(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粘着剤付き偏光板、ならびに画像表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241003BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20241003BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
G09F9/00 342
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2020125759
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 顕士
(72)【発明者】
【氏名】寳田 翔
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224307(JP,A)
【文献】特開2016-155981(JP,A)
【文献】特開2013-075978(JP,A)
【文献】特開2016-194694(JP,A)
【文献】特開2007-138147(JP,A)
【文献】特開2019-044025(JP,A)
【文献】特開2017-088663(JP,A)
【文献】特開2017-106000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G09F 9/00
C09J 7/38
C09J 133/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからな
り、第一主面および第二主面を有する偏光子
;および前記偏光子
の第一主面に接して配置され
た第一粘着シート
、を備える粘着剤付き偏光板であって、
前記第一粘着シートが、アクリル系ベースポリマーおよび紫外線吸収剤を含む粘着剤組成物からな
り、
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対して、
窒素含有モノマーの量が5重量部以下であり、
ヒドロキシ基、カルボキシ基、および窒素原子をいずれも含まず、かつホモポリマーのガラス転移温度が10℃以上である高Tgモノマーを、20~75重量部含有する、
粘着剤付き偏光板。
【請求項2】
前記第一粘着シートは、波長380nmの光透過率が5%以下である、請求項1に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項3】
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対するヒドロキシ基含有モノマーの含有量が、0.1~8重量部である、請求項
1または2に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項4】
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対するカルボキシ基含有モノマーの含有量が、1重量部以下である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項5】
前記高Tgモノマーが、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項6】
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対して、ホモポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを20~79重量部含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項7】
前記アクリル系ベースポリマーが、熱架橋剤による架橋構造を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項8】
前記粘着剤組成物が、1分子中に2個以上の光重合性官能基を有する光重合性多官能化合物、および光重合開始剤を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の
粘着剤付き偏光板。
【請求項9】
さらに、前記偏光子の第二主面側に第二粘着シートを備える、請求項
1~8のいずれか1項に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項10】
前記偏光子の第二主面に接して前記第二粘着シートが積層されている、請求項
9に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項11】
前記偏光子の第二主面に、他の層を介して前記第二粘着シートが積層されている、請求項
9に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項12】
画像表示セルの表面に、第二粘着シート、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子、第一粘着シート、およびカバーウインドウをこの順に備える画像表示装置であって、
前記第一粘着シートが、
アクリル系ベースポリマーおよび紫外線吸収剤を含む粘着剤組成物からなり、
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対して、
窒素含有モノマーの量が5重量部以下であり、
ヒドロキシ基、カルボキシ基、および窒素原子をいずれも含まず、かつホモポリマーのガラス転移温度が10℃以上である高Tgモノマーを、20~75重量部含有し、
前記第一粘着シートが、前記偏光子に接して配置されている、画像表示装置。
【請求項13】
画像表示装置の製造方法であって、
前記画像表示装置は、画像表示セルの表面に、第二粘着シート、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子、前記偏光子に接する第一粘着シート、およびカバーウインドウを順に備え、
前記第一粘着シートが、
アクリル系ベースポリマー、1分子中に2個以上の光重合性官能基を有する光重合性多官能化合物、光重合開始剤、および紫外線吸収剤を含む粘着剤組成物からなり、
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対して、
窒素含有モノマーの量が5重量部以下であり、
ヒドロキシ基、カルボキシ基、および窒素原子をいずれも含まず、かつホモポリマーのガラス転移温度が10℃以上である高Tgモノマーを、20~75重量部含有し、
前記偏光子と前記カバーウインドウとを、前記第一粘着シートを介して貼り合わせた後に、前記カバーウインドウ側から活性光線を照射して、前記粘着剤組成物を光硬化する、
画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の形成に用いられる粘着剤付き偏光板、ならびに画像表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。液晶表示装置は、その表示原理から、液晶セルの視認側表面に偏光板が配置されている。有機EL等の自発光型の表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射されて鏡面のように視認されることを抑制するために、セルの視認側表面に円偏光板(偏光板と1/4波長板の積層体)が配置されている。
【0003】
画像表示装置の視認側表面には、外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、透明樹脂板やガラス板等の前面透明板(「カバーウインドウ」とも称される)が設けられている。カバーウインドウは、画像表示パネルの視認側表面に配置される偏光板と、粘着シートを介して貼り合わせられる。
【0004】
偏光板としては、偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合わせられた積層構成が一般的であるが、画像表示装置の薄型化やフレキシブル化の観点から、偏光子の一方の面または両方の面の透明保護フィルムを省略した構成が提案されている。例えば、特許文献1には、偏光子に接して配置した粘着シートを介してカバーウインドウを貼り合わせた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏光子の視認側表面に接して設けられた粘着シートによりカバーウインドウを貼り合わせた画像表示装置は、耐候試験における偏光子の黄変や、加湿耐久試験における偏光子の退色等が生じやすく、耐久性に問題があることが判明した。耐久性を高めるために偏光子に接して配置される粘着剤の組成を調整すると、接着信頼性が低下する傾向がある。かかる課題に鑑み、本発明は、薄型化に寄与し得るとともに、偏光子の変色や偏光子とカバーウインドウとの剥がれ等が生じ難く、優れた耐久性を有する画像表示装置を形成可能な粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子と、画像表示装置のカバーウインドウとの貼り合わせに用いられる粘着シートである。粘着シートは、粘着シートは、アクリル系ベースポリマーおよび紫外線吸収剤を含む粘着剤組成物からなり、偏光子に接して配置される。粘着シートの波長380nmの光透過率は5%以下が好ましい。
【0008】
粘着剤組成物に含まれるアクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対する、窒素含有モノマーの量が5重量部以下であることが好ましく、ヒドロキシ基含有モノマーの含有量が0.1~8重量部であることが好ましく、カルボキシ基含有モノマーの含有量が、1重量部以下であることが好ましい。
【0009】
アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対して、ヒドロキシ基、カルボキシ基、および窒素原子をいずれも含まず、かつホモポリマーのガラス転移温度が10℃以上である高Tgモノマーを、20~75重量部含有するものであってもよい。高Tgモノマーは、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
【0010】
アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分の合計100重量部に対して、ホモポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを20~79重量部含有していてもよい。
【0011】
アクリル系ベースポリマーは、熱架橋剤による架橋構造を有するものであってもよい。
【0012】
粘着シートを構成する粘着剤組成物は、1分子中に2個以上の光重合性官能基を有する光重合性多官能化合物、および光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなり、第一主面および第二主面を有する偏光子の第一主面接して上記の粘着シートが配置された粘着剤付き偏光板である。粘着剤付き偏光板は、さらに偏光子の第二主面側に粘着シートを備えていてもよい。偏光子の第二主面側に配置される粘着シートは、偏光子の第二主面に接していてもよく、偏光子の第二主面に他の層を介して積層されていてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態は、画像表示セルの表面に、第二粘着シート、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子、第一粘着シート、およびカバーウインドウをこの順に備える画像表示装置であり、第一粘着シートが上記の粘着シートであり、偏光子に接して配置されている。
【0015】
粘着シートを構成する粘着剤組成物が、光重合性多官能化合物および光重合開始剤を含む場合、画像表示装置の形成において、偏光子とカバーウインドウとを、第一粘着シートを介して貼り合わせた後に、カバーウインドウ側から活性光線を照射して、粘着剤組成物を光硬化してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態の粘着シートを偏光子の視認側表面に接して配置した画像表示装置は、外部からの紫外線や加熱・加湿等に起因する偏光子の変色や退色が抑制されており、耐久性および層間の接着信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】画像表示装置の一実施形態を模式的に表す断面図である。
【
図2】粘着剤付き偏光板の一形態を表す断面図である。
【
図3】粘着剤付き偏光板の一形態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、画像表示装置において、偏光子の視認側表面に接して配置される粘着シートであり、偏光子とカバーウインドウとの貼り合わせに用いられる。
【0019】
図1は、視認側表面にカバーウインドウを備える画像表示装置の一形態を示す断面図である。画像表示装置100は、画像表示セル60の表面に粘着シート22を介して貼り合わせられた偏光板10を備え、偏光板10上に、本発明の実施形態の粘着シート21を介して貼り合わせられたカバーウインドウ70を備える。
【0020】
偏光板10は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子11を備える。ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系偏光子では、ポリビニルアルコールのポリマー鎖とポリヨウ素イオン(I3
-およびI5
-)が錯体を形成しており、ポリマー鎖が所定方向に配向することにより、ポリヨウ素イオンが配向することにより、偏光性能を発揮している。
【0021】
偏光子11の第二主面(画像表示セル60側の面)には、適宜の光学層15が設けられていてもよい。偏光子11の第一主面(視認側の面)には、偏光子11に接して本発明の実施形態の粘着シート21が配置されている。偏光子11の視認側に他の光学層を介さずに粘着シート21を配置することにより、画像表示装置の薄型化や、フレキシブル化を図ることができる。
【0022】
[粘着シート]
<ベースポリマー>
粘着シート21を構成する粘着剤組成物は、アクリル系ベースポリマーを含有する。アクリル系ベースポリマーは、主たる構成モノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよく、環状アルキル基(脂環式アルキル基)を有していてもよい。
【0024】
鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0025】
脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環上に置換基を有するものであってもよい。また、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の、脂環式構造と不飽和結合を有する環構造との縮合環を含む(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
【0026】
アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量は、60重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましく、80重量部以上がさらに好ましく、85重量部以上、90重量部以上または92重量部以上であってもよい。
【0027】
アクリル系ベースポリマーは、共重合モノマー成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーを含有することが好ましい。ベースポリマーが架橋可能な官能基を有することにより、ベースポリマーと架橋剤とを反応させて、粘着剤の凝集力を高め、接着信頼性を向上できる。
【0028】
架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしては、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーが挙げられる。例えば、イソシアネート系架橋剤を用いる場合は、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応により架橋構造が導入される。エポキシ系架橋剤を用いる場合は、カルボキシ基とエポキシ基との反応により架橋構造が導入される。後述のように、粘着剤を酸フリーとする観点から、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを用い、イソシアネート系架橋剤により架橋構造を導入することが好ましい。ベースポリマーが、モノマー成分としてヒドロキシ基含有モノマーを含む場合、ベースポリマーの架橋性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向があり、透明性の高い粘着剤が得られる。
【0029】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6‐ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12‐ヒドロキシラウリルや(4‐ヒドロキシメチルシクロヘキシル)‐メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの中でも、接着力向上への寄与が大きく、かつ高湿度環境下での粘着シートの白濁を抑制できることから、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル(ホモポリマーのTg:-15℃)およびアクリル酸4‐ヒドロキシブチル(ホモポリマーのTg:-32℃)が好ましい。
【0030】
アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対する、ヒドロキシ基含有モノマーの量は、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、0.8重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上、1.5重量部以上または2重量部以上であってもよい。ヒドロキシ基含有モノマーの量を多くすることにより、架橋剤の未反応官能基が減少するため、少ない架橋剤量で架橋度を高め、接着信頼性を向上できる。
【0031】
一方、ベースポリマーのヒドロキシ基含有モノマーの使用量が過度に大きい場合は、ポリマーの極性増大に伴って粘着シートの親水性および透湿性が増大し、高温高湿下において粘着シート21に接して配置される偏光子11の退色が生じやすい。粘着シートの親水性および透湿性が高い場合は、外部環境からの水分が偏光子に到達しやすく、水分によって偏光子を構成するポリマー鎖の配向が乱れや、ポリマー鎖からのポリヨウ素イオンの脱離が生じることが、偏光子の退色の一因と考えられる。アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対する、ヒドロキシ基含有モノマーの量は、8重量部以下が好ましく、7重量部以下がより好ましく、6重量部以下または5重量部以下であってもよい。
【0032】
アクリル系ベースポリマーは、上記以外のモノマー成分を含んでいてもよい。アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、例えば、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマー等を含んでいてもよい。
【0033】
アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、窒素含有モノマーを含んでいてもよい。窒素含有モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0034】
アクリル系ベースポリマーがモノマー成分として窒素含有モノマーを含むことにより、凝集力が向上し、接着信頼性が高められる傾向がある。一方、粘着剤に含まれるベースポリマーにおける窒素含有モノマーの使用量の増大に伴って、粘着シート21に接して配置される偏光子11の退色が生じやすくなる。窒素原子はヨウ素に配位しやすいため、粘着シートのベースポリマーに含まれる窒素原子量が増大すると、偏光子のポリマー鎖に固定されているヨウ素が、粘着剤の窒素原子と配位することによりポリマー鎖から脱離すること等が偏光子の退色の一因と考えられる。アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対する、窒素含有モノマーの量は、5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、1重量部以下、0.5重量部以下、0.1重量部以下または0.05重量部以下であってもよい。アクリル系ベースポリマーはモノマー成分として窒素含有モノマーを含まないものであってもよい。
【0035】
粘着シートに含まれる酸成分が偏光子に移行すると、ポリビニルアルコールの加水分解を促進して、偏光子を劣化させる原因となり得る。そのため、粘着シート21は、(メタ)アクリル酸等の有機酸モノマー(遊離の有機酸)の含有量が低いことが好ましい。熱硬化型や光硬化型のポリマーにおいて、未反応の残留モノマーの存在は不可避である。そのため、粘着シート中の酸モノマー含有量を低減させるためには、ベースポリマーを構成するモノマー成分における(メタ)アクリル酸等の有機酸モノマー成分の量を少なくすることが好ましい。アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分全量100重量部に対する、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.1重量部以下がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを含まないことが好ましい。
【0036】
高温高湿環境における偏光子11の退色を抑制する観点から、偏光子11に接して配置される粘着シート21を構成するベースポリマーは、低極性であることが好ましい。ベースポリマーの極性を低くするためには、構成モノマー成分として、窒素含有モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、等の極性モノマーの含有量が小さいことが好ましい。アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分全量100重量部に対する、極性モノマーの含有量は、12重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、8重量部以下がさらに好ましく、6重量部以下または5重量部以下であってもよい。
【0037】
アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分として極性モノマーを含んでいなくてもよい。ただし、ベースポリマーにイソシアネート系架橋剤等の熱架橋剤による架橋構造を導入する観点から、ヒドロキシ基含有モノマー等の極性モノマーを0.1重量部以上含むことが好ましい。アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分全量100重量部に対する、極性モノマーの含有量は、0.5重量部以上がより好ましく、0.8重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上、1.5重量部以上または2重量部以上であってもよい。
【0038】
極性モノマー成分の含有量が小さいアクリル系ベースポリマーの凝集力を高め、接着信頼性を高める観点から、アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分として、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素原子をいずれも含まず、かつホモポリマーのガラス転移温度が10℃以上である高Tgモノマーを含むことが好ましい。
【0039】
極性基を含まない高Tgモノマーとしては、スチレン(Tg:80℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、シクロヘキシルアクリレート(Tg:15℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:66℃)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(Tg:52℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)イソボルニルメタクリレート(Tg:173℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:97℃)、1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)等が挙げられる。これらの高Tgモノマーの中でも、後述の低Tgモノマー(アクリル酸低級アルキルエステル)との共重合性に優れることから、アクリル酸エステルが好ましい。また、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのいずれも高いTgを示し得ることから、高Tgモノマーとしては脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、中でも、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、1-アダマンチルアクリレート等の脂環式構造を有するアクリル酸エステルが好ましい。高Tgモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が13℃以上または15℃以上であってもよい。
【0040】
粘着シートの接着信頼性を高める観点から、アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分全量100重量部に対する、極性基を含まない高Tgモノマーの含有量は、20重量部以上が好ましく、25重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。一方、高Tgモノマーの含有量が過度に大きい場合は、ベースポリマーのガラス転移温度が高くなり、低温での接着性や耐衝撃性が低下する場合がある。そのため、アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分全量100重量部に対する、極性基を含まない高Tgモノマーの含有量は、75重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましく、65重量部以下、60重量部以下、55重量部以下または50重量部以下であってもよい。
【0041】
粘着シートの接着信頼性と低温での接着性多耐衝撃性を両立する観点から、アクリル系ベースポリマーのガラス転移温度は、-50~10℃が好ましく、-45~5℃がより好ましく、-40~0℃がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーのガラス転移温度は、理論Tgに基づいて算出すればよい。理論Tgは、ベースポリマーの構成モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度Tgiと、各モノマー成分の重量分率Wiから、下記のFoxの式により算出される。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
【0042】
Tgはベースポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Wiはベースポリマーを構成するモノマー成分iの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマー成分iのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)である。ホモポリマーのガラス転移温度としては、Polymer Handbook 第3版(John Wiley & Sons, Inc., 1989年)に記載の数値を採用できる。上記文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのTgは、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)のピークトップ温度を採用すればよい。
【0043】
モノマー成分として20重量部以上の高Tgモノマーを含むアクリル系ベースポリマーのガラス転移温度を上記範囲内とするために、アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、ホモポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である低Tgモノマーを含むことが好ましい。低Tgモノマーとしては、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg:-70℃)、アクリル酸n-ヘキシル(Tg:-65℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg:-65℃)、アクリル酸イソノニル(Tg:-60℃)、アクリル酸n-ノニル(Tg:-58℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg:-58℃)、アクリル酸ブチル(Tg:-55℃)等のアクリル酸鎖状アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。
【0044】
アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分全量100重量部に対する、ホモポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、20~79重量部が好ましく、25~70重量部がより好ましく、30~65重量部であってもよい。
【0045】
上記モノマー成分を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することにより、アクリル系ベースポリマーが得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、重合方法としては溶液重合法が好適である。溶液重合の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20~80重量%程度である。重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ)等の熱重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤の使用量は特に制限はされないが、例えば、ベースポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.005~5重量部程度が好ましく、0.02~3重量部程度がより好ましい。
【0046】
ベースポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取ってポリマーの伸長を停止させるとともに、ラジカルを受け取った連鎖移動剤がモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる。そのため、連鎖移動剤を用いることにより、反応系中のラジカル濃度を低下させることなく、ベースポリマーの分子量の増大を抑止できる。連鎖移動剤としては、例えば、α‐チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2‐メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2‐エチルヘキシル、2,3‐ジメルカプト‐1‐プロパノール等のチオール類が好適に用いられる。
【0047】
連鎖移動剤の使用量は特に制限はされないが、連鎖移動剤の使用量が過度に大きい場合は、ベースポリマーの分子量が低下し、光硬化前の粘着シートの加工性および加工寸法安定性が低下する場合がある。そのため、連鎖移動剤の使用量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、1重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましく、0.15重量部以下がさらに好ましく、0.1重量部以下が特に好ましい。
【0048】
アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は、10万~300万が好ましく、25万~200万がより好ましく、50万~150万がさらに好ましい。なお、アクリル系ベースポリマーに架橋構造が導入される場合、ベースポリマーの分子量とは、架橋構造導入前の分子量を指す。
【0049】
<ベースポリマーの架橋構造>
アクリル系ベースポリマーは架橋構造を有していることが好ましい。ベースポリマーへの架橋構造の導入方法としては、一般に、(1)架橋剤と反応可能な官能基を有するベースポリマーを重合後に、架橋剤を添加して、ベースポリマーと架橋剤とを反応させる方法;および(2)ベースポリマーの重合成分に光重合性多官能化合物を含めることにより、ポリマー鎖に分枝構造(架橋構造)を導入する方法、等が挙げられる。
【0050】
偏光子11に接して配置される粘着シート21を構成する粘着剤組成物において、アクリル系ベースポリマーは、上記(1)の方法により導入された架橋構造を有することが好ましい。粘着シート21を構成する粘着剤組成物は、光重合性多官能化合物および光重合開始剤を含み、粘着シート21とカバーウインドウ70とを貼り合わせた後に光硬化を行うことにより、上記(2)の架橋構造が導入されるものであってもよい。すなわち、粘着シート21を構成する粘着剤組成物は、ベースポリマーがイソシアネート系架橋剤等の(熱)架橋剤による架橋構造を有することが好ましく、さらに、光硬化により光重合性多官能化合物(光架橋剤)による架橋構造を導入可能なものであってもよい。
【0051】
<粘着剤組成物>
アクリル系ベースポリマーに、架橋剤、光重合性多官能化合物、光重合開始剤重合開始剤、および必要に応じて、オリゴマーや各種の添加剤等を混合して、粘着剤組成物を調製する。粘着剤組成物は、基材上への塗布に適した粘度(例えば、0.5~20Pa・s程度)を有することが好ましい。ベースポリマーの分子量、光重合性多官能化合物の添加量、その他の成分(例えばオリゴマー)の組成、分子量、添加量等を調整することにより、粘着剤組成物の粘度を適切な範囲とすることができる。粘度調整等を目的として、増粘性添加剤等を用いてもよい。
【0052】
(紫外線吸収剤)
粘着シート21は、紫外線吸収性を有することが好ましい。偏光子の視認側表面に透明保護フィルムが設けられている偏光板では、一般に、透明保護フィルムが紫外線吸収性を有することにより、表示装置の外部から入射する紫外線による偏光子の劣化を抑制している。一方、偏光子11の視認側表面に接して粘着シート21が配置される構成では、偏光子の視認側に透明保護フィルムが設けられていないため、粘着シート21に紫外線吸収性を持たせて、紫外線に起因する偏光子11の光劣化(例えば、ポリヨウ素イオンの構造変化(I5
-からI3
-への変化)等に伴う偏光子の色変化)を防止することが好ましい。
【0053】
粘着シート21に紫外線吸収性を持たせるために、粘着剤組成物は紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収性が高く、かつアクリル系ポリマーとの相溶性に優れ、高透明性のアクリル系粘着剤が得られやすいことから、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、中でも、水酸基を含有するトリアジン系紫外線吸収剤、および1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤として市販品を用いてもよい。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 400」)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 405」)、(2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 460」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「TINUVIN 577」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 479」)、5,5’-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)-2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ジフェノール(BASF製「Tinosorb S」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(ADEKA製「ADK STAB LA-46」)等が挙げられる。
【0055】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BASF製「TINUVIN PS」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 900」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製「TINUVIN571」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(BASF製「TINUVIN P」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 234」)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 326、」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(BASF製「TINUVIN 328」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 329」)、ベンゼンプロパン酸と3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物(BASF製「TINUVIN384-2」)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物(BASF製「TINUVIN1 130」)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(BASF製「TINUVIN 213」)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(住友化学製「Sumisorb250」)等が挙げられる。
【0056】
粘着剤組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、アクリル系ベースポリマー100重量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、0.05~10重量部程度であり、0.1~5重量部が好ましく、0.3~3重量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量を上記範囲とすることにより、紫外線吸収剤のブリードアウト等による透明性の低下を抑制しつつ、粘着シート21に紫外線遮蔽性を持たせ、外部からの紫外線に起因する偏光子の光劣化を抑制できる。
【0057】
(架橋剤)
上記のように、アクリル系ベースポリマーは、架橋構造を有することが好ましい。粘着剤組成物に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱することにより、ベースポリマーに架橋構造が導入される。光重合性多官能化合物により導入される架橋構造と区別するために、イソシアネート系架橋剤等による架橋を「熱架橋」と記載する場合があるが、架橋剤による架橋構造の導入は、加熱を伴わないものでもよい。アクリル系ベースポリマーに熱架橋構造を導入することにより、粘着シートの凝集性が高められ、接着性が向上する傾向がある。
【0058】
架橋剤としては、ベースポリマーに含まれるヒドロキシ基等の官能基と反応する化合物が挙げられる。架橋剤の具体例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。中でも、ベースポリマーのヒドロキシ基との反応性が高く、架橋構造の導入が容易であることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0059】
イソシアネート系架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが用いられる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートHL」)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学製「タケネートD110N」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、東ソー製「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。
【0060】
架橋剤の添加量を調整することにより、粘着剤の凝集力や接着力を調整できる。架橋剤の添加量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましく、0.05~0.7重量部がより好ましく、0.1~0.5重量部がさらに好ましい。
【0061】
(光重合性多官能化合物)
粘着シートに光硬化性を持たせるためには、粘着剤組成物が光重合性多官能化合物を含むことが好ましい。光重合性多官能化合物は、1分子中に2個以上の光重合性官能基を有する。光重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性およびアニオン重合性のいずれでもよいが、反応性に優れることから、不飽和二重結合(エチレン性不飽和基)を有するラジカル重合性官能基が好ましい。光重合性多官能化合物としては、アクリル系ベースポリマーとの相溶性が高いことから、多官能(メタ)アクリレートが好ましく、光ラジカル反応性が高いことから、多官能アクリレートが特に好ましい。
【0062】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキサンジオールジ(メタアクリレート、ノナンジオールジ(メタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、およびグリセリンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびエトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリル酸エステル;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリル酸エステル;ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート等およびジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0063】
光硬化後の粘着シートの接着信頼性を高める観点から、光重合性多官能化合物の分子量は1500以下が好ましく、1000以下がより好ましい。多官能化合物の官能基当量(g/eq)は、50~500が好ましく、70~300がより好ましく、80~200がさらに好ましい。ベースポリマーとの適度な相溶性を示すことから、光重合性多官能化合物は、常温で液体であるものが好ましい。
【0064】
粘着剤組成物における光重合性多官能化合物の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、0.3~15重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましく、1~5重量部がさらに好ましい。光重合性多官能化合物の含有量が少ない場合は、光硬化後の粘着シートの接着信頼性が不十分となる傾向がある。一方、光硬化性多官能化合物の含有量が過度に大きい場合は、光硬化前の粘着シート(粘着剤組成物)中のベースポリマーの比率が小さくなり、粘着シートの加工性や加工寸法安定性が低下する場合がある。また、光硬化性多官能化合物の含有量が過度に大きい場合は、光硬化後の粘着シートが硬くなり、粘着シート21の低温での接着力や耐衝撃性が不十分となる場合がある。
【0065】
(光重合開始剤)
光重合性多官能化合物を含む光硬化性の粘着剤組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。粘着剤組成物における光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.05~3重量部がより好ましい。
【0066】
(オリゴマー)
粘着剤組成物は、粘着シートの接着力の調整や粘度調整等を目的として、各種のオリゴマーを含んでいてもよい。オリゴマーとしては、例えば重量平均分子量が1000~30000程度のものが用いられる。オリゴマーとしては、アクリル系ベースポリマーとの相溶性に優れることから、アクリル系オリゴマーが好ましい。
【0067】
アクリル系オリゴマーは、主たる構成モノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。中でも、構成モノマー成分として、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(鎖状アルキル(メタ)アクリレート)、および脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(脂環式アルキル(メタ)アクリレート)を含むものが好ましい。鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび脂環式アルキル(メタ)アクリレートの具体例は、アクリル系ベースポリマーの構成モノマーとして先に例示した通りである。
【0068】
アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、20℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、100℃以上が特に好ましい。架橋構造が導入された低Tgのベースポリマーと高Tgのアクリル系オリゴマーとを併用することにより、粘着シートの接着力が向上する傾向がある。アクリル系オリゴマーのガラス転移温度の上限は特に限定されないが、一般には200℃以下であり、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、前述のFox式により算出される。
【0069】
例示の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、ガラス転移温度が高く、ベースポリマーとの相溶性に優れることから、メタクリル酸メチルが好ましい。脂環式アルキル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、およびメタクリル酸シクロヘキシルが好ましい。すなわち、アクリル系オリゴマーは、構成モノマー成分として、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、およびメタクリル酸シクロヘキシルからなる群から選択される1種以上と、メタクリル酸メチルとを含むものが好ましい。
【0070】
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量に対する脂環式アルキル(メタ)アクリレートの量は、10~90重量%が好ましく、20~80重量%がより好ましく、30~70重量%がさらに好ましい。アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量に対する鎖状アルキル(メタ)アクリレートの量は、10~90重量%が好ましく、20~80重量%がより好ましく、30~70重量%がさらに好ましい。
【0071】
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、1000~30000が好ましく、1500~10000がより好ましく、2000~8000がさらに好ましい。当該範囲の分子量を有するアクリル系オリゴマーを用いることにより、粘着シートの接着力や接着保持力が向上する傾向がある。
【0072】
アクリル系オリゴマーは、上記モノマー成分を各種の重合方法により重合することにより得られる。アクリル系オリゴマーの重合に際しては、各種の重合開始剤を用いてもよい。また、分子量の調整を目的として連鎖移動剤を用いてもよい。
【0073】
粘着剤組成物にアクリル系オリゴマー等のオリゴマー成分を含める場合、その含有量は、上記のベースポリマー100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。粘着剤組成物中のオリゴマーの含有量が上記範囲である場合に、接着性の向上が期待できる。
【0074】
(シランカップリング剤)
接着力の調整等を目的として、粘着剤組成物中に、シランカップリング剤を添加してもよい。粘着剤組成物にシランカップリング剤が添加される場合、その添加量は、ベースポリマー100重量部に対し通常0.01~5.0重量部程度であり、0.03~2.0重量部程度であることが好ましい。
【0075】
(酸化防止剤)
粘着剤組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を含むことにより、粘着剤組成物や粘着シートの保存環境や使用環境における熱や光に起因する硬化性成分の反応や劣化を抑制できる。酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。中でも、アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤等のラジカル連鎖防止剤として作用するものが好ましく、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0076】
ヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤は、フェノールのOH基が結合している芳香族環上の炭素原子に隣接炭素原子の少なくとも一方に、tert-ブチル基等の立体障害の大きな基が結合したものである。ヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF製「Irganox 1010」)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF製「Irganox 1076」)、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール(BASF製「Irganox 1330」)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(BASF製「Irganox 3114」)、イソシアヌル酸トリス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル](BASF製「Irganox 3125」)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](ADEKA製「アデカスタブ AO-60」)、3、9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA製「アデカスタブ AO-80」)、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル(住友化学製「スミライザーGS」)、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル(住友化学製「スミライザー GM」)、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート](住友化学製「スミライザー GA-80」)、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(サイテック製「シアノックス 1790」)等が挙げられる。
【0077】
粘着剤組成物が酸化防止剤を含む場合、不所望の硬化反応や劣化を抑制する観点から、酸化防止剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましく、0.3重量部以上または0.5重量部以上であってもよい。一方、酸化防止剤の含有量が過度に多い場合は、粘着シートを光硬化する際の硬化阻害の原因となり得る。そのため、酸化防止剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
【0078】
(他の添加剤)
上記例示の各成分の他、粘着剤組成物は、連鎖移動剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
[粘着シート]
基材上に粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去することにより、基材上に粘着シートが形成される。粘着シートの形成には、任意の適切な基材が用いられる。基材は、樹脂フィルムの表面に離型層を備える離型フィルムでもよい。
【0080】
離型フィルムの樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が特に好ましい。離型フィルムの厚みは、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。離型層の材料としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤等が挙げられる。離型層の厚みは、一般には、10~2000nm程度である。
【0081】
基材上への粘着剤組成物の塗布方法としては、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等の各種方法が用いられる。
【0082】
粘着剤組成物が溶媒を含む場合は、基材上への粘着剤組成物の塗布後に、溶剤の乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~15分、特に好ましくは10秒~10分である。
【0083】
溶媒を乾燥後は、粘着シートの表面を保護するために、カバーシートを付設することが好ましい。カバーシートとしては、基材フィルムと同様、粘着シートとの接触面に離型層を備える離型フィルムを用いることが好ましい。
【0084】
基材上に粘着剤組成物を塗布後、必要に応じて加熱を行い、ベースポリマーに架橋構造を導入する。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定すればよく、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度である。溶媒を乾燥させるための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。前述のように、架橋構造の導入は、必ずしも加熱を伴うものでなくてもよい。
【0085】
架橋構造の形成を促進するために架橋触媒を用いてもよい。例えば、イソシアネート系架橋剤の架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒(特にスズ系架橋触媒)等が挙げられる。
【0086】
粘着シートの表面に離型フィルムを貼り合わせることにより、両面に離型フィルムが仮着された粘着シートが得られる。粘着シートの形成時の基材やカバーシートを、そのまま離型フィルムとしてもよい。
【0087】
粘着シートの両面に離型フィルムが設けられる場合、一方の離型フィルムの厚みと他方の離型フィルムの厚みは、同一でもよく、異なっていてもよい。粘着シートから一方の面に仮着された離型フィルムを剥離する際の剥離力と、粘着シートから他方の面に仮着された離型フィルムを剥離する際の剥離力は、同一でも異なっていてもよい。
【0088】
偏光子11とカバーウインドウ70との貼り合わせに用いられる粘着シート21の厚みは、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。粘着シート21の厚みを大きくすることにより、耐衝撃性が高くなる傾向がある。また、カバーウインドウ70が加飾印刷による印刷段差を有している場合は、粘着シート21に、段差吸収性を持たせることができる。粘着シート21の厚みの上限は特に制限されないが、粘着シートの生産性等の観点から、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
【0089】
粘着シート21の全光線透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。粘着シートのヘイズは1.5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0090】
粘着シート21の波長380nmの光透過率は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下であってもよい。粘着シート21の紫外線遮蔽性を高めることにより、外部から入射する紫外線に起因する偏光子11の黄変等の光劣化を抑制できる。上記の様に、粘着剤組成物に紫外線吸収剤を含めることにより、粘着シート21の可視光の透明性を維持しつつ、紫外線吸収性を持たせることができる。
【0091】
[偏光板]
<偏光子>
偏光板10は偏光子11を含む。偏光子11は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムである。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度が1000~10000程度、ケン化度が80~100モル%程度のものが一般に用いられる。
【0092】
ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸処理を施すことにより偏光子が得られる。偏光子の厚みは、1~50μm程度が好ましい。偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている偏光子を挙げることができる。このような薄型偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と、ヨウ素染色する工程とを含む製法により得られる。
【0093】
<光学層>
偏光子11の第一主面(視認側の面)には光学層が設けられておらず、前述のように、偏光子11に接して粘着シート21が設けられる。偏光板10は、偏光子11のみからなるものでもよく、偏光子11の第二主面(画像表示セル60側の面)に適宜の光学層15が配置されていてもよい。
【0094】
光学層15は、偏光子11を保護するための透明保護フィルムであってもよく、視野角拡大等を目的とする光学補償層や、偏光子11とともに円偏光板を構成するための1/4波長板等の機能を有するものであってもよい。光学層15は、透明保護フィルムとしての機能と位相差板としての機能とを兼ね備えていてもよい。
【0095】
光学層15を構成する材料としては、例えば、透明性、機械強度、および熱安定性に優れる樹脂材料が挙げられる。このような樹脂材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。光学層15は、液晶材料であってもよい。例えば、光学層15として、液晶分子が所定方向に配向した液晶層を用いてもよい。
【0096】
光学層15は、偏光子11の第二主面上に直接接していてもよく、適宜の接着剤層を介して貼り合わせられていてもよい。光学層15は、2層以上の積層体であってもよい。例えば、光学層15は、2層以上のフィルムの積層体でもよく、フィルム基材上に液晶層が設けられた積層体でもよく、2層以上の液晶層が積層されたものでもよい。光学層15は、液晶分子を所定方向に配向させるための配向膜を含んでいてもよい。
【0097】
[粘着剤付き偏光板]
粘着シート21は、
図2に示す様に、偏光板10と一体積層された粘着剤付き偏光板81として提供されてもよい。粘着剤付き偏光板では、偏光子11の第一主面に接して粘着シート21が配置されている。
図2では、偏光子11の第二主面に光学層15が設けられているが、上記の通り、偏光板10は、偏光子の第二主面に光学層を有していなくてもよい。
【0098】
偏光子11の第一主面上に粘着シート21を付設する方法は特に限定されない。予め基材上に作成した粘着シート21を偏光子11上に貼り合わせてもよく、偏光子11を基材として粘着シート21を形成してもよい。
【0099】
粘着剤付き偏光板81において、粘着シート21上には、離型フィルム41が剥離可能に貼着されることが好ましい。離型フィルムは、粘着シート21をカバーウインドウ70と貼り合わせるまでの間、粘着シート21の露出面を保護する機能を有する。粘着シートの形成(塗布)時に用いた基材を、そのまま粘着シート21上の離型フィルム41として用いてもよい。
【0100】
粘着剤付き偏光板は、
図3に示すように、偏光板10の視認側表面に、偏光子11と接する粘着シート21を備え、偏光板の他方の面に他の粘着シート22を備える両面粘着剤付き偏光板でもよい。粘着シート22上には、離型フィルム42が剥離可能に貼着されていることが好ましい。
【0101】
図3に示す粘着剤付き偏光板81では、偏光板10が偏光子11の第二主面に光学層15を備え、光学層15上に粘着シート22が配置されている。偏光子11の第二主面に他の層を介さず、偏光子11に接して粘着シート22が積層されていてもよい。
【0102】
このように、偏光板10の両面に予め粘着剤層が付設された両面粘着剤付き偏光板を用いれば、画像表示セルの表面に偏光板を貼り合わせた後、偏光板上に別途の粘着シートを付設する工程を省略でき、画像表示装置の製造工程を簡略化できる。
【0103】
粘着シート22は、偏光板10と画像表示セル60との貼り合わせに用いられる。粘着シート22の厚みは、3μm~30μmが好ましく、5μm~27μmがより好ましく、10μm~25μmがさらに好ましい。粘着シート22としては、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられる各種の粘着剤を用いることができる。粘着シート22を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0104】
[画像表示装置]
図1に示すように、画像表示装置100は、偏光板10の視認側に、粘着シート21を介して貼り合わせられたカバーウインドウ70を備える。偏光板10の他方の面には、粘着シート22を介して、液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル60が貼り合わせられている。画像表示セル60は、折り曲げ可能であってもよい。
【0105】
カバーウインドウ70としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。画像表示セル60が折り曲げ可能である場合、カバーウインドウ70も折り曲げ可能であってもよい。カバーウインドウは、複数の透明フィルムが粘着剤や接着剤を介して積層されたものであってもよく、タッチパネルセンサーを備えていてもよい。タッチパネルセンサーとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等、任意の方式のタッチパネルが用いられる。
【0106】
粘着シート21による偏光板10とカバーウインドウ70との貼り合わせ、および粘着シート22と画像表示セル60との貼り合わせの順序は特に限定されない。上記のように、偏光板の表面に予め粘着シートを付設した粘着剤付き偏光板を用いてもよい。
【0107】
偏光板10とカバーウインドウ70とを粘着シート21を介して貼り合わせた後に、貼り合わせ界面や、印刷段差近傍の気泡を除去するために脱泡を行ってもよい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせを行い、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧を行ってもよい。
【0108】
粘着シート21が光硬化性の粘着剤組成物からなる場合は、偏光板10とカバーウインドウ70との貼り合わせ後に、粘着剤組成物の光硬化が行われる。光照射により、光重合性多官能化合物の重合反応が進行し、これに伴って粘着シートの接着信頼性が高められる。
【0109】
光硬化時の照射光量は粘着シートを光硬化可能な範囲であれば特に限定されず、例えば、積算光量50~10000mJ/cm2程度である。粘着シート21への光照射は、偏光板10側およびカバーウインドウ60側のいずれから行ってもよいが、紫外線による偏光子11の劣化を防止する観点からは、カバーウインドウ10側から紫外線を照射することが好ましい。粘着シート21が紫外線遮蔽性を有していれば、粘着シート21の光硬化のために紫外線を照射した場合でも、紫外線の大半が粘着シート21により吸収されるため、偏光子への紫外線の照射量を低減できる。
【0110】
画像表示装置100において、偏光子11の視認側に接して配置される粘着シート21は、先に説明した通りの組成を有している。そのため、画像表示装置が高温高湿環境に晒された場合や、外光に長時間曝された場合でも、偏光子の退色や黄変等の劣化が抑制され、かつ、偏光板10とカバーウインドウ70との接着信頼性に優れている。
【実施例】
【0111】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
[粘着シート1~14の作製]
<ベースポリマーの重合>
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、表1に示す比率のモノマー成分(合計100重量部)、および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、56℃で5時間反応させ、続けて70℃で3時間反応させて、アクリル系ベースポリマー溶液を調製した。
【0113】
表1において、モノマーは以下の略称により記載されている。
BA :アクリル酸ブチル
CHA :アクリル酸シクロヘキシル
IBXA :アクリル酸イソボルニル
DCPA :アクリル酸ジシクロペンテニル
4HBA :アクリル酸4-ヒドロキシブチル
NVP :N-ビニル-2-ピロリドン
AM :アクリルアミド
HEAA :ヒドロキシエチルアクリルアミド
【0114】
<光硬化性粘着剤組成物の調製>
上記で得られたアクリル系ベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、下記の後添加成分を表1に示す量で添加した後、均一に混合して、光硬化性粘着剤組成物を調製した。
イソシアネート系架橋剤:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学製「タケネートD110N」)
多官能アクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製「KBM-403」)
酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF製「「Irganox 1010」
光重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins製「Omnirad651」):0.2重量部;および
紫外線吸収剤:5,5’-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)-2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ジフェノール(BASF製「Tinosorb S」)
【0115】
<粘着シートの作製>
離型フィルム(片面にシリコーン系離型層が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、上記の光硬化性粘着剤組成物を塗布し、100℃で3分間加熱して溶媒を除去後、表面に別の離型フィルムを貼り合わせた。この積層体を、25℃の雰囲気下で3日間エージングして架橋を進行させ、両面に離型フィルムが仮着された粘着シートを得た。
【0116】
[粘着シートA]
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、アクリル酸ブチル:99重量部、およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル:1重量部、ならびに熱重合開始剤としてAIBN:0.2重量部を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、60℃で5時間反応させ、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリル系ベースポリマーの溶液を得た。このベースポリマー溶液に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」):0.8重量部、およびシランカップリング剤(信越化学工業製「KBM403」):0.1重量部を添加した後、均一に混合して粘着剤組成物溶液を調製した。
【0117】
離型フィルム上に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去後、表面に別の離型フィルムを貼り合わせた。この積層体を、50℃の雰囲気下で2日間エージングして架橋を進行させ、両面に離型フィルムが仮着された粘着シートAを得た。
【0118】
[粘着シート1~14の評価]
<紫外線透過率>
粘着シートの表面から一方の離型フィルムを剥離し、無アルカリガラス板に貼り合わせた後、他方の離型フィルムを剥離して測定用試料とした。可視紫外分光光度計により透過率スペクトルを測定し、波長380nmにおける透過率を読み取った。
【0119】
<接着信頼性>
無アルカリガラス板上に、粘着シート1~14を介してヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子を貼り合わせた。その上に、粘着シートAを介してアルミホイルを貼り合わせた後、無アルカリガラス板側からメタルハライドランプ(300mW/cm2)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射して粘着剤を硬化し、評価用試料を作製した。
【0120】
評価用試料を、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽内で100時間保持して、耐湿熱試験を実施した。試験後の試料の10cm×10cmの範囲を、倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察し、気泡の有無を確認した。直径20μm以上の気泡が確認されなかったものをOK,直径20μm以上の気泡が1個以上確認されたものをNGとした。
【0121】
<退色性および耐候性>
第1の無アルカリガラス板上に、粘着シートAを介してヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子を貼り合わせた。その上に粘着シート1~Xを介して第2の無アルカリガラス板を貼り合わせた後、第2の無アルカリガラス板側からメタルハライドランプ(300mW/cm2)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射して粘着剤を硬化し、評価用試料を作製した。
【0122】
(耐湿熱性)
評価用試料を、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽内で100時間保持して、耐湿熱試験を実施した。試験前の波長550nmにおける透過率T0と、試験後の波長550nmにおける光透過率T1との差ΔT=T1-T0を求めた。
【0123】
(耐候性)
評価用試料を、第1の無アルカリガラス板側から光が入射しないように固定治具に取り付け、紫外線フェードメーター(スガ試験機製「U48AU」」を用いて、温度40℃、相対湿度20%の環境下、放射強度(300~700nm積算照度)500±50W/m2の条件で、第2の無アルカリガラス板側からカーボンアークランプの光を100時間照射して耐候フェード試験を実施した。試験前の試料の透過光のb*
0と、試験後の試料の透過光のb*
1との差Δb*=b*
1-b*
0を求めた。なお、b*は、CIE1976色空間のクロマティクネス指数b*であり、バックライト上に試料を載置して測定した。
【0124】
各粘着シートの粘着剤の組成、および評価結果を表1に示す。
【0125】
【0126】
紫外線吸収剤を含まない組成物3を用いた例では、耐候試験後の試料におけるΔb*の上昇が大きく、偏光子が黄変していた。組成物2と組成物3との対比から、粘着シートが紫外線吸収剤を含むことにより、耐候性が向上し、偏光子の黄変を抑制できることが分かる。
【0127】
ベースポリマーを構成するモノマー成分100重量部のうちNVPを8重量部含む組成物7を用いた試料では、耐湿熱試験前後での透過率変化ΔTが大きく、耐湿熱性が十分ではなかった。AMを8重量部含む組成物8およびHEAAを8重量部含む組成物9も同様であった。組成物2,6,7の対比では、NVPの量が少ないほどΔTが小さくなる傾向がみられた。これらの結果から、ベースポリマーを構成するモノマー成分における窒素原子含有モノマーの量を低減することにより、耐湿熱性が向上し、偏光子の退色を抑制できることが分かる。
【0128】
ベースポリマーを構成するモノマー成分における4HBAの量が異なる組成物2,10,11,12の対比から、4HBAの量が少ないほどΔTが小さくなる傾向がみられた。これらの結果から、ベースポリマーを構成するモノマー成分におけるヒドロキシ基含有モノマーの量を低減することにより、耐湿熱性が向上し、偏光子の退色を抑制できることが分かる。
【0129】
ベースポリマーを構成するモノマー成分におけるCHAの量が15重量部である組成物1を用いた試料は、CHAの量が30重量部である組成物2を用いた試料に比べて接着信頼性が不足していた。CHAの割合を増加させた組成物13,14を用いた試料は、十分な接着信頼性を示した。また、CHAに代えてIBXAを用いた実施例4、DCPAを用いた実施例5も十分な接着信頼性を示した。これらの結果から、ベースポリマーの構成モノマー成分における高Tgモノマーの比率を高めることにより、窒素原子含有モノマーやヒドロキシ基含有モノマーの比率が小さい場合でも、粘着シートが優れた接着信頼性を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0130】
10 偏光板
11 偏光子
15 光学層
21,22 粘着シート
81,82 粘着剤付き偏光板
60 画像表示セル
70 カバーウインドウ
100 画像表示装置