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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コップ状容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/66 20170101AFI20241003BHJP
【FI】
B31B50/66
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020210060
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2021102340
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2019233925
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-012039(JP,A)
【文献】特開2001-301739(JP,A)
【文献】特開2014-213928(JP,A)
【文献】特開2016-169024(JP,A)
【文献】特開2015-033544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0009338(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/00
B65D 3/00
B65D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも胴体の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなり紙層を有しない積層体を打ち抜いて胴体用ブランクを形成する工程と、
金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなり紙層を有しない積層体を打ち抜いて底体用ブランクを形成する工程と、
底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように絞り成形することにより断面略逆U形の底体を形成する工程と、
胴体用ブランクの両端縁部を重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、筒状の胴体を形成する工程と、
胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面を重ね合わせて、これらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、胴体と底体とを一体化する工程とを含んでおり、
筒状の胴体を形成する工程において、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、1回目の熱融着をヒートシールによるものとし、2回目の熱融着を高周波シールによるものとし、当該熱融着性樹脂層どうしの接合箇所に樹脂溜まりを形成する、コップ状容器の製造方法。
【請求項2】
胴体用ブランクを形成する工程において、積層体として金属箔層の両面に熱融着性樹脂層が積層されたものを使用し、
筒状の胴体を形成する工程において、胴体用ブランクの両端縁部を合掌状に重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしをヒートシールにより1回目の熱融着を行って接合することにより、合掌部を有する筒状の胴体を形成した後、合掌部を一方の側に折り曲げて胴体の外面に重ねた状態で高周波シールにより2回目の熱融着を行うことにより、合掌部を胴体の外面に接合する、請求項1のコップ状容器の製造方法。
【請求項3】
胴体と底体とを一体化する工程において、胴体の下端部および底体の垂下部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、2回目の熱融着を高周波シールによるものとする、請求項1または2のコップ状容器の製造方法。
【請求項4】
金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも胴体の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなり紙層を有しない積層体を打ち抜いて胴体用ブランクを形成する工程と、
金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなり紙層を有しない積層体を打ち抜いて底体用ブランクを形成する工程と、
底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように絞り成形することにより断面略逆U形の底体を形成する工程と、
胴体用ブランクの両端縁部を重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、筒状の胴体を形成する工程と、
胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面を、これらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、胴体と底体とを一体化する工程とを含んでおり、
胴体と底体とを一体化する工程において、胴体の下端部および底体の垂下部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、1回目の熱融着をヒートシールによるものとし、2回目の熱融着を高周波シールによるものとし、当該熱融着性樹脂層どうしの接合箇所に樹脂溜まりを形成する、コップ状容器の製造方法。
【請求項5】
底体用ブランクを形成する工程において、積層体として金属箔層の両面に熱融着性樹脂層が積層されたものを使用し、
胴体と底体とを一体化する工程において、胴体を当該胴体の下端開口縁部から底体の垂下部を包み込むように内方に折り返して折り返し部を形成するとともに、胴体の下端部および折り返し部と底体の垂下部との互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、胴体と底体とを一体化しており、胴体の下端部および折り返し部ならびに底体の垂下部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、1回目の熱融着をヒートシールによるものとし、2回目の熱融着を高周波シールによるものとし、当該熱融着性樹脂層どうしの接合箇所に樹脂溜まりを形成する、請求項3または4のコップ状容器の製造方法。
【請求項6】
胴体用ブランクおよび底体用ブランクの熱融着性樹脂層を、単層または複層のポリオレフィン系フィルムによって構成する、請求項1~5のいずれか1つのコップ状容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばアイスクリームやヨーグルトのような食品や飲料等を内容物とするコップ状容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアイスクリームやヨーグルト等の半固形状乳製品を充填包装するための容器として、紙製のコップ状容器、すなわち紙コップが一般に用いられている。
紙コップは、通常、それぞれ所定形状にカットされた紙製ブランクよりなる胴体と底体とを接合一体化することにより形成されている。より詳細には、胴体は、略扇形の胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形するとともに、下端開口縁部に内方に折り返された折り返し部を形成し、上端開口縁部に外方にカールされたフランジ部を形成してなる。底体は、略円形の底体用ブランクをその外周部に垂下部が形成されるようにスカート成形してなる断面略逆U形のものである。そして、底体の垂下部が胴体の折り返し部に包み込まれて接合されることにより、胴体および底体が一体化されている。
胴体用および底体用の各ブランクは、例えば、一般原紙、耐酸紙、コート紙等よりなる紙層と、紙層の片面または両面に積層されたポリエチレン(PE)層とを有する積層体よりなる(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
また、上記各ブランクの材料として、紙層およびポリエチレン(PE)層に加えてアルミニウム箔等よりなるバリア層を積層してなる積層体を使用した紙コップも知られている(例えば下記の特許文献2参照)。
【0004】
その他、アイスクリーム、ヨーグルト等の容器として、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック成形体よりなるものも知られている(例えば下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-30955号公報
【文献】特開2007-210639号公報
【文献】特開2007-176505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙コップは、生産性に優れ、安価に製造することが可能である反面、バリア性が低く、内容物の長期保存には適していなかった。
アルミニウム箔等のバリア層が付加された紙コップの場合、内容物の長期保存性は向上するが、紙層の端面から水が侵入しやすく、レトルト殺菌を行うことができなかった。
また、プラスチック製の容器の場合、製造設備のコストが高くつく上、内容物の長期保存には適していなかった。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明者は、胴体用ブランクおよび底体用ブランクそれぞれの材料として、金属箔層とその両面のうち少なくとも一方の面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体を使用したコップ状容器を先に提案した(特願2019-106125号)。
上記のコップ状容器によれば、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌を行うこともできる。
【0008】
ここで、上記のコップ状容器の場合、胴体用ブランクの両端縁部どうしの接合や胴体と底体との接合が不十分であると、容器のシール性が低下し、内容物の漏れ等が発生するおそれがある。
その一方、接合強度を高めるためにシール条件を厳しくすると、接合部分に変形等が生じて容器の外観が損なわれるおそれがある。
この発明の目的は、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌も可能なコップ状容器を製造するに当たり、胴体用ブランクの両端縁部どうしの接合や胴体と底体との接合を、容器の変形等の外観上の欠陥を生じさせることなく、より確実に行えるようにして、容器のシール性を高めることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0010】
1)金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも胴体の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなる積層体を打ち抜いて胴体用ブランクを形成する工程と、
金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなる積層体を打ち抜いて底体用ブランクを形成する工程と、
底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように絞り成形することにより断面略逆U形の底体を形成する工程と、
胴体用ブランクの両端縁部を重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、筒状の胴体を形成する工程と、
胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面を重ね合わせて、これらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、胴体と底体とを一体化する工程とを含んでおり、
筒状の胴体を形成する工程において、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、2回目の熱融着を高周波シールによるものとする、コップ状容器の製造方法。
【0011】
2)胴体用ブランクを形成する工程において、積層体として金属箔層の両面に熱融着性樹脂層が積層されたものを使用し、
筒状の胴体を形成する工程において、胴体用ブランクの両端縁部を合掌状に重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを1回目の熱融着を行って接合することにより、合掌部を有する筒状の胴体を形成した後、合掌部を一方の側に折り曲げて胴体の外面に重ねた状態で高周波シールにより2回目の熱融着を行うことにより、合掌部を胴体の外面に接合する、上記1)のコップ状容器の製造方法。
【0012】
3)胴体と底体とを一体化する工程において、胴体の下端部および底体の垂下部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、2回目の熱融着を高周波シールによるものとする、上記1)または2)のコップ状容器の製造方法。
【0013】
4)金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも胴体の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなる積層体を打ち抜いて胴体用ブランクを形成する工程と、
金属箔層および金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層よりなる積層体を打ち抜いて底体用ブランクを形成する工程と、
底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように絞り成形することにより断面略逆U形の底体を形成する工程と、
胴体用ブランクの両端縁部を重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、筒状の胴体を形成する工程と、
胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面を、これらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、胴体と底体とを一体化する工程とを含んでおり、
胴体と底体とを一体化する工程において、胴体の下端部および底体の垂下部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、2回目の熱融着を高周波シールによるものとする、コップ状容器の製造方法。
【0014】
5)底体用ブランクを形成する工程において、積層体として金属箔層の両面に熱融着性樹脂層が積層されたものを使用し、
胴体と底体とを一体化する工程において、胴体をその下端開口縁部から底体の垂下部を包み込むように内方に折り返して折り返し部を形成するとともに、胴体の下端部および折り返し部と底体の垂下部との互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより、胴体と底体とを一体化しており、胴体の下端部および折り返し部ならびに底体の垂下部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を2回行うとともに、2回目の熱融着を高周波シールによるものとする、上記3)または4)のコップ状容器の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
上記1)のコップ状容器の製造方法によれば、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層が、高周波シールの誘導加熱により高温となった金属箔層から加熱されることによっても熱融着されるため、胴体用ブランクの両端縁部どうしがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易いため、それによって容器のシール性を高めることができる上、熱融着に伴う容器の変形等の外観上の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【0016】
上記2)のコップ状容器の製造方法によれば、胴体用ブランクの両端面が内容物と接触しないことでデラミネーション等の発生が抑制され、また、内容物と接触する面が1種類の樹脂で構成されることで殺菌が容易となる衛生的な容器を簡単に製造することができる。
また、上記2)のコップ状容器の製造方法によれば、胴体の合掌部を胴体の外面に接合する工程を超音波シールによる金属箔層からの加熱によって行うことができるので、熱融着のための熱が各熱融着性樹脂層に均一に伝わるため、両者の接合をより確実に行うことができ、製造効率の面でも有利である。
【0017】
上記3)および4)のコップ状容器の製造方法によれば、高周波シールにより胴体の下端部と底体の垂下部とがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易いため、それによって容器のシール性を高めることができる上、熱融着に伴う変形等の外観上の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
上記5)のコップ状容器の製造方法によれば、折り返し部の内部も含め胴体と底体との接合部分のシール性がより一層高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の第1の実施形態に係るコップ状容器の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う垂直断面図であって、同図中、一点鎖線Aで囲まれた部分は一点鎖線aで囲まれた部分を拡大して示したものであり、一点鎖線Bで囲まれた部分は一点鎖線bで囲まれた部分を拡大して示したものである。
図3】(a)は胴体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であり、(b)は底体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図である。
図4】上記コップ状容器における胴体のオーバーラップ部を拡大して示す水平断面図である。
図5】(a)は胴体用ブランクの平面図であり、(b)は胴体用ブランクから成形された胴体の斜視図である。
図6】(a)は底体用ブランクの平面図であり、(b)は底体用ブランクから成形された底体の斜視図である。
図7】上記コップ状容器の製造工程の一部を示す垂直断面図である。
図8】上記コップ状容器における胴体と底体との連結構造の変形例を示す部分拡大垂直断面図である。
図9】この発明の第2の実施形態に係るコップ状容器における胴体のオーバーラップ部を拡大して示す水平断面図である。
図10】上記コップ状容器の胴体の製造工程の一部を順次示す水平断面図である。
図11】この発明の第3の実施形態に係るコップ状容器の水平断面図であって、同図中、一点鎖線Cで囲まれた部分は一点鎖線cで囲まれた部分を拡大して示したものである。
図12】上記コップ状容器の胴体の製造工程の一部を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を、図1図12を参照して説明する。
なお、以下の説明において、「上下」は、コップ状容器、胴体、底体における上下(例えば図2,7,8の各上下)をいうものとし、また、「内」は、コップ状容器、胴体、底体における中心に近い側(例えば図4,9,10の各上、図7,8の各右)をいい、「外」は、コップ状容器、胴体、底体における中心から遠い側(例えば図4,9,10の各下、図7,8の各左)をいうものとする。
【0021】
[第1の実施形態]
図1および図2は、この発明の第1の実施形態のコップ状容器(1)の全体構成を示すものであって、同容器(1)は、胴体用ブランク(20A)から成形された胴体(2)と、底体用ブランク(30A)から成形された底体(3)とを接合一体化してなる。
胴体(2)は、テーパ筒状のものであって、図5に示すように、扇形をした胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより成形されている。したがって、胴体(2)には、その高さ方向に沿ってのびるオーバーラップ部(21)が存在する。
胴体(2)の下端開口縁部には、内方に折り返された折り返し部(22)が形成されている。
また、胴体(2)の上端開口縁部には、外方に折り曲げられたフランジ部(23)が設けられている。フランジ部(23)は、下方に折り返されてほぼ水平な偏平状に成形されている。なお、フランジ部は、図示以外の形態、例えば、下方にカールさせられて横断面略円弧状に成形されたものであってもよい。
底体(3)は、円形をした水平な底部(31)と、底部(31)の外周縁部から下方にのびた垂下部(32)とを有する断面略逆U形のものであって、図6に示すように、円形の底体用ブランク(30A)を絞り成形してなる。
そして、底体(3)の垂下部(32)の外面が胴体(2)の下端部(2a)の内面に接合されるとともに、胴体(2)の折り返し部(22)が垂下部(32)の内面に接合されることにより、胴体(2)および底体(3)が一体化されている(図2および図7参照)。
なお、図8に変形例として示すように、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造によって、胴体(2)と底体(3)とを一体化した構成とすることもできる。この構成によれば、底体(3)の成形時に垂下部(32)に若干のシワが発生していた場合でも、空気等を混入することなく、胴体(2)の下端部(2a)と底体(3)の垂下部(32)とを確実にシールすることができる。
【0022】
胴体用ブランク(20A)は、図3(a)に示すように、金属箔層(201)と、金属箔層(201)の両面のうち胴体(2)の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層(202)と、金属箔層(201)の両面のうち胴体(2)の外側となる面に積層された外側熱融着性樹脂層(203)とよりなる積層体(20)から形成されており、紙層を有していない。
また、底体用ブランク(30A)も、図3(b)に示すように、金属箔層(301)と、金属箔層(301)の両面のうち底体(3)の上側となる面に積層された上側熱融着性樹脂層(302)と、金属箔層(301)の両面のうち底体(3)の下側となる面に積層された下側熱融着性樹脂層(303)とよりなる積層体(30)から形成されており、紙層を有していない。なお、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造とする場合には(図8参照)、底体用ブランク(30A)の下側熱融着性樹脂層(303)を省略することも可能である。
各積層体(20)(30)の厚さは、250μm未満とするのが好ましく、200μm未満とするのがより好ましい。各積層体(20)(30)の厚さを上記範囲とすることによって、ブランクの材料として厚さ250~400μm程度の積層体を使用する紙コップのように、胴体(2)のフランジ部(23)のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差が大きくなりすぎることや、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合が安定しない、といった問題が確実に回避される。
【0023】
金属箔層(201)(301)は、内容物をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能するものである。
金属箔層(201)(301)を構成する金属箔としては、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔などを使用することができるが、好適にはアルミニウム箔が用いられる。アルミニウム箔の場合、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔のいずれでもよく、また、軟質、硬質のいずれでもよいが、例えば、JIS H4160で分類されるA8000系(特に、A8079HやA8021H)の焼鈍処理済の軟質材(O材)であれば、成形性に優れているので、好適に用いることができる。また、金属箔層(201)(特に胴体用ブランク(20A)の金属箔層(201))を構成するアルミニウム箔として、硬質材(H材)を適用した場合、フランジ部(23)の強度が高められて、予期せぬ衝撃によるフランジ部(23)の変形が抑制され、さらにはコップ状容器(1)全体として保形性が向上すると考えられる。
金属箔層(201)(301)を構成する上記アルミニウム箔の両面には、必要に応じて、化成処理などの下地処理を行う。具体的には、例えば、脱脂処理を行ったアルミニウム箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
上記化成処理により金属箔層(201)(301)表面に形成される皮膜は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m~50mg/mとするのが好ましく、特に、2mg/m~20mg/mとするのが好ましい。
なお、アルミニウム箔として軟質材を使用する場合には、化成処理の前処理として、必ずしも脱脂処理を行うことを要しない。
金属箔層(201)(301)の厚さは、40~200μmとするのが好ましく、80~160μmとするのがより好ましい。金属箔層(201)(301)の厚さを上記範囲とすることによって、充分なバリア性と成形加工性を得ることができる。
【0024】
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、容器(1)の内外面を構成するものであって、金属箔層(201)(301)を保護するとともに、積層体(20)(30)に成形性を付与する役割を担うものであり、また、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合の際に熱融着層として機能するものである。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、通常、例えば、熱融着性を有するポリプロピレン(PP)フィルムやポリエチレン(PE)フィルム等の汎用性を有するポリオレフィン系フィルム、または、これらを貼り合わせた複合フィルムによって構成されるが、とりわけ、耐熱性や絞り成形性に優れている無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)が好適である。なお、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、上記フィルムに代えて、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル、エポキシ樹脂やシェラック樹脂等のコート層により形成されていてもよい。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さは、5~80μmとするのが好ましく、10~60μmがより好ましい。熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さを上記範囲とすることによって、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合部や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合部において十分な接着強度を得ることができると共に、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ(21)によって構成されている部分の段差を緩やかにすることができ、蓋材で封緘した際の密封性が良好となる。
【0025】
金属箔層(201)(301)を構成するアルミニウム箔と、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を構成するフィルムとの積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介してドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤やポリエーテル-ポリウレタン系接着剤が用いられる。
上記の接着剤層の存在により、例えば胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の熱融着性樹脂層(202)(203)が熱融着により減肉した場合でも、金属箔層(201)どうしが接触するのが回避されるので、シール性が保持される。また、上記の接着剤層があれば、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を透過する内容物が容器(1)に充填される場合であっても、金属箔層(201)(301)が腐食して内容物が漏れ出すのを回避することができる。
【0026】
なお、胴体用ブランク(20A)を構成する積層体(20)と、底体用ブランク(30A)を構成する積層体(30)とは、通常、同一のものが用いられるが、材質および/または厚さの異なるものとしてもよい。
【0027】
次に、上記第1の実施形態に係るコップ状容器(1)の製造方法を説明する。
同製造方法は、以下の第1ないし第6の工程よりなる。なお、工程の順番は、適宜入れ替えても構わない。
【0028】
(第1の工程)
第1の工程は、金属箔層(201)と金属箔層(201)の両面に積層された内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)とよりなる積層体(20)を所定サイズの扇形に打ち抜いて胴体用ブランク(20A)を形成する工程である(図5(a)参照)。
【0029】
(第2の工程)
第2の工程は、金属箔層(301)と金属箔層(301)の両面に積層された上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)とよりなる積層体(30)を所定サイズの円形に打ち抜いて、底体用ブランク(30A)を形成する工程である(図6(a)参照)。
【0030】
(第3の工程)
第3の工程は、底体用ブランク(30A)を、金型(図示略)を用いて絞り成形加工することにより、底部(31)および垂下部(32)よりなる横断面略逆U形の底体(3)を成形する工程である(図6(b)参照)。
得られた底体(3)には、シワが生じていない。また、底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分は、角が出ている。
【0031】
(第4の工程)
第4の工程は、胴体用ブランク(20A)の両端縁部をオーバーラップさせて、これらの互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着することにより、筒状の胴体(2)を形成する工程である(図4および図5(b)参照)。
この工程は、通常、略円錐台形の金型(図示略)の頂面に、底体(3)をその底部(31)上面が重なるようにセットしておいてから、上記金型の外周面に胴体用ブランク(20A)を巻き付けて、その両端縁部どうしをオーバーラップさせた後、同両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着させることにより行われる。
この第4の工程では、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの熱融着を計2回行う。1回目の熱融着は、通常、熱板等を用いたヒートシールによって行うが、その他、高周波シールや超音波シール等により行ってもよい。そして、2回目の熱融着は、高周波シールによって行う。以上のような2段階の熱融着により、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易くなり(図4参照)、さらには熱融着に伴う変形等の発生が抑制される。
ここで、ヒートシールは、例えば、内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)が無延伸ポルプロピレンフィルム(CPP)よりなる場合、シール温度:160~220℃、荷重(シール圧力):80~200kgf、シール時間:1~5秒の条件下で行われるのが好ましい。また、内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)がポリレチレンフィルム(PE)よりなる場合、シール温度:140~220℃、荷重:80~200kgf、シール時間:1~5秒の条件下で行われるのが好ましい。つまり、ヒートシールの場合、オーバーラップさせた胴体用ブランク(20A)の両端縁部の両側から、熱融着性樹脂層(202)(203)を構成する樹脂の融点よりも20~40℃高い温度で加熱しながら行うのが好ましい。
また、高周波シールは、例えば、出力:0.5~1.5kW、シール時間:3~5秒、コイルとの距離:0.5~15mm、荷重:100~200kgfの条件下で行われるのが好ましい。
【0032】
(第5の工程)
第5の工程は、胴体(2)をその下端開口縁部から底体(3)の垂下部(32)を包み込むように内方に折り返して折り返し部(22)を形成するとともに、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)ならびに上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)を熱融着することにより、胴体(2)と底体(3)とを一体化する工程である(図2および図7参照)。
この工程は、通常、胴体(2)の下端開口縁部を内側に折り返して、その折り返し部(22)を円盤状の回転金型(図示略)によって底体(3)の垂下部(32)に押し付けた後、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)と上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)とを熱融着させる。
この第5の工程では、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)ならびに底体(3)の垂下部(32)の熱融着性樹脂層(202)(302)(303)どうしの熱融着を計2回行う。1回目の熱融着は、通常、熱板等を用いたヒートシールによって行うが、その他、高周波シールや超音波シール等により行ってもよい。2回目の熱融着は、高周波シールによって行う。高周波シールの場合、誘導加熱によって金属箔層が高温となり、この金属箔層から発せられる熱により熱融着性樹脂層どうしの熱融着が促進される。以上のような2段階の熱融着により、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易くなり、さらには熱融着に伴う変形等の発生が抑制される。なお、ヒートシールおよび高周波シールを行う際の好適な条件は、第4工程の場合と同じである。
【0033】
なお、図8に示すように、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面を接合する態様の容器とする場合、上記第5の工程と実質的に同様の工程、すなわち、胴体(2)の下端部(2a)の内面および底体(3)の垂下部(32)の外面を重ね合わせて、これらの面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および上側熱融着性樹脂層(302)を2回熱融着するとともに、2回目の熱融着を高周波シールによって行うことにより、胴体(2)と底体(3)とを一体化すればよい。
【0034】
(第6の工程)
第6の工程は、胴体(2)の上端開口縁部を、所定のカール成形金型(図示略)を用いて外方にカールさせるとともに上下方向に加圧して偏平状に成形することにより、フランジ部(23)を形成する工程である(図7参照)。
なお、フランジ部の形状によっては、上記と異なる手段や工程によりフランジ部を形成する場合もある。
【0035】
図4を参照して、コップ状容器(1)の胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに熱融着された内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)の合計厚さ(T1)が8~150μmであるのが好ましく、より好ましくは16~80μmとなされる。上記合計厚さ(T1)が8μm未満であると、オーバーラップ部(21)のシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記合計厚さ(T1)が150μmを超えると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがある。
また、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の金属箔層(201)(201)どうしの厚さ方向から見た重なり幅(W1)が2~10mmであるのが好ましく、より好ましくは4~8mmとなされる。上記重なり幅(W1)が2mm未満であると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがあり、また、シール幅が小さくなりすぎてシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記重なり幅(W1)が10mmを超えると、必要以上にオーバーラップ部(21)の幅が大きくなってコストアップにつながり、さらに、オーバーラップ部(21)の内側部分(胴体用ブランク(20A)の一方の端縁部)と外側部分(胴体用ブランク(20A)の他方の端縁部)とにかかる応力の相違に起因して、オーバーラップ部(21)の内側部分にシワが入るなどの外観不良が発生するおそれがある。
【0036】
さらに、図4に示すように、胴体(2)の内側に位置する胴体用ブランク(20A)の内側端面が、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着する際に形成された内側樹脂溜まり部(R1)によって被覆されているのが好ましい。また、図示は省略したが、胴体(2)の外側に位置する胴体用ブランク(20A)の外側端面も、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに
重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着する際に形成された外側樹脂溜まり部によって被覆されていてもよい。
上記の内側樹脂溜まり部(R1)および外側樹脂溜まり部は、胴体用ブランク(20A)のオーバーラップされた両端縁部どうしを熱融着する際、これらの互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)の一部が溶融し、溶融した樹脂が、熱融着時の加圧力によってオーバーラップ部(21)の幅方向に押し出されることにより形成される。また、内側樹脂溜まり部(R1)は、胴体用ブランク(20A)の内側端面を構成する内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)や、内側端面に近接する内側熱融着性樹脂層(202)の一部が溶融した樹脂によっても形成され、外側樹脂溜まり部は、胴体用ブランク(20A)の外側端面を構成する内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)や、外側端面に近接する外側熱融着性樹脂層(203)の一部が溶融した樹脂によっても形成されると考えられる。
これらの樹脂溜まり部(R1)は、例えば、熱融着時のシール条件(シール温度、加圧力、シール時間、シール範囲等)を制御したり、胴体用ブランク(20A)の構成等を適宜設定したりすることによって形成することができる。特に、この実施形態の場合、前述した第4の工程において熱融着が2段階で行われるため、所望の樹脂溜まり部(R1)が確実に形成される。
【0037】
この実施形態のコップ状容器(1)およびその製造方法によれば、以下のような効果が奏される。
a)胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)のそれぞれが、金属箔層(201)(301)およびその両面に積層された熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)よりなる積層体(20)(30)から形成されているので、紙コップの製造設備を利用して安価に製造することができる。
b)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が金属箔層(201)(301)を有しているので、内容物の長期保存性に優れている。
c)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差を小さくすることができ、したがって、容器(1)のフランジ部(23)上面に蓋材をシールする際にシール不良が起こりにくい。また、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、フランジ部(23)上面の上記段差に殺菌液が残りにくくなる。
d)底体(3)が底体用ブランク(30A)を絞り成形してなるので、底体(3)にシワが発生せず、したがって、従来の紙コップのように底体(3)の垂下部(32)と胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)との接合不良が生じたり、バリア性の低下を招いたりするおそれがない。
e)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とを安定的に接合することができる。
f)紙コップと比べて底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分の曲率半径(アール)を小さくすることができるので、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、コップ状容器(1)の底体(3)上面と胴体(2)内面との境界部分に殺菌液が残りにくくなる。
g)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が紙層を有しないものであるので、レトルト殺菌を支障なく行うことができる。
h)筒状の胴体(2)を形成する第4の工程において、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしの熱融着を計2回行うとともに、2回目の熱融着を金属箔層からの加熱を可能とする高周波シールによるものとしているので、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易いため、容器(1)のシール性を高めることができる。しかも、容器(1)の変形等の外観上の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
i)胴体と底体とを一体化する第5の工程において、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)ならびに底体(3)の垂下部(32)の熱融着性樹脂層(202)(302)(303)どうしの熱融着を計2回行うとともに、2回目の熱融着を高周波シールによるものとしているので、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易いため、容器(1)のシール性を高めることができる。しかも、容器(1)の変形等の外観上の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
j)胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体(2)の内側に位置する胴体用ブランク(20A)の内側端面が、胴体用ブランク(2)の両端縁部の熱融着性樹脂層(202)(203)どうしを熱融着する際に形成された内側樹脂溜まり部(R1)によって被覆されている場合には、内容物に晒されることがないので、同内側端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制され、また、衛生面でも好ましい。また、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体(2)の外側に位置する胴体用ブランク(20A)の外側端面が、胴体用ブランク(2)の両端縁部の熱融着性樹脂層(202)(203)どうしを熱融着する際に形成された外側樹脂溜まり部によって被覆されている場合には、同外側端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
【0038】
[第2の実施形態]
図9および図10は、この発明の第2の実施形態に係るコップ状容器(1X)およびその製造方法を示したものである。
この実施形態は、以下の点を除いて、図1図8に示す第1の実施形態のコップ状容器(1)およびその製造方法と実質的に同じである。
すなわち、図9および図10に示すように、この実施形態のコップ状容器(1X)では、胴体用ブランク(20A)の両端縁部のうち胴体(2)の内側となる端縁部(204)が、胴体(2)の外側となる胴体用ブランク(20A)の面と重なるように折り返されて同面に熱融着されているとともに、折り返された端縁部(204)と、もう一方の端縁部(205)とがオーバーラップさせられて、これら(204)(205)の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)どうしが熱融着されている。
上記のコップ状容器(1X)によれば、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端面が容器(1X)に収容された内容物と接触することがないので、デラミネーションや腐食等の発生が抑制され、また、内容物と接触する面を1種類の樹脂で構成することができるため、殺菌が容易となり、衛生面でも有利である。
なお、折り返された端縁部(204)の折り返し幅と、両端縁部(204)(205)のオーバーラップ幅とは、図示のようにほぼ同一とする他、互いに異なるようにすることも可能である。
【0039】
上記のコップ用容器(1X)を製造するに当たり、胴体(2)を形成する第5の工程は、以下のようにして行われる。
すなわち、胴体用ブランク(20A)の両端縁部のうち胴体(2)の内側となる端縁部(204)を、胴体(2)の外側となる胴体用ブランク(20A)の面と重なるように折り返すとともに、折り返された端縁部(204)ともう一方の端縁部(205)とをオーバーラップさせ、これら(204)(205)の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)どうしを計2回熱融着する。
1回目の熱融着は、通常、熱板等を用いたヒートシールによって行うが、その他、高周波シールや超音波シール等により行ってもよい。そして、2回目の熱融着は、高周波シールによって行う。以上のような2段階の熱融着により、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易くなり、さらには熱融着に伴う変形等の発生が抑制される。
【0040】
[第3の実施形態]
図11および図12は、この発明の第3の実施形態に係るコップ状容器(1Y)およびその
製造方法を示したものである。
この実施形態は、以下の点を除いて、図1図8に示す第1の実施形態のコップ状容器(1)およびその製造方法と実質的に同じである。
すなわち、図11および図12に示すように、この実施形態のコップ状容器(1Y)では、
胴体(2)が、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしを合掌状に重ねて接合することにより筒状に成形されている(図12(a)参照)。より詳細には、胴体用ブランク(20A)の合掌状に重ねられた両端縁部がこれらの内側熱融着性樹脂層(202)どうしを熱融着することにより接合されている。
また、胴体(2)の合掌部(21Y)は、胴体(2)の外面と重なるように一方の側に折り曲げられて同外面に熱融着されている(図12(b)参照)。
上記のコップ状容器(1Y)によれば、胴体(2)の合掌部(21Y)において、胴体用ブランク(20A)の両端面が容器(1Y)に収容された内容物と接触することがないので、デラミネーションや腐食等の発生が抑制される。また、同容器(1Y)によれば、内容物と接触する面を1種類の樹脂で構成することができるため、殺菌が容易となり、衛生面でも有利である。
また、上記のコップ状容器(1Y)によれば、胴体(2)の合掌部(21Y)が一方の側に折り曲げられて胴体(2)の外面に熱融着されているので、同部分のシール性およびバリア性が向上する。しかも、同コップ状容器(1Y)によれば、合掌部(21Y)が外側に張り出さないので、外観が向上し、持ちやすくなる。
胴体(2)の合掌部(21Y)の幅(重なり代)は、好適には5~20mm、より好適には10~18mmとなされる。上記幅が5mm未満であると、合掌部(21Y)のシール作業が困難になるおそれがある。一方、上記幅が20mmを超えると、必要以上に合掌部(21Y)の幅が大きくなってコストアップにつながり、さらに、合掌部(21Y)を胴体(2)の外面と重なるように一方の側に折り曲げて同外面に接合する際に合掌部(21Y)にシワが入るなどの外観不良が発生するおそれがある。
【0041】
上記のコップ用容器(1Y)を製造するに当たり、胴体(2)を形成する第5の工程は、以下のようにして行われる。
すなわち、胴体用ブランク(20A)の両端縁部を合掌状に重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)どうしを1回目の熱融着を行って接合することにより、合掌部(21Y)を有する筒状の胴体(2)を形成する。1回目の熱融着は、通常、熱板等を用いたヒートシールによって行うが、その他、高周波シールや超音波シール等により行ってもよい。
次いで、合掌部(12Y)を一方の側に折り曲げて胴体(2)の外面に重ね、この状態で、高周波シールにより2回目の熱融着を行う。それによって、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)どうしが更に熱融着されると同時に、折り曲げられた合掌部(21Y)の内側面およびこれと重なる胴体(2)の外面を構成している外側熱融着性樹脂層(203)どうしが熱融着されて、合掌部(21Y)が胴体(2)の外面に接合される。
以上のような2段階の熱融着により、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に樹脂溜まりが形成され易くなり、さらには熱融着に伴う変形等の発生が抑制される。
なお、ヒートシールおよび高周波シールを行う際の好適な条件は、前述した第1の実施形態の第4工程の場合と同じである。
【実施例
【0042】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例1>
厚さ100μmのアルミニウム箔(A8021H-O)の化成処理が施された両面に、それぞれ2液硬化型ウレタン系接着剤を約3g/m塗布して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をドライラミネートした。そして、接着剤を硬化させるために所定のエージング処理を行うことにより、積層体を得た。
次に、得られた積層体を所定形状に打ち抜いて、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを成形した(図5および図6参照)。
そして、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを用いて、前述した第1の実施形態と同一の工程により、図1および図2に示す形態のコップ状容器を作製し、これを実施例1とした。
コップ状容器は、厚さ100μmのアルミニウム箔を使用しているので、酸素や水蒸気の透過がほとんど無い、バリア性の良好な容器である。
尚、コップ状容器の寸法は下記の通りとした。
・コップ状容器上部の開口部の内径:65mm
・コップ状容器下部の内径:50mm
・フランジ部の幅:4mm
・コップ状容器の高さ:95mm
・コップ状容器の脚部(垂下部(32))の高さ:6mm
・胴体のオーバーラップ部の幅(重なり代):8mm
また、コップ状容器の作製に当たり、胴体を形成する第4の工程、胴体と底体とを一体化する第5の工程のそれぞれにおいて、2段階の熱融着については、以下のシール条件によって実施した。
[1回目の熱融着]
・使用機器:ヒートシーラー
・シール温度:180℃
・シール時間:2sec
・荷重:150kgf
[2回目の熱融着]
・使用機器:高周波シール装置(株式会社BME製、型式BMD-1S)
・出力設定:0.75kW
・シール時間:3.0sec
・荷重:100kgf
・コイル距離:5mm
【0044】
<比較例1>
胴体を形成する第4の工程、胴体と底体とを一体化する第5の工程のそれぞれにおいて、実施例1の1回目の熱融着と同じ条件で1回のみ熱融着を行い、その他は実施例1と同じ要領にてコップ状容器を作製し、これを比較例1とした。
【0045】
<容器のシール性の検証>
上記実施例1および比較例1のコップ状容器を10ずつ個用意し、それぞれに50ccの赤インキで着色した水を入れた状態で120分間放置した後、胴体のオーバーラップ部または胴体の下端部と底体の垂下部とのシール部分から水が漏れているかどうかを、これらの部分に着色が見られるか否かを目視で確認することにより行った。
実施例1の場合、いずれの容器にも、胴体のオーバーラップ部および胴体の下端部と底体の垂下部とのシール部分に着色は見られなかった。
一方、比較例1では、2つの容器において、胴体のオーバーラップ部に着色が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明は、例えば流動状食品や飲料等を内容物とするコップ状容器の製造方法として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
(1)(1X)(1Y):コップ状容器
(2):胴体
(2a):胴体の下端部
(21):オーバーラップ部
(21Y):合掌部
(23):フランジ部
(20A):胴体用ブランク
(20):積層体
(201):金属箔層
(202):内側熱融着性樹脂層
(203):外側熱融着性樹脂層
(3):底体
(31):底部
(32):垂下部
(30A):底体用ブランク
(30):積層体
(301):金属箔層
(302):上側熱融着性樹脂層
(303):下側熱融着性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12