(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】基板の表面温度を測定する装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20241003BHJP
G01J 5/60 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01J5/00 101C
G01J5/00 B
G01J5/60 D
H01L21/66 T
(21)【出願番号】P 2020528329
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018083376
(87)【国際公開番号】W WO2019110524
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515075197
【氏名又は名称】レイザー システムズ アンド ソリューションズ オブ ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】LASER SYSTEMS AND SOLUTIONS OF EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ペロー,シルヴァン
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05727017(US,A)
【文献】特開2008-211136(JP,A)
【文献】特開2011-187760(JP,A)
【文献】米国特許第04956538(US,A)
【文献】特開2013-048226(JP,A)
【文献】特開2007-263583(JP,A)
【文献】特開平01-202633(JP,A)
【文献】特開2012-216733(JP,A)
【文献】特開2008-116269(JP,A)
【文献】特開平11-225881(JP,A)
【文献】特開平08-184496(JP,A)
【文献】特開平04-233421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01J 1/02 - G01J 1/04
G01K 13/00
G01N 25/00 - G01N 25/72
H01L 21/268
H01L 21/64 - H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ平坦な処理表面(5)を有する基板(3)の表面温度(Ts)を測定するための装置(1)であって、前記処理表面(5)は、基板(3)の前記処理表面(5)の処理領域(13)を加熱するように適合されたパルス光ビーム(9)によって照射され、前記装置(1)は:
前記基板(3)の処理表面(5)の処理領域(13)に向かってプローブ光の第1の波長(λ
PL1)でプローブ光の第1のビーム(39)を照射する第1の照明システム(37)と;
第1の光学系(19)であって:
熱放射の第1の方向(D
TR1a)における熱放射の第1の立体角(Ω
TR1a)にわたって、前記処理領域(13)内の局所的に加熱された領域によって放射された熱放射(16)の第1の放射ビーム(17)を収集し;当該第1の放射ビーム(17)を、第1の瞬間(t
1)において、熱放射の第1の波長(λ
TR1)の周辺の第1の帯域幅内の前記第1の放射ビーム(17)の第1の強度を表す熱放射の第1の信号(S
TR1a)を送信するように適合された熱放射の第1の検出チャネル(23a)へと送出し;
プローブ光の第1の方向(D
PL1)におけるプローブ光の第1の立体角(Ω
PL1)にわたって、前記処理領域(13)によって反射されたプローブ光(39)の第1の反射ビーム(47)を収集し;当該第1の反射ビーム(47)を、第2の瞬間(t
2)において、前記プローブ光の第1の波長(λ
PL1)で第1の反射ビーム(47)の第1の強度を表すプローブ光の第1の信号(S
PL)を送るように適合されたプローブ光の第1の検出チャネル(49)へと送出する、第1の光学系(19)と;
処理手段(35)であって:
前記熱放射の第1の信号(S
TR1a)と、前記プローブ光の第1の信号(S
PL)とを処理し;
前記熱放射の第1の処理された信号と、前記プローブ光の第1の処理された信号とに基づいて、前記第1の瞬間(t
1)における前記処理領域(13)の表面温度(Ts)を特定する、処理手段(35)と
を具え、この装置(1)において、
前記熱
放射の第1の検出チャネル(23a)は:
前記熱放射の第1の波長(λ
TR1)に感応する放射熱の第1の検出器(31a)と;
前記第1の放射ビーム(17)を前記熱放射の第1の検出器(31a)に中継する熱放射の第1の中継手段(25a)と、を具え、
前記プローブ光の第1の検出チャネル(49)は:
前記プローブ光の第1の波長(λ
PL1)に感応するプローブ光の第1の検出器(55)と、
前記第1の反射ビーム(47)を前記プローブ光の第1の検出器(55)に中継するプローブ光の第1の中継手段(51)と、を具え、
前記熱放射の第1の波長(λ
TR1)は、前記プローブ光の第1の波長(λ
PL1)に等しくなるように選択され;
前記熱放射の第1の検出チャネル(23a)および前記プローブ光の第1の検出チャネル(49)は、前記第1の瞬間(t
1)および前記第2の瞬間(t
2)が同時に生じるように同期され;
前記熱放射の第1の中継手段(25a)は、前記熱放射の第1の検出器(31a)が前記プローブ光(39)の第1の反射ビーム(47)の一部を受光しないように前記熱放射の第1の中継手段(51)に対して配置され、ここで前記熱放射の第1の方向(D
TR1a)は、前記プローブ光の第1の方向(D
PL1)から、ゼロより大きく第1の所定の閾値よりも小さい第1の偏角(θ
Dev1)だけ隔てられていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)において、前記プローブ光の第1の波長(λ
PL1)は0.9マイクロメートルから1.6マイクロメートルの範囲に含まれる、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置(1)において、前記第1の帯域幅は100ナノメートル以下である、装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の装置(1)において、前記熱放射の第1の検出チャネル(23a)は、前記第1の帯域幅を有する熱放射の第1のフィルタ(293a)を含む、装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の装置(1)において、前記プローブ光の第1の検出チャネル(49)は、プローブ光の第1のフィルタ(533)を含み、当該プローブ光の第1のフィルタ(533)は、前記第1の帯域幅以下の第2の帯域幅を有するバンドパスフィルタである、装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の装置(1)において、前記熱放射の第1のフィルタ(293a)または前記プローブ光の第1のフィルタ(533)は干渉フィルタである、装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の装置(1)において、前記熱放射の第1の検出器(31a)および前記プローブ光の第1の検出器(55)は、同じ相対スペクトル感度を有する、装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の装置(1)において、
前記基板(3)の処理表面(5)の処理領域(13)に向けて、プローブ光の第2の波長(λ
PL2)で、プローブ光の第2のビーム(59)を放射する第2の照明システム(57)を具え;
前記第1の光学系は:
熱放射の第2の方向(D
TR2)における熱放射の第2の立体角(Ω
TR2)にわたって、前記処理領域(13)の局所的に加熱された領域によって放射された熱放射(16)の第2の放射ビーム(75)を収集し;当該第2の放射ビーム(75)を、熱放射の第2の検出チャネル(77)であって:
第2の帯域幅に感応する熱放射の第2の検出器(83)と;
前記熱放射の第2の方向(D
TR2)に放射された熱放射(16)の第2のビーム(75)を、前記熱
放射の第2の検出器(83)に中継する熱放射の第2の中継手段(79)と、を具え、
前記第1の瞬間(t
1)に、熱放射の第2の波長(λ
TR2)の周辺の前記第2の帯域幅内の第2の放射ビーム(75)の第2の強度を表す熱放射の第2の信号(S
TR2)を配信するように適合された、熱放射の第2の検出チャネル(77)に送信し;
プローブ光の第2の方向(D
PL2)におけるプローブ光の第2の立体角(Ω
PL2)にわたって、前記処理領域(13)によって反射されたプローブ光(59)の第2の反射ビーム(65)を収集し;当該第2の反射ビーム(65)を、プローブ光の第2の検出チャネル(67)であって:
前記プローブ光の第2の波長(λ
PL2)に感応するプローブ光の第2の検出器(73)と;
前記プローブ光の第2の方向(D
PL2)に反射されたプローブ光(59)の第2のビーム(65)を、前記プローブ光の第2の検出器(73)に中継するプローブ光第2の中継手段(69)と、
を具えるプローブ光の第2の検出チャネル(67)に送出し、
前記プローブ光の第2の検出チャネル(67)は、前記第2の瞬間(t
2)に、前記プローブ光の第2の波長(λ
PL2)におけるプローブ光(59)の第2のビーム(65)の第2の強度を表すプローブ光の第2の信号(S
PL2)を送出するように構成され;
前記第2の帯域幅は、前記プローブ光の第2の波長(λ
PL2)を含み、所定の最大幅よりも小さく;
前記熱放射の第2の方向(D
TR2)は、前記プローブ光の第2の方向(D
PL2)から、ゼロより大きく第2の所定の閾値より小さい第2の偏角(θ
Dev2)だけ隔てられており;
前記処理手段(35)は:
前記熱放射の第2の信号(S
TR2)および前記プローブ光の第2の信号(S
PL2)を処理し、
前記熱放射の第1の処理信号、プローブ光の第1の処理信号、熱放射の第2の処理信号、およびプローブ光の第2の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間(t
1)における表面温度(Ts)を特定するように構成される、装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の装置(1)において、各中継(25a、51、67、79)は、対応する光学系(19)と対応する検出器(31a、55、73、83)との間に配置された所定の長さの光ファイバのセグメントを含み、前記光学系(19)は、対応するビーム(17a、47、65、75)を前記光ファイバのセグメントに結合するように設計されている、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置(1)において、前記光ファイバのセグメントは、グループ化されてファイバ束(27)を形成する、装置。
【請求項11】
ほぼ平坦な処理表面(5)を有する基板(3)の表面温度(Ts)を測定する方法であって、前記処理表面(5)は、前記基板(3)の処理表面(5)の処理領域(13)を加熱するように適合されたパルス光ビーム(9)によって照射され、前記方法は:
前記基板(3)の処理表面(5)の処理領域(13)に向けて、プローブ光の第1の波長(λ
PL1)でプローブ光の第1のビーム(39)を放射するステップと、
第1の瞬間(t
1)に、熱放射の第1の波長(λ
TR1a)の周辺の第1の帯域幅内で、熱放射の第1の方向(D
TR1a)の熱放射の第1の立体角(Ω
TR1a)にわたって前記処理領域(13)によって放射された熱放射の第1の放射ビーム(17)の第1の強度を表す熱放射の第1の信号(S
TR1a)を測定するステップと;
第2の瞬間(t
2)に、プローブ光の第1の波長(λ
PL1)で、プローブ光の第1の方向(D
PL1)においてプローブ光の第1の立体角(Ω
PL1)にわたって前記処理領域(13)によって前記プローブ光の第1の波長(λ
PL1)で反射された第1のプローブ光の第1の反射ビーム(47)の第1の強度を表すプローブ光の第1の信号(S
PL1)を測定するステップと、
前記熱放射の第1の信号(S
TR1a)および前記プローブ光の第1の信号(S
PL1)を処理するステップと;
熱放射の第1の処理信号およびプローブ光の第1の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間(t
1)における前記処理領域(13)の表面温度(Ts)を特定するステップと;
を具え、この方法において:
前記熱放射の第1の波長(λ
TR1a)は、前記プローブ光の第1の波長(λ
PL1)に等しくなるように選択され、
前記熱放射の第1の方向(D
TR1a)は、前記プローブ光の第1の方向(D
PL1)から、ゼロより大きく第1の所定の閾値よりも小さい第1の偏角(θ
Dev1)だけ隔てられており、
前記熱放射の第1の検出チャネル(23a)および前記プローブ光の第1の検出チャネル(49)は、前記プローブ光の第1の信号を測定するステップが前記熱放射の第1の信号を測定するステップと同時に実行されるように同期されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、さらに、
前記基板(3)の処理表面(5)の処理領域(13)に向けて、プローブ光の第2の波長(λ
PL2)でプローブ光の第2のビーム(59)を放射するステップと、
第3の瞬間(t
3)に、熱放射の第2の方向(D
TR2)における熱放射の第2の立体角(Ω
TR2)にわたって前記処理領域(13)によって、熱放射の第2の波長(λ
TR2)の周辺の第2の帯域幅内で、放射された熱放射(16)の第2の放射ビーム(75)の第2の強度を表す熱放射の第2の信号(S
TR2)を測定するステップと、
第4の瞬間(t
4)に、プローブ光の第2の方向(D
PL2)における第2のプローブ光の第2の立体角(Ω
PL2)にわたって前記処理領域(13)によって、前記プローブ光の第2の波長(λ
PL2)で、反射されたプローブ光(39)の第2の反射ビーム(47)の第2の強度を表すプローブ光の第2の信号(S
PL2)を測定するステップと、
前記熱放射の第2の信号(S
TR2)および前記プローブ光の第2の信号(S
PL2)を処理するステップと、
熱放射の第1の処理信号、プローブ光の第1の処理信号、熱放射の第2の処理信号、およびプローブ光の第2の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間(t
1)における処理領域(13)の表面温度(Ts)を特定するステップと、
を含み、当該方法において、
前記熱放射の第2の波長(λ
TR2)は、前記プローブ光の第2の波長(λ
PL2)に等しくなるように選択され、
前記熱放射の第2の方向(D
TR2)は、前記プローブ光の第2の方向(D
PL2)から、ゼロより大きく第2の所定の閾値より小さい第2の偏角(θ
Dev2)だけ隔てられており、
前記熱放射の第2の検出チャネル(77)および前記プローブ光の第2の検出チャネル(67)は、前記プローブ光の第2の信号(S
PL2)を測定するステップおよび前記熱放射の第2の信号(S
TR2)を測定するステップが、前記熱放射の第1の信号(S
TR1a)を測定するステップおよび前記プローブ光の第1の信号(S
PL1)を測定するステップと同時に実行されるように同期される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理を受けているウェーハの表面温度を監視するための装置に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、その熱放射および放射率を測定することにより、パルス光ビームに曝されたウェーハの表面温度を監視するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスを製造するには、熱処理と呼ばれるプロセス中に半導体ウェーハがパルス光ビームに曝される。熱処理中、パルス光ビームに曝された領域の表面は、1ミリ秒未満から1マイクロ秒未満の期間、1000℃を超えて加熱される。
【0004】
高温により、露出領域が構造的に変化する。構造変化の程度は温度に依存するため、温度を正確に監視することが重要である。
【0005】
露出領域の表面温度は、通常、その熱放射の測定に基づいて計算される。ただし、表面の熱放射は、その温度だけでなく、その放射率にも依存する。したがって、温度測定誤差を減らすために、熱放射の変化が実際の温度変化によるものか、放射率の変化によるものかを区別する必要がある。
【0006】
表面の放射率はその構造に依存する。熱処理により表面の構造が変化するため、露出領域の放射率は処理全体を通じて一定ではない。このため、できるだけ頻繁に測定することが重要である。また、放射率は方向性があることに注意することも重要である。
【0007】
実際には、温度を測定するために、光学系で熱放射を収集し、それを検出器に送る。熱放射は、通常は赤外線である所定の波長で測定される。
【0008】
放射率を測定するには、別の光線を露光領域に向け、反射光線(放射率を表す)をキャプチャする。熱放射と放射率はどちらも波長に依存するため、他の光線の波長は熱放射の所定の波長と同じである。
【0009】
HATANOら(「Excimer laser-induced temperature field in melting and resolidification of silicon thin films」、Journal of applied Physics、2000年1月1日、Vol.87、No.1、36~43ページ)に記載のように、放射率の指向性のため、従来技術のデバイスは、同じ光学系および同じ検出器を使用して、露出領域の熱放射および放射率をキャプチャする。ただし、2つの信号が混ざらないように、熱放射測定と放射率測定は交互に行われる。熱放射の測定中は、多方の光線はオフになる。
【0010】
従来技術の装置で測定された温度の精度は、2つの信号の測定間の時間差による制限がある。
【0011】
マイクロ秒およびサブマイクロ秒の範囲の熱処理では、温度の誤差がさらに増大する。この時間スケールでは、レーザビームのパルスは数ナノ秒の持続時間を示す。従来技術の装置では、パルス光ビームへの曝露中に温度変化を追跡できる温度測定を実行することができない。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的の1つは、ほぼ平坦な処理表面を有する基板の表面温度を測定する装置を提供することであり、前記処理表面は、基板の前記処理表面の処理領域を加熱するように適合されたパルス光ビームによって照射され、前記装置は、
前記基板の処理表面の処理領域に向かってプローブ光の第1の波長でプローブ光の第1のビームを照射する第1の照明システムと;
第1の光学系であって:
熱放射の第1の方向における熱放射の第1の立体角にわたって、前記処理領域内の局所的に加熱された領域によって放射された熱放射の第1の放射ビームを収集し;当該第1の放射ビームを、第1の瞬間において、熱放射の第1の波長の周辺の第1の帯域幅内の前記第1の放射ビームの第1の強度を表す熱放射の第1の信号を送信するように適合された熱放射の第1の検出チャネルへと送出し;
プローブ光の第1の方向におけるプローブ光の第1の立体角にわたって、前記処理領域によって反射されたプローブ光の第1の反射ビームを収集し;当該第1の反射ビームを、第2の瞬間において、前記プローブ光の第1の波長で第1の反射ビームの第1の強度を表すプローブ光の第1の信号を送るように適合されたプローブ光の第1の検出チャネルへと送出する、第1の光学系と;
処理手段であって:
前記熱放射の第1の信号と、前記プローブ光の第1の信号とを処理し;
前記熱放射の第1の処理された信号と、前記プローブ光の第1の処理された信号とに基づいて、前記第1の瞬間における前記処理領域の表面温度を特定する、処理手段と
を具え、
本発明によると、熱検出の第1の検出チャネルは:
前記熱放射の第1の波長に感応する放射熱の第1の検出器と;
前記第1の放射ビームを前記熱放射の第1の検出器にルーティングする熱放射の第1のルーティング手段と、を具え、
前記プローブ光の第1の検出チャネルは:
前記プローブ光の第1の波長に感応するプローブ光の第1の検出器と、
前記第1の反射ビームを前記プローブ光の第1の検出器にルーティングするプローブ光の第1のルーティング手段と、を具え、
前記熱放射の第1の波長は、前記プローブ光の第1の波長に等しくなるように選択され;
前記熱放射の第1の検出チャネルおよび前記プローブ光の第1の検出チャネルは、前記第1の瞬間および前記第2の瞬間が同時に生じるように同期され;
前記熱放射の第1のルーティング手段は、前記熱放射の第1の検出器が前記プローブ光の第1の反射ビームの一部を受光しないように前記熱放射の第1のルーティング手段に対して配置され、ここで前記熱放射の第1の方向は、前記プローブ光の第1の方向から、ゼロより大きく第1の所定の閾値よりも小さい第1の偏角だけ隔てられている。
【0013】
2つの異なる検出チャネルとルーティング手段を使用して各信号を個別の検出器にルーティングすることにより、この装置は、処理領域の表面の熱放射とその放射率を同時に測定することができる。第1のルーティング手段は、処理表面のほぼ同じ領域の熱放射および放射率が測定されるように互いに関連して配置されるので、放射率の方向性を考慮することができる。したがって、熱放射と放射率に基づいて計算された温度の誤差が大幅に減少する。
【0014】
本発明による装置の他の有利で非限定的な特徴において:
前記プローブ光の第1の波長は0.9マイクロメートルから1.6マイクロメートルの範囲に含まれ、
第1の帯域幅は100ナノメートル以下であり、
前記熱放射の第1の検出チャネルは、前記第1の帯域幅を有する熱放射の第1のフィルタを含み、
前記プローブ光の第1の検出チャネルは、プローブ光の第1のフィルタを含み、
前記プローブ光の第1のフィルタは、前記第1の帯域幅以下の第2の帯域幅を有するバンドパスフィルタであり、
前記熱放射の第1のフィルタまたは前記プローブ光の第1のフィルタは干渉フィルタであり、
前記熱放射の第1の検出器および前記プローブ光の第1の検出器は、同じ相対スペクトル感度を有し、
当該装置がさらに:
前記基板の処理表面の処理領域に向けて、プローブ光の第2の波長のプローブ光で、プローブ光の第2のビームを放射する第2の照明システムと;
第2の光学系であって:
熱放射の第2の方向における熱放射の第2の立体角にわたって、前記処理領域の局所的に加熱された領域によって放射された熱放射の第2の放射ビームを収集し;当該第2の放射ビームを、熱放射の第2の検出チャネルであって:
第2の帯域幅に感応する熱放射の第2の検出器と;
前記熱放射の第2の方向に放射された熱放射の第2のビームを、前記熱検出の第2の検出器にルーティングする熱放射の第2のルーティング手段と、を具え、
前記第1の瞬間に、熱放射の第2の波長の周辺の前記第2の帯域幅内の第2の放射ビームの第2の強度を表す熱放射の第2の信号を配信するように適合された、熱放射の第2の検出チャネルに送信し;
プローブ光の第2の方向におけるプローブ光の第2の立体角にわたって、前記処理領域によって反射されたプローブ光の第2の反射ビームを収集し;当該第2の反射ビームを、プローブ光の第2の検出チャネルであって:
前記プローブ光の第2の波長に感応するプローブ光の第2の検出器と;
前記プローブ光の第2の方向に反射されたプローブ光の第2のビームを、前記プローブ光の第2の検出器にルーティングするプローブ光第2のルーティング手段と、
を具えるプローブ光の第2の検出チャネルに送出し、
前記プローブ光の第2の検出チャネルは、前記第2の瞬間に、前記プローブ光の第2の波長におけるプローブ光の第2のビームの第2の強度を表すプローブ光の第2の信号を送出するように構成され;
前記第2の帯域幅は、前記プローブ光の第2の波長を含み、所定の最大幅よりも小さく;
前記熱放射の第2の方向は、前記プローブ光の第2の方向から、ゼロより大きく第2の所定の閾値より小さい第2の偏角だけ隔てられており;
前記処理手段は:
前記熱放射の第2の信号および前記プローブ光の第2の信号を処理し、
前記熱放射の第1の処理信号、プローブ光の第1の処理信号、熱放射の第2の処理信号、およびプローブ光の第2の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間における表面温度を特定するように構成される。
【0015】
前記第2の光学系は、前記第1の光学系とは異なる。
【0016】
前記第2の光学系と前記第1の光学系は同じである。
【0017】
各ルーティング手段は、対応する光学系と対応する検出器との間に配置された所定の長さの光ファイバのセグメントを含み、前記光学系は、対応するビームを前記光ファイバのセグメントに結合するように設計されており、
前記光ファイバのセグメントは、グループ化されてファイバ束を形成する。
【0018】
本発明はまた、ほぼ平坦な処理表面を有する基板の表面温度を測定する方法に関し、前記処理表面は、前記基板の処理表面の処理領域を加熱するように適合されたパルス光ビームによって照射され、前記方法は:
前記基板の処理表面の処理領域に向けて、プローブ光の第1の波長でプローブ光の第1のビームを放射するステップと、
第1の瞬間に、熱放射の第1の波長の周辺の第1の帯域幅内で、熱放射の第1の方向の熱放射の第1の立体角にわたって前記処理領域によって放射された熱放射の第1の放射ビームの第1の強度を表す熱放射の第1の信号を測定するステップと;
第2の瞬間に、プローブ光の第1の波長で、プローブ光の第1の方向においてプローブ光の第1の立体角にわたって処理領域によって前記プローブ光の第1の波長で反射された第1のプローブ光の第1の反射ビームの第1の強度を表すプローブ光の第1の信号を測定するステップと、
前記熱放射の第1の信号および前記プローブ光の第1の信号を処理するステップと;
熱放射の第1の処理信号およびプローブ光の第1の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間における前記処理領域の表面温度を特定するステップと;
を具え、この方法において:
前記熱放射の第1の波長は、前記プローブ光の第1の波長に等しくなるように選択され、
前記熱放射第1の方向は、前記プローブ光の第1の方向から、ゼロより大きく第1の所定の閾値よりも小さい第1の偏角だけ隔てられており、
前記熱放射の第1の検出チャネルおよび前記プローブ光の第1の検出チャネルは、前記プローブ光の第1の信号を測定するステップが前記熱放射の第1の信号を測定するステップと同時に実行されるように同期されることを特徴とする。
【0019】
本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴において:
前記基板の処理表面の処理領域に向けて、プローブ光の第2の波長でプローブ光の第2のビームを放射するステップと、
第3の瞬間に、熱放射の第2の方向における熱放射の第2の立体角にわたって前記処理領域によって、熱放射の第2の波長の周辺の第2の帯域幅内で、放射された熱放射の第2の放射ビームの第2の強度を表す熱放射の第2の信号を測定するステップと、
第4の瞬間に、プローブ光の第2の方向における第2のプローブ光の第2の立体角にわたって前記処理領域によって、前記プローブ光の第2の波長で、反射されたプローブ光の第2の反射ビームの第2の強度を表すプローブ光の第2の信号を測定するステップと、
前記熱放射の第2の信号および前記プローブ光の第2の信号を処理するステップと、
熱放射の第1の処理信号、プローブ光の第1の処理信号、熱放射の第2の処理信号、およびプローブ光の第2の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間における処理領域の表面温度を特定するステップと、
を含み、
前記熱放射の第2の波長は、前記プローブ光の第2の波長に等しくなるように選択され、
前記熱放射の第2の方向は、前記プローブ光の第2の方向から、ゼロより大きく第2の所定の閾値より小さい第2の偏角だけ隔てられており、
前記熱放射の第2の検出チャネルおよび前記プローブ光の第2の検出チャネルは、前記プローブ光の第2の信号を測定するステップおよび前記熱放射の第2の信号を測定するステップが、前記熱放射の第1の信号を測定するステップおよび前記プローブ光の第1の信号を測定するステップと同時に実行されるように同期される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に、本発明による装置および方法を、添付の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、本発明による、基板の熱放射および放射率を測定することによって基板の表面温度を測定する装置の例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、装置によって試験される例示的な基板の概略図である。
【
図3】
図3は、追加要素によって第1の光学系の全長が変化可能になる、例示的な第1の光学系の拡大図である。
【
図4】
図4は、第1の光学系から収集された熱放射および反射されたプローブ光ビームをルーティングする装置のルーティング手段の図である。
【
図5】
図5は、
図4のルーティング手段の入口端の断面図である。
【
図6】
図6は、ルーティング手段の後に配置された熱放射の第1のフィルタリングシステムを通る熱放射の伝播を示す。
【
図7】
図7は、ルーティング手段と、熱放射の第1のフィルタリングシステムと、熱放射の第1の検出器との概略図である。
【
図8】
図8は、装置内の熱放射および反射されたプローブ光ビームの伝播の概略図である。
【
図9】
図9は、装置が2つの照明源を具える、装置の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図10】
図10は、
図9の実施例における熱放射および反射されたプローブ光ビームの伝搬の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[装置]
図1を参照すると、本発明は、実質的に平坦な処理表面(processed surface)5を有する基板3の表面温度Tsを測定するための装置1に関する。この装置1は、一般に、半導体製造工場などの機械環境で動作するため、体積の制限や機械的制約に準拠する必要がある。
【0022】
基板3は、例えばウェーハである。これは典型的に、半導体デバイス産業で一般的に使用されるようなシリコンウェーハまたは複合ウェーハである。基板3は、熱処理に適合された処理チャンバ2内に配置される。
【0023】
基板3は、可動プラットフォーム6上に配置されてもよい。可動プラットフォームは、X方向とY方向に移動して、基板3全体の熱処理を実現することができる。
【0024】
図2を参照すると、基板3は、所望の半導体デバイスを得るために様々な処理を受け得る処理表面5を有する。処理表面5は、(巨視的スケールで)実質的に平面であるが、(微視的スケールで)いくらかの表面粗さを示す。
【0025】
処理表面5の粗さは、それが前に受けた処理に依存する。さらに、表面の熱処理により、処理表面5の材料の物理的特性、特にその光学的特性が変化する場合がある。物理的性質の変化は特に、処理表面5の相転移中に生じる。結果として、処理表面5の放射率は、プロセスを通して変化する。
【0026】
基板3は、その処理表面5上で一連のダイ4を支持する。各ダイ4は複数の半導体デバイスを含み、各ダイはそれ自体の放射率を有し得る。
【0027】
図1を再び参照すると、装置1は、光軸A1に沿ってパルス光ビーム9を放射する光源7を具える。光源7は、例えば紫外線(UV)光源である。この光源7は、エキシマレーザ光源であることが好ましい。放射の好ましい波長は、例えば308nmである。
【0028】
光源7は、パルスモードで動作することができる。たとえば、10HzのレートでFWHM160nsのレーザパルスを生成することができる。
【0029】
パルス光ビーム9の光注入システム11が、光軸A1に沿って光源7の下流に配置されている。パルス光ビーム9の光注入システム11は、パルス光ビーム9を受け取り、それを基板3の処理表面5に向ける。
【0030】
パルス光ビーム9の光注入システム11は、例えば、パルス光ビーム9の空間均一性を保証するビームホモジナイザー(図示せず)と、パルス光ビーム9を処理表面5に集束させる複数のレンズ(図示せず)とを具える。
【0031】
パルス光ビーム9の光注入システム11はまた、パルス光ビーム9に適切な配向を提供しながら装置1をよりコンパクトにするための折り畳みミラーまたはその組み合わせを具えてもよい。
【0032】
図2を参照すると、パルス光ビーム9は、処理表面5に入射し、そこで光スポット13を形成する。スポットの寸法は設定可能である。スポットの寸法は、例えば、ダイ4の面積に対応する。光スポット13の位置は、可動プラットフォーム6を動かして変更することができる。
【0033】
注入システム11の折り畳みミラーは、基板3の表面全体にわたってパルス光ビーム9を走査可能であり得る。光スポット13が形成される領域は、処理領域(treated zone)13と呼ばれる。
【0034】
パルス光ビーム9への曝露下で、処理領域13は、最大表面温度Tmaxまで加熱される。この処理において、処理領域13の表面温度Tsは、環境温度Ta(処理チャンバ2内の温度)から最高温度Tmaxまで、ここでは800℃~3000℃の範囲で変化する。
【0035】
典型的に、熱放射16はプランクの法則に従ったスペクトルで全方向に放射される(等方性放射)。ここでは、処理領域13の表面温度Tsが通常25℃~1700℃であるため、ほとんどの熱放射は1μm~10μmの赤外線範囲で放射される。
【0036】
装置1は、熱放射16の下流に配置された第1の光学系19をさらに具える。第1の光学系19は、第3の光軸A3を有する(
図1を参照)。
【0037】
図3を参照すると、実際には、第1の光学系19は、処理チャンバ2の外側に配置されている。処理チャンバ2の窓31は、熱放射16の一部を処理チャンバ2の外に伝播させる。熱放射の一部のみが第1の光学系19に到達する。
【0038】
第1の光学系19は、第1の熱放射の方向DTRIにおいて第1の熱放射の立体角QTRIにわたって熱放射16の第1の放射ビーム17を収集するように構成される。
【0039】
好ましい例では、第1の放射ビーム17の伝搬(矢印で示す)に沿って順番に、第1の光学系19は、第1の光学群191、第3の光学群195および第2の光学群193を具える。
【0040】
第1の光学群191は、第1の放射ビーム17を収集するように適合された単一の収集レンズまたはレンズの組み合わせを具える。単一の集光レンズの例は、平凸レンズである。機械環境における機械的制約により、第1の光学群191をサンプルから遠くに配置する必要があるため、第1の光学群191の直径は大きく、その結果、焦点距離が長くなる。
【0041】
第3の光学群195は、第1の光学群191の焦点面の近くに配置される。第3の光学群195は、処理領域13の画像を第2の光学群193の物体焦点面と共役させるように構成される。第3の光学群195は、第1の光学系19の全長を選択することができ、機械環境における装置の統合を容易にする。
【0042】
焦点距離をさらに短くし、したがって機械環境の要件に準拠するために、第2の光学群193は、第1の光学系19に、大きな開口、適度な視野、良好な空間分解能、赤外線の広いスペクトル帯域幅にわたる小さな色収差を与えるレンズの組み合わせを含むことが好ましい。
【0043】
処理領域13の画像は、テレセントリックになるように第2の光学群193の物体焦点面に配置される。第1の光学群191は、第3の光学群195と組み合わせてこの共役を行う。
【0044】
ここで、第1の光学系19は、第1の光学系19をよりコンパクトにするために、第1の放射ビーム17の伝搬方向を変更する折り返しミラー197を具える。あるいは、折り返しミラーの組み合わせを用いて、第1の光学系19をよりコンパクトにすることができる。
【0045】
第1の光学系19は、熱放射の第1の方向DTRIにおいて、熱放射の第1の立体角ΩTRiaにわたって第1の放射ビーム17を収集する。熱放射の第1の立体角ΩTRiaの範囲は、後で説明する熱放射の第1のルーティング手段25aの受容角によって決定される。
【0046】
別の例では、第1の光学系19は、第1の光学群191および第2の光学群193のみを具える。
【0047】
図1を再び参照すると、装置1は、第1の光学系19に機械的に接続され、第1の光学系19の位置を変更するように構成された機械的アクチュエータ21を具えることができる。
【0048】
機械式アクチュエータ21は、第1の光学系19の位置をX方向およびY方向に変更するように構成されている。このようにして、第1の光学系19は、1つのダイ4内で測定される面積を変更することができ、またはダイ4を変更することができる。
【0049】
機械的アクチュエータ21は、アクティブミラーまたはそれらの組み合わせを含み得る。
【0050】
代替的に、機械的アクチュエータ21は、X方向に1つの並進軸とY方向に1つの並進軸を有するプラットフォームを具えてもよい。例えば、このプラットフォームは、0.5mmのステップで両方向に30mmの範囲で移動することができる。
【0051】
装置1は、第1の光学系19の下流に配置された熱放射の第1の検出チャネル23aをさらに具える。
【0052】
熱放射の第1の検出チャネル23aは、第2の光学群193の焦点面に配置された入口端(
図5を参照)を有する熱放射の第1のルーティング手段25aを具える。
【0053】
図4を参照すると、熱放射の第1のルーティング手段25aは、所定の長さおよび所定の直径の光ファイバのセグメントを含む。長さの例は15mである。直径の例は400μmである。光ファイバの受光角は8°~15°である。
【0054】
熱放射の第1のルーティング手段25aは、ここではファイバ束、より正確には多分岐ファイバ束27に構成される。ここで、光ファイバは、多分岐ファイバ束27の入口端でまとめられ、多分岐ファイバ束27の出口端で複数の分岐に分離される。
【0055】
多分岐ファイバ束27は、装置1が測定する様々な信号をルーティングするための柔軟なメカニズムを提供する。
【0056】
熱放射の第1のルーティング手段25aは、第1の放射ビーム17を中継する。
【0057】
図6を参照すると、熱放射の第1の検出チャネル23aは、熱放射の第1のルーティング手段25aの下流に配置された熱放射の第1のフィルタリングシステム29aをさらに具える。
【0058】
熱放射の第1のフィルタリングシステム29aにより、第1の放射ビーム17の形状およびスペクトルをその後の測定に適合させることができる。第1の放射ビーム17(矢印で示す)の伝播方向に沿って順番に、熱放射の第1のフィルタリングシステム29aは、熱放射の第1のコリメートグループ291a、熱放射の第1のフィルタ293a、および熱放射の第1の集束グループ295aを具える。
【0059】
熱放射の第1のコリメートグループ291aは、レンズまたはその組み合わせを含み、熱放射の第1のルーティング手段25aを出て発散する第1の放射ビーム17を平行化する。
【0060】
熱放射の第1のフィルタ293は、第1の放射ビーム17のスペクトル幅を制御し、望ましくない寄与を除去する。第1の帯域幅は、好ましくは熱放射の第1の波長λTR1を中心とする。熱放射の第1の波長λTR1は、後述するプローブ光の第1の波長λPL1に等しくなるように選択される。熱放射の第1のフィルタ293は、例えば100nm以下の第1の帯域幅を有する。
【0061】
熱放射293の第1のフィルタの例は、干渉フィルタである。
【0062】
熱放射の第1の集束グループ295は、レンズまたはそれらの組み合わせを含み、第1の放射ビーム17を焦点面FP1に集束させる。
【0063】
熱放射の第1の検出チャネル23aは、第1の集束グループ295aの焦点面FP1上に配置された熱放射の第1の検出器31aをさらに具える。
【0064】
熱放射の第1の検出器31aは、前記熱放射の第1の波長λTR1に感応する。熱放射の第1の検出器31aは、好ましくは短赤外線(範囲例:0.9μm~1.6μm)で動作する。あるいは、熱放射の第1の波長λTR1に応じて、中波長赤外線(範囲例:3μm~5μm)、長波長赤外線(範囲例:8μm~12μm)、または可視(範囲例:0.4μm~0.9μm)で動作する。短赤外線に感応する熱放射の第1の検出器31の例は、InGaAsで作られたフォトダイオードである。
【0065】
熱放射の第1の検出器31aは、第1の瞬間t1において、熱放射の第1の波長λTR1における第1の放射ビーム17の第1の強度を表す熱放射の第1の信号STR1aを伝達する。
【0066】
図1を再び参照すると、熱放射の第1の検出器31aは、コントローラ33に機能的に連結されている。コントローラ33は、例えばデジタイザボードを含む。コントローラ33は、熱放射の第1の信号S
TR1aをデジタル化する。コントローラ33はまた、第1の放射ビーム17の高速取得レートを実装するように構成される。取得レートの例は、毎秒500メガサンプル(つまり、200MHz)である。この取得レートは、パルス光ビームのパルス持続時間よりも速いことに留意されたい。これにより、熱処理中の表面温度Tsを正確に監視することができる。
【0067】
装置1は、処理装置35をさらに具える。この処理装置35は、コントローラ33と機能的に連結されている。処理装置35は、熱放射の第1の信号STR1を受け取り、それを後述する方法に従って処理する。処理装置35は、例えば、ユーザインターフェースを具えるコンピュータである。ユーザインターフェースにより、ユーザがコントローラ33を設定し、測定中にそれを監視することができる。ユーザインターフェースは、測定結果を表示するためにも利用できる。
【0068】
装置1はさらに、処理表面5の処理領域13に向かってプローブ光の第1のビーム39を放射する第1の照明システム37(
図1を参照)を具える。
【0069】
第1の照明システム37は、第2の光軸A2に沿ってプローブ光の第1のビーム39を放射する第1の照明源41を具える。第1の照明源41の例は、0.9μm~1.6μmの範囲に含まれるプローブ光の第1の波長λPL1で光を放射する赤外線スーパールミネセントダイオードである。プローブ光の第1の波長λPL1の例は、1.31μmまたは1.55μmである。
【0070】
第1の照明システム37は、第2の光軸A2に沿って第1の照明源41の下流に配置された第1の照明注入システム43も具える。
【0071】
第1の照明注入システム43は、処理領域13を照明するためにプローブ光の第1のビーム39をコリメートするための1つの光学レンズを含む。
【0072】
第1の照明注入システム43は、プローブ光の第1のビーム39を折り返し、それを処理領域13に向けるために、1つの折り返しミラーまたはそれらの組み合わせを具えてもよい。実際、説明の簡単のために、第1のプローブ光ビーム39は、折り返さずに第2の光軸A2に沿った1方向のみで示されている。しかしながら、実際には、プローブ光の第1のビーム39は、第1の照明システム37をよりコンパクトにし、機械環境に適合するように折り返されてもよい。
【0073】
図2を参照すると、プローブ光の第1のビーム39は、処理表面5の処理領域13に入射し、ここで熱放射16およびプローブ光の第1のビーム39の反射光が集められる収集領域15よりも大きな寸法の第1の照明スポット45を形成する。
【0074】
プローブ光の第1のビーム39の光の一部は、処理表面5でプローブ光の第1の方向DPLに反射され、プローブ光39の第1の反射ビーム47を形成する。この反射は鏡面反射と見なされる。
【0075】
第1のプローブ光ビーム39の光の別の部分は、基板3に吸収される。
【0076】
第1の放射ビーム17aを収集することに加えて、第1の光学系19は、第1のプローブ光の立体角ΩPL1にわたってプローブ光の第1の方向DPL1の第1の反射ビーム47を収集する。
【0077】
第1の光学系19はまた、第1の反射ビーム47の形状をその後の測定に適合させるように構成される。
【0078】
第1の光学系19は、第1の反射ビーム47を装置1のプローブ光の第1の検出チャネル49に伝送する。
【0079】
プローブ光の第1の検出チャネル49は、第2の光学群の焦点面193上に配置される。プローブ光の第1の検出チャネル49は、第1の光学系19からの第1の反射ビーム47を受け取るためにプローブ光の第1のルーティング手段51を具える。
【0080】
図5を参照すると、プローブ光の第1のルーティング手段51は、多分岐ファイバ束27の中心に配置されている。
【0081】
図8を参照すると、プローブ光の第1のルーティング手段51は、第1の反射ビーム47の一部が熱放射の第1のルーティング手段25aに入らないように、熱放射の第1のルーティング手段25aに関して配置される。第1の光学系19に対する各ルーティング手段25a、51のそれぞれの位置は、各光ファイバがそれぞれ信号を収集できる方向を決定する。
【0082】
図8を参照すると、プローブ光の第1の方向D
PL1は、熱放射の第1の方向D
TR1aから第1の偏角θ
Dev1だけ隔てられている。第1の偏角θ
Dev1は、ゼロより大きく、第1の所定の閾値より小さい。第1の所定の閾値の例は9°である。熱放射の第1のルーティング手段25aは、距離S1だけプローブ光の第1のルーティング手段51から隔てられている。距離S1を大きくすると、第1の偏角度θ
Dev1が大きくなる。したがって、第1の反射ビーム47が熱放射の第1のルーティング手段25aに入るリスクが低減される。しかしながら、表面温度Tsの正確な測定には、第1の放射ビーム17および第1の反射ビーム47が近い方向で測定されることを要するので、第1の偏角 θ
Dev1は大きすぎてはならない。最初の偏角θ
Dev1の許容値は3~5度である。
【0083】
プローブ光の第1のルーティング手段51はまた、第1の反射ビーム47の鏡面放射がプローブ光の第1のルーティング手段51に向けられるように、第1の光学系19と正確に整列させてもよい。この整列は、例えば、第3の光軸A3がプローブ光の第1の方向DPL1と一致する場合に達成される。
【0084】
熱放射16は等方性であるため、一部の熱放射はプローブ光の第1のルーティング手段51に入ることに留意されたい。しかしながら、プローブ光の第1のルーティング手段51に入る熱放射16の強度は、第1の反射ビーム47の強度よりもはるかに小さく、したがって無視することができる。
【0085】
プローブ光の第1の検出チャネル49は、プローブ光の第1のルーティング手段51の下流に配置されたプローブ光の第1のフィルタリングシステム53をさらに具える。
【0086】
プローブ光53の第1のフィルタリングシステムは、第1の反射ビーム47の形状およびスペクトルを以降の測定に適合させる。第1の反射ビーム47(矢印で示す)の伝播方向に沿って順番に、プローブ光の第1のフィルタリングシステム53は、プローブ光の第1のコリメートグループ531、プローブ光の第1のフィルタ533、およびプローブ光の第1の集束グループ535を含む。
【0087】
プローブ光の第1のコリメートグループ531およびプローブ光の第1の集束グループ535は、それぞれ、熱放射の第1のコリメートグループ191および熱放射の第1の集束グループ195と同様である。
【0088】
プローブ光の第1のフィルタ533は、第1の反射ビーム47のスペクトル幅を制御し、望ましくない寄与を除去する。プローブ光の第1のフィルタ533は、第1の帯域幅以下の第2の帯域幅を有する。第2の帯域幅は、好ましくは、プローブ光の第1の波長λPL1を中心とする。
【0089】
プローブ光の第1の検出チャネル49は、プローブ光の第1の集束グループ535の焦点距離に配置される、プローブ光の第1の検出器55をさらに具える。
【0090】
プローブ光の第1の検出器55は、前記プローブ光の第1の波長λPL1に感応する。プローブ光の第1の検出器55は、好ましくは短赤外線で動作する(範囲例:0.9μm~1.6μm)。あるいは、熱放射の第1の波長λTR1に応じて、中波長赤外線(範囲例:3μm~5μm)、長波長赤外線(範囲例:8μm~12μm)、または可視(範囲例:0.4μm~0.9μm)で動作してもよい。プローブ光の第1の検出器55の例は、InGaAsで作られたフォトダイオードである。
【0091】
プローブ光の第1の検出器55および熱放射の第1の検出器31は、同じ相対スペクトル感度を有する。
【0092】
プローブ光の第1の検出器55は、第2の瞬間t2で、プローブ光の第1の波長λPL1で第1の反射ビーム47の第1の強度を表すプローブ光の第1の信号SPL1を伝達する。
【0093】
プローブ光の第1の検出器55は、コントローラ33に機能的に連結されている。コントローラ33は、プローブ光の第1の信号SPL1をデジタル化する。コントローラ33はまた、第1の反射ビーム47の高速取得レートを実装する。取得レートの例は、毎秒500メガサンプルである。
【0094】
さらに、コントローラ33は、熱放射の第1の検出チャネル23とプローブ光の第1の検出チャネル53とを同期させて、前記第1の瞬間t1と前記第2の瞬間t2が同時に発生するようにする。
【0095】
熱放射16と第1の反射ビーム47(放射率を表す)の両方の測定を同時にすると、表面温度Tsの測定における誤差を減らすのに役立つ。
【0096】
処理装置35は、プローブ光の第1の信号SPL1を受け取り、後述する方法に従ってそれを処理する。
【0097】
第1の放射ビーム17および第1の反射ビーム47の両方を収集する単一の第1の光学系19と、それらを収集しそれぞれの検出器に別々にルーティングするルーティング手段とを有する装置1は、機械環境のボリューム制約を満たすことが重要である検出器の配置に大きな柔軟性を付与する。
【0098】
また、後述するように、検出器の数を増やすことができ、したがって表面温度Tsの精度を上げることができる。
【0099】
第1の放射ビーム17を測定する専用の熱放射の第1の検出器31aと、第1の反射ビーム47を測定する専用のプローブ光の第1の検出器55とを有することにより、両方の測定を同時に行うことができる。同時取得されたこれらの信号に基づいて決定された表面温度Tsは、従来技術よりも正確である。
【0100】
好ましい実施例では、熱放射の第1の検出チャネル23は、第2の光学群193の焦点距離に配置される追加の熱放射の第1のルーティング手段25bをさらに具える。
【0101】
前述したように、熱放射16は等方性である。次に、熱放射の第1のルーティング手段25bは、熱放射の一部を受け取り、追加の第1の放射ビーム17bを形成する。追加の第1の放射ビーム17bは、追加の熱放射の第1の方向DTR1bに伝播する。熱放射の第1の方向DTR1aおよび追加の第1の熱放射の方向DTR1bは、例えば、それぞれのルーティング手段25a、25bの位置によってそれぞれ決定される。熱放射の第1の方向DTR1aと追加の第1の熱放射の方向DTR1bとの間の偏角は、例えば3°~9°の範囲である。
【0102】
図4を参照すると、熱放射の追加の第1のルーティング手段25bは、多分岐ファイバ束27に配置されている。
【0103】
図8を参照すると、熱放射の第1の検出チャネル23は、第1のフィルタリング光学系29aと同様の追加の第1のフィルタリング光学系29bと、熱放射の第1の検出器31aと同様の追加の第1の熱放射検出器31bとをさらに具える。
【0104】
多分岐ファイバ束27の柔軟性により、追加の熱放射の第1の検出器31bは、熱放射の第1の検出器31aから離れて配置することができる。
【0105】
追加の熱放射の第1の検出器31bは、第1の瞬間t1において、前記熱放射の第1の波長λTR1における追加の第1の放射ビーム17bの第1の強度を表す追加の熱放射の第1の信号STR1bを伝送する。
【0106】
追加の熱放射の第1の検出器31bは、コントローラ33に機能的に連結されている。
【0107】
処理装置35が、追加の熱放射の第1の信号STR1bを受け取り、後述する方法に従ってそれを処理する。
【0108】
基板3の熱放射16を表す2つの信号を測定することは、基板3の表面温度Tsの計算における不確実性を減らすのに役立つ。
【0109】
別の実施例では、装置1はさらに、第1の反射ビーム47を2つのビーム、すなわちs偏光の第1の反射ビームとp偏光の第1の反射ビームとに分離する第1の偏光セパレータを具える。偏光セパレータは、プローブ光の第1のルーティング手段51の下流に配置される。より正確には、偏光セパレータは、プローブ光の第1のフィルタリングシステム53内の、プローブ光の第1のコリメートグループ531の下流に配置される。偏光セパレーターの例は、偏光ビームスプリッタである。別の偏光セパレータの例はウォラストンプリズムである。偏光された第1の反射ビームはそれぞれ、それぞれの検出器に送出される。この設定により、偏光による放射率の変化に対処することができ、基板3の表面温度Tsの計算における不確実性を減らすのに寄与する。
【0110】
別の実施例では、装置1は、追加の第1のフィルタリング光学系29bに配置された第2の偏光セパレータを具えてもよい。この第2の偏光セパレータは、追加の第1のコリメートグループと追加の第1の集束グループとの間に配置される。この場合、一方の偏光のみが追加の熱放射の第1の検出器31bに送られる。もう一方の偏光は、第2の偏光セパレーターに吸収される。このようにして、熱放射16に対する偏光の影響を評価することができる。
【0111】
次に、本発明の別の実施形態を
図9を参照して説明する。装置1は、処理表面5の処理領域13に向かってプローブ光59の第2のビームを放射する第2の照明システム57を具える。
【0112】
第2の照明システム57は、第4の光軸A4に沿ってプローブ光の第2のビーム59を放射する第2の照明源61を含む。第2の照明源61の例は、0.9μm~1.6μmの範囲に含まれるプローブ光の第2の波長λPL2で光を放射する赤外線スーパールミネセントダイオードである。プローブ光の第2の波長λPL2の例は、1.31μm~1.55μmである。好ましい例では、第1の照明源41は1.31μmで光を放射し、第2の照明源61は1.55μmで光を放射する。
【0113】
第2の照明システム57は、第4の光軸A4に沿って第2の照明源61の下流に配置された第2の照明注入システム63も具える。
【0114】
第2の照明注入システム63は、第1と第2の照明注入システム43と同様の要素を具え、同様の役割を果たす。
【0115】
好ましい実施形態(図示せず)では、第1の照明源41および第2の照明源61が、基板3から離れて配置される。
【0116】
第1の照明源41は、第1の照明ルーティング手段の入口端に結合される。この結合は、第1の照明ルーティング手段の入口端を、第1の嵌合スリーブを介して第1の照明源の端部コネクタに直接結合することによって達成される。第1の照明ルーティング手段は、第1の照明光ファイバを具える。
【0117】
第2の照明源61は、第2の照明ルーティング手段の入口端に結合される。この結合は、第2の照明ルーティング手段の入口端を、第2の嵌合スリーブを介して第2の照明源の端部コネクタに直接結合することによって達成される。第2の照明ルーティング手段は、第2の照明光ファイバを具える。
【0118】
第1の照明光ファイバと第2の照明光ファイバは、照明多分岐ファイバ束に構成され、それらの入口端が複数の分岐に分離され、照明多分岐ファイバ束の出口端で一緒に保持される。
【0119】
照明多分岐ファイバ束の出口端は、共通の照明注入システムの焦点面に配置される。
【0120】
照明多分岐ファイバ束の使用は、プローブ光の様々なビーム39、59をそれぞれの照明源から、基板3から短い距離にルーティングするための柔軟な機構を提供する。
【0121】
プローブ光の第2のビーム59は、処理表面5の処理領域13に入射し、ここで熱放射16およびプローブ光39の第1のビームからとプローブ光の第2のビーム59からの反射光が収集される領域よりも大きな寸法の第1の照明スポット(図示せず)を形成する。
【0122】
プローブ光の第2のビーム59の光の一部は、プローブ光の第2の方向DPL2に処理表面5で反射されて、第2の反射ビーム65を形成する。この反射は鏡面反射と見なされる。
【0123】
プローブ光の第2のビーム59の光の別の部分は、基板3に吸収される。
【0124】
一例では、第1の光学系19は、第1の放射ビーム17および第1の反射ビーム47を収集することに加えて、プローブ光の第2の立体角ΩPL2にわたってプローブ光の第2の方向DPL2の第2の反射ビーム65を収集する。
【0125】
第1の光学系19は、第2の反射ビーム65の形状を適合させ、それを装置1のプローブ光67の第2の検出チャネルに伝達する。
【0126】
プローブ光の第2の検出チャネル67は、第2の光学群193の焦点距離に配置される。プローブ光の第2の検出チャネル67は、第1の光学系19から第2の反射ビーム65を受け取るように構成されたプローブ光の第2のルーティング手段69を具える。
【0127】
図4および
図5を参照すると、プローブ光の第2のルーティング手段69は、多分岐ファイバ束27に構成された光ファイバである。
【0128】
前述のように、熱放射16は等方性であるため、一部の熱放射はプローブ光の第2ルーティング手段69に入る。しかしながら、測定において第2の反射ビーム65に対するその影響は無視することができる。
【0129】
図10を参照すると、プローブ光の第2の検出チャネル67は、プローブ光の第2のルーティング手段69の下流に配置されたプローブ光の第2のフィルタリングシステム71をさらに具える。
【0130】
プローブ光の第2のフィルタリングシステム71は、第2の反射ビーム65の形状およびスペクトルをその後の測定に適合させる。
【0131】
他のフィルタリングシステム29a、29b、53について説明したように、プローブ光の第2のフィルタリングシステム71は、第2の反射ビーム65(矢印で示す)の伝播方向に沿って順番に、プローブ光の第2のコリメートグループ711、プローブ光の第2のフィルタ713、およびプローブ光の第2の集束グループ715とを含む。
【0132】
プローブ光の第2のコリメートグループ711は、第2の反射ビーム65を平行化する。プローブ光の第2の集束グループ715は、その後の測定のために第2の反射ビーム65を集束させる。
【0133】
プローブ光の第2のフィルタ713は、第2の反射ビーム65のスペクトル幅を制御し、不要な寄与を除去する。
【0134】
プローブ光の第1のフィルタ713は、第1および第2の帯域幅と重複しない第3の帯域幅を有する。第3の帯域幅は、プローブ光の第2の波長λPL2を含む。第3の帯域幅は、所定の最大値よりも小さく、例えば100nmよりも小さい。
【0135】
プローブ光の第2の検出チャネル67は、プローブ光の第2の集束グループ715の焦点距離に配置されたプローブ光の第2の検出器73をさらに具える。
【0136】
プローブ光の第2の検出器73は、前記プローブ光の第2の波長のλPL2に感応する。
【0137】
プローブ光の第2の検出器73は、第2の瞬間t2において、前記プローブ光の第2の波長λPL2における第2の反射ビーム65の第2の強度を表すプローブ光の第2の信号SPL2を送出する。
【0138】
プローブ光の第2の検出器73は、コントローラ33に機能的に連結される。
【0139】
さらに、コントローラ33は、プローブ光の第2の検出チャネル67、熱放射の第1の検出チャネル23、およびプローブ光の第1の検出チャネル53を同期させて、3つの測定が同時に行われるようにする。
【0140】
処理装置35は、プローブ光の第2の信号SPL2を受信し、それを後述する方法に従って処理する。
【0141】
第1の光学群19は、熱放射の第2の立体角ΩTR2にわたって熱放射の第2の方向DTR2に伝搬する第2の放射ビーム75を収集することもできる。
【0142】
第1の光学群19は、第2の放射ビーム75を熱放射の第2の検出チャネル77に送る。
【0143】
熱放射の第2の検出チャネル77は、第2の光学群193の焦点距離に配置された熱放射の第2のルーティング手段79を具える。
【0144】
前述のように、熱放射の第2のルーティング手段79は、多分岐ファイバ束27に構成された光ファイバを含む。熱放射の第2のルーティング手段79は、第2の放射ビーム75を伝達する。
【0145】
前述のように、熱放射の第2ルーティング手段79は、第2反射ビーム65の一部が熱放射の第2ルーティング手段79に入るのを防ぐように、プローブ光の第2ルーティング手段69に対して配置される。
【0146】
プローブ光の第2の方向DPL2は、熱放射の第2の方向のDTR2から第2の偏角θDev2だけ離れている。第2の偏角θDev2は、ゼロより大きく、第2の所定の閾値よりも小さい。第2の所定の閾値の例は9°である。
【0147】
熱放射の第2の検出チャネル77は、熱放射の第2のルーティング手段79の下流に配置された熱放射の第2のフィルタリングシステム81をさらに具える。
【0148】
熱放射の第2のフィルタリングシステム81は、その帯域幅を除いて、熱放射の第1のフィルタリングシステム29と同様である。熱放射の第2のフィルタ813の帯域幅は、第3の帯域幅である。
【0149】
熱放射の第2の検出チャネル75は、熱放射の第2の集束グループ815の焦点距離に配置された熱放射の第2の検出器83をさらに具える。
【0150】
熱放射の第2の検出器83は、熱放射の第2の波長λTR2に感応する。
【0151】
熱放射の第2の波長λTR2は、プローブ光の第2の波長λPL2に等しい。
【0152】
熱放射の第2の検出器83は、第1の瞬間t1において、前記熱放射の第2の波長λTR2における第2の放射ビーム75の第2の強度を表す熱放射の第2の信号STR2を送出する。
【0153】
熱放射の第2の検出器83は、前述のように動作するコントローラ33に機能的に連結されている。コントローラ33は、第1の放射ビーム17、第1の反射ビーム47、第2の放射ビーム75および第2の反射ビーム65がすべて同時に測定されるように構成される。
【0154】
処理装置35は、熱放射の第2の信号STR2を受け取り、それを後述する方法に従って処理する。
【0155】
2つの反射ビーム47、65および少なくとも2つの放射ビーム17、17b、75を使用して、処理領域13の表面温度Tsを決定することは、不確実性を低減するのに役立つ。
【0156】
別の実施例(図示せず)では、装置1は、第2の反射ビーム65および第2の放射ビーム75を収集するための第2の光学系を具える。
【0157】
この第2の光学系も、第2の反射ビーム65および第2の放射ビーム75を、前述とは別のまたは同じ多分岐ファイバ束27に配置されたそれぞれのルーティング手段に送信する。
【0158】
別の実施形態(図示せず)では、装置1は、第2の照明システム57に加えて、またはその代わりに、第3の照明システムを具える。
【0159】
第3の照明システムは、プローブ光の第3の波長λPL3でプローブ光の第3のビームを放射する第3の照明源を含む。プローブ光の第3の波長λPL3は、例えば633nmの可視波長であり、例示的な第3の光源はHeNeレーザである。あるいは、プローブ光の第3の波長λPL3は、近UV波長用である。
【0160】
可視の第3の波長の場合、装置1は、プローブ光の第3の検出器、例えばSiフォトダイオードを具える。
【0161】
他のすべての要素は、前に説明したものと同様である。
【0162】
次に、
図12を参照して、本発明による基板3の表面温度Tsを測定する方法を説明する。
【0163】
基板3の処理表面5は、パルス光ビーム9、例えば前述のようなパルスレーザビームによって照射される。このパルス光ビーム9は、処理表面5の処理領域13を加熱する。次に、処理領域13は、その表面温度Tsを表す熱放射16を放出する。
【0164】
この方法は、プローブ光の第1のビーム39を処理領域13に向けて放射するステップを含む。プローブ光の第1のビーム39は、好ましくは赤外線の、プローブ光の第1の波長λPL1を有する。
【0165】
次に、別のステップで、熱放射の第1の検出器31が、第1の瞬間t1における熱放射の第1の信号STR1aを測定する。この測定は、コントローラ33によって実施される。
【0166】
同時のステップにおいて、プローブ光の第1の検出器55が、第2の瞬間t2においてプローブ光の第1の信号SPL1を測定する。この測定は、コントローラ33によって実施される。コントローラ33は、第1の瞬間t1と第2の瞬間t2が同時発生するように、熱放射の第1の検出器31およびプローブ光55の第1の検出器を同期させる。
【0167】
次に、後のステップで、処理装置35は、熱放射の第1の信号STR1およびプローブ光の第1の信号SPL1を処理する。
【0168】
収集領域15の放射率は、次の式で計算される。
(式1)
【0169】
ここで、Sref1とSref2は、プローブ光の第1の検出器55の較正前のステップ中に測定される。較正ステップ中、Rref1は反射較正ビームの第1の期待値であり、Sref1は反射較正ビームの対応する第1の測定値である。同様に、Rref2は反射較正ビームの第2の期待値であり、Sref2は反射較正ビームの対応する第2の測定値である。
【0170】
最終ステップにおいて、処理装置35は、熱放射の第1の処理信号およびプローブ光の第1の処理信号に基づいて、前記第1の瞬間における処理領域13の表面温度を決定する。
【0171】
表面温度の計算に使用される式は次の通りである:
(式2)
【0172】
ここで、hはプランク定数、cは光の速度、Kはボルツマン定数、Kcalibは熱放射の第1検出器31aの機器定数である。
【0173】
K
calibの値は、最初に次の式でシステムの典型的な特性からおおまかに推定される。
(式3)
【0174】
ここで、R(λ)は熱放射の第1の検出器31aのスペクトル感度である。τは光伝送である。Gはエタンデュである。Δλはスペクトル帯域幅である。次に、その値が、較正ステップ中に各機器に対して細かく決定される。
【0175】
表面温度Tsの計算を、熱放射の第1の信号STR1aと、同時に取得された同じ方向のプローブ光の第1の信号SPL1とに基づいて行うことにより、計算された表面温度の不確実性が大幅に減少する。
【0176】
この方法は、前述の装置1の他の実施形態に適用することができる。
【0177】
次に、この方法は、基板3の処理表面5の処理領域13に向けて、プローブ光の第2の波長λPL2で第2のプローブ光59を放射するステップをさらに含む。
【0178】
次に、別のステップで、熱放射の第2の検出器83が、第3の瞬間t3において熱放射の第2の信号STR2を測定する。この測定は、コントローラ33によって実施される。第3の瞬間t3は、第1の瞬間t1および第2の瞬間t2と同時である。
【0179】
同時のステップにおいて、プローブ光の第2の検出器73が、第4の瞬間t4においてプローブ光の第2の信号SPL2を測定する。この測定は、コントローラ33によって実施される。
【0180】
コントローラ33は、第1の瞬間t1、第2の瞬間t2、第3の瞬間t3および第4の瞬間t4が同時に生じるように、熱放射の第1の検出器31、プローブ光の第1の検出器55、熱放射の第2の検出器83およびプローブ光の第2の検出器73を同期させる。
【0181】
【0182】
ここで、λTPlongは、熱放射の第1の波長λTR1と熱放射の第2の波長λTR2との間の最長波長に対応する。λTRshortは、熱放射の第1波長λTR1と熱放射の第2波長λTR2の間の最短波長に対応する。
【0183】
λPLlongは、プローブ光の第1の波長λPL1とプローブ光の第2の波長λPL2の間の最長波長に対応する。
【0184】
λPLshortは、プローブ光の第1の波長λPL1とプローブ光の第2の波長λPL2の間の最短波長に対応する。