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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】流量調整弁及びブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 15/36 20060101AFI20241003BHJP
   B61H 13/34 20060101ALI20241003BHJP
   B60T 13/66 20060101ALI20241003BHJP
   B60T 8/17 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B60T15/36 A
B61H13/34
B60T13/66 A
B60T8/17 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020190439
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079317
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】大辻 清志郎
(72)【発明者】
【氏名】早田 英樹
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070175(JP,A)
【文献】特公昭48-001746(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
B61H 1/00-15/00
B60T 13/00-13/74
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体源から流体が導入される導入室と、
ブレーキ装置に通じるとともに前記導入室と通路を介して通じる出力室と、
前記ブレーキ装置において目標となる制動力を発生させるための指令圧が入力される入力室と、
前記指令圧と前記出力室の圧力との差圧に応じて移動して前記通路を開閉し、少なくとも前記出力室の圧力が指令圧以上のときに前記通路を閉鎖する第1弁体と、
前記第1弁体の移動を案内する案内部と、
前記第1弁体及び前記案内部の間に設けられるとともに前記第1弁体及び前記案内部の間の流体の通過を防止する封止部材と、
前記第1弁体及び前記案内部の少なくとも一方に設けられ、前記第1弁体と前記案内部との接触する面に供給される潤滑剤を保持する保持部と、
を備え
前記保持部は、前記封止部材の位置を基準として、前記通路が位置する側とは反対側に位置する、ブレーキ用流量調整弁。
【請求項2】
前記封止部材及び前記保持部は、前記第1弁体及び前記案内部のうち同じ側に設けられている、請求項1に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項3】
前記第1弁体の移動方向における前記封止部材と前記保持部との間の距離は、前記第1弁体の移動可能距離以下である、請求項1又は2に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項4】
前記第1弁体及び前記案内部は、真鍮またはアルミニウムから成る、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項5】
前記導入室には、前記流体として、無給油式の空気圧縮機で生成された高圧空気が導入される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項6】
前記指令圧と前記出力室の圧力との差圧に応じて移動して前記第1弁体を移動させる第2弁体を備え、
前記第2弁体は、前記第1弁体から離間して、前記第1弁体が前記通路を閉じ且つ前記出力室が大気開放される大気開放状態を生じさせ、
前記第2弁体は、前記大気開放状態から前記第1弁体に接触して前記第1弁体を移動させて、前記第1弁体が前記通路を開き且つ前記出力室が大気から遮断される開状態を生じさせる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項7】
前記第2弁体は、前記大気開放状態から前記第1弁体に接触して、前記第1弁体が前記通路を閉じ且つ前記出力室が大気から遮断される閉状態を生じさせる、請求項6に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項8】
前記封止部材は、前記導入室を大気から遮断する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のブレーキ用流量調整弁。
【請求項9】
鉄道車両を制動するためのブレーキ装置と、
圧力流体源から流体が導入される導入室と、前記ブレーキ装置に通じるとともに前記導入室と通路を介して通じる出力室と、前記ブレーキ装置において目標となる制動力を発生させるための指令圧が入力される入力室と、前記指令圧と前記出力室の圧力との差圧に応じて移動して前記通路を開閉し、少なくとも前記出力室の圧力が指令圧以上のときに前記通路を閉鎖する第1弁体と、前記第1弁体の移動を案内する案内部と、前記第1弁体及び前記案内部の間に設けられるとともに前記第1弁体及び前記案内部の間の流体の通過を防止する封止部材と、前記第1弁体及び前記案内部の少なくとも一方に設けられ、前記第1弁体と前記案内部との接触する面に供給される潤滑剤を保持する保持部と、を有し、前記保持部は、前記封止部材の位置を基準として、前記通路が位置する側とは反対側に位置する、流量調整弁と、
前記入力室に指令圧を入力する指令圧供給弁と、
前記入力室から排気する指令圧排気弁と、
を備える鉄道車両用ブレーキシステム。
【請求項10】
前記導入室に導入される前記流体として高圧空気を生成する、無給油式の空気圧縮機を備える、請求項9に記載の鉄道車両用ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整弁及びブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指令圧の入力を受けて、指令圧の大きさに応じた圧力を有し且つ指令圧をもたらす流体の流量よりも大きな流量の高圧流体を出力する流量調整弁が知られている。例えば、特許文献1に記載された弁装置が知られている。特許文献1に記載された弁装置は、電磁弁から供給されるパイロット圧力に応じて給排気弁棒が上下に移動し、給排気弁棒の上下移動によって給気弁が上下に移動して給気室と出力室との間を開閉する。これによって、弁装置は、給気室から出力室へと、大きな流量の高圧空気を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4516721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の給気弁のような給気室と出力室との間を開閉する弁と、弁の上下移動を案内する案内部と、の間には、出力室の流体が弁と案内部との間を通って漏れ出ることを抑制するために、封止部材が設けられる場合がある。この場合に、封止部材の劣化が、乾燥などのために早まるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、封止部材の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるブレーキ用流量調整弁は、
圧力流体源から流体が導入される導入室と、
ブレーキ装置に通じるとともに前記導入室と通路を介して通じる出力室と、
前記ブレーキ装置において目標となる制動力を発生させるための指令圧が入力される入力室と、
前記指令圧と前記出力室の圧力との差圧に応じて移動して前記通路を開閉し、少なくとも前記出力室の圧力が指令圧以上のときに前記通路を閉鎖する第1弁体と、
前記第1弁体の移動を案内する案内部と、
前記第1弁体及び前記案内部の間に設けられるとともに前記第1弁体及び前記案内部の間の流体の通過を防止する封止部材と、
前記第1弁体及び前記案内部の少なくとも一方に設けられ、前記第1弁体と前記案内部との接触する面に供給される潤滑剤を保持する保持部と、
を備える。
【0007】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記封止部材及び前記保持部は、前記第1弁体及び前記案内部のうち同じ側に設けられていてもよい。
【0008】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記第1弁体の移動方向における前記封止部材と前記保持部との間の距離は、前記第1弁体の移動可能距離以下であってもよい。
【0009】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記第1弁体及び前記案内部は、真鍮またはアルミニウムから成ってもよい。
【0010】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記導入室には、前記流体として、無給油式の空気圧縮機で生成された高圧空気が導入されてもよい。
【0011】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記指令圧と前記出力室の圧力との差圧に応じて移動して前記第1弁体を移動させる第2弁体を備え、
前記第2弁体は、前記第1弁体から離間して、前記第1弁体が前記通路を閉じ且つ前記出力室が大気開放される大気開放状態を生じさせ、
前記第2弁体は、前記大気開放状態から前記第1弁体に接触して前記第1弁体を移動させて、前記第1弁体が前記通路を開き且つ前記出力室が大気から遮断される開状態を生じさせてもよい。
【0012】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記第2弁体は、前記大気開放状態から前記第1弁体に接触して、前記第1弁体が前記通路を閉じ且つ前記出力室が大気から遮断される閉状態を生じさせてもよい。
【0013】
本発明によるブレーキ用流量調整弁において、
前記封止部材は、前記導入室を大気から遮断してもよい。
【0014】
本発明による鉄道車両用ブレーキシステムは、
鉄道車両を制動するためのブレーキ装置と、
圧力流体源から流体が導入される導入室と、前記ブレーキ装置に通じるとともに前記導入室と通路を介して通じる出力室と、前記ブレーキ装置において目標となる制動力を発生させるための指令圧が入力される入力室と、前記指令圧と前記出力室の圧力との差圧に応じて移動して前記通路を開閉し、少なくとも前記出力室の圧力が指令圧以上のときに前記通路を閉鎖する第1弁体と、前記第1弁体の移動を案内する案内部と、前記第1弁体及び前記案内部の間に設けられるとともに前記第1弁体及び前記案内部の間の流体の通過を防止する封止部材と、前記第1弁体及び前記案内部の少なくとも一方に設けられ、前記第1弁体と前記案内部との接触する面に供給される潤滑剤を保持する保持部と、を有する、流量調整弁と、
前記入力室に指令圧を入力する指令圧供給弁と、
前記入力室から排気する指令圧排気弁と、
を備える。
【0015】
本発明による鉄道車両用ブレーキシステムは、
前記導入室に導入される前記流体として高圧空気を生成する、無給油式の空気圧縮機を備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、封止部材の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における、流量調整弁を備えるブレーキシステムの構成図である。
図2】本実施形態における、流量調整弁を示す概略断面図である。
図3】本実施形態における、図2において符号IIIが付された二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す概略断面図である。
図4】本実施形態における、閉状態の流量調整弁を示す概略断面図である。
図5】本実施形態における、開状態の構成例を示す概略断面図である。
図6】本実施形態における、封止部材15及び保持部16を拡大して示す概略断面図である。
図7】変形例1における、流量調整弁を示す概略断面図である。
図8】変形例2における、流量調整弁を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、流量調整弁10を備えるブレーキシステム1の構成図である。図2は、図1の流量調整弁10を、ブレーキシステム1のうち流量調整弁10以外の構成要素とともに示す概略断面図である。
【0019】
本実施の形態においては、流量調整弁10が、ブレーキシステム1に備えられているブレーキ用流量調整弁10である場合について説明する。また、本実施の形態におけるブレーキシステム1は、鉄道車両用ブレーキシステムである。鉄道車両用ブレーキシステムにおいて、流量調整弁10は、鉄道車両の1台車毎にそれぞれ設けられていてもよく、車輪の一輪毎にそれぞれ設けられていてもよい。また、ブレーキシステム1は、流量調整弁10とともに、鉄道車両を制動するためのブレーキ装置と、指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5と、指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5を制御するブレーキ制御部(制御回路)6と、を備える。本実施の形態に係るブレーキ装置はブレーキシリンダ2を有し、ブレーキシリンダ2に高圧の流体が出力されることで駆動されて鉄道車両を制動する。また、本実施の形態において、指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5は、電磁弁である。指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5を構成する部品の材料は、例えば純鉄又はステンレスである。なお、図1においては、指令圧排気弁5の図示は省略している。また、本実施の形態に係るブレーキシステム1は、高圧空気を生成する空気圧縮機3を備える。この場合、ブレーキシリンダ2に高圧空気が出力されることで、ブレーキ装置が駆動される。
【0020】
本実施の形態に係るブレーキシステム1は、図2に示すようにハウジング8を備えており、ハウジング8に、流量調整弁10、指令圧供給弁4、指令圧排気弁5及びブレーキ制御部6が内蔵されている。ハウジング8は、空気圧縮機3で圧縮された高圧空気が供給される給気ポートP1と、ブレーキシリンダ2に接続される出力ポートP2とを備えている。給気ポートP1は、例えばタンク9を介して空気圧縮機3に接続されており、これによって空気圧縮機3で圧縮された高圧空気が給気ポートP1に供給されるようになっている。また、給気ポートP1は、給気通路S1を介して指令圧供給弁4に接続されている。これによって、空気圧縮機3で圧縮された高圧空気が指令圧供給弁4に供給される。
【0021】
流量調整弁10は、例えば鉄道車両の運転席に設けられたブレーキ制御器7からのブレーキ指令信号を受けて、導入された高圧空気をブレーキシリンダ2に出力する。図2に示す例において、流量調整弁10は、入力室10Aと、導入室10Bと、出力室10Cと、第1弁体12と、第2弁体13と、案内部14と、封止部材15と、保持部16と、を備える。
【0022】
図2に示す例において、流量調整弁10は本体部11を有し、本体部11の内部に、入力室10Aと、導入室10Bと、出力室10Cとが形成されている。また本体部11の内部には、大気開放された大気開放室10Dが形成されている。また、本体部11の内部には、出力室10Cに連通したフィードバック室10Eが形成されている。図2に示す例において、入力室10Aとフィードバック室10Eとは、膜板18によって区画されている。
【0023】
入力室10Aには、ブレーキ装置において目標となる制動力を発生させるための指令圧が入力される。本実施の形態においては、指令圧供給弁4が、入力室10Aに指令圧を入力する。また、指令圧排気弁5は、入力室10Aから排気する。指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5は、ブレーキ制御部6に制御されて開閉し、入力室10A内の圧力を調整する。
【0024】
導入室10Bには、圧力流体源から流体が導入される。本実施の形態に係るブレーキシステム1は、高圧空気を生成する空気圧縮機3を備える。この場合、導入室10Bには、流体として、空気圧縮機3で生成された高圧空気が導入される。
【0025】
本実施の形態においては、導入室10Bに流体を導入する圧力流体源が、入力室10Aに指令圧を入力するために、入力室10Aにも流体を導入する。本実施の形態においては、給気ポートP1が、給気通路S1を介して、上述の通り指令圧供給弁4に接続されているとともに、導入室10Bにも接続されている。これによって、空気圧縮機3で生成された高圧空気が導入室10Bに導入される。このため、本実施の形態において、入力室10Aに指令圧を入力するために入力室10Aに導入される流体と、導入室10Bに導入される流体とは、ともに空気圧縮機3で生成された高圧空気となる。なお、入力室10Aに指令圧を入力するために入力室10Aに導入される流体、及び導入室10Bに導入される流体は、空気に限られない。流体の別の一例としては、液体が挙げられる。また、入力室10Aに入力される指令圧、及び導入室10Bと出力室10Cとを介してブレーキシリンダ2に出力される圧力は、油圧であってもよい。なお、本実施の形態においては、特に断らない限り、入力室10Aに導入される流体と、導入室10Bに導入される流体とを、ともに空気とする場合を例に説明している。
【0026】
出力室10Cは、ブレーキ装置に通じるとともに、導入室10Bと通路を介して通じる。本実施の形態において、出力室10Cは、ブレーキ装置のうちブレーキシリンダ2に通じている。本実施の形態においては、出力ポートP2が出力通路S2を介して出力室10Cに接続されている。これによって、出力室10Cは、出力ポートP2及び出力通路S2を介してブレーキシリンダ2に通じる。
【0027】
第1弁体12は、導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路を開閉する部材である。図2に示す例において、第1弁体12は、略筒状の側面部121と、側面部121の一端に設けられた底面部122と、を有している。底面部122の中央には、開口122aが形成されている。
【0028】
図2に示す例において、流量調整弁10は、弁座20とばね19aとを備える。弁座20は、本体部11に接続されて本体部11とともに導入室10Bと出力室10Cとを区画する部材である。一例として、弁座20は本体部11と一体である。第1弁体12は、弁座20から離間することで導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路を開き、弁座20に接触することで該通路を閉じる。図2に示す例においては、弁座20と第1弁体12の底面部122とが対向しており、底面部122が弁座20に接触することで該通路が閉じられる。また、第1弁体12は、ばね19aによって、弁座20が位置する側(図2の下側)に向かって付勢されている。図2では、第1弁体12がばね19aのために弁座20に接触して、導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路が閉鎖されている。一例として、第1弁体12の材料には、真鍮またはアルミニウムが含まれる。第1弁体12は、例えば真鍮またはアルミニウムから成る。
【0029】
第2弁体13は、指令圧と出力室10Cの圧力との差圧(圧力差)に応じて移動する部材である。図2に示す例において、第2弁体13は、第1弁体12が位置する側、及び第1弁体12が位置する側とは反対側の両端において開口した、第1弁体12の側面部121が延伸する方向に延伸する略筒状の形状を有する。図2に示す例において、第2弁体13は、一端において第1弁体12の底面部122と対向している。第2弁体13の内部には中空部10Fが形成されている。中空部10Fは、大気開放された大気開放室10Dに接続されることで、大気開放されている。
【0030】
また、図2に示す例において、第2弁体13は、膜板18に接続されている。このため、第2弁体13は、膜板18の移動に応じて、図2の上下方向に移動する。また、流量調整弁10は、第2弁体13に接続した膜板18を第1弁体12が位置する側とは反対側(図2の下側)に向かって付勢するばね19bを備える。図2では、膜板18がばね19bによって第1弁体12から遠ざけられているために、第2弁体13が第1弁体12から離間している。
【0031】
入力室10Aに対して指令圧供給弁4から流体が導入されて指令圧が入力されると、入力室10Aと、フィードバック室10Eとの圧力差によって、膜板18が、入力室10Aを広げるように、第1弁体12が位置する側(図2の上側)に移動する。第2弁体13も、膜板18の移動に応じて、第1弁体12が位置する側に移動する。フィードバック室10Eは出力室10Cに連通しているため、第2弁体13は、指令圧、すなわち指令圧供給弁4などによって調整された入力室10Aの圧力と、フィードバック室10Eに連通している出力室10Cの圧力との、差圧(圧力差)に応じて移動するとも言える。
【0032】
第1弁体12は、指令圧と出力室10Cの圧力との差圧(圧力差)に応じて移動して、導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路を開閉する。本実施の形態においては、第2弁体13が指令圧と出力室10Cの圧力との差圧に応じて移動し、第1弁体12に接触して第1弁体12を移動させることで、第1弁体12が該通路を開閉する。
【0033】
第2弁体13は、移動することによって、大気開放状態と開状態とを生じさせる。また、本実施の形態に係る第2弁体13は、移動することによって閉状態も生じさせる。図2に示す流量調整弁10は、大気開放状態にある。図3は、図2において符号IIIが付された二点鎖線で囲まれた部分を示す図である。図3に示すように、大気開放状態において、第2弁体13は第1弁体12から離間している。第2弁体13が第1弁体12から離間していることによって、第1弁体12が導入室10Bと出力室10Cとの間の通路を閉じ且つ出力室10Cが大気開放される。これによって、ブレーキシリンダ2から高圧空気が排出される。図2及び図3に示す例においては、第2弁体13が第1弁体12から離間していることによって、出力室10Cが、第1弁体12と第2弁体13との間を介して中空部10Fと連通する。これによって、出力室10Cが中空部10Fを介して大気開放された大気開放室10Dと連通し、出力室10Cに接続されたブレーキシリンダ2から高圧空気が排出される。
【0034】
図4は、閉状態の流量調整弁10を示す図である。第2弁体13は、大気開放状態から第1弁体12に接触して、第1弁体12が導入室10Bと出力室10Cとの間の通路を閉じ且つ出力室10Cが大気から、すなわち流量調整弁10の外部の空間から遮断される閉状態を生じさせる。なお、閉状態及び後述する開状態において、第2弁体13は、第1弁体12のうち底面部122に接触する。本実施の形態においては、入力室10Aに指令圧が供給されることで、第2弁体13が、膜板18の移動に応じて移動して第1弁体12に接触する。これによって、出力室10Cが、大気開放室10Dに連通する中空部10Fから遮断される。閉状態においては、出力室10Cに高圧空気が供給されることも、出力室10Cからの排気が行われることもないため、出力室10C及びブレーキシリンダ2の圧力は、一定に維持される。
【0035】
図5は、開状態の流量調整弁10を示す図である。第2弁体13は、大気開放状態から第1弁体12に接触して第1弁体12を移動させることで、第1弁体12が導入室10Bと出力室10Cとの間の通路を開き且つ出力室10Cが大気から遮断される開状態を生じさせる。これによって、ブレーキシリンダ2に高圧空気が出力される。本実施の形態においては、図3に示す大気開放状態の流量調整弁10の入力室10Aに、十分に大きな圧力の指令圧が供給されることで、第2弁体13が膜板18の移動に応じて移動して第1弁体12に接触し、さらに第1弁体12をばね19aの付勢力に抗して押す。これによって、第1弁体12と弁座20とが離間し、第1弁体12と弁座20との間の通路を介して導入室10Bと出力室10Cとが連通する。また、第2弁体13が第1弁体12に接触するために、出力室10Cが、大気開放室10Dに連通する中空部10Fから遮断される。第1弁体12が第2弁体13に押されて移動する方向を、第1弁体12の移動方向d1とも称する。
【0036】
第1弁体12は、少なくとも出力室10Cの圧力が指令圧以上のときに、導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路を閉鎖する。本実施の形態において、図5に示すように開状態にある流量調整弁10の第2弁体13は、少なくとも出力室10Cの圧力が指令圧以上であるならば、ばね19a及びばね19bの付勢力によって第1弁体12から遠ざかる側(図5の下方)に移動する。また、第1弁体12は、第2弁体13からの支持がなくなるために、ばね19aの付勢力によって第2弁体13が位置する側(図5の下方)に移動する。第1弁体12及び第2弁体13の移動は、少なくとも、第1弁体12が弁座20に接触して導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路が閉鎖されて出力室10Cへの流体の導入が途切れるまで、継続する。このために、本実施の形態に係る第1弁体12は、少なくとも出力室10Cの圧力が指令圧以上のときに、導入室10Bと出力室10Cとを通じさせる通路を閉鎖するものとなっていると言える。
【0037】
本実施の形態に係る第1弁体12と第2弁体13とを備える流量調整弁10は、大気開放状態、閉状態及び開状態の3つの状態に切り替わることによって、鉄道車両にブレーキをかけ、またブレーキを解除することができる。
【0038】
ブレーキをかける際には、指令圧供給弁4を用いて入力室10Aに指令圧を入力し、第2弁体13を移動させて、大気開放状態を開状態に切り替える。開状態においてブレーキシリンダ2に高圧空気が出力されることで、鉄道車両にブレーキがかかる。ブレーキをかける際には、指令圧供給弁4を用いた入力室10Aへの流体の導入と、指令圧排気弁5を用いた入力室10Aからの排気とを繰り返して、入力室10Aの圧力又は出力室10Cの圧力が、かけようとするブレーキの強さに応じた所望の値となるまで調整してもよい。本実施の形態に係るブレーキシステム1は、図1及び図2に示すように、入力室10Aの圧力を検出するセンサ21と、出力室10Cの圧力を検出するセンサ22とを備える。この場合、ブレーキ制御部6が、センサ21,22の検出結果を用いて、入力室10Aの圧力又は出力室10Cの圧力が所望の値となるように、指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5を制御することができる。
【0039】
出力室10C及びブレーキシリンダ2の圧力が十分に大きくなると、出力室10C及び出力室10Cに連通したフィードバック室10Eの圧力の上昇のために、膜板18が、出力室10Cを広げるように、第1弁体12が位置する側とは反対側に移動する。第2弁体13が膜板18の移動に応じて移動することで、第1弁体12がばね19aの付勢力によって押されて再び弁座20と接触し、流量調整弁10の状態が開状態から閉状態へと切り替わる。これによって、閉状態において、出力室10C及びブレーキシリンダ2の圧力が一定に維持され、鉄道車両にブレーキがかかった状態が維持される。
【0040】
ブレーキを解除する際には、指令圧排気弁5を用いて入力室10Aからの排気を行い、第2弁体13を移動させて、流量調整弁10の状態を大気開放状態に切り替える。これによって、ブレーキシリンダ2と接続された出力室10Cからの排気が行われて、鉄道車両にかかるブレーキが解除される。
【0041】
以上の通り、指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5によって入力室10Aの圧力を調整することによって、入力室10Aの圧力に応じて流量調整弁10の状態を切り替えて、ブレーキをかけたり解除したりすることができる。特に、流量の小さな指令圧を入力室10Aに供給することで、流量の大きな高圧流体を導入室10Bから出力室10Cに流すことができる。
【0042】
また、流量調整弁10は、第1弁体12の移動を案内する案内部14を備える。図2に示す例において、案内部14は、略円筒状の形状を有する案内側面部14と、案内側面部14のうち第1弁体12の底面部122と対向する側とは反対側の一端に設けられた案内底面部14と、を備えている。
【0043】
案内部14は、上述の通りに第1弁体12が第2弁体13に押されて、又は、ばね19aの付勢力に押されて移動する際に、第1弁体12の移動を案内する部材である。図2に示す例においては、第1弁体12の側面部121の少なくとも一部が、案内側面部14の内部に挿入されている。そして、案内部14は、案内側面部14の内面に沿って、第1弁体12の移動を案内する。また、第1弁体12と案内部14とは、一部において接触している。ここで、第1弁体12と案内部14とは、後述する潤滑剤を介して接触していてもよい。図2に示す例においては、第1弁体12のうち側面部121の外面と、案内部14のうち案内側面部14の内面とが、一部において接触している。一例として、案内部14の材料には、真鍮またはアルミニウムが含まれる。案内部14は、例えば真鍮またはアルミニウムから成る。
【0044】
また、第1弁体12と案内部14とによって、案内室10Gが区画される。図2に示す例において、案内室10Gは、側面部121、底面部122、案内側面部14及び案内底面部14に囲まれた空間である。図2~5に示すように、案内室10Gは、流量調整弁10が大気開放状態、閉状態及び開状態のどの状態にあるかに関わらず、常に底面部122の開口122a及び中空部10Fを介して大気開放室10Dに連通する。このために、案内室10G内の圧力が抵抗になることなく、案内部14に対して第1弁体12を相対移動させることができる。
【0045】
封止部材15は、第1弁体12及び案内部14の間の流体の通過を防止する部材である。図2に示すように、封止部材15は、第1弁体12及び案内部14の間に設けられる。図2に示す例において、封止部材15は、第1弁体12の側面部121と案内部14の案内側面部14との間に設けられたOリングである。図示はしないが、封止部材15は、第1弁体12及び案内部14の間に設けられたパッキンであってもよい。この場合、パッキンは、例えば環状の形状を有し、第1弁体12の側面部121と案内部14の案内側面部14との間に設けられる。封止部材15の材料は、一般にOリング等に用いられる材料であれば特に限られない。封止部材15の材料は、例えばゴムである。
【0046】
本実施の形態において、封止部材15は、第1弁体12に設けられている。図2に示す例において、第1弁体12の側面部121には、溝部15aが形成されている。溝部15aは、第1弁体12の移動方向d1に平行な第1弁体12の軸線L1を周回する環状の形状を有する。そして、封止部材15は、少なくとも一部が溝部15a内に配置されることによって、第1弁体12に設けられている。
【0047】
封止部材15は、導入室10Bを大気から遮断する。図2に示す封止部材15は、第1弁体12及び案内部14の間に位置して、導入室10Bが第1弁体12と案内部14との間を介して案内室10Gに連通することを防いでいる。これによって、封止部材15は、導入室10Bが案内室10Gを介して大気開放室10Dに連通することを防ぎ、導入室10Bを大気から遮断している。封止部材15が導入室10Bを大気から遮断していることによって、導入室10B内の高圧流体の、流量調整弁10の外部への流出が抑制される。このため、開状態において導入室10Bから出力室10Cを介してブレーキシリンダ2に高圧流体を出力する際に、流量調整弁10の外部に高圧流体が流出してブレーキシリンダ2の圧力を上昇させる効率が低下するのを防ぐことができる。
【0048】
保持部16は、第1弁体12と案内部14との接触する面に供給される潤滑剤30を保持する。保持部16は、第1弁体12及び案内部14の少なくとも一方に設けられる。図2に示す例において、保持部16は、第1弁体12に設けられている。図2に示す例において、保持部16は、第1弁体12の側面部121に形成された溝部16aである。この場合、図2に示すように、保持部16である溝部16aの内部に潤滑剤30を供給することによって、保持部16に潤滑剤30を保持させることができる。
【0049】
図2に示す例において、封止部材15及び保持部16は、第1弁体12及び案内部14のうち同じ側に設けられている。図2に示す例において、封止部材15及び保持部16は、ともに第1弁体12に設けられている。図示はしないが、封止部材15が第1弁体12に設けられ且つ保持部16が案内部14に設けられてもよく、また封止部材15が案内部14に設けられ且つ保持部16が第1弁体12に設けられてもよい。また、図2に示す例において、保持部16は、封止部材15の位置を基準として、第2弁体13が位置する側とは反対側(図2の上側)に位置している。
【0050】
保持部16によって、第1弁体12が案内部14に案内されて案内部14に対して相対移動する際に、保持部16に保持された潤滑剤30が第1弁体12と案内部14との間に広がって、封止部材15に供給される。封止部材15に潤滑剤30が供給されることによって、第1弁体12の案内部14に対する相対移動による摩擦などのために封止部材15が乾燥して劣化することを抑制することができる。特に、封止部材15のオゾン劣化を防ぐことができる。
【0051】
保持部16に保持される潤滑剤30は、封止部材15に供給されることで封止部材15の劣化を抑制できるものであれば、特に限られない。潤滑剤30は、例えばグリスである。ここで、グリス(grease)は、JIS K 2220:2013の記載によって定義される。すなわち、グリスとは、原料基油中に増ちょう剤を分散して半固体又は固体状にしたものである。
【0052】
保持部16の形態は、保持部16に保持される潤滑剤30が、第1弁体12と案内部14との接触する面に供給される限り、特に限られない。保持部16が、図2に示すような溝部16aである場合、溝部16aは、第1弁体12の移動方向d1に平行な第1弁体12の軸線L1を、周回していることが好ましい。保持部16である溝部16aが軸線L1を周回していることによって、軸線L1を周回する方向の全周にわたって潤滑剤30を保持して、軸線L1を周回する方向の全周において封止部材15に潤滑剤30を供給することができる。図2に示す例において、保持部16は、軸線L1を周回する環状の形状を有する。
【0053】
図6は、図2に示す流量調整弁10について封止部材15及び保持部16が設けられた部分を拡大して示す断面図である。図6に示す例において、保持部16である溝部16aの断面は矩形である。移動方向d1における溝部16aの寸法w1は、移動方向d1に垂直な方向における溝部16aの寸法w2よりも大きいことが好ましい。これによって、第1弁体12及び案内部14のうち溝部16aと対向する部材と溝部16a内の潤滑剤30とが接触する面積が増加し、より効率よく第1弁体12と案内部14との接触する面に潤滑剤30を供給することができる。
【0054】
また、保持部16である溝部16aの移動方向d1における寸法w1は、流量調整弁10が大気開放状態にあるときにおける第1弁体12と案内部14とが接触する面の移動方向d1における寸法w3の、0.1倍以上0.4倍以下である。寸法w1が寸法w3の0.1倍以上であることで、第1弁体12及び案内部14のうち溝部16aと対向する部材と溝部16a内の潤滑剤30とが接触する面積が増加し、より効率よく第1弁体12と案内部14との接触する面に潤滑剤30を供給することができる。寸法w1が寸法w3の0.4倍以下であることで、第1弁体12と案内部14との接触する面に供給される潤滑剤30の量が多くなり過ぎて、第1弁体12が移動する際の抵抗が潤滑剤30の粘性によって増大することが、抑制される。また、寸法w1が大きくなり過ぎて第1弁体12と案内部14との接触する面の面積が小さくなり、第1弁体12が案内部14に接触しつつ移動する際に生じる負荷が小さい面積に集中してしまうことが防止される。また、保持部16である溝部16aの容積は、封止部材15を保持する溝部15aの容積から封止部材15の体積を除いた量の、50%以上200%以下であることが好ましい。
【0055】
本実施形態の流量調整弁10の作用効果について説明する。流量調整弁10には、第1弁体12及び案内部14の間の流体の通過を防止するため、特に導入室10Bを大気開放室10Dに対して封止するために、封止部材15が設けられる。しかしながら、第1弁体12の案内部14に対する相対移動による摩擦などのために封止部材15が乾燥して劣化する懸念がある。特に、封止部材15がオゾン劣化する懸念がある。このような封止部材15の劣化を防ぐために、予め封止部材15に潤滑剤を塗布しておくことも考えられる。しかしながら、この場合にも、第1弁体12の案内部14に対する相対移動による摩擦などのために塗布した潤滑剤が蒸発して、封止部材15が劣化してしまう懸念がある。
【0056】
また、ブレーキ用の流量調整弁10においては、以下の理由から、特に封止部材15の劣化が生じやすい懸念がある。入力室10Aの圧力を制御して、入力室10Aと出力室10Cとの圧力差によって第1弁体12を移動させて流量調整弁10の状態を切り替えることで、ブレーキシリンダ2に出力される高圧空気の圧力を調整し、ブレーキを作動させる。ここで、ブレーキを一度作動させるために、第1弁体12を複数回往復移動させることもあり得る。例えば、所望の力でブレーキを作動させるために、センサ21,22を用いて入力室10A又は出力室10Cの圧力を検出し、入力室10A又は出力室10Cの圧力が所望の力に応じた所定値となるように調整することが考えられる。この場合に、第1弁体12は、入力室10A又は出力室10Cの圧力の調整に伴って複数回往復移動し得る。このように、ブレーキ用の流量調整弁10において、第1弁体12は比較的往復移動の回数が多くなりやすい構成要素である。この場合、第1弁体12の往復移動によって、封止部材15の乾燥などによる劣化が、より生じやすくなると考えられる。
【0057】
これに対して、本実施形態の流量調整弁10は、保持部16から封止部材15に潤滑剤30が供給される。保持部16の潤滑剤30は、第1弁体12の往復移動に伴って少量ずつ、長時間にわたって封止部材15に供給される。これによって、潤滑剤30の蒸発のために封止部材15が乾燥して劣化することを抑制することができる。特に、ブレーキ用の流量調整弁10において、第1弁体12の往復移動の回数が多くなることが想定される場合であっても、封止部材15が乾燥して劣化することを抑制することができる。
【0058】
また、空気圧縮機に給油する手間の削減や環境負荷の低減などのために、導入室10Bに導入する高圧空気を生成する空気圧縮機3を無給油式とする場合がある。この場合、導入室10Bには、流体として、無給油式の空気圧縮機で生成された高圧空気が導入される。無給油式の空気圧縮機は、給油式の圧縮機に比べて、油分濃度が低く乾燥した高圧空気を生成する。本実施の形態に係る流量調整弁10によれば、無給油式の空気圧縮機の使用のために、導入室10Bに特に乾燥した高圧空気が導入される場合においても、封止部材15の乾燥による劣化を抑制することができる。なお、無給油式の空気圧縮機とは、例えば空気圧縮機内に含まれる摺動部や回転部などに潤滑油などの給油を行わない空気圧縮機を指す。
【0059】
また、保持部16によって、第1弁体12と案内部14との接触する面に潤滑剤30が供給されることで、第1弁体12及び案内部14に対する負荷を低減し、第1弁体12及び案内部14の摩耗を抑制することもできる。本実施の形態の指令圧供給弁4及び指令圧排気弁5などの電磁弁を構成する部品の材料としては純鉄やステンレスなどの摩擦に強い材料が想定される一方で、流量調整弁10の第1弁体12及び案内部14の材料としては摩擦に比較的弱い真鍮またはアルミニウムが想定される。保持部16によって、第1弁体12及び案内部14が真鍮またはアルミニウムから成る場合にも、第1弁体12及び案内部14の摩耗を抑制することができる。このため、保持部16を備えるという流量調整弁10の特徴は、第1弁体12及び案内部14が真鍮またはアルミニウムから成る場合に、特に効果的であると言える。
【0060】
また、図2に示す例において、封止部材15及び保持部16は、第1弁体12及び案内部14のうち同じ側に設けられている。図2に示す例においては、特に、封止部材15及び保持部16は、ともに第1弁体12に設けられている。この作用効果について説明する。仮に、封止部材15及び保持部16の一方が第1弁体12に設けられ、他方が案内部14に設けられている場合、保持部16の形状によっては、封止部材15と保持部16とが対向した場合に、封止部材15による封止が解除されることがあり得る。これに対して、封止部材15と保持部16とが同じ側に設けられていれば、第1弁体12の移動によっては封止部材15と保持部16とが対向しなくなる。この場合、保持部16の形状に関わらず、封止部材15と保持部16とが対向して封止部材15による封止が解除されてしまうことがなくなる。このため、保持部16の形状を自由に設計できる。例えば、より多量の潤滑剤30が保持されるように、保持部16である溝部16aの容積や寸法w1を大きくすることもできる。
【0061】
また、図6に示す第1弁体12の移動方向d1における封止部材15と保持部16との間の距離w4は、第1弁体12の移動可能距離以下であることが好ましい。図6において流量調整弁10は大気開放状態であり、第1弁体12は第2弁体13によって押されてはいない。また、図6に示す二点鎖線L2は、第1弁体12が第2弁体13に押されて大気開放状態における位置から最も長く移動したときの、第1弁体12の位置を示す仮想の線である。この場合、図6に示す距離w5が、第1弁体12の移動可能距離である。
【0062】
距離w4が移動可能距離w5以下であることによって、第1弁体12及び案内部14のうち保持部16に接触した部分に、直接封止部材15が接触するようになる。このため、封止部材15に効率的に潤滑剤30を供給することができる。
【0063】
以上の通り、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0064】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0065】
(変形例1)
上述の実施形態では、封止部材15及び保持部16が第1弁体12及び案内部14のうち同じ側に設けられている例として、封止部材15及び保持部16が、ともに第1弁体12に設けられている例を示した。しかしながら、封止部材15及び保持部16の形態は、これに限られない。図7は、変形例1における流量調整弁10の一例を示す断面図である。図7に示す例において、封止部材15及び保持部16は、ともに案内部14に設けられている。特に、図7に示す例において、封止部材15は案内部14に形成された溝部15a内に配置されている。また、保持部16は、案内部14に形成された溝部16aである。なお、溝部15a内への封止部材15の配置、及び保持部16への潤滑剤30の供給を容易にする観点からは、封止部材15及び保持部16は、ともに案内部14に設けられているよりも、ともに第1弁体12に設けられているほうが好ましい。
【0066】
(変形例2)
上述の実施形態及び変形例では、保持部16が、封止部材15の位置を基準として、第2弁体13が位置する側とは反対側に位置している例を示した。しかしながら、保持部16の位置は、これに限られない。図8は、変形例2における流量調整弁10の一例を示す断面図である。図8に示す例において、保持部16は、封止部材15の位置を基準として、第2弁体13が位置する側(図8の下側)に位置している。この場合においても、保持部16の潤滑剤30を第1弁体12と案内部14との間に広げて、封止部材15に潤滑剤30を供給することができる。図示はしないが、保持部16は、封止部材15の位置を基準として、第2弁体13が位置する側と、第2弁体13が位置する側とは反対側との両方に位置していてもよい。
【0067】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0068】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ブレーキシステム
2 ブレーキシリンダ
3 空気圧縮機
4 指令圧供給弁
5 指令圧排気弁
6 ブレーキ制御部(制御回路)
10 流量調整弁
10A 入力室
10B 導入室
10C 出力室
10D 大気開放室
11 本体部
12 第1弁体
13 第2弁体
14 案内部
15 封止部材
16 保持部
18 膜板
20 弁座
21、22 センサ
30 潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8