S14)、一部の視聴者が複数の番組において広告を視聴する割合に基づいて、複数の番組のうち一部の番組を選択する(S15)。
【0081】
広告配信装置10は、広告の回数を増やすか否かを表す第1二値変数と、広告の回数を減らすか否かを表す第2二値変数と、広告の視聴回数の期待値が閾値以上であるか否かを表す第3二値変数とを設定する(S16)。そして、広告配信装置10は、量子アニーリングマシン30を制御して、第1二値変数、第2二値変数及び第3二値変数を含むハミルトニアンの基底状態を量子アニーリングによって算出する(S17)。
【0082】
最後に、広告配信装置10は、算出された第1二値変数及び第2二値変数に基づいて、一部の番組に配信する広告の回数を修正する(S18)。以上により、広告配信処理が終了する。
【0083】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
10…広告配信装置、10a…CPU、10b…RAM、10c…ROM、10d…通信部、10e…入力部、10f…表示部、11…取得部、12…第1算出部、13…第2算出部、14…決定部、15…選択部、16…修正部、20…ユーザ端末、30…量子アニーリングマシン、100…広告配信システム