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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】カードリーダおよび取引装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/06 20060101AFI20241003BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06K13/06 A
G06K7/08 040
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020218244
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103545
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵治
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164809(JP,A)
【文献】実開昭50-081898(JP,U)
【文献】特開2009-037325(JP,A)
【文献】特開平06-103650(JP,A)
【文献】特開昭59-069881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/06
G06K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの挿入口が開口する前壁と、
前記挿入口から奥側に向けて延在する搬送路と、
前記挿入口に挿入されたカードを前記搬送路に沿って搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送されるカードから情報の読み取りを行う磁気ヘッドと、
前記前壁から奥側に向けて凹み、前記搬送路に沿って奥側に搬送されたカードの後端部の両面を内側で露出させる凹部と、
が設けられ
前記前壁および前記凹部が設けられた前カバーと、
前記前カバーの後側に連結されたフレームと、
を有し、
前記前カバーの内部のうち、前記凹部の側壁を介して前記凹部と隣り合う空間内に前記搬送機構および前記磁気ヘッドが配置されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
カードの挿入口が開口する前壁と、
前記挿入口から奥側に向けて延在する搬送路と、
前記挿入口に挿入されたカードを前記搬送路に沿って搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送されるカードから情報の読み取りを行う磁気ヘッドと、
前記前壁から奥側に向けて凹み、前記搬送路に沿って奥側に搬送されたカードの後端部の両面を内側で露出させる凹部と、
が設けられ、
前記搬送機構は、モータと、前記モータの回転出力が伝達される駆動ローラと、前記カードを前記駆動ローラとは反対側から支持する支持ローラと、を備え、
前記搬送機構は、前記モータおよび前記駆動ローラを支持する第1支持部材と、前記支持ローラを支持する第2支持部材と、を含み、
前記第1支持部材と前記第2支持部材は、前記第1支持部材および前記第2支持部材のうちの一方に形成された穴と、前記第1支持部材および前記第2支持部材のうちの他方に形成された長穴とを貫通する締結部材によって連結されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項3】
請求項に記載のカードリーダにおいて、
前記側壁と前記前壁との間には、前記凹部の間口を広げるように前記側壁および前記前壁の各々に対して斜めに傾いた傾斜壁が設けられていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項4】
請求項1または3に記載のカードリーダにおいて、
前記搬送機構は、モータと、前記モータの回転出力が伝達される駆動ローラと、前記カードを前記駆動ローラとは反対側から支持する支持ローラと、を備えることを特徴とするカードリーダ。
【請求項5】
請求項4に記載のカードリーダにおいて、
前記搬送機構は、前記モータおよび前記駆動ローラを支持する第1支持部材と、前記支持ローラを支持する第2支持部材と、を含み、
前記第1支持部材と前記第2支持部材は、前記第1支持部材および前記第2支持部材のうちの一方に形成された穴と、前記第1支持部材および前記第2支持部材のうちの他方に形成された長穴とを貫通する締結部材によって連結されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項6】
請求項2、4または5のうち何れか一項に記載のカードリーダにおいて、
前記磁気ヘッドと前記モータは、重ねて配置されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項7】
請求項6に記載のカードリーダにおいて、
前記磁気ヘッドと前記モータは、シールド板を介して重ねて配置されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項8】
請求項7に記載のカードリーダにおいて、
前記磁気ヘッドを揺動可能に支持する揺動部材を備え、
前記シールド板は、前記シールド板に加締により連結された軸状の連結部材を介して前記揺動部材と接続されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のカードリーダと、前記カードリーダを制御する上位装置を有することを特徴とする取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード挿入口から挿入されたカードを用いて取引等を行うためのカードリーダ、および取引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カードリーダは、カード挿入口から挿入されたカードに対して磁気情報の読み取り等を行う磁気ヘッドを有しており、ATM(Automatic Teller Machine:現金自動預け払い機)やPOSシステム(Point Of Sales System)等の取引装置に搭載される。かかるカードリーダにおいて、カードの挿入および引き抜きを手動で行う方式が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の手動式のタイプカードリーダでは、磁気ヘッドが配置されている部分とカードの両端が通過する部分以外をくり抜いた凹部を利用してカードの挿入や引き抜きを手動で行う。また、カードの後端が磁気ヘッドを通過する位置までカードを差し込むと、カードの先端が突き当たり、その位置でICカードとの通信が行われる。磁気データの読み取りは、カードの挿入時、およびカードを引き抜く際に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-113357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動式のカードリーダは、国内外において駐車場の精算機やドライブスルー式の取引装置等で使用されている。しかしながら、手動式のカードリーダは磁気リードを行うため、カードをできるだけ等速で挿入や引き抜きを行う必要があるが、車内から操作では、カードの挿入や引き抜きが不安定となり、磁気リードエラーが発生しやすいという欠点がある。このため、駐車場の精算機やドライブスルー式の取引装置等では、モータ式搬送のカードリーダを搭載することが好ましいが、従来のモータ式搬送のカードリーダは構造上、カードが完全に内部に取り込まれるため、カードの引き抜きを手動で行うことができない。一方、屋外に設置する機器のように、店員のいない無人環境で用いられる機器では、不具合が発生した際にカードの引き抜きを手動で行えることが望まれており、カードが完全に内部に取り込まれるモータ式搬送のカードリーダは敬遠されるという事情がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、カードの挿入等を適正に行うことができるとともに、カードの引き抜きを手動で行うことができるカードリーダ、および取引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係るカードリーダは、カードの挿入口が開口する前壁と、前記挿入口から奥側に向けて延在する搬送路と、前記挿入口に挿入されたカードを前記搬送路に沿って搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送されるカードから情報の読み取りを行う磁気ヘッドと、前記前壁から奥側に向けて凹み、前記搬送路に沿って奥側に搬送されたカードの後端部の両面を内側で露出させる凹部と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、挿入口から挿入されたカードを搬送機構によって搬送路に沿って搬送するため、カードの挿入や搬出を適正に行うことができる。従って、駐車場の精算機やドライ
ブスルー式の取引装置等にカードリーダを用いたために、操作が車内等でなされる場合でも、カードと磁気ヘッドとの間で通信を確実に行うことができる。また、カードリーダには、前壁から奥側に向けて凹んだ凹部が形成されており、搬送路に沿って奥側に搬送されたカードの後端部は、両面が凹部の内側で露出状態となる。このため、不具合が発生した際にカードを両面側から指で掴むことができ、カードの引き抜きを手動で行うことができる
本発明に係るカードリーダにおいて、前記前壁および前記凹部が設けられた前カバーと、前記前カバーの後側に連結されたフレームと、を有し、前記前カバーの内部のうち、前記凹部の側壁を介して前記凹部と隣り合う空間内に前記搬送機構および前記磁気ヘッドが配置されている態様を採用することができる。かかる構成によれば、搬送機構を設けた場合でも、カードリーダの大型化を回避することができる。
【0008】
本発明に係るカードリーダにおいて、前記側壁と前記前壁との間には、前記凹部の間口を広げるように前記側壁および前記前壁の各々に対して斜めに傾いた傾斜壁が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、凹部に指を差し込みやすいので、不具合が発生した際にカードを手動で引き抜きやすい。
【0009】
本発明に係るカードリーダにおいて、前記搬送機構は、モータと、前記モータの回転出力が伝達される駆動ローラと、前記カードを前記駆動ローラとは反対側から支持する支持ローラと、を備える態様を採用することができる。
【0010】
本発明に係るカードリーダにおいて、前記搬送機構は、前記モータおよび前記駆動ローラを支持する第1支持部材と、前記支持ローラを支持する第2支持部材と、を含み、前記第1支持部材と前記第2支持部材は、前記第1支持部材および前記第2支持部材のうちの一方に形成された穴と、前記第1支持部材および前記第2支持部材のうちの他方に形成された長穴とを貫通する締結部材によって連結されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、長穴の長軸が延在している範囲で第1支持部材と第2支持部材との位置を調整することができるので、駆動ローラと支持ローラとの間隔を適正に設定することができる。
【0011】
本発明に係るカードリーダにおいて、前記磁気ヘッドと前記モータは、シールド板を介して重ねて配置されている態様を採用することができる。
【0012】
本発明に係るカードリーダにおいて、前記磁気ヘッドを揺動可能に支持する揺動部材を備え、前記シールド板は、前記シールド板に加締により連結された軸状の連結部材を介して前記揺動部材と接続されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、揺動部材に連結したシールド板を磁気ヘッドとモータとの間に配置する場合でも、磁気ヘッドとモータとの間隔が狭くてよいという利点がある。
【0013】
本発明に係るカードリーダは取引装置に用いることができ、この場合、取引装置には、前記カードリーダを制御する上位装置が設けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、挿入口から挿入されたカードを搬送機構によって搬送路に沿って搬送するため、カードの挿入や搬出を適正に行うことができる。従って、駐車場の精算機やドライブスルー式の取引装置等にカードリーダを用いたために、操作が車内等でなされる場合でも、カードと磁気ヘッドとの間で通信を確実に行うことができる。また、カードリーダには、前壁から奥側に向けて凹んだ凹部が形成されており、搬送路に沿って奥側に搬送されたカードの後端部は、両面が凹部の内側で露出状態となる。このため、不具合が発生した際にカードを両面側から指で掴むことができ、カードの引き抜きを手動で行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用したカードリーダの概略構成等を示す説明図
図2】本発明を適用したカードリーダの斜視図。
図3図1に示すカードリーダの正面を斜め上方からみた説明図。
図4図1に示すカードリーダから前カバーを外した状態の分解斜視図。
図5図2に示すカードリーダから搬送機構を外した様子を斜め左側からみた分解斜視図。
図6図2に示すカードリーダから搬送機構を外した様子を斜め右側からみた分解斜視図。
図7図6に示す搬送機構の分解斜視図。
図8図2に示すカードリーダに設けたシールド板の説明図。
図9図8に示すシールド板を固定するための連結部材の説明図。
図10】本発明を適用したカードリーダおよび取引装置の概略動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、図2等に示す前後方向XにカードCが移動する。上下方向Zは、カードCの厚さ方向であり、左右方向Yは、前後方向Xおよび上下方向Zに直交する方向である。なお、以下の説明では、前側にX1を付し、後側にX2を付し、右側にY1を付し、左側にY2を付し、下側にZ1を付し、上側にZ2を付して説明する。なお、前側X1は、カードCの搬送路31の手前側に相当し、後側X2は、カードCの搬送路31の奥側に相当する。また、カードCの前端部C4は、カードCを挿入する際に先行する側に相当し、カードCの後端部C5は、カードCを挿入する際に先行する側とは反対側に相当する。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したカードリーダ1の概略構成等を示す説明図である。図1に示すカードリーダ1は、駐車場の精算機やドライブスルー式のATM等の取引装置100において、カードCに記録された磁気データの読み取り、およびカードCへの磁気データの記録の少なくとも一方を行う。かかるカードリーダ1では、前側X1からカードCが挿入された後、前側X1にカードCが抜き取られる。カードリーダ1は、取引装置100に設けられた上位装置110によって制御される。
【0018】
カードCの基材C0は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製の薄いカードであり、カードCの下面C7には、磁気データが記録される磁気ストライプC1が形成されている。カードCの上面C6には、ICチップC2が固定されている。すなわち、本形態のカードCは、磁気ストライプ付きの接触式ICカードである。なお、カードCは、磁気ストライプ付きの非接触式ICカードあっても良い。また、カードCの基材C0は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であってもよい。
【0019】
カードリーダ1は、カードCが挿入される挿入口30が前壁11に設けられた前カバー10と、前カバー10の後側に連結されたフレーム20とを有している。前カバー10およびフレーム20の内部には、挿入口30から後側X2に向けて延在する搬送路31が設けられており、カードCは、搬送路31に沿って移動する。搬送路31の上流側において挿入口30より後側X2には、カードCの有無を検出するフロントセンサ61が設けられ、搬送路31の下流端には、カードCの有無を検出するリアセンサ62が設けられている。フロントセンサ61およびリアセンサ62はフォトカプラ等の光学センサである。
【0020】
搬送路31において、フロントセンサ61の後側X2には、挿入口30から挿入されたカードCの搬送中にカードCの磁気ストライプC1との間で磁気データの読み取りおよび記録を行う磁気ヘッド4が設けられている。また、搬送路31において、磁気ヘッド4の後側X2、かつ、リアセンサ62の前側X1には、カードCのICチップC2との間で情報の読み取りおよび記録のうちの少なくとも一方を行うIC接点5が設けられている。IC接点5は上下方向に移動することによってICチップC2の端子に電気的に接続する。
【0021】
カードリーダ1には、制御回路91およびCPU92を備えた制御部9が設けられており、取引装置100の上位装置110は、制御部9を介してカードリーダ1を制御する。また、フロントセンサ61およびリアセンサ62の検出結果は、信号線を介して制御部9に入力される。また、磁気ヘッド4と制御回路91とは信号線によって電気的に接続され、IC接点5と制御回路91とは信号線によって電気的に接続されている。
【0022】
カードリーダ1には、挿入口30とフロントセンサ61との間にシャッター部材7が設けられており、シャッター部材7は、制御部9から信号線を介して出力される信号等に基づいて搬送路31を開閉する。図示を省略するが、本形態において、シャッター部材7は、バネによって付勢された抜取り防止レバーとして構成されており、抜取り防止レバーは、カードCと係合してカードCの抜き取りを防止するとともに、ソレノイドによる駆動によって、搬送路31を開閉する。本形態では、カードCが抜取り防止レバーと接触した際の抜取り防止レバーの変位をフロントセンサ61が検出することによって、搬送路31の上流側におけるカードCの有無を検出する。
【0023】
本形態のカードリーダ1には、挿入口30から挿入されたカードCを搬送路31に沿って搬送する搬送機構8と、挿入口30へのカードCの挿入を検出するエントリセンサ85とが設けられている。エントリセンサ85は、搬送機構8より前側X1に配置されている。
【0024】
搬送機構8は、制御部9から信号線を介して出力される信号に基づいて動作するモータ80と、モータ80の回転出力が伝達される駆動ローラ81、82と、駆動ローラ81、82に対して搬送路31を介して対向する支持ローラ83、84とを備えており、支持ローラ83、84は、カードCを駆動ローラ81、82とは反対側から支持する。駆動ローラ81、82は、カードCを下側Z1から駆動し、支持ローラ83、84は、カードCを上側Z2から支持する。搬送機構8は、後述する歯車伝達機構を有しており、モータ80の回転出力は、歯車伝達機構を介して駆動ローラ81、82に伝達される。
【0025】
駆動ローラ81および支持ローラ83は、前後方向Xにおいてエントリセンサ85と磁気ヘッド4との間に配置されている。より具体的には、駆動ローラ81および支持ローラ83は、前後方向Xにおいてエントリセンサ85とシャッター部材7との間に配置されている。駆動ローラ82および支持ローラ84は、前後方向Xにおいて磁気ヘッド4とIC接点5との間に配置されている。
【0026】
かかる構成のカードリーダ1では、挿入口30から挿入されたカードCを搬送機構8によって搬送路31に沿って搬送するため、カードCを一定の速度で搬送することができる等、カードCの挿入や搬出を適正に行うことができる。従って、駐車場の精算機やドライブスルー式の取引装置等にカードリーダを用いたために、操作が車内等でなされる場合でも、カードCと磁気ヘッド4との間で通信を確実に行うことができる。
【0027】
(前カバー12等の構成)
図2は、本発明を適用したカードリーダ1の斜視図である。図3は、図1に示すカードリーダ1の正面を斜め上方からみた説明図である。図4は、図1に示すカードリーダ1か
ら前カバー10を外した状態の分解斜視図である。図2には、カードCを挿入しようとする様子を示し、図3には、カードCが搬送路31に沿って最も奥側に搬送された様子を示してある。
【0028】
図2図3および図4に示すように、カードリーダ1において、前カバー10は、前壁11と、前壁11から後側に延在する筒状の胴部12とを備えている。前壁11は、前側X1からみたとき、略四角形の外形形状を有しており、外周部分は、カードリーダ1を取引装置100に固定するためのフランジ部113になっている。
【0029】
前カバー10には、前壁11から後側X2(奥側)に向けて凹んだ凹部15が形成されており、凹部15は、カードCの両端が通過する部分以外をくり抜いた形状になっている。凹部15は、正面からみたときに縦長の四角形状の開口部150を形成しており、凹部15は、4つの側壁151、152、153、154によって囲まれている。4つの側壁151、152、153、154のうち、左側Y2の側壁153では、搬送路31を構成する溝14が前後方向Xに延在しており、溝14のうち、前壁11で開口する部分140によって挿入口30の一部が構成されている。右側Y1の側壁151および前壁11にはスリット13が連続的に形成されており、スリット13のうち、前壁11に形成された部分によって挿入口30の一部が構成され、側壁151に形成された部分によって搬送路31の一部が構成されている。
【0030】
凹部15の奥には後壁155が設けられており、後壁155には、搬送路31の一部を構成するスリット16が左右方向Yに延在するように形成されている。従って、カードCの前端部C4がスリット16を通ってフレーム20の内側に到達するようにカードCを搬送することができる。
【0031】
本形態では、図3に示すように、カードCを搬送路に沿って最も後側X2(奥側)に搬送したときでも、カードCの後端部C5は、後壁155から前側X1に突出した状態となる。従って、カードCの後端部C5の両面は、凹部15の内側で露出した状態となり、カードCの後端部C5を上下方向Zの両側には、指先を差し込んでカードCの後端部C5を摘むスペースが確保される。それ故、カードCを挿入した後、カードリーダ1に停電や不具合が発送して、カードCの搬送が不可能になった場合でも、利用者は、カードCを手動で引き抜くことができる。
【0032】
ここで、前カバー10の筒状の胴部12において、第1前壁部分111の後側X2および第2前壁部分112の後側X2は各々、凹部15に側壁151を介して隣り合う第1空間121および第2空間122になっている。本形態において、第1前壁部分111は、第2前壁部分112より左右方向の寸法である幅寸法が大である。従って、第1空間121は、第2空間122より幅寸法が大であり、第1空間121には、図1を参照して説明したエントリセンサ85、搬送機構8、シャッター部材7、フロントセンサ61、および磁気ヘッド4が配置される。本形態では、第1空間121にエントリセンサ85、搬送機構8、シャッター部材7、フロントセンサ61、および磁気ヘッド4を配置するにあたって、これの部材を後側X2に寄せて配置することにより、側壁151と第1前壁部分111とが交差する部分付近には部材が配置されていない。従って、側壁151と第1前壁部分111との間には、凹部15の間口を広げるように側壁151および前壁11に対して斜めに傾いた傾斜壁17が設けられている。従って、カードCを手動で引き抜く際、凹部15の奥に指先を差し込みやすい。
【0033】
なお、第2前壁部分112には、人間の動きを検する赤外線センサ19が設けられている。赤外線センサ19が人間の動きを検知していない待機時には、シャッター部材7が搬送路31を閉鎖しており、カードリーダ1へのカードCの挿入ができない状態となってい
る。この状態で、赤外線センサ19が人間の動きを検知すると、シャッター部材7は、搬送路31を開放してカードCの挿入を可能にする。
【0034】
(搬送機構8等の構成)
図5は、図2に示すカードリーダ1から搬送機構8を外した様子を斜め左側からみた分解斜視図である。図6は、図1に示すカードリーダ1から搬送機構8を外した様子を斜め右側からみた分解斜視図である。図7は、図6に示す搬送機構8の分解斜視図である。図8は、図2に示すカードリーダ1に設けたシールド板40の説明図である。図9は、図8に示すシールド板40を固定するための連結部材47、48の説明図である。
【0035】
図4図5、および図6に示すように、フレーム20は、複数のフレーム部材21、22、23、24が上下方向に重なっている。フレーム部材22は、前カバー10に後側X2から重なる第1端板部221と、第1端板部221から前カバー10の第1空間121の内部に向けて突出した第1突出部222と、第1端板部221から前カバー10の第2空間122の内部に向けて突出した第2突出部223とを備えている。また、フレーム部材22に上側Z2から重なるフレーム部材23は、前カバー10に後側X2から重なる第2端板部231と、第2端板部231から前カバー10の第1空間121の内部に向けて突出した第3突出部232と、第2端板部231から前カバー10の第2空間122の内部に向けて突出した第4突出部233とを備えている。
【0036】
ここで、フレーム部材22、23を前カバー10と連結した状態で、フレーム部材22、23の間には、搬送路31となる隙間が確保されるとともに、IC接点5が上下方向Zに移動可能なスペースが確保される。また、フレーム部材22、23を前カバー10と連結した状態で、図3に示す凹部15の後壁155に形成したスリット16より下側Z1にフレーム部材22の第1端板部221が位置し、スリット16より上側Z2にフレーム部材23の第2端板部231が位置する。従って、搬送路31は、スリット16から第1端板部221と第2端板部231との間を通って後側X2に向けて延在する。
【0037】
本形態では、図1に示すエントリセンサ85、搬送機構8、シャッター部材7、フロントセンサ61、および磁気ヘッド4は、第1空間121の内部に第1突出部222および第3突出部232に支持された状態で配置される。従って、搬送機構8を設けた場合でも、カードリーダ1の大型化を回避することができる。
【0038】
ここで、シャッター部材7、フロントセンサ61、および磁気ヘッド4は、第1突出部222および第3突出部232に直接、支持される。これに対して、エントリセンサ85、および搬送機構8は、第1支持部材86および第2支持部材87を介して第1突出部222および第3突出部232に支持される。
【0039】
より具体的には、第1支持部材86は、モータ80、および駆動ローラ81、82等の可動部材を支持し、第2支持部材87は、支持ローラ83、84およびエントリセンサ85を支持した状態で第1突出部222および第3突出部232に支持される。本形態では、搬送機構8には、モータ80の回転を駆動ローラ81、82に伝達する歯車伝達機構89が設けられており、歯車伝達機構89を構成するウォームギア891およびウォームホイール892等の歯車は、モータ80および駆動ローラ81、82とともに第1支持部材86に支持されている。
【0040】
図7に示すように、第1支持部材86と第2支持部材87は、第1支持部材86および第2支持部材87のうちの一方に形成された穴と、第1支持部材86および第2支持部材87のうちの他方に形成された長穴とを貫通するねじ等の締結部材88によって連結されている。
【0041】
本形態において、第1支持部材86は、駆動ローラ支持部861およびモータ支持部862を備えたプレート865と、駆動ローラ支持部861に固定された2本の連結パイプ863とを備えており、モータ支持部862および連結パイプ863には計4つの真円状の穴866、867が設けられている。歯車伝達機構89は、駆動ローラ支持部861とモータ支持部862との間に支持されている。
【0042】
第2支持部材87は、第1プレート871と、支持ローラ83、84を支持する第2プレート872と、第1プレート871と第2プレート872とを連結する連結パイプ873とを備えている。第1プレート871と第2プレート872との間にエントリセンサ85が支持されている。第1プレート871において、第1支持部材86の4つの穴866、867が重なる部分には、上下方向Zに長軸を向けた長穴形状の穴876、877が形成されている。従って、磁気ヘッド4等を第1突出部222および第3突出部232に取り付けた後、支持ローラ83、84等を取り付けた第2支持部材87を222および第3突出部232に固定し、しかる後に、モータ80等を支持する第1支持部材86を第2支持部材87に対して穴876、877の長軸が向いている上下方向Zで位置調整した後、締結部材88によって第1支持部材86と第2支持部材87とを連結することができる。
【0043】
このようにして組み立てた状態で、図8に示すように、モータ80と磁気ヘッド4は、重なるように配置される。本形態において、モータ80は、磁気ヘッド4の真下位置に近接した状態で重なる。すなわち、磁気ヘッド4の真下位置は、従来のカードリーダではデッドスペースであったことから、モータ80を磁気ヘッド4の真下位置に配置することによって、前カバー10の上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0044】
本形態では、磁気ヘッド4とモータ80とをパーマロイ等の高透磁率材料からなるシールド板40を介して重ねて配置する。従って、モータ80から磁気ヘッド4への磁気的な干渉を回避することができる。ここで、磁気ヘッド4は、揺動部材45によって揺動可能とする必要があることから、図6および図7に示す第2支持部材87の第1プレート871においてモータ80の側方に向けて延在する板部875にシールド板40および揺動部材45が支持された状態とする。
【0045】
本形態において、シールド板40および揺動部材45は、第1プレート871の板部875にシールド板40を介して加締により連結された2つの連結部材47、48を介して接続されている。図8および図9に示すように、連結部材47は、円柱状の胴部471と、胴部471から上側Z2に突出した第1軸部472と、胴部471から下側Z1に突出した第2軸部473とを備えている。連結部材48は、円柱状の胴部481と、胴部481から上側Z2に突出した小径部485と、小径部485から上側Z2に突出した第3軸部482と、胴部481から下側Z1に突出した第4軸部483とを備えている。第1プレート871の板部875には2つの穴878が形成されている。シールド板40には2つの穴401、402が形成されている。従って、連結部材47の第2軸部473、および連結部材48の第4軸部483を各々、板部875の2つの穴878を介してシールド板40の2つの穴401、402に通した後、第2軸部473および第4軸部483を加締し、連結部材47、48を各々、板部875およびシールド板40と結合させる。また、連結部材47の第1軸部472、および連結部材48の第3軸部482を各々、揺動部材45の長穴形状の穴451、および真円形状の穴452に通す。その際、連結部材47では、胴部471と揺動部材45との間に圧縮コイルバネ46を配置し、連結部材48では、小径部485で揺動部材45を受ける。従って、磁気ヘッド4は、カードCと接触する際、弾性をもってカードCに接することになる。また、シールド板40は、シールド板40に加締により連結された軸状の連結部材47、48を介して揺動部材45と接続されているため、揺動部材45に連結したシールド板40を磁気ヘッド4とモータ80との間
に配置する場合でも、磁気ヘッド4とモータ80との間隔が狭くてよい。
【0046】
(カードリーダ1および取引装置100の概略動作)
図10は、本発明を適用したカードリーダ1および取引装置100の概略動作を示す説明図である。搬送機構8を設けない手動式のカードリーダでは、図10に示す工程ST1~ST10が実行されるが、本形態のモータ搬送式のカードリーダ1においては、図10に示す工程ST1~ST10を実行するとともに、制御部9は、手動式のカードリーダにおいて上位装置110から送信されていた初期化コマンド、およびカード引き抜き監視コマンド等のコマンドをそのまま用いて、搬送機構8によるカードCの搬送等を行う。従って、搬送機構8を設けない手動式のカードリーダに代えて、本形態のモータ搬送式のカードリーダ1を搭載した場合でも、取引装置100に設けられた上位装置110については変更を必要としない。それ故、搬送機構8を有しないカードリーダから搬送機構8を有するカードリーダ1への切り替えを容易に行うことができる。
【0047】
より具体的には、図10に示すように、まず、工程ST1において、上位装置110は初期化コマンドをカードリーダ1の制御部9に出力し、カードリーダ1を初期化する。このタイミングで、カードリーダ1の制御部9は、初期化コマンドの受信によってエントリセンサ85によるカードCの挿入の監視を開始させる挿入監視開始指令工程ST11を行う。
【0048】
次に、工程ST2において、カードリーダ1の制御部9は、上位装置110に初期化を完了した旨の応答を行う。
【0049】
次に、工程ST3において、上位装置110は、カード挿入待ちコマンドをカードリーダ1の制御部9に出力する。その後、カードリーダ1において、エントリセンサ85がオンになってカードCの挿入が検出されると、制御部9は、モータ80の正転を開始させ、カードCの取り込みを開始する搬入開始指令工程ST12を行わせる。
【0050】
次に、工程ST4において、カードリーダ1の制御部9は、フロントセンサ61およびリアセンサ62がオンになって、カードCの挿入が完了したとき、モータ80を停止させるとともに、上位装置110にカードCの挿入が完了した旨の応答を行う。次に、工程ST5~ST8において、上位装置110は、取引内容に応じて、磁気データ読み取りコマンド、およびICチップC2との通信コマンドをカードリーダ1の制御部9に出力し、カードリーダ1の制御部9は、それらのコマンドに対応する処理を行った後、その旨の応答を行う。
【0051】
次に、工程ST9において、上位装置110はカード引き抜き監視コマンドをカードリーダ1の制御部9に出力し、制御部9は、カードCの引き抜きの監視を開始させる。このタイミングで、カードリーダ1の制御部9は、カード引き抜き監視コマンドの受信によりモータ80の逆転を開始させ、搬送機構8によるカードCの搬出を開始させる搬出開始指令工程ST13を行う。
【0052】
次に、工程ST10において、カードリーダ1の制御部9は、フロントセンサ61およびリアセンサ62がオフになって、カードCの搬出が完了したとき、モータ80を停止させるとともに、上位装置110にカードCの搬出が完了した旨の応答を行う。また、エントリセンサ85がオフになってカードCの搬出が検出されると、制御部9は、エントリセンサ85によるカードCの挿入の監視を再開させる挿入監視再開指令工程ST14を行い、工程ST3に戻る。
【0053】
なお、カードCからの情報の読み取り等を行っている期間中、シャッター部材7を閉じ
る構成を採用した場合、カードCからの情報の読み取り等が終了してシャッター部材7を開状態とするタイミングで搬送機構8によってカードCを搬出してもよい。
[他の実施の形態]
上記の実施の形態では、カードリーダ1は磁気ヘッド4およびIC接点5を備えているが、カードリーダ1が磁気ヘッド4のみを備える場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…カードリーダ、4…磁気ヘッド、5…IC接点、7…シャッター部材、8…搬送機構、9…制御部、10…前カバー、11…前壁、15…凹部、17…傾斜壁、20…フレーム、21、22、23、24…フレーム部材、30…挿入口、31…搬送路、40…シールド板、45…揺動部材、46…圧縮コイルバネ、47、48…連結部材、61…フロントセンサ、62…リアセンサ、80…モータ、81、82…駆動ローラ、83、84…支持ローラ、85…エントリセンサ、86…第1支持部材、87…第2支持部材、88…締結部材、89…歯車伝達機構、91…制御回路、92…CPU、100…取引装置、110…上位装置、111…第1前壁部分、112…第2前壁部分、113…フランジ部、121…第1空間、122…第2空間、151、152、153、154…側壁、155…後壁、221…第1端板部、222…第1突出部、223…第2突出部、231…第2端板部、232…第3突出部、233…第4突出部、472…第1軸部、473…第2軸部、482…第3軸部、483…第4軸部、C…カード、C1…磁気ストライプ、C2…ICチップ、C4…前端部、C5…後端部、ST11…挿入監視開始指令工程、ST12…搬入開始指令工程、ST13…搬出開始指令工程、ST14…挿入監視再開指令工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10