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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20241003BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K3/34
C08L53/00
C08L91/00
C08L23/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020079271
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172765
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】322004083
【氏名又は名称】株式会社ENEOSマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】知野 圭介
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047274(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159786(WO,A1)
【文献】特開2017-160328(JP,A)
【文献】特開2018-087319(JP,A)
【文献】特開2016-193970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー成分と、
化学結合性の架橋部位を有さないポリブテン及び化学結合性の架橋部位を有さないポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤と、
を含有し、
前記ポリマー(A)及び前記ポリマー(B)がいずれも、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物であり、かつ、
JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプAデュロメータ硬度が0であり、かつ、JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプEデュロメータ硬度が15以下であること、
を特徴とするポリマー組成物。
【請求項2】
前記マレイン化率が0.1~0.9質量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーが、無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィン系ポリマーであることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィン系ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、及び、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン系ポリマーの無水マレイン酸グラフト変性物であることを特徴とする請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
クレイを更に含有することを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有することを特徴とする請求項1~6のうちのいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用途に応じた特性を発揮させるために、様々なポリマー組成物が研究されている。例えば、国際公開第2020/027109号(特許文献1)には、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含有し、かつ、前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)がいずれも、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物である樹脂組成物が開示されている。このような特許文献1に記載の樹脂組成物は、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった2つの特性をいずれも十分に優れたものとして両立させることを可能とするものであった。しかしながら、このような特許文献1に記載の樹脂組成物においても、べたつきがなく、しかも十分に低硬度でかつ圧縮永久歪に対する耐性に十分に優れたものとする(硬度の値と圧縮永久歪の値を双方とも十分に低くする)といった点においては改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/027109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、べたつきがなく、しかも硬度の値と圧縮永久歪の値を双方とも十分に低くすることが可能なポリマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリマー組成物を、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー成分を含有するものとし、前記ポリマー(A)及び前記ポリマー(B)をいずれも、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物とし、JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプAデュロメータ硬度を0~49とすることにより、得られるポリマー組成物を、べたつきがなく、しかも硬度の値と圧縮永久歪の値を双方とも十分に低くすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明のポリマー組成物は、
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー成分と、
化学結合性の架橋部位を有さないポリブテン及び化学結合性の架橋部位を有さないポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤と、
を含有し、
前記ポリマー(A)及び前記ポリマー(B)がいずれも、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物であり、かつ、
JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプAデュロメータ硬度が0であり、かつ、JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプEデュロメータ硬度が15以下であること、
を特徴とするものである。
【0007】
上記本発明のポリマー組成物においては、前記マレイン化率が0.1~0.9質量%であることが好ましい。また、上記本発明のポリマー組成物においては、前記架橋剤が、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物であることが好ましい。
【0008】
また、上記本発明のポリマー組成物においては、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーが、無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィン系ポリマーであることが好ましい。また、このような無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィン系ポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、及び、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン系ポリマーの無水マレイン酸グラフト変性物であることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明のポリマー組成物においては、クレイを更に含有することが好ましい。さらに、上記本発明のポリマー組成物においては、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有することが好ましい
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、べたつきがなく、しかも硬度の値と圧縮永久歪の値を双方とも十分に低くすることが可能なポリマー組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリマー組成物は、前記ポリマー(A)、並びに、前記ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー成分を含有し、かつ、前記ポリマー(A)及び前記ポリマー(B)がいずれも、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物であり、かつ、JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプAデュロメータ硬度が0~49であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明にかかるポリマー成分は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーからなる。このようなポリマー(A)~(B)において、「側鎖」とは、ポリマーの側鎖および末端をいう。また、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)」とは、ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、水素結合性架橋部位としてのカルボニル含有基および/または含窒素複素環(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。また、「側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有され」とは、水素結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a’)」と称する。)と、共有結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(b)」と称する。)の双方の側鎖を含むことによってポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合の他、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖(1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖:以下、このような側鎖を便宜上、場合により「側鎖(c)」と称する。)を含むことで、ポリマーの側鎖に、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合を含む概念である。
【0014】
このようなポリマー成分としては、より低硬度化を図ることができるといった観点から、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0015】
このようなポリマー成分中の前記ポリマー(A)~(B)の主鎖(主鎖部分を形成するポリマーの種類)は、前記ポリマー(A)~(B)が前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物であることから、かかる無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの主鎖に由来されたものとなる。なお、このようなポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成する熱可塑性ポリマー(無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの主鎖)については後述する。
【0016】
また、このようなポリマー(A)~(B)のガラス転移点はいずれも、前述のように25℃以下である。本発明において「ガラス転移点」は、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。なお、測定に際しては、昇温速度を10℃/minとして測定を行う。このようなポリマーのガラス転移点を25℃以下とすることで、通常の使用温度域(室温(25℃)以上)で柔軟性を付与することが可能となる。
【0017】
また、前記ポリマー(A)~(B)は、上述のように、側鎖として、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a);水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b);並びに、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(c);のうちの少なくとも1種を有するものとなる。なお、本発明において、側鎖(c)は、側鎖(a’)としても機能しつつ側鎖(b)としても機能するような側鎖であるとも言える。以下において、各側鎖を説明する。
【0018】
〈側鎖(a’):水素結合性架橋部位を含有する側鎖〉
このような水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)は、水素結合による架橋を形成し得る基(例えば、水酸基、後述の側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位等)を有し、その基に基づいて水素結合を形成する側鎖であればよく、その構造は特に制限されるものではない。ここにおいて、水素結合性架橋部位は、水素結合により、そのポリマーの分子同士を架橋する部位である。なお、水素結合による架橋は、水素のアクセプター(孤立電子対を含む原子を含有する基等)と、水素のドナー(電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子を備える基等)とがあって初めて形成されることから、ポリマーの分子同士の側鎖間において水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在しない場合には、水素結合による架橋が形成されない。そのため、ポリマーの分子同士の側鎖間において、水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在することによって初めて、水素結合性架橋部位が系中に存在することとなる。なお、本発明においては、ポリマーの分子同士の側鎖間において、水素のアクセプターとして機能し得る部分(例えばカルボニル基等)と、水素のドナーとして機能し得る部分(例えば水酸基等)の双方が存在することをもって、その側鎖の水素のアクセプターとして機能し得る部分とドナーとして機能し得る部分とを、水素結合性架橋部位と判断することができる。
【0019】
このような側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合を形成するといった観点から、後述の側鎖(a)がより好ましい。また、同様の観点で、前記側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位であることがより好ましい。
【0020】
〈側鎖(a):カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖〉
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有するものであればよく、他の構成は特に限定されない。このような水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有するものがより好ましい。
【0021】
このようなカルボニル含有基は、カルボニル基を含むものであればよく、特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基、チオエステル基、酸無水物基等が挙げられる。なお、本発明においては、ポリマー(A)及び(B)はいずれも、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物であることから、該無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーが有する「無水マレイン酸基」に由来した基(反応させた架橋剤の種類等にもよるが、例えば、エステル基、カルボニル基、アミド基、イミド基、カルボキシ基、酸無水物基等)を有するものとなる。
【0022】
また、前記側鎖(a)が含窒素複素環を有する場合、前記含窒素複素環は、直接又は有機基を介して前記側鎖(a)に導入されていればよく、その構成等は特に制限されるものではない。このような含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。なお、このような含窒素複素環は置換基を有していてもよい。ここで、前記側鎖(a)中に含窒素複素環を用いた場合、その複素環構造に起因して架橋を形成する水素結合がより強くなり、ポリマー組成物の延伸性、耐衝撃性がより向上するため好ましい。また、このような含窒素複素環としては、水素結合がより強固になり、圧縮永久歪みに対する耐性や機械的強度がより向上するといった観点から、5員環及び/又は6員環であることが好ましい。また、このような含窒素複素環としては、含窒素複素環をベンゼン環と縮合させたもの、含窒素複素環同士を縮合させたものであってもよい。このような含窒素複素環としては、公知のもの(例えば特許第5918878号公報の段落[0054]~[0067]に記載のもの、特開2017-206604号公報の段落[0035]~[0048]に記載のもの等)を適宜利用できる。なお、このような含窒素複素環は置換基を有するものであってもよい。このような含窒素複素環としては、例えば、ピロリドン、オキシインドール(2-オキシインドール)、インドキシル(3-オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、フタルイミジン、β-イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ヒドロキシエチルイソシアヌレートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0023】
このような含窒素複素環としては、リサイクル性、圧縮永久歪、硬度及び機械的強度(特に引張強度)に優れるといった観点から、それぞれ置換基を有していてもよい、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、トリアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環およびヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
このような含窒素複素環が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基、チオール基(メルカプト基)等が挙げられる。また、このような置換基としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;イミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基;等も用いることができる。また、これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
【0025】
また、前記側鎖(a)において、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環の双方が含まれる場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環は、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環とが互いに異なる基を介して結合した1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましい。このような側鎖(a)の構造としては、例えば、特許第5918878号公報の段落[0068]~[0081]に記載されているような構造等としてもよい。
【0026】
また、このような側鎖(a)は、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応により形成される。このような側鎖(a)を形成する際に利用する架橋剤としては、無水マレイン酸基と反応して水素結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(以下、場合により、単に「水素結合性架橋部位を形成する化合物」と称する)を好適に利用できる。このような架橋剤として利用可能な「水素結合性架橋部位を形成する化合物」としては、含窒素複素環を導入し得る化合物を好適に利用できる。このように、前記架橋剤としては、「水素結合性架橋部位を形成する化合物(より好ましくは、含窒素複素環を導入し得る化合物)」を好適に利用できる。このような「水素結合性架橋部位を形成する化合物(より好ましくは、含窒素複素環を導入し得る化合物)」としては、例えば、無水マレイン酸基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、イミノ基等)を有する化合物が好ましく、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物がより好ましい。また、このような無水マレイン酸基と反応する置換基を有する化合物(より好ましくは、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物)は、含窒素複素環を有するものであることが特に好ましい。
【0027】
〈側鎖(b):共有結合性架橋部位を含有する側鎖〉
本明細書において「共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)」は、主鎖を形成するポリマーの分子同士を共有結合により架橋する部位(共有結合性架橋部位:例えば、無水マレイン酸基と架橋剤とを反応せしめて形成し得る、アミド、エステル、および、チオエステルからなる群より選択される少なくとも1つの結合等の化学的に安定な結合(共有結合)等によりポリマー同士を架橋する部位)を含有している側鎖であることを意味する。なお、側鎖(b)は共有結合性架橋部位を含有する側鎖であるが、共有結合性部位を有しつつ、更に、水素結合が可能な基を有して、側鎖間において水素結合による架橋を形成するような場合には、後述の側鎖(c)として利用されることとなる(なお、前記ポリマーの分子同士の側鎖間に水素結合を形成することが可能な、水素のドナーと、水素のアクセプターの双方が含まれていない場合、例えば、系中に単にエステル基(-COO-)が含まれている側鎖のみが存在するような場合には、エステル基(-COO-)同士では特に水素結合は形成されないため、かかる基は水素結合性架橋部位としては機能しない。他方、例えば、カルボキシ基やトリアゾール環のような、水素結合の水素のドナーとなる部位と、水素のアクセプターとなる部位の双方を有する構造を前記ポリマーの分子同士の側鎖にそれぞれ含む場合には、前記ポリマーの分子同士の側鎖間で水素結合が形成されるため、水素結合性架橋部位が含有されることとなる。また、例えば、前記ポリマーの分子同士の側鎖間に、エステル基と水酸基とが共存して、それらの基により側鎖間で水素結合が形成される場合、その水素結合を形成する部位が水素結合性架橋部位となる。そのため、側鎖(b)が有する構造自体や、側鎖(b)が有する構造と他の側鎖が有する置換基の種類等に応じて、側鎖(c)として利用される場合がある。)。また、ここにいう「共有結合性架橋部位」は、共有結合によりポリマーの分子同士を架橋する部位である。
【0028】
このような共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)は特に制限されないが、例えば、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと;無水マレイン酸基(官能基)と反応して共有結合性架橋部位を形成し得る化合物(以下、場合により「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と称する)からなる架橋剤と;を反応させることで形成される、共有結合性架橋部位を含有する側鎖であることが好ましい。このような側鎖(b)の前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、および、チオエステルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。
【0029】
このような架橋剤として利用可能な「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、無水マレイン酸基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、イミノ基等)を有する化合物が好ましく、水酸基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種を有する化合物がより好ましい。また、このような無水マレイン酸基と反応する置換基を有する化合物(より好ましくは、水酸基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種を有する化合物)は、含窒素複素環を有するものであることが特に好ましい。
【0030】
また、このような架橋剤として利用可能な「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物;等が挙げられる。ここにおいて「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」は、かかる化合物が有する置換基の種類や、かかる化合物を利用して反応せしめた場合の反応の進行の程度、等によっては、前記水素結合性架橋部位及び前記共有結合性架橋部位の双方を導入し得る化合物となる(例えば、水酸基を3個以上有する化合物を架橋剤として利用して、共有結合による架橋部位を形成する場合、反応の進行の程度によっては、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの官能基(無水マレイン酸基)に2個の水酸基が反応して、残りの1個の水酸基が水酸基として残るような場合も生じ、その場合には、水素結合性の架橋を形成する部位も併せて導入され得ることとなる。)。そのため、ここに例示する「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」には、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物」も含まれ得る。このような観点から、側鎖(b)を形成する場合には、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」の中から目的の設計に応じて化合物を適宜選択したり、反応の進行の程度を適宜制御する等して、側鎖(b)を形成すればよい。なお、共有結合性架橋部位を形成する化合物が複素環を有している場合には、より効率よく水素結合性架橋部位も同時に製造することが可能になり、後述の側鎖(c)として、前記共有結合性架橋部位を有する側鎖を効率よく形成することが可能となる。そのため、かかる複素環を有しているような化合物の具体例については、側鎖(c)を製造するための好適な化合物として、特に側鎖(c)と併せて説明する。なお、側鎖(c)は、その構造から、側鎖(a)や側鎖(b)等の側鎖の好適な一形態であるとも言える。
【0031】
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能な前記ポリアミン化合物、前記ポリオール化合物、前記ポリイソシアネート化合物、前記ポリチオール化合物としては、公知のもの(例えば特許第5918878号公報の段落[0094]~[0106]に記載のもの等)を適宜利用することができる。
【0032】
〈側鎖(c):水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖〉
このような側鎖(c)は、1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖である。このような側鎖(c)に含まれる水素結合性架橋部位は、側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位と同様のものであり、側鎖(a)中の水素結合性架橋部位と同様のものが好ましい。また、側鎖(c)に含まれる共有結合性架橋部位としては、側鎖(b)中の共有結合性架橋部位と同様のものを利用できる(その好適な架橋も同様のものを利用できる。)。
【0033】
このような側鎖(c)は、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの官能基(無水マレイン酸基)と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)からなる架橋剤とを反応させることで、形成される側鎖であることが好ましい。
【0034】
このような架橋剤として利用され得る「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)」としては、無水マレイン酸基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、イミノ基等)を有する化合物が好ましく、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物がより好ましい。また、このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有しかつ共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)が好ましく、中でも、複素環含有ポリオール、複素環含有ポリアミン、複素環含有ポリチオール等がより好ましい。なお、このような複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールは、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有するものである以外は、前述の「共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)」において説明した前記ポリオール化合物、前記ポリアミン化合物および前記ポリチオール化合物と同様のものを適宜利用することができる。また、複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールとしては公知のもの(例えば、特許5918878号公報の段落[0113]に記載のもの)を適宜利用できる。
【0035】
(側鎖(b)~(c)中の共有結合性架橋部位として好適な構造について)
側鎖(b)及び/又は(c)に関して、共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している場合であって、これらの結合部位が水素結合性架橋部位としても機能する場合、他の水素結合架橋部位と水素結合して架橋がより強固となるといった観点から好ましい。このように、共有結合性架橋部位を有する側鎖中の第三級アミノ結合(-N=)やエステル結合(-COO-)が、他の側鎖との間において、水素結合を形成するような場合、かかる第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している共有結合性架橋部位は、水素結合性架橋部位も備えることとなり、側鎖(c)として機能し得る。
【0036】
無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマー中の官能基である無水マレイン酸基と反応して、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を形成させることが可能な化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成することが可能な化合物:架橋剤のうちの1種)としては、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)を好適なものとして挙げることができる。
【0037】
前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、例えば、特開2017-206604号公報の段落[0100]~[0109]に記載の構造と同様のものとしてもよい。例えば、前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、下記一般式(1)~(3)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有しているものを好適に利用できる(なお、以下の構造において、水素結合性架橋部位を含む場合、その構造を有する側鎖は、側鎖(c)として利用されるものである)。
【0038】
【化1】
【0039】
上記一般式(1)~(3)中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1~10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基であり、Gは酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~20の炭化水素基である。また、このような置換基Gとしては、下記一般式(111)~(114)で表される基が好ましい。
【0040】
【化2】
【0041】
以上、側鎖(a’)、側鎖(a)、側鎖(b)、側鎖(c)について説明したが、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
【0042】
また、前記ポリマー(A)は、前記側鎖(a)を有するガラス転移点が25℃以下のポリマーであり、前記ポリマー(B)は、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有しているガラス転移点が25℃以下のポリマー(側鎖として、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーや、側鎖に側鎖(c)を含むポリマー等)である。そして、本発明にかかるポリマー成分としては、前記ポリマー(A)~(B)のうちの1種を単独で利用してもよく、あるいは、それらのうちの2種以上を混合して利用してもよい。
【0043】
なお、前記ポリマー(B)は、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーであっても、側鎖(c)を有するポリマーであってもよいが、このようなポリマー(B)の側鎖に含有される水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合が形成されるといった観点から、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)であることが好ましい。また、前記ポリマー(B)の側鎖に含有される前記共有結合性架橋部位における架橋は、その架橋部位を含む側鎖間において水素結合等の分子間相互作用を引き起こさせることも可能となるといった観点から、アミド、エステル、および、チオエステルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。
【0044】
また、本発明にかかるポリマー(A)~(B)はいずれも、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物である。
【0045】
このように、前記ポリマー(A)~(B)を形成するために用いられる無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーは、融点が64℃以下(より好ましくは60℃~-100℃、更に好ましくは57℃~-50℃)のものである。このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの融点が前記上限を超えるとポリマー組成物の硬度が上がってしまい、硬度を十分に低くすることができなくなる。このような融点としては、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定した値を採用する。なお、このような融点の測定に際しては、昇温速度を10℃/minとして測定を行う。
【0046】
また、このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーは、マレイン化率が0.1~3.0質量%(より好ましくは0.2~2.7質量%、更に好ましくは0.3~2.5質量%)のものである。このようなマレイン化率が前記下限未満では架橋反応させても架橋密度を十分に高くすることができず、ポリマー組成物の機械物性を十分に高くすることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると流動性が低下する傾向にある。
【0047】
なお、本発明において「マレイン化率」の値(単位:質量%)は、下記[マレイン化率の測定方法]を採用して求められる値を採用する。
[マレイン化率の測定方法]
先ず、測定対象である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマー400mgを、80mLのテトラヒドロフラン(以下、便宜上、場合により「THF」と略記する)に溶解させて、測定用のTHF溶液を得る。次いで、前記測定用のTHF溶液を、小数点以下3桁以上のファクターが求められている0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液(容積分析用標準溶液:補正つきの0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液:小数点以下3桁以上のファクター(特性値:補正値)が記載されている市販のものを利用してもよい)で滴定する。ここにおいて、終点(中和点)は機器を利用した電位差滴定により求める。また、0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター(特性値:補正値)は、シュウ酸標準液による滴定で求めてもよいし、ファクターが求められている市販品を利用する場合には、市販品の試薬に記載されているファクター(例えばその試薬の検査成績書に記載されているファクター等)をそのまま利用してもよい。次いで、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーを用いない以外は同様の測定(空試験)を行って滴定し、80mLのTHFに対する0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の滴下量(ブランク値)も併せて求める。次に、求められた滴定値(滴下量)を利用して、下記「酸価の計算式」に基づいて酸価を算出し、次いで、得られる酸価の値を利用して、下記「マレイン化率の計算式」に基づいてマレイン化率を算出することにより、マレイン化率(単位:質量%)を求める。
<酸価の計算式>
[酸価]=(A-B)×M×C×f/S
(式中、Aは前記測定用の溶液の中和に要した0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の滴下量(滴定値:mL))を示し、Bはブランク(空試験)での0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の滴下量(無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーを用いない以外は同様の測定を行って得られる滴定値(ブランク値:mL))を示し、Mは水酸化カリウムの分子量(56.1(定数))を示し、Cは水酸化カリウムのエタノール溶液中の水酸化カリウムの濃度(0.1モル/L(定数))を示し、fは水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター(補正値:市販品の試薬に記載されているファクター(例えばその試薬の検査成績書に記載されているファクター等)をそのまま利用してもよい)を示し、Sは、測定に用いる無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの質量(400g(定数))を示す。なお、かかる計算により求められる「酸価」の単位は「mgKOH/g」となる。)
<マレイン化率の計算式>
[マレイン化率]=[酸価]÷M×M÷1000×100÷2
(式中、酸価は上記「酸価の計算式」により求められた値(単位:mgKOH/g)を示し、Mは水酸化カリウムの分子量(56.1(定数))を示し、Mは無水マレイン酸の分子量(98.1(定数))を示す。かかる計算により求められる「マレイン化率」の単位は「質量%」となる。)。
【0048】
また、このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの主鎖(ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成するポリマー)としては、いわゆる熱可塑性ポリマーの中から、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの融点が64℃以下となるように適宜選択したものを利用できる(なお、本明細書にいう無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーにおける「熱可塑性ポリマー」は、熱可塑性を有し、かつ、融点が64℃以下であるポリマー(融点が60℃~-100℃の範囲にあるものがより好ましい)であればよく、例えば、いわゆる「エラストマー」や「ゴム」であってもよい)。
【0049】
このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの主鎖(ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成するポリマー)は、特に制限されるものではないが、中でも、ポリオレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリアセタール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリオレフィン・アクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリオレフィン系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリオレフィン・アクリレート共重合体が更に好ましく、ポリオレフィン系ポリマーであることが特に好ましい。
【0050】
このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの主鎖として好適なポリオレフィン系ポリマーとしては、特に制限されず、α-オレフィンの重合体であっても、あるいは、α-オレフィンと、他の共重合可能なモノマーとの共重合体からなるポリマーであってもよい。このようなポリオレフィン系ポリマーとしては、中でも、ポリマー組成物の硬度をより下げ易いという観点から、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-オクテン共重合体(EOM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)が好ましく、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-オクテン共重合体(EOM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)がより好ましく、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、エチレン-オクテン共重合体(EOM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)が更に好ましい。
【0051】
なお、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーは、前記主鎖として説明した熱可塑性ポリマーを無水マレイン酸でグラフト変性させることにより得られるグラフト変性物(無水マレイン酸でグラフト変性させた熱可塑性ポリマー)である。そのため、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーとしては、無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィン系ポリマーであることが好ましく、PP、PE、EBM、EPM、EOM及びEPDMからなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン系ポリマーの無水マレイン酸グラフト変性物であることがより好ましい。なお、このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーは1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して利用してもよい。
【0052】
また、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーは、前記熱可塑性ポリマーを無水マレイン酸でグラフト変性させることにより得られるグラフト変性物(無水マレイン酸でグラフト変性させた熱可塑性ポリマー)であり、かつ、上述の融点及びマレイン化率の条件を満たすものであればよく、その製造方法は特に制限されず、公知の無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの調製方法を採用して、上記条件を満たすように原料の種類やその使用量を適宜調整することで容易に製造することができる。また、このような無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーは、上記条件を満たすものであれば、市販品を適宜利用してもよい。
【0053】
また、前記架橋剤としては、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマー中の無水マレイン酸基と反応して、前記ポリマー(A)及び(B)のうちのいずれかを形成することが可能なものであればよく、特に制限されず、目的とする設計に応じて、無水マレイン酸基と反応して、各種架橋部位を形成することが可能な化合物(目的とする側鎖を形成することが可能な化合物)を適宜選択して利用すればよい。
【0054】
このような架橋剤としては、前述の「水素結合性架橋部位を形成する化合物(より好ましくは、含窒素複素環を導入し得る化合物)」や「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を好適に利用できる。また、このような架橋剤としては、反応が効率よく進行するといった観点から、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物であることが好ましい。また、このような水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物としては、含窒素複素環(かかる含窒素複素環としては、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種がより好ましい)を有するものがより好ましい(なお、ここにいう「含窒素複素環」は前述のものと好適なものも含めて同様のものである)。このような水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物としては、例えば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(ベンゾグアナミン)、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン(アセトグアナミン)、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、アミノピリジン(2-、3-、4-)、3-アミノ-5-メチルイソオキサゾール、2-アミノメチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-ブチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1,3-ジヒドロー1-フェニル-2H-ベンズイミダゾールー2-チオン、ケリダム酸、コウジ酸、2,5-ジメルカプトー1,3,4-チアジアゾール、1-フェニルー5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、トリスヒドロキシエチルトリアジン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ヒドロキシピリジン(2-、3-、4-)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ピペリジンエタノール(2-、3-、4-)、ピペリジンメタノール(2-、3-、4-)、ピリジンエタノール(2-、3-、4-)、ピリジンメタノール(2-、3-、4-)、ベンゾグアナミン、4-メチルー5-(2’-ヒドロキシエチル)チアゾール、1-メチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、メラミン、メルカプトピリジン(2-、3-、4-)が挙げられる。このような化合物は、1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して利用してもよい。
【0055】
また、このような架橋剤としては、反応性が高く、工業的に入手しやすいという観点から、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい含窒素化合物、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい含酸素化合物、及び、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい含硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。なお、このような「水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)」や「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、無水マレイン酸基と反応可能なものであれば、公知の化合物(特開2017-57322号公報や特許第5918878号公報に記載されている化合物)の中から適宜選択して利用することができる。
【0056】
また、このような架橋剤は、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン;ペンタエリスリトール(pentaerythritol);スルファミド;並びに、ポリエーテルポリオール;からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0057】
このような架橋剤としては、耐圧縮永久歪性の観点からは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、スルファミド、ペンタエリスリトール、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、ポリエーテルポリオールが好ましく、ペンタエリスリトール、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが更に好ましい。
【0058】
また、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物を得るための方法は特に制限されず、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマー中の無水マレイン酸基と、架橋剤中の官能基とを反応させて、前記ポリマー(A)及び(B)を形成することが可能な方法であればよく(前記ポリマー(A)及び(B)において説明した架橋部位を形成させることが可能となるような方法であればよく)、架橋剤の種類等に応じて適宜反応させればよい。例えば、ニーダー等の混練機を利用して、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーを可塑化することが可能で、かつ、添加する架橋剤と無水マレイン酸基とを反応させることが可能となるような温度(例えば100~250℃程度)で、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーを混合(混練)しながら、架橋剤を添加して反応させる方法等を採用してもよい。
【0059】
また、このようなポリマー成分を含有する本発明のポリマー組成物は、JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプAデュロメータ硬度(JIS-A硬度)が0~49(より好ましくは0~45、更に好ましくは0~40)のものである。このようなタイプAデュロメータ硬度(JIS-A硬度)が前記上限を超えると硬度を十分に低い値とすることができず、組成物が硬くなりすぎて、より高い柔軟性を得ることができなくなる。なお、このようなタイプAデュロメータ硬度(JIS-A硬度)は、ポリマー組成物に上記特定のポリマー成分を含有させることにより(ポリマー成分の種類によっては、場合により、該ポリマー成分と他の成分とを混合することにより)、容易に達成させることが可能である。また、本発明において、タイプAデュロメータ硬度(JIS-A硬度)の値の測定方法は、温度条件を20±5℃として2012年発行のJIS K6253-3(JIS K6253-3:2012)に準拠した測定方法を採用すればよく、例えば、以下のような測定方法を採用できる。すなわち、先ず、水冷冷却機能付の加圧プレス機を用い、200℃に加熱した後、縦15cm、横15cm、厚み2mmの大きさの金型にポリマー組成物43gを入れて、加圧前に200℃で3分間加熱(予熱)し、次いで、温度:200℃、使用圧力:20Mpa、加圧時間:5分の条件で加圧(熱プレス)した後、使用圧力:20MPa、加圧時間:2分の条件で水冷冷却プレスを更に行い、前記金型からプレス後のポリマー組成物を取り出し、厚み2mmの測定用のシートを調製した後、かかるシートを直径29mmの円盤状に打ち抜いて、得られた円盤状シートを7枚重ね合わせ、高さ(厚み)が12.5±0.5mmになるようにして、測定用サンプルを調製し、得られた測定用サンプルを用いかつタイプA型のデュロメータ(デュロメータA硬度計)を用いて、該測定用サンプルの表面の5箇所について、20±5℃の温度条件下、JIS K6253-3(2012年発行)に準拠して、それぞれ硬度を測定し、その平均値として硬度を求める方法(A)を採用することにより求めることができる。
【0060】
また、このような本発明のポリマー組成物は、十分な柔軟性を有するという観点から、JIS K6253-3:2012に準拠した20±5℃の温度条件下において測定されるタイプEデュロメータ硬度(JIS-E硬度)が73以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、67以下であることが特に好ましい。このようなタイプEデュロメータ硬度(JIS-E硬度)の値の測定方法は、温度条件を20±5℃として2012年発行のJIS K6253-3(JIS K6253-3:2012)に準拠した測定方法を採用すればよく、例えば、タイプA型のデュロメータを用いる代わりにタイプE型のデュロメータ(デュロメータE硬度計)を用いる以外は、前述の方法(A)と同様の方法を採用して測定することができる。
【0061】
また、このような本発明のポリマー組成物は、用途に応じて、例えば、超低硬度のポリマー組成物とするといった観点からは、前記タイプAデュロメータ硬度(JIS-A硬度)が0であり、かつ、前記タイプEデュロメータ硬度(JIS-E硬度)が15以下(より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下)となるものが好ましい。
【0062】
また、本発明のポリマー組成物は、用途に応じて硬度や他の特性を適宜調整するといった観点等から、前記ポリマー成分以外の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分を含有する場合、本発明のポリマー組成物中の前記ポリマー成分の含有量は、前記タイプAデュロメータ硬度(JIS-A硬度)を0~49としつつ、圧縮永久歪の値を十分に低くするといった観点から、3質量%以上であることが好ましく、4質量%~99質量%であることがより好ましく、4質量%~90質量%であることが更に好ましく、4質量%~80質量%であることが特に好ましい。このようなポリマー組成物中のポリマー成分の含有量が前記下限未満では、かかるポリマー成分に基づいて得られる効果が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると混合が困難となる傾向にある。
【0063】
また、本発明のポリマー組成物は、破断物性(破断強度、破断伸び)向上の観点から、前記他の成分として、補強剤(充填剤)を含有することが好ましい。このような補強剤としては特に制限されず、公知の補強剤(なお、水素結合性の補強剤(充填剤)や、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、場合により単に「アミノ基導入充填剤」という)であってもよい)を適宜利用できる。このような補強剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレイ(有機化クレイであってもよい)、炭酸カルシウム(表面処理されたものであってもよい)等が好適なものとして挙げられる。
【0064】
また、このような補強剤としては、中でも、引張物性をより改善できるとともに、耐ブリード性をより改善することが可能であるといった観点から、クレイがより好ましい。このようなクレイとしては、公知のクレイ(例えば、特許第5918878号公報の段落[0146]~段落[0156]に記載のもの、特開2017-057393号公報の段落[0146]~[0155]に記載のもの等)を適宜利用することができる。また、このようなクレイの中でも、高分散性の観点から、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイ、並びに、有機化クレイからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、有機化クレイが特に好ましい。このように、本発明のポリマー組成物は、クレイを更に含有することが好ましく、有機化クレイを含有することが特に好ましい。
【0065】
また、本発明のポリマー組成物が前記補強剤(好ましくはクレイ、更に好ましくは有機化クレイ)を含有する場合、かかる補強剤の含有量は、前記ポリマー成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。なお、このような補強剤は、用途に応じて1種を単独で利用してもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
【0066】
さらに、本発明のポリマー組成物は、該組成物の流動性をより向上させることが可能となり、使用時の作業性がより高いものとなるばかりか、より効率よくポリマー組成物の硬度を調整できるといった観点から、前記他の成分として、可塑剤を含有することが好ましい。このような可塑剤としては特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、例えば、プロセスオイル、化学結合性の架橋部位を有さないポリブテン(より好ましくは、イソブチレン(イソブテン)を主体として、一部ノルマルブテンが反応した共重合体)、化学結合性の架橋部位を有さないポリイソブチレン(イソブチレン(イソブテン)の単独重合体)等を挙げることができる。なお、本明細書において「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、水素結合、共有結合、金属イオン-極性官能基間のキレーション、金属-不飽和結合(二重結合、三重結合)間のσ-π相互作用により形成される結合等の化学結合による架橋が形成されている部位を含まない状態であることをいう。
【0067】
また、このような可塑剤として利用可能なプロセスオイルとしては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイルが挙げられ、中でも、パラフィンオイルがより好ましい。また、このような可塑剤としては、スチレンブロック共重合体、α-オレフィン系ポリマー、ポリマー(A)及びポリマー(B)との間(これらの中でも、特にスチレンブロック共重合体との間)で相溶性がより向上するといった観点からは、パラフィンオイルを含有することがより好ましく、また、ポリマー組成物を、べたつき及びブリードがないものとしつつ、前記JIS-A硬度が0であり、かつ、前記JIS-E硬度が15以下となるような超低硬度のものとすることをより効率よく達成することが可能となるといった観点からは、化学結合性の架橋部位を有さないポリブテン、及び/又は、化学結合性の架橋部位を有さないポリイソブチレンを含有することがより好ましい。このように用途に応じた特性(硬度等)を得るといった観点等から、本発明のポリマー組成物においては、プロセスオイル、化学結合性の架橋部位を有さないポリブテン、及び、化学結合性の架橋部位を有さないポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤を更に含有することが好ましい。また、このような可塑剤の含有量としては、前記ポリマー成分100質量部に対して10~5000質量部であることが好ましく、30~3000質量部であることが特に好ましい。
【0068】
このような可塑剤として好適なパラフィンオイルとしては特に制限されず、公知のパラフィンオイルを適宜利用することができ、例えば、特開2017-57323号公報の段落[0153]~段落[0157]に記載のものを好適に利用できる。なお、このようなパラフィンオイルとしては、そのオイルに対して、ASTM D3238-85に準拠した相関環分析(n-d-M環分析)を行って、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(パラフィン部:CP)、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率(ナフテン部:CN)、及び、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率(芳香族部:CA)をそれぞれ求めた場合において、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(CP)が60%以上であることが好ましい。また、前記パラフィンオイルは、流動性、安全性の観点から、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される、40℃における動粘度が10mm/s~700mm/sのものであることが好ましい。さらに、前記パラフィンオイルは、流動性、安全性の観点から、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定されるアニリン点が80℃~150℃であることが好ましい。なお、これらの動粘度及びアニリン点の測定方法はそれぞれ特開2017-57323号公報の段落[0153]~段落[0157]に記載されている方法を採用できる。このようなパラフィンオイルとしては、適宜市販のものを利用することができる。
【0069】
このようなパラフィンオイルをポリマー組成物に含有させる場合、パラフィンオイルの含有量としては、前記ポリマー成分100質量部に対して10~5000質量部であることが好ましく、30~3000質量部であることが特に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、流動性及び作業性をより高度なものとするといったパラフィンオイルを添加することにより得られる効果が十分なものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発され易くなり、均一な状態のポリマー組成物を得ることが困難となる傾向にある。
【0070】
また、前記可塑剤として利用可能なポリブテンとしては、化学結合性の架橋部位を有さないものであればよく、特に制限されないが、べたつき及びブリードがないものとしつつより低硬度化を図ることが可能となるとともに、流動性をより向上させることが可能となるといった観点から、イソブチレン(イソブテン)を主体として、一部ノルマルブテン(1-ブテン、2-ブテン)が反応した共重合体であることがより好ましい。また、このような可塑剤としてのポリブテンとしては、市販品を適宜利用することができ、例えば、JXTGエネルギー社製の商品名「日石ポリブテン」、日油社製の商品名「日油ポリブテン・エマウエット」、BASF社製の商品名「Oppanol」等を適宜利用することができる。
【0071】
また、このようなポリブテンをポリマー組成物に含有させる場合、ポリブテンの含有量としては、前記ポリマー成分100質量部に対して10~5000質量部であることが好ましく、30~3000質量部であることが特に好ましい。このようなポリブテンの含有量が前記下限未満では、ポリブテンの含有量が少なすぎて、ポリブテンを含有させることによって得られる効果(硬度低減と流動性向上)を十分に得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリブテンの含有量が多くなり過ぎてブリードし易くなり、却って強度が低下する傾向にある。
【0072】
さらに、前記可塑剤として利用可能なポリイソブチレンとしては、化学結合性の架橋部位を有さないものであればよく、特に制限されないが、より低硬度化を図ることが可能となるとともに、流動性をより向上させることが可能となるといった観点から、イソブチレン(イソブテン)の単独重合体であることがより好ましい。また、このような可塑剤としてのポリイソブチレンとしては、市販品を適宜利用することができ、例えば、JXTGエネルギー社製の商品名「テトラックス」及び「ハイモール」等を適宜利用することができる。
【0073】
また、このようなポリイソブチレンをポリマー組成物に含有させる場合、これらの含有量としては、前記ポリマー成分100質量部に対して10~5000質量部であることが好ましく、30~3000質量部であることが特に好ましい。このようなポリイソブチレンの含有量が前記下限未満では、ポリイソブチレンの含有量が少なすぎて、ポリイソブチレンを含有させることによって得られる効果(硬度低減と流動性向上)を十分に得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリイソブチレンの含有量が多くなり過ぎてブリードし易くなり、却って強度が低下する傾向にある。
【0074】
また、本発明のポリマー組成物としては、前記可塑剤の利用時(特にオイル利用時)のブリード防止の観点等から、前記他の成分として、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有することが好ましい。そのため、本発明のポリマー組成物としては、前記可塑剤(より好ましくは前記パラフィンオイル、前記ポリブテン、及び、前記ポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種)と、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を組み合わせて含有させることが好ましい。
【0075】
また、本発明のポリマー組成物においては、前記可塑剤としての前記パラフィンオイルと前記スチレンブロック共重合体とを組み合わせて含有させることが好ましい。これにより、前記スチレンブロック共重合体にオイルを吸収させることが可能となり、オイルのブリード等をより十分に抑制しながら、得られるポリマー組成物の流動性をより高度に向上させることが可能となり、硬度をより効率よく調整することが可能となる。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、特開2017-57393号公報の段落[0156]~段落[0163]に記載のものを好適に利用できる。なお、「スチレンブロック共重合体」とは、いずれかの部位にスチレンブロック構造を有するポリマーであればよい。
【0076】
また、本発明のポリマー組成物においては、前記可塑剤としてのポリブテン及び/又はポリイソブチレンと、スチレンブロック共重合体とを組み合わせて含有させることが好ましい。これにより、ポリマー組成物をより容易に前記JIS-A硬度が0であり、かつ、前記JIS-E硬度が15以下となるような超低硬度のものとすることが可能となり、更には、スチレンブロック共重合体と組み合わせて利用した場合に表面ブリードをより高度に抑えることが可能となる。
【0077】
このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、機械的強度、オイル吸収性の観点から、スチレン含有量が10~50質量%(より好ましくは20~40質量%)のスチレンブロック共重合体であることが好ましい。また、このようなスチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布の分散度(Mw/Mn)としては、機械的強度、オイル吸収性の観点から、Mwが20万以上70万以下(より好ましくは35万以上55万以下)であることが好ましく、Mnが10万以上60万以下(より好ましくは20万以上50万以下)であることが好ましく、Mw/Mnが5以下(より好ましくは1~3)であることが好ましい。このようなスチレンブロック共重合体のガラス転移点は、エラストマー性の観点(エラストマー性を十分に備えるという観点)から、-80~-30℃(より好ましくは-70~-40℃)であることが好ましい。このような各種特性の測定方法(Mw、Mnなど)は、特開2017-57393号公報の段落[0156]~段落[0163]に記載の方法を採用する。
【0078】
このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、公知のもの(例えば、SIS、SEPS、SBS、SIBS、SEEPS、SEBSなど)を適宜利用できるが、分子量の高さ、工業的な入手性、経済性の観点から、スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。このようなスチレンブロック共重合体は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。このようなスチレンブロック共重合体としては、適宜市販のものを利用することができる。なお、前記可塑剤(特に、パラフィンオイル、ポリブテン、ポリイソブチレン)と組み合わせて利用する場合に耐オイルブリード性がより向上するといった観点からは、SEBS、SEEPSがより好ましい。また、前記JIS-A硬度が0であり、かつ、前記JIS-E硬度が15以下となるような超低硬度のポリマー組成物とするといった観点からは、本発明のポリマー組成物は、前記ポリマー成分と、前記ポリブテン及び/又は前記ポリイソブチレンと、前記SEEPSとを含有するものであることが特に好ましい。
【0079】
また、本発明のポリマー組成物に前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有させる場合、スチレンブロック共重合体の含有量としては、前記ポリマー成分100質量部に対して1~3000質量部であることが好ましく、5~2000質量部であることがより好ましい。また、前記パラフィンオイルと組み合わせて利用する場合において、前記スチレンブロック共重合体の含有量としては、1~3000質量部であることがより好ましく、5~2000質量部であることが更に好ましい。このような含有比率が前記下限未満ではオイルを添加した場合にオイルがブリードし易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成形性が低下する傾向にある。さらに、前記ポリブテン及び/又は前記ポリイソブチレンと組み合わせて利用する場合において、前記スチレンブロック共重合体の含有量としては、1~3000質量部であることがより好ましく、5~2000質量部であることが更に好ましい。このような含有比率が前記下限未満では前記スチレンブロック共重合体を含有させることにより得られる効果(オイルのブリードを十分に抑制する効果)を十分に得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記スチレンブロック共重合体の含有量が多くなり過ぎて、却って成形性が低下する傾向にある。
【0080】
また、本発明のポリマー組成物は、前記他の成分として、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーを更に含有してもよい。ここにいう「α-オレフィン系ポリマー」とは、α-オレフィンの単独重合体、α-オレフィンの共重合体をいい、「α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素二重結合を有するアルケンをいい、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。ただし、本発明においては、可塑剤として前記ポリブテン及び前記ポリイソブチレンを利用することから、ここにいう「α-オレフィン系ポリマー」としては前記ポリブテン及び前記ポリイソブチレン以外のものをいう。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーとしては、例えば、特開2017-57322号公報の段落[0204]~[0214]に記載のα-オレフィン系樹脂(ただし、ポリブテン及びポリイソブチレンを除く)を好適に利用できる。
【0081】
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン(PE,より好ましくはHDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、エチレン-オクテン共重合体を好適に利用できる。また、このようなα-オレフィン系ポリマーとしては、中でも、結晶化度が10%以上となるα-オレフィン系ポリマー(ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、ポリエチレン等)を好適に利用できる。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーを製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなα-オレフィン系ポリマーとしては、市販品を用いてもよい。なお、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーは1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーをポリマー組成物に含有させる場合、そのα-オレフィン系ポリマーの含有量は、前記ポリマー成分100質量部に対して、500質量部以下(より好ましくは5~300質量部、最も好ましくは35~200質量部)とすることがより好ましい。このようなα-オレフィン系ポリマーの含有量が前記下限未満では効果が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬度が高くなりすぎて、ポリマー組成物に十分に高度な柔軟性を付与することが困難となる傾向にある。
【0083】
なお、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーは、より高い流動性及びより高い成形性を得ることが可能となるといった観点から、前記パラフィンオイルと前記スチレンブロック共重合体とともに、組み合わせて組成物中に含有させることが好ましい。
【0084】
また、本発明のポリマー組成物は、その用途に応じて、老化防止剤及び/又は酸化防止剤を含有することが好ましい。このような老化防止剤及び酸化防止剤としては特に制限されず、公知のものを適宜利用することができる。なお、このような老化防止剤及び酸化防止剤の含有量は、特に制限されないが、前記ポリマー成分100質量部に対して、それぞれ20質量部以下(より好ましくは0.01~10質量部)であることが好ましい。
【0085】
また、本発明のポリマー組成物においては、その目的とする用途や設計に応じて、上述の他の成分(前記補強剤(充填剤)、前記可塑剤(軟化剤)、前記スチレンブロック共重合体及び前記α-オレフィン系ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤等)以外にも、ポリマーを含む組成物において用いられる公知の添加剤(例えば、特許5918878号公報の段落[0169]~[0174]に記載のもの等)を他の成分として更に使用してもよい。このような更に使用することが可能な添加剤(他の成分)としては、特に制限されるものではなく、ポリマーを含む組成物の分野において利用可能な公知の成分を適宜利用でき、例えば、前記ポリマー成分(A)~(B)以外のポリマー、前述のアミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、前記プロセスオイル以外の各種オイル、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー、滑材、加工助剤(加硫する場合のステアリン酸や酸化亜鉛等の加硫促進助剤)等の各種成分を挙げることができる。また、このような他の成分は、用途に応じて1種を単独で利用してもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
【0086】
また、このようなポリマー組成物を製造するための方法としては特に制限されず、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと前記架橋剤の反応物を、組成物中に含有させることが可能な方法であればよい。このような方法としては、例えば、特開2016-193970号公報の段落[0181]~[0215]に記載の方法において、該公報に記載の「原料化合物」を「前記架橋剤」とする以外は、該公報の同段落に記載されている方法と同様の方法を採用して、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと前記架橋剤とを反応させて、得られる反応物からなる前記ポリマー成分を含むポリマー組成物を製造してもよい。
【0087】
また、このようなポリマー組成物を製造するための方法としては、例えば、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと、前記架橋剤と、必要に応じて他の成分(前記補強剤、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体、前記可塑剤(パラフィンオイルやポリブテン等)、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマー、前記老化防止剤、酸化防止剤、及び、前記添加剤等)とを混合することにより、前記ポリマー成分を含有するポリマー組成物を得る方法を好適に採用することができる。このような方法においては、混合時に前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマー中の無水マレイン酸基と前記架橋剤中の官能基とを反応させて特定の架橋を形成することにより、ポリマー(A)及びポリマー(B)を調製することが好ましい。また、このような方法において、混合時に前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと前記架橋剤とを反応させることが可能となり、その反応時に、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーが有する無水マレイン酸基を開環させて、前記架橋剤との間で化学結合を形成させることが可能となるため、これにより、その成分の種類に応じて、目的とする「ポリマー(A)並びにポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー成分」を効率よく形成することができる。
【0088】
また、前記方法により無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと前記架橋剤とを反応させる場合、前記架橋剤の使用量を、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマー100質量部に対して0.1~10質量部とすることが好ましく、0.2~5.0質量部とすることが更に好ましい。このような架橋剤の添加量(質量部に基づく量)が前記下限未満では、架橋剤が少なすぎて架橋密度が上がらず、所望の物性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多すぎてブランチが多くなり(架橋剤が多すぎて架橋に関与しない架橋剤の割合が増えてしまい)架橋密度が下がってしまう傾向にある。
【0089】
また、このような方法において、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと前記架橋剤とを反応(無水マレイン酸基を開環)させる際の温度条件は特に制限されず、前記架橋剤の種類等に応じて、これらが反応可能な温度に調整すればよく、例えば、軟化させて反応を瞬時に進めるといった観点からは、100~250℃とすることが好ましく、120~230℃とすることがより好ましい。また、このような反応を行うための混合の方法は特に制限されず、ロール、ニーダー等で混合する公知の方法等を適宜採用することができる。更に、他の成分を添加する場合、各成分の添加順序等は特に制限されず、用いる成分の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、前記ポリマー組成物を製造する際に、他の成分として、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体、前記パラフィンオイル、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系ポリマーを添加する場合、以下のような方法を採用してもよい。例えば、先ず、前記スチレンブロック共重合体及び前記パラフィンオイルを100~250℃の温度条件で混合して混合物を得た後、次いで、該混合物に対して、前記温度条件下において、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと前記α-オレフィン系ポリマーとを添加し、混合して可塑化し、そこへ、前記温度条件下において架橋剤を添加して混合することにより、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤とを反応させ、これにより、前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物と、前記スチレンブロック共重合体と、前記パラフィンオイルと、前記α-オレフィン系ポリマーとを含むポリマー組成物を得る方法を採用してもよい。なお、更に前記補強剤(充填剤)や老化防止剤等の他の成分を含有させる場合、その利用する成分に応じて、該成分をいずれかの段階において適宜添加して混合すればよく、これらの成分の添加順序も特に制限されないが、補強剤を添加する場合には、その分散性をより向上させるといった観点から、前記架橋剤を添加して混合する前に補強剤を前記無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと混合することが好ましい。なお、これらの他の成分の添加量等は、目的の設計に応じて適宜変更することができる(例えば、上述の好適な含有量の範囲となるようにして、添加量を適宜設定してもよい)。
【0090】
本発明のポリマー組成物は、例えば、日用品、自動車部品、電化製品、工業部品等の用途に利用するポリマー製品を製造するための材料等として有用であり、中でも、硬度を十分に低くすることが可能であることから、主に人間が触る柔らかい触感を必要とする機械類、電気器具類の筐体・保護具、住宅や自動車の内装部材、人間型ロボット(アンドロイド、ヒューマノイド)の皮膚類、玩具等に利用することが特に好ましい。
【実施例
【0091】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
〔各実施例で利用した無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーについて〕
各実施例で利用した無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーの略称、ポリマー種、特性等を表1に示す。また、表1に記載の「マレイン化率」は、前述の[マレイン化率の測定方法]を採用して求めた値である(なお、滴定に際しては、電位差自動滴定装置として京都電子工業株式会社製の商品名「AT-710M」)を利用し、0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液としてメルク株式会社製の商品名「水酸化カリウムエタノール溶液」を利用した。このようにして用いた0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の補正値(ファクター)は、該溶液の検査成績書から確認したところ、1.00であった)。また、表1に記載の「融点」は、各ポリマーをそれぞれ0.01g用いて、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製の商品名「DSC7000X」)を用い、昇温速度を10℃/minとして測定した値(示差走査熱量測定(DSC)により求めた値)である。
【0093】
【表1】
【0094】
〔各実施例等で得られたポリマー組成物の特性の評価方法〕
<測定用のシートの調製>
各実施例等で得られたポリマー組成物をそれぞれ用いて、以下のようにして、組成物の特性の評価に利用するためのシートを調製した。すなわち、先ず、水冷冷却機能付の加圧プレス機を用い、200℃に加熱した後、縦15cm、横15cm、厚み2mmの大きさの金型にポリマー組成物43gを入れて、加圧前に200℃で3分間加熱(予熱)し、次いで、温度:200℃、使用圧力:20Mpa、加圧時間:5分の条件で加圧(熱プレス)した後、使用圧力:20MPa、加圧時間:2分の条件で水冷冷却プレスを更に行い、前記金型からプレス後のポリマー組成物を取り出して、厚み2mmの測定用のシートを得た。
【0095】
<圧縮永久歪及び硬度を測定するためのサンプル(測定用サンプル)の調整>
上述のようにして得られた測定用のシートをそれぞれ用いて、以下のようにして、組成物の圧縮永久歪及び硬度の測定に利用するための測定サンプルを調製した。すなわち、先ず、上記測定用のシートから直径29mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シートを7枚準備した後、かかる7枚の円盤状シートを、高さ(厚み)が12.5±0.5mmになるように重ね合わせることにより測定用サンプルを調製した。
【0096】
<圧縮永久歪(C-Set)の測定>
各実施例等で得られたポリマー組成物の圧縮永久歪(C-Set)は、上述のようにして得られた測定用サンプルを用い、かつ、圧縮装置としてダンベル社製の商品名「加硫ゴム圧縮永久歪試験器 SCM-1008L」を用いて、前記測定用サンプルを専用治具で25%圧縮し、70℃で22時間放置した後の圧縮永久歪(単位:%)をJIS K6262(2013年発行)に準拠して測定することにより求めた。
【0097】
<硬度(JIS-A硬度及びE硬度)の測定>
各実施例等で得られたポリマー組成物の硬度は、上述のようにして得られた測定用サンプルを用いて、以下のようにして測定した。すなわち、JIS-A硬度の測定にはタイプAデュロメータ(デュロメータA硬度計:テクロック社製の商品名「タイプAデュロメータGSD-719K」)を用い、他方、JIS-E硬度の測定にはタイプEデュロメータ(デュロメータE硬度計:テクロック社製の商品名「タイプEデュロメータGSD-721K」)を用いて、20±5℃の温度条件下、前記測定用サンプルの表面の5箇所の測定点(5点の測定箇所)に対して、JIS K6253-3(2012年発行)に準拠した硬度の測定をそれぞれ行い、各測定点の硬度の平均値(5点の平均値)を求めることによりA硬度及びE硬度をそれぞれ求めた。
【0098】
<べたつきの評価方法>
各実施例等で得られたポリマー組成物のべたつきは、以下のように評価した。すなわち、先ず、上述のようにして得られた厚み2mmの測定用のシートの表面を5人の試験者が指触にて、下記評価基準に基づいて1点~5点の評点をつけ、5人の平均値が3.0点以上のものをべたつき「あり」と評価し、3.0点未満のものをべたつき「なし」と評価した。
〈評価基準(べたつき)〉
1点:ベタツキは全く感じられない
2点:べたつきはほぼ感じられない
3点:べたつきをやや感じる
4点:べたつきを感じる
5点:べたつきを強く感じる。
【0099】
参考例1~6及び比較例1~5)
参考例1~6及び比較例1~5においてはそれぞれ、下記表2~3に記載の組成となるように各成分の使用量を調整して、後述の「ポリマー組成物の製造工程」を採用することにより、ポリマー組成物を製造した。なお、下記表2~3中の組成の数値は各参考例等において無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー(TP(1)~(11))の使用量を100質量部として換算した値(質量部)であり、参考例1~6及び比較例1~5において無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの使用量はいずれも10gとした。このようにして得られたポリマー組成物の特性(C-Set、硬度、べたつき)の評価結果を表2~3にそれぞれ示す。
【0100】
〈ポリマー組成物の製造工程〉
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、クレイトン社製の商品名「G1651HU」、スチレン含有量33質量%:以下、場合により「SEBS」と称する)を加圧ニーダーに投入して、180℃の条件で混合しながら、前記加圧ニーダー中に、可塑剤としてパラフィンオイル(SKルブリカンツ社製の商品名「YUBASE8J」)を滴下し、SEBSとパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー、エチレン-ブテン共重合体(三井化学株式会社製の商品名「タフマーDF7350」:以下、場合により「EBM」と称する)、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製の商品名「HJ590N」:以下、場合により「HDPE」と称する)および老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)を更に添加し、180℃で2分間混合(混練)して可塑化させて混合物(A)を得た。その後、下記工程(I)及び(II):
〔工程(I)〕 前記混合物(A)に対してそのまま架橋剤(架橋剤(1)又は(2))を添加して180℃で8分間混合(混練)する工程;
〔工程(II)〕 前記混合物(A)に対してクレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」:有機化クレイ)を添加して180℃で4分間混合(混練)した後に、架橋剤(架橋剤(1)又は(2))を添加して180℃で8分間混合(混練)する工程;
のうちのいずれかの工程を施すことにより、ポリマー組成物を製造した。なお、参考例1~2及び4~5並びに比較例1及び4においては前記混合物(A)を得た後、工程(I)を施し、また、参考例3及び6並びに比較例2~3及び5においては前記混合物(A)を得た後、工程(II)を施した。また、前記架橋剤に関して、「架橋剤(1)」としてはトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(日星産業株式会社製の商品名「タナックP」)を用い、「架橋剤(2)」としてはベンゾグアナミン(日本触媒社製の商品名「ベンゾグアナミン」)を用いた。
【0101】
〈表2~3に関して〉
(1)表2~3において、各参考例等で使用した無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーの種類は、便宜上、表1に記載の略称を用いて表記する。
(2)表2~3において、無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーの「マレイン化率の評価」には、マレイン化率が0.1~3.0質量%の範囲にあるという条件を満たすものを「S」と表記し、他方、マレイン化率が0.1~3.0質量%の範囲にあるという条件を満たさないものを「F」と表記する。
(3)表2~3において、無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーの「融点の評価」には、融点が64℃以下という条件を満たすものを「S」と表記し、他方、融点が64℃以下という条件を満たさないもの(融点が64℃よりも高い温度であるもの)を「F」と表記する。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例1~2
エチレン-ブテン共重合体(EBM)及び高密度ポリエチレン(HDPE)を用いず、スチレンブロック共重合体としてSEBSの代わりにスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)を用い、かつ、可塑剤としてパラフィンオイルの代わりにポリブテンを用い、かつ、組成(質量部)が表4に記載の組成となるように各成分の使用量を調整した以外は、上述の参考例1~6及び比較例1~5で採用した「ポリマー組成物の製造工程」と同様の工程を採用して、ポリマー組成物を製造した。ここにおいて、実施例及びにおいてはいずれも架橋剤としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(架橋剤(1))を用いた。また、実施例と実施例では、SEEPSとして種類の異なる市販品を用いた(実施例ではSEEPSとしてクラレ社製の商品名「セプトン4099」を用い、実施例ではSEEPSとしてクラレ社製の商品名「ハイブラー7135R」を用いた。)。また、実施例及びにおいては、前記ポリブテンとしてJXTGエネルギー社製の商品名「日石ポリブテンLV-7」を用いた。更に、実施例では工程(I)を施してクレイを添加せず、また、実施例では工程(II)を施してクレイを添加した。このようにして得られたポリマー組成物の特性(C-Set、硬度、べたつき)の評価結果を表4に示す。また、「マレイン化率の評価」及び「融点の評価」の項目についての記載内容は表2~3と同様である。
【0105】
【表4】
【0106】
表1~4の記載からも明らかなように、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物を含むポリマー組成物(参考例1~6及び実施例1~2)はいずれも、圧縮永久歪(C-Set)が42%以下の範囲にあり、かつ、JIS-A硬度が49以下となった。また、参考例1~6及び実施例1~2で得られたポリマー組成物はいずれも、べたつきのないものとなった。このように、参考例1~6及び実施例1~2で得られたポリマー組成物(参考例1~6及び実施例1~2)はいずれも、JIS-A硬度が49以下となるような十分に低い硬度を達成でき、また、圧縮永久歪(C-Set)の値が43%以下となるような、圧縮永久歪に対する耐性に十分に優れたものとなることが分かった。
【0107】
これに対して、融点が64℃以下であるという条件(以下、「条件(I)」と称する)及びマレイン化率が0.1~3.0質量%であるという条件(以下、「条件(II)」と称する)のうち、上記条件(I)を満たさない無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物を含むポリマー組成物(比較例1~2)の場合には、JIS-A硬度が66以上となっており、JIS-A硬度が49以下となるような十分に低い硬度を達成することができなかった。また、上記条件(I)を満たさない無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物を含むポリマー組成物(比較例1~2)の場合には、圧縮永久歪(C-Set)が58%以上となっており、圧縮永久歪(C-Set)の値を十分に低くすることもできなかった。
【0108】
また、表3に示す結果から、無水マレイン酸による変性が共重合によりなされた熱可塑性ポリマー(以下、場合により「共重合タイプの無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー」と称する)を無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーとして用いた場合(比較例3~5)について検討すると、かかる共重合タイプの無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物を含むポリマー組成物(比較例3~5)においてはいずれも、べたつきが生じてしまい、べたつきのないポリマー組成物とすることができなかった。また、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が3.1質量%である共重合タイプの無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー(条件(I)のみを満たす無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー)を利用した場合に得られるポリマー組成物(比較例3)においては、JIS-A硬度が40であって十分に低い硬度を達成することができたものの、圧縮永久歪(C-Set)が50%となっており、圧縮永久歪の値を十分に低くすることができず、硬度と圧縮永久歪とを双方とも十分に低い値とすることはできなかった。さらに、融点が69℃でありかつマレイン化率が3.6質量%である共重合タイプの無水マレイン酸共重合熱可塑性ポリマー(条件(I)及び(II)の双方を満たさない無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー)を利用した場合に得られるポリマー組成物(比較例4)においては、JIS-A硬度が45となって十分に低い硬度を達成することができたものの、圧縮永久歪が46%となってしまい、圧縮永久歪(C-Set)の値を十分に低くすることができなかった。さらに、融点が65℃でありかつマレイン化率が2.8質量%である共重合タイプの無水マレイン酸共重合熱可塑性ポリマー(条件(II)のみを満たす無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマー)を利用した場合に得られるポリマー組成物(比較例4)においては、JIS-A硬度が40となって十分に低い硬度を達成することができたものの、圧縮永久歪(C-Set)が52%となっており、圧縮永久歪の値を十分に低くすることができず、やはり硬度と圧縮永久歪とを双方とも十分に低い値とすることはできなかった。このように、比較例1~5で得られたポリマー組成物においては、十分に低い硬度と、十分に優れた圧縮永久歪に対する耐性とを両立することができず、また、べたつきのない組成物とすることもできなかった。
【0109】
なお、表4に示す結果から、融点が64℃以下でありかつマレイン化率が0.1~3.0質量%である無水マレイン酸グラフト変性熱可塑性ポリマーと架橋剤との反応物とともに、ポリブテン(可塑剤)及びSEEPSとを組み合せて含むポリマー組成物(実施例1及び2)においては、JIS-A硬度が0となるばかりか、JIS-E硬度が5以下となるような超低硬度のものとなった。また、表4に示す結果と表2に示す結果とから、パラフィンオイルを利用したポリマー組成物(参考例1~6)と、ポリブテンを利用したポリマー組成物(実施例1~2)とを対比すると、双方ともべたつきのないものとなっているが、可塑剤としてポリブテンを利用した場合に、より低硬度の組成物とすることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、べたつきがなく、しかも硬度の値と圧縮永久歪の値を双方とも十分に低くすることが可能なポリマー組成物を提供することが可能となる。したがって、本発明のポリマー組成物は、特に主に人間が触る柔らかい触感を必要とする機械類、電気器具類の筐体・保護具、住宅や自動車の内装部材、人間型ロボット(アンドロイド、ヒューマノイド)の皮膚類、玩具等の用途に有用である。