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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20241003BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60C11/03 100A
B60C11/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020100095
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021194921
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】松延 裕子
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-001659(JP,A)
【文献】特開2017-159752(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129647(WO,A1)
【文献】特開2018-024420(JP,A)
【文献】特許第5835413(JP,B1)
【文献】特開2017-094765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と接地端によって画定された陸部を備え、
前記陸部には、前記主溝よりも浅く幅狭の溝からなり、前記タイヤ周方向に延びる副溝が形成され、
前記陸部は、前記副溝によって、前記タイヤ幅方向における前記主溝の両端部と前記接地端とを通るタイヤプロファイル基準線に沿って第1長さを有する第1部分と、前記タイヤプロファイル基準線に沿って第2長さを有する第2部分とに、前記タイヤ幅方向に区画され、
前記第1部分及び前記第2部分はいずれも、前記タイヤ幅方向の両端部が前記タイヤプロファイル基準線上に位置し、タイヤ径方向の外側へ突出したクラウン状で、
前記第1部分において前記タイヤプロファイル基準線に対する最大突出量である第1突出量を有する第1最大突出部は、前記第1部分の前記タイヤ幅方向の中心よりも前記副溝側に位置し、
前記第2部分において前記タイヤプロファイル基準線に対する最大突出量である第2突出量を有する第2最大突出部は、前記第2部分の前記タイヤ幅方向の中心よりも前記副溝側に位置している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1最大突出部から前記副溝までの前記タイヤプロファイル基準線に沿った距離である第1距離は、前記第1長さの0.2倍以上0.4倍以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2最大突出部から前記副溝までの前記タイヤプロファイル基準線に沿った距離である第2距離は、前記第2長さの0.2倍以上0.4倍以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1最大突出部から前記副溝までの領域における前記第1部分の接地面の曲率半径は、前記第1最大突出部から前記副溝とは反対側の領域における前記第1部分の前記接地面の曲率半径よりも小さい、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2最大突出部から前記副溝までの領域における前記第2部分の接地面の曲率半径は、前記第2最大突出部から前記副溝とは反対側の領域における前記第2部分の前記接地面の曲率半径よりも小さい、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記副溝は前記陸部のタイヤ幅方向の中心に形成され、前記第1長さと前記第2長さが等しい、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記副溝は前記陸部のタイヤ幅方向の中心よりも前記トレッド部の前記タイヤ幅方向の中心側又は接地端側に形成され、前記第1長さよりも前記第2長さが短く、
前記第1突出量よりも、前記第2突出量が大きい、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1長さは前記第2長さの1.5倍上2倍未満であり、
前記第2突出量は、前記第1突出量の1.05倍以上1.25倍以下である、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された空気入りタイヤのトレッド部は、主溝より浅くかつ幅狭であってタイヤ周方向に延びる副溝が形成されたショルダー陸部を備える。副溝は、ショルダー陸部の排水性を高め、ウエット路面における車両の操縦安定性向上に寄与する。また、副溝は、ショルダー陸部におけるタイヤ幅方向の接地圧の均一化に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-94765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車両の旋回時に副溝が形成された陸部に大きな負荷が作用すると、陸部の副溝によって区画された2つの部分のそれぞれについて、全体的な副溝に向かって倒れ込むような変形が生じ、この変形により副溝が閉鎖され得る。この副溝の閉鎖は、陸部の排水性を低下させる。特許文献1は、陸部のタイヤ幅方向の接地圧の均一化を考慮しつつ、このような副溝の閉鎖を抑制ないし防止することに関する教示を含まない。
【0005】
本発明は、副溝が形成された陸部に関し、タイヤ幅方向の接地圧の均一化を図りつつ、副溝の閉鎖を抑制ないし防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と接地端によって画定された陸部を備え、前記陸部には、前記主溝よりも浅く幅狭の溝からなり、前記タイヤ周方向に延びる副溝が形成され、前記陸部は、前記副溝によって、前記タイヤ幅方向における前記主溝の両端部と前記接地端とを通るタイヤプロファイル基準線に沿って第1長さを有する第1部分と、前記タイヤプロファイル基準線に沿って第2長さを有する第2部分とに、前記タイヤ幅方向に区画され、前記第1部分及び前記第2部分はいずれも、前記タイヤ幅方向の両端部が前記タイヤプロファイル基準線上に位置し、タイヤ径方向の外側へ突出したクラウン状で、前記第1部分において前記タイヤプロファイル基準線に対する最大突出量である第1突出量を有する第1最大突出部は、前記第1部分の前記タイヤ幅方向の中心よりも前記副溝側に位置し、前記第2部分において前記タイヤプロファイル基準線に対する最大突出量である第2突出量を有する第2最大突出部は、前記第2部分の前記タイヤ幅方向の中心よりも前記副溝側に位置している、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
第1部分のタイヤ幅方向の端部で接地圧が高くなる傾向がある。同様に、第2部分のタイヤ幅方向の端部は接地圧が高くなる傾向がある。第1部分をタイヤプロファイル基準線に対して突出させることで、第1部分のタイヤ幅方向の端部と他の部分の接地圧の差が低減される。同様に、第2部分をタイヤプロファイル基準線に対して突出させることで、第2部分のタイヤ幅方向の端部と他の部分の接地圧の差が低減される。よって、第1部分と第2部分をタイヤプロファイル基準線に対して突出させることで、副溝が形成された陸部において、タイヤ幅方向の接地圧分布の均一化を図ることができる。
【0008】
第1部分において突出量が最大である第1突出部は、第1部分のタイヤ幅方向の中心よりも副溝側に位置する。また、第2部分において突出量が最大である第2突出部は、第2部分のタイヤ幅方向の中心よりも副溝側に位置する。これらの構成により、第1部分と第2部分がそれぞれ全体的に副溝に向かって倒れ込む変形が緩和される。その結果、副溝の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0009】
前記第1最大突出部から前記副溝までの前記タイヤプロファイル基準線に沿った距離である第1距離は、前記第1長さの0.2倍以上0.4倍以下であってもよい。
【0010】
第1最大突出部が副溝に過度に近接していると、第1部分の副溝に近接した部分の局所的な変形により却って副溝の閉鎖が生じやすくなる。第1最大突出部から副溝までの距離である第1距離を、第1部分のタイヤ幅方向の長さ、つまり第1長さの0.2倍以上0.4倍以下に設定することで、第1部分の副溝に近接した部分の局所的な変形の影響を低減し、より確実に副溝の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0011】
前記第2最大突出部から前記副溝までの前記タイヤプロファイル基準線に沿った距離である第2距離は、前記第2長さの0.2倍以上0.4倍以下であってもよい。
【0012】
第2最大突出部が副溝に過度に近接していると、第2部分の副溝に近接した部分の局所的な変形により却って副溝の閉鎖が生じやすくなる。第2最大突出部から副溝までの距離である第2距離を、第2部分のタイヤ幅方向の長さ、つまり第1長さの0.2倍以上0.4倍以下に設定することで、第2部分の副溝に近接した部分の局所的な変形の影響を低減し、より確実に副溝の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0013】
前記第1最大突出部から前記副溝までの領域における前記第1部分の接地面の曲率半径は、前記第1最大突出部から前記副溝とは反対側の領域における前記第1部分の前記接地面の曲率半径よりも小さくてもよい。
【0014】
前記第2最大突出部から前記副溝までの領域における前記第2部分の接地面の曲率半径は、前記第2最大突出部から前記副溝とは反対側の領域における前記第2部分の前記接地面の曲率半径よりも小さくてもよい。
【0015】
前記副溝は前記陸部のタイヤ幅方向の中心に形成され、前記第1長さと前記第2長さが等しくてもよい。
【0016】
前記副溝は前記陸部のタイヤ幅方向の中心よりも前記トレッド部の前記タイヤ幅方向の中心側又は接地端側に形成され、前記第1長さよりも前記第2長さが短く、前記第1突出量よりも、前記第2突出量が大きくてもよい。
【0017】
第2部分が有するタイヤプロファイル基準線に沿った第2長さは、第1部分が有するタイヤプロファイル基準線に沿った第1長さよりも短い。つまり、第2部分は第1部分よりも相対的に幅狭で、第1部分は第2部分よりも相対的に幅広である。幅狭な第2部分は、幅広の第1部分と比較して、タイヤ幅方向の端部で接地圧が高くなる傾向がより顕著である。幅広の第1部分のタイヤプロファイル基準線に対する最大突出量である第1突出量よりも、幅狭の第2部分のタイヤプロファイル基準線に対する最大突出量である第2突出量を大きく設定することで、第2部分においてタイヤ幅方向の端部で接地圧が高くなる傾向をさらに緩和することができる。その結果、副溝が形成された陸部において、タイヤ幅方向の接地圧分布をより均一にできる。
【0018】
第1長さは第2長さの1.5倍上2倍未満の場合、前記第2突出量は、前記第1突出量の1.05倍以上1.25倍以下であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、副溝が形成された陸部に関し、タイヤ幅方向の接地圧の均一化を図りつつ、副溝の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分展開図。
図2】第1実施形態におけるトレッド部の一部の斜視図。
図3図1の線III-IIIに沿った断面図。
図4】第2実施形態における図2と同様の斜視図。
図5】第2実施形態における図3と同様の断面図。
図6】第3実施形態における図2と同様の斜視図。
図7】第3実施形態における図3と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明において、空気入りタイヤの各部の寸法は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填して正規荷重ではなく無負荷状態で測定される値である。
【0022】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、及びETROであれば"Measuring Rim"である。
【0023】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば""INFLATION PRESSURE""である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、タイヤに、EXTRA Load又はReinforcedと記載されたタイヤの場合は220KPaとする。
【0024】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETROであれば"LOAD CAPACITY"である。タイヤが乗用車用の場合には、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0025】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1(以下、単にタイヤという)を示す。図において、符号CDはタイヤ周方向、符号WDはタイヤ幅方向をそれぞれ示す。また、図において、符号TCはタイヤ1のトレッド部2のタイヤ幅方向の中心(トレッド中心という)を示す。また、符号GEa,GEbはトレッド部2の接地端を示す。
【0026】
トレッド部2には、それぞれタイヤ周方向に延びる3本の主溝3A,3B,3Cが形成されている。本実施形態では、主溝3A~3Cはいずれも、一定の溝幅を有する、直線状の溝である。主溝3A~3Cは、タイヤ周方向に溝幅に分布を有してもよいし、蛇行状ないしジグザグ状の溝であってもよい。
【0027】
主溝3A,3Bによって、トレッド中心TC上で、タイヤ周方向に連続的に延びるセンターリブ4が画定されている。また、主溝3B,3Cによって、タイヤ幅方向においてセンターリブ4に対して接地端Gb側に隣接した位置に、タイヤ周方向に連続的に延びるメディエイトリブ5が画定されている。さらに、主溝3と接地端Gaによって、タイヤ幅方向においてセンターリブ4に対して接地端Ga側に隣接した位置に、タイヤ周方向に連続的に延びるショルダーリブ6が画定されている。さらにまた、主溝3Cと接地端Gbによって、タイヤ幅方向においてメディエイトリブ5に対して接地端Gb側に隣接した位置には、タイヤ周方向に連続的に延びるショルダーリブ7が画定されている。
【0028】
図2及び図3を併せて参照すると、ショルダーリブ6にはタイヤ周方向に連続的に延びる副溝10が設けられている。副溝10は、主溝3A~3Cよりも浅く、かつ幅狭の溝である。具体的には、主溝3A~3Cの深さDmが7.5mm以上8.5mm以下で、主溝3A~3Cの溝幅Wgmが7.5mm以上9.5以下mmである。これに対して、副溝10の深さDsは主溝3A~3Cの深さDmの0.75倍以上0.95倍以下(6.5mm以上7.0mm以下)で、副溝10の溝幅Wgsは主溝3A~3Cの溝幅Wgmの0.1倍以上0.2倍以下(1.0mm以上1.5mm以下)である。
【0029】
メディエイトリブ5とショルダーリブにも、副溝10と同様の副溝11,12がそれぞれ設けられている。
【0030】
以下、ショルダーリブ6について詳細に説明する。以下の説明は、特に言及しない限り、タイヤ幅方向の断面ないしタイヤ子午断面におけるショルダーリブ6の形状、寸法等に関する。特に、図3に示すタイヤプロファイル基準線Lは、タイヤ幅方向の断面ないしタイヤ子午断面において、主溝3Aのタイヤ幅方向の端部3a,3bと接地端GEaとを通る円弧である。
【0031】
図2及び図3を参照すると、ショルダーリブ6は、副溝10によって、タイヤ幅方向に2つの部分に区画されている。具体的には、ショルダーリブ6は、副溝10と主溝3Aとによって画定された内側部分20と、副溝10と接地端Gaとによって画定された外側部分21とに区画されている。内側部分20は外側部分21に対してトレッド中心TC(図1参照)側に位置している(外側部分21は内側部分20に対して接地端GEa側に位置している。)。内側部分20はタイヤプロファイル基準線Lに沿って長さLinを有し、外側部分21はタイヤプロファイル基準線Lに沿って長さLoutを有する。ショルダーリブ6のタイヤプロファイル基準線Lに沿った全長、つまり副溝10の溝幅Wgs、内側部分20の長さLin、及び外側部分21の長さLoutの総和は、例えば20mm以上35mm以下である。
【0032】
副溝10はショルダーリブ6のタイヤ幅方向の中心Cshに設けられている。従って、外側部分21の長さLoutと、内側部分20の長さLinが等しい。
【0033】
内側部分20と外側部分21はいずれも、タイヤプロファイル基準線Lに対してクラウン状に突出している。
【0034】
外側部分20において、タイヤプロファイル基準線Lに対して最大突出量PAoutを有する部分、つまり最大突出部21aは、外側部分21のタイヤ幅方向の中心21bよりも副溝10側に位置している。具体的には、最大突出部21aから副溝10までのタイヤプロファイル基準線Lに沿った距離である距離DSoutは、外側部分21のタイヤプロファイル基準線Lに沿った長さLoutの0.2倍以上0.4倍以下に設定される。
【0035】
同様に、内側部分20において、タイヤプロファイル基準線Lに対して最大突出量PAinを有する部分、つまり最大突出部20aは、内側部分20のタイヤ幅方向の中心20bよりも副溝10側に位置している。具体的には、最大突出部20aから副溝10までのタイヤプロファイル基準線Lに沿った距離である距離DSinは、内側部分20のタイヤプロファイル基準線Lに沿った長さLinの0.2倍以上0.4倍以下に設定される。
【0036】
最大突出部21aから副溝10までの領域における外側部分21の接地面の曲率半径Rout1は最大突出部21aから副溝10とは反対側の領域における外側部分の接地面の曲率半径Rout2よりも小さい。また、最大突出部20aから副溝10までの領域における内側部分20の接地面の曲率半径Rin1は最大突出部20aから副溝10とは反対側の領域における内側部分20の接地面の曲率半径Rin2よりも小さい。
【0037】
外側部分21のタイヤ幅方向の端部、つまりトレッド中心TC側の端部21cと、接地端Ga側の端部21dとで、接地圧が高くなる傾向がある。同様に、内側部分20のタイヤ幅方向の端部、つまり接地端Ga側の端部20cと、トレッド中心TC側の端部20dとで、接地圧が高くなる傾向がある。外側部分21をタイヤプロファイル基準線Lに対してクラウン状に突出させることで、外側部分21のタイヤ幅方向の端部21c,21dと外側部分21の他の部分との接地圧の差が低減される。同様に、内側部分20をタイヤプロファイル基準線Lに対してクラウン状に突出させることで、内側部分20のタイヤ幅方向の端部20c,20dと内側部分20の他の部分との接地圧の差が低減される。よって、外側部分21と内側部分20をタイヤプロファイル基準線Lに対して突出させることで、副溝10が形成されたショルダーリブ6において、タイヤ幅方向の接地圧分布の均一化を図ることができる。
【0038】
外側部分21の最大突出部21aは、外側部分21のタイヤ幅方向の中心21bよりも副溝10側に位置する。また、内側部分20の最大突出部20aは、内側部分20のタイヤ幅方向の中心20bよりも副溝10側に位置する。これらの構成により、外側部分21と内側部分20がそれぞれ全体的に副溝10に向かって倒れ込む変形が緩和される。その結果、副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0039】
外側部分21の最大突出部21aが副溝10に過度に近接していると、外側部分21の副溝10に近接した部分の局所的な変形により却って副溝10の閉鎖が生じやすくなる。最大突出部21aから副溝10までの距離DSoutを外側部分21の長さLoutの0.2倍以上0.4倍以下に設定することで、外側部分21の副溝10に近接した部分の局所的な変形の影響を低減し、より確実に副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。内側部分20についても、同様の理由により、最大突出部20aから副溝10までの距離DSinを内側部分20の長さLinの0.2倍以上0.4倍以下に設定することで、内側部分20の副溝10に近接した部分の局所的な変形の影響を低減し、より確実に副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0040】
以下、本発明の第2及び第3実施形態を説明する。これらの実施形態の説明において、特に言及しない事項については、第1実施形態と同様である。また、これらの実施形態の図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0041】
(第2実施形態)
図4及び図5に示す本発明の第2実施形態では、副溝10はショルダーリブ6のタイヤ幅方向の中心Cshよりもトレッド中心TC(図1参照)側に設けられている。より具体的には、副溝10のタイヤ幅方向の中心Cgsが、ショルダーリブ6のタイヤ幅方向の中心Cshよりもトレッド中心TC側に位置している。従って、外側部分21の長さLoutよりも、内側部分20の長さLinが短い。本実施形態では、外側部分21の長さLoutは内側部分20の長さLinの1.5倍以上2倍未満に設定されている。
【0042】
外側部分21と内側部分20をタイヤプロファイル基準線Lに対して突出させることで、副溝10が形成されたショルダーリブ6において、タイヤ幅方向の接地圧分布の均一化を図ることができる。
【0043】
前述のように外側部分21の長さLoutよりも、内側部分20の長さLinが短い。つまり、内側部分20は外側部分21よりも相対的に幅狭で、外側部分21は内側部分20よりも相対的に幅広である。幅広である外側部分21の最大突出量PAoutよりも、幅狭である内側部分20の最大突出量PAinが大きく設定されている。具体的には、幅狭である内側部分20の最大突出量PAinは、幅広である外側部分21の最大突出量PAoutの1.05倍以上1.25倍以下に設定されている。
【0044】
幅狭な内側部分20は、幅広の外側部分21と比較して、タイヤ幅方向の端部で接地圧が高くなる傾向がより顕著である。幅広の外側部分21のタイヤプロファイル基準線Lに対する最大突出量PAoutよりも、幅狭の内側部分20のタイヤプロファイル基準線Lに対する最大突出量PAinを大きく設定することで、内側部分20においてタイヤ幅方向の端部20c,20dで接地圧が高くなる傾向をさらに緩和することができる。その結果、副溝10が形成されたショルダーリブ6において、タイヤ幅方向の接地圧分布をより均一にできる。
【0045】
外側部分21の最大突出部21aは、外側部分21のタイヤ幅方向の中心21bよりも副溝10側に位置する。また、内側部分20の最大突出部20aは、内側部分20のタイヤ幅方向の中心20bよりも副溝10側に位置する。これらの構成により、外側部分21と内側部分20がそれぞれ全体的に副溝10に向かって倒れ込む変形が緩和される。その結果、副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0046】
また、最大突出部21aから副溝10までの距離DSoutを外側部分21の長さLoutの0.2倍以上0.4倍以下に設定し、最大突出部20aから副溝10までの距離DSinを内側部分20の長さLinの0.2倍以上0.4倍以下に設定することで、外側部分21と内側部分20の副溝10に近接した部分の局所的な変形の影響を低減し、より確実に副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0047】
(第3実施形態)
図6及び図7に示す本発明の第3実施形態では、副溝10はショルダーリブ6のタイヤ幅方向の中心Cshよりも接地端GEa側に設けられている。より具体的には、副溝10のタイヤ幅方向の中心Cgsが、ショルダーリブ6のタイヤ幅方向の中心Cshよりも接地端GEa側に位置している。従って、内側部分20の長さLinよりも、外側部分21の長さLoutが短い。本実施形態では、内側部分20の長さLinは外側部分21の長さLoutの1.5倍以上2倍未満に設定されている。
【0048】
外側部分21と内側部分20をタイヤプロファイル基準線Lに対して突出させることで、副溝10が形成されたショルダーリブ6において、タイヤ幅方向の接地圧分布の均一化を図ることができる。
【0049】
内側部分20の最大突出量PAinよりも、外側部分21の最大突出量PAoutが大きく設定されている。具体的には、外側部分21の最大突出量PAoutは、内側部分20の最大突出量PAinの1.05倍以上1.25倍以下に設定されている。
【0050】
外側部分21が有するタイヤプロファイル基準線Lに沿った長さLoutは、内側部分21が有するタイヤプロファイル基準線Lに沿った長さLinよりも短い。つまり、外側部分21は内側部分20よりも相対的に幅狭で、内側部分20は外側部分21よりも相対的に幅広である。幅狭な外側部分21は、幅広の内側部分20と比較して、タイヤ幅方向の端部で接地圧が高くなる傾向がより顕著である。幅広の内側部分20のタイヤプロファイル基準線Lに対する最大突出量PAinよりも、幅狭の外側部分21のタイヤプロファイル基準線Lに対する最大突出量PAoutを大きく設定することで、外側部分21においてタイヤ幅方向の端部21c,21dで接圧が高くなる傾向をさらに緩和することができる。その結果、副溝10が形成されたショルダーリブ6において、タイヤ幅方向の接地圧分布をより均一にできる。
【0051】
さらに、外側部分21の最大突出部21aと、内側部分20の最大突出部20aが副溝10側に位置することで、外側部分21と内側部分20がそれぞれ全体的に副溝10に向かって倒れ込む変形が緩和される。その結果、副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0052】
さらにまた、最大突出部21aから副溝10までの距離DSoutを外側部分21の長さLoutの0.2倍以上0.4倍以下に設定し、最大突出部20aから副溝10までの距離DSinを内側部分20の長さLinの0.2倍以上0.4倍以下に設定することで、外側部分21と内側部分20の副溝10に近接した部分の局所的な変形の影響を低減し、より確実に副溝10の閉鎖を抑制ないし防止できる。
【0053】
ショルダーリブ6について、本発明の実施形態を説明した。しかし、本発明は、副溝11が形成されたメディエイトリブ5と、副溝12が形成されたショルダーリブ7にも適用できる。また、本発明は、リブに副溝が形成されている場合に限定されず、トレッド部のショルダー領域又はメディエイト領域において主溝と横溝により画定されるブロックに副溝が形成されている場合にも、適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3A,3B,3C 主溝
3a,3b 主溝のタイヤ幅方向の端部
4 センターリブ
5 メディエイトリブ
6,7 ショルダーリブ
10,11,12 副溝
20 内側部分
20a 内側部分の最大突出部
20b 内側部分のタイヤ幅方向の中心
20c 内側部分の接地端側の端部
20d 内側部分のトレッド中心側の端部
21 外側部分
21a 外側部分の最大突出部
21b 外側部分のタイヤ幅方向の中心
21c 外側部分のトレッド中心側の端部
21d 外側部分の接地端側の端部
CD タイヤ周方向
WD タイヤ幅方向
TC トレッド中心
GEa,GEb 接地端
L タイヤプロファイル基準線
Dm 主溝の深さ
Wgm 主溝の溝幅
Csh ショルダーリブのタイヤ幅方向の中心
Ds 副溝の深さ
Wgs 副溝の溝幅
Cgs 副溝のタイヤ幅方向の中心
Lin 内側部分の長さ
PAin 内側部分の最大突出量
DSin 内側部分のタイヤ幅方向の中心から副溝までの距離
Rin1,Rin2 曲率半径
Lout 外側部分の長さ
PAout 外側部分の最大突出量
DSout 外側部分のタイヤ幅方向の中心から副溝までの距離
Rout1,Rout2 曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7