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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多色固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20241003BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/29
A61Q1/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020073229
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169424
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗吉 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】駒田 美香
(72)【発明者】
【氏名】藤井 美咲
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】マキアージュ ドラマティックムードヴェール(シルキー),@COSME,2016年11月21日,https://www.cosme.net/products/10119826/
【文献】ザボディショップ シマーキューブ / 31 イエローポピー,@COSME,2015年02月06日,https://www.cosme.net/variations/627614/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の着色固形組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置されてなる、多色固形化粧料であって、
前記複数の着色固形組成物は、白色と、進出色を少なくとも1色と、後退色を少なくとも1色とを含み、
白色の着色固形組成物の占める表面の面積が、化粧料の表面全体に対して15~30%であり、
前記白色の着色固形組成物における顔料酸化チタンの含有量が、前記白色の着色固形組成物全量に対し1~20質量%であり、
肌に塗布した際に、肌色を呈するファンデーションである、多色固形化粧料。
【請求項2】
前記進出色は、マンセルの表色系における赤色、赤黄色、及び黄色に分類される色から選択され、前記後退色は、マンセルの表色系における緑色、青緑色、及び青色に分類される色から選択される、請求項1に記載の多色固形化粧料。
【請求項3】
前記複数の着色固形組成物により8区画以上に区分されている、請求項1又は2に記載の多色固形化粧料。
【請求項4】
前記複数の着色固形組成物が、10色未満からなる、請求項1~のいずれか一項に記載の多色固形化粧料。
【請求項5】
前記複数の着色固形組成物が1色につき1区画ずつからなる多色固形化粧料を除く、請求項1~のいずれか一項に記載の多色固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースメークアップは、肌を美しく見せるためになされる化粧である。ベースメークアップ化粧料としては、ファンデーションの乗りを良くするための化粧下地や、肌色を整えるファンデーションや、シミやクマ等を目立たなくするコンシーラー等がある。また、ベースメークアップ化粧料は、肌色など単一の色の組成物のものが一般的である。
【0003】
近年、ファンデーション等の化粧料自体の外観を魅力的なものとするため、多色充填により固形化粧料を形成することが行われている(特許文献1等)。これらの多色固形化粧料は、通常、肌への塗布時に複数色の組成物を混ぜて用いられる。ここで混合される複数色の組成物が進出色と後退色との組み合わせを含んで構成される多色固形化粧料を用いると、肌に良好な奥行き感を付与できることも報告されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178878号公報
【文献】特開2019-064988号公報
【文献】特開2020-007242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は欠点をカバーしながらも、透明感があり自然な仕上がりのメークアップが好まれる傾向にある。しかしながら、従来の多色固形化粧料では塗布後の肌の透明感に必ずしも満足がいくものではなかった。
かかる状況に鑑みて本発明は、透明感があり自然な仕上がりと、カバー力とを両立して叶える多色固形化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究したところ、多色固形化粧料を構成する複数の着色組成物が、進出色と後退色に加えて白色を所定量含むと上記課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]複数の着色固形組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置されてなる、多色固形化粧料であって、
前記複数の着色固形組成物は、白色と、進出色を少なくとも1色と、後退色を少なくとも1色とを含み、
白色の着色固形組成物の占める表面の面積が、化粧料の表面全体に対して15~30%である、多色固形化粧料。
[2]前記白色の着色固形組成物における顔料酸化チタンの含有量が、前記白色の着色固形組成物全量に対し1~20質量%である、[1]に記載の多色固形化粧料。
[3]前記進出色は、マンセルの表色系における赤色、赤黄色、及び黄色に分類される色から選択され、前記後退色は、マンセルの表色系における緑色、青緑色、及び青色に分類される色から選択される、[1]又は[2]に記載の多色固形化粧料。
[4]前記複数の着色固形組成物により8区画以上に区分されている、[1]~[3]の
いずれかに記載の多色固形化粧料。
[5]前記複数の着色固形組成物が、10色未満からなる、[1]~[4]のいずれかに記載の多色固形化粧料。
[6]肌に塗布した際に、肌色を呈するファンデーションである、[1]~[5]のいずれかに記載の多色固形化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、透明感があり自然な仕上がりと、カバー力とを両立して叶える多色固形化粧料が提供される。また、本発明の多色固形化粧料は、複数色を混合して塗布することにより、奥行き感をも付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例・比較例(5色)で調製した化粧料の略形状を示す模式図である。
図2】比較例(4色)で調製した化粧料の略形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
本発明の多色固形化粧料は、複数の着色組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置され、多色固形化粧料を形成する。本明細書において、複数の着色組成物の配置方向は、媒体を介して、又は直接的に、肌に塗布する方向であり、通常容器の開口面と平行な水平方向である。具体的には、ケーキタイプの化粧料であれば、化粧料をパフ上に転写するためパフを摺動する平面方向に、スティックタイプの化粧料であれば、肌に塗布する塗布平面方向に、複数の着色組成物が配置される。
なお、ここで「固形」とは、室温(25℃)において流動性がないことをいう。
【0011】
多色固形化粧料は2色以上の着色組成物からなる限り特段限定されず、2色であってよく、3色であってよく、4色であってよく、5色以上であってよい。場合によっては10以上の色を用いてもよいが、化粧料の各着色組成物の色数が多すぎても少なすぎても奥行き感が失われ、単一色で平面的であると認識され得ることから、10色未満であることが好ましい。
この理由としては、肌の色は一定ではなく、場所によって明度、色相がばらついているところ、化粧料においても異なる色の集合体で、適度に色を分散させて肌色を表現したことで、良好な奥行き感が得られると考えられる。
また、本発明の多色固形化粧料は、肌に塗布した際に、好ましくは肌色を呈する。
【0012】
多色固形化粧料は複数の着色組成物で色ごとに区分される態様をとるが、ここで配置される複数の着色組成物の数(区画数、スポット数)は、着色組成物の色の数以上あれば特に限定されず、好ましくは8以上、より好ましくは15以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは35以上、特に好ましくは40以上であり、また好ましくは100以下、より好ましくは95以下、さらに好ましくは90以下である。
それぞれの着色固形組成物の大きさ(区画の面積)は特段限定されないが、最小面積の着色固形組成物に対する最大面積の着色固形組成物の面積比が5以下であってよく、4以下であってよく、3以下であってよく、2以下であってよく、それぞれの着色固形組成物の大きさが略同一であることが好ましい。また、最小の着色固形組成物の面積は、良好な奥行きの観点から0.04cm以上であってよく、0.25cm以上であってよく、また3cm以下であってよく、1.5cm以下であってよい。
【0013】
なお、本明細書において化粧料や組成物の「面積」は、容器等に充填された化粧料や組成物のうち容器から露出している面(表面)の面積を指す。通常は、パフを摺動させる面、あるいは肌に直接塗布するときはその塗布面が「表面」に相当する。
【0014】
本発明の多色固形化粧料は、パフを摺動させる平面における、あるいは肌に直接塗布するときはその塗布平面における、着色組成物の数を複数有し、単一色とはならない。これにより、化粧膜において色が偏在し、それにより欠点がカバーされつつ自然な仕上がりと奥行き感を呈する。なお、色の偏在とは、化粧料を塗布したときの、複数の着色組成物にそれぞれ含まれる顔料の含有面積比率(一定面積中に顔料が占める割合)のばらつきが大きいことをいう。
また、化粧膜に偏在する色に後述のごとく白色が存在することにより、良好な透明感が付与される。透明感とは、くすみのない透き通ったように見える状態をいう。
通常は、肌の欠点をカバーしようとすると化粧膜の存在を感じさせる不自然な仕上がりになりやすいが、本発明の多色固形化粧料は、透明感のある自然な仕上がりとカバー力とを両立させることができる。
【0015】
本発明の多色固形化粧料は、複数の着色組成物に白色と、進出色を少なくとも1色と、後退色を少なくとも1色とを含む。
【0016】
進出色とは、背景になる色から浮き出して近くになるように見える色の総称であり、通常マンセルの表色系における、赤紫、赤色、赤黄色、黄色、黄緑に分類される色から選択される。一般に、明度が高く、彩度も高い色である。具体的には、赤色、橙色、黄色などがその代表色としてあげられる。
後退色とは、背景になる色から奥に引っ込んで見える色の総称であり、通常マンセルの表色系における、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色に分類される色から選択される。一般に明度が低く、彩度も低い色である。具体的には、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色などがその代表色としてあげられる。
【0017】
前記白色の着色固形組成物は、白色を呈し、L*値が好ましくは90以上、より好ましくは95以上、さらに好ましくは98以上を示す。通常は有色顔料を実質的に含まない。実質的に含まないとは、組成物全体の好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量以下をいう。
【0018】
本発明の多色固形化粧料において、白色の着色固形組成物の占める表面の面積は、化粧料の表面全体に対して15~30%であり、より好ましくは15~25%であり、さらに好ましくは15~20%である。
このような範囲とすることで、多色を混合した際に白色の含有量(偏在量)が適切なものとなり、化粧料を塗布した肌に良好な透明感を付与することができる。
【0019】
白色の着色固形組成物における顔料酸化チタンの含有量は、前記白色の着色固形組成物全量に対し好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは10~15質量%である。
このような範囲とすることで、化粧料を塗布した肌に自然な仕上がりを付与することができる。白色着色固形組成物中の顔料酸化チタンの含有量が多すぎると、化粧料を塗布した際に全体の明度が上がりすぎて適度な肌色を呈しにくい場合がある。また、白色着色固形組成物中の顔料酸化チタンの含有量を多くしながら明度を下げようとすると、他の顔料(赤色、黄色など)を増やす必要が生じ、化粧料を塗布した際に色ムラが生じる場合がある。
【0020】
多色固形化粧料が肌上で肌色を呈するためには黒色粉体を含むことが好ましいが、赤色、赤黄色、及び/又は黄色を含む着色組成物に黒色粉体を配合すると、外観がくすむ傾向にある。そのため、進出色を含む着色組成物には、黒色粉体を実質的に配合しないことが好ましい。なお「実質的に配合しない」とは、進出色を含む着色組成物が有する鮮やかさ
がくすむ程度に配合しないことを意図しており、例えば着色組成物全量中に黒色粉体が0.8質量%以下であってよく、0.5質量%以下であってよく、0.3質量%以下であってよく、0.1質量%以下であってよく、0.05質量%以下であってよく、0.01質量%以下であってよい。
【0021】
一方で、後退色を含む着色組成物に黒色粉体を配合しても、外観の華やかさは失われにくい。そのため、後退色を含む着色組成物に黒色粉体を配合することは好ましい。この場合、青色、青緑色、及び/又は緑色を含む着色組成物に配合する黒色粉体の含有量は、着色組成物全量に対し通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また通常2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。
黒色粉体の例としては、黒酸化鉄、カーボンブラック、チタンブラック等があげられる。
【0022】
本発明の多色固形化粧料は、前記複数の着色組成物を金皿等の容器に充填することにより製造することができる。
パウダータイプ(粉末剤型)の場合は、通常湿式製法で調製される。オイルゲルタイプやエマルションタイプ(乳化剤型)の場合は、例えば70~130℃に加温した着色組成物で充填した後に室温まで冷却して、固形化粧料を得る。
【0023】
複数の着色組成物の配置面方向における形状は特段限定されず、丸型、矩形型、多角形型、不定形、マーブル形状など、いずれであってもよい。また、これらが規則的に配置されていてもアトランダムに配置されていてもよい。パフにより擦り取る化粧料の色を一定に保つ観点からは、略同形状の複数の着色組成物が規則的に配置されていてもよく、例えば市松模様の配置が挙げられる。
【0024】
本発明の多色固形化粧料の形状は、ケーキタイプである場合には、コンパクトに収納することを考慮すると、通常丸型又は略矩形であるが、これに限られるものではない。ここで略矩形とは、矩形の形状に近い形状であるが、4つの角が丸みを帯びているものを含むことを意味する。なお、丸型とすることで、固形化粧料を最後まで均一に使いきれるというメリットが存在する。また、ケーキの厚みも特段限定されず、通常0.1cm以上であってよく、0.2cm以上であってよく、また通常2.5cm以下であってよく、好ましくは1.0cm以下程度であってよい。
一方で、スティックタイプの場合には、通常スティック状であり、その長さ、径は、適宜設定される。
【0025】
本発明の多色固形化粧料は、固形であれば特に限定されず、パウダータイプ(粉末剤型)でも、オイルゲルタイプ、エマルジョンタイプ(乳化剤型)でも構わない。
また、本発明の多色固形化粧料の態様としては、ファンデーション、フェイスパウダー、コンシーラー、チークカラー、アイカラー等が挙げられ、特に限定されない。
【0026】
以下、本発明の多色固形化粧料に用いる原料について、説明する。
1)粉体
本発明の多色固形化粧料に使用し得る粉体は、水、油脂、界面活性剤、アルコール類、シリコーン類などの化粧料原料には溶解しない、有機或いは無機の固形物の総称を意味する。
粉体の具体例としては、カオリン、タルク、マイカ、セリサイト、チタンマイカ、積層樹脂小片(グリッター)、ホウケイ酸Ca/Al、チタンセリサイト、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、群青、紺青、赤色102号、赤色226号、黄色4号等の色素顔料、アルミニウムレーキ、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、メチルシロキサン網状重合体、架橋型メチルポリシロキサン樹
脂、アクリル酸アルキル樹脂類、ナイロン、シルク、セルロース或いはこれらの複合材料などが例示できる。
粉体の形状は、球状、不定形、多孔質状、中空状、繊維状、板状或いは塊状であってもよい。更に、その表面は、シリコーン被覆処理、金属石けん被覆処理、アシルアミノ酸塩被覆処理など、通常知られている表面処理が為されていてもよい。
【0027】
粉体は、各着色組成物において、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本発明の多色固形化粧料において粉体は、パウダータイプの場合には、多色固形化粧料中、及び/又は着色組成物中通常65質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、通常95質量%以下であり、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
オイルゲルタイプの場合には、多色固形化粧料中、及び/又は着色組成物中通常30質量%以上であり、40質量%以上であることが好ましい。また、通常70質量%以下であり、60質量%以下であることが好ましい。
【0028】
2)油性成分
本発明の多色固形化粧料は、油性成分を含んでもよい。
油性成分の具体例としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素油;オレイン酸、イソステアリン酸等の液状脂肪酸;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の液状高級アルコール;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット、グリセリルトリイソステアレート、グリセリルトリイソオクタネート等の合成エステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油;が挙げられる。但し、後述する特定の界面活性剤群に属するものは、油性成分として取り扱わないものとする。
【0029】
油性成分は、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本発明の多色固形化粧料において油性成分を配合する場合、パウダータイプの場合には、多色固形化粧料中通常5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましい。また、通常25質量%以下であり、20質量%以下であることが好ましい。
オイルゲルタイプの場合には、油性成分の含有量は、多色固形化粧料中通常30質量%以上であり、40質量%以上であることが好ましい。また、通常70質量%以下であり、60質量%以下であることが好ましい。
【0030】
また、オイルゲルタイプの場合には、油性成分として固形脂及び/又は半固形脂を含有することが好ましく、その含有量は組成物全体の3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、組成物全体の10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0031】
ここで、固形脂には半固形脂も含まれる。なお、固形とは25℃で流動性がないものをいい、半固形とは1気圧、20℃で応力の存在しない環境では殆ど変形しないが、若干の応力(10~100g/cm程度)がかかると変形するものをいう。また、融点が50℃以上のものがより好ましい。
固形脂及び/又は半固形脂としては、植物由来のものとして、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、シアバター、アフリカマンゴバター等が挙げられ、動物由来のものとして、ミツロウ、シェラックロウ、イボタロウ等が挙げられ、石油由来のものとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の精製ワックスが挙げられ、鉱物由来のものとしてオゾケライト、セレシン、モンタンワックス等の精製ワックスが挙げられる。
【0032】
本発明の組成物がオイルゲル剤型である場合は、前述の固形脂や半固形脂に加えて又は替えて、油性ゲル化剤を含有することも好ましい。
ここで油性ゲル化剤とは、油剤等の油性成分と相溶性のあるゲル化剤をいい、特に限定されないが、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、ジブチルラウロイルグルタミド、ジメチコンクロスポリマー等を例示できる。
油性ゲル化剤の含有量は、組成物全体の0.5質量%以上が好ましく、2質量%がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、組成物全体の10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。
オイルゲルタイプの場合の好ましい態様では、固形脂、半固形脂及び油性ゲル化剤からなる群から選択されるいずれかを化粧料全量に対し3~15質量%含有する。
【0033】
3)その他成分
本発明の多色固形化粧料には、通常固形化粧料に使用される成分を広く配合することが可能である。
【0034】
例えば、有効成分としては、美白成分、抗炎症成分、植物エキス等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;
ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;
ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂
肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;等が挙げられる。
【0035】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0036】
増粘剤としては、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、等が挙げられる。
【実施例
【0038】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が例示された実施例のみに限定されることはない。
【0039】
<多色固形化粧料の調製>
表1~3に示す処方にしたがって、5色又は4色の着色組成物からなる多色固形化粧料を作製した。なお、白色以外の着色固形物は、塗布後の肌色を同程度の色味にするため、有色顔料の含有量を処方間で変えて調整した。
具体的には、各着色組成物について、粉体成分をヘンシェルミキサで混合し、その後油剤成分を加えて更に混合して混合物を得た。得られた混合物をパルペライザにて粉砕し、それぞれの着色組成物を得た。
次に、隔壁を設けた略矩形の金皿の、隔壁で仕切られた区画ごとに種類の異なる化粧料組成物同士が混合しないように充填し、隔壁をはずして、ハンドプレス20Kgにて加圧成型して、図1又は図2に示すような多色固形ファンデーションを得た。また、隔壁のない金皿を用いて、多色ではない肌色単一色の比較例4の固形ファンデーションも同様に得た。
【0040】
実施例及び比較例の各ファンデーションについて、ファンデーションを水平方向に一周させて拭ったパフに取り肌に塗布したときのカバー力、仕上がりの自然さ、透明感について、熟練の評価者が4段階(◎:きわめて良い、○:良い、△:ふつう、×:悪い)で評価した。結果を表1~3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
実施例1と比較例3とを比べると、複数の着色固形物に白色が存在することにより透明
感が優れたものになることが認められる。
実施例1と比較例4とを比べると、肌色単色のものよりも多色を混合したもののほうが、透明感も仕上がりの自然さも優れることが認められる。
実施例1~7の結果から、白色の着色固形物中の顔料酸化チタンの含有量を1~20質量%とすると、仕上がりがより自然なものとなることがわかる。
実施例1と比較例1、2とを比べると、白色の着色固形物の面積を15~30%とすると、透明感や仕上がりがより良好となることがわかる。
図1
図2