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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65H5/06 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020203600
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090970
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216353(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部部材と、
前記下部部材との間でシートをUターン状の経路で搬送する搬送路を形成し、前記下部部材に対して、前記搬送路を形成する閉位置と前記搬送路を露出する開位置との間で回動可能な上部部材と、
シートを前記搬送路に沿って給送するローラを有し、前記上部部材に取り付けられるローラユニットと、
前記ローラユニットを覆う覆い位置と前記ローラユニットを露出する露出位置との間で前記上部部材に対し開閉可能なカバー部材と、
前記ローラユニットに駆動力を伝達する第1の歯車と、
を備え、
前記ローラユニットは、前記ローラに係合するローラ軸を回転自在に支持し前記上部部材に対して回転を規制されて嵌合する軸受部と、前記ローラ軸に固定され、前記第1の歯車と噛合して前記ローラに駆動力を伝達する第2の歯車と、前記軸受部に対して前記第2の歯車が回転する際に回転負荷を与える負荷部材とを有し、
前記第2の歯車の回転中心は、前記上部部材が開位置にある場合に前記第1の歯車の回転中心の直上付近に位置することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
記カバー部材は、該カバー部材の前記上部部材に対する閉位置において前記軸受部を支持する支持部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記ローラは、前記ローラ軸に対して、ワンウェイクラッチを介して接続されることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記軸受部は、前記上部部材に嵌合する突出形状部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記負荷部材は弾性部材であり、該弾性部材の弾性力は、前記上部部材が開位置にある場合に、前記軸受部と前記第2の歯車とが相対的に回転しない値に設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送されるシートの画像を読み取る画像読取手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ドキュメントスキャナ、ファクシミリ、プリンタ、複写機等に組み込まれるシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置などに用いられるシート搬送装置では、シートを装置内に送り込むために給送ローラを用いている。給送ローラの表面は、シートとの間で滑りが発生しないように、ゴムのような摩擦係数の高い材料で構成されている。給送ローラの表面は、シートとの間で摩擦力が生じるため、シートの給送枚数が増えるにつれて給送ローラの表面が徐々に摩耗する。給送ローラの表面が摩耗して搬送性能が低下した場合には、給送ローラを交換する必要がある。
【0003】
ここで、下部ユニットと下部ユニットに対して開閉可能に設けられた上部ユニットとの間でシートが搬送される経路が構成されるシート搬送装置において、上部ユニットに給送ローラが組み付けられている装置がある。このような装置で、給送ローラを交換可能に構成しようとすると、通常の装置の稼働時には給送ローラが鉛直下方向に落下しないように、給送ローラを確実に保持する必要がある。
【0004】
また、給送ローラが確実に保持されながらも、ユーザによる給送ローラの取り付け/取り外しは容易に出来ることが望ましい。給送ローラの交換が容易であるローラ保持機構として、例えば、特許文献1に記載された機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-280397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているローラ保持機構は、給送ローラを覆うカバー部材の開閉に応じて、給送ローラの端部と係合する部品がスライドし、給送ローラを保持部品から離脱させることが可能である。しかし、この構成では、ユーザは、給送ローラの端部と保持部品が係合するように位置を合わせながらローラカバーを閉める必要があり、交換作業が複雑である。また、給送ローラの端部と保持部品とが確実に係合できない場合があり、このことにユーザが気づかずに給送ローラが駆動されると、部品が破損する恐れがある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、給送ローラの保持と交換を確実かつ容易に行なうことが可能なシート搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシート搬送装置は、下部部材と、前記下部部材との間でシートをUターン状の経路で搬送する搬送路を形成し、前記下部部材に対して、前記搬送路を形成する閉位置と前記搬送路を露出する開位置との間で回動可能な上部部材と、シートを前記搬送路に沿って給送するローラを有し、前記上部部材に取り付けられるローラユニットと、前記ローラユニットを覆う覆い位置と前記ローラユニットを露出する露出位置との間で前記上部部材に対し開閉可能なカバー部材と、前記ローラユニットに駆動力を伝達する第1の歯車と、を備え、前記ローラユニットは、前記ローラに係合するローラ軸を回転自在に支持し前記上部部材に対して回転を規制されて嵌合する軸受部と、前記ローラ軸に固定され、前記第1の歯車と噛合して前記ローラに駆動力を伝達する第2の歯車と、前記軸受部に対して前記第2の歯車が回転する際に回転負荷を与える負荷部材とを有し、前記第2の歯車の回転中心は、前記上部部材が開位置にある場合に前記第1の歯車の回転中心の直上付近に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給送ローラの保持と交換を確実かつ容易に行なうことが可能なシート搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るシート搬送装置の概略断面図。
図2】第1の実施形態における給送ローラの構造図。
図3】第1の実施形態における給送ローラを保持する構成を示す図。
図4】第1の実施形態における給送ローラの脱落を防ぐ構成を示す図。
図5】第2の実施形態における給送ローラの脱落を防ぐ構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置が適用された画像読取装置の概略構造を示す図である。図1(a)は後述する上支持体1が閉じた状態を示し、図1(b)は上支持体1が開いた状態を示す。
【0013】
図1において、画像読取装置100はスキャナ等の読取装置であり、シートの表裏を反転して排出するための屈曲した搬送路であるUターン搬送路を有する自動シート搬送装置を備える。画像読取装置100は、USBケーブルやネットワーク等を介してパーソナルコンピュータ(PC)90(情報処理装置)に接続され、画像読取システムを構成する。
【0014】
画像読取装置100は、上側(シートの搬送路に対して他方側)のユニットを構成する上支持体(上部部材)1と、下側(シートの搬送路に対して一方側)のユニットを構成する下支持体(下部部材)2とを備える。上支持体1は、下支持体2に設けられた軸3の周りで回動可能に下支持体2に連結されている。図1(a)は、上支持体1が下支持体2に対して閉じた状態(閉位置)を示しており、上支持体1と下支持体2の間にシートの通り道である搬送路が形成される。
【0015】
図1(b)は、上支持体1を軸3の周りに回動して、上支持体1が開いた状態(開位置)を示す。この開位置では、シートの搬送路が露出される。また、後述する上支持体1に取り付けられた送りローラ4と下支持体2に取り付けられた分離ローラ5が離間し、これらの交換作業が容易になる。
【0016】
画像読取装置100は、シート束Sを載置するためのシート台6と、シート台6に載置されたシート束Sを検知するシート検知センサ7と、シート束Sからシートを搬送路に送り出すピックアップローラ8とを備える。
【0017】
また、画像読取装置100は、ピックアップローラ8によりピックアップされたシートを装置内に給送する送りローラ4と、ピックアップローラ8により複数枚のシートが給紙された場合にシートを1枚ずつに分離するための分離ローラ5とを備える。
【0018】
また、画像読取装置100は、シートを所定のタイミングで画像読取部へ搬送するレジストローラ対9と、シートの画像読み取りと給紙のタイミングを調整するためのレジストセンサ10とを備える。
【0019】
さらに、画像読取装置100は、画像読取部として、シートの表面を読み取る表面画像読取部61と、シートの裏面を読み取る裏面画像読取部62とを備える。表面画像読取部61は、シートの画像情報をコンタクトガラス81を介して読み取るラインイメージセンサ71を備える。裏面画像読取部62は、シートの画像情報をコンタクトガラス82を介して読み取るラインイメージセンサ72を備える。
【0020】
また、画像読取装置100は、画像読取部の下流に搬送ローラ対11を備える。
【0021】
また、画像読取装置100は、Uターン搬送路(Uターン状の搬送路)の屈曲搬送路中でシートを搬送させるためのUターン搬送ローラ対12と、屈曲搬送路を通過したシートが排出される排紙トレイ13と、シートを排紙トレイ13に排出するための排紙ローラ対14を備える。
【0022】
次に、図1の画像読取装置100におけるシート搬送動作について説明する。
【0023】
まず、シート束Sがシート台6に載置され、画像読取装置100に接続されたPC100から画像の読み取り指示が出されると、ピックアップローラ8が降下する。ピックアップローラ8が降下すると、シート束S上に接触し、シート検知センサ7がシートを検知している場合には、ピックアップローラ8が回転してシートが給紙される。給紙されたシートは送りローラ4によって搬送路内に送り出される。なお、ピックアップローラ8により複数枚のシートが給紙されてしまった場合、複数枚のシートは、送りローラ4と、この送りローラ4と逆方向に回転する分離ローラ5とにより、装置内に1枚だけ送り出されるよう分離される。
【0024】
次に、装置内に送り出されたシートは、レジストローラ対9によって表面画像読取部61又は裏面画像読取部62の読取解像度に合わせた読取速度で搬送される。シートがレジストセンサ10を通過すると、その通過した際の検知信号から読み取りのタイミングを計って表面画像読取部61又は裏面画像読取部62による画像の読み取りが開始される。また、レジストセンサ10がシートの先端を検知すると、ピックアップローラ8及び送りローラ4の回転を停止させる。
【0025】
次に、画像読取部を通過したシートは、搬送ローラ対11によりUターン搬送路のうちの屈曲搬送路に搬送され、その後、Uターン搬送ローラ対12と排紙ローラ対14により搬送されて、排紙トレイ13に排出される。
【0026】
この後、シート検知センサ7によりシート台6上のシートが検知されている場合は、ピックアップローラ8及び送りローラ4を回転させてシート台6に載置されているシートを装置内へ搬送して上述と同様の制御がなされ、この動作がシート台6にシートがなくなるまで繰り返される。
【0027】
次に、送りローラ4を有するローラユニット400の構成について、図2を用いて説明する。
【0028】
図2(a)は送りローラ4を有するローラユニット400の全体図である。ローラユニット400は、例えば、ゴム材料等で形成された2つのローラ部411がホイール部412にそれぞれ個別に装着されて構成される送りローラ4を有する。このホイール部412が、後述する図2(c)に示すように、ワンウェイクラッチ413を介して個別に送りローラ軸42に支持される。
【0029】
また、ローラユニット400の端部には、送りローラ軸42を回転自在に支持するとともに、ローラユニット400を上支持体1に装着する際の位置決め機能を有する軸受L431及び軸受R432が設けられている。図2(b)は、図2(a)を図中左側から見た場合の軸受L431を示す図である。軸受L431には扇形形状部431aが設けられている。これにより、ローラユニット400を上支持体1に装着した場合に、軸受L431の上支持体1に対する回転が規制される。詳細は後述する。
【0030】
また、送りローラ軸42には、送りローラギア(ローラ歯車)44が設けられている(固定されている)。この送りローラギア44は、上支持体1内に設置された不図示の駆動モータの駆動力を伝達するギア列に対してギア接続される。
【0031】
また、送りローラ軸42には、2つのホイール部412に挟まれる部分に筒状の部材であるスペーサ45が設けられている。これにより、ホイール部412またはワンウェイクラッチ413とスペーサ45の端部が当接することで、各ローラ部411の間隔を一定に保つことができる。
【0032】
図2(c)はローラユニット400の断面図であり、図2(d)は、図2(c)中の送りローラギア44付近の拡大図である。送りローラ軸42には平行ピン46が挿入されており、平行ピン46が送りローラギア44に嵌合している。これにより、送りローラギア44が不図示の駆動源から駆動を伝達されて回転すると、送りローラ軸42は送りローラギア44と一体となって回転する。
【0033】
また、ホイール部412は、ワンウェイクラッチ413を介して個別に送りローラ軸42に支持されている。送りローラ軸42がシートを給送する方向に回転した場合に、ワンウェイクラッチ413が送りローラ軸42に噛み合うことで、ホイール部412及びローラ部411がシートを給送する方向に回転される。
【0034】
ここで、送りローラ4の搬送速度は、レジストローラ対9の搬送速度より遅い速度に設定されている。このため、給送されたシートがレジストローラ対9に到達してシートの搬送速度が上がると、ワンウェイクラッチ413と送りローラ軸42との噛み合いが外れ、ローラ部411とホイール部412は搬送シートに連れ回り、元々の送りローラ4の搬送速度よりも速く回転する。
【0035】
すなわち、レジストローラ対9に達したシートは、送りローラ4よりも速い速度に設定されたレジストローラ対9から搬送力を受けるため、送りローラ4とこの送りローラ4に圧接された分離ローラ5との間から引き抜かれることになる。
【0036】
また、軸受L431と送りローラギア44の間には、例えば圧縮ばねのような弾性部材(負荷部材)47と押付部材48が組み込まれている。軸受L431と押付部材48は、一方の凸形状部が他方の凹形状部に嵌合している。具体的には、送りローラ軸42の延在方向において、軸受けL431に設けられた凹形状部内に圧縮ばね47と圧縮ばね47内に貫装される押付部材48の凸形状部とが、ともに収容されている。なお、圧縮ばね47は軸受けL431内に設けられた突出部に嵌合し、固定されている。弾性部材47は押付部材48を送りローラギア44に押し付ける。これにより、送りローラギア44が回転すると、送りローラギア44と押付部材48の間に摩擦力が生じる。
【0037】
したがって、軸受L431が回転可能な状態で送りローラギア44が回転する場合、送りローラギア44と押付部材48の間に生じる摩擦力によって、押付部材48及び押付部材と嵌合している軸受L431にも回転が伝わる。また、軸受L431が回転しないように規制された状態で送りローラギア44が回転する場合、押付部材48も回転を規制されるので、押付部材48と送りローラギア44の間に生じる摩擦力が回転負荷となり、送りローラギア44は簡単には回転しにくくなる。つまり、送りローラ4を停止するために送りローラ4の駆動モータを停止すると、送りローラ4に当接してニップを形成していた分離ローラ5のトルクリミッタ5aにチャージされた負荷が開放され、送りローラ4と共に用紙を上流側に送る方向に送りローラギア44のバックラッシュの分だけ戻ろうとする。しかしながら、押付部材48によって僅かに回転しにくくなっているため、トルクリミッタ5aにチャージされた負荷の力では送りローラ4が戻ることがなく、異音の発生やジャムの発生を防ぐことができる。
【0038】
次に、ローラユニット400周辺の構成について図3を用いて説明する。
【0039】
図3(a)は、画像読取装置100の上支持体1を略90度開いた状態を示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)中における、ローラユニット400周辺の拡大図である。ローラユニット400は、その周囲をローラカバー(カバー部材)16によって覆われている。ローラカバー16は上支持体1に対して開閉自在に設けられている。図3(a)及び図3(b)はローラカバー16が閉じた状態(覆い位置)を示している。この状態からローラカバー16を開くことで、ローラユニット400の着脱が可能となる。
【0040】
図3(c)と図3(d)は、図3(b)においてローラカバー16を開きローラユニット400を露出した状態(露出位置)における、ローラユニット400を装着する箇所周辺の構成を示す図である。図3(c)は、ローラユニット400を装着する前の状態を示す図であり、図3(d)は、ローラユニット400を装着した後の状態を示す図である。ローラユニット400は、上支持体1に設けられるローラ装着部材15に装着される。ローラ装着部材15は2つの凹形状部である凹部L151と凹部R152を有する。ローラユニット400をローラ装着部材15に装着する際は、ローラユニット400の軸受L431をローラ装着部材15の凹部L151に、ローラユニット400の軸受R432をローラ装着部材15の凹部R152に合わせる。
【0041】
また、ローラ装着部材15には、連結ギア(連結歯車)17が設けられている。連結ギア17は、上支持体1内に設けられた不図示の駆動源による回転力を送りローラギア44に伝達するための複数のギアのうちの一つである。送りローラユニット400をローラ装着部材15に装着すると、送りローラギア44が連結ギア17と噛み合う(噛合する)。なお、連結ギア17には下支持体2に設けられた駆動源の回転力が伝達されていても良い。
【0042】
また、ローラ装着部材15には、ローラカバー16が開閉自在に設けられる。ローラカバー16は、凸形状であるローラ押さえL(支持部L)161とローラ押さえR(支持部R)162を有する。図3(b)のように送りローラ4をローラ装着部材15に装着してローラカバー16を閉じた場合に、ローラ押さえL161が送りローラ4の軸受L431に接触し、ローラ押さえR162がローラユニット400の軸受R432に接触する。このとき、ローラユニット400はローラ装着部材15とローラカバー16の間で保持され、位置決めされる。
【0043】
以上の構成において、ローラユニット400をローラ装着部材15に装着する際は、ローラユニット400の軸受L431及び軸受R432を、ローラ装着部材の凹部L151及び凹部R152に合わせて設置するのみでよい。これは、例えば、送りローラ軸42の一方の端部をローラ装着部材15に設けられた穴部に通して送りローラ4を装着するといった、複雑な装着方法を必要としない。従って、ユーザが送りローラ4を誤った方法で装着することがない。
【0044】
また、ローラユニット400をローラ装着部材15から取り外す際は、ローラユニット400の装着を解除する特別な動作が必要なく、容易である。
【0045】
ここで、上支持体1を開放し、ローラカバー16を開けた際や、ローラユニット400をローラ装着部材15に設置してからローラカバー16を閉じるまでの間に、ローラユニット400がローラ装着部材15から脱落するという懸念がある。しかし、本実施形態の構成では、ローラユニットの脱落を防ぐことができる。これについて説明する。
【0046】
図4は、図3において、ローラユニット400を軸方向左から見た断面図であり、図4(a)は送りローラギア44付近の断面図を、図4(b)は軸受L431付近の断面図を示す。
【0047】
まず、図4(a)において、送りローラギア44はローラ装着部材15に設けられた連結ギア17と噛み合っている。連結ギア17の回転中心は、送りローラギア44の回転中心の略鉛直下方に配置されている。換言すると、送りローラギア44の回転中心は、連結ギア17の直上付近に位置する。このため、ローラユニット400は、送りローラギア44と連結ギア17が回転しない限り、連結ギア17の上から転がり落ちない。
【0048】
ここで、連結ギア17は、不図示の駆動源の保持トルクによって、回転を妨げられるような負荷を受けている。よって、連結ギア17の回転は妨げられる。また、図4(b)において、軸受L431の扇形形状部により、軸受L431はローラ装着部材15に対して回転を規制されて嵌合している。
【0049】
ここで、前述したように、軸受L431と送りローラギア44は、押付部材48と弾性部材47を介して、互いが相対的に回転しにくくなるように回転負荷を受けている。よって、軸受L431と送りローラ軸42との相対回転が規制されているため、回転負荷によって、送りローラギア44も回転が妨げられる。
【0050】
以上の構成により、連結ギア17と送りローラギア44は回転せずに噛み合った状態を保ち、ローラユニット400は連結ギア17の上方の位置から動かない。このローラユニット400が連結ギア17の上方の位置から動かない効果は、送りローラギア44の回転中心が、連結ギア17の直上付近(具体的には、例えば鉛直上方から±10°程度)に位置する場合に好適に得られる。従って、ローラユニット400はローラ装着部材15から脱落しない。これにより、ローラユニット400を容易に上支持体1に対して装着することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、軸受R432側は回転規制の作用を受けていないため、ローラ装着部材15から脱落しない上述した作用が働かない。重量バランスや上支持体1の開き角度によってはローラ装着部材15から軸受R432が脱落することがあるが、その場合でも、軸受R432に対して送りローラギア44を挟んだ反対側にある軸受L431がローラ装着部材15に対して回転規制されているため、ローラユニット400としては脱落せずにローラ装着部材15に保持させることができる。
【0052】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の構成は、図1から図4に示した第1の実施形態の構成において、軸受L431とローラ装着部材15を除いた部分は、第1の実施形態と同じである。そのため、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号を用いてその説明を省略する。以下に、上記第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0053】
図5は、上支持体1が下支持体2に対して開いている角度が略45度である状態、すなわち、図3(a)の状態から上支持体1を略45度閉じた状態の断面図である。図5(a)は送りローラギア44付近の断面図を、図5(b)は軸受L435付近の断面図を示す。図5(c)は、第2の実施形態を説明するための比較用としての第1の実施形態を示す。図5(b)と図5(c)は、後述するように、軸受L及びローラ装着部材15における軸受Lが嵌合する箇所の形状が異なる。
【0054】
図5(a)において、上支持体1の開き角が略45度であることにより、連結ギア17と噛み合う送りローラギア44は、連結ギア17の図中右上に位置する。
【0055】
ここで、軸受L435が第1の実施形態で説明した軸受けL431と同じ形状である場合、軸受L付近は図5(c)のようになる。この場合、送りローラギア44と連結ギア17とのバックラッシュと送りローラ4の自重により、ローラユニット400が図5(c)の右下方向に動くことがある。これにより、軸受L431とローラ装着部材15の間に隙間が生じる。隙間が生じたことにより、軸受L431は、ローラ装着部材15に対して回転が規制されなくなる可能性がある。ローラユニット400は、その自重によって、送りローラギア44と連結ギア17とが噛み合う接触点171を中心として図中の矢印Aの方向に回転する。その後、軸受L431がローラ装着部材15の斜面部15Aに接触し、接触位置を中心として、ローラユニット400が図中の矢印Bの方向に回転する。このとき、軸受L431のローラ装着部材15と嵌合する箇所の形状が円形であるために、軸受L431がローラ装着部材15の嵌合部に沿って回転してしまう。最後は、送りローラギア44と連結ギア17の噛み合いが外れてローラユニット400が脱落する。以上のように、上支持体1の開き角度が小さい場合は、上支持体1が略90度開いていた場合と比べて、送りローラ4が脱落しやすくなる。
【0056】
そこで、第2の実施形態では、上支持体1の開き角度が小さい場合でもローラユニット400の脱落を防ぐために、軸受Lとローラ装着部材の形状を変更した。具体的には、図5(b)において、軸受L435は扇形形状の他に突出形状部435aが追加され、突出形状部435aがローラ装着部材19の凹形状部19aに入り込む。これにより、ローラユニット400が、送りローラギア44と連結ギア17とが噛み合う接触点171を中心として図中の矢印Cの方向に回転しようとするとき、及び、軸受L435とローラ装着部材19の斜面部19Aとの接触位置を中心として図中の矢印Dの方向に回転しようとしたときに、軸受L435の突出形状部435aがローラ装着部材19の凹形状部19aに突き当たり、軸受L435の回転が妨げられる。
【0057】
ここで、前述のように、軸受L435と送りローラギア44は、押付部材48と弾性部材47を介して、互いが相対的に回転しにくくなるように回転負荷を受けている。よって、軸受L435の回転が妨げられると、送りローラギア44の回転も妨げられ、連結ギア17と噛み合った状態を保つことができる。
【0058】
このように、軸受L435の突出形状部435aがローラ装着部19の凹形状部19aに突き当たり、送りローラギア44が連結ギア17と噛み合う状態を保つことにより、ローラユニット4は脱落せずにその位置を保つことができる。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態では、軸受L435に突出形状部435aを設けることで、第1の実施形態よりも送りローラユニット400の脱落を妨げる効果が向上する。そのため、上支持体1の開き角度が略90度より小さくても、ローラユニット400の脱落を防ぐことができる。従って、ユーザは、上支持体1を略90度まで開かなくとも、ローラユニット400の脱着作業を容易に行なうことができる。
【0060】
なお、軸受L435と送りローラギア44との間に生じる回転負荷は、弾性部材47の弾性力によって決まる。また、送りローラギア44が図5(a)の状態から回転しようとするためのモーメントは、送りローラ4の自重によって発生する。従って、軸受L435と送りローラギア44が相対的に回転しないための弾性部材47の弾性力は、送りローラ4を軸受L435で支えたときに、送りローラ4の自重によって送りローラギア44が回転しない値に設定される。
【0061】
なお、各構成部材の位置や形状等は、第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、例えば、送りローラギア44と軸受L431、弾性部材47、押付部材48は、ローラユニット400の端部ではなく、2つのローラ部411の間に配置されていてもよい。
【0062】
以上説明したように、第1及び第2の実施形態によれば、給送ローラやローラ保持機構をスライドさせて係合させずとも、給送ローラユニットの軸受部を係合させた後にローラカバーを閉めることで、給送ローラユニットの位置決めを容易に行なうことができる。このとき、ユーザは、給送ローラが係合するように位置を合わせながらローラカバーを閉めるといった複雑な動作を要求されることが無い。また、給送ローラユニットの軸受部の係合が合わなければローラカバーは閉まらないため、ユーザが給送ローラユニットを誤って取り付けることによる部品の破損を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0063】
1:上支持体、2:下支持体、4:送りローラ、411:ローラ部、412:ホイール部、413:ワンウェイクラッチ、42:送りローラ軸、431,435:軸受L、432:軸受R、44:送りローラギア、47:弾性部材、48:押付部材、15:ローラ装着部材、151:凹部L、152:凹部R、15A:斜面部、16:ローラカバー、161:ローラ押さえL、162:ローラ押さえR、100:画像読取装置、400:ローラユニット
図1
図2
図3
図4
図5