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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241003BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241003BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241003BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/022
B32B7/023
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J133/00
G02F1/1335 510
G09F9/00 304Z
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020058620
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157101
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】寳田 翔
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-25764(JP,A)
【文献】特開2018-25765(JP,A)
【文献】特開2014-115468(JP,A)
【文献】特開2020-46649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0233194(US,A1)
【文献】特開2018-200387(JP,A)
【文献】特開2020-106824(JP,A)
【文献】特開2020-106825(JP,A)
【文献】特開2020-139012(JP,A)
【文献】特開2021-47394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/022
B32B 7/023
B32B 27/00
C09J 7/38
C09J 133/00
G02B 5/30
G02F 1/1335 - 1/13363
G09F 9/00
H05B 33/00 - 33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面の少なくとも一部が三次元的な曲面形状である画像表示装置であって、
第一主面および第二主面を有し第二主面が内側となる三次元的な曲面形状部分を有する剛性の透明板;
第一主面および第二主面を有する光学フィルム;
可撓性の画像表示セル;
前記光学フィルムの第一主面と前記透明板の第二主面とを貼り合わせる第一粘着剤層;および
前記光学フィルムの第二主面と前記画像表示セルとを貼り合わせる第二粘着剤層、を備え、
前記第一粘着剤層は、ひずみ断面積Sが800μm以下であり、
前記第二粘着剤層は、ひずみ断面積Sが360μm以下である、
画像表示装置:
ただし、ひずみ断面積Sは、粘着剤層に10kPaのせん断荷重を15分間負荷した際のせん断方向のひずみ量δと、粘着剤層の厚みTを用いて、S=(1/2)×δTで表される量であり、
三次元的な曲面形状とは、面の法線を包含するあらゆる面における断面形状が曲線である形状である。
【請求項2】
前記光学フィルムが偏光子を含む、請求項に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光学フィルムが円偏光板を含み、前記画像表示セルが有機ELセルである、請求項に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面部分を有する剛性透明板を備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置では、画像表示セルの視認側表面に偏光板が設けられている。これらの画像表示装置の表面には、外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、ガラスや樹脂からなる硬質の透明板(カバーウインドウ)が設けられる場合があり、モバイル用途や車載用途では、この構成が主流となりつつある。偏光板とカバーウインドウとを粘着剤層を介して貼り合わせることにより、界面の屈折率差が減少し、反射や散乱に起因する視認性の低下を抑制できるとともに、耐衝撃性を付与できる。
【0003】
画像表示セルの視認側表面に偏光板を備え、偏光板の視認側表面にカバーウインドウを備える画像表示装置の形性において、偏光板の一方の面に画像表示セルと貼り合わせるための粘着剤層を備え、他方の面にカバーウインドウとの貼り合わせのための粘着剤層を備える両面粘着剤付きフィルムを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-115468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、樹脂フィルム等の可撓性基板(フレキシブル基板)を用いた有機ELセルが生産可能となり、画面の端部(矩形の長辺部分)が曲面形状を有するエッジディスプレイが実用化されている。また、画面の端部の4辺全てが曲面となっている4辺エッジディスプレイや、画面全体が湾曲形状や球面形状である曲面ディスプレイも提案されている。
【0006】
このような曲面を有するディスプレイでは、曲面を有する剛性のカバーウインドウに、可撓性の光学フィルム(偏光板等)および画像表示セルを貼り合わせることにより、光学フィルムおよび画像表示セルが、カバーウインドウの曲面形状に追従した曲面形状となることにより、曲面形状が維持されている。曲面形状部分では、外面側よりも内面側(曲率中心側)の曲率が小さいため、貼り合わせ界面に力学的なひずみが生じている。特に、球面形状のディスプレイや4辺エッジのコーナー部分は、三次元的な曲面形状を有するため、ひずみが大きく、貼り合わせ界面での剥離やシワが生じやすい。
【0007】
上記に鑑み、本発明は、曲面部分を有する画像表示装置に適用した場合でも貼り合わせ界面での剥離やシワが生じ難い粘着剤付き光学フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、画面の少なくとも一部が曲面形状である画像表示装置である。画像表示装置は、剛性の透明板、光学フィルム、および可撓性の画像表示セルを含む。透明板は、第二主面が内側となる曲面形状部分を有し、透明板の第二主面に、第一粘着剤層を介して、光学フィルムの第一主面が貼り合わせられている。光学フィルムの第二主面は、第二粘着剤層を介して画像表示セルと貼り合わせられている。
【0009】
光学フィルムとしては、光学等方性フィルム、光学異方性フィルム等が挙げられる。光学異方性フィルムとしては、偏光子、位相差板等が挙げられる。光学フィルムは、偏光子と位相差板とを積層した円偏光板等であってもよい。画像表示セルは有機ELセルであってもよく、画像表示装置は有機ELセルの視認側表面に光学フィルムとして円偏光板を備える有機EL表示装置であってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態は、上記の画像表示装置の形成に用いられる両面粘着剤付き光学フィルムであり、光学フィルムの第一主面上に第一粘着剤層を備え、光学フィルムの第二主面上に第二粘着剤層を備える。
【0011】
光学フィルムと透明板との貼り合わせに用いられる第一粘着剤層は、ひずみ断面積Sが800μm以下であることが好ましい。光学フィルムと画像表示セルとの貼り合わせに用いられる第二粘着剤層は、ひずみ断面積Sが360μm以下であることが好ましい。ひずみ断面積Sは、粘着剤層に10kPaのせん断荷重を15分間負荷した際のせん断方向のひずみ量δと、粘着剤層の厚みTを用いて、S=(1/2)×δTで表される量である。
【0012】
第一粘着剤層の厚みTは25~100μmであってもよく、第二粘着剤層の厚みTは5~30μmであってもよい。第一粘着剤層の厚みTは、第二粘着剤層の厚みTよりも大きくてもよい。第一粘着剤層のひずみ断面積Sは、第二粘着剤層のひずみ断面積Sよりも大きくてもよい。
【0013】
第一粘着剤層および第二粘着剤層は、アクリル系粘着剤層であってもよい。これらの粘着剤層を構成する粘着剤は、架橋構造を有するポリマーを含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
部材間を貼り合わせる粘着剤層のひずみ断面積が所定範囲であることにより、曲面部分を有する画像表示装置における、可撓性部材の剥離やシワを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の両面粘着剤付き光学フィルムの断面図である。
図2】一実施形態の画像表示装置の断面図である。
図3】有機ELセルの積層構成例を示す断面図である。
図4】粘着剤層のひずみ断面積の説明図である。
図5】回転式レオメータによるひずみ量およびひずみ断面積の測定についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかる両面粘着剤付き光学フィルムを模式的に表す断面図であり、図2は、本発明の一実施形態にかかる画像表示装置を模式的に表す断面図である。
【0017】
両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10と、光学フィルムの第一主面上に設けられた第一粘着剤層21と、光学フィルムの第二主面上に設けられた第二粘着剤層22とを備える。図1では、両面粘着剤付き光学フィルム50の第一粘着剤層21上に、第一離型フィルム41が剥離可能に貼着されており、第二粘着剤層22上に、第二離型フィルム42が剥離可能に貼着されている。
【0018】
図2に示す画像表示装置100では、光学フィルム10の第一主面が第一粘着剤層21を介してカバーウインドウ80の第二主面に貼り合せられ、光学フィルム10の第二主面が第二粘着剤層22を介して画像表示セル70と貼り合わせられている。両面粘着剤付き光学フィルム50および画像表示セル70は、不図示の筐体内に収容されている。
【0019】
画像表示装置100は、画面の少なくとも一部が、視認側(図の上側)が凸となる曲面形状を有している。図2では、画面の全体が球面状の曲面を有する形態が図示されているが、画面の一部が曲面状であり、他の部分は平面状であってもよい。例えば、画面が平面視矩形状であり、画面の中央部は平面であり、画面の端部(矩形の辺の部分)が下側に向かって湾曲する曲面形状を有していてもよい。
【0020】
画像表示装置の画面は、三次元的な曲面形状を有していてもよい。三次元的な曲面とは、面の法線を包含するあらゆる面における断面形状が曲線である形状を指す。例えば、球面状の曲面は、法線(径方向の直線)を含む面における断面が円弧であり、三次元的な曲面である。また、矩形の辺の部分が下側に向かって湾曲する曲面形状である表示装置(エッジディスプレイ)は、隣接する2つの辺が下側に向かって湾曲する曲面形状を有している場合、これらの2つの辺が交わるコーナー部分において、三次元的な曲面形状を有している。例えば、平面視矩形状の画面の周縁全体(4辺全て)が曲面となっている4辺エッジディスプレイは、4つのコーナー部分が三次元的な曲面形状を有している。なお、エッジディスプレイの矩形の辺の中央部は、辺と直交する方向の断面が曲線であるが、辺と平行な方向の断面は直線であるため、辺の中央部は「二次元的」な曲面形状である。
【0021】
[画像表示セル]
画像表示セルとしては、有機ELセルが挙げられる。曲面形状を有する画像表示装置の形成には、可撓性を有する画像表示セルを用いることが好ましい。可撓性を有する画像表示セルの形成には、可撓性基板が用いられる。
【0022】
図3は画像表示セルの積層構成の一例であり、トップエミッション型の有機ELセルを示している。トップエミッション型の有機ELセルは、基板71上に、金属電極73、有機発光層75および透明電極77を順に備えており、透明電極77側(図の上側)が光出射面である。透明電極77上には、封止材79が積層されている。図示を省略しているが、封止材79は、電極73,77、および有機発光層75の側面を覆うように設けられていることが好ましい。
【0023】
基板71としては、可撓性のプラスチック基板が好ましく用いられる。トップエミッション型の有機ELセルでは、基板71は透明である必要はなく、基板71としてポリイミドフィルム等の高耐熱性フィルムを用いてもよい。基板71として可撓性を有するガラス板(ガラスフィルム)を用いてもよい。
【0024】
有機発光層75は、それ自身が発光層として機能する有機層の他に、電子輸送層、正孔輸送層等を備えていてもよい。透明電極77は、金属酸化物層または金属薄膜であり、有機発光層75からの光を透過する。金属電極73、有機発光層75および透明電極77はいずれも薄膜であり、基板71に比べて十分に小さな厚みを有する。そのため、基板71が可撓性であれば、画像表示セル70全体が可撓性を有する。基板71の裏面側には基板の保護や補強を目的としてバックシート(不図示)が設けられていてもよい。
【0025】
有機ELセルは、基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層したボトムエミッション型でもよい。ボトムエミッション型の有機ELセルでは、透明基板が用いられ、基板が視認側(第二粘着剤層22側)に配置される。画像表示セルは有機ELセルに限定されず、液晶セルや電気泳動方式の表示セル(電子ペーパー)等でもよい。画像表示セル70の視認側表面には、タッチパネルセンサー(不図示)が配置されていてもよい。
【0026】
[カバーウインドウ]
画像表示装置の視認側表面に配置されるカバーウインドウ80は、剛性の透明板であり、第一主面81が視認側、第二主面82が画像表示セル70側に配置される。透明板の材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の透明樹脂やガラスが用いられる。カバーウインドウ80の厚みは、例えば50~2000μm程度である。外部からの衝撃に対する耐久性を高める観点から、カバーウインドウ80の厚みは、200μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましい。
【0027】
カバーウインドウ80はタッチパネルセンサーと一体化されたものでもよい。カバーウインドウ80の第一主面81には、反射防止層やハードコート層等が設けられていてもよい。カバーウインドウ80の面内の一部には、遮光性の印刷層が設けられていてもよい。
【0028】
カバーウインドウ80は、面内の少なくとも一部において、第二主面82が内側で、第一主面81側が凸状となる曲面形状部分を有している。カバーウインドウ80の全体が曲面形状であってもよい。曲面形状は三次元的であってもよい。例えば、画面全体が球面形状である場合は、カバーウインドウ全体が三次元的な曲面形状を有している。4辺エッジディスプレイのカバーウインドウは、画面の中央部は平面形状であり、画面周縁部では、辺の中央部分が二次元的な曲面形状を有し、コーナー部分が三次元的な曲面形状を有している。
【0029】
曲面形状部分を有する剛性のカバーウインドウ80と、可撓性の画像表示セル70とが、粘着剤付き光学フィルム50を介して貼り合わせられ積層一体化されることにより、画像表示セル70は、カバーウインドウ80の第二主面82(内面)に沿った曲面形状となる。なお、カバーウインドウ80の第一主面81は、一般には、第二主面82と同様に曲面形状部分を有しているが、第二主面82が曲面形状部分を有していれば、第一主面は平面であってもよい。
【0030】
[両面粘着剤付き光学フィルム]
図2に示す画像表示装置100において、カバーウインドウ80と画像表示セル70とは、両面粘着剤付き光学フィルム50を介して積層一体化されており、光学フィルム10の第一主面(視認側表面)に配置された第一粘着剤層21が、カバーウインドウ80の第二主面82に貼り合わせられている。光学フィルム10の第二主面に配置された第二粘着剤層22は、画像表示セル70の光出射面に貼り合わせられている。
【0031】
<光学フィルム>
光学フィルム10の例として、光学等方性フィルムおよび光学異方性フィルムが挙げられる。光学等方性フィルムとしては、透明フィルムが好ましい。光学異方性フィルムとしては、位相差板、偏光子等が挙げられる。光学フィルムは、複数のフィルムの積層体や、フィルム表面にコーティング層を設けた光学機能フィルムでもよい。
【0032】
複数の光学フィルムの積層体の例として偏光板が挙げられる。偏光板は、偏光子を含み、片面または両面に、必要に応じて、偏光子保護フィルムとしての透明フィルムが積層されている。
【0033】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0034】
偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号、特許第4751481号に記載されている偏光子が挙げられる。薄型偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と、ヨウ素等の二色性材料により染色する工程とを含む製法により得られる。
【0035】
偏光子保護フィルムとしては、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明樹脂フィルムが好ましく用いられる。偏光子の両面に偏光子保護フィルムが設けられる場合、透明フィルム13,15は同じ樹脂材料からなるフィルムでもよく、異なる樹脂材料からなるフィルムでもよい。
【0036】
光学機能フィルムとしては、位相差板、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学フィルム10は、偏光子の一方または両方の面に光学機能フィルムを備えるものであってもよい。光学フィルム10は、光学機能フィルムとして、タッチパネルセンサーを含んでいてもよい。タッチパネルセンサー付きの偏光板では、偏光子に接する透明フィルムが偏光子保護フィルムと光学機能フィルムとしての機能を兼ね備えていてもよい。透明フィルムが、タッチパネルセンサーの電極基板フィルムとしての機能を兼ね備えていてもよい。
【0037】
有機ELセル70の金属電極73は光反射性である。そのため、外光が有機ELセルの内部に入射すると、金属電極で光が反射し、外部からは反射光が鏡面のように視認される。有機ELセル70の視認側表面に、光学フィルム10として円偏光板を配置することにより、金属電極での反射光の外部への再出射を防止して、表示デバイスの画面の視認性および意匠性を向上できる。
【0038】
円偏光板は、偏光子の有機ELセル70側の面に位相差フィルムを備える。偏光子に隣接して配置された透明フィルムが位相差フィルムであってもよい。位相差フィルムがλ/4のレターデーションを有し、位相差フィルムの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角度が45°である場合に、偏光子と位相差フィルムとの積層体が、金属電極での反射光の再出射を抑制するための円偏光板として機能する。円偏光板を構成する位相差フィルムは、2層以上のフィルムが積層されたものであってもよい。例えば、偏光子とλ/2板とλ/4板とを、それぞれの光学軸が所定の角度をなすように積層することにより、可視光の広帯域にわたって円偏光板として機能する広帯域円偏光板が得られる。位相差フィルムとしては、例えば延伸樹脂フィルムが用いられる。位相差フィルムは配向液晶層であってもよい。
【0039】
<粘着剤層>
光学フィルム10とカバーウインドウ80とを貼り合わせるための第一粘着剤層21、および光学フィルム10と画像表示セル70とを貼り合わせるための第二粘着剤層22は、光学的に透明な粘着剤からなるものが好ましい。第一粘着剤層21および第二粘着剤層22は、複数の粘着剤層を積層したものでもよい。
【0040】
粘着剤層21,22は透明であり、可視光の吸収が小さいことが好ましい。粘着剤層21,22の全光線透過率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。粘着剤層21,22のヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。全光線透過率およびヘイズは、ヘイズメータを用いて、JIS K7136に準じて測定される。
【0041】
粘着剤層21,22を構成する粘着剤としては、粘着剤層21を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れることから、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0042】
アクリル系粘着剤は、粘着剤組成物の固形分全量に対するアクリル系ベースポリマーの含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。
【0044】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーを含有していてもよい。ベースポリマーが架橋可能な官能基を有する場合、ベースポリマーの熱架橋や光硬化等による粘着剤のゲル分率の上昇を容易に行い得る。架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしては、ヒドロキシ基含有モノマーやカルボキシ基含有モノマーが挙げられる。
【0045】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6‐ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12‐ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0046】
アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、窒素含有モノマーを含んでいてもよい。窒素含有モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー等が挙げられる。中でも、N-ビニルピロリドンおよび(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。
【0047】
アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、多官能重合性化合物(多官能モノマー)が含まれていてもよい。多官能重合性化合物としては、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や、1個のC=C結合と、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、ヒドラジン、メチロール等の重合性官能基とを有する化合物等が挙げられる。中でも、多官能(メタ)アクリレートのように、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。多官能重合性化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能重合性化合物は、オリゴマーであってもよい。
【0048】
ベースポリマーは、溶液重合、UV重合、塊状重合、乳化重合等の公知の重合方法により調製できる。ベースポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。ベースポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0049】
粘着剤に適度の接着保持力と柔軟性を持たせる観点から、ベースポリマーの重量平均分子量は、20万~100万が好ましく、25万~80万がより好ましい。なお、ベースポリマーの分子量とは、架橋構造導入前のポリマーの分子量を指す。
【0050】
ベースポリマーを形成するモノマー成分として、単官能モノマーに加えて多官能モノマーを用いる場合、先に単官能モノマーを重合して、低重合度のプレポリマー組成物を形成し(予備重合)、プレポリマー組成物のシロップ中に多官能モノマーを添加して、プレポリマーと多官能モノマーとを重合(後重合)してもよい。このように、プレポリマーの予備重合を行うことによって、多官能モノマーによる架橋構造を、ベースポリマー中に均一に導入できる。また、プレポリマー組成物と未重合のモノマー成分との混合物(粘着剤組成物)を基材上に塗布した後、基材上で後重合を行って、粘着剤層を形成してもよい。プレポリマー組成物は低粘度で塗布性に優れるため、プレポリマー組成物と未重合モノマーとの混合物である粘着剤組成物を塗布後に基材上で後重合を行う方法によれば、粘着剤層の生産性が高められると共に、粘着剤層の厚みを均一とすることができる。
【0051】
プレポリマー組成物は、例えば、アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分と重合開始剤とを混合した組成物(「プレポリマー形成用組成物」と称する)を、部分重合(予備重合)させることにより調製できる。なお、プレポリマー形成用組成物中のモノマーは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや極性基含有モノマー等の単官能モノマーであることが好ましい。プレポリマー形成用組成物は多官能モノマーを含んでいてもよい。例えば、ベースポリマーの原料となる多官能モノマー成分の一部をプレポリマー形成用組成物に含有させ、プレポリマーを重合後に多官能モノマー成分の残部を添加して後重合に供してもよい。
【0052】
プレポリマー形成用組成物は、モノマーおよび重合開始剤以外に、必要に応じて連鎖移動剤等を含んでいてもよい。プレポリマーの重合方法は特に限定されないが、反応時間を調整して、プレポリマーの分子量(重合率)を所望の範囲とする観点から、UV光等の活性光線照射による重合が好ましい。予備重合に用いられる重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されない。
【0053】
プレポリマーの重合率は特に限定されないが、基材上への塗布に適した粘度とする観点から、3~50重量%が好ましく、より好ましくは5~40重量%である。プレポリマーの重合率は、光重合開始剤の種類や使用量、UV光等の活性光線の照射強度・照射時間等を調整することによって、所望の範囲に調整できる。
【0054】
上記プレポリマー組成物に、アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分の残部(後重合モノマー)、および必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、シランカップリング剤、架橋剤等を混合して、粘着剤組成物を形成する。後重合モノマーは、多官能モノマーを含有することが好ましい。後重合モノマーとして、多官能モノマーに加えて、単官能モノマーを添加してもよい。
【0055】
粘着剤のベースポリマーは架橋構造を有していることが好ましい。ベースポリマーが架橋構造を有していることにより、粘着剤のクリープ率Cが小さくなり、これに伴って後述のひずみ断面積が小さくなる傾向がある。
【0056】
例えば、上記のように、ベースポリマーを形成するモノマー成分として、多官能重合性化合物を用いることにより、架橋構造を有するベースポリマーが得られる。ベースポリマーを重合後に、架橋剤を添加して架橋構造を形成することもできる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、通常、0.01~5重量部の範囲であり、好ましくは0.05~3重量部、より好ましくは0.07~2.5重量部である。ベースポリマーは、多官能重合性化合物による架橋構造と、ポリイソシアネート等の架橋剤による架橋構造の両方を含んでいてもよい。
【0057】
粘着剤は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収性が高く、かつアクリル系ポリマーとの相溶性に優れ、高透明性のアクリル系粘着シートが得られやすいことから、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、中でも、水酸基を含有するトリアジン系紫外線吸収剤、および1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0058】
上記例示の各成分の他、粘着剤は、シランカップリング剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0059】
基材上に粘着剤組成物を層状に塗布し、必要に応じて溶媒の乾燥やベースポリマーの架橋・硬化を行うことにより粘着剤層が形成される。粘着剤層21,22の厚みは特に限定されず、一般には5~500μm程度である。カバーウインドウ80の第二主面に加飾印刷層が設けられている場合は、印刷段差に対する段差吸収性を持たせるために、第一粘着剤層21の厚みは25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。第一粘着剤層21の厚みは、35μm以上、40μm以上または45μm以上であってもよい。
【0060】
カバーウインドウ80の曲面部分では、曲面の内側に位置する画像表示セル70の曲率が最も大きく(曲率半径が最も小さく)、ひずみが大きい。そのため、可撓性の画像表示セル70のひずみが大きい部分で、剥離やシワが生じやすくなる。特に、三次元的な曲面形状を有する場合は、全方位的なひずみが生じ、ひずみを逃がすことが困難であるため、剥離やシワが発生しやすい。
【0061】
本発明においては、両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層21および第二粘着剤層22が所定のクリープ特性を有することにより、曲面部分を有する表示装置における層間の剥離やシワの発生を抑制できる。第一粘着剤層21のひずみ断面積Sは800μm以下が好ましく、第二粘着剤層22のひずみ断面積Sは360μm以下が好ましい。ひずみ断面積Sは、粘着剤層に10kPaのせん断荷重(応力)を15分間負荷した際のせん断方向のひずみ量δと、粘着剤層の厚みTを用いて、S=(1/2)×δTで表される量である。
【0062】
図4は、粘着剤層のひずみ断面積の概念についての説明図であり、粘着剤層2の端部の一方の面を被着体1に貼り合わせた状態で矢印方向にせん断荷重を負荷した状態の断面を模式的に示している。せん断荷重を負荷する前の粘着剤層2の断面は長方形状であるのに対して(図4の破線)、粘着剤層2の下面を被着体1に固定した状態で、一定のせん断荷重を負荷すると、上面の変形が最も大きく、粘着剤層の断面は平行四辺形状に変形する(図4の実線)。
【0063】
上面のひずみ量をδ、粘着剤層の厚みをTとした場合、粘着剤層の断面における変形量は、三角形の面積S=(1/2)×δTで表される。この断面積Sがひずみ断面積である。クリープ率Cはひずみ量δと厚みTの比であり、C=δ/Tで表されるため、ひずみ断面積は、S=(1/2)CTと書き替えることができる。
【0064】
粘着剤層のひずみ量δは、回転式レオメータを用いて測定できる。図5に示すように、直径Dのパラレルプレートに一定のねじり力を負荷すると、上面のプレートがθ°回転する。この際のパラレルプレートの外周の回転量、すなわち円弧の長さπD(θ/360)がひずみ量δであり、厚みTとひずみ量δの比であるクリープ率Cは、C=πDθ/360Tとなる。
【0065】
粘着剤層の厚みが変わっても、クリープ率Cは変化しない。例えば、同一の粘着剤層を2層積層して、粘着剤層が1層の場合と同一の応力(2倍のせん断荷重)を負荷した場合、粘着剤層の厚みが2T、ひずみ量が2δとなるため、クリープ率Cは2δ/2T=δ/Tであり、粘着剤層が1枚の場合と同一である。すなわち、クリープ率は粘着剤の材質に固有の値であるといえる。
【0066】
上記の通り、ひずみ断面積Sは、クリープ率Cおよび厚みの2乗Tに比例する。そのため、粘着剤層の材質が同一である場合、厚みが大きいほどひずみ断面積は大きくなる。粘着剤層のひずみ断面積Sを小さくして、剥離やシワの発生を抑制するためには、粘着剤層の厚みTは小さい方が好ましい。特に、光学フィルム10と画像表示セル70との貼り合わせに用いる第二粘着剤層22は、可撓性部材同士を貼り合わせているため、曲面に起因するひずみが大きいと、剥離やシワの原因となりやすい。そのため、第二粘着剤層22の厚みTは、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、15μm以下が特に好ましい。第二粘着剤層22のひずみ断面積Sは、250μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。Sは、70μm以下、50μm以下、40μm以下または30μm以下であってもよい。
【0067】
曲面形状部分でのシワや剥離を抑制する観点からは、第二粘着剤層22のひずみ断面積Sはできる限り小さいことが好ましい。Sが小さいほど、曲率の大きい(曲率半径の小さい)曲面の貼り合わせに用いた場合でも、剥離やシワの発生を抑制できる。一方、第二粘着剤層22のひずみ断面積が過度に小さい場合は、接着力の不足に起因する剥離が生じる場合がある。そのため、第二粘着剤層22のひずみ断面積Sは、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
【0068】
第二粘着剤層のクリープ率Cは、80%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましい。上記のように、粘着剤層の厚みTが小さく、クリープ率Cが小さいほど、ひずみ断面積Sが小さくなる。粘着剤は、ベースポリマーの分子量が大きく、架橋度が高いほど、クリープ率が小さくなる傾向がある。そのため、架橋剤や多官能モノマーの量を多くすることにより、クリープ率の小さい粘着剤が得られる。また、ベースポリマーのガラス転移温度が高いほど、分子鎖の絡み合い等の分子鎖間の相互作用が大きくなるため、常温でのクリープ率が小さくなる傾向がある。
【0069】
画像表示装置の曲面形状部分において、第一粘着剤層21は、第二粘着剤層22に比べると曲率が小さい(曲率半径が大きい)。また、第一粘着剤層21は、光学フィルム10と剛性部材であるカバーウインドウ80とを貼り合わせるため、カバーウインドウ80側の界面では粘着剤層が変形せず、第二粘着剤層22に比べるとシワの原因となり難い。そのため、第一粘着剤層21のひずみ断面積Sは、第二粘着剤層22のひずみ断面積Sよりも大きくてもよい。また、第一粘着剤層21の厚みTは、第二粘着剤層22の厚みTよりも大きくてもよい。
【0070】
上記のように、第二粘着剤層22の厚みTを小さくしてひずみ断面積Sを小さくすることにより、曲面形状部分における光学フィルム10および画像表示セル70の剥離やシワの発生を抑制できる。また、第一粘着剤層21として相対的に厚みTが大きくひずみ断面積Sが大きい粘着剤層を用いることにより、視認側表面からの衝撃に対する耐衝撃性や、カバーウインドウ80の第二主面82に設けられた加飾印刷層等の印刷段差への段差吸収性を持たせることができる。
【0071】
一方、第一粘着剤層21のひずみ断面積Sが過度に大きい場合は、光学フィルム10および画像表示セル70の剥離やシワの原因となり得る。そのため、上述のように、第一粘着剤層21のひずみ断面積Sは、800μm以下が好ましい。Sは、600μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。ひずみ断面積Sを上記範囲とするために、第一粘着剤層の厚みTは100μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。Tは、70μm以下、60μm以下または50μm以下であってもよい。
【0072】
第一粘着剤層21に適度の耐衝撃性および柔軟性を持たせる観点から、第一粘着剤層21の25℃における貯蔵弾性率G’は、0.35MPa以下が好ましく、0.30MPa以下がより好ましく、0.25MPa以下がさらに好ましい。一方、粘着剤層21が過度に柔らかい場合は、クリープ率Cが大きくなり、これに伴ってひずみ断面積Sが大きくなって、曲面部分での剥離やシワの原因となる場合がある。そのため、第一粘着剤層21の25℃における貯蔵弾性率は、0.05MPa以上が好ましく、0.10MPa以上がより好ましい。同様の観点から、第二粘着剤層22の25℃における貯蔵弾性率は、0.05MPa以上が好ましく、0.10MPa以上がより好ましい。
【0073】
<離型フィルム>
両面粘着剤付き光学フィルムは、画像表示セルの形成に用いられるまでの間、図1に示すように、粘着剤層21,22の表面に離型フィルム41,42が仮着されていることが好ましい。離型フィルム41,42としては、フィルム基材の表面に離型層を備えるものが好ましく用いられる。離型層の材料としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤等が挙げられる。アクリル系粘着剤に対する密着性と剥離性とを両立可能であることから、シリコーン離型剤が好ましい。
【0074】
離型フィルムのフィルム基材としては、透明性を有する樹脂フィルムが好ましい。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂が特に好ましい。離型フィルムの厚みは、10~200μmが好ましく、25~80μmがより好ましい。第一離型フィルム41の厚みと第二離型フィルム42の厚みは、同一でもよく異なっていてもよい。
【0075】
[画像表示装置の形成]
第一粘着剤層21にカバーウインドウ80を貼り合わせ、第二粘着剤層22に画像表示セル70を貼り合わせることにより、画像表示装置100が形成される。貼り合わせの順序は特に限定されず、カバーウインドウ80の貼り合わせを先に実施してもよく、画像表示セル70の貼り合わせを先に実施してもよく、両者を同時に実施してもよい。
【0076】
粘着剤層21,22に、カバーウインドウ80および画像表示セル70を貼り合わせた後に、貼り合わせ界面や、印刷段差近傍の気泡を除去するために、加熱、加圧、減圧等の処理を行ってもよい。ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理を実施してもよい。
【0077】
上述のように、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22が所定の特性を有するため、カバーウインドウ80が曲面部分を有する画像表示装置においても、層間の剥離や、光学フィルム10および画像表示セル70のシワの発生を抑制できる。
【実施例
【0078】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
[粘着シートの作製例およびクリープの測定]
<粘着剤A~N>
反応容器内に、表1に示す重量比でモノマー(合計100重量部)を仕込み、光重合開始剤(BASF製「イルガキュア184」):0.1重量部を添加し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して、重合率約10%のプレポリマー組成物を得た。このプレポリマー組成物100重量部に、光重合開始剤(BASF製「イルガキュア651」):0.2重量部、多官能モノマーとして表1に示す量の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、およびシランカップリング剤(信越化学製「KBM-403」):0.3重量部を添加し、均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0080】
離型フィルム(片面がシリコーンで離型処理されたポリエステルフィルム)の離型処理面に、上記の粘着剤組成物を、厚みが50μmとなるように塗布して塗布層を形成し、この塗布層上に、別の離型フィルムの離型処理面を貼り合わせた。その後、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cmになるように位置調節したブラックライトにより、積算光量が3000mJ/cmとなるまでUV照射を行って重合を進行させ、両面に離型フィルムが仮着された粘着シートを得た。
【0081】
<粘着剤O,P>
反応容器内に、表1に示す重量比のモノマー(合計100重量部)、酢酸エチル233重量部、および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部を投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、65℃で5時間反応させ、続けて70℃で2時間反応させて、重量平均分子量約45万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。この溶液に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学製「タケネートD110N」):0.27重量部を加えて、粘着剤組成物を調製した。
【0082】
離型フィルムの離型処理面に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去した後、粘着剤層上に別の離型フィルムの離型処理面を重ね合わせ、両面に離型フィルムが仮着された粘着シートを得た。
【0083】
<クリープ量および貯蔵弾性率の測定>
離型フィルムを剥離除去した粘着剤層を、厚みが約1.5mmとなるように複数積層したものを測定用サンプルとした。8.0mmφのパラレルプレート備える回転式レオメータ(Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」)を用い、下記の条件で、クリープ測定および動的粘弾性測定を行った。クリープ測定におけるひずみ量δからクリープ率Cを算出し、動的粘弾性測定の結果から、25℃における貯蔵弾性率を読み取った。
(クリープ測定)
応力:10kPa
測定温度:25℃
(動的粘弾性測定)
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
【0084】
粘着剤A~Pの組成、ならびに厚み50μmの粘着シートのクリープ率および貯蔵弾性率の測定結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
[両面粘着剤付き偏光板の作製]
ロールラミネータを用いて、厚み約75μmの偏光板の一方の面(ハードコート層上)に粘着シート1を貼り合わせ、他方の面に粘着シート2を貼り合わせて、長尺の両面粘着剤付き偏光板(試料1~42)を得た。偏光板としては、ヨウ素が含浸された厚み12μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の一方の面にハードコート層を設けたトリアセチルセルロースフィルム(32μm)が貼り合わせられ、偏光子の他方の面にコーティング位相差層が設けられたトリアセチルセルロースフィルム(31μm)が貼り合わせられたものを用いた。
【0087】
粘着シート1,2は、表2に示すものを用いた。表2に示す粘着剤種A~Pは、上記の粘着シートの作製例における粘着シートA~Pの粘着剤と同一であり、表2に示すように厚みを変更した。粘着シートのひずみ断面積Sは、粘着シートの厚みTと、厚み50μmの粘着シートA~Pを用いて測定したクリープ量Cから、下記式に基づいて算出した。
S=(1/2)×CT
【0088】
<貼り合わせ評価>
試料1~42の粘着シート2から離型フィルムを剥離し、厚み25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトンEN100」)を、ロールトゥーロールにより貼り合わせた。この試料を、40mm×40mmの正方形に切り出し、粘着シート1から離型フィルムを剥離し、厚み2mm、直径65mm、内面の曲率半径100mmの球面ガラスの内面の中央に、粘着シート1を貼り合わせた。貼り合わせは、真空貼り合わせ機を用い、常温で、真空圧力100Pa、加圧力0.2MPa,加圧時間10秒の条件で実施した。その後、50℃、0.5MPaのオートクレーブで15分間処理した。
【0089】
オートクレーブ後の試料を、85℃の加熱オーブンに240時間投入した後、試料を取り出し、貼り合わせ状態を目視にて確認し、下記の基準により評価した。
〇:各層の貼り合わせ状態が保持されていたもの
△:幅5mm未満のシワが確認されたもの
×:幅5mm以上のシワまたは剥がれが確認されたもの
【0090】
試料1~42で用いた粘着シート(粘着剤の種類、粘着シートの厚みおよびひずみ断面積)、ならびに貼り合わせ評価結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示すように、粘着シート1および粘着シート2の厚みが小さいことによりひずみ断面積が小さくなり、曲面形状の剛性部材に貼り合わせた場合における剥離やシワを抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0093】
10 光学フィルム(円偏光板)
21,22 粘着剤層
41,42 離型フィルム
50 両面粘着剤付き光学フィルム
70 画像表示セル(有機ELセル)
71 可撓性基板
80 透明板(カバーウインドウ)
100 画像表示装置

図1
図2
図3
図4
図5