(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】通気耐水部材、及び通気耐水部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/24 20060101AFI20241003BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241003BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241003BHJP
D06M 15/256 20060101ALI20241003BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B3/24 Z
B32B27/18 Z
B05D7/24 302L
D06M15/256
D06M15/564
(21)【出願番号】P 2020021760
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智也
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特許第5842023(JP,B2)
【文献】特開2000-290877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/24
B32B 27/18
B05D 7/24
D06M 15/256
D06M 15/564
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細孔を有する通気部と、撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜を最表層に有する撥水部とを有する通気耐水部材であって、
前記微細孔の面積が1000μm
2
~25000μm
2
であり、
前記塗膜のJIS K 5600-5-4:1999に従って測定した750±10g荷重の鉛筆硬度が5B以上であり、
メッシュ形状を有する、通気耐水部材。
【請求項2】
前記撥水部における前記塗膜表面の水接触角が90°以上である請求項1に記載の通気耐水部材。
【請求項3】
撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗料を、微細孔を有する通気部を有する基材に塗布し、前記撥水性粒子と前記バインダー樹脂とを含む塗膜を最表層に有する撥水部を形成する工程を含み、
前記微細孔の面積が1000μm
2
~25000μm
2
であり、
前記基材がメッシュ形状を有する、請求項1又は2に記載の通気耐水部材の製造方法。
【請求項4】
前記溶剤がフッ素系溶剤である請求項3に記載の通気耐水部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気耐水部材、及び通気耐水部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥水性を有する材料を利用した防水部材が、生活防水を必要とする分野から航空機分野に至るまで、様々な分野において各種提案されている。
航空機分野においては、例えば、特許文献1には、航空機に好適に用い得る、常温反応硬化型樹脂と粒子状フッ素樹脂とを混合してなる混合塗料が記載されている。また、特許文献2には、常温反応硬化型樹脂と粒子状フッ素樹脂とを混合してなる混合塗料を利用した航空機部材が記載されている。
【0003】
近年、防水部材の中でも、防水性と通気性とを同時に満たす部材へのニーズが高まっており、開発が進められている。
例えば、特許文献3及び4には、フッ素含有化合物を含む撥水材料により撥水処理を施した撥水網状体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5842023号公報
【文献】特許第6170531号公報
【文献】特開2000-290877号公報
【文献】特開2007-239109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献3及び4に記載の部材は、撥水処理を施して得られる塗膜の硬度が低く、耐久性が低いという問題点があった。また、特許文献1及び2には防水性と通気性とを同時に満たす部材に関する記載はない。
【0006】
そこで本発明は、通気性及び耐水度が良好であり、さらに耐久性にも優れた通気耐水部材を提供することを課題とする。また、上記通気耐水部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
[1]
微細孔を有する通気部と、撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜を最表層に有する撥水部とを有する通気耐水部材であって、
前記微細孔の面積が1000μm
2
~25000μm
2
であり、
前記塗膜のJIS K 5600-5-4:1999に従って測定した750±10g荷重の鉛筆硬度が5B以上であり、
メッシュ形状を有する、通気耐水部材。
[2]
前記撥水部における前記塗膜表面の水接触角が90°以上である[1]に記載の通気耐水部材。
[3]
撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗料を、微細孔を有する通気部を有する基材に塗布し、前記撥水性粒子と前記バインダー樹脂とを含む塗膜を最表層に有する撥水部を形成する工程を含み、
前記微細孔の面積が1000μm
2
~25000μm
2
であり、
前記基材がメッシュ形状を有する、[1]又は[2]に記載の通気耐水部材の製造方法。
[4]
前記溶剤がフッ素系溶剤である[3]に記載の通気耐水部材の製造方法。
なお、本発明は上記[1]~[4]に関するものであるが、参考のためその他の事項についても記載した。
【0008】
<1>
微細孔を有する通気部と、撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜を最表層に有する撥水部とを有する通気耐水部材であって、
前記塗膜のJIS K 5600-5-4:1999に従って測定した750±10g荷重の鉛筆硬度が5B以上である通気耐水部材。
<2>
前記微細孔の面積が1μm2~1mm2であり、前記撥水部における前記塗膜表面の水接触角が90°以上である<1>に記載の通気耐水部材。
<3>
撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗料を、微細孔を有する通気部を有する基材に塗布し、前記撥水性粒子と前記バインダー樹脂とを含む塗膜を最表層に有する撥水部を形成する工程を含む、<1>又は<2>に記載の通気耐水部材の製造方法。
<4>
前記溶剤がフッ素系溶剤である<3>に記載の通気耐水部材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通気性及び耐水度が良好であり、さらに耐久性にも優れた通気耐水部材を提供できる。また、本発明によれば、上記通気耐水部材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】高圧水洗試験を行う前の実施例1の通気耐水部材の塗膜外観を示す図。
【
図6】高圧水洗試験を30分間行った後の実施例1の通気耐水部材の塗膜外観を示す図。
【
図7】高圧水洗試験を行う前の実施例2の通気耐水部材の塗膜外観を示す図。
【
図8】高圧水洗試験を30分間行った後の実施例2の通気耐水部材の塗膜外観を示す図。
【
図9】高圧水洗試験を行う前の比較例1の通気耐水部材の塗膜外観を示す図。
【
図10】高圧水洗試験を30分間行った後の比較例1の通気耐水部材の塗膜外観を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の通気耐水部材は、微細孔を有する通気部と、撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜を最表層に有する撥水部とを有する通気耐水部材であって、上記塗膜のJIS K 5600-5-4:1999に従って測定した750±10g荷重の鉛筆硬度が5B以上である。
【0012】
以下、本発明に係る通気耐水部材及びその製造方法について説明する。以下の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせは例であり、本発明は実施形態によって限定されることはない。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本発明の通気耐水部材は通気部と撥水部とを有する。
通気部は通気性を確保するために必要な部分であり、例えば通気性を有する基材(微細な貫通孔を有する基材)を用いて形成することができる。
撥水部は撥水性を有する部分であり、撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜により形成することができる。
【0014】
<塗膜>
本発明の通気耐水部材は、撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜を撥水部の最表層に有する。
【0015】
(撥水性粒子)
塗膜に含まれる撥水性粒子としては、特に限定されないが、例えば、四フッ化エチレン樹脂(以下「PTFE」という。)、フッ化ピッチ、フッ化黒鉛、シリコーンパウダー、疎水性シリカ、メチルシリコーンパウダー、PTFE溶剤分散体などが挙げられる。撥水性粒子としては粒子状フッ素樹脂が好ましく、粒子状フッ素樹脂としては、PTFEが特に好ましい。
PTFEの調製方法は特に限定されない。PTFEは、高撥水効果を有し、バインダー樹脂と混合させることが良好であるため、低分子量のもの、具体的には平均分子量500から5000までのものが好ましい。
【0016】
撥水性粒子の平均一次粒子径としては、0.05μm~60μmであることが好ましく、0.05μm~30μmがより好ましい。
【0017】
また、上記塗膜における撥水性粒子の平均粒子径としては、0.05μm~60μmであることが微細孔の目詰まりを抑制し、塗装作業性を向上させる観点から好ましく、0.05μm~30μmがより好ましい。ここでの平均粒子径は、撥水性粒子の一次粒子及び凝集粒子のいずれをも含む粒子についての平均粒子径を意味する。
【0018】
なお、上記撥水性粒子の平均一次粒子径、及び塗膜における撥水性粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例:株式会社島津製作所製SALD-2200)により測定できる。
【0019】
上記塗膜中の撥水性粒子の含有量としては、10~70質量%であることが撥水性、耐久性の観点から好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
【0020】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂は、耐久性の観点からポリウレタン樹脂であることが好ましい。
バインダー樹脂は、これらの樹脂のいずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
上記塗膜中のバインダー樹脂の含有量としては、30~90質量%であることが撥水性、耐久性の観点から好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
上記塗膜は、撥水性粒子及びバインダー樹脂以外のその他の成分を含んでいてもよく、その他の成分としては、例えば、消泡剤、分散剤、レベリング剤、触媒等が挙げられる。その他の成分を含む場合の塗膜中の含有量としては、10質量%以下が好ましい。
【0023】
上記塗膜の厚みとしては、特に限定されないが、5~200μmであることが耐久性、通気性能の観点から好ましく、10~60μmであることがより好ましい。
【0024】
<基材>
本発明の通気耐水部材は、後述するように、好適には、撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗料を、微細孔を有する通気部を有する基材に塗布して塗膜を形成することにより得られる。
上記基材において、微細孔の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三角形、四角形、五角形などの多角形状や、円形状、楕円形状、星型状、などを挙げることができる。
上記微細孔の面積としては、1μm2~1mm2であることが耐水度の観点から好ましく、1000μm2~25000μm2であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いる基材としては、微細孔からなる通気部を複数有していることが好ましく、具体的には基材がメッシュ形状であることが好ましい。
【0026】
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、平面状、球面状、円筒状等を挙げることができる。
【0027】
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属基材、ガラス基材、木製基材、セラミック基材、プラスチック基材、紙、ナイロン製繊維などを挙げることができる。
【0028】
基材は適宜調製したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01~50mmが好ましく、0.1~20mmがより好ましい。
【0029】
[通気耐水部材]
本発明の通気耐水部材は、微細孔を有する通気部と、上記塗膜を最表層に有する撥水部とを有するものである。
本発明の通気耐水部材の一例の模式図(平面図(塗膜表面に垂直な方向から見た図))を
図1に示す。
図1に示した通気耐水部材1は、通気部2(白抜部)と撥水部3(斜線部)とを有する。
図2に、
図1の通気耐水部材1の一点鎖線AA’で切断した端面の模式図(塗膜表面に垂直な方向の端面模式図)を示す。
図2の通気耐水部材1は、微細孔を有する基材4(縦線部)の表面(最表面)に撥水部3が形成されてなる。撥水部3は、前述した撥水性粒子、及びバインダー樹脂を含む塗膜からなる。
上記塗膜は、上記基材の一部の表面に有していてもよく、全部の表面に有していてもよい。例えば、基材が平面基材である場合、塗膜は一方の表面に有していてもよく、両表面に有していてもよい。
本発明の通気耐水部材の好ましい態様は、
図2のように、基材4の両表面に加えて、さらに基材4の内壁4aの表面まで塗膜による撥水部3が設けられている態様であり、これによって耐水度が格段に向上するという効果が発揮される。
【0030】
本発明の通気耐水部材に用いることができる基材の一例の模式図(平面図(基材の表面に垂直な方向から見た図))を
図3に示す。
図3に示した基材4は、微細孔からなる通気部2を有する。
図4に、
図3の基材4の一点鎖線BB’で切断した端面の模式図(基材の表面に垂直な方向の端面模式図)を示す。基材4の通気部2は貫通した微細孔からなる。
【0031】
本発明の通気耐水部材において、通気部の微細孔の面積は、1μm2~1mm2であることが通気性の観点から好ましく、1000μm2~25000μm2であることがより好ましい。
【0032】
(水接触角)
本発明の通気耐水部材において、塗膜表面の水接触角は、90°以上であることが好ましく、120°以上がより好ましく、150°以上がさらに好ましい。水接触角を150°以上とすることにより、特に優れた耐水度を発現することができる。
【0033】
(鉛筆硬度)
本発明の通気耐水部材において、塗膜は、JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した750±10g荷重の鉛筆硬度が5B以上である。塗膜表面の鉛筆硬度を5B以上とすることにより、高圧水洗や摩耗などに対する耐久性の高い通気耐水部材とすることができるものと考えられる。鉛筆硬度の上限としては、3H以下とすることが好ましい。3H以下とすることにより、基材の柔軟性に追従しやすくなり、通気耐水部材の割れ等による破損を抑制することができる。
なお、「5B以上」とは、鉛筆硬度が5Bであるか、5Bよりも硬いことを表す。「3H以下」とは、鉛筆硬度が3Hであるか、3Hよりも柔らかいことを表す。
塗膜の鉛筆硬度としては、5B~3Hであることが好ましい。
【0034】
(表面粗さRa)
本発明の通気耐水部材の上記塗膜表面の算術平均粗さ(Ra)は、塗膜の形成方法(塗装方法)によって変動するため、特に限定されない。
本発明の通気耐水部材の好ましい1つの態様として、塗膜表面のRaが8μm以下である態様が挙げられる。塗膜表面のRaを8μm以下とすることによって、通気耐水部材の通気部における目詰まりを抑制でき、通気性が向上する。ただし、Raは塗膜のその他の物性には影響しないと考えられる。
塗膜表面のRaを8μm以下とする手段は特に限定されないが、例えば、スプレーガンを用いて、撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗料を塗装する方法により形成することができる。特に、溶剤としてフッ素系溶剤を用いると塗料中の撥水性粒子の分散性が向上するため、塗膜表面のRaを小さくすることが可能となり好ましい。
上記表面粗さの指標であるRaはJIS B0633触針法(例:東京精密製SURFCOM2900 SD3-12)によって測定することができる。
【0035】
〔通気耐水部材の製造方法〕
本発明は、撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗料を、微細孔を有する通気部を有する基材に塗布し、上記撥水性粒子と上記バインダー樹脂とを含む塗膜を最表層に有する撥水部を形成する工程を含む、通気耐水部材の製造方法にも関する。
【0036】
<塗料>
本発明の通気耐水部材の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)に用いる塗料は、撥水性粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含む。
【0037】
撥水性粒子、及びバインダー樹脂は、前述したとおりである。また、塗料は、固形分として、撥水性粒子及びバインダー樹脂以外のその他の成分を含んでいてもよく、上述のその他の成分を用いることができる。
バインダー樹脂は、塗料中に原料モノマーとして含まれ、塗布後、重合反応によりバインダー樹脂を形成する態様であってもよい。
【0038】
(溶剤)
塗料に用いられる溶剤としては、特に限定されず、例えば、フッ素系溶剤、脂肪族および芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、カルボン酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等が挙げられる、撥水性粒子の分散性向上の観点から、フッ素系溶剤であることが好ましい。また、溶剤としてフッ素系溶剤を用いると、塗料粘度が下がり、塗料をスプレー塗布する際に吐出量が増加するため生産性が向上するという効果がある。
フッ素系溶剤としては、例えば、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等が挙げられる。
フッ素系溶剤の塗料中の含有量としては、特に限定されないが、塗料中の全固形分に対して、0.1質量%~50質量%であることが、塗料の塗布性、及び撥水性粒子の分散性の観点から好ましく、5質量%~40質量%であることより好ましい。
【0039】
塗料中の撥水性粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、0.05μm~100μmであることが微細孔の目詰まりを抑制し、通気性を向上させる観点から好ましく、0.05μm~50μmがより好ましく、0.05μm~20μmがさらに好ましい。ここでの平均粒子径は、撥水性粒子の一次粒子及び凝集粒子のいずれをも含む粒子についての平均粒子径を意味する。
【0040】
<撥水部形成工程>
本発明の製造方法は、上記塗料を、微細孔を有する通気部を有する基材に塗布し、上記撥水性粒子と上記バインダー樹脂とを含む塗膜を最表層に有する撥水部を形成する工程を含む。
【0041】
微細孔を有する通気部を有する基材は、通気耐水部材の説明において上述した基材を用いることができる。
【0042】
塗料の塗布方法としては特に限定されないが、スプレー塗布法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、刷毛塗装、ローラー塗装等が挙げられる。
【0043】
塗料の塗布後、乾燥により溶剤を除去し、塗膜を形成することが好ましい。
【0044】
塗膜の厚みとしては、5~200μmであることが耐久性の観点から好ましく、10~60μmであることがより好ましい。
【0045】
上記塗膜は、上記基材の一部の表面に形成してもよく、全部の表面に形成してもよい。例えば、基材が平面基材である場合、塗膜は一方の表面に形成してもよく、両表面に形成してもよい。また、耐水度の観点から、空孔内面に塗装されていることが、より好ましい。
【0046】
本発明の通気耐水部材は、通気性、耐水度、及び耐久性を備えるため、音響機器、網戸、傘、衣服、靴、鞄、パッケージ部材、農業用シート等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。
【0048】
〔使用塗料〕
塗料a:スカイハローHAS(PTFE含有2液型溶剤系塗料(フッ素系溶剤含有、ポリウレタン含有)、日本特殊塗料(株)製)
塗料b:特許第5842023号公報の実施例2の塗料(PTFE含有2液型溶剤系塗料(フッ素系溶剤なし、ポリウレタン含有)
塗料c:HIREC100(PTFE含有1液型溶剤系塗料)NTTアドバンステクノロジー社製)
【0049】
各塗料における粒子状フッ素樹脂の平均粒子径をSALD-2200(島津製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0050】
〔通気耐水部材の製造〕
<実施例1>
塗料aを、エアースプレーガンであるLPH-101-164LVG(アネスト岩田社製)を用いて、基材であるステンレス製のφ130mm円形の100メッシュ(目開き154μm)に塗布し、常温で硬化させて塗膜を形成し、実施例1の通気耐水部材試料(試験片)を得た。
エアースプレーガンによる塗布条件として、LPH-101-164LVG:口径1.6mm(アネスト岩田製)を用い、手元圧力を1.0kg/cm2、パターン幅を付属ネジで全開まで広げ、吐出量調節ネジを3回転に調整し、基材との距離を15cmに固定して、塗装を行った。
また、塗膜の乾燥膜厚は15μm~20μmとした。
【0051】
<実施例2、比較例1>
塗料aを表1に記載の塗料に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、実施例2、および比較例1の通気耐水部材試料を得た。
【0052】
(塗料の吐出量)
エアースプレーガンによる塗布の際の各塗料の吐出量を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(鉛筆硬度)
得られた各通気耐水部材試料の最表面塗膜に対し、JIS K 5600-5-4:1999に記載の鉛筆硬度評価を荷重750±10gの条件で行った。結果を表1に示す。
【0054】
(表面粗さ)
得られた各通気耐水部材試料における撥水部の塗膜側の表面粗さについて、算術平均粗さRaを、JIS B0633:2001に記載の方法で、SURFCOM2900 SD3-12(東京精密製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(水滴接触角)
得られた各通気耐水部材試料に対し、JIS R 3257 6.3:1999 ぬれ性試験に記載の方法で、DMs-601(協和界面科学製)を用いて、水滴接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(微細孔面積率)
得られた各通気耐水部材試料に対し、デジタルマイクロスコープVHX-2000(キーエンス製)の自動面積計算を用いて微細孔面積率を測定した。測定は、拡大率は100倍で行い、画面の一定の面積(8.8mm2)に対して、微細孔総面積の比率を算出した。
【0057】
(微細孔単位面積)
得られた各通気耐水部材試料に対し、デジタルマイクロスコープVHX-2000(キーエンス製)の自動面積計算を用いて微細孔単位面積を測定した。測定は、拡大率は300倍で行い、微細孔8個の平均値を算出した。
【0058】
得られた各通気耐水部材試料について、下記の性能評価を行った。
【0059】
<通気性>
得られた各通気耐水部材試料について、JIS L 1096 8.26:2010 通気性A法 フラジール形法に従い、通気量を測定した。測定には、フラジール型通気量試験機(FP2、(株)東洋精機製作所製)を用い、測定面積が5cm2のとき、試験片に125Paの吸引圧力(差圧)を与えたときの空気流量によって評価した。結果を表1に、高圧水洗時間0分の結果として示す。
【0060】
<耐水度>
得られた各通気耐水部材について、JIS L 1092 7.1:2009 耐水度試験(静水圧法)に従い、耐水度を測定した。測定には、高水圧耐水度試験機(WP-1000K、(株)大栄科学精器製作所製)を用い、試験片を徐々に加圧し、試験片の3点から水が通過したときの圧力によって評価した。結果を表1に、高圧水洗時間0分の結果として示す。なお、1mmAq=9.80665Paである。
【0061】
<耐久性:高圧水洗試験>
得られた各通気耐水部材の塗膜に対して、塗膜から50cmの距離より、水を15MPaで噴射し、高圧水洗試験を行った。高圧水洗時間は、5分、15分、30分とした。高圧水洗後の各試験片について、上記と同様にして通気性、耐水度、塗膜外観の評価をそれぞれ行った。評価結果を表1に示す。なお、塗膜外観はデジタルマイクロスコープVHX-2000(キーエンス製)で100倍に拡大した画像により試験後の塗膜を観察することによって行った。
図5は高圧水洗試験を行う前の実施例1の塗膜外観であり、
図6は高圧水洗試験を30分間行った後の実施例1の塗膜外観であり、
図7は高圧水洗試験を行う前の実施例2の塗膜外観であり、
図8は高圧水洗試験を30分間行った後の実施例2の塗膜外観であり、
図9は高圧水洗試験を行う前の比較例1の塗膜外観であり、
図10は高圧水洗試験を30分間行った後の比較例1の塗膜外観である。
【0062】
【0063】
表1の結果より、本発明の通気耐水部材は、通気性、耐水度ともに良好であった。また、高圧水洗による耐久性試験前後での通気性、耐水度の変化は小さく、耐久性に優れていることが分かった。特に、塗料中の溶剤としてフッ素系溶剤を用いた実施例1においては、粒子状フッ素樹脂がより分散された状態で部材表面に存在するため、微細孔の目詰まりが起こりにくく、耐久性試験前の通気性がより向上したものと考えられる。また、フッ素系溶剤を用いた実施例1の塗料は吐出量が多くなり、生産性が高かった。
一方、比較例1では、塗膜の硬度が低く、高圧水洗によって塗膜が剥離したため、耐水度が低下したものと考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1 通気耐水部材
2 通気部
3 撥水部
4 基材
4a 基材の内壁