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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20241003BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020183763
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073640
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】田中 優希
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0122570(US,A1)
【文献】特開昭57-018517(JP,A)
【文献】特開2020-066936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
E05B 83/34
B60L 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受給部を内部に有する車両の受給凹部に設けられ、前記受給凹部の開口部を閉塞する閉位置と前記開口部を開放する開位置との間で移動可能に構成されたリッドと、
前記リッドと前記受給凹部とを連結する駆動リンク部材を含んで構成され、前記リッドの閉位置において前記受給凹部の内部に格納された格納位置に配置され、格納位置から作動することで前記リッドを開位置へ移動させるリンク機構と、
前記リンク機構を作動させるための駆動源となる駆動部と、
格納位置の前記駆動リンク部材に係合して前記リンク機構の作動を阻止するロック部材と、
前記駆動部によって回転駆動すると共に、初期位置から回転方向一方側へ回転することで前記ロック部材の前記駆動リンク部材への係合を解除する回転体と、
前記駆動リンク部材及び前記回転体に設けられ、前記回転体の初期位置から回転方向一方側への回転時において前記ロック部材の前記駆動リンク部材への係合解除後に前記回転体と前記駆動リンク部材とを連結して格納位置の前記リンク機構を作動させる差動連結機構と、
を備え
前記回転体の回転軸と前記駆動リンク部材の回転軸とが同軸であるリッド開閉装置。
【請求項2】
前記差動連結機構は、
前記回転体及び前記駆動リンク部材の一方に設けられ、前記回転体の回転方向に延在された差動溝と、
前記回転体及び前記駆動リンク部材の他方に設けられ、前記差動溝の一端部又は他端部に配置された差動連結軸と、
を含んで構成されている請求項1に記載のリッド開閉装置。
【請求項3】
前記駆動部は、駆動軸を有し、
記駆動リンク部材の一端部が、前記駆動軸に回転可能に支持され、
前記回転体が、前記駆動軸に一体回転可能に連結されている請求項2に記載のリッド開閉装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記回転体の径方向外側に配置されると共に、前記駆動リンク部材と係合するロック位置と、前記駆動リンク部材との係合が解除されたアンロック位置と、の間を移動可能に構成されており、
前記回転体の外周部には、前記ロック部材が当接され且つ前記ロック部材をロック位置とアンロック位置との間で移動させるカム面が形成されている請求項3に記載にリッド開閉装置。
【請求項5】
前記回転体と前記駆動リンク部材とが前記駆動軸の軸方向に並んで配置され、
前記ロック部材は、前記回転体と前記駆動リンク部材とに跨って配置されており、
前記駆動リンク部材には、前記駆動軸の径方向外側へ開放され且つ前記ロック部材と係合可能に構成された係合凹部が形成されている請求項4に記載のリッド開閉装置。
【請求項6】
前記リッドには、前記受給凹部側へ突出したリセット部が設けられ、
前記回転体には、前記リセット部に押圧可能に構成された被押圧部が設けられており、
前記回転体が初期位置から回転方向一方側に配置された状態で、閉位置の前記リッドが前記受給凹部側へ変位することで、前記リセット部が前記被押圧部を押圧して前記回転体が初期位置に復帰する請求項1~請求項5の何れか1項に記載のリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のエネルギー受給口装置(リッド開閉装置)は、車両の受給ポートの開口部を開閉するリッドと、リッドを開閉させる開閉装置と、を有している。また、開閉装置は、車体とリッドとを連結するリンク機構と、リンク機構を駆動させるモータ(駆動部)と、を含んで構成されている。そして、モータの駆動力がリンク機構に伝達されると、リンク機構が作動して、リッドが受給ポートを閉じた状態から開いた状態に遷移する。したがって、リッドを自動で開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-210473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記エネルギー受給口装置は、閉状態のリッドの作動を阻止するロック機構を備えていない。このため、ロック機構を設けることで、エネルギー受給口装置の安全性を高めることができる。例えば、閉状態のリッドをロックするロック部材と、ロック部材を駆動する駆動部と、を別途設けて、閉状態のリッドの作動を阻止することができる。しかしながら、この場合には、ロック部材を駆動するための駆動部を別途設ける必要があるため、エネルギー受給口装置のコストアップを招くという問題がある。
【0005】
一方、上記エネルギー受給口装置において、リッドを開閉させるモータによって閉状態のリッドを保持することで、駆動部を別途設けることなく、閉状態のリッドの作動を阻止することができる。しかしながら、この場合には、リッドをロック状態に保持するための保持力が比較的低くなる。このため、リッドを安定してロックさせることができなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、コストアップを抑制しつつ、リッドを安定してロックすることができるリッド開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、受給部を内部に有する車両の受給凹部に設けられ、前記受給凹部の開口部を閉塞する閉位置と前記開口部を開放する開位置との間で移動可能に構成されたリッドと、前記リッドと前記受給凹部とを連結する駆動リンク部材を含んで構成され、前記リッドの閉位置において前記受給凹部の内部に格納された格納位置に配置され、格納位置から作動することで前記リッドを開位置へ移動させるリンク機構と、前記リンク機構を作動させるための駆動源となる駆動部と、格納位置の前記駆動リンク部材に係合して前記リンク機構の作動を阻止するロック部材と、前記駆動部によって回転駆動すると共に、初期位置から回転方向一方側へ回転することで前記ロック部材の前記駆動リンク部材への係合を解除する回転体と、前記駆動リンク部材及び前記回転体に設けられ、前記回転体の初期位置から回転方向一方側への回転時において前記ロック部材の前記駆動リンク部材への係合解除後に前記回転体と前記駆動リンク部材とを連結して格納位置の前記リンク機構を作動させる差動連結機構と、を備え、前記回転体の回転軸と前記駆動リンク部材の回転軸とが同軸であるリッド開閉装置である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記差動連結機構は、前記回転体及び前記駆動リンク部材の一方に設けられ、前記回転体の回転方向に延在された差動溝と、前記回転体及び前記駆動リンク部材の他方に設けられ、前記差動溝の一端部又は他端部に配置された差動連結軸と、を含んで構成されているリッド開閉装置である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記駆動部は、駆動軸を有し、前記駆動リンク部材の一端部が、前記駆動軸に回転可能に支持され、前記回転体が、前記駆動軸に一体回転可能に連結されているリッド開閉装置である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ロック部材は、前記回転体の径方向外側に配置されると共に、前記駆動リンク部材と係合するロック位置と、前記駆動リンク部材との係合が解除されたアンロック位置と、の間を移動可能に構成されており、前記回転体の外周部には、前記ロック部材が当接され且つ前記ロック部材をロック位置とアンロック位置との間で移動させるカム面が形成されているリッド開閉装置である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記回転体と前記駆動リンク部材とが前記駆動軸の軸方向に並んで配置され、前記ロック部材は、前記回転体と前記駆動リンク部材とに跨って配置されており、前記駆動リンク部材には、前記駆動軸の径方向外側へ開放され且つ前記ロック部材と係合可能に構成された係合凹部が形成されているリッド開閉装置である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記リッドには、前記受給凹部側へ突出したリセット部が設けられ、前記回転体には、前記リセット部に押圧可能に構成された被押圧部が設けられており前記回転体が初期位置から回転方向一方側に配置された状態で、閉位置の前記リッドが前記受給凹部側へ変位することで、前記リセット部が前記被押圧部を押圧して前記回転体が初期位置に復帰するリッド開閉装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、コストアップを抑制しつつ、リッドを安定してロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るリッド開閉装置を示す斜視図である。
図2図1に示されるリッドが開位置に配置された状態を示す斜視図である。
図3図1に示されるリッド開閉装置の上側から見た平断面図(図1の3-3線断面図)である。
図4図1に示される受給凹部内における右側のリンク機構を示す左側から見た側面図である。
図5図4に示されるアクチュエータの駆動軸と第1リンクのヒンジ部及び回転体との連結状態を示す前側から見た正面図である。
図6図5に示されるアクチュエータ、第1リンク、及び回転体の右斜め前方から見た分解斜視図である。
図7図5に示されるアクチュエータ、第1リンク、及び回転体の左斜め前方から見た分解斜視図である。
図8図1に示されるリッドの閉位置から開位置への移動を説明するための説明図である。
図9図2に示されるリッドの開位置から閉位置への移動を説明するための説明図である。
図10】手動によってリッドを開位置から閉位置へ移動させるときの動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係るリッド開閉装置10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP,矢印FR、及び矢印RHは、それぞれリッド開閉装置10の上側、前側、右側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、リッド開閉装置10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0016】
図1及び図2に示されるように、リッド開閉装置10は、車両(自動車)に搭載されて、車両の受給凹部82の開口部を開閉する装置として構成されている。車両では、車両の車体を構成する車体パネル80に、受給凹部82を露出させる矩形状の孔部80Aが形成されている。受給凹部82は、前側へ開放された凹状に形成されると共に、前側から見て略矩形状に形成されている。そして、受給凹部82が、車体パネル80の後側において、車体パネル80に接続されており、受給凹部82が孔部80Aから露出されている。受給凹部82の開口部には、後側へ一段下がった段差部82Aが形成されており、段差部82Aは、受給凹部82の周方向全周に亘って延在されている。段差部82Aには、弾性を有するシール部材84が設けられている。シール部材84は、断面円形状をなす略矩形環状に形成されると共に、受給凹部82の開口部の周方向全周に亘って延在されている。また、受給凹部82内には、車両のエネルギー源を受給するための受給部86が設けられている。なお、車両のエネルギー源としては、例えば、電気、ガソリン、ガス、水素、及び、その他のエネルギーとなりえる物質などがある。
【0017】
リッド開閉装置10は、受給凹部82の開口部を開閉するリッド20と、リンク機構30と、「駆動部」としてのアクチュエータ40と、回転体50と、ロック部材60と、差動連結機構70と、を含んで構成されている。
【0018】
(リッド20について)
図1図4に示されるように、リッド20は、前後方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されている。リッド20は、後述するリンク機構30によって受給凹部82に連結されて、リンク機構30の作動によって、受給凹部82の開口部を開閉するように構成されている。具体的には、リッド20が、受給凹部82の開口部を閉塞する閉位置(図1に示される位置)と、受給凹部82の開口部を開放する開位置(図2に示される位置)と、の間を移動可能に構成されている。また、リッド20の閉位置では、リッド20の外周縁部が、シール部材84の前側に隣接して配置されており、シール部材84によってリッド20と段差部82Aとの間がシールされている。なお、以下の説明では、リッド20が閉位置に配置された状態として説明する。
【0019】
また、リッド20の後面には、後述するリンク機構30を連結するための左右一対のリッド連結片22が設けられている。リッド連結片22は、左右方向を板厚方向とし上下方向に延在された略長尺板状に形成されて、リッド20の上部から後側へ突出している。また、リッド20の後面には、右側のリッド連結片22の下側において、「リセット部」としての押圧片24が設けられている。押圧片24は、左右方向を板厚方向とする略三角形板状に形成されている。具体的には、押圧片24の外周部の1辺が押圧傾斜部24Aとして構成されており、押圧傾斜部24Aは、左右方向から見て、後側へ向かうに従い上側へ傾斜されている。
【0020】
(リンク機構30について)
リンク機構30は、リッド20と受給凹部82とを連結して、リッド20を閉位置と開位置との間で開閉させる機構として構成されている。具体的には、リッド20の閉位置では、リンク機構30が受給凹部82内に格納された格納位置に配置されており、リッド20の開位置では、リンク機構30が展開した展開位置に配置される構成になっている。リンク機構30は、左右一対の第1リンク32L、32Rと、左右一対の第2リンク34L、34Rと、を含んで構成されている。そして、右側の第1リンク32Rが、本発明の「駆動リンク部材」に対応している。
【0021】
第1リンク32L、32Rは、左右方向を厚み方向とする略長尺ブロック状に形成されると共に、リッド20の後側において、略上下方向に延在されている。第1リンク32L、32Rの一端部(下端部)は、ヒンジ部32Aとして構成されており、ヒンジ部32Aの外周部は、左右方向から見て、円形状に形成されている。右側の第1リンク32Rのヒンジ部32Aは、中央部において、後述するアクチュエータ40の駆動軸44に回転可能に支持されており、左側の第1リンク32Lのヒンジ部32Aは、中央部において、受給凹部82に設けられた支持軸36によって回転可能に支持されている(図3参照)。駆動軸44及び支持軸36は、左右方向を軸方向として配置されると共に、同軸上に配置されている。また、第1リンク32L、32Rの他端部(上端部)は、リッド20のリッド連結片22の左右方向外側に配置されて、リッド連結片22に設けられた左右方向を軸方向とする支持軸37に回転可能に支持されている。また、リンク機構30の格納位置から展開位置への作動では、第1リンク32L、32Rが、駆動軸44及び支持軸36の軸回りを回転方向一方側(図4の矢印A方向側)に回転するようになっている。
【0022】
図5図7に示されるように、右側の第1リンク32Rにおけるヒンジ部32Aの外周部には、「係合凹部」としてのロック凹部32Bが形成されており、ロック凹部32Bは、ヒンジ部32Aの径方向外側及び左側に開放している。具体的には、ロック凹部32Bは、左側から見て、ヒンジ部32Aの径方向に延在された第1ロック面32B1と、第1ロック面32B1の上端から後側へ延出された第2ロック面32B2と、を含んで構成されている。
【0023】
また、右側の第1リンク32Rにおけるヒンジ部32Aの外周部には、ロック凹部32Bに対して回転方向他方側において、後述する差動連結機構70を構成する差動溝32Cが形成されており、差動溝32Cは、ヒンジ部32Aの径方向外側及び左側へ開放している。また、差動溝32Cは、ヒンジ部32Aの周方向(後述する回転体50の回転方向)に延在している。これにより、差動溝32Cは、差動溝32Cにおける第1リンク32Rの回転方向一方側の面を構成する第1被係合面32C1(図5参照)と、差動溝32Cにおける第1リンク32Rの回転方向他方側の面を構成する第2被係合面32C2(図5参照)と、を有している。
【0024】
また、右側の第1リンク32Rにおけるヒンジ部32Aには、径方向外側へ張り出され且つヒンジ部32Aから左側へ突出したカバー部32Dが一体に形成されている。カバー部32Dは、ヒンジ部32Aの径方向を板厚方向としてヒンジ部32Aの周方向に沿って延在されると共に、ロック凹部32Bに対して第1リンク32Rの回転方向一方側に配置されている。また、ヒンジ部32Aにおけるロック凹部32Bに対して第1リンク32Rの回転方向他方側の部分は、リンク側カム面32F(図5参照)として構成されており、リンク側カム面32Fは、後述する駆動軸44の周方向に沿った円弧状に形成されている。
【0025】
図4に示されるように、第1リンク32L、32Rの長手方向中間部には、ストッパ部32Eが形成されており、ストッパ部32Eは、第1リンク32L、32Rから前側へ突出している。ストッパ部32Eは、左右方向から見て、略三角形状に形成されている。
【0026】
図2及び図4に示されるように、第2リンク34L、34Rは、左右方向を厚み方向とする略長尺ブロック状に形成されている。第2リンク34L、34Rは、第1リンク32L、32Rの上側にそれぞれ配置され、左右方向から見て、略上下方向に延在されると共に、上側へ向かうに従い前側へ若干傾斜している。第2リンク34L、34Rの一端部(下端部)は、受給凹部82に設けられた左右方向を軸方向とする支持軸38によって回転可能に支持されている。第2リンク34L、34Rの他端部(上端部)は、リッド20のリッド連結片22の左右方向外側に隣接して配置されると共に、リッド連結片22の上端部に設けられた左右方向を軸方向とする支持軸39に回転可能に支持されている。
【0027】
そして、格納位置のリンク機構30が作動することで、リッド20が閉位置から開位置へ移動すると共に、リンク機構30が展開位置に配置されるようになっている。具体的には、第1リンク32L、32Rが、駆動軸44及び支持軸36の軸回りを回転方向一方側へ回転すると共に、第2リンク34L、34Rが支持軸38の軸回りを回転方向一方側へ回転する。これにより、リッド20が閉位置から前側且つ下側へ揺動して、受給凹部82の開口部が開放される構成になっている。
【0028】
(アクチュエータ40について)
図3図5図7に示されるように、アクチュエータ40は、リンク機構30の駆動源として構成されている。アクチュエータ40は、アクチュエータ本体42と、駆動軸44と、を含んで構成されている。アクチュエータ本体42は、受給凹部82の右側に近接して配置されて、図示しないホルダによって受給凹部82に固定されている。駆動軸44は、左右方向を軸方向としてアクチュエータ本体42の下端部から左側へ延出されて、受給凹部82の右下部内に配置されている。そして、前述した右側の第1リンク32Rのヒンジ部32Aが駆動軸44に回転可能に支持されている。アクチュエータ40は、車両の制御部46に電気的に接続されており、制御部46によってアクチュエータ40が作動することで、駆動軸44が自身の軸回りに回転するようになっている。また、駆動軸44の先端部は、断面D字形状に形成されている。
【0029】
なお、アクチュエータ40の駆動軸44の基端部には、エマージェンシーレバー48が一体回転可能に設けられている。エマージェンシーレバー48には、長尺状のケーブル(図示省略)の一端部が連結されており、ケーブルの他端部は、車両の車室内に操作可能に配置されている。そして、例えば、アクチュエータ40の故障などの緊急時には、乗員がケーブルの他端部を引張ることで、駆動軸44を回転方向一方側へ回転させることができる構成になっている。
【0030】
(回転体50について)
図3図7に示されるように、回転体50は、後述するロック部材60をロック位置とアンロック位置との間で進退させる部材として構成されている。回転体50は、左右方向を厚み方向とする略円板状に形成されている。回転体50の半径は、第1リンク32Rのリンク側カム面32Fの半径と一致している。回転体50の中央部には、左側へ突出した円柱状の軸部51が形成されている。また、回転体50の中央部には、連結孔52が貫通形成されており、連結孔52は、駆動軸44の先端側部分に対応して、断面D字形状に形成されている。そして、駆動軸44の先端部が連結孔52内に右側から嵌入されて、回転体50が、駆動軸44に一体回転可能に連結されると共に、右側の第1リンク32Rのヒンジ部32Aの左側に隣接して配置されている。また、回転体50の駆動軸44への連結状態では、回転体50が第1リンク32Rのカバー部32Dの径方向内側に配置されており、回転体50の軸部51が受給凹部82に回転可能に支持されている。そして、リンク機構30の格納位置において、回転体50が初期位置に配置されている。
【0031】
回転体50の外周部は、カム面53として構成されている。カム面53には、下側へ開放されたカム凹部54が形成されており、カム凹部54は、左右方向に貫通すると共に、第1リンク32Rのロック凹部32Bの左側に配置されている。これにより、カム面53は、カム凹部54の底面を構成する第1カム面53Aと、第1カム面53Aよりも回転体50の径方向外側に一段上がった第2カム面53Bと、第1カム面53Aと第2カム面53Bとの間に配置され且つ第1カム面53Aに対して回転体50の回転方向他方側に配置された傾斜カム面53Cと、を含んで構成されている。傾斜カム面53Cは、回転体50の径方向外側へ向かうに従い回転体50の回転方向他方側へ傾斜している。そして、回転体50の初期位置では、傾斜カム面53Cが第1リンク32Rの第1ロック面32B1よりも回転方向他方側に配置されて、左側から見て、第1リンク32Rのロック凹部32Bがカム凹部54の内部に配置されている(図5参照)。また、第1カム面53Aが第1リンク32Rの第2ロック面32B2よりも回転体50の径方向内側に配置されている。
【0032】
回転体50の右面には、カム凹部54に対して回転体50の回転方向他方側において、後述する差動連結機構70を構成する差動連結軸55が設けられている。差動連結軸55は、略矩形柱状に形成されて、回転体50の外周部から右側へ延出している。具体的には、差動連結軸55は、回転体50の周方向に対して直交する2つの側面と、回転の径方向に対して直交する2つの側面と、を有している。差動連結軸55は、第1リンク32Rにおける差動溝32Cの他端部に配置されており、差動溝32Cの第2被係合面32C2に対して回転方向一方側に隣接して配置されている。
【0033】
回転体50には、「被押圧部」としてのリターンピン56が設けられている。リターンピン56は、左右方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、回転体50から左側に延出されている。また、リターンピン56は、リッド20の押圧片24における押圧傾斜部24Aの後側に近接して配置されている。そして、詳細については後述するが、開位置のリッド20を手動で閉位置に移動させるときには、押圧片24によってリターンピン56を押圧して、回転体50を初期位置に復帰させる構成になっている。
【0034】
(ロック部材60について)
図5図7に示されるように、ロック部材60は、前後方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されており、右側の第1リンク32Rのヒンジ部32A及び回転体50の下側において、受給凹部82によって上下方向に相対移動可能に支持されている。具体的には、ロック部材60は、ロック位置(図5に示される位置)と、ロック位置から下側へ変位したアンロック位置(図8の(b)~(d)に示される位置)と、の間を移動可能に構成されている。また、ロック部材60は、図示しないスプリングによって、上側へ付勢されている。
【0035】
そして、リンク機構30の格納位置では、ロック部材60がロック位置に配置されると共に、ロック部材60の上端部が第1リンク32Rのロック凹部32B及び回転体50のカム凹部54内に配置されている。具体的には、ロック部材60の上端部が、ロック凹部32Bの第1ロック面32B1に対して第1リンク32R及び回転体50の回転方向一方側に隣接配置されている。これにより、リンク機構30の格納位置では、ロック部材60によって第1リンク32Rの回転方向一方側への回転が規制されて、リンク機構30の作動が阻止される構成になっている。さらに、ロック部材60のロック位置では、スプリングの付勢力によってロック部材60の上端部がロック凹部32Bの第2ロック面32B2に当接している。
【0036】
また、ロック部材60の下端面には、下側傾斜面60Aが形成されており、下側傾斜面60Aは、左右方向から見て、前側へ向かうに従い下側へ傾斜している。そして、詳細については後述するが、回転体50が初期位置から回転方向一方側へ回転することで、ロック部材60が回転体50の傾斜カム面53Cによって押圧されて、ロック位置からアンロック位置へ変位するようになっている。
【0037】
また、ロック部材60の下側には、検知スイッチ62が設けられており、検知スイッチ62は、受給凹部82に固定されると共に、制御部46に電気的に接続されている。検知スイッチ62は、後側へ押圧可能に構成されたスイッチ部62Aを有している。そして、ロック部材60のロック位置では、スイッチ部62Aがロック部材60の下側に配置されている。一方、ロック部材60のアンロック位置では、スイッチ部62Aが、ロック部材60の下側傾斜面60Aによって後側へ押圧されて、検知スイッチ62が制御部46へオン信号を出力するようになっている。これにより、制御部46によってロック部材60のアンロック位置を検知するようになっている。
【0038】
(差動連結機構70について)
差動連結機構70は、前述した第1リンク32Rの差動溝32Cと、回転体50の差動連結軸55と、を含んで構成されている。そして、リンク機構30の格納位置では、前述のように、差動連結軸55が差動溝32Cの他端部に配置されている。すなわち、差動連結軸55が、差動溝32Cの第1被係合面32C1に対して回転方向他方側に離間して配置されると共に、差動溝32Cの第2被係合面32C2に対して回転方向一方側に隣接して配置されている。このため、差動連結軸55が、差動溝32Cの一端部と他端部との間を移動するときには、回転体50が第1リンク32Rに対して相対回転する構成になっている。
【0039】
そして、回転体50が初期位置から回転方向一方側へ回転し、差動連結軸55が差動溝32Cの一端部に配置されるときには、回転体50の傾斜カム面53Cによってロック部材60がロック位置からアンロック位置に変位し、ロック部材60の上端部が第2カム面53Bの一端部に当接する設定になっている。また、この状態で、回転体50が回転方向一方側へさらに回転することで、差動連結軸55が、差動溝32Cの第1被係合面32C1を押圧して、回転体50及び第1リンク32Rが回転方向一方側へ回転するようになっている。すなわち、差動連結機構70は、回転体50の初期位置から回転方向一方側へ回転時において、ロック部材60のロック位置からアンロック位置への移動後に、回転体50とリンク機構30とを連結して、リンク機構30を作動させる機構として構成されている。
【0040】
(作用効果)
次に、リッド開閉装置10の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果を説明する。
【0041】
(アクチュエータ40の駆動によるリッド20の閉位置から開位置への移動について)
図8の(a)に示されるように、リッド20の閉位置では、リンク機構30が受給凹部82内に格納された格納位置に配置されている。また、この状態では、回転体50が初期位置に配置されている。さらに、ロック部材60が、ロック位置に配置されて、ロック部材60の上端部が、回転体50のカム凹部54内及び第1リンク32Rのロック凹部32B内に配置されている。そして、ロック部材60の上端部が第1リンク32Rの第1ロック面32B1と係合して、第1リンク32Rの回転方向一方側への回転が規制されている。したがって、リンク機構30の作動が阻止されて、リッド20の閉位置から開位置への回転が規制されている。一方、差動連結機構70では、回転体50の差動連結軸55が、第1リンク32Rの差動溝32Cの他端部に配置されている。すなわち、回転体50の回転方向一方側への回転に対して、回転体50と第1リンク32Rとが非連結状態になっている。
【0042】
この状態で、制御部46によってアクチュエータ40を作動させて、駆動軸44を回転方向一方側へ回転させると、回転体50が駆動軸44と共に初期位置から回転方向一方側へ回転する。回転体50が回転すると、回転体50の傾斜カム面53Cによってロック部材60の上端部が下側へ押圧されて、ロック部材60がロック位置から下側へ変位する。そして、ロック部材60の上端部が、回転体50の第2カム面53Bの一端部に到達すると、ロック部材60がアンロック位置に配置されると共に、ロック部材60によって検知スイッチ62のスイッチ部62Aが後側へ押圧される(図8の(b)の状態を参照)。これにより、ロック部材60と第1ロック面32B1との係合状態が解除されて、第1リンク32Rの回転方向一方側への回転が許可された状態になる。すなわち、リンク機構30の作動が許可された状態になる。また、検知スイッチ62から制御部46にオン信号が出力されて、制御部46が、リンク機構30の作動許可状態を検知する。
【0043】
一方、初期位置の回転体50が回転方向一方側へ回転開始するときには、差動連結機構70によって、回転体50と第1リンク32Rとが非連結状態になっている。このため、差動連結機構70の差動連結軸55が差動溝32Cを他端部から一端側へ移動すると共に、回転体50が第1リンク32Rに対して相対回転する。そして、ロック部材60のアンロック位置への到達時には、差動連結軸55が、差動溝32Cの一端部に到達して、差動溝32Cの第1被係合面32C1に対して回転方向他方側に隣接配置される。これにより、ロック部材60のアンロック位置への到達後において、回転体50と第1リンク32Rとが連結状態になる。
【0044】
この状態で、駆動軸44が回転方向一方側へさらに回転すると、差動連結軸55が差動溝32Cの第1被係合面32C1を押圧して、回転体50及び第1リンク32Rが回転方向一方側へ回転する。これにより、リンク機構30の格納位置からの作動が開始する。具体的には、第1リンク32L、32Rが駆動軸44及び支持軸36の軸回り一方側に回転し、第2リンク34L、34Rが支持軸38の軸回り一方側に回転すると共に、リッド20が閉位置から前側へ変位する(図8の(c)の状態を参照)。
【0045】
図8の(c)の状態から駆動軸44が回転方向一方側へさらに回転すると、リンク機構30が展開位置に配置されると共に、リッド20が開位置に配置される(図8の(d)の状態を参照)。具体的には、リッド20が、図8の(c)の状態から、後側且つ下側へ変位して、開位置に配置される。これにより、受給凹部82の開口部が前側に開放されて、受給部86が露出される。そして、リッド20の開位置への到達後、制御部46によってアクチュエータ40の駆動を停止する。また、リンク機構30の展開位置では、第1リンク32L、32Rのストッパ部32Eがシール部材84の下部に当接する。これにより、シール部材84が緩衝材として機能する。なお、第1リンク32R及び回転体50が回転方向一方側へ回転するとき(図8の(b)の状態から(d)の状態への回転時)には、第1リンク32Rのリンク側カム面32F及び回転体50の第2カム面53Bが、ロック部材60の上端部を摺動して、ロック部材60のアンロック位置が維持される。
【0046】
(アクチュエータ40の駆動によるリッド20の開位置から閉位置への移動について)
図8の(d)に示されるように、リッド20の開位置では、リンク機構30が展開位置に配置されている。この状態では、ロック部材60の上端部が第1リンク32Rのリンク側カム面32F及び回転体50の第2カム面53Bに当接して、ロック部材60が、アンロック位置に配置されている。また、差動連結機構70では、回転体50の差動連結軸55が、第1リンク32Rの差動溝32Cの一端部に配置されている。
【0047】
この状態で、制御部46によってアクチュエータ40を作動させて、駆動軸44を回転方向他方側へ回転させると、回転体50が駆動軸44と共に回転方向他方側へ回転する。ここで、上述のように、回転体50の差動連結軸55は、第1リンク32Rの差動溝32Cの一端部に配置されている。このため、回転体50の回転方向他方側への回転に対して、回転体50と第1リンク32Rとが非連結状態となっている。これにより、回転体50の回転方向他方側への回転時には、差動連結軸55が、差動溝32Cの他端側へ移動すると共に、回転体50が第1リンク32Rに対して相対回転する。そして、差動連結軸55が差動溝32Cの他端部に到達することで、差動連結軸55が差動溝32Cの第2被係合面32C2に対して回転方向一方側に隣接配置されて、回転体50の回転方向他方側への回転に対して、回転体50と第1リンク32Rとが連結状態になる(図9の(a)の状態を参照)。
【0048】
図9の(a)の状態から駆動軸44が回転方向他方側へさらに回転すると、差動連結軸55が差動溝32Cの第2被係合面32C2を回転方向他方側へ押圧して、回転体50及び第1リンク32Rが回転方向他方側へ回転する。具体的には、第1リンク32Rのリンク側カム面32F及び回転体50の第2カム面53Bが、ロック部材60の上端部を摺動しながら、第1リンク32R及び回転体50が回転方向他方側へ回転する。これにより、リンク機構30の展開位置から格納位置への作動が開始する。リンク機構30の展開位置からの作動が開始すると、第1リンク32L、32Rが駆動軸44及び支持軸36の軸回り他方側に回転し、第2リンク34L、34Rが支持軸38の軸回り他方側に回転して、リッド20が閉位置から上側へ変位する。そして、第1リンク32Rのリンク側カム面32F及び回転体50の第2カム面53Bの一端部が、ロック部材60の上端部に到達する位置まで、回転体50及び第1リンク32Rが回転すると、リッド20が受給凹部82の開口部の前側に配置される(図9の(b)の状態を参照)。この状態では、第1リンク32Rのロック凹部32Bがロック部材60に対して回転方向一方側に配置されている。
【0049】
図9の(b)の状態から駆動軸44が回転方向他方側へさらに回転すると、リッド20が後側へ変位して閉位置に配置される(図9の(c)の状態を参照)。また、このときには、回転体50が、初期位置に配置される。さらに、このときには、第1リンク32Rのリンク側カム面32Fが、ロック部材60の上端部を摺動しながら、第1リンク32Rが回転して、ロック部材60が第1リンク32Rのロック凹部32Bの下側に配置される。これにより、図示しないスプリングの付勢力によって、ロック部材60が、図9の(c)の状態から上側へ変位してロック位置に配置される。すなわち、ロック部材60の上端部が、ロック凹部32Bの第2ロック面32B2に当接すると共に、ロック凹部32Bの第1ロック面32B1と係合して、第1リンク32Rの回転方向一方側への回転が規制される。したがって、格納位置におけるリンク機構30の作動が阻止されて、リッド20の閉位置から開位置への回転が規制される。
【0050】
また、このときには、検知スイッチ62のスイッチ部62Aに対するロック部材60の押圧が解除される。これにより、検知スイッチ62から制御部46にオフ信号が出力される。したがって、制御部46は、ロック部材60がロック位置に配置されたことを検知する。換言すると、制御部46は、リンク機構30の作動阻止状態を検知する。
【0051】
(手動操作によるリッド20の開位置から閉位置への移動について)
図8の(d)に示されるように、リッド20の開位置では、上述と同様に、リンク機構30が展開位置に配置されており、回転体50の差動連結軸55が、第1リンク32Rの差動溝32Cの一端部に配置されている。換言すると、差動連結軸55が差動溝32Cの第1被係合面32C1に対して回転方向他方側に隣接配置されている。この状態において、手動でリッド20を閉位置側へ移動させると、リッド20が前側且つ上側へ変位すると共に、リンク機構30が展開位置から作動する。すなわち、第1リンク32L、32Rが、回転方向他方側に回転する。このとき、差動連結軸55が差動溝32Cの第1被係合面32C1に対して回転方向他方側に隣接配置されているため、差動溝32Cの第1被係合面32C1が差動連結軸55を押圧して、回転体50及び駆動軸44が、第1リンク32Rと共に回転方向他方側へ回転する。つまり、アクチュエータ40によってリッド20を開位置から閉位置へ移動させるときには、回転体50が第1リンク32Rに対して回転方向他方側に相対回転した後に、回転体50及び第1リンク32Rが回転方向他方側への回転が開始することに対して、手動操作によってリッド20を開位置から閉位置へ移動させるときには、回転体50が第1リンク32Rに対して回転方向他方側へ相対回転することなく、回転体50及び第1リンク32Rの回転方向他方側への回転が開始する。
【0052】
そして、図10の(a)に示されるように、リッド20を閉位置まで移動させると、リンク機構30が格納位置に配置される。ここで、この状態では、回転体50の差動連結軸55が、第1リンク32Rの差動溝32Cの一端部に配置されているため、回転体50が初期位置よりも回転方向一方側へ回転した位置に配置されている。すなわち、第1リンク32Rは、正規の格納位置に復帰するものの、回転体50が初期位置に復帰しない状態になる。このため、ロック部材60の上端部が、回転体50の第2カム面53Bの一端部に当接しており、ロック部材60のアンロック位置に配置された状態が維持されている。すなわち、リッド20がアンロック状態になっている。また、この状態では、ロック部材60が、第1リンク32Rのロック凹部32Bの下側に配置されている。さらに、この状態では、回転体50が初期位置よりも回転方向一方側へ回転した位置に配置されているため、回転体50のリターンピン56が、リッド20の押圧片24の押圧傾斜部24Aの後側に隣接して配置されている。
【0053】
この状態で、リッド20を後側へ押圧すると、シール部材84が圧縮変形すると共に、リッド20が後側へ変位する。これにより、リッド20の押圧片24の押圧傾斜部24Aがリターンピン56を押圧して、回転体50が、回転方向他方側に回転すると共に、初期位置に配置される(図10の(b)の状態を参照)。具体的には、回転体50の差動連結軸55が、第1リンク32Rの差動溝32Cの一端部から他端部に移動すると共に、回転体50が、第1リンク32Rに対して回転方向他方側に相対回転する。また、このときには、ロック部材60の上端部が回転体50の傾斜カム面53Cを摺動して、上側へ変位すると共に、ロック位置に配置される。その結果、ロック部材60が、第1リンク32Rのロック凹部32B内に配置されると共に、第1ロック面32B1と係合して、第1リンク32Rの回転方向一方側への回転が規制される。
【0054】
そして、リッド20に対する後側への押圧を解除することで、シール部材84が弾性変形して、リッド20が前側に変位すると共に、閉位置に配置される(図10の(c)の状態を参照)。これにより、手動操作によってリッド20を開位置から閉位置へ移動させた場合でも、回転体50を初期位置に復帰させることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態のリッド開閉装置10では、リッド20が、リンク機構30によって受給凹部82と連結されている。また、アクチュエータ40の駆動軸44に、リンク機構30の第1リンク32Rのヒンジ部32Aが回転可能に支持されており、駆動軸44には、回転体50が一体回転可能に設けられている。さらに、リッド20の閉位置では、ロック部材60がリンク機構30の第1リンク32Rに係合して、リンク機構30の格納位置からの作動が阻止されている。このため、ロック部材60によって、閉位置のリッド20をロックして、リッド20の閉位置から開位置への作動を規制することができる。
【0056】
ここで、初期位置の回転体50が回転方向一方側へ回転することで、ロック部材60の第1リンク32Rに対する係合が解除される。また、第1リンク32R(リンク機構30)及び回転体50には、差動連結機構70が設けられている。具体的には、差動連結機構70を構成する差動溝32Cが、第1リンク32Rに設けられており、差動連結機構70を構成する差動連結軸55が、回転体50に設けられている。差動連結機構70は、回転体50の初期位置から回転方向一方側へ回転時において、ロック部材60の第1リンク32Rに対する係合解除後に、回転体50と第1リンク32Rとを連結して、格納位置のリンク機構30を作動させる。すなわち、アクチュエータ40によって回転駆動する回転体50は、ロック部材60に対して第1リンク32Rへの係合を解除する動作と、リンク機構30に対してアクチュエータ40の駆動力を伝達する動作と、の2つの動作を有している。そして、差動連結機構70によって、回転体50の上記2つの動作に時間差が付与される。このため、単一のアクチュエータ40によって回転体50を回転駆動させることで、ロック部材60及びリンク機構30を作動させることができる。換言すると、ロック部材60の第1リンク32Rに対するロック解除を行うための駆動部を別途も設けることなく、リンク機構30を作動させるためのアクチュエータ40を活用して、リッド20のロック状態を解除することができる。したがって、コストアップを抑制しつつ、リッド20を安定してロックすることができる。
【0057】
また、上述のように、差動連結機構70は、リンク機構30の第1リンク32Rに設けられた差動溝32Cと、回転体50に設けられた差動連結軸55と、を含んで構成されている。差動溝32Cは、回転体50の回転方向に延在されており、差動連結軸55が、差動溝32Cの他端部に配置されている。これにより、差動連結軸55が差動溝32C内を移動する間では、回転体50と第1リンク32Rとを非連結状態にして、回転体50を第1リンク32Rに対して相対回転させることができる。これにより、簡易な構成で、ロック部材60の第1リンク32Rへの係合解除後に、回転体50及び第1リンク32Rを連結して格納位置のリンク機構30を作動させることができる。
【0058】
また、アクチュエータ40は、駆動軸44を有しており、リンク機構30の第1リンク32Rのヒンジ部32Aが、駆動軸44に回転可能に支持されている。また、回転体50が、駆動軸44に一体回転可能に設けられている。これにより、ヒンジ部32Aと回転体50とが同軸上に配置されている。したがって、回転体50と第1リンク32Rとの連結部の省スペース化を図ることができる。
【0059】
また、ロック部材60は、回転体50の径方向外側(下側)に配置されており、ロック位置とアンロック位置との間を移動可能に受給凹部82に支持されている。さらに、回転体50の外周部には、ロック部材60の上端部が当接するカム面53が形成されており、カム面53によってロック部材60がロック位置とアンロック位置との間を移動する。したがって、簡易な構成で、回転体50の回転時において、ロック部材60を、ロック位置とアンロック位置との間で移動させることができる。
【0060】
また、第1リンク32Rと回転体50とが駆動軸44の軸方向に並んで配置されており、ロック部材60が第1リンク32R及び回転体50に跨って配置されている。また、第1リンク32Rには、ロック部材60と係合可能に構成されたロック凹部32Bが形成されている。これにより、回転体50、第1リンク32R、及びロック部材60を集約して配置することができる。
【0061】
また、リッド20には、後側へ突出した押圧片24が設けられており、回転体50には、押圧片24に押圧可能に構成されたリターンピン56が設けられている。そして、手動操作によってリッド20が開位置から閉位置に移動したときには、回転体50が初期位置から回転方向一方側に配置されると共に、回転体50のリターンピン56がリッド20の押圧片24の後側に隣接して配置される。そして、閉位置のリッド20が後側へ変位することで、押圧片24がリターンピン56を押圧して、回転体50が初期位置に配置される。このため、手動操作によってリッド20を閉位置に移動させたときに、回転体50が初期位置に復帰しなくても、リッド20を後側へ押圧することで、回転体50を初期位置に復帰させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、差動連結機構70において、差動溝32Cが第1リンク32Rに形成されており、差動連結軸55が、回転体50に形成されている。これに代えて、差動溝を回転体50に形成し、差動連結軸を第1リンク32Rに形成してもよい。この場合には、リンク機構30の格納位置及び回転体50の初期位置において、差動連結軸が、差動溝における回転体50の回転方向の一端部に配置される。
【0063】
また、本実施の形態では、差動溝32Cが、第1リンク32Rのヒンジ部32Aの径方向外側及び回転体50側に開放され、且つ回転体50の回転方向に延在されている。これに代えて、差動溝32Cを回転体50側へ開放し且つ回転体50の回転方向に延在された長孔状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 リッド開閉装置
20 リッド
24 押圧片(リセット部)
30 リンク機構
32R 第1リンク(駆動リンク部材)
32B ロック凹部(係合凹部)
32C 差動溝
40 アクチュエータ(駆動部)
44 駆動軸
50 回転体
53 カム面
55 差動連結軸
56 リターンピン(被押圧部)
60 ロック部材
70 差動連結機構
82 受給凹部
86 受給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10