(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/03 20060101AFI20241003BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/03
A61Q11/00
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/67
(21)【出願番号】P 2020033930
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典敬
(72)【発明者】
【氏名】小寺 孝範
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528463(JP,A)
【文献】特表2008-526932(JP,A)
【文献】特開2017-206448(JP,A)
【文献】特開2012-106943(JP,A)
【文献】特表2014-532051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00~8/99
A61Q 1/00~90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性成分を含有する口腔用組成物であって、
前記組成物は、両親媒性物質で構成され且つ内部に水相が包含された逆球状ミセルが油性媒体中にて立方晶を形成している逆不連続立方液晶相を有し、
前記水溶性成分は、前記逆不連続立方液晶相内部の前記水相に存在しており、
前記組成物中の前記両親媒性物質の含有量が14質量%以上70質量%以下であり、
前記組成物中の前記油性媒体の含有量が10質量%以上70質量%以下であり、
前記組成物において、前記水溶性成分に対する水の比率が、質量比[水/水溶性成分]として、10以上2,000以下であり、
前記両親媒性物質が、
下記式(a1-1):
R
1a-O-〔(C
2H
4O)
s(C
3H
6O)
t〕-H (a1-1)
〔式中、R
1aは
炭素数7以上18以下の炭化水素基である。sは平均付加モル数であり、3以上40以下の数である。tは平均付加モル数であり、0以上5以下の数である。(C
2H
4O)と(C
3H
6O)の結合順序は問わず、また、(C
2H
4O)と(C
3H
6O)の結合方式はランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。〕
で表される化合物、
(a2-1)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であるソルビタンモノ又はジ脂肪酸エステル、及び
(a2-3)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル、
からなる群から選ばれる1種以上であり、
前記油性媒体が、炭素数8以上36以下の炭化水素油、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、及びグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上である、口腔用組成物。
【請求項2】
前記逆不連続立方液晶相がFd-3m型液晶相である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記組成物中の前記水溶性成分の含有量が、0.0001質量%以上、40質量%以下である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記両親媒性物質が、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエート、及び、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ショ糖ラウリン酸エステル及びショ糖ミリスチン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記油性媒体が、スクワレン、スクワラン、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリオレインからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記油性媒体の含有量が、前記両親媒性物質に対する質量比[油性媒体/両親媒性物質]として、0.5以上5以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する油性媒体の含有量が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基を含有しない油剤の含有量より少ない、請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
前記組成物を構成する前記両親媒性物質と水との比率が、前記両親媒性物質と水の合計量に対する前記両親媒性物質の質量比[両親媒性物質/(両親媒性物質+水)]として、0.2以上2以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
前記組成物中の水の含有量が5質量%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
前記水溶性成分が水溶性有効成分であり、該水溶性有効成分がグリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、パンテノール、ピリドキシン塩酸塩、アルギニン、アズレンスルホン酸ナトリウム、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビオチン及び水溶性ビタミン類からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内組織に作用して、歯肉炎等の予防又は抑制効果を奏し、口腔内を衛生的に保つための有効成分として、アラントイン及びその誘導体、トラネキサム酸等の水溶性有効成分を含有する口腔用組成物が知られている。口腔内組織の作用部位の中でも、歯肉溝上皮は、数層の扁平上皮により構成された厚い上皮細胞層で覆われており、該上皮細胞層が油性のバリア層として働くため、水溶性有効成分が上皮よりも内部の結合組織に吸収されにくいという問題があった。
【0003】
そこで、水溶性有効成分の口腔内組織における吸収性等を向上させた口腔用組成物が検討されている。
例えば特許文献1には、水溶性有効成分の口腔内組織における滞留性および吸収性が向上する口腔用組成物として、少なくとも1種の水溶性有効成分と、炭素数8~22の分岐鎖構造を有する脂肪酸、炭素数8~22の直鎖又は分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル、及び、所定のポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する口腔用組成物が開示されている。
特許文献2には、少なくとも1種の水溶性有効成分、炭素数8~22の分岐鎖構造を有する脂肪酸及びエステルから選ばれる少なくとも1種、トコフェロール及び/又はその誘導体、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを所定の割合で含有する口腔用組成物が、水溶性有効成分の口腔内吸収性が優れることが開示されている。
特許文献3には、少なくとも1種の水溶性有効成分、炭素数8~22の分岐鎖構造を有する脂肪酸、及び炭素数8~22の直鎖又は分岐鎖構造を有する脂肪酸エステルを含有し、水溶性有効成分の口腔内組織、特に歯肉への滞留性及び吸収性が向上した口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-205826号公報
【文献】特開2017-214297号公報
【文献】特開2018-100298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、口腔内において、水溶性成分を、口腔内の油性バリア層である歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させることができる口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水溶性成分を含有する口腔用組成物において、所定量の両親媒性物質及び油性媒体により構成された逆不連続立方液晶相内部の水相に水溶性成分を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、水溶性成分を含有する口腔用組成物であって、該組成物は、両親媒性物質で構成され且つ内部に水相が包含された逆球状ミセルが油性媒体中にて立方晶を形成している逆不連続立方液晶相を有し、前記水溶性成分は、前記逆不連続立方液晶相内部の前記水相に存在しており、前記組成物中の前記両親媒性物質の含有量が14質量%以上70質量%以下である、口腔用組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、口腔内において、水溶性成分を、口腔内の油性バリア層である歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例21の口腔用組成物を小角X線散乱法(SAXS)により分析して得られた散乱パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[口腔用組成物]
本発明の口腔用組成物は、水溶性成分を含有し、両親媒性物質で構成され且つ内部に水相が包含された逆球状ミセルが油性媒体中にて立方晶を形成している逆不連続立方液晶相を有し、前記水溶性成分は、逆不連続立方液晶相の内部の水相に存在しており、組成物中の両親媒性物質の含有量が14質量%以上70質量%以下の組成物である。
本発明の口腔用組成物は上記構成とすることにより、水溶性成分を、口腔内の歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させることができるという効果を奏する。
【0010】
本発明の口腔用組成物において上記効果が得られる理由については、次のように考えられる。
分子内に親水性基及び疎水性基を有する界面活性剤等の両親媒性物質は、水中又は油性媒体中において自己組織化することにより、親水性基同士、疎水性基同士を互いに向け合い、ミセルや液晶等の分子集合体を形成することが知られている。
両親媒性物質が形成する液晶構造としては、円筒状の会合体が六方晶系を構成しているヘキサゴナル(hexagonal)液晶、円筒状の会合体内部に水を取り込み、疎水性基を外側に向けた逆ヘキサゴナル(reverse hexagonal)液晶、両親媒性物質の二分子膜と水とが交互に配列したラメラ(lamella)液晶、不連続相である水(あるいは油)を両親媒性物質で取り囲んだミセルが、油(あるいは水)連続相中で立方晶を形成している不連続キュービック(discontinuous cubic)液晶、脂質二重層が三次元的に連なった曲面を作る両連続キュービック(bicontinuous cubic)液晶等が知られている。
本発明の口腔用組成物における逆不連続立方(reverse discontinuous cubic)液晶とは、不連続相である水相を、両親媒性物質が有する親水性基が内側を向くようにして取り囲んだ逆球状ミセルが、油性媒体からなる連続相中で立方晶を形成してなる逆不連続キュービック液晶相を意味する。
本発明の口腔用組成物において、逆不連続立方液晶相としては、空間群が立方晶系に属する逆不連続液晶相であればよい。中でも、該液晶相は、空間群としてFd-3m構造をとる、Fd-3m型液晶相が好ましい。例えばFd-3m型液晶相において、両親媒性物質の内部に包含された水相は、直径10nm以下の水分子の集合体であり、その合計体積は約34体積%である。該Fd-3m型液晶相では、内部に包含された水相のサイズが小さく、且つ合計体積%としては大きいため、該水相に水溶性成分を多量に包含することができるとともに、該成分を、口腔内において歯肉溝上皮より内部の結合組織に効率よく到達させることができると考えられる。
【0011】
本発明の口腔用組成物は、前述した逆不連続立方液晶相を有するものである。
口腔用組成物が逆不連続立方液晶相を有しているか否かは、小角X線散乱法(SAXS)により特定することができる。より詳細には、該組成物についてSAXS測定を行い、組成物中に含まれる構造体の繰り返し面とX線とが成す角度をθ(°)として、横軸を2θ、縦軸を強度として得られた散乱パターンにおいて、ピーク分離が不明瞭な場合はガウス関数を用いてピーク分割を行い、そのピーク位置により液晶構造を特定できる。例えばピーク位置が√3:√8:√11:√12:√16を満たす場合、該組成物はFd-3m型液晶相を有していると特定できる。SAXS測定は、具体的には実施例に記載の方法により行うことができる。
本発明の口腔用組成物は、逆不連続立方液晶相を有している限り、逆不連続立方液晶相以外の液晶相、例えば逆連続立方液晶相やヘキサゴナル液晶相等を含んでいてもよい。水溶性成分を口腔内の歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させる観点からは、口腔用組成物中の液晶相が逆不連続立方液晶相からなるものであることがより好ましい。
【0012】
本発明の口腔用組成物において、Fd-3m型液晶相等の逆不連続立方液晶相の含有は、主として、後述する両親媒性物質、油性媒体、及び水を含有する三元系の組成物において、両親媒性物質の含有量を前記所定の範囲とすることで達成される。特に、両親媒性物質の種類、油性媒体の種類及び含有量、両親媒性物質と油性媒体との組み合わせ、並びに3成分(両親媒性物質、油性媒体、水)の比率の選択により、逆不連続立方液晶相を安定して形成できる。
【0013】
<水溶性成分>
本明細書において水溶性成分とは25℃の水100gに対する溶解度が0.1g以上であるものをいう。さらに、本明細書において水溶性有効成分とは、水溶性成分のうち、口腔内組織に作用して歯肉炎等の予防又は抑制効果を奏する水溶性の成分を意味する。水溶性成分の中でも、本発明の効果を有効に得る観点からは、歯肉に対し作用する水溶性有効成分であることが好ましい。
該水溶性有効成分としては、例えばグリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、パンテノール、ピリドキシン塩酸塩、アルギニン、アズレンスルホン酸ナトリウム、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビオチン及び水溶性ビタミン類からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。水溶性ビタミン類としては、チアミン又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ナイアシン、及びナイアシンアミドからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
本発明の口腔用組成物中の水溶性成分の含有量は成分の種類によっても異なるが、水溶性成分を口腔内の歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させる観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、よりさらに好ましくは0.05質量%以上である。また、口腔用組成物中の逆不連続立方液晶構造を維持する観点からは、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である。
【0015】
<両親媒性物質>
本明細書において両親媒性物質とは、分子内に疎水性基及び親水性基を有する化合物を意味する。該両親媒性物質としては、典型的には、界面活性剤として知られている化合物が挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれも用いることができる。水相を包含した逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点からは、両親媒性物質は、界面活性剤の中でも非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、逆不連続立方液晶相を容易に形成できるという観点から、疎水性基として炭素数7以上18以下の炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(a1)又は一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0016】
(一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤)
R1a-A〔(R2aO)x-R3a〕y (a1)
〔式中、R1aは、炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R2aは、炭素数2又は3のアルキレン基であり、R3aは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子である。xは平均付加モル数であり3以上50以下の数である。Aは-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)N=、-NH-又は-N=であり、Aが-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NH-の場合yは1であり、Aが-C(=O)N=又は-N=の場合yは2である。〕
【0017】
前記一般式(a1)において、R1aは炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R1aの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは16以下である。R1aにおける炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基;シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の飽和又は不飽和の環状脂肪族基;アリール基、アラルキル基等の芳香環含有基等が挙げられる。逆不連続立方液晶相を容易に形成できるという観点からは、R1aにおける炭化水素基としては飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐状でもよく、直鎖状であることがより好ましい。
R1aは、より好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくは炭素数10以上16以下のアルキル基又はアルケニル基である。
R2aは炭素数2又は3のアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が挙げられ、好ましくはエチレン基及びプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはエチレン基である。複数のR2aはすべて同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
R3aは炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、好ましくは水素原子である。
xは平均付加モル数であり、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であって、50以下、好ましくは45以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、よりさらに好ましくは20以下、よりさらに好ましくは15以下の数である。
Aは-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)N=、-NH-又は-N=であり、Aが-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NH-の場合yは1であり、Aが-C(=O)N=又は-N=の場合yは2である。好ましくは、Aは-O-又は-C(=O)O-であり、より好ましくは-O-である。
xとyの積は、一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。
【0018】
前記一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、下記式(a1-1)で表される化合物を挙げることができる。
R1a-O-〔(C2H4O)s(C3H6O)t〕-H (a1-1)
〔式中、R1aは前記と同じである。sは平均付加モル数であり、3以上40以下の数である。tは平均付加モル数であり、0以上5以下の数である。(C2H4O)と(C3H6O)の結合順序は問わず、また、(C2H4O)と(C3H6O)の結合方式はランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。〕
式(a1-1)において、R1aは好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは炭素数10以上16以下のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数10以上16以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。sは好ましくは4以上、より好ましくは5以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下の数であり、tは好ましくは0以上、3以下の数であり、より好ましくは0である。
【0019】
すなわち、式(a1-1)で表されるより好ましい化合物は、アルキル基又はアルケニル基が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上16以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは3モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上20モル以下、よりさらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下であり、オキシプロピレン基の平均付加モル数が0モル以上5モル以下、好ましくは0モル以上3モル以下、より好ましくは0モルの、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテルである。さらに好ましくは、アルキル基又はアルケニル基が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上16以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは3モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上20モル以下、よりさらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルである。
式(a1-1)で表される化合物の具体例としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは3モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上20モル以下、よりさらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下の、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、オキシエチレン基の平均付加モル数が前記範囲の直鎖アルキルエーテルが好ましく、オキシエチレン基の平均付加モル数が前記範囲の、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、オキシエチレン基の平均付加モル数が前記範囲のポリオキシエチレンラウリルエーテルがさらに好ましい。
【0020】
式(a1-1)で表される化合物として、オキシエチレン基の平均付加モル数が互いに異なる2種以上の化合物を用いることもできる。この場合、式(a1-1)で表される化合物のオキシエチレン基の平均付加モル数は、各化合物の混合比に応じて加重平均を算出することにより、化合物全体のオキシアルキレン基の平均付加モル数を求めることができる。
【0021】
(一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤)
〔R11a-B-(R12aO)u〕pGm〔(OR12a)vOH〕q (a2)
〔式中、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基を示し、R12aはそれぞれ独立に炭素数2以上4以下のアルキレン基を示す。u及びvは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0以上40以下の数であって、且つuとpの積とvとqの積との合計は0以上40以下である。Gは炭素数3以上10以下で且つヒドロキシ基数3以上10以下の多価アルコール残基を示す。mはGの平均縮合度であり、1以上10以下の数である。pは1以上であってGmのヒドロキシ基数以下の数、qはGmのヒドロキシ基数-pの数である。Bは-O-、又は-C(=O)O-である。〕
【0022】
前記一般式(a2)において、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R11aの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは17以下である。R11aにおける炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基;シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の飽和又は不飽和の環状脂肪族基;アリール基、アラルキル基等の芳香環含有基等が挙げられる。逆不連続立方液晶相を容易に形成できるという観点からは、R11aにおける炭化水素基としては飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐状でもよく、直鎖状であることがより好ましい。
R11aは、より好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数10以上17以下のアルキル基又はアルケニル基、よりさらに好ましくは炭素数10以上17以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。
R12aは炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。これらの中でも、R12aは好ましくは炭素数2以上3以下のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはエチレン基である。複数のR12aはすべて同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
u及びvは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0以上40以下の数であって、且つuとpの積とvとqの積との合計は0以上40以下である。uとpの積とvとqの積との合計は、一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。
Gは炭素数3以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下で且つヒドロキシ基数3以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下の多価アルコール残基を示し、該多価アルコール残基は、好ましくはグリセリン残基、糖残基、及び糖アルコール残基からなる群から選ばれる1種以上である。当該糖残基としては、リボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖由来の残基が挙げられる。当該糖アルコール残基としては、ソルビトール、ソルビタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール等の、糖アルコール由来の残基が挙げられる。Gはより好ましくは、グリセリン残基、グルコース残基、フルクトース残基、ソルビタン残基、及びペンタエリスリトール残基からなる群から選ばれる1種以上である。mはGの平均縮合度であり、1以上10以下、好ましくは5以下の数である。Gが糖残基であって縮合度が2以上である場合、Gmは2種以上の単糖が縮合した、例えばショ糖由来の残基(ショ糖残基)であってもよい。
Gmはより好ましくは、Gがグルコース残基であり、mが1以上10以下の数であるポリグルコシド残基、又は、グルコース及びフルクトースが縮合したショ糖残基である。
pは1以上であってGmのヒドロキシ基数以下の数、qはGmのヒドロキシ基数-pの数である。Bは-O-、又は-C(=O)O-であり、好ましくは-C(=O)O-である。
【0023】
前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、下記(a2-1)~(a2-5)の化合物を挙げることができる。
(a2-1)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であるソルビタンモノ又はジ脂肪酸エステル
(a2-2)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるペンタエリスリトール脂肪酸エステル
(a2-3)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル
(a2-4)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレングリセリンモノ又はジ脂肪酸エステル
(a2-5)アルキル基の炭素数が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上17以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上20以下であり、糖の平均縮合度が1以上10以下であるモノアルキルグリコシド
【0024】
(a2-1)の化合物の具体例としては、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であるソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステル;及び、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。これらの中でも、逆不連続立方液晶相を容易に形成できるという観点からは、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエートが好ましい。
【0025】
(a2-2)の化合物の具体例としては、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるペンタエリスリトール脂肪酸エステル;及び、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0026】
(a2-3)の化合物の具体例としては、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、逆不連続立方液晶相を容易に形成できるという観点からは、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ショ糖ラウリン酸エステル及びショ糖ミリスチン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0027】
(a2-4)の化合物の具体例としては、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下である、ポリオキシエチレングリセリンモノ又はジ脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
また(a2-5)の化合物の具体例としては、糖の平均縮合度が1以上10以下、好ましくは1以上5以下である、モノオクチル(ポリ)グルコシド、モノデシル(ポリ)グルコシド、モノラウリル(ポリ)グルコシド、モノミリスチル(ポリ)グルコシド、モノペンタデシル(ポリ)グルコシド、モノパルミチル(ポリ)グルコシド、モノパルミトレイル(ポリ)グルコシド、モノステアリル(ポリ)グルコシド、モノオレイル(ポリ)グルコシド;及び、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上20以下であり、糖の平均縮合度が1以上10以下である、ポリオキシエチレンモノオクチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノデシル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノラウリル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノミリスチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノペンタデシル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノパルミチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノパルミトレイル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノステアリル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノオレイル(ポリ)グルコシド等が挙げられる。なお前記化合物の“(ポリ)”は、糖が複数縮合したポリ体の構造と、平均縮合度が1として表現される、糖が縮合していない場合すなわち単糖であるモノ体の構造とを示すものである。
【0029】
上記界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。
上記の非イオン性界面活性剤の中でも、前記式(a1-1)で表される化合物、及び前記(a2-1)~(a2-5)の化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、前記式(a1-1)で表される化合物、前記(a2-1)の化合物、及び前記(a2-3)の化合物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエート、及び、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ショ糖ラウリン酸エステル及びショ糖ミリスチン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましい。
【0030】
逆不連続立方液晶相を形成するために使用する界面活性剤は、単一成分であるよりも、混合物すなわち2種以上であることが好ましく、さらに構造が類似した2種以上の成分の混合物であることがより好ましい。例えばオキシアルキレン基、好ましくはオキシエチレン基を有する非イオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基の付加モル数が互いに異なる2種以上の成分の混合物であることが好ましい。界面活性剤が、構造が類似した2種以上の成分の混合物であると、少量の油性媒体を混合することでも容易に逆不連続立方液晶相を形成できるので配合の自由度が高くなる。
【0031】
例えば前記一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤、又は前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤(u=v=0の場合を除く)において、該非イオン性界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数をnとした場合、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量は、上記観点から、実質0質量%であってもよく、すなわち0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下である。さらに、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。nが0である成分、すなわちオキシアルキレン基を持たない化合物の含有量は、油剤の性質が強くなるため少ない方がよく、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、下限は0質量%である。
上記非イオン性界面活性剤中の各成分の含有量は、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0032】
なお、2種以上の界面活性剤を組み合わせて用いる場合は、界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量、及び、オキシアルキレン基の付加モル数nが0である成分の含有量は、各々の界面活性剤中の上記成分の含有量を分析し、界面活性剤の混合比に応じて、界面活性剤全体の上記成分の含有量を算出することができる。
【0033】
界面活性剤における「構造が類似した2種以上の成分の混合物」のその他の例として、例えば前記一般式(a1)及び前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤においては、R1a又はR11aの炭化水素基の炭素数、種類、分岐の有無、並びに、オキシアルキレン基の種類、結合様式が互いに異なる、2種以上の成分の混合物が挙げられる。
【0034】
本発明の口腔用組成物中の両親媒性物質の含有量は、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、14質量%以上であり、好ましくは16質量%以上、より好ましくは19質量%以上である。また、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは52質量%以下、さらに好ましくは48質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0035】
<油性媒体>
本明細書において油性媒体とは、水相と分離して油相を形成し得る油剤を意味し、例えば、25℃の水100gに対する溶解度が0.1g未満である油剤をいう。
油性媒体は、他の成分と混合して逆不連続立方液晶相を形成する観点から、口腔用組成物の調製において、溶融状態、すなわち融点以上の温度で他の成分と混合することが好ましい。この観点から、油性媒体は、好ましくは融点が100℃未満、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下、よりさらに好ましくは20℃以下である。油性媒体の融点が上記範囲であると、例えば100℃を超える温度まで加熱することなしに、幅広い温度範囲において口腔用組成物を調製することが可能になる。
【0036】
油性媒体の分子量は、逆不連続立方液晶相を有する組成物を幅広い温度範囲で調製しやすくする観点から、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,200以下、さらに好ましくは1,000以下である。また、油性媒体の揮発を抑制する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、さらに好ましくは150以上、よりさらに好ましくは200以上である。
【0037】
油性媒体としては、極性基の少ない油剤が好ましい。極性基の少ない油性媒体であると、両親媒性物質及び水との混合により逆不連続立方液晶相を容易に形成できるためである。
具体的には、油性媒体はヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基の含有割合が少ない油剤であることが好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基のいずれも有さないことがより好ましい。より具体的には、油性媒体がヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、又はアミド基を有する場合であっても、これらの極性基の官能基当量は好ましくは300g/当量以上、好ましくは500g/当量以上、さらに好ましくは750g/当量以上、よりさらに好ましくは1,000g/当量以上である。
さらに油性媒体は、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基の含有量が少ないものであることが好ましく、具体的には、油性媒体中の炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基の含有量が、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは実質0質量%である。
【0038】
上記観点から、油性媒体としては、炭化水素油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(i)炭素数8以上36以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、(iii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数2以上12以下の2価アルコールとからなる脂肪酸ジエステル、(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0039】
(i)炭素数8以上36以下の炭化水素油としては、オクタン、2-エチルヘキサン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、ドコサン、スクワラン、スクワレン等の、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の炭素数8以上22以下の炭化水素油が挙げられる。該炭化水素油の炭素数は、好ましくは10以上36以下である。
【0040】
(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステルとしては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の、炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸と、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデシルアルコール、ドデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、フェノール、ベンジルアルコール等の、炭素数1以上24以下の脂肪族又は芳香環含有1価アルコールとのモノエステルが挙げられ、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0041】
(iii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数2以上12以下の2価アルコールとからなる脂肪酸ジエステルとしては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の、炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ハイドロキノン等の、炭素数2以上12以下の脂肪族又は芳香族2価アルコールとのジエステルが挙げられ、例えば、エチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジオレエート等が挙げられる。
【0042】
(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3-シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の、炭素数4以上18以下の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデシルアルコール、ドデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、フェノール、ベンジルアルコール等の、炭素数1以上24以下の脂肪族又は芳香環含有1価アルコールとのジエステルが挙げられ、例えば、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル等が挙げられる。
【0043】
(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステルとしては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸等の、炭素数5以上12以下の脂肪族又は芳香族トリカルボン酸と、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデシルアルコール、ドデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、フェノール、ベンジルアルコール等の、炭素数1以上24以下の脂肪族又は芳香環含有1価アルコールとのトリエステルが挙げられ、例えば、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0044】
また、(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルとしては、グリセリンと、炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸とのトリエステルが挙げられ、例えば、椰子油、オリーブ油、パーム核油、トリオレイン、2-エチルヘキサン酸トリグリセライド等が挙げられる。
【0045】
上記油性媒体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、油性媒体としては、(i)炭素数8以上36以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(i)炭素数8以上36以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、スクワラン、スクワレン、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリオレイン、及び2-エチルヘキサン酸トリグリセライドからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましい。
【0046】
本発明の口腔用組成物は、組成物中での逆不連続立方液晶構造を維持する観点から、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する油性媒体の含有量が少ないことが好ましい。その含有量は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基を含有しない油剤の含有量より少ないことが好ましく、具体的には、全油性媒体中、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%未満であり、よりさらに好ましくは0質量%である。
【0047】
本発明の口腔用組成物中の油性媒体の含有量は、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、好ましくは6質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0048】
また、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、口腔用組成物中の油性媒体の含有量は、両親媒性物質に対する質量比[油性媒体/両親媒性物質]として、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、よりさらに好ましくは0.3以上、よりさらに好ましくは0.4以上、よりさらに好ましくは0.5以上、よりさらに好ましくは0.6以上であり、また、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは5以下、よりさらに好ましくは3以下、よりさらに好ましくは1.5以下、よりさらに好ましくは0.9以下である。
【0049】
本発明の口腔用組成物に用いる両親媒性物質と油性媒体との組み合わせとしては、好ましくは下記である。
(1)両親媒性物質が、前記式(a1-1)で表される化合物、好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは3モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上20モル以下、よりさらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下の、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数が前記範囲のポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、
油性媒体が、炭化水素油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上、好ましくは炭素数8以上36以下の炭化水素油、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、及びグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは炭素数10以上36以下の炭化水素油、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、及びグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくは、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリオレインからなる群から選ばれる1種以上である組み合わせ。
【0050】
(2)両親媒性物質が、構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であるソルビタンモノ又はジ脂肪酸エステル(a2-1)、好ましくは構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であるソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステル;及び、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステルからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエートであり、
油性媒体が、炭化水素油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上、好ましくは炭素数8以上36以下の炭化水素油、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、及びグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリオレインからなる群から選ばれる1種以上である組み合わせ。
【0051】
(3)両親媒性物質が、構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル(a2-3)、好ましくは、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル、さらに好ましくはモノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ショ糖ラウリン酸エステル及びショ糖ミリスチン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上であり、
油性媒体が、炭化水素油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上、好ましくは炭素数8以上36以下の炭化水素油、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、及びグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリオレインからなる群から選ばれる1種以上である組み合わせ。
【0052】
<水>
本発明の口腔用組成物は、逆不連続立方液晶相における不連続相を形成し、水溶性成分を溶解させるために水を含有する。安定な液晶含有組成物を得る観点から、使用する水は脱イオン水又は蒸留水が好ましいが、口腔用組成物の安定性を損なわない範囲で、次亜塩素酸等で殺菌した水道水、地下水等を用いてもよい。
本発明の口腔用組成物中の水の含有量は、水溶性成分を溶解させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、よりさらに好ましくは30質量%以下である。
【0053】
本発明の口腔用組成物において、水溶性成分に対する水の比率は、水溶性成分を安定して包含する観点から、質量比[水/水溶性成分]として、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、よりさらに好ましくは50以上である。また、逆不連続立方液晶相の内部に水相を包含させる観点から、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,100以下、さらに好ましくは500以下、よりさらに好ましくは300以下である。
【0054】
本発明の口腔用組成物を構成する両親媒性物質と水との比率は、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、両親媒性物質と水の合計量に対する両親媒性物質の質量比[両親媒性物質/(両親媒性物質+水)]として、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.22以上、よりさらに好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、よりさらに好ましくは2以下、よりさらに好ましくは0.75以下、よりさらに好ましくは0.7以下、よりさらに好ましくは0.68以下である。
【0055】
本発明の口腔用組成物には、その他成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に汎用される、前記水溶性成分以外の添加剤、例えば、湿潤剤、粘結剤、歯質強化剤、pH調整剤、酵素類、抗炎症剤、血行促進剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、色素類、香料等を配合してもよい。
【0056】
但し、本発明の口腔用組成物中の水溶性成分、両親媒性物質、油性媒体、及び水の合計含有量は、逆不連続立方液晶相を安定して形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0057】
本発明の口腔用組成物の形態に特に制限はなく、粉歯磨、液状歯磨、練歯磨、潤製歯磨、口腔パスタ等のペースト状洗浄剤、洗口液、マウスウォッシュ等の液状洗浄剤、うがい用錠剤、歯肉マッサージクリーム、塗布型剤、組成物を含浸したシート材等の各種の形態とすることができる。
【0058】
本発明の口腔用組成物は、その形態及び用法に適した粘度及びpHが採用される。また、少なくともその使用温度において逆不連続立方液晶相を含有していればよいが、取り扱い性、汎用性の観点から、25℃において該液晶相を含有していることが好ましい。
【0059】
[口腔用組成物の製造方法]
本発明の口腔用組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、水溶性成分、両親媒性物質、油性媒体、及び水を同時に混合してもよく、水溶性成分、両親媒性物質、及び水の混合物を調製し、次いで油性媒体を混合してもよい。また、両親媒性物質と油性媒体とを混合し、次いで、水溶性成分を水に溶解させた水溶液を調製して混合してもよい。
【0060】
逆不連続立方液晶相を効率よく形成させる観点からは、予め、両親媒性物質の少なくとも一部と油性媒体の少なくとも一部とを混合する工程を有することが好ましい。より好ましくは、予め、両親媒性物質の全量と油性媒体の全量とを混合し、次いで水溶性成分を水に溶解させた水溶液を調製して混合する工程を有する方法である。
また、逆不連続立方液晶相を効率よく形成させる観点からは、口腔用組成物を構成する各成分を、油性媒体の融点以上の温度で混合することが好ましい。例えば油性媒体が常温(25℃)で液体である場合は、口腔用組成物を構成する各成分を常温以上の温度で混合すればよい。一方で、油性媒体が常温で固体である場合は、逆不連続立方液晶相を効率よく形成する観点から、油性媒体をその融点以上の温度まで加熱して溶融させ、溶融状態で他の成分と混合することが好ましい。この際、口腔用組成物を構成する油性媒体以外の全ての成分も、油性媒体の融点以上の温度まで加熱して、油性媒体と混合することが、逆不連続立方液晶相を効率よく形成させる観点からは好ましい。
口腔用組成物の製造においては、公知の撹拌装置を用いて、該組成物を構成する各成分を気泡発生を伴わない程度の条件で攪拌して得ることができる。
【0061】
本発明の口腔用組成物によれば、口腔内において、水溶性成分を、口腔内の油性バリア層である歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させることができる。本発明の口腔用組成物の水溶性有効成分の輸送性は、本発明の口腔用組成物において、水溶性有効成分に替えて、モデル製剤としてカルセインナトリウムを含有させた組成物を調製し、カルセインナトリウムの歯周組織への収着量を、蛍光強度測定により定量することで評価することができる。当該収着量は、具体的には実施例に記載の方法により評価できる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお、実施例における各測定及び評価は以下の方法により行った。
【0063】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテルの組成分析>
両親媒性物質であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの、オキシエチレン基の平均付加モル数がnである成分、ポリオキシエチレンラウリルエーテル中の、オキシエチレン基の付加モル数がnである成分、及びオキシエチレン基の付加モル数が0及びn+1~n+10である成分の含有量は、次に示す方法により測定した。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.06g、3,5-ジニトロ安息香酸クロリド0.06g、トリエチルアミン0.03gをアセトニトリル5mLに溶解させ、60℃で30分保持した後、アセトニトリル15mLで希釈したサンプルを用いて、下記の条件にて高速液体クロマトグラフィー(Agilent 1260 Infinity(アジレント・テクノロジー社製))により分析を行った。
・カラム:1Wakosil 5C18(4.6×250mm)(富士フイルム和光純薬(株)製)
・インジェクション量:20μL
・流量:1mL/min.
・溶離液 水/アセトニトリル(22/78)(体積比)
・検出:UV検出器
・オーブン温度:40℃
〔成分組成の算出〕
得られたチャートのピーク面積比率より、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを構成する成分のオキシエチレン付加モル数毎の質量比率を算出した。
【0064】
<口腔用組成物中の液晶相の構造確認>
各例で得られた口腔用組成物中の液晶相の構造は、小角X線散乱法(SAXS)により分析して確認した。分析には小角散乱測定装置((株)リガク製「NANO-Viewer」)を用い、直径5mm、厚み1.0mmのリング状フォルダーに混合物を充填し、フォルダーの両側をカプトン(登録商標)膜で覆って下記条件で測定を行った。
〔測定条件〕
X線源:Cu-Kα線(回転対陰極)
X線発生条件:加速電圧40kV、電流30mA
ピンホールスリットの直径:1st 0.4mm、2nd 0.2mm、3rd 0.45mm
カメラ長:525mm(ベヘン酸銀の1.513°(Cu,Kα)のピークを用いて決定)
サンプル温度:25℃
露光時間:5分
【0065】
測定の結果得られた散乱パターン(構造体の繰り返し面とX線とが成す角度をθ(°)として、横軸を2θ、縦軸を強度として得られた散乱パターン)において、ピーク分離が不明瞭な場合はガウス関数の組み合わせでピーク分割を行った。
露光時間は必要により延長し、ピーク位置が√3:√8:√11:√12:√16を満たす場合、組成物中にFd-3m型液晶相が存在していると特定した。
散乱パターンのピークが√6:√8:√14:√16:√20:√22:√24:√26・・・を満たす位置に現れた場合は、組成物中に、逆連続立方液晶相であるIa-3d型液晶相が存在していると特定し、散乱パターンのシャープなピークが1:√3:2を満たす位置に現れた場合はヘキサゴナル液晶相が存在していると特定した。なお、ガウス関数の分散の値から算出された半値全幅(FWHM)が0.1°(Cu、Kα)未満のものをシャープなピーク、0.1°(Cu、Kα)以上のものをブロードなピークとした。
また、散乱パターンのピークが1:2:3:n・・・(nは整数)を満たす位置に現れた場合はラメラ構造体が存在し、構造体の結晶面とX線とが成す角度をθとした場合に、2θ=0.5°~5°の間にBraggの式に基づく周期構造が認められない場合はミセル構造体が形成されていると特定した。Braggの式は下記であり、式中、nは整数を表す。
2dsinθ=nλ
d:結晶面の間隔
θ:結晶面とX線とが成す角度
λ:X線波長
【0066】
<水溶性成分の歯周組織への収着量>
(グリチルリチン酸二カリウムの収着量測定)
実施例1に示した組成物を作成し、以下の方法で歯周組織への収着量を定量した。
豚下顎の歯周組織を、70%エタノールを含んだ脱脂綿で洗浄後、ディスポンプローブ(ビーエスエーサクライ製)で、第三大臼歯の歯周ポケット深さを測定し、各部位が3mm程度であることを確認した。次いで、組成物約1gを、第三大臼歯と歯肉の周囲に塗布し、1時間静置した後、該組成物をキムワイプにより除去した。第三大臼歯辺縁の歯肉をメスで採取し、70%エタノールを含んだ脱脂綿で洗浄した後、下記組成の移動相1mLに浸漬させた。この浸漬液を、0.45μmフィルター(Millipore製)に通した後、高速液体クロマトグラフィー(HLPC)法により、下記の条件にて、グリチルリチン酸ジカリウムを定量した。
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(測定波長:254nm)
カラム:内径4.6mm、長さ150mm、粒径5μmオクタデシルシリル化シリカゲル
カラム温度:40℃
移動相:酢酸アンモニウム3.85g、酢酸5mLアセトニトリル280mL、水720mL
流量:毎分1.0mL
インジェクション量:40μL
(カルセインナトリウムの収着量測定)
水溶性有効成分のモデル製剤として1mM-カルセインナトリウム水溶液(東京化成工業(株)製)を用い、実施例14~25及び比較例1~4の組成物を作成した。各組成物を、グリチルリチン酸二カリウムの収着量の測定方法と同様の方法で豚の歯周組織に作用させ、1mL超純水に浸漬させた。この浸漬液を、0.45μmフィルター(Millipore製)に通した後、蛍光マイクロプレートリーダーシステム(MOLECULAR DEVICES製「Gemini EM」)を用いて、Excitation 490nm/Emission 520nmの蛍光強度を測定し、歯周組織内に浸透したカルセインナトリウム量を定量した。
【0067】
実施例1~25及び比較例1~4(組成物の調製及び評価)
表1~3に記載の両親媒性物質と油性媒体とを表中の配合量にて配合して95℃に加熱し、ボルテックスミキサーを用いて撹拌して、両親媒性物質と油性媒体との混合物を調製した。ここに、表1~3に記載の水溶性成分を表に記載の量の脱イオン水に溶解させた水溶液を添加し、再度95℃まで昇温した。ボルテックスミキサーを用いて撹拌しながら空冷し、液温が室温(25℃)近くになるまで撹拌を続けて、表1~3に示す組成の口腔用組成物を調製した。
得られた口腔用組成物について、前記方法で組成物中に存在する液晶相の構造、及び、水溶性成分の歯周組織への収着量を確認した。結果を表1~3に示す。
なお、表中に記載の配合量(質量%)は、有効成分量である。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表に記載の成分は下記である。
<水溶性成分>
*1:グリチルリチン酸二カリウム、富士フイルム和光純薬(株)製
*2:アラントイン、富士フイルム和光純薬(株)製
*3:パンテノール、Combi-Blocks製
*4:チアミン、富士フイルム和光純薬(株)製
*5:ナイアシン、富士フイルム和光純薬(株)製
*6:ナイアシンアミド、富士フイルム和光純薬(株)製
*7:ピリドキシン塩酸塩、富士フイルム和光純薬(株)製
*8:アスコルビン酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬(株)製
*9:アルギニン、Ajinomoto製
*10:アズレンスルホン酸ナトリウム、PICHEMICALS製
*11:ε-アミノカプロン酸、富士フイルム和光純薬(株)製
*12:トラネキサム酸、富士フイルム和光純薬(株)製
*13:ビオチン、富士フイルム和光純薬(株)
*14:1mM-カルセインナトリウム水溶液、東京化成工業(株)製
<両親媒性物質>
*15:ショ糖ラウリン酸エステル、SURFHOPE SE COSME C-1216(Misubishi-Chemical Foods co.製、HLB:16、Mono ester:80%
*16:ショ糖ミリスチン酸エステル、SURFHOPE SE COSME C-1416(Misubishi-Chemical Foods co.製、HLB:16、Mono ester:80%
*17:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、花王(株)製「レオドール TW-O120V」、オキシエチレン基の平均付加モル数n=20
*18:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王(株)製「エマルゲン108」、オキシエチレン基の平均付加モル数n=6、n=6である成分の含有量:9.2質量%、n=7~16である成分の含有量:54.7質量%
<油性媒体>
*19:スクワレン、富士フイルム和光純薬(株)製、融点-75℃
*20:スクワラン、富士フイルム和光純薬(株)製、融点-38℃
*21:トリオレイン、関東化学(株)製、融点-4℃
*22:パルミチン酸イソプロピル、花王(株)製「エキセパールIPP」、融点11℃
*23:ステアリン酸ブチル、花王(株)製「エキセパールBS」、融点21℃
*24:ミリスチン酸イソプロピル、花王(株)製「エキセパールIPM」、融点2℃
*25:オレイン酸、富士フイルム和光純薬(株)、融点13.4℃
【0072】
表1~3より、本発明の口腔用組成物(実施例1~25)はいずれも逆不連続立方液晶相であるFd-3m型液晶相を有するものである。また実施例1、14~25と比較例1~4との対比によれば、本発明の口腔用組成物を用いると、水溶性成分の歯周組織に対する収着量が、逆不連続立方液晶相を有していない比較例1~4の組成物を用いた場合よりも多いことがわかる。
【0073】
SAXS分析結果の一例として、
図1に実施例21の口腔用組成物をSAXS分析して得られた散乱パターンを示す。
図1に示すように、実施例21の口腔用組成物は散乱パターンのピークが√3:√8:√11:√12:√16を満たす位置に現れていることから、Fd-3m型液晶相を有していると判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、口腔内において、水溶性成分を、口腔内の油性バリア層である歯肉溝上皮よりも内部の結合組織に効率よく到達させることができる。