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特許7565209ICチップ搭載装置、ICチップ搭載方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ICチップ搭載装置、ICチップ搭載方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241003BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20241003BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20241003BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
G06K19/077 136
G06K19/077 212
G06K19/077 280
H05K13/04 B
H05K13/08 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020216457
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2021106266
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019235417
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】前田 禎光
(72)【発明者】
【氏名】竹葉 誠
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-339502(JP,A)
【文献】特開2008-77599(JP,A)
【文献】特開2008-123406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
G06K 19/077
H05K 13/04
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にインレイ用の複数のアンテナが連続的に形成されているアンテナ連続体の各アンテナの所定の基準位置に向けて、接着剤を吐出する吐出部と、
第1位置と第2位置の間を移動可能であって、前記第1位置にあるときにICチップを吸着するとともに、前記第2位置にあるときに前記ICチップを各アンテナの前記基準位置にある前記接着剤上に配置するように構成されているノズルと、
前記ノズルが前記第1位置から前記第2位置に移動する間に、前記ノズルにICチップが吸着されているか否か判定する判定部と、
前記判定部によって前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズルを前記第2位置から離間させるように移動させる移動機構と、
を備えた、ICチップ搭載装置。
【請求項2】
前記ノズルが前記第1位置から前記第2位置の間の所定の位置にあるときの前記ノズルの画像を取得する画像取得部を備え、
前記判定部は、前記画像取得部によって取得された画像に基づいて、前記ノズルにICチップが吸着されているか否か判定する、
請求項1に記載されたICチップ搭載装置。
【請求項3】
前記アンテナ連続体を所定の搬送面上で搬送する搬送部と、
前記ノズルが取り付けられているノズル取付部と、
前記搬送面に直交する平面上で前記ノズルが環状軌道を動き、かつ前記ノズルが前記第2位置にあるときの前記ノズルの移動方向が前記アンテナ連続体の搬送方向と一致するように、前記ノズル取付部を回転させる回転部と、を備えた、
請求項1又は2に記載されたICチップ搭載装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズル取付部を前記アンテナ連続体の幅方向に移動させる、
請求項3に記載されたICチップ搭載装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズルを前記回転部の回転中心に向かって移動させる、
請求項3に記載されたICチップ搭載装置。
【請求項6】
前記ノズル取付部には、複数の前記ノズルが取り付けられており、
前記判定部は、ICチップが吸着されているか否かを各ノズルに対して判定し、
前記移動機構は、複数の前記ノズルのうちICチップが吸着されていないと判定されたノズルを移動させる、
請求項3から5のいずれか一項に記載されたICチップ搭載装置。
【請求項7】
ディスペンサによって、基材上にインレイ用の複数のアンテナが連続的に形成されているアンテナ連続体の各アンテナの所定の基準位置に向けて、接着剤を吐出し、
第1位置と第2位置の間を移動可能なノズルが前記第1位置にあるときに、当該ノズルによってICチップを吸着し、
前記ノズルが前記第1位置から前記第2位置に向かって移動する間に、前記ノズルにICチップが吸着されているか否か判定し、
前記ノズルにICチップが吸着されていると判定された場合、前記ノズルが前記第2位置にあるときに、前記ノズルによって、吸着されているICチップを各アンテナの前記基準位置にある前記接着剤上に配置し、
前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズルを前記第2位置から離間させるように移動させる、
ICチップ搭載方法。
【請求項8】
前記ノズルが前記第1位置から前記第2位置の間の所定の位置にあるときの前記ノズルの画像を取得し、
取得した前記画像に基づいて、前記ノズルにICチップが吸着されているか否か判定する、
請求項7に記載されたICチップ搭載方法。
【請求項9】
前記アンテナ連続体を所定の搬送面上で搬送し、
前記搬送面に直交する平面上で前記ノズルが環状軌道を動き、かつ前記ノズルが前記第2位置にあるときの前記ノズルの移動方向が前記アンテナ連続体の搬送方向と一致するように、前記ノズルが取り付けられている前記ノズル取付部を回転させる、
請求項7又は8に記載されたICチップ搭載方法。
【請求項10】
前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズル取付部を前記アンテナ連続体の幅方向に移動させる、
請求項9に記載されたICチップ搭載方法。
【請求項11】
前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズルが前記第1位置から前記第2位置に向かって移動するときの回転中心に向かって移動させる、
請求項9に記載されたICチップ搭載装置。
【請求項12】
複数の前記ノズルが取り付けられている前記ノズル取付部を回転させ、
ICチップが吸着されているか否かを各ノズルに対して判定し、
複数の前記ノズルのうちICチップが吸着されていないと判定されたノズルを移動させる、
請求項9から11のいずれか一項に記載されたICチップ搭載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ搭載装置、および、ICチップ搭載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグの普及に伴い、アンテナと当該アンテナに電気的に接続されるICチップとを有するシート状のインレイの生産が拡大している。インレイを製造するには、基材上に形成されたアンテナにおいて、ICチップを搭載するための基準となるアンテナ上の所定の基準位置に対して接着剤を設けるとともにICチップを当該基準位置に配置し、次いで接着剤を硬化させてICチップを固定する。
例えば特許文献1には、同期ローラの吸着孔にICチップを吸着させた状態で同期ローラを回転させ、同期ローラが所定の位置においてフィルム基板とICチップを当接させ、吸着孔からICチップをリリースしてフィルム基板上にICチップを搭載することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-209144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ICチップを吸着させてICチップを保持し、当該ICチップをアンテナの基準位置に搭載する方法では、ICチップを吸着し損なった場合に基材及び/又はICチップ搭載装置を汚染する虞がある。例えば、ICチップを吸着し損なったノズルから、ICチップを放出するために空気を排出する場合、基材上に形成されたアンテナ上の硬化前の低粘度の接着剤が飛散することによって基材及び/又はICチップ搭載装置を汚染する可能性がある。
そこで、本発明のある態様は、インレイの製造工程においてICチップ搭載装置によりアンテナにICチップを搭載するときに、基材及び/又はICチップ搭載装置の汚染を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、基材上にインレイ用の複数のアンテナが連続的に形成されているアンテナ連続体の各アンテナの所定の基準位置に向けて、接着剤を吐出する吐出部と、第1位置と第2位置の間を移動可能であって、前記第1位置にあるときにICチップを吸着するとともに、前記第2位置にあるときに前記ICチップを各アンテナの前記基準位置にある前記接着剤上に配置するように構成されているノズルと、前記ノズルが前記第1位置から前記第2位置に移動する間に、前記ノズルにICチップが吸着されているか否か判定する判定部と、前記判定部によって前記ノズルにICチップが吸着されていないと判定された場合、前記ノズルを前記第2位置から離間させるように移動させる移動機構と、を備えたICチップ搭載装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、インレイの製造工程においてICチップ搭載装置によりアンテナにICチップを搭載するときに、基材及び/又はICチップ搭載装置の汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のアンテナの平面図とそのICチップ搭載前後の部分拡大図である。
図2】アンテナシートと、アンテナシートを巻回したロール体とを示す図である。
図3】実施形態のICチップ搭載装置においてICチップ配置工程に対応する部分を示す図である。
図4】チップ包含テープとその拡大断面を示す図である。
図5】実施形態のICチップ搭載装置におけるロータリーマウンタの側面図である。
図6】ロータリーマウンタに搭載されるノズルユニットの平面図および側面図である。
図7】ロータリーマウンタとアンテナシートとの関係を概略的に説明する図である。
図8】チップ包含テープが分離ローラによって分離される状態を示す斜視図である。
図9】チップ包含テープからノズルユニットにICチップが供給される動作を説明する図である。
図10】ロータリーマウンタの幅方向の移動機構を示す正面図である。
図11】ロータリーマウンタを制御する制御部の機能ブロック図である。
図12】撮像装置によって撮像された画像の例を示す図である。
図13】ノズルに吸着されたICチップをノズルの回転前後で例示する図である。
図14】ロータリーマウンタの動作を説明する図である。
図15】ロータリーマウンタの動作を説明する図である。
図16】ロータリーマウンタの動作の変形例を説明する図である。
図17】実施形態のICチップ搭載装置において硬化工程に対応する部分を示す図である。
図18図17の矢視Jから見た押圧ユニットの一部と紫外線照射器を示す図である。
図19】一実施形態のアンテナシートの搬送方法を示す図である。
図20】一実施形態のICチップ配置工程を説明する図である。
図21】一実施形態の硬化工程を説明する図である。
図22図21における紫外線硬化ユニットの構成例を示す図である。
図23】一実施形態の硬化工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係るICチップ搭載装置およびICチップ搭載方法について、図面を参照して説明する。
実施形態に係るICチップ搭載装置1は、RFIDインレイ等の非接触通信用インレイを製造する際に、薄膜状のアンテナに対してICチップを搭載する装置である。
図1には、所定のアンテナパターンを有する例示的なアンテナANが示されるが、当該アンテナパターンに限定する意図ではない。図1にはまた、アンテナANにICチップCが搭載される前と搭載された後のE部の拡大図を示している。この例では、アンテナパターンを基準として予め決定されている所定の基準位置PrefにICチップCが搭載される。ICチップCは、例えば縦および横のサイズは数百μmと極めて小さく、この極小サイズのICチップCを正確に基準位置Prefに搭載することが求められる。
【0009】
アンテナANにICチップCを搭載するには、アンテナANの基準位置Prefに向けて接着剤を塗布し、当該接着剤上にICチップCを配置するICチップ配置工程と、接着剤を硬化させてアンテナANとICチップCの接続を強固にする硬化工程とが必要となる。
【0010】
後述するICチップ配置工程には、図2に示すように、複数のアンテナANが一定のピッチで基材BM上に形成された帯状のアンテナシートAS(アンテナ連続体の一例)を巻回したロール体PRが設置される。ロール体PRから継続的にアンテナシートASが引き出され、ICチップ配置工程のラインに投入される。
基材BMの材料は、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、コート紙、アート紙のような紙基材、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)を素材とした合成樹脂フィルムや、前記の合成樹脂を複数種組み合わせたシート、合成樹脂フィルムと紙とを合わせた複合シートも使用できる。
アンテナANは、例えば、基材BMに金属箔を貼り付ける、又は、基材BMに導電材料を所定のパターンでスクリーン印刷若しくは蒸着すること等により形成される。
【0011】
なお、以下の説明では、図2に示すように、XYZ座標系を定義する。以下の説明では、各工程に配置された状態の図について言及するときには、YZ平面で見た図を正面図、XY平面で見た図を平面図、XZ平面で見た図を側面図という。
X方向は、ロール体PRから引き出されたアンテナシートASが以下で説明される各工程において搬送される方向であり、適宜、搬送方向D1ともいう。また、Y方向は、アンテナシートASの幅方向であり、適宜、幅方向D2ともいう。Z方向は、アンテナシートASと直交する方向である。
【0012】
(1)ICチップ配置工程
以下、ICチップ配置工程について、図3図10を参照して説明する。図3は、実施形態のICチップ搭載装置1においてICチップ配置工程に対応する部分を示す図である。図4は、チップ包含テープCTの平面図とそのA-A断面の拡大図を示す。
ICチップ配置工程では、ICチップ搭載装置1により、アンテナシートAS上の各アンテナANの基準位置Pref(図1参照)に対して、極めて小さいICチップを精度良く配置することが可能である。
【0013】
図3に示すように、ICチップ配置工程においてICチップ搭載装置1は、コンベア81と、ディスペンサ2と、ロータリーマウンタ3と、紫外線照射器41と、撮像装置CA1~CA3と、テープフィーダ71と、テープ本体巻取りリール72と、フィルム巻取りリール73と、分離ローラ74と、を含む。
【0014】
コンベア81(搬送部の一例)は、ロール体PR(図2参照)から引き出されるアンテナシートASを、工程の下流に向けて所定の搬送速度で搬送する。コンベア81の上面が搬送面に相当する。
ディスペンサ2(吐出部の一例)は、搬送される各アンテナANの基準位置Prefに向けて定量の異方性導電ペースト(ACP(Anisotropic Conductive Paste);以下、単に「導電ペースト」という。)を吐出する。この導電ペーストは、紫外線硬化型の接着剤の一例である。ディスペンサ2は、各アンテナANの基準位置Prefに対して正確に吐出位置を位置決めするために、吐出位置を幅方向に調整可能に構成されている。
【0015】
撮像装置CA1は、ディスペンサ2よりも上流に設けられ、導電ペーストを塗布する位置を決定するために、各アンテナANの基準位置Prefの近傍の部分の画像を撮像する。撮像装置CA2は、ディスペンサ2よりも下流に設けられ、各アンテナANに対する導電ペーストの塗布の有無を検査するとともに、導電ペーストが正確に基準位置Prefを含む領域に塗布されたか否かを検査するために、各アンテナANの基準位置Prefの近傍の部分の画像を撮像する。
【0016】
ロータリーマウンタ3は、各アンテナANに塗布された導電ペースト上にICチップを配置するチップマウンタであり、図3の反時計回りに回転する。ロータリーマウンタ3は懸架板86に取り付けられ、かつ懸架される。懸架板86は、支持台85にY方向に移動可能に支持される。それによって、ロータリーマウンタ3は、支持台85に上から懸架され、かつY方向に移動可能な構造となっている。
後述するように、ロータリーマウンタ3は、チップ包含テープからICチップを吸着し、アンテナシートAS上の各アンテナANの基準位置Prefに向けて、吸着したICチップを放出して配置(搭載)する。このとき、ICチップを正確にアンテナANの基準位置Prefに配置するために、吸着したICチップの位置および向きを補正する処理を行う。撮像装置CA3は、ICチップをアンテナANに搭載するに際してICチップの位置および向きを補正する補正処理のため、および、吸着されたICチップを退避させるために、ノズル(後述する)に吸着された状態のICチップを撮像する。撮像装置CA3は、画像取得部の一例である。
【0017】
テープフィーダ71は、ICチップを包含するチップ包含テープが巻回された状態で装填され、図3の矢印の方向にロータリーマウンタ3と同期した速度で順次、チップ包含テープを引き出すように構成される。
ここで、図4を参照して、チップ包含テープの一例について説明する。
図4に示すように、チップ包含テープCTは、ICチップCを包含する凹みTdが一定の間隔で形成されたテープ本体Tと、凹みTdを塞ぐようにしてテープ本体Tに貼着されている被覆フィルムCFと、を含む。凹みTdは、例えば、テープ本体Tにエンボス加工を施すことにより形成される。チップ包含テープCTの延伸方向に沿ってICチップCが各凹みTd内に包含されている。チップ包含テープCTの延伸方向には、一定の間隔で取付孔Hが形成されている。この取付孔Hは、分離ローラ74の周面に対する正確な位置決めを行うために設けられており、チップ包含テープCTが分離ローラ74に搬送されるときに、分離ローラ74に設けられる突起74p(後述する)に挿入される。
【0018】
図4に示すように、凹みTdの底面とテープ本体Tの裏面(被覆フィルムCFが接着されている面とは反対側の面)の間には、吸着孔Tsが形成されている。吸着孔Tsは、被覆フィルムCFを剥離したときに凹みTdからICチップCが落下しないように、分離ローラ74によってICチップCを吸着するために設けられている。
【0019】
再度図3を参照すると、分離ローラ74において、テープフィーダ71から1又は複数の補助ローラを経て供給されるチップ包含テープCTから被覆フィルムCFが剥離され、テープ本体Tと被覆フィルムCFに分離される。被覆フィルムCFが剥離されて露出したICチップCは、ロータリーマウンタ3に設けられる各ノズルに順次吸着される。
分離ローラ74によってチップ包含テープCTがテープ本体Tと被覆フィルムCFに分離された後、テープ本体Tは、1又は複数の補助ローラを経てテープ本体巻取りリール72に巻き取られ、被覆フィルムCFは、1又は複数の補助ローラを経てフィルム巻取りリール73に巻き取られる。
【0020】
次に、図5図7を参照して、ロータリーマウンタ3について説明する。
図5は、実施形態のICチップ搭載装置1におけるロータリーマウンタ3の側面図である。図6Aは、ロータリーマウンタ3に搭載されるノズルユニットの平面図である。図6Bは、ノズルユニット30の側面図である。図7は、ロータリーマウンタ3とアンテナシートASとの関係を概略的に説明する図である。
【0021】
図5に示すように、ロータリーマウンタ3には、ロータリーヘッド3H(ノズル取付部の一例)から放射状に複数(図示の例では12個)のノズルユニット30-1~30-12が配設される。以下の説明では、ノズルユニット30-1~30-12に対して共通する事項に言及するときには、総称してノズルユニット30と表記する。
ロータリーヘッド3Hについて詳細は図示しないが、図5の反時計回りにノズルユニット30-1~30-12を回転させる回転駆動モータ(後述する回転駆動モータM31)と、ノズルユニット30にICチップを吸着させるための真空ポンプと、ノズルユニット30からICチップを放出するためのブロワと、に接続されている。
【0022】
図6を参照すると、ノズルユニット30は、ノズル32、スリーブ33、電磁弁35、および、シリンダ駆動モータM30を備える。ノズル32は、ノズルユニット30の先端に設けられており、スリーブ33内でシリンダ駆動モータM30と連結されている。シリンダ駆動モータM30は、ノズル32をその軸回りに回転させるモータ(例えばステッピングモータ)である。ノズル32には、吸気管36および排気管37と連通可能な通路が形成されている。
スリーブ33には、吸気管36および排気管37が連結されている。吸気管36は真空ポンプ(図示せず)に接続され、排気管37はブロワ(図示せず)に接続される。
電磁弁35は例えば3ポート電磁弁であり、電磁弁35に対する通電状態に応じて、ノズル32の通路34と吸気管36との間を開路として排気管37を閉路とするか、あるいは、ノズル32の通路34と排気管37との間を開路として吸気管36を閉路とするように構成されている。電磁弁35は、吸気管36を通してノズル32により吸引する吸引動作、又は、排気管37を通してノズル32から空気を排出する排出動作のいずれかを行うように構成されている。
【0023】
図7を参照すると、図示しない回転駆動モータによってロータリーヘッド3Hが反時計回りに回転させられ、それによって各ノズルユニット30のロータリーヘッド3Hの周上における位置が順次切り替わる。つまり、特定のノズルユニット30は、ロータリーヘッド3Hの回転に応じて、搬送面に直交する平面上で環状軌道を動くように、位置PAから反時計回りに位置PLまでのロータリーヘッド3Hの周上の12個の位置PA~PLの各々に順に位置することになる。
【0024】
ここで、位置PA(第1位置の一例)は、ノズルユニット30がチップ包含テープCTから新たにICチップCを吸着する位置である。位置PEは、ノズルユニット30のノズルに吸着された状態のICチップCの画像が撮像装置CA3によって撮像される位置である。
位置PK第2位置の一例)は、搬送されるアンテナシートAS上のアンテナANに塗布されている導電ペースト上に、吸着したICチップCを放出する位置である。位置PKでは、ノズル先端の移動方向がアンテナシートASの搬送方向D1と一致する。位置PKでは、ICチップCを放出するためにノズルユニット30のノズルから空気を排出する。
位置PLでは、ICチップCを位置PKで放出済みであるため、ノズルユニット30はICチップCを吸着していない。なお、位置PLでは、ノズルに付着しうるゴミを除去するためにノズルから空気を放出してもよい。図7には、ノズルから放出されうるゴミを収集するために位置PLにゴミ収集トレイTRが配置された例が示される。
【0025】
例えば、図7において位置PAにあるノズルユニット30-1は、そこでICチップCを新たに吸着し、ICチップCを吸着したまま反時計回りに回転して、位置PKに達するとICチップCを放出し、位置PAに戻ると再度新たなICチップCを吸着することを繰り返し行う。かかるICチップ搭載方法では、アンテナシートASの搬送を止めることなく連続的にICチップを各アンテナANに配置することができ、生産性が高い。
【0026】
順に位置PKに到達するノズルユニット30が、上流から搬送されるアンテナシートASの各アンテナANの基準位置Prefに向けてICチップCを放出するように、ロータリーヘッド3Hの角速度とアンテナシートASの搬送速度が設定され、又は制御される。確実なICチップCの配置のために、位置PKに近傍のノズルユニット30の先端の速度とアンテナシートASの搬送速度とが等速となる区間を設けることが好ましい。
【0027】
なお、本実施形態では、ロータリーヘッド3Hに12個のノズルユニット30が配設されている例が示されるが、その限りではない。ロータリーヘッド3Hに配設されるノズルユニット30の数は任意に設定可能である。
【0028】
次に、図8および図9を参照して、ICチップCがノズルユニット30によって吸着される動作について説明する。
図8は、チップ包含テープCTが分離ローラ74によって分離される状態を示す斜視図である。図9は、分離ローラ74の近傍の側面図であり、チップ包含テープCTからノズルユニット30にICチップCが供給される動作を説明する図である。図9では、チップ包含テープCTの状態がわかるように、チップ包含テープCTのみ断面で示してある。
【0029】
図8に示すように、テープフィーダ71から供給されるチップ包含テープCTの取付孔Hに分離ローラ74の突起74pが挿入されることで、チップ包含テープCTの幅方向の位置決めが行われた状態でチップ包含テープCTが搬送される。このとき、分岐部材75によってチップ包含テープCTの被覆フィルムCFが剥離されてフィルム巻取りリール73に向かう。他方、チップ包含テープCTのテープ本体Tは、テープ本体巻取りリール72に向かう。
【0030】
図9に示すように、被覆フィルムCFが剥離されて露出したICチップCは、直ちにノズルユニット30によって吸着される。このとき、ICチップCが露出してからノズルユニット30によって吸着されるまでの僅かな時間にICチップCが落下しないように、分離ローラ74には、分離ローラ74の回転中心に向かってICチップCを吸引するための吸引路(図示せず)が設けられる。この吸引路とテープ本体Tに設けられている吸着孔Ts(図4参照)を通してICチップCが吸引される。
【0031】
次に、図10を参照して、ロータリーヘッド3Hを幅方向D2に移動させる移動機構8について説明する。図10は、移動機構8の正面図である。
移動機構8は、ノズルユニット30が吸着したICチップCの幅方向D2の位置を補正可能とするために設けられている。図10に示すように、移動機構8は、軸受76、シャフト77、懸架板86、ガイド板87、スライダ88、および、幅方向駆動モータM32を有する。
軸受76、シャフト77、および、幅方向駆動モータM32は、支持台85上に設けられている。シャフト77はねじ切り部分を有する棒状の部材であり、幅方向駆動モータM32によって回転駆動される。シャフト77は、支持台85の上面に固定された軸受76(2箇所)によって回転可能に支持されている。
ロータリーヘッド3Hは、懸架板86に取り付けられる。懸架板86の上端部は、ねじ切り加工が施された孔部(図示せず)が形成されており、この孔部がシャフト77のねじ切り部分と嵌合している。そのため、シャフト77の回転に応じて、懸架板86と、懸架板86に取り付けられたロータリーヘッド3Hとが、幅方向D2に移動可能である。なお、支持台85の上部とガイド板87には、懸架板86の幅方向D2の可動範囲において中空部分が設けられる。スライダ88は懸架板86に取り付けられており、懸架板86の幅方向D2の幅方向の移動に伴って、ガイド板87の上面をスライドする。
上述した構成により、移動機構8は、幅方向駆動モータM32の回転駆動に応じて、ロータリーヘッド3Hを幅方向D2に変位可能とする。
【0032】
本実施形態では、移動機構8によってロータリーヘッド3Hを幅方向D2に移動させることで、ロータリーヘッド3Hに取り付けられているノズルユニット30を幅方向D2に移動させる例が示されるが、その限りではない。例えば、ロータリーヘッドを幅方向D2に移動させることなく、ロータリーヘッドの内部で各ノズルユニット30が個別に幅方向D2に変位可能となるようにロータリーヘッドを構成してもよい。
【0033】
再度、図3を参照すると、ロータリーマウンタ3のノズルユニット30からアンテナANにICチップが放出される位置(図7の位置PK)の近傍には、紫外線照射器41が設けられる。
紫外線照射器41は、搬送されるアンテナAN上の導電ペーストに対して紫外線を照射するように構成される。紫外線照射器41による紫外線の照射は、ICチップ配置工程の後工程である硬化工程で行われる紫外線照射(後述する)とは目的が異なり、アンテナAN上の導電ペーストの粘度を調整することを目的とする。その観点で、紫外線照射器41によって導電ペーストに与えられる紫外線の積算光量は、後の硬化工程で導電ペーストに与えられる紫外線の積算光量よりも少なくすることが好ましい。紫外線の積算光量は光線強度と照射時間の積で表されることから、積算光量を調整するには光線強度と照射時間の少なくともいずれかを調整すればよい。
【0034】
本実施形態のICチップ搭載装置1において、ディスペンサ2によってアンテナANにエポキシ系樹脂等の熱硬化型の接着剤を塗布し、紫外線照射器41に代えて熱硬化装置を設けてもよい。
【0035】
図3では、紫外線照射器41は、ICチップが配置された後に紫外線を照射するように配置されているが、その限りではない。紫外線照射器41は、ICチップが配置される前に紫外線を照射するように配置されてもよいし、ICチップが配置されるのと同時に紫外線を照射するように配置されてもよい。
ICチップが配置された後に紫外線を照射する場合には、導電ペーストの粘度が低下することによって、当該導電ペースト上に配置された後にICチップがずれる、若しくは傾くといったことが生じ難くなる。ICチップが配置される前、あるいはICチップが配置されるのと同時に紫外線を照射する場合には、粘度が低下した状態の導電ペーストにICチップが配置されることになるため、当該導電ペースト上に配置された後にICチップが移動し難くなるため、ICチップがずれる、若しくは傾くといったことが生じ難くなる。
いずれの場合も、ICチップが配置される近傍の位置で紫外線を照射することにより、導電ペーストの流動性に起因してICチップが導電ペースト上で安定しないという状況を回避することができる。すなわち、紫外線照射器41による照射を行うことでICチップの搭載精度を高めることができるという利点がある。
【0036】
次に、図11図13を参照して、ロータリーマウンタ3を制御する制御部100によって行われる制御について説明する。図11は、制御部100の機能ブロック図である。図12は、撮像装置CA1によって撮像された画像の例を示す。図13は、ノズル32に吸着されたICチップCをノズル32の回転前後で例示する図である。図13のノズルの回転前の状態は、撮像装置CA3によって撮像された画像の例を示している。図13のノズルの回転後の状態では、当該ノズルが位置PK(図7参照)にあるときのXYZ軸を示している。
【0037】
制御部100は、図示しない回路基板に実装されており、撮像装置CA1~CA3、ディスペンサ2、シリンダ駆動モータM30、回転駆動モータM31、幅方向駆動モータM32、電磁弁35、および、紫外線照射器41と電気的に接続されている。回転駆動モータM31(回転部の一例)は、ロータリーヘッド3Hにおいてノズルユニット30-1~30-12を回転させる駆動手段である。
制御部100は、マイクロコンピュータ、メモリ(RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory))、ストレージ、駆動回路群を含む。マイクロコンピュータは、メモリに記録されているプログラムを読み出して実行し、吐出位置調整手段101、ICチップ補正手段102、弁制御手段103、硬化実行手段104、および、ノズル退避手段105の各機能を実現する。
【0038】
吐出位置調整手段101は、撮像装置CA1によって撮像された画像に基づいて導電ペーストの吐出位置を決定し、導電ペーストの吐出タイミングおよびディスペンサ2の幅方向D2の位置を調整する機能を備える。導電ペーストの吐出位置の決定方法は、図12を参照すると、以下のとおりである。
撮像装置CA1によって撮像される画像は、図12に例示されるように、アンテナANの基準位置Prefの近傍の部分の画像である。
吐出位置調整手段101は、当該画像に含まれる形状の特徴部分から基準位置Prefを特定する。具体的には、吐出位置調整手段101は、図12の画像におけるアンテナANの形状を解析し、X方向において互いに平行な基準線L1,L2と、Y方向において互いに平行な基準線L3,L4を特定し、基準線L1,L2の中央の線と基準線L3,L4の中央の線の交点を基準位置Prefとして特定する。
【0039】
図12の画像中の点Pj1は、画像上の基準位置Prefの目標位置であり、撮像装置CA1による画像とディスペンサ2の導電ペーストの滴下位置との間でキャリブレーションを行った結果により予め決められた位置である。すなわち、画像上で特定された基準位置Prefが目標位置Pj1と一致するようにディスペンサ2の吐出タイミングと幅方向D2の位置とを調整することで、導電ペーストを実際のアンテナANの基準位置に塗布することができる。
図12の例では、画像上で特定された基準位置Prefが目標位置Pj1と一致するためには、X方向にx1、Y方向にy1だけ位置を調整する必要がある。具体的には、x1に基づいてアンテナANの搬送速度を考慮した、ディスペンサ2からの吐出タイミングが決定され、y1に基づいてディスペンサ2の幅方向D2の変位が行われる。つまり、吐出位置調整手段101は、ディスペンサ2に対して、吐出タイミングおよび幅方向D2の変位を指示するための制御信号を送信し、当該制御信号に基づいてディスペンサ2が吐出動作を行う。
【0040】
撮像装置CA2によって撮像される画像は、導電ペーストが塗布されている点を除き、図12と同様の画像である。
【0041】
ICチップ補正手段102は、ノズル32に吸着されたICチップを補正する機能を備える。ICチップの補正方法は、図12および図13を参照すると、以下のとおりである。
図13の回転前の状態に示すように、撮像装置CA3によって撮像された画像には、ノズル32のノズル端32eと、ノズル端32eに吸着されたICチップCとが含まれる。点Pc1は、ノズルの回転前のICチップCの中心位置である。図13の画像中の点Pj2は、画像上のICチップCの中心位置の目標位置であり、図12の目標位置Pj1と一致するように設定されている。つまり、ICチップCの中心位置を目標位置Pj1と一致させることで、搬送される実際のアンテナANの基準位置にICチップCを配置することができるようになっている。
【0042】
ノズル32の軸回りの回転中心Prcは、ノズルユニット30-1~30~12の取り付けばらつき等のために各ノズルの理論上の軸中心とはならない。回転中心Prcは各ノズルユニットによって異なり、例えば予め得られた実測データを基に特定される。
先ず、ノズル32の軸回りの回転中心Prcの回りに、画像に表れたICチップCの中心Pc1を回転させたときに、ICチップCの基準線(例えば、ICチップCの基準辺Sc)がY方向に平行となるまでの回転量が決定される。
図13の回転後の状態の例では、回転中心Prcの回りに、撮像された画像内のICチップCを回転させて、ICチップCの基準辺ScをY方向に平行になるようにする。このときの回転角がICチップCの回転方向の補正量として特定される。ここで、移動後のICチップCの中心位置を点Pc2とした場合、点Pc2を目標位置Pj2と一致させるため、X方向の補正量がx2、Y方向の補正量がy2として特定される。
【0043】
ICチップ補正手段102は、ノズル32の軸回りの回転方向の補正量に対応する制御信号をシリンダ駆動モータM30に送出し、それによって位置PE(撮像装置CA3によって撮像される位置)からICチップを放出する位置PKまでの間に、ノズル32が軸回りに回転する。
ICチップ補正手段102は、X方向の補正量x2に対応する制御信号を、回転駆動モータM31を駆動する駆動回路に送出し、それによってロータリーヘッド3Hの角速度が調整される。ICチップ補正手段102は、Y方向の補正量y2に対応する制御信号を、幅方向駆動モータM32を駆動する駆動回路に送出し、それによってロータリーヘッド3Hの幅方向D2の位置が調整される。ロータリーヘッド3Hの幅方向D2の位置が調整されることで、ノズル32の幅方向D2の位置も調整される。
【0044】
本実施形態のICチップ搭載装置1では、ICチップ補正手段102によってICチップのX方向、Y方向における位置、および、ノズルの軸に直交する平面でのICチップの向きの補正が行われるため、ICチップのアンテナの基準位置に対する搭載精度が非常に高いという利点がある。
【0045】
弁制御手段103は、ロータリーマウンタ3に含まれる12個のノズルユニット30-1~30-12の各々について、各ノズルユニット30の位置に応じて各ノズルユニット30から吸引するか、あるいは空気を排出するかのいずれかの動作を行うように、各電磁弁35を制御する。具体的には、弁制御手段103は、ノズルユニット30が位置PA~PJ(図7参照)に位置するときにはノズルユニット30から吸引するように電磁弁35を制御し、ノズルユニット30が位置PK,PLに位置するときにはノズルユニット30から空気を排出するように電磁弁35を制御する。
【0046】
硬化実行手段104は、搬送されているアンテナANの各々に対して、予め設定された積算光量で紫外線照射器41から紫外線が照射されるように、所定の駆動信号を紫外線照射器41に送出する。
【0047】
ノズル退避手段105は、ノズルユニット30が位置PAから位置PKに移動する間に、ノズルユニット30にICチップが吸着されているか否か判定し、ノズルユニット30にICチップが吸着されていない場合、ノズルユニット30を位置PK(第2位置の例)から離間させるように移動させる。ノズル退避手段105は、判定部の一例である。
【0048】
ここで、ノズル退避手段105に関連して、図14図16を参照して、ロータリーマウンタ3がICチップCを吸着し損なった場合の動作について説明する。図14および図15は、ロータリーマウンタ3がICチップCを吸着し損なった場合の動作について説明する図であり、図16はその変形例を示す図である。
【0049】
図14Aおよび図14Bにはそれぞれ、ある時点でのロータリーマウンタ3の側面図と正面図が示されている。図15Aおよび図15Bにはそれぞれ、次の時点でのロータリーマウンタ3の側面図と正面図が示されている。
図14に示す例では、位置PJにあるノズルユニット30-1がICチップCを吸着し損なった場合を想定する。図7を参照して説明したように、通常であれば各ノズルユニット30は、位置PKにあるときにICチップCを放出するために空気を排出する。しかし、図14に示す例では、ノズルユニット30-1がICチップCを吸着していないため、仮に、ノズルユニット30-1に対応するアンテナAN-2の直上で空気を排出したならば、当該空気によってアンテナAN-2に塗布されている導電ペーストが周囲に飛散する可能性がある。
そこで、本実施形態のICチップ搭載装置1では、ノズルユニット30にICチップCが吸着されていない場合、ノズルユニット30を位置PKから離間させるように移動させることが好ましい。それによって、搬送面上のアンテナシートAS及び/又はICチップ搭載装置1の汚染を防止することができる。
【0050】
具体的には、図15に示すように、移動機構8(図10参照)によってロータリーマウンタ3全体を幅方向D2(+Y方向)に移動させることによって、ノズルユニット30-1を位置PKから幅方向D2に離間させる。それによって、搬送面上のアンテナシートAS及び/又はICチップ搭載装置1の汚染を防止することができる。
なお、図15に示すようにロータリーマウンタ3を移動させた後、ノズルユニット30-1に続くノズルユニット30-2が吸着するICチップCをアンテナAN-3に配置するためにロータリーマウンタ3を再度アンテナシートAS上に復帰させる。
【0051】
図14および図15に示す動作を行う場合、ノズル退避手段105は、撮像装置CA3によって撮像される画像に基づいて位置PEに順次到達するノズルユニット30がICチップCを吸着しているか否か判定する。ICチップCを吸着しないノズルユニット30を検出した場合、当該ノズルユニット30が側面視で位置PKに到達するタイミングで移動機構8がロータリーマウンタ3を幅方向D2に移動させるように、移動機構8を制御する。
【0052】
図15に示した例では、ICチップを吸着していないノズルユニット30を位置PKから離間させるためにロータリーマウンタ3を幅方向D2に移動させる例を示したが、その限りではない。ICチップを吸着していないノズルユニット30のみを、位置PKから離間させてもよい。
例えば、図16に示す例では、各ノズルユニット30を半径方向に沿って退避させるように構成されたロータリーマウンタ3Aが示される。このロータリーマウンタ3Aでは、各ノズルユニット30に対して内部に退避領域3eが設けられており、ノズルユニット30をノズル軸Axに沿って半径方向に移動させることでノズルユニット30を退避領域3eに退避させることができるように構成されている。
ロータリーマウンタ3Aが適用される場合、図16に示すように、ICチップを吸着していないノズルユニットとして検出されたノズルユニット30-11を退避領域3eに退避させる。それによって、搬送面上のアンテナシートAS及び/又はICチップ搭載装置1の汚染を防止することができる。
【0053】
(2)硬化工程
次に、硬化工程について、図17および図18を参照して説明する。
硬化工程では、上述したICチップ配置工程を経た各アンテナに塗布されている導電ペーストを硬化させて、アンテナとICチップの物理的な接続を強固にするとともに、アンテナとICチップの電気的な導通を確実にする。
【0054】
図17は、実施形態のICチップ搭載装置1において硬化工程に対応する部分を示す図である。図18は、図17の矢視Jから見た押圧ユニット6の一部と紫外線照射器42を示す図である。
【0055】
図17に示すように、硬化工程においてICチップ搭載装置1は、コンベア82と、硬化装置4と、撮像装置CA4と、を含む。
コンベア82は、上流のICチップ配置工程から搬送されるアンテナシートASを、下流に向けて所定の搬送速度で搬送する。
撮像装置CA4は、硬化工程において最も上流側(つまり、ICチップ配置工程の最も下流側)において、アンテナシートASの上方に配置されており、ICチップ配置工程から搬送される各アンテナANの画像を撮像する。撮像装置CA4は、ICチップ配置工程においてICチップが適切な位置に配置されているか否かを検査するために設けられている。
【0056】
図17に示すように、硬化装置4は、1又は複数の押圧ユニット6と紫外線照射器42を有する。
押圧ユニット6は、搬送面に直交する方向に昇降動作し、アンテナANの導電ペースト上に配置されたICチップを、各アンテナANに紫外線を照射している間に押圧する。押圧ユニット6の数は問わないが、生産性とコストの観点から、任意の数に設定可能である。
紫外線照射器42は、搬送方向D1に沿って配置される。そのため、アンテナシートAS上の多くのアンテナANに対して同時に紫外線を照射することも可能である。
【0057】
図18を参照すると、各アンテナANに対して紫外線照射器42によって紫外線が照射される状態が示される。図18に示すように、押圧ユニット6は、シャフト63の先端に押圧部61が取り付けられた構造である。押圧ユニット6の押圧部61の側面(つまり、紫外線照射器42が配置される側の面)は開放している。押圧部61の押圧面を構成するガラス板61pは、紫外線を透過するガラスによって形成されている。
紫外線照射器42は、例えばLED(Light Emitting Device)等の光源42eを有する。光源42eは、搬送面に対して斜めに傾斜した方向からアンテナANに向けて紫外線を照射するように構成されている。
各アンテナANに塗布されている導電ペースト上のICチップを押圧しながら紫外線照射を行うことによって、各アンテナANに塗布されている導電ペーストが硬化し、アンテナとICチップの物理的な接続を強固になるとともに、アンテナとICチップの電気的な導通が確実になる。
【0058】
以上説明したようにして、複数のアンテナが一定のピッチで基材上に形成された帯状のアンテナシートがラインに投入され、ICチップ配置工程と硬化工程を経て、各アンテナ上にICチップが搭載される。本実施形態のICチップ搭載装置は、ICチップ配置工程においてアンテナの基準位置に向けて接着剤を塗布するとともに当該接着剤上にICチップを配置し、硬化工程において接着剤を硬化させてアンテナとICチップの接続を強固にする。特にICチップ配置工程では、ノズルユニットがICチップを吸着していない場合に、ノズルユニットからアンテナに向けてICチップを放出すべき位置において当該位置からノズルユニットを離間させるように移動させる。そのため、ノズルから放出される空気によってアンテナに配置される導電ペーストを飛散させることがないため、搬送面上のアンテナシート及び/又はICチップ搭載装置の汚染を防止することができる。
【0059】
なお、図14および図15に示した例では、移動機構8によりロータリーマウンタ3全体を幅方向に移動させることによりノズルユニットを位置PKから幅方向に離間させるようにしたが、その限りではない。ロータリーマウンタに含まれる複数のノズルユニットの各々が個別に幅方向に移動となるように構成してもよい。その場合には、ロータリーマウンタ3全体を幅方向に移動させるのではなく、対象となるノズルユニットのみを幅方向に移動させればよい。
【0060】
以上、ICチップ搭載装置、ICチップ搭載方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【0061】
例えば、図3に示した実施形態では、ICチップ配置工程において、アンテナシートASがコンベア81上を一方向に搬送される場合を示したが、その限りではない。
一実施形態では、図19に示すように、ICチップ配置工程において、吸着ドラム92,94と複数の搬送ローラ(例えば、図17では、搬送ローラ91,93,95)によりアンテナシートASを搬送してもよい。図19では、吸着ドラム92の最も高い位置で、アンテナシートASのアンテナANの基準位置にディスペンサ2により導電ペーストが吐出される。また、吸着ドラム94の最も高い位置で、導電ペースト上にICチップが配置される。この場合、少なくとも吸着ドラム92,94は、アンテナシートASの裏面を吸着する吸着ローラであることが好ましい。それによって、アンテナシートASの位置ずれ(特に、長手方向)を防止することができ、導電ペーストの吐出及びICチップの配置を精度良く行うことができる。
【0062】
一実施形態では、搬送されるアンテナシートAS状のアンテナANに塗布されている導電ペースト上にICチップを放出することに代えて、ICチップを導電ペーストに押し付けることによって配置してもよい。
図20は、ICチップを導電ペーストに押し付けることによって配置する場合のロータリーマウンタ3の動作を時系列で示している。一実施形態では、ロータリーマウンタ3の各ノズルユニット30は、内蔵される駆動装置により個別に放射方向(径方向)に移動可能に構成される。
状態ST1は、ノズルユニット30がICチップCを吸着した状態である。吸着したICチップCを配置するときには、状態ST2に示すように、ノズルユニット30を放射方向(径方向)に延びるように基準位置に向けて(つまり、下方向、すなわち図2のZ方向に)移動させ、アンテナANに塗布されている導電ペースト上にICチップCを押し付けることでICチップCを導電ペースト上に配置する。ICチップCを配置した後は、吸着を解除するとともに状態ST1の位置までノズルユニット30を戻す。例えば、ノズルユニット30が位置PK(図7参照)に達するタイミングで状態ST1~ST3の動作を行うことで、ICチップCがアンテナANに塗布されている導電ペースト上に配置される。
【0063】
一実施形態の硬化工程を図21に示す。図21には、一実施形態の硬化工程で使用される硬化装置4Aが示される。硬化装置4Aは、複数の紫外線硬化ユニット43が取付板44に取り外し可能に取り付けられている。アンテナシートASの隣接するアンテナANの間隔に応じて、取り付け位置が異なる複数の取付板44を用意しておき、当該間隔に応じて取付板44を取り替えることで、様々なアンテナシートASに対応させることができる。
支持軸45は、取付板44を支持し、取付板44を昇降可能に構成されている。ICチップ配置工程から搬送されてくるアンテナシートASは、搬送ローラ96~98を介して硬化工程に送られる。搬送ローラ97は、図示しない駆動装置によって昇降可能に構成されている。
【0064】
紫外線硬化ユニット43の構成例を図22に示す。図22に示すように、紫外線硬化ユニット43は、筐体431内に紫外線を照射するための光源432(例えばLED光源)を内蔵する。光源432は、紫外線硬化ユニット43の外部から提供されるケーブル436(図21には不図示)によって給電される。筐体431内には、光源432によって照射される紫外線を集光する集光レンズを設けてもよい。保持板434は、筐体431に連結されており、ガラス板435を保持する。光源432から照射される紫外線は、各アンテナANに塗布されている導電ペーストに照射され、導電ペーストを硬化させる。
【0065】
再度図21を参照すると、搬送状態は、ICチップ配置工程からアンテナシートASが搬送される状態を示している。未硬化の導電ペーストが塗布されているアンテナANが紫外線硬化ユニット43の直下に位置するタイミングで、アンテナシートASの搬送が停止される。そして、アンテナシートASの搬送が停止された状態(停止状態)において、紫外線硬化ユニット43を下方向に移動させてアンテナANをガラス板435により押圧しながら紫外線を照射し、導電ペーストを硬化させる。
【0066】
停止状態のときにおいてもICチップ配置工程からアンテナシートASが搬送されてくるため、紫外線を照射している間は搬送ローラ97が自重で降下し、搬送されてきたアンテナシートASを搬送ローラ96と搬送ローラ98の間で吸収する。紫外線の照射が終了すると、紫外線硬化ユニット43の数に相当するアンテナANを下流に急速に搬送させ、未硬化のアンテナANが紫外線硬化ユニット43の直下に位置するように停止させる。つまり、一実施形態の硬化工程では、アンテナシートASの搬送状態と停止状態(紫外線照射を行う状態)が繰り返し行われる。アンテナANを急速に搬送する際、搬送ローラ97は、アンテナシートASに加わった張力により上昇する。
【0067】
一実施形態の硬化工程は、熱硬化装置を用いて行ってもよい。すなわち、ディスペンサ2においてエポキシ系樹脂等の熱硬化型の接着剤を塗布した場合には、硬化工程では、熱硬化処理を行うことで接着剤を硬化させる。
図23は、図21と同様に、アンテナシートASの搬送状態と停止状態が繰り返し行われるように構成された硬化装置4Bである。硬化装置4Bは、硬化装置4Aとは異なり、複数の熱硬化ユニット46を備える。各熱硬化ユニット46には、不図示のケーブルにより電源が供給されて動作する熱源が配置される。アンテナシートASが停止状態のときには、支持軸45が下降するように駆動され、各熱硬化ユニット46が対応するアンテナANを押圧しながら接着剤を加熱して硬化させる。加熱が完了すると、支持軸45が上昇するように駆動されるとともに、アンテナシートASの搬送が行われる。
【0068】
なお、図21において、導電ペーストを紫外線により硬化させる場合、光源を内蔵した紫外線硬化ユニット43に代えて、ガラス板を介してアンテナANを押圧する押圧ユニットを用い、停止状態で押圧されているアンテナAN上の導電ペーストに対して幅方向外部や斜め上方から紫外線を照射する紫外線照射装置を設けてもよい。
一実施形態では、紫外線を照射するときにアンテナシートASを停止状態とすることがないように、複数の紫外線硬化ユニット43をアンテナシートASの進行速度と連動するように循環移動させ、アンテナANを押圧しながら内蔵する光源により紫外線を照射してもよい。
同様に、一実施形態では、導電ペーストを熱硬化させる場合、複数の熱硬化ユニット46をアンテナシートASの進行速度と連動するように循環移動させ、アンテナANを押圧しながら加熱するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ICチップ搭載装置、2…ディスペンサ、3…ロータリーマウンタ、3A…ロータリーマウンタ、3H…ロータリーヘッド、3e…退避領域、4,4A,4B…硬化装置、6…押圧ユニット、8…移動機構、30…ノズルユニット、32…ノズル、32e…ノズル端、33…スリーブ、34…通路、35…電磁弁、36…吸気管、37…排気管、41,42…紫外線照射器、42e…光源、43…紫外線硬化ユニット、44…取付板、45…支持軸、46…熱硬化ユニット、61…押圧部、61p…ガラス板、63…シャフト、71…テープフィーダ、72…テープ本体巻取りリール、73…フィルム巻取りリール、74…分離ローラ、74p…突起、75…分岐部材、76…軸受、77…シャフト、81,82…コンベア、85…支持台、86…懸架板、87…ガイド板、88…スライダ、91,93,95~98…搬送ローラ、92,94…吸着ドラム、100…制御部、101…吐出位置調整手段、102…ICチップ補正手段、103…弁制御手段、104…硬化実行手段、105…ノズル退避手段、AN…アンテナ、AS…アンテナシート、BM…基材、C…ICチップ、CA1~CA4…撮像装置、CF…被覆フィルム、CT…チップ包含テープ、H…取付孔、M30…シリンダ駆動モータ、M31…回転駆動モータ、M32…幅方向駆動モータ、PR…ロール体、T…テープ本体、TR…ゴミ収集トレイ、Td…凹み、Ts…吸着孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23