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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02K33/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020194855
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083510
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209315(JP,A)
【文献】特開2012-213710(JP,A)
【文献】特開2003-220363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K33/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および可動体と、
前記支持体および前記可動体に接続される接続体と、
磁石およびコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記可動体は、外周面に前記磁石が固定される支軸と、前記磁石の軸線方向の端面に固定されるヨークと、を備え、
前記ヨークは、
前記端面に固定される端板部、前記端板部の外縁に設けられた曲げ部、および、前記曲げ部から前記磁石の側へ延びる円筒部を備える第1磁性部材と、
前記端板部に対して前記磁石とは反対側から固定される第2磁性部材と、を備え、
前記第2磁性部材は、厚さ方向の一部または全部が欠損した重量調整部を備え、
前記重量調整部は、前記軸線方向から見て前記磁石の外周面よりも内周側に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記重量調整部は、貫通孔または半抜き部であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記重量調整部は、前記可動体の重心を中心として周方向に均等配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2磁性部材の外周端部は、前記軸線方向から見て前記曲げ部と重なる位置まで延びていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第2磁性部材の外周端面は、前記軸線方向から見て前記円筒部の外周面と同一位置もしくは前記円筒部の外周面よりも外周側に位置することを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を支持体に対して相対移動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、可動体および支持体に接続された接続体と、支持体に対して可動体を移動させる磁気駆動機構とを備えた構成が提案されている。特許文献1には、接続体としてゲル状部材を用いたアクチュエータが開示される。特許文献1のアクチュエータでは、可動体は、磁石と、磁石が固定されるヨークを備える。支持体は、磁石と対向するコイルを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-13086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気駆動機構を備えたアクチュエータでは、可動体の振動特性はコイルと磁石、ヨークで構成される磁気回路から生じる推力(磁気駆動力)と、可動体の重量と、接続体であるゲル状部材のばね定数によって規定される。
【0005】
本発明者らは、筒状のケースの内側に可動体を収容し、可動体を軸線方向に振動させるアクチュエータを提案している。可動体は、軸線方向に延びる支軸と、支軸に固定される磁石およびヨークを備える。可動体の軸線方向の両端は、支軸の外周側を囲む筒状のゲル状部材を介してケースに接続される。ヨークは、磁石の端面に固定される円形の端板部および磁石の外周側を囲む円筒部を備えるカップ状の第1磁性部材を備える。また、ヨークに可動体の重量調整機能を持たせるために、第1磁性部材に対して磁石とは反対側から円板状の第2磁性部材を固定する。
【0006】
このような構成において、重量調整のために第2磁性部材の形状を変更した場合に、磁束密度が高い位置に第2磁性部材が配置されなくなり、磁気効率が低下するという問題がある。例えば、カップ状の第1磁性部材は、磁石に当接する端板部の外周端部が曲げ加工されており、磁束密度が高い。可動体を軽量化するために第2磁性部材の外形を小さくすると、磁束密度が高い箇所(曲げ部)に第2磁性部材の外周端部が届かないため、磁路が狭くなり磁気抵抗が増大する。その結果、可動体に加わる推力(磁気駆動力)が小さくなり、強い振動を出力できないという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、支持体に対して可動体が振動するアクチュエータにおいて、可動体の重量調整による磁気効率の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体および可動体と、前記支持体および前記可動体に接続される接続体と、磁石およびコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記可動体は、外周面に前記磁石が固定される支軸と、前記磁石の軸線方向の端面に固定されるヨークと、を備え、前記ヨークは、前記端面に固定される端板部、前記端板部の外縁に設けられた曲げ部、および、前記曲げ部から前記磁石の側へ延びる円筒部を備える第1磁性部材と、前記端板部に対して前記磁石とは反対側から固定される第2磁性部材と、を備え、前記第2磁性
部材は、厚さ方向の一部または全部が欠損した重量調整部を備え、前記重量調整部は、前記軸線方向から見て前記磁石の外周面よりも内周側に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、可動体が第1磁性部材と第2磁性部材を備えており、第2磁性部材は、厚さ方向の一部または全部が欠損した重量調整部を備えている。従って、第2磁性部材の外形を変更せずに第2磁性部材の重量を変更できるので、第1磁性部材の曲げ部の位置に形成される磁路が狭くなりにくい。また、第1磁性部材は、軸線方向から見て磁石の外周面と重なる部分の磁束密度が高く、重量調整部は、磁束密度が高い部分よりも内周側の磁性部材を欠損させて重量を調整するため、磁路が狭くなりにくい。従って、重量調整部を形成したことによる磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。
【0010】
本発明において、前記重量調整部は、貫通孔または半抜き部であることが好ましい。このようにすると、板状の第2磁性部材に対して重量調整部を容易に形成できる。また、重量調整部の数やサイズを容易に変更できるため、第2磁性部材の重量を容易に変更できる。
【0011】
本発明において、前記重量調整部は、前記可動体の重心を中心として周方向に均等配置されることが好ましい。このようにすると、重量調整部を設けたことによる可動体の重心ずれを防止できる。
【0012】
本発明において、前記第2磁性部材の外周端部は、前記軸線方向から見て前記曲げ部と重なる位置まで延びていることが好ましい。曲げ部は磁束密度が高いので、第2磁性部材の外周端部が曲げ部に届いていれば磁路が狭くなりにくい。従って、磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記第2磁性部材の外周端面は、前記軸線方向から見て前記円筒部の外周面と同一位置もしくは前記円筒部の外周面よりも外周側に位置することが好ましい。このようにすると、曲げ部の全範囲が第2磁性部材と軸線方向に重なる。従って、磁路が狭くならないので、磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可動体が第1磁性部材と第2磁性部材を備えており、第2磁性部材は、厚さ方向の一部または全部が欠損した重量調整部を備えている。従って、第2磁性部材の外形を変更せずに第2磁性部材の重量を変更できるので、第1磁性部材の曲げ部の位置に形成される磁路が狭くなりにくい。また、第1磁性部材は、軸線方向から見て磁石の外周面と重なる部分の磁束密度が高く、重量調整部は、磁束密度が高い部分よりも内周側の磁性部材を欠損させて重量を調整するため、磁路が狭くなりにくい。従って、重量調整部を形成したことによる磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1に示すアクチュエータの断面図(図1のA-A断面図)である。
図4図1に示すアクチュエータの断面図(図1のB-B断面図)である。
図5】可動体の分解斜視図である。
図6】アクチュエータにおける磁気回路を構成する部分の断面斜視図である。
図7】第1磁性部材における磁気飽和した部分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(全体構成)
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図3図4は、図1に示すアクチュエータ1の断面図である。図3は、図1のA-A位置で切断した断面図である。図4は、図1のB-B位置で切断した断面図であり、図3と直交する方向で切断した断面図である。以下の説明において、可動体3の中心軸線Lが延在する方向を軸線方向とし、軸線方向の一方側をL1とし、軸線方向の他方側をL2とする。
【0017】
図1図4に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、支持体2および可動体3に接続された接続体10と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。接続体10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えており、支持体2に対して可動体3を軸線方向に相対移動させる。図3図4に示すように、可動体3は、軸線方向の一方側L1の端部、および軸線方向の他方側L2の端部の各位置において、接続体10を介して支持体2と接続される。
【0018】
(支持体)
図2図4に示すように、支持体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内周側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を有する。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。また、支持体2は、コイルホルダ4の内周側に嵌まる第1外枠部材51と、第1外枠部材51に対して軸線方向の他方側L2に離間した位置でケース20の内周側に嵌まる第2外枠部材52を有する。
【0019】
(接続体)
接続体10は、第1外枠部材51の内周面に接合された環状の第1接続体11と、第2外枠部材52の内周面に接合された環状の第2接続体12を備える。本形態では、後述するように、第1接続体11および第2接続体12はゲル材料を成形したゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1外枠部材51および第2外枠部材52に接合されている。
【0020】
(コイルホルダ)
図2に示すように、コイルホルダ4は、環状の第1外枠部材固定部41と、第1外枠部材固定部41から軸線方向の他方側L2へ突出する胴部42とを備えており、胴部42の周りにコイル62が配置される。コイル62から引き出されたコイル線63の端部は、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41から径方向外側へ突出する2本の端子ピン64に絡げられている。図1に示すように、端子ピン64はケース20の外部へ突出しており、配線基板7に接続される。
【0021】
図4に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材51を軸線方向に位置決めする第1段部44を備える。第1外枠部材固定部41は第1外枠部材51の外周側を囲んでいる。第1外枠部材固定部41の内周面には、軸線方向の他方側L2に凹む第1凹部43が設けられ、第1外枠部材51は、第1凹部43に圧入される。第1段部44は、第1凹部43の軸線方向の他方側L2の端部に設けられている。本形態では、第1外枠部材51の外周面に形成された環状段部511が第1段部44に対して軸線方向に当接する。
【0022】
(ケース)
ケース20は、円筒状のケース本体24と、ケース本体24の内周側に配置される第2外枠部材固定部25を備える。第2外枠部材固定部25は、コイルホルダ4に対して軸線方向の他方側L2に離間した位置に配置される。図2図4に示すように、第2外枠部材固定部25は、ケース本体24の内周面から内周側に突出しており、ケース本体24と一体に成形される。
【0023】
ケース20は、第2外枠部材52を軸線方向に位置決めする第2段部45を備える。図3図4に示すように、第2外枠部材固定部25の内周面には、軸線方向の一方側L1に凹む第2凹部46が設けられ、第2外枠部材52は、第2凹部46に圧入される。第2段部45は、第2凹部46の軸線方向の一方側L1の端部に設けられている。本形態では、第2外枠部材52の外周面に形成された環状段部521が第2段部45に対して軸線方向に当接する。
【0024】
また、ケース20は、コイルホルダ4を軸線方向に位置決めする第3段部47を備える。図4に示すように、第3段部47は、ケース本体24の内周面に形成される。図1図4に示すように、コイルホルダ4が嵌まるケース本体24の内周面には、軸線方向に延びる複数の溝部29が形成され、各溝部29の軸線方向の他方側L2の端部に第3段部47が形成されている。図2に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材固定部41の外周面から突出する複数の凸部49を備える。支持体2を組み立てる際、コイルホルダ4の各凸部49は、ケース本体24の各溝部29に軸線方向の一方側L1から嵌め込まれ、第3段部47に対して軸線方向に当接する。これにより、コイルホルダ4がケース本体24に圧入されて固定されるとともに、コイルホルダ4が軸線方向に位置決めされる。
【0025】
(蓋部材)
図3図4に示すように、第1蓋部材21は、コイルホルダ4に設けられた第1外枠部材固定部41の軸線方向の一方側L1からケース本体24に固定される。また、第2蓋部材22は、第2外枠部材固定部25の軸線方向の他方側L2からケース本体24に固定される。図2に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、軸線方向から見て円形の蓋部26と、蓋部26の外周縁に周方向で等間隔で配置された複数の係止部27を備える。本形態では、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3個所の係止部27を備える。係止部27は、蓋部26から外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪部である。
【0026】
係止部27は、径方向に弾性変形して蓋部26と共にケース本体24の内周側に押し込まれる。ケース20は、係止部27がケース20の内側から外れることを規制する規制部28を備える。規制部28は、ケース本体24の端部から内周側に突出する凸部である。図1図2に示すように、規制部28は、ケース本体24の軸線方向の一方側L1および他方側L2の端部に、それぞれ、3個所ずつ等間隔で配置される。規制部28は、係止部27の先端に対して軸線方向に当接する。第1蓋部材21および第2蓋部材22は、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と併用してケース20に固定される。
【0027】
図2に示すように、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41は、ケース本体24に設けられた3個所の規制部28と軸線方向で重なる部分を内周側に切り欠いた溝部48を備える。従って、コイルホルダ4をケース本体24の内部に挿入する際に、第1外枠部材固定部41と規制部28とが干渉することが回避される。
【0028】
(配線引き出し部)
図1図3に示すように、支持体2は、磁気駆動機構6のコイル62から引き出したコ
イル線63を絡げた端子ピン64を外部に引き出すための配線引き出し部60を備える。配線引き出し部60は、ケース20の軸線方向の一方側L1の縁を軸線方向の他方側L2に切り欠いた切欠き部65(図2参照)と、第1蓋部材21の外周縁の周方向の一部から軸線方向の他方側L2に延びるカバー66との間に設けられた隙間である。
【0029】
ケース20は、切欠き部65の他方側L2に形成された基板固定部69を備える。配線基板7は、基板固定部69の軸線方向の一方側L1の端部に設けられた爪部691、および、基板固定部69の軸線方向の他方側L2の端部に設けられた係止溝692による係止構造と、接着剤による固定とを併用して基板固定部69に固定される。配線基板7には、コイル62に対する給電用のリード線8が接続される。基板固定部69には、配線基板7に対して周方向に隣接する位置でリード線8を保持するリード線保持部80が設けられている。
【0030】
切欠き部65の内周側には、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41が配置される。第1外枠部材固定部41から外周側に延びる2本の端子ピン64の根本には、コイル62から引き出されたコイル線63が絡げられている。端子ピン64は、基板固定部69に固定される配線基板7に設けられた2箇所の穴71(図2参照)に通され、穴71の縁に設けられたランドと電気的に接続される。
【0031】
(可動体)
図2図4に示すように、可動体3は、支持体2の径方向の中心において軸線方向に延びる支軸30を有する。支軸30には、筒状の第1内枠部材36、および筒状の第2内枠部材37によって、磁石61およびヨーク35が固定される。支軸30は金属製の丸棒である。第1内枠部材36および第2内枠部材37は、金属製の円筒体であり、円形の貫通穴が設けられている。
【0032】
図3図4に示すように、第1内枠部材36の内周面には、軸線方向の他方側L2の端部に径方向内側に突出した環状突部361が形成されている。従って、第1内枠部材36を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部361に圧入される。また、第2内枠部材37の内周面には、軸線方向の一方側L1の端部に径方向内側に突出した環状突部371が形成されている。従って、第2内枠部材37を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部371に圧入される。
【0033】
図5は、可動体3の分解斜視図である。図3図5に示すように、磁石61は、支軸30が貫通する軸穴610が設けられており、支軸30の軸線方向の略中央に固定される。ヨーク35は、磁石61に軸線方向の一方側L1で重なる第1ヨーク31と、磁石61に軸線方向の他方側L2で重なる第2ヨーク32を備える。
【0034】
第1ヨーク31の中央には、支軸30が貫通する軸穴310が設けられている。本形態では、第1ヨーク32は、外径寸法が磁石61の外径寸法よりわずかに大きい磁性板であり、第1ヨーク32の外周面は、磁石61の外周面より径方向外側に張り出している。第1ヨーク32は、磁石61の一方側L1の面に接着等の方法で固定されている。
【0035】
第2ヨーク32は、カップ状の第1磁性部材33と、円板状の第2磁性部材34の2つの部材からなる。第1磁性部材33は、支軸30が貫通する軸穴330が設けられた円形の端板部331と、端板部331の外縁から軸線方向の一方側L1に曲げられた曲げ部332と、曲げ部332から軸線方向の一方側L1に延びる円筒部333とを有する。本形態では、第1磁性部材33の端板部331が磁石61の軸線方向の他方側L2の端面に固定される。第2磁性部材34は、支軸30が貫通する軸穴340を備えており、第1磁性部材33の端板部331に対して磁石61とは反対側から固定される。
【0036】
可動体3は、磁石61およびヨーク35を構成する各部材の軸穴310、610、330、340に支軸30を貫通させた状態で、磁石61およびヨーク35の軸線方向の両側で第1内枠部材36および第2内枠部材37を支軸30に固定する。その結果、第1内枠部材36が軸線方向の一方側L1から磁石61およびヨーク35を支持し、第2内枠部材37が軸線方向の他方側L2から磁石61およびヨーク35を支持する結果、磁石61およびヨーク35は、支軸30に固定される。
【0037】
第2ヨーク32は、第1磁性部材33の円筒部333の内径が、磁石61および第1ヨーク31の外径より大きい。従って、磁石61および第1ヨーク31を円筒部333の底部である円形の端板部331に重ねると、円筒部333は、磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面から径方向外側に離間した位置で磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面に対向する。コイルホルダ4は、磁石61および第1ヨーク31の外周側を囲む円筒形の胴部42を備えており、胴部42にコイル62が巻かれている。従って、円筒部333と磁石61の外周面との間にコイル62の一部が配置される。また、円筒部333と第1ヨーク31の外周面との間にコイル62の一部が配置される。
【0038】
(ヨークの磁束密度分布)
本形態では、第2ヨーク32が2枚の磁性部材によって構成されており、第1磁性部材33と第2磁性部材34を重ねて磁石61の端面に固定する。これにより、第2ヨーク32において磁束密度が高く磁気飽和を起こしやすい部分だけを厚くすることができ、磁石61の外周側を囲む円筒部333の板厚は必要以上に厚くならないようにすることができる。従って、磁気効率を向上させることができるととともに、可動体3の外径が大型化することを抑制でき、アクチュエータ1の大型化を抑制できる。
【0039】
図6は、アクチュエータ1における磁気回路を構成する部分の断面斜視図である。磁気回路は、磁石61の一方側L1の端面に固定される第1ヨーク31と、磁石61の他方側L2の端面に固定されるとともにコイル62の外周側を囲む第2ヨーク32を備えており、第1ヨーク31と第2ヨーク32の径方向の隙間にコイル62が配置されている。
【0040】
図7は、第1磁性部材33における磁気飽和した部分を示す説明図である。第1磁性部材33は、図7において網掛けで表示した第1部分P1および第2部分P2が磁気飽和している。第1部分P1は、軸線方向から見て磁石61の外周縁と重なる環状部分であり、軸線方向から見て磁石61の外周縁と重なる中心円P0を中心とする環状領域である。第2部分P2は、曲げ部332および円筒部333の他方側L2の端部である。本形態では、第1磁性部材33は絞り加工によって製造されており、端板部331と円筒部333を接続する曲げ部332の磁束密度が高い。また、軸線方向から見て磁石61の外周面と重なる部分の磁束密度が高い。第1磁性部材33の磁束密度は、中心円P0から径方向内側および径方向外側へ向かうに従って減少する。また、曲げ部332の近傍では、曲げ部332に向かうに従って磁束密度が増大する。
【0041】
図6に示すように、第2磁性部材34の外周縁は、軸線方向から見て曲げ部332と重なる位置まで延びている。本形態では、第2磁性部材34の外径と円筒部333の外径は同一寸法であり、第2磁性部材34の外周端面は、円筒部333の外周面と同一面上に位置する。従って、第2磁性部材34は、軸線方向から見て第2部分P2の全体と重なっており、磁気飽和した部分の全体と第2磁性部材34の外周端部とが重なっている。よって、第2ヨーク32は、第2磁性部材34の外周端部によって磁束密度が高い部分の厚さが確保されており、第2磁性部材34の外周端部によって磁束密度が高い部分に磁路が形成されている。
【0042】
(重量調整部)
第2ヨーク32は、可動体3の重量を調整する重量調整部38を備える。上記のように、第2ヨーク32は2枚の磁性部材によって構成されており、2枚の磁性部材のうちの1枚(第2磁性部材34)が重量調整部材として機能する。本形態では、重量調整部38は、第2磁性部材34に設けられた円形の貫通孔である。重量調整部38の数やサイズは、第2磁性部材34の外形を変更することなく、第2磁性部材34の重量を設計値に一致させるように設定されている。
【0043】
可動体3と支持体2とを接続体10(ゲル状部材)によって接続したアクチュエータ1においては、以下の式(1)に示すように、可動体3の共振周波数f0は、可動体3の質量mと接続体10のバネ定数kを含む式で規定される。また、アクチュエータ1の振動からユーザが感じる力覚(振動の強さ)は、可動体3の質量mが増大すると大きくなり、可動体3の質量mが減少すると小さくなる。アクチュエータ1は、求める振動を発生させるように、可動体3の質量mが決定されている。
共振周波数f0=(1/2π)×√(k/m)・・・(1)
k:接続体(ゲル状部材)のバネ定数、m:可動体3の質量
【0044】
第2磁性部材34は、複数の重量調整部38を備える。本形態では、図5に示すように、4箇所の重量調整部38が90度の角度間隔で周方向に並んでいる。4箇所の重量調整部38は、可動体3の中心軸線Lを中心として、周方向に均等配置されている。すなわち、4箇所の重量調整部38は、中心軸線Lを中心とする同心円上に配置され、等角度間隔で配置される。本形態では、可動体3の重心は中心軸線L上に位置する。従って、重量調整部38は、可動体3の重心を中心として周方向に均等配置されているため、重量調整部38を設けたことによって可動体3の重心ずれが発生することはない。
【0045】
図6図7に示すように、重量調整部38は、軸線方向から見て磁石61の外周縁よりも内周側に配置される。第1磁性部材33の磁束密度は、軸線方向から見て磁石61の外周縁と重なる中心円P0の位置で最も大きい。従って、重量調整部38は、端板部331において磁束密度が最も大きい位置よりも内周側に配置されている。重量調整部38は磁性部材が欠損した部位であるため、重量調整部38を磁束密度が大きい位置からずらすことにより、磁束密度が高い位置に磁性部材の欠損箇所が設けられることがない。よって、磁束密度が高い部分に磁路が形成されている。
【0046】
(接続体の製造方法)
第1接続体11および第2接続体12は粘弾性体からなる。例えば、第1接続体11および第2接続体12として、シリコーンゲル等からなるゲル状部材、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いることができる。また、接続体10として用いることが可能な粘弾性体は、ゲル状部材、ゴム、あるいはその変性材料と、バネなどの弾性体とを組み合わせた複合部材であってもよい。
【0047】
本形態では、第1接続体11および第2接続体12は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。第1接続体11および第2接続体12は、ゲル材料を型に充填して硬化させる方法(注型)により製造される。第1接続体11を成形するときは、治具によって第1外枠部材51および第1内枠部材36を同軸に位置決めして第1外枠部材51と第1内枠部材36との間に環状の隙間を形成し、この隙間にゲル材料を充填して熱硬化させる。これにより、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1接続体11が第1外枠部
材51の内周面、および、第1内枠部材36の外周面に接合される。
【0048】
なお、ゲル材料を充填する前に、第1外枠部材51の内周面、および第1内枠部材36の外周面にプライマー等の接合促進剤を塗布することによって接合強度を高めることができる。第2接続体12についても、同様に、第2外枠部材52と第2内枠部材37との間に環状の隙間を形成し、この隙間にゲル材料を充填して熱硬化させることにより成形される。従って、アクチュエータ1を組み立てる際には、ゲル状部材を接着する工程を行わずに、支持体2と可動体3とを接続することができる。
【0049】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1は、コイル62に通電することにより、磁気駆動機構6が、可動体3を軸線方向に駆動する駆動力を発生させる。コイル62への通電を切ると、可動体3は、接続体10の復帰力によって原点位置へ戻る。従って、コイル62への通電を断続的に行うことにより、可動体3は、軸線方向で振動する。また、コイル62に印加する交流波形を調整することで、可動体3が軸線方向の一方側L1に移動する加速度と、可動体3が軸線方向の他方側L2に移動する加速度を異なるものとすることができる。それ故、アクチュエータ1を触覚デバイスとして取り付けた機器を手にした者は、軸線方向において方向性を有する振動を体感することができる。また、アクチュエータ1を利用してスピーカを構成することもできる。
【0050】
本形態では、接続体10は、支持体2と可動体3が第1方向(径方向)で対向する位置に配置され、可動体3は第1方向(径方向)に対して交差する第2方向(軸線方向)に振動する。可動体3が支持体2に対して第2方向(軸線方向)に振動する際、第1接続体11および第2接続体12は、可動体3の振動に追従してせん断方向に変形する。シリコーンゲル等のゲル状部材は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。ゲル状部材がせん断方向に変形する際は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を持つ。従って、可動体3が支持体2に対して軸線方向に振動する際、第1接続体11および第2接続体12は、線形性が高い範囲で変形するので、リニアリティが良好な振動特性を得ることができる。
【0051】
なお、可動体3が径方向に移動する場合には、第1接続体11および第2接続体12が潰れる方向に変形する。ここで、ゲル状部材が潰れる方向に変形する場合のバネ定数は、ゲル状部材がせん断方向に変形する場合のバネ定数の3倍程度である。このため、可動体3が振動方向(軸線方向)とは異なる方向に移動することを抑制でき、可動体3と支持体2との衝突を抑制できる。
【0052】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータは、支持体2および可動体3と、支持体2および可動体3に接続される接続体10と、磁石61およびコイル62を備え、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6を有する。可動体3は、外周面に磁石61が固定される支軸30と、磁石61の軸線方向の端面に固定される第2ヨーク32を備える。第2ヨーク32は、磁石61の他方側L2の端面に固定される端板部331、端板部331の外縁に設けられた曲げ部332、および、曲げ部332から磁石61の側へ延びる円筒部333を備える第1磁性部材33と、端板部331に対して磁石61とは反対側から固定される第2磁性部材34を備える。第2磁性部材34は、軸線方向から見て磁石61の外周面よりも内周側に設けられた重量調整部38を備えており、重量調整部38は、貫通孔である。
【0053】
本形態では、第2ヨーク32が2つの磁性部材によって構成されており、第2磁性部材34は、重量調整部38として貫通孔を備えている。従って、第2磁性部材34の外形を
変更せずに第2磁性部材34の重量を変更できるので、第1磁性部材33の曲げ部332の位置に形成される磁路が狭くなりにくい。また、第1磁性部材33は、軸線方向から見て磁石61の外周面と重なる部分の磁束密度が高く、重量調整部38は、磁束密度が高い部分よりも内周側の磁性部材を欠損させて重量を調整する形状であるため、磁路が狭くなりにくい。従って、重量調整部38を形成したことによる磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体3の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。
【0054】
本形態では、重量調整部38は貫通孔であるため、第2磁性部材34に重量調整部38を容易に形成できる。また、板状の第2磁性部材34に貫通孔や半抜き部を形成することは容易であり、その数やサイズの変更も容易である。従って、第2磁性部材34の重量を容易に変更でき、可動体3の重量を容易に調整できる。上記のように、本形態では、4箇所に重量調整部38が設けられているが、重量調整部38の数は4に限定されるものではなく、3個所もしくは2箇所、あるいは、5箇所以上であってもよい。なお、1箇所だと可動体3の重心ずれが発生するため、2箇所以上にすることが好ましい。また、重量調整部38の形状は円形に限定されるものではなく、多角形や長孔状であってもよい。
【0055】
なお、重量調整部38は、貫通孔でなくてもよく、半抜き部であってもよい。すなわち、重量調整部38は、厚さ方向の一部または全部が欠損した部分であればよいので、厚さ方向の全部が欠損した貫通孔でなくてもよく、厚さ方向の一部が欠損した半抜き部であってもよい。重量調整部38として貫通孔もしくは半抜き部を設けることにより、第2磁性部材34の外形を変更することなく、第2磁性部材34の重量を低減させることができる。
【0056】
本形態では、重量調整部38は、可動体3の重心を中心として周方向に均等配置される。従って、重量調整部38を設けたことによる可動体3の重心ずれを防止できる。
【0057】
本形態では、第2磁性部材34の外周端部は、軸線方向から見て第1磁性部材33の曲げ部332と重なる位置まで延びている。第1磁性部材33は、曲げ部332の磁束密度が高いので、第2磁性部材34の外周端部が曲げ部332に届いていれば磁路が狭くなることを回避できる。従って、磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体3の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。
【0058】
本形態では、第2磁性部材34の外周端面は、軸線方向から見て円筒部333の外周面と同一位置まで延びている。従って、曲げ部332の全範囲が軸線方向から見て第2磁性部材34と重なるので、磁路を確保できる。よって、磁気抵抗の増大を抑制でき、可動体3の重量調整による磁気効率の低下を抑制できる。なお、第2磁性部材34の外周端面が円筒部333の外周面よりも外周側に位置する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、7…配線基板、8…リード線、10…接続体、11…第1接続体、12…第2接続体、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…ケース本体、25…第2外枠部材固定部、26…蓋部、27…係止部、28…規制部、29…溝部、30…支軸、31…第1ヨーク、32…第2ヨーク、33…第1磁性部材、34…第2磁性部材、35…ヨーク、36…第1内枠部材、37…第2内枠部材、38…重量調整部、41…第1外枠部材固定部、42…胴部、43…第1凹部、44…第1段部、45…第2段部、46…第2凹部、47…第3段部、48…溝部、49…凸部、51…第1外枠部材、52…第2外枠部材、60…配線引き出し部、61…磁石、62…コイル、63…コイル線、64…端子ピン、65…切欠き部、66…カバー、69…基板固定部、71…穴、80…リード線保持部、310、330、340、610…軸穴、331…端板部、332…曲げ部、33
3…円筒部、361…環状突部、371…環状突部、511…環状段部、521…環状段部、691…爪部、692…係止溝、L…中心軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、P0…中心線、P1…第1部分、P2…第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7