IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トリコル バイオメディカル, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】溶解に耐える組織接着性キトサン材料
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20241003BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20241003BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08B37/08 A
A61L29/08 100
A61L29/04
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020535507
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 US2018068064
(87)【国際公開番号】W WO2019133936
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】62/612,013
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/631,290
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517239083
【氏名又は名称】トリコル バイオメディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー, シモン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガネット, コール
(72)【発明者】
【氏名】ジョンズ, マティー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウィナータ, アーヴェリン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138166(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159734(WO,A1)
【文献】特表2023-516335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116540072(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115895440(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0161796(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第113209363(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111632026(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101289477(CN,A)
【文献】国際公開第2013/180458(WO,A1)
【文献】特表2009-513239(JP,A)
【文献】特表2009-502749(JP,A)
【文献】特表2008-525112(JP,A)
【文献】特表2007-516051(JP,A)
【文献】特表2005-503197(JP,A)
【文献】国際公開第2013/048144(WO,A1)
【文献】Zhiwen Zeng et al.,Rapid in situ cross-linking of hydrogel adhesives based on thiol-grafted bio-inspired catechol-conjugated chitosan,Journal of Biomaterials Applications,2017年11月07日,Volume 32, Issue 5,pp. 612-621
【文献】Jinke Xu et al.,Mollusk Glue Inspired Mucoadhesives for Biomedical Applications,Langmuir,2012年09月05日,Volume 28, Issue 39,pp. 14010-14017
【文献】Ji Hyun Ryu et al.,Bio-Inspired, Water-Soluble to Insoluble Self-Conversion for Flexible, Biocompatible, Transparent, Catecholamine Polysaccharide Thin Films,Advanced Functional Materials,2014年10月06日,Volume 24, Issue 48,pp. 7709-7716
【文献】Kyuri Kim et al.,Chitosan-catechol: A polymer with long-lasting mucoadhesive properties,Biomaterials,Volume 52,pp. 161-170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
A61L 29/08
A61L 29/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテコール改変キトサンを含むキトサン材料であって、ここで、前記カテコール改変キトサンが、3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(ヒドロコーヒー酸)、3,4-ジヒドロキシけい皮酸(コーヒー酸)、trans-3,4-ジヒドロキシけい皮酸(trans-コーヒー酸)、および3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC、ホモプロトカテチュ酸)のうちの少なくとも1つからなる群から選択される化学薬品で改変されたキトサンであり、ここで、前記カテコール改変キトサンがさらに、o-キノンに酸化されたカテコールおよび架橋された材料を含み、それが、化合物(A)
【化1A】
または(B)
【化1B】
のうちの少なくとも1つからなり、
ここで、前記材料が、適用の最初の6時間以内に、37℃で、pH3.0~pH8.0の範囲の生物学的流体に曝露されたときにゲル化または断片化の目に見える兆候の形態で溶解に耐える乾燥固体形態であり、そして7日以内に適用部位から溶解し、そしてここで、前記材料が湿潤している場合に、前記材料が組織の表面に接着し、そして接着強度が1kPaより大きいかまたはこれに等しい、
キトサン材料。
【請求項2】
500ミクロンまたはそれ未満の厚みを有する、請求項1に記載のキトサン材料。
【請求項3】
0.03g/cm~0.7g/cmの範囲の密度を有する、請求項1または2に記載のキトサン材料。
【請求項4】
(i)0.3g/cm~0.4g/cmまたは(ii)0.4g/cm~0.5g/cmの範囲の密度を有する、請求項1または2に記載のキトサン材料。
【請求項5】
0.35g/cm~0.55g/cmの範囲の密度を有する、請求項1または2に記載のキトサン材料。
【請求項6】
圧縮されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項7】
前記材料が正方形、長方形、円形、または円形花弁形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項8】
(1)15重量%(w/w)もしくはそれ未満、(2)8重量%(w/w)もしくはそれ未満、または(3)4重量%(w/w)もしくはそれ未満の含水率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項9】
接着側と非接着側とを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項10】
前記接着側が第1の層に提供され、前記非接着側が第2の層に提供されている、請求項9に記載のキトサン材料。
【請求項11】
前記材料が湿潤している場合に前記接着側が組織の表面に接着する、請求項9に記載のキトサン材料。
【請求項12】
前記非接着側が送達デバイスに接着しない、請求項9に記載のキトサン材料。
【請求項13】
前記材料が湿潤している場合に、1分もしくはそれ未満で胃腸管粘膜に接着し、または3分もしくはそれ未満で膀胱粘膜に接着し、またはその両方であり、そして接着強度が1kPaより大きいかまたはこれに等しい、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項14】
組織部位においてキトサンのグルコサミンのC-2アミンで四級アンモニウムカチオンを形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項15】
1)暗褐色の着色を含む褐色の着色、または2)ピンク~ピンク系褐色の着色の着色を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項16】
前記カテコールが酸化されておらず、前記キトサン材料がピンクの着色を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項17】
凍結乾燥されたラメラをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項18】
前記凍結乾燥されたラメラが、1つより多くの凍結乾燥された層を含む構造を形成する、請求項17に記載のキトサン材料。
【請求項19】
紡糸された繊維をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項20】
多孔質表面をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項21】
前記多孔質表面が(i)吸収材表面および(ii)水分を標的組織表面部位から再指向して遠ざけるチャネルのうち1つまたは複数を提供する、請求項20に記載のキトサン材料。
【請求項22】
水、生理食塩水溶液、血液、GI液、または尿への溶解に耐える、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項23】
ひび割れまたは裂けることなく折り畳み、または巻くことができる、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項24】
開いた、巻いていない、または折り畳んでいない状態で、閉じた、巻いた、または折り畳んだ場合の同じ材料の外向きの表面積の8倍、7倍、6倍、5倍、または4倍のうちの1つである外向きの表面積を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項25】
無傷で、バルーンデバイス、ワイヤデバイス、または内視鏡デバイスによって送達することができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項26】
前記バルーンデバイスまたは前記ワイヤデバイスまたは前記内視鏡デバイスが3.2mmもしくはそれ未満または7.0mmもしくはそれ未満の直径を有する作業チャネルを含み、前記材料が前記を通して送達される、請求項25に記載のキトサン材料。
【請求項27】
接着に干渉し得る親水性および疎水性の生物学的流体を除去することができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項28】
前記キトサン材料の標的組織部位への接着の後に、前記キトサン材料が送達デバイスか
ら解放する、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項29】
傷害部位に接着した後、浸食性酵素およびpH3の酸性環境の存在下で、または尿の存在下で、またはその両方で、少なくとも6時間、溶解に耐えることができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項30】
付着部位からの制御された緩徐な溶解を達成することができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項31】
折り畳み、また広げることができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項32】
1)適用後少なくとも12時間もしくは2)適用後少なくとも24時間または1)と2)の両方で、37℃で、水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液もしくは膀胱液または尿に容易に溶解しない、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項33】
材料の特徴に影響を与えずに最終滅菌することができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【請求項34】
疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、請求項1から33のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府のライセンス権
本発明は国立糖尿病研究所および消化器・腎臓病研究所によって与えられたR42DK078400およびR44DK104564のもとに政府の補助を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を保有している。
【0002】
背景
技術分野
体内における生体活性キトサン材料の安全で信頼でき、かつ効果的な送達はまだ大きな課題である。使用に際して、生体活性キトサン材料は、胃液、血液、胆汁、および尿などの生物学的流体の存在下に少なくとも12時間の間、変化しないままでなければならず、胃腸管の粘膜および血管系の内弾性板などの組織に24時間超の間、接着できなければならない。生体活性キトサンは体内で薬物送達、止血、創傷治癒、組織再生、および塞栓療法に限らない多くの用途を有している。身体上または体内で使用される現在のキトサン材料およびキトサン材料の組成物は、胃などの苛酷な環境では溶解および急速な損失に耐えることができず、組織に接着することによってその場に維持されることができないので、その用途が限定されている。
【0003】
本開示はカテコール改変キトサンを含むキトサン材料およびその使用の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
心臓、肝臓、膵臓、胃、腸、結腸、前立腺、扁桃腺、耳、鼻、咽喉、および脳などの血管新生のある臓器および組織に対する多くの手術があり、これらは傷害の後および創傷の治癒を通して出血が続くことが多い。標準的な止血が適用されない限り初期の傷害が数日間、出血し続けることがあり、後になって出血が再発することもある。手術後の出血の処置のための標準治療の初期止血は、手術の種類によって異なる。この問題に局所的に対処するためには、結紮、ガーゼ充填、生物学的被覆材、焼灼、および結束が適用され得る。出血が長期化する場合には、24時間までの充填が適用され得る。保存的管理の期間が過ぎても出血が制御できない場合には、観血的または内視鏡的手技によって出血を止めるため、患者を直ちに手術室に戻さなければならない。進歩した被覆材を使用する出血制御には進歩があったが、これらの進歩のいずれも、送達、組織接着、および他の生物学的流体に関する考慮と混在した連続的出血が高度に困難である特別な手術条件下では、信頼できる処置の選択肢にはまだ変換できていない。あらゆる状況における迅速な出血制御が強く望まれている。
【0005】
最小侵襲性手術手技は、死亡率が低く、病院の費用が少なく、患者の不快感が少なく、(観血手術と比較して)顕著に低減されたリスクで身体の区域に接近できることから、介入的接近の好ましい手段になりつつある。進歩した生体材料は、現在の限界に対処し、最小侵襲性手術手技の安全性、信頼性、ならびに増大する実施および適用における改善を可能にする最前線にある。最小侵襲性手術の実施における現在の限界には、出血(特に大出血)の制御、傷つきやすい軟組織部位の縫合糸なしの閉鎖、治癒の局所的推進、病態の局所的処置、および手術/介入部位への固着または接着による局所的設置が含まれる。より最近には、最小侵襲性介入は、血管奇形、動脈瘤、および血管腫瘍などの血管病因に対処するために使用されている。血管奇形、動脈瘤、および血管腫瘍に対処するための好ましい手技は、異常な血管を閉塞させるための塞栓療法の使用である。塞栓療法には、長期間にわたってその場に留まり、引き続いて永久的に血管を閉鎖する大量の血栓の形成を促進する材料または固着された生体材料のステントまたはコイルなどの閉塞デバイスの局所送達が含まれる。
【0006】
長期間変化しないままで局所血栓形成および正常な組織治癒を促進する生体適合性、組織接着性のキトサン材料は、進歩した材料を提供し、手術の実施における顕著な進歩を可能にする。
【0007】
さらに、長期の出血は、死亡率および罹患率における付随するリスクを有し、胃腸(GI)管における重大な問題のままになっている。上部胃腸管出血(UGIB)および下部胃腸管出血(LGIB)のための胃腸管出血(GIB)の迅速な出血制御を提供できる手法およびデバイスが必要である。前立腺の経尿道切除(TURP)の間およびその後における現在の出血制御は、小血管動脈の出血に対しては焼灼、静脈の滲出への対処としてはバルーン圧の適用に頼っている。膀胱頸部および前立腺はいずれも血管新生が多い組織であり、傷害の後および創傷治癒の間に出血が続くことが多い。標準的な止血が適用されない限り、初期の傷害部位は数日間出血し続けることがあり、TURP手技の約1週間後または2週間後、前立腺の空洞の瘡蓋が脱落したときに、出血が再発することもある。TURPの後の出血の処置のための現在の標準的な初期止血は、バルーンカテーテルを用いて手で牽引し、次いで生理食塩水で連続的に膀胱を潅流することである。典型的には、出血が長期化した場合にはバルーン圧を24時間まで適用することができる。保存的管理の期間が過ぎても出血が制御できない場合には、観血的または内視鏡的手技によって出血を止めるため、患者を直ちに手術室に戻さなければならない。
【0008】
GIBまたはTURPの出血制御以外の適用のための進歩した被覆材を使用する出血制御には進歩があったが、これらの進歩のいずれも、送達、接着、酵素活性、連続的滲出性出血、酸性度、および尿に関連する考慮が高度に困難である胃腸管または膀胱、特に上部胃腸管および前立腺の特別な条件にはまだ変換できていない。TURP、観血的前立腺切除術、および膀胱切除における迅速な出血制御が強く望まれている。
【0009】
胃腸管出血(GIB)は、救急部門にとって一般的な病状である。米国保健社会福祉省によれば、2000年から2014年までに、毎年平均して35万件を超える胃腸管出血からの退院があった。米国ではGIBによる2010年の病院の直接費用が11億ドルを超えた[1]。Treitz結紮の近位における胃腸管出血と定義される上部GIB(UGIB)は、下部GIB(LGIB)の約5倍多い[2]。急性UGIBは緊急の評価、蘇生術、ならびに適切な医学的および内視鏡的管理を必要とする潜在的に致命的な緊急事態である。西洋諸国でのGIBの管理における最近の進歩にも関わらず、急性UGIBの死亡率は顕著には改善されておらず、10~14%と高いままである[3、4]。GIBの後の死亡の主な原因は心肺の合併症に続発する死亡であり、これはそのような患者における併存疾患の負荷を考慮すれば驚くことではない。制御できない出血による死亡は、症例の20%~25%を占めると報告されている[5、6]。併存疾患を迅速に是正するためにできることはほとんどないが、より効果的で迅速な出血制御ができれば、UGIB関連の罹患および死亡の発生を顕著に低減させることができる。一般には、急性UGIBの最も一般的な原因は消化器潰瘍、胃食道静脈瘤、Mallory-Weiss裂傷、および浸食性食道胃炎である[7]。非静脈瘤上部胃腸管出血(NVUGIB)は食道または胃の静脈瘤からの出血を除いて、UGIBの全ての原因を包含する。消化器潰瘍疾患の発生率は、プロトンポンプ阻害剤の開発および利用、ならびに個別の患者におけるHelicobacter pyloriの同定、処置、および根絶によって、減少してきた[8]。消化器潰瘍の発生率の減少にも関わらず、NVUGIBの患者の死亡率は3~4%の範囲である[9]。致命的であることは稀であるが、胃の悪性腫瘍は、従来の物理的止血法(クリップ、バンド、結紮)または焼灼によって対処することが困難な広範な出血を伴う脆弱な組織をもたらすことがある[10]。
【0010】
急性UGIBの患者の現在の内視鏡的管理には、熱療法(たとえばバイポーラ電気凝固、ヒータープローブ、モノポーラ電気凝固、アルゴンプラズマ凝固、およびレーザー)、注射(エピネフリン、硬化剤(たとえば無水エタノール、ポリドカノール、およびエタノールアミン)、トロンビンまたはフィブリン糊(トロンビンとフィブリノーゲン)、およびクリップが含まれる[11、12]。
【0011】
一般に、出血性消化器潰瘍の患者の大多数では、止血は上記の内視鏡的治療手順の組合せによって達成される。しかし、内視鏡処置が止血には十分でなく、したがって介入的放射線療法または手術介入を必要とする患者のサブセットが約5%残っている[13、14]。
【0012】
出血が活発に拍動しているために病変部の視認性が悪いこと、内視鏡では病変部の解剖学的位置決めが難しいこと、現在利用可能なツールによる最大限の療法であること、および重度の凝固障害などの種々の理由により、内視鏡療法は失敗する。米国外でのみ利用可能な3種の異なったスプレー系止血粉末デバイスとして、Ankeford Blood Stopper[15]、EndoClot(商標)[16]、およびHemoSpray(商標)[17~19]も、NVUGIBを制御すると考えられている。Hemosprayに関する潜在的な懸念は、これが、組織の壊死および臓器不全を引き起こす可能性がある広範な微小塞栓[20]を促進する血栓形成性ナノ粒子ベントナイトのために2009年に米国で撤退したWoundStat(商標)に関連する商品であることである。
【0013】
良性前立腺過形成(BPH)および前立腺がんは、高齢男性において手術介入によって処置される最も一般的な泌尿器科疾患のうちの2つである。推定50%の男性が50歳までにBPHの組織学的証拠を有しており、75%が80歳までにそのような証拠を呈すると考えられる。これらの患者のうち40~50%においては、BPHが臨床的に顕著になる。前立腺および尿道を含む手術介入による制御不能な出血の発生は比較的少ないが、これには病院において少なくとも2~3泊の入院によって対処すべき顕著なリスクが残っている。米国保健社会福祉省の2005年から2010年までの統計解析によれば、米国において観血的または経尿道手技による前立腺切除術からの平均15万件の退院があり、直接の手術費用は年間平均45億ドルを超えた。これらの患者において、観血的または経尿道の前立腺切除術の平均入院期間はそれぞれ3.1日および2.4日であった。手術中の顕著な血液損失(4~5%)によって輸血を受けた患者では、平均入院期間は5~6日に延び、それにより2010年の前立腺切除術患者の平均費用(29,300ドル)と比較してそれぞれの例で平均15,700ドル高くなっていた。前立腺切除術手技の費用は、手術室の使用時間、術者の時間、および入院期間によって高くなる。
【0014】
TURPはBPHのベンチマーク療法と考えられる。前立腺の部分的除去(切除)はTURPにおいてシストスコープ(経尿道膀胱内視鏡)および電気焼灼を使用する尿道経由の最小侵襲性手術によって達成される。TURPで使用されるシンループ電気焼灼は他のあまり一般的でない最小侵襲前立腺切除術手技よりも組織の壊死が少ないが、TURPによる術中出血が多い。TURPにおける適切な前立腺切除および出血の制御は、他の形態の前立腺切除術と同様にその重要な課題である。前立腺切除術における術中出血の量は、前立腺の大きさ、前立腺を切除するための時間の長さ、および術者の技能による。前立腺切除術の後の顕著な出血または大出血は膀胱および尿道における望ましくない血栓の滞留(およびそれによる尿の滞留)を引き起こすことが多く、それにより入院期間が長くなり、再手術を要することさえある。一般に、動脈の出血は特定しやすく、電気凝固によって制御されるが、TURPで多い静脈の出血は制御がより困難である。電気焼灼および潅流によって静脈の出血を制御しようとする試みはTURP症候群などの望ましくない転帰をもたらすことがある。標準治療による制御では、静脈出血は膀胱を潅流液で満たすことおよび膨張した経尿道バルーンカテーテルを適用して出血している前立腺空洞を圧迫することによって制御される。TURPに関連する術後罹患率は18%と高く、手術死亡率は0.3%と報告されている。高齢患者においては血液損失に関連する罹患および死亡のリスクは、凝固障害および心血管系の異常に関連して顕著に増大している。TURPの間の制御不能な出血は今でも前立腺切除の主な合併症の1つであり、そのためあまり望ましくない観血手術に転換することが多い。BPHの管理には顕著な進歩があるにも関わらず、制御不能な強い出血の発生率はいまだに6%程度であり、この出血に対処するための輸血率は4%~5%である。
【0015】
典型的なTURPでは入院期間は2~4日であり、出血が止まって尿が清澄になるまで、患者には膨張した尿バルーンカテーテルが設置される。TURPの後の術後出血を顕著に低減することができれば、カテーテル処置および病床を必要とする時間が短縮される。これはまた、尿管の感染、カテーテルに関連する患者の不快感、および関連する合併症の発生を減少させる。経尿道または観血手術に起因する顕著な血尿(尿中の血液)は血液動力学的不安定性および血栓の滞留を引き起こし、止血、血栓の除去、輸血、および凝固の評価についての緊急の医学的注意および医学的治療が必要になる。経尿道的アプローチによって顕著な血尿を処置することは手術が視覚的にも空間的にも制約されているので面倒である。止血を達成し、膀胱の血栓を除去するために、患者を手術室に戻して観血的膀胱手術を実施しなければならないことが多い。前立腺切除術を複雑化する要素は、TURPの患者は一般に、心臓血管系疾患などの他の慢性状態が存在するために抗凝固療法を受けていることである。出血のリスクのため、TURP手術の前にこれらの患者をクマジンおよびプラビックスなどの抗凝固医薬から離脱させることが好ましいが、手技中の発作または心筋梗塞の可能性を低減するために患者に医薬を続けさせながら手技を実施できることが好ましい。前立腺切除の後の顕著な出血を制御する経尿道的適用のための、好ましくは抗凝固療法を受けている個体の場合に効果的な、信頼でき持続できる止血手法が緊急に求められている。
【0016】
キトサン材料は種々の用途において大出血に対処するために当技術分野で使用されてきたが、成功の程度は様々であった。しかし、カテコール改変キトサンの可能性を解明し、体内、特に困難なin vivoの生物学的環境の中における、安全で信頼できかつ効果的な生体活性キトサン材料の送達のための代替のより良いキトサン系解決策を提供するための進歩および改善がぜひとも必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
簡単な要旨
本発明は溶解に耐える組織接着性キトサン材料に関する。これらのキトサン材料はカテコール改変キトサンを含み、本明細書では一般に「被覆材」と称し、この用語は本発明のキトサン材料から形成された固体状の乾燥した材料を意味するために使用される。記載したキトサン材料は最小侵襲性手技に好適であり得、そのために使用され得る。
【0018】
本明細書に記載したキトサン材料はキトサン材料それ自体に起因する数多くの有益な特性を有すること、およびこれらのキトサン材料は無数の可能な固体形態を取り得ることを理解されたい。本明細書に記載したキトサン材料に特徴的であり、これに起因する有益な特性には、それだけに限らないが、置換度および酸化のレベルを制御することによって材料を調節する能力が含まれる。置換度および酸化のレベルを制御して材料を調節することによって、キトサン材料はGI管、尿道、下部GI管、腹腔および胸腔などの内部体腔などの困難な生物学的環境における急速な分解に耐え、かつ約7日未満で十分に溶解して消失することができる。キトサン材料のさらなる有益な特性は、これが生体適合性、止血性、および組織接着性でもあることである。さらに、本明細書に記載した固体状の乾燥したキトサン材料は、その毛管性(孔の存在または多孔性)および/またはある場合には少ない圧(たとえば約1気圧)でもよい加圧によって干渉する液体を置き換えることができる最終形態または個別の乾燥した材料構築物として送達することができ、または乾燥粉末の場合には通気圧で送達することができる。本発明のキトサン材料は、迅速に接着することができて溶解に耐える最終形態または個別の乾燥した材料構築物を生じる。
【0019】
本明細書に記載した被覆材は、非限定的な例として、本発明のキトサン材料を使用して作成された最終形態として提供される。本明細書に記載し例示した被覆材は、カテコール改変キトサン材料の種々の試験物品、または最終形態への変換の例を提供し、これは固体キトサン材料の固体属性に起因することを実証している。さらなる乾燥した固体状キトサンの最終形態には、それだけに限らないが、凍結相分離マトリックスおよびそれによって形成された被覆材、繊維、粉末、フィルム、膜、メッシュ、プレジェットなどが含まれる。本開示は一般に、その特徴に鑑みて、種々の生理学的設定において出血を止めるために適用することができるキトサン被覆材に関する。実施形態にはとりわけ、キトサン胃腸管止血被覆材(CGHD)およびキトサン管腔内止血被覆材(CEHD)が含まれる。
【0020】
本発明の材料は以下の1つもしくは複数の、または全ての特性の組合せを有する。(1)裂けること、または機械的性能を犠牲にすることなく、送達のために圧縮することができる。(2)長さ、幅、および高さにおける顕著な寸法変化または機械的特性の損失なしに約37℃で血液および他の生物学的流体の存在下に適用することができる。(3)生物学的流体および血液の存在下に送達することができる。(4)手動でまたは最小侵襲性送達デバイスによって手術部位に送達することができる。(5)送達部位において圧縮した状態から膨張させることができる。(6)接着に干渉し得る親水性および疎水性の生物学的流体を除去することができる毛管現象、多孔性、および吸収性を可能にする。(7)湿潤化によって活性化され、均一な圧の印加で粘膜、切除した粘膜、および切除した組織に接着する。(8)それ自体または包装材に接着することなく、乾燥したときにそれ自体および包装材料に接触することができる。(9)湿潤接触が300秒を超えない場合にはそれ自体または包装もしくは送達材料に接着することなく、尿または血液で湿潤化したときにそれ自体および包装または送達材料に接触することができる、材料の少なくとも1つの組織接着側を含む。(10)均一に組織に接着し、局所での血栓形成を迅速に促進することができる。(11)送達デバイスから解放され、手術部位からの送達デバイスの回収を可能にすることができる。(12)適用最初の12時間、約37℃で、約pH3.0~約pH8の範囲の生物学的流体に曝露されたときに溶解に耐えることができる。(13)(送達デバイスがその場にある場合またはない場合に)胃腸管および尿道におけるチャネルなどのオストミー連結チャネルが、存在する材料または材料の残留物で閉塞されず、排泄通路が妨害されないことを可能にする。(14)傷害部位を保護し、治癒の促進を提供する。(15)オストミーの使用において7日未満で手術による助けなしに除去できるように、付着部位からの制御された緩徐な分解および/または溶解を提供する。(16)本発明の材料は粉末、フィルム、マトリックス、膜、薄いフォイル、プレジェット、繊維、およびコーティングのうちの1つを含んでよい。(17)本発明の組織接着性材料には、それだけに限らないが、接着性被覆材、接着性止血被覆材、内部接着性固定材、活性薬剤の局所制御放出のための接着性パッチ、縫合糸、ステープル、整形外科用骨固定材、閉塞性無縫合糸パッチ、ならびに血栓形成の促進および血管奇形のシーリングのための材料としての使用が含まれ得る。
【0021】
米国の既存のツールによってUGIBのかなりの部分は容易に制御されるが、活発な動脈出血の迅速な制御を提供する本発明の低リスクのデバイスに対するまだ満たされていないニーズが存在する。本発明を幅広く適用することにより、胃腸管出血の処置における罹患率および死亡率の顕著な低減とともに、関連する健康管理の費用の付随する低減が可能になる。
【0022】
本発明の本キトサン材料は、あらゆる胃腸管出血への適用における使用に適しており、たとえば標準的な内視鏡作業チャネル(直径3.2mm以下)を通るワイヤによって、またはバルーンカテーテル送達によって、キトサン胃腸管止血用被覆材(CGHD)として送達することができる。本発明の主題の材料は、ピンポイントの正確度を必要とし、活発に出血していて視野が障害されている条件下では困難であるクリッピング、熱凝固、および注射などの現在の手順に伴う欠陥に対処しまたはこれを軽減する機会を提供する。
【0023】
本発明は、上記組成物、上記組成物を使用する方法、および上記組成物を作成する方法を提供する。
【0024】
好ましい実施形態では、キトサン材料はカテコール改変キトサンを含み、材料から形成されたCGHD被覆材は止血性があり、500ミクロンまたはそれ未満の厚みを有する。CGHD被覆材は(i)約200ミクロンもしくはそれ未満、(ii)約100ミクロンもしくはそれ未満、または(iii)約50ミクロンもしくはそれ未満のうちの1つである乾燥被覆材厚みを有してよい。被覆材は約0.03g/cm~約0.7g/cmの範囲、(i)約0.3g/cm~約0.4g/cmの範囲、(ii)約0.4g/cm~約0.5g/cm、または約0.35g/cm~約0.55g/cmの範囲の密度を有してよい。被覆材は圧縮してもよい。被覆材は正方形、長方形、円形、または円形花弁形状であってよく、正方形もしくは長方形の長さおよび幅のそれぞれについての測度(measurement)は約10mm~約50mmの範囲であり得、または円形もしくは円形花弁形状については直径約10mm~約50mmの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、被覆材の測度は(i)10mm×10mm、(ii)20mm×20mm、または(iii)25mm×25mmのうちの1つである。被覆材は乾燥時に(1)15重量%(w/w)もしくはそれ未満、(2)8重量%(w/w)もしくはそれ未満、または(3)4重量%(w/w)もしくはそれ未満の含水率を有する。被覆材は接着側と非接着側とを有する。被覆材は第1の層に提供された接着側を有し得、非接着側は第2の層に提供されている。被覆材が湿潤している場合には被覆材の接着側が組織の表面に接着する。被覆材が湿潤している場合には被覆材の非接着側は送達デバイスに接着しない。被覆材は1分またはそれ未満で胃腸管粘膜に接着することができる。被覆材は組織部位においてキトサンのグルコサミンのC-2アミンで四級アンモニウムカチオンを形成することができる。被覆材はキトサン被覆材の中でo-キノンに酸化され、架橋したカテコールを含んでよい。キトサン被覆材は暗褐色の着色を含む褐色の着色を有してよい。一実施形態では、被覆材は酸化されていないカテコールを含んでよく、キトサン被覆材はピンクの着色を有する。被覆材は凍結乾燥されたラメラを含んでよい。被覆材は50ミクロンまたはそれ未満の厚みを有する凍結乾燥構造を含んでよい。被覆材は1つより多くの凍結乾燥された層を含む凍結乾燥構造を含んでよい。被覆材は紡糸された繊維を含んでよい。被覆材は多孔質表面を含んでよい。被覆材は多孔質表面を含んでよく、多孔質表面は(i)吸収材表面および(ii)水分を標的組織表面部位から再指向して遠ざけるチャネルのうち1つまたは複数を提供する。被覆材は湿潤条件では湿潤組織に接着し得る。被覆材の接着強度は約1kPaより大きいかまたはこれに等しくてもよい。被覆材は約37℃で少なくとも約6時間、水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液への溶解に耐える。被覆材はひび割れまたは裂けることなく折り畳み、または巻くことができる。被覆材は開いた、巻いていない、または折り畳んでいない状態で、閉じた、巻いた、または折り畳んだ状態の場合の同じ被覆材の外向きの表面積の約6倍、約5倍、または約4倍のうちの1つである外向きの表面積を有し得る。被覆材は約15:1、または約14:1、または約13:1、または約12:1、または約11:1、または約10:1、または約9:1、または約8:1、または約7:1、または約6:1、または約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1の、開いた、巻いていない、または折り畳んでいない状態の外向きの表面積の、閉じた、巻いた、または折り畳んだ状態に対する比を有し得る。被覆材はひび割れまたは裂けることなく穿孔または縫合することができる。被覆材は架橋することができる。被覆材は無傷で、バルーンデバイス、ワイヤデバイス、または内視鏡デバイスによって送達することができ、前記デバイスは3.2mmまたはそれ未満の直径を有する作業チャネルを含み、被覆材は作業チャネルを通して送達される。被覆材は湿潤化して、たとえば約200~300gの軽い圧力の印加で、30秒未満で胃粘膜に無傷で接着させることができる。被覆材は接着に干渉し得る親水性および疎水性の生物学的流体を除去することができる。被覆材は無傷でその場に留まり、約20ml/分~約150ml/分の中程度から滲出性の出血を止めることができる。被覆材は標的組織部位に接着した後で送達デバイスから容易に取り外される。被覆材は傷害部位に接着した後、浸食性酵素および約pH3の酸性環境の存在下で少なくとも6時間、溶解に耐えることができる。被覆材は少なくとも12時間、標的組織部位をシールし、保護することができる。被覆材は7日を超えない期間にわたって付着部位からの制御された緩徐な溶解を達成することができる。被覆材は折り畳み、また広げることができる。被覆材は巻き、また広げることができる。被覆材は適用後少なくとも12時間、約37℃で、水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液に容易に溶解しない。被覆材は適用後少なくとも24時間、約37℃で、水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液に容易に溶解しない。被覆材は送達デバイスに接着しない。被覆材は約37℃で水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液の存在下に長さおよび幅で約25%を超え、または厚みで約50%を超えるサイズの増加も減少もない。被覆材は傷害部位と相互作用する接着側を含み、キトサン被覆材は、被覆材が乾燥して折り畳まれた、または乾燥して巻かれた状態にあるときに送達デバイスまたは接着側のうちの1つと相互作用する非接着側を含む。被覆材は、被覆材の特徴に影響を与えずに最終的に滅菌することができる。キトサン被覆材は、被覆材の特徴に影響を与えずに制御された条件下で長時間保存することができる。
【0025】
本明細書に記載したデバイスによる処置に適したml/分単位のUGIB出血速度、または血流量は、約1ml/分~約200ml/分の範囲でよい。好ましい実施形態では、デバイスによって対処される出血速度は約1ml/分~約150ml/分の範囲である。Forrest 1a UGIBは約25ml/分である。Forrest 1aよりもっと大きな出血速度を被っている対象については、彼らが既に手術室にいない限り、生存の見込みはない。約20ml/分~25ml/分のUGIB出血速度は、「活発な」出血と考えられる。滲出性出血は一般に約1ml/分より大きい。それは、1ml/分などの低い出血速度では、対象が抗凝固療法を受けている場合、または抗凝固医薬を服用している以外の理由で凝固カスケードの障害を有している場合でなければ、典型的には血栓が生じて自然に止まることが指摘されているからである。不可逆的な抗凝固医薬を投与されている、または出血障害を有するそのような対象については、1ml/分の滲出性出血には懸念が残り、本発明の材料によって形成されたデバイスなどによって対処する必要がある。一部の実施形態では、約1ml/分~約25ml/分、または約1ml/分~約20ml/分、または約1ml/分~約15ml/分、または約1ml/分~約10ml/分、または約1ml/分~約5ml/分のUGIB出血速度に対処するために本明細書に記載したデバイスが使用される。一部の実施形態では、被覆材は疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置に使用することができる。たとえば、疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における被覆材の使用は、湿潤化に際して被覆材を傷害部位に直接接着することおよび被覆材を約30秒加圧することを含む。疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための被覆材は、接着に際して親水性および疎水性の生物学的流体を除去し得る。疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための被覆材は、被覆材を標的組織部位の所定の位置に残すことを含み、被覆材は少なくとも24時間、標的組織部位に残り得る。疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための被覆材は、標的組織部位においてゆっくりと溶解することができ、人の介入なしに7日またはそれ未満で完全に溶解する。
【0026】
一部の実施形態では、本明細書に開示する発明は、キトサン被覆材を生成する方法を含む。一実施形態では、本方法は、水性反応溶液中でキトサンおよびカテコールを用いて合成を実施するステップ、反応溶液のpHをpH5.5またはそれ未満に維持するステップ、反応溶液のpHを上昇させ、反応溶液への酸素の曝露を制御してカテコールの酸化および架橋を行なうステップ、ならびに反応溶液を乾燥するステップを含む。ある特定の実施形態では、本方法はステップの間の中間乾燥ステップを含まない。ある特定の実施形態では、本方法は反応溶液のpHを約5.8~約6.2に上昇させるステップを含む。キトサン被覆材を生成する方法の別の実施形態は、キトサンを含む第1の水溶液を凍結乾燥するステップ、キトサンを含む第2の水溶液を凍結乾燥するステップ、上記ステップのそれぞれから相互連結された多孔質構造の低密度キトサン被覆材を得るステップ、およびステップのそれぞれからの低密度キトサン被覆材を圧縮するステップ、ならびに圧縮された低密度キトサン被覆材から2層キトサン被覆材を調製するステップを含む、キトサン被覆材を生成する方法を含む。ある特定の実施形態では、上述の凍結乾燥ステップのそれぞれからの低密度キトサン被覆材は、圧縮の前に組み合わされる。ある特定の実施形態では、圧縮ステップは約20℃~約150℃の範囲の温度で行なわれる。ある特定の実施形態では、被覆材は約15%(w/w)未満の含水率まで乾燥される。
【0027】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において方法および材料は本発明における使用のために記載されており、当技術分野で公知の他の好適な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および実施例は説明のためのみであり、限定することを意図していない。本明細書で述べる全ての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は参照により全体として組み込まれる。一致しない場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
カテコール改変キトサンを含むキトサン材料であって、溶解に耐える乾燥固体形態である、キトサン材料。
(項目2)
500ミクロンまたはそれ未満の厚みを有する、項目1に記載のキトサン材料。
(項目3)
約0.03g/cm ~約0.7g/cm の範囲の密度を有する、項目1または2に記載のキトサン材料。
(項目4)
(i)約0.3g/cm ~約0.4g/cm 、(ii)約0.4g/cm ~約0.5g/cm の範囲の密度を有する、項目1または2に記載のキトサン材料。
(項目5)
約0.35g/cm ~約0.55g/cm の範囲の密度を有する、項目1または2に記載のキトサン材料。
(項目6)
圧縮されている、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目7)
前記材料が正方形、長方形、円形、または円形花弁形状であり、
正方形または長方形の長さおよび幅のそれぞれの測度が1)約10~約50mm、または2)30mm~約70mmの範囲であり得、
円形または円形花弁形状のそれぞれの直径測度が約10mm~約50mm、または30mm~約70mmの範囲である、
項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目8)
前記材料の測度が(i)70mm×70mm、(ii)50mm×50mm、(iii)30mm×30mm、(iv)25mm×25mm、(v)20mm×20mm、(vi)10mm×10mmのいずれか1つである、項目7に記載のキトサン材料。
(項目9)
(1)15重量%(w/w)もしくはそれ未満、(2)8重量%(w/w)もしくはそれ未満、または(3)4重量%(w/w)もしくはそれ未満の含水率を有する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目10)
接着側と非接着側とを有する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目11)
前記接着側が第1の層に提供され、前記非接着側が第2の層に提供されている、項目10に記載のキトサン材料。
(項目12)
前記材料が湿潤している場合に前記接着側が組織の表面に接着する、項目10に記載のキトサン材料。
(項目13)
前記材料が湿潤している場合に前記非接着側が送達デバイスに接着しない、項目10に記載のキトサン材料。
(項目14)
1分もしくはそれ未満で胃腸管粘膜に接着し、または3分もしくはそれ未満で膀胱粘膜に接着し、またはその両方である、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目15)
組織部位においてキトサンのグルコサミンのC-2アミンで四級アンモニウムカチオンを形成する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目16)
前記キトサン材料の中で前記カテコールがo-キノンに酸化されて架橋している、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目17)
1)暗褐色の着色を含む褐色の着色、または2)ピンク~ピンク系褐色の着色の着色を有する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目18)
前記カテコールが酸化されておらず、前記キトサン材料がピンクの着色を有する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目19)
凍結乾燥されたラメラをさらに含む、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目20)
前記凍結乾燥された構造が50ミクロンもしくはそれ未満、または100ミクロンもしくはそれ未満の厚みを有する、項目19に記載のキトサン材料。
(項目21)
前記凍結乾燥された構造が1つより多くの凍結乾燥された層を含む、項目19に記載のキトサン材料。
(項目22)
紡糸された繊維をさらに含む、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目23)
多孔質表面をさらに含む、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目24)
前記多孔質表面が(i)吸収材表面および(ii)水分を標的組織表面部位から再指向して遠ざけるチャネルのうち1つまたは複数を提供する、項目23に記載のキトサン材料。
(項目25)
湿潤条件では湿潤組織に接着する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目26)
材料接着強度が約1kPaより大きいかまたはこれに等しい、項目25に記載のキトサン材料。
(項目27)
約37℃で少なくとも約6時間、水、生理食塩水溶液、血液、GI液、または尿への溶解に耐える、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目28)
ひび割れまたは裂けることなく折り畳み、または巻くことができる、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目29)
開いた、巻いていない、または折り畳んでいない状態で、閉じた、巻いた、または折り畳んだ場合の同じ材料の外向きの表面積の約8倍、約7倍、約6倍、約5倍、または約4倍のうちの1つである外向きの表面積を有する、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目30)
開いた、巻いていない、または折り畳んでいない状態の外向きの表面積の、閉じた、巻いた、または折り畳んだ状態に対する比が約15:1、または約14:1、または約13:1、または約12:1、または約11:1、または約10:1、または約9:1、または約8:1、または約7:1、または約6:1、または約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1である、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目31)
ひび割れまたは裂けることなく穿孔または縫合することができる、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目32)
架橋されている、項目1から3のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目33)
無傷で、バルーンデバイス、ワイヤデバイス、または内視鏡デバイスによって送達することができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目34)
前記バルーンデバイスまたは前記ワイヤデバイスまたは前記内視鏡デバイスが3.2mmもしくはそれ未満または7.0mmもしくはそれ未満の直径を有する作業チャネルを含み、前記材料が前記を通して送達される、項目33に記載のキトサン材料。
(項目35)
湿潤化して軽い圧力の印加で、30秒未満で胃粘膜に無傷で接着させることができ、または湿潤化して3分未満で膀胱粘膜に接着させることができ、またはその両方である、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目36)
前記軽い圧力が約200~300gであり、または前記材料が2分未満で膀胱粘膜に無傷で接着し、またはその両方である、項目35に記載のキトサン材料。
(項目37)
接着に干渉し得る親水性および疎水性の生物学的流体を除去することができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目38)
無傷でその場に留まり、1)約20ml/分~約150ml/分、または2)約1ml/分~約150ml/分の範囲の中程度から滲出性の出血を止めることができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目39)
標的組織部位に接着した後で送達デバイスから容易に取り外される、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目40)
傷害部位に接着した後、浸食性酵素および約pH3の酸性環境の存在下で、または尿の存在下で、またはその両方で、少なくとも6時間、溶解に耐えることができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目41)
少なくとも12時間、標的組織部位をシールし、保護することができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目42)
7日を超えない期間にわたって付着部位からの制御された緩徐な溶解を達成することができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目43)
折り畳み、また広げることができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目44)
巻き、また広げることができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目45)
適用後少なくとも12時間、約37℃、約pH4.5~pH8で容易に溶解しない、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目46)
1)適用後少なくとも12時間もしくは2)適用後少なくとも24時間または1)と2)の両方で、約37℃で、水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液もしくは膀胱液または尿に容易に溶解しない、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目47)
送達デバイスに接着しない、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目48)
約37℃で水、生理食塩水溶液、血液、またはGI液もしくは膀胱液、または尿の存在下に長さおよび幅で約25%を超え、または厚みで約50%を超えるサイズの増加も減少もない、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目49)
傷害部位と相互作用する接着側を含み、前記材料が乾燥して折り畳まれた、または乾燥して巻かれた状態にあるときに送達デバイスまたは前記接着側のうちの1つと相互作用する非接着側を含む、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目50)
材料の特徴に影響を与えずに最終滅菌することができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目51)
材料の特徴に影響を与えずに制御された条件下で長時間保存することができる、項目1から32のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目52)
疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、項目1から51のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目53)
湿潤化に際して前記材料を傷害部位に直接接着することおよび前記材料を約30秒加圧することを含む、疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、項目1から51のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目54)
前記材料が接着に際して親水性および疎水性の生物学的流体を除去する、疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、項目1から51のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目55)
前記材料を標的組織部位のその場に残すことをさらに含む、疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、項目1から51のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目56)
前記材料が少なくとも24時間、前記標的組織部位に残る、疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、項目55に記載のキトサン材料。
(項目57)
被覆材が前記標的組織部位において緩徐に溶解することができ、人の介入なしに7日またはそれ未満で完全に溶解する、疾患、状態、障害、外傷、または傷害の処置における使用のための、項目55に記載のキトサン材料。
(項目58)
TURPと組み合わせた使用のための、項目1から51のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目59)
送達デバイスの存在下および送達デバイスの非存在下の両方において尿の通過が妨害されないことを可能にする、項目58に記載のキトサン材料。
(項目60)
項目1から51のいずれか一項に記載のキトサン材料を生成する方法。
(項目61)
(a)水性反応溶液中でキトサンおよびカテコールを用いて合成を実施するステップ、
(b)前記反応溶液をpH5.5またはそれ未満に維持するステップ、
(c)ステップ(b)の後で前記反応溶液のpHを上昇させ、前記反応溶液への酸素曝露を制御してカテコールの酸化および架橋を行なうステップ、ならびに
(d)前記反応溶液を乾燥するステップを含み、
ステップ(b)とステップ(c)の間に中間乾燥ステップを含まない、
カテコール改変キトサン材料を生成する方法。
(項目62)
ステップ(c)において前記反応溶液のpHを約5.8~約6.2の範囲に上昇させる、項目61に記載の方法。
(項目63)
(a)キトサンを含む第1の水溶液を凍結乾燥するステップ、
(b)キトサンを含む第2の水溶液を凍結乾燥するステップ、
(c)ステップ(a)および(b)のそれぞれから相互連結された多孔質構造の低密度キトサン材料を得るステップ、ならびに
(d)ステップ(a)および(b)のそれぞれからの前記低密度キトサン材料を圧縮するステップ、ならびに
(e)ステップ(a)および(b)のそれぞれからの前記圧縮された低密度キトサン材料から二層キトサン材料を調製するステップ
を含む、キトサン材料を生成する方法。
(項目64)
ステップ(a)および(b)のそれぞれからの前記低密度キトサン材料を圧縮の前に組み合わせる、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記ステップ(d)の圧縮を約20℃~約150℃の範囲の温度で行なうことができる、項目63に記載の方法。
(項目66)
被覆材を約15%(w/w)未満の含水率まで乾燥するステップをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目67)
(a)置換度を制御するステップ、
(b)酸化のレベルを制御するステップ、および
(c)乾燥した固体状のカテコール改変キトサン材料を調製するステップ
を含む、カテコール改変キトサン材料を生成する方法であって、
前記材料が約37℃で少なくとも約6時間、水、生理食塩水溶液、血液、GI液、または尿への溶解に耐える、方法。
(項目68)
乾燥固体状形態が粉末である、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目69)
乾燥固体状形態がマトリックスである、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目70)
乾燥固体状形態が膜である、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目71)
乾燥固体状形態が薄いフォイルである、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目72)
乾燥固体状形態がプレジェットである、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目73)
乾燥固体状形態が繊維である、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
(項目74)
乾燥固体状形態がコーティングである、項目1から59のいずれか一項に記載のキトサン材料。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図1B図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図1C図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図1D図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図1E図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図1F図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図1G図1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1Gは本発明の材料から形成された被覆材の紹介、設置、および使用を図示している。
図2図2は、本発明の材料から形成され、折り畳まれた両側のある被覆材を保持している手袋をはめた手のデジタル画像を図示している。暗い側は組織接着性のカテコール改変キトサン側であり、明るい側および他の縁部区域は未改変キトサン被覆材側である(未改変被覆材表面の直径は2.5インチ、改変カテコール被覆材表面の直径は2インチである)。
図3A図3Aおよび図3Bは、バルーンカテーテルを2時間適用することによって250mlのメスシリンダーの壁に接着させ、最初の付着の後48時間近くで25±3℃で0.9%w/w生理食塩水溶液に浸漬した、本発明の材料から形成された両側のあるカテコール改変キトサン被覆材のデジタル画像を図示している。48時間では元の未改変キトサン被覆材の痕跡がないことに注目されたい。図3Aは側面図、図3Bは平面図である。
図3B図3Aおよび図3Bは、バルーンカテーテルを2時間適用することによって250mlのメスシリンダーの壁に接着させ、最初の付着の後48時間近くで25±3℃で0.9%w/w生理食塩水溶液に浸漬した、本発明の材料から形成された両側のあるカテコール改変キトサン被覆材のデジタル画像を図示している。48時間では元の未改変キトサン被覆材の痕跡がないことに注目されたい。図3Aは側面図、図3Bは平面図である。
図4図4は、100ポンド近い雌ブタの膀胱頸部および尿道管腔に均一に付着した、30分以内に本発明の材料から形成されたカテコールキトサン被覆材のデジタル内視鏡画像を図示している。膀胱は尿および観察を助けるために注入した生理食塩水で膨潤している。画像は、ブタの膀胱壁を通る内視鏡のトロカール送達によって、また内視鏡の視点をブタの膀胱頸部および尿道の入口に向けて取得した。画像は、開存した尿道、急速に分解しているかすかな未改変キトサン裏打ち、ならびに膀胱頸部および尿道の管腔に密着している改変カテコール被覆材を示している。
図5A図5Aおよび5Bは、1つの画像が折り畳まれた被覆材の平面図、他の全ての画像が断面/側面を図示している。参照番号は、添付した図に含まれている場合には、以下のように文章と対応している。1-前立腺、2-膀胱、3-尿道粘膜、4-カテーテルボディーチューブ、5-シース、6-送達カテーテルの送達バルーン上の巻かれたCEHD、7a-取付け点(14)が送達バルーンカテーテルの近位(左)にある円錐形に折り畳まれたCEHD、7b-取付け点(14)が送達バルーンカテーテルの遠位(右)にある円錐形に折り畳まれたCEHD、7c-付着点(14)が遠位にあるCEHD円錐形に折り畳まれたCEHDの平面図。1つのバルーンの遠位および近位に取り付けられた2つの被覆材または近位のみに取り付けられた1つだけの被覆材があり得ることに注意されたい。代替の送達は送達バルーンの周囲に円筒状に巻き付けられたCEHDによるものであるが、図示していない。8-送達バルーン(比較的好ましくないシングルバルーンカテーテルおよび好ましいダブルバルーンの図がある)。ダブルバルーンカテーテルでは送達バルーンは近位バルーンでもある。9-円錐状に折り畳まれた被覆材の先端に向けて円形ウィンドウ取付け点を創成するための切込み(9a:近位、9b:遠位)、10-相互に対向する円錐状被覆材の2つの面の重なり合う縁部、11-円錐状に折り畳まれたCEHDの先端(11a:近位、11b:遠位)、12-潅流ポート(12a:近位、12b:遠位)、14-CEHDの本体が送達バルーンの上に折り畳まれ、かつその周囲に巻き付けられたバルーンカテーテルへの円錐状に折り畳まれたCEHDの先端の取付け点。単純な両側加圧接着によって、CEHD先端のカテーテルへの取付けが奏功している。この取付けは、CEHDの適用においてCEHDがシースに引っかかることなく、折り畳まれ巻かれたCEHDの上をぴったり合ったシースがスライドすることを補助する。15-ダブルバルーン送達カテーテルにおけるバルーンの遠位または設置/位置決め。ダブルバルーンカテーテルはシングルバルーンカテーテルよりも好ましい。それは、遠位バルーンを使用してシースを破裂させてその除去を開始することができ、それにより送達バルーンを位置決めする理想的な能力が得られるからである。遠位バルーンは、吻合および膀胱頸部の傷害の場合にCEHDを膀胱頸部に並置させるために使用することができる。16-バルーンカテーテル用のポート(2バルーンカテーテルでは3つのポートが典型的であるが、2つのバルーンを有するマルチルーメンカテーテルはより多くのポートを有することがある)。典型的にはそれぞれのバルーンに1つのポート、ならびに潅流および排液のための少なくとも1つのポイントがある。ポートは典型的には標準的なシリンジルアコネクターに連結される。
図5B】同上。
図6図6は、キトサン(R1=Hおよびアセチル基)およびカテコール改変キトサン(R1=H、アセチル、ヒドロコーヒー酸基、コーヒー酸基、trans-コーヒー酸基、およびホモプロトカテチュ酸基)の化学構造表示を図示している。キトサンポリマーについては、好ましくはn>60、より好ましくはn>300、最も好ましくはn>600である。
図7図7は、1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノ-プロピル)-カルボジイミドの存在下のN-アシル化付加反応を図示しており、pH5.5の水溶液中で3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸がキトサンのC-2アミンに置換度25%で共有結合する。
図8図8は、高いpHおよび酸素の存在下におけるカテコール改変キトサンのオルト-キノン改変キトサンへの酸化を図示している。
図9図9は、カテコール改変キトサンとキトサンとの間の架橋を引き起こすシッフ塩基(A)およびマイケル付加(B)反応を図示している。
図10図10は、セルの両端に巻き付けて圧力タイを適用することによって長さ6cm、直径1.5cmのブタ小腸粘膜下層の伸長した管を支持することができる長さ4cmおよび内径1.5cmのガラス製フローセルを図示している。
図11図11は、セルに支持されたex vivo組織表面に接着された新規な被覆材の37℃における尿の流れのもとでの接着性および耐溶解性を試験するための典型的なフローセルの設計(3つのセルが平行に取り付けられている)を図示している。
図12A図12A図12Gは、キトサン被覆材を調製するために使用したバッチの種々のパラメーターの表を示す図である。
図12B】同上。
図12C】同上。
図12D】同上。
図12E】同上。
図12F】同上。
図12G】同上。
図13A図13A図13Eは、処方、ならびに溶解性、折り畳み性、破裂試験、ex vivo、加速安定性、およびin vivo特徴を含む種々のキトサン被覆材調製物の表を示す図である。
図13B】同上。
図13C】同上。
図13D】同上。
図13E】同上。
図14図14は、2.5インチ×直径2インチ(切断前)で、ほぼ50ミクロンに圧縮された円形のカテコール改変キトサン被覆材を図示している。これらのカテコール改変キトサン被覆材の着色は左から右へ、明るいピンク系褐色(第1の被覆材)、暗いピンク系褐色の2つの被覆材、2つの黄褐色被覆材(ピンクなし)、1つの褐色の被覆材、および最後に1つの暗褐色の被覆材の範囲である。カテコールキトサン被覆材5および6は2.5インチ×2インチの鋳型から形成されており、いずれも2.5インチの鋳型から形成された未改変キトサン被覆材で裏打ちされている。未改変キトサンは被覆材6の白色のハロー(褐色もピンク色もなし)として明瞭に見ることができる。カテコールキトサンおよび未改変キトサン被覆材は圧縮の間に相互に接着して最終共有密度>0.4g/cmになっている。ピンクの着色は未酸化カテコールに伴っており、褐色は酸化カテコール(o-キノン)に伴っている。明るい褐色および明るいピンク色はカテコールによるキトサンの低い置換度(10%に近い)に伴っており、より暗い着色(ピンク系褐色および褐色)はカテコールによるキトサンの高い置換度(20%に近い)に伴っている。
図15図15は、折り畳んで広げたカテコール改変キトサン被覆材を図示しており、折り畳み軸(折り目)が見えるが元のままである。
図16A図16A~16Cは、溶解試験の結果を示す表を図示している。
図16B】同上。
図16C】同上。
図17A図17A~17Cは、処方アプローチ、親水性ポリマー、および親水性ポリマー成分の溶液中%w/wを示す表を図示している。
図17B】同上。
図17C】同上。
図18図18は、胃粘膜に密着した本発明の改変カテコールキトサン被覆材の胃内視鏡デジタル画像を図示しており、胃環境における僅かな膨潤、ならびに被覆材を動脈傷害に適用した3時間後のヘパリン化(ACT250秒以上)したブタの胃の内部の傷ついた胃大網動脈の上部胃腸管出血(Forrest 1a)が効果的に制御されていることを示している。
図19図19は、図18の画像を取得して45分以内に行なった動物の屠殺時における図18の被覆材の下の強い元のままの血栓の存在を示している。改変キトサン被覆材は屠殺時に傷害および胃粘膜に均一に接着していることが示された。
図20図20~25は、ブタ小腸粘膜下層の管腔を含む直径15mmのガラスセルを通して0.9%の生理食塩水を循環するペリスタポンプシステムを用い、27℃に近いシステム温度、20ml/分の流速で163時間(7日(168時間)に近い)、ポンプで流した実験を図示している。本発明の改変カテコールキトサン材料の小さな10mm×10mmのパッチをガラスセルの内部で小腸粘膜下層表面に手で貼り付け、経時的に観察した。画像は、接着性の損失なしに7日にわたって材料が粘膜下層管腔にしっかりと接着したままであったことを示している。7日目にセルから管腔を取り出したとき、材料は分解していて極めて脆弱になっていたことが見出された。このシステムを使用して、経尿道開発のための処方をスクリーニングした。このモデルでは未改変のキトサンの存続は2~3時間未満であった。
図21】同上。
図22】同上。
図23】同上。
図24】同上。
図25】同上。
図26図26は、胃粘膜に密着した本発明の材料から形成した改変カテコールキトサン被覆材の胃内視鏡デジタル画像を図示しており、胃環境における僅かな膨潤、および材料を動脈傷害に適用した3時間後のヘパリン化(ACT250秒以上)したブタの胃の内部の傷ついた胃大網動脈の上部胃腸管出血(Forrest 1a)が効果的に制御されていることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
一態様では、本発明はカテコール改変キトサンを含み、以下の特徴の1つもしくは複数、またはその全てによって特徴付けられる生体適合性で折り畳み可能な薄いプロファイルのキトサン系被覆材に関する。(1)バルーンによって、または内視鏡デバイスを通して、無傷で送達することができる。(2)軽い圧力の印加で30秒未満で湿潤し、胃粘膜に無傷で接着させることができる。(3)接着に干渉し得る親水性および疎水性の生物学的流体を除去することができる毛管現象、多孔性、および吸収性を有する。(4)無傷でその場に留まり、中程度から滲出性の出血、たとえば約20ml/分~約100ml/分、またはそれを超える出血速度を止めることができる。(5)送達デバイスから解放され、GI環境からの送達デバイスの回収を可能にすることができる。(6)GI環境における浸食性の酵素および酸性度(pH3以上)の中で不利な急速な分解(6時間未満)に耐えることができる。(7)好ましくは12時間まで、より好ましくは24時間まで、最も好ましくは96時間まで胃腸管の傷害部位を保護し、それに続く急速な治癒および閉鎖を補助することができる。(8)付着部位からの制御された緩徐な溶解を達成することができ、それにより、7日未満で補助なしに完全に除去することが可能で、溶解した残留物が安全に消化管を通過できる。
【0031】
本発明は、折り畳み可能で薄い(厚み約500ミクロン以下)組織接着性のキトサン系止血被覆材を使用する経尿道前立腺切除術、観血的前立腺切除術、膀胱切除における迅速な出血制御に対処する。本発明の材料から形成される被覆材は、以下の特徴の1つもしくは複数、または全てを有する。(1)裂けること、または機械的性能を犠牲にすることなく、折り畳み、または巻き、および折り畳んだものもしくは巻いたものを広げることができる。(2)長さ、幅、および高さにおける顕著な寸法変化または機械的特性の損失なしに約37℃で血液および尿の存在下に適用することができる。(3)尿および血液の存在下に送達することができる。(4)経管腔または経尿道送達デバイスによって傷害部位に送達することができる。(5)折り畳んだものまたは巻いたものを送達部位で広げることができる。(6)接着に干渉し得る親水性および疎水性の生物学的流体を除去することができる毛管現象、多孔性、および吸収性によって特徴付けられる。(7)湿潤化によって活性化され、均一な圧力の印加で膀胱粘膜、切除した膀胱粘膜、および切除した前立腺に接着する。(8)それ自体または包装材に接着することなく、乾燥したときにそれ自体および包装材料に接触することができる。(9)湿潤接触が約300秒以下である場合にはそれ自体または包装もしくは送達材料に接着することなく、尿または血液で湿潤化したときにそれ自体および包装または送達材料に接触することができる被覆材の組織接着側を含む。(10)組織に均一に接着し、約50mmHg以下の圧力で、中程度から滲出性の出血、またはたとえば約20ml/分~約100ml/分、もしくはそれを超える出血速度を迅速に止めることができ、外来の手技としてTURPを実施することを可能にする機会を提供する。(11)送達デバイスから解放され、尿道からの送達デバイスの回収を可能にすることができる。(12)適用最初の約12時間、約37℃で、約pH4.5~約pH8の尿に曝露したときに溶解に耐えることができる。(13)(送達デバイスがその場に存在する場合または存在しない場合に)存在する被覆材または被覆材の残留物で尿道が閉塞されず、尿の通過が妨害されないことを可能にする。(14)傷害部位を保護し、治癒の促進を提供する。(15)約7日未満で手術による助けなしに除去できるように、付着部位(膀胱頸部、前立腺、および/または尿道)からの制御された緩徐な分解および/または溶解を提供する。
【0032】
本発明は、(1)非侵襲的手技を使用して前立腺切除術における出血を迅速に制御する能力、(2)抗凝固療法を受けている患者における出血を制御する能力、(3)長期のカテーテル使用の必要性なしに出血を制御することによる患者の疼痛および不快感の顕著な低減、(4)入院期間の顕著な低減、(5)健康管理の費用の顕著な低減、(6)罹患率の顕著な低減、および(7)死亡率の低減への転帰の傾向を提供する。
【0033】
本明細書で使用される場合、膀胱粘膜は、手術(たとえば外科的手術)によって露出された任意の組織表面を含む膀胱の任意の露出された組織表面を含んで幅広く定義される。したがって膀胱粘膜は膀胱内に天然に存在する膀胱粘膜、切除された膀胱粘膜、および切除された前立腺、その他を含む。
【0034】
キトサン管腔内止血被覆材(CEHD)は、本明細書で使用される場合、止血性があり、管腔内区域、たとえば膀胱の内部で使用することができるキトサン被覆材を意味する。CEHDはその適用の場所に限定されず、それだけに限らないが膀胱粘膜を含む人体内部の任意の位置に適用されるキトサン被覆材を含む。
【0035】
本明細書に記載したデバイスによる処置に適したml/分単位の出血速度、即ち血液流速は約1ml/分~約200ml/分の範囲であってよい。好ましい実施形態では、デバイスが対処する出血速度は約1ml/分~約150ml/分の範囲である。約20ml/分~25ml/分の出血速度は「活発な」出血と考えられる。滲出性出血は一般に約1ml/分より大きい。それは、1ml/分などの低い出血速度では、対象が抗凝固療法を受けている場合、または抗凝固医薬を服用している以外の理由で凝固カスケードの障害を有している場合でなければ、典型的には血栓が生じて自然に止まることが指摘されているからである。不可逆的な抗凝固医薬を投与されている、または出血障害を有するそのような対象については、1ml/分の滲出性出血には懸念が残り、本発明の材料によって形成されたデバイスなどによって対処する必要がある。一部の実施形態では、約1ml/分~約25ml/分、または約1ml/分~約20ml/分、または約1ml/分~約15ml/分、または約1ml/分~約10ml/分、または約1ml/分~約5ml/分のTURP出血速度に対処するために本明細書に記載したデバイスが使用される。
【0036】
TURP送達デバイスには、TURP手技で使用される任意のデバイスまたはTURP手技に関連して使用される任意のデバイスが含まれ得る。
【0037】
キトサン被覆材
キトサン被覆材は種々の量のキトサンを含む組成物を意味し得る。キトサン被覆材の一般的な含量、一般的な化学組成、および種々の形態は、たとえば米国特許第7820872号、第7482503号、第7371403号、第8313474号、第7897832号、第9004918号、第8920514号、第9204957号、第8741335号、第8269058号、第9205170号、および第10086105号に記載されている。このようなキトサン被覆材は、既に記載したその化学的および物理的特性により、出血を止めるために使用されてきた。
【0038】
使用されるキトサンは、好ましくは、非哺乳動物材料、ポリ[β-(1→4)-2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノースを含む。キトサンは、たとえばエビなどの動物甲殻類の殻から得られるキチンから従来の方法で加工することができる。キトサンは生体適合性かつ体内で生分解性であり得、無害な材料であるグルコサミンに分解することができる。本明細書で使用されるカテコール改変キトサンは、カテコール添加キトサンへの言及を含み得る。
【0039】
キトサン被覆材は乾燥していても湿潤していてもよい。キトサン被覆材の含水率が約15重量%未満、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満である場合には、キトサン被覆材は「乾燥」している。キトサン被覆材が生理学的環境および生物学的流体の中の水、または水溶液の中の水を含む水の源と接触していた場合には、キトサン被覆材は「湿潤」している。たとえば、本開示に記載したキトサン被覆材が胃腸管液、尿、もしくは血液、または胃腸管もしくは膀胱の組織表面(膀胱粘膜またはGI粘膜)と接触すれば、キトサン被覆材は湿潤になる。実質的に固体形態で残存しているキトサン被覆材は、キトサン被覆材の組織表面への接着を可能にするのに十分な量で、胃腸管または膀胱粘膜の生理的環境において水/水分を吸収し、置き換え、再指向し、または導く。接着したキトサン被覆材は創傷表面をシールし、さらなる出血を遅らせまたは止めるために使用することができる。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の材料から形成されたキトサン胃腸管止血被覆材(CGHD)またはキトサン管腔内止血被覆材(CEHD)は、好ましくは25重量%より多いまたはそれに等しいキトサン、より好ましくは50重量%より多いまたはそれに等しいキトサン、最も好ましくは75重量%より多いまたはそれに等しいキトサンを含む。キトサンは、β-(1-4)グリコシドリンケージで連結されたグルコサミンおよびN-アセチルグルコサミン残基からなる直鎖状多糖類(典型的にはグルコサミンの数はN-アセチルグルコサミンの数以上)を記述するために使用される一般名であり、その組成物は希釈した水性酸に可溶である(Roberts 1991)。キトサンファミリーはポリ-β-(1-4)-N-アセチルグルコサミンおよびアセチル残基分画を有するポリ-β-(1-4)-N-グルコサミンを包含し、そのモチーフ修飾(ランダムまたはブロック)はキトサンの化学に影響する。キトサンのグルコサミン環のC-2アミノ基はプロトン化が可能であり、したがって、水中でのキトサンの可溶化を可能にする(pKa約6.5)(Roberts 1991)。たとえばグアー、ペクチン、デンプン、およびポリアクリル酸などの他の親水性ポリマーを使用してもよい。
【0041】
CGHDの好ましい実施形態では、本発明の材料から形成された被覆材はポリマー性であり、薄く(好ましくは乾燥した被覆材の厚みは約500ミクロン以下、より好ましくは厚み約200ミクロン以下、最も好ましくは厚み約100ミクロン以下)、可撓性、多孔質、乾燥、生体適合性、組織接着性、および止血性である。
【0042】
CEHDの好ましい実施形態では、本発明の材料から形成された被覆材はポリマー性であり、薄く(好ましくは乾燥した被覆材の厚みは約500ミクロン以下、より好ましくは厚み約200ミクロン以下または約100ミクロン以下、最も好ましくは厚み約150ミクロン以下)、可撓性、多孔質、乾燥、生体適合性、組織接着性、および止血性である。
【0043】
一部の実施形態では、被覆材は、厚みは約100ミクロンであり、約70ミクロンの2層(接着性で耐溶解性の1層およびキトサンのみの1層)で送達に際して150ミクロンに近い合計厚みを有する2層被覆材を含んでもよい。
【0044】
被覆材の形状に制限はないが、正方形、長方形、円形、または円形花弁形状の被覆材が好ましい。一実施形態では、最大サイズは約50mm×50mmまでの正方形または直径50mmでよい。別の実施形態では、被覆材のサイズは約45mm×45mmの正方形または45mmの直径、40mm×40mmの正方形または40mmの直径、35mm×35mmの正方形または35mmの直径、30mm×30mmの正方形または30mmの直径、25mm×25mmの正方形または25mmの直径、15mm×15mmの正方形または15mmの直径、10mm×10mmの正方形または10mmの直径などであってよい。さらに別の実施形態では、長さおよび幅のそれぞれは、約10mm~約50mm、または約10mm~約50mmの直径の範囲であってよい。被覆材のサイズが大きくなると、限られた空洞における送達の制限の対象になることが多くなる。
【0045】
別の好ましい実施形態では、被覆材はバルーンカテーテルによって送達され、被覆材は約5cmまたは最大7cmの直径サイズを有する。バルーンカテーテルは好ましくは被覆材の中央の小穴(一般に直径約4mm~約7mmであるカテーテルバルーンとほぼ同じ直径、または穴はより大きく、たとえば12mmまででよい)を通過し、被覆材(被覆材の直径30mm~70mm)は穴のいずれかの側の小さな被覆材タブによってバルーンの反対側のカテーテルチューブ(カテーテルと同じ直径)に接着する。一部の実施形態では、折り畳まれた、巻かれた、または圧縮された状態からの被覆材の表面積の変化は、被覆材が折り畳まれていない、巻かれていない、または圧縮されていない状態にあるときの表面積の約8分の1である。本明細書に記載した被覆材は、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない状態において大きな被覆材表面積を提供し得る。あるいは、本明細書に記載した被覆材は、閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた状態において小さな被覆材表面積を提供し得る。被覆材は折り畳まれ、巻かれ、または閉じられることができるので、より圧縮され、送達のために保護されることができ、標的の組織処置部位に送達される前に被覆材の表面が尚早に湿潤化される可能性が低減される。
【0046】
CGHDの好ましい実施形態では、被覆材の厚みは約50ミクロン、直径約2.5cmであり、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない、約9.856cmの外向きの表面積を有することになる。送達デバイスシースの内側では(典型的なフッ素化エチレンプロピレン(FEP)送達管の壁厚は約150ミクロンである)、閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた被覆材は(長さ1.25cmの円筒の中で)、直径0.45cmの胃内視鏡のチャネルの中で約2.07cm、または直径0.32cmの胃内視鏡のチャネルの中で約1.56cm、または直径0.28cmの胃内視鏡のチャネルの中で約1.41cmの外向きの円筒状表面積を有することになる。したがって、1つの例では、本発明の被覆材は、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない状態では、閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた状態にある場合の同じ被覆材の外向きの表面積の約6倍、約5倍、または約4倍の外向きの表面積を有してよい。一部の実施形態では、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない被覆材の外向きの表面積の閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた被覆材に対する比は約15:1、または約14:1、または約13:1、または約12:1、または約11:1、または約10:1、または約9:1、または約8:1、または約7:1、または約6:1、または約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1である。
【0047】
一部のCGHD実施形態では、最も一般的な胃内視鏡のチャネルの直径は0.28cm(2.8mm)であり、したがってこれが被覆材送達のための最も好ましいサイズである。あるいは、より好ましいサイズは直径0.32cmであり、これは標準的な胃内視鏡のチャネルの直径であるが、0.28cmのチャネルほど一般的ではない。別の好ましい胃内視鏡のチャネル直径のサイズは0.45cm~0.32cmであり、これは特注の胃内視鏡チャネルのサイズであり、したがって0.32cmまたは0.28cmの胃内視鏡チャネル直径のサイズほど一般的ではない。
【0048】
CEHDの好ましい実施形態では、被覆材の厚みは約100ミクロン、直径約5.0cmであり、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない、約38.66cmの外向きの表面積を有することになる。バルーン送達デバイスの上では、閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた被覆材は(長さ2.5cmの円筒の中で)、被覆材の直径を3.0cmとして、直径7mmのカテーテルバルーンの上で約5.09cm、または直径4mmのカテーテルバルーンの中で開いたときに約14.0cm、閉じたときに1.85cmの外向きの円筒状表面積を有することになる。したがって、1つの例では、本発明の被覆材は、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない状態では、閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた状態にある場合の同じ被覆材の外向きの表面積の約8倍の外向きの表面積を有してよい。一部の実施形態では、開かれた、巻かれていない、または折り畳まれていない被覆材の外向きの表面積の閉じられた、巻かれた、または折り畳まれた被覆材に対する比は約15:1、または約14:1、または約13:1、または約12:1、または約11:1、または約10:1、または約9:1、または約8:1、または約7:1、または約6:1、または約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1である。
【0049】
一部のCEHD実施形態では、TURPにおける送達デバイスとともに使用される最も一般的なカテーテルバルーンの直径は0.4cm(4.0mm)であり、したがってこれが被覆材送達のための最も好ましいサイズである。あるいは、より好ましいサイズは直径0.5cmであり、これはTURP送達デバイスのための標準的なカテーテルの直径であるが、0.4cmのカテーテルほど一般的ではない。TURP送達デバイスの別の好ましいカテーテル直径のサイズは0.5cm~0.7cmであり、これは特注のチャネルのサイズであり、したがって0.4または0.5cmのカテーテル直径のサイズほど一般的ではない。
【0050】
本明細書に記載した被覆材は折り畳み、および広げることができ、好ましくは適用最初の6時間、より好ましくは適用最初の12時間、最も好ましくは適用最初の24時間以内に約37℃で血液またはGI液もしく尿などの体液に容易に溶解せず、GI液または膀胱液との接触により約7日以内に約37℃で分解し、および/または完全に溶解する。
【0051】
本明細書に記載した被覆材は送達デバイスに接着せず、感知できるほど膨潤も収縮もしない。即ち、これは血液および体液(GI液または尿もしくは膀胱液またはそれらの混合物)の存在下、約37℃で長さおよび幅が約25%を超え、または厚みが約50%を超えてサイズが増加も減少もしない。
【0052】
好ましい実施形態では、被覆材は被覆材の特徴に影響することなく熱滅菌してよい。これをその包装材の中で約21℃~約25℃の室温で制御された条件下に保存すると、その組織接着特性、機械的特性、GIまたは膀胱液中での溶解特性、膨潤特性、および止血特性は安定であり、経時的に(たとえば約2年以下)感知できるほど変化しない。
【0053】
好ましい実施形態では、被覆材は組織接着側と非接着側とを有する。この実施形態では、非接着側は、湿潤化したときにそれ自体から、ならびに管腔の中および/または胃腸管もしくは膀胱の中で被覆材を加圧する任意のアプリケーターまたは送達デバイスの表面から、容易に滑って外れる表面を提供し得る。
【0054】
被覆材の好ましい実施形態は、これが含水率約15%以下、または約8%以下の実質的に乾燥したキトサン組成物から形成されていることである。乾燥したキトサン組成物は、好ましくはキトサンと水の水溶液の相分離および乾燥を使用して形成される。乾燥したキトサン被覆材は、好ましくは適当なサイズに切断され得るシート形態で調製される。
【0055】
生体適合性、生体溶解性、組織接着性のキトサン被覆材の好ましい実施形態は、約37℃で少なくとも約6時間、胃腸管(GI)液および血液中で溶解に耐えることができ、上部胃腸管の低いpHおよび強い酵素消化液の中での急速な溶解および分解への耐性を促進する材料および材料構造を含む。上部胃腸消化管はキトサン、セルロース、およびデンプンなどの大部分の有機物を急速に消化するように進化してきたので、これは本明細書で開示するキトサン被覆材の顕著な利点である。
【0056】
生体適合性、生体溶解性、組織接着性のキトサン被覆材の好ましい実施形態は、約37℃で少なくとも約6時間、膀胱液および血液の中で溶解に耐えることができ、膀胱内の尿の中での急速な溶解および分解への耐性を促進する材料および材料構造を含む。これは本明細書で開示するキトサン被覆材の顕著な利点である。
【0057】
本明細書で提供するキトサン被覆材は、たとえばGIまたは膀胱内の粘膜表面に軽い圧力、即ち数百KPaまでの圧力で適用することができる。本明細書で使用される場合、組織表面の被覆材に適用される軽い圧力は、組織の顕著な変形または移動を伴わずにキトサン被覆材を傷害部位に付着させ、接触させたまま保持し、それによりキトサン被覆材をその組成構造および特徴によって傷害部位との接着を促進して出血を止めるように相互作用することを可能にする圧力を示す。一部の実施形態では、軽い圧力は、最も好ましくは約10kPaもしくはそれ未満、より好ましくは25kPaもしくはそれ未満、または好ましくは50kPaもしくはそれ未満の圧力である(100g/cm=9.8kPaであることに留意されたい)。典型的には胃などの軟組織に100kPaを超える負荷をかけると顕著な変形が生じ、支持するための反対方向への圧力を加えずに加圧することは不可能になる。ヒトの胃の弾性モジュラスの調査はSaraf et al. 2007. Saraf, H. et al., Mechanical properties of soft human tissues under dynamic loading, J. OF BIOMECHANICS, 40(9), pp. 1960-1967 (2007)に提供されている。
【0058】
キトサン被覆材の生成
本発明のキトサン被覆材は種々の方法およびプロセスを使用して産生することができる。一部の実施形態では、キトサン被覆材は凍結相分離および乾燥によって形成され得る。代替の実施形態では、被覆材は凍結およびそれに続く乾燥の前の、低密度発泡体を提供するための発泡剤の添加によって形成される。凍結相分離およびそれに続く昇華による凍結溶媒の除去は、凍結乾燥と称される。凍結相分離は希薄溶液からの固化のプロセスであり、希薄溶液を保持している容器または鋳型の表面を通る熱の除去およびそれによる温度の低下によって、純粋な溶媒の局所的な固体結晶核形成ならびにそれに続く純粋な溶媒の結晶の伝播および成長がもたらされる。希薄溶液中での純粋な溶媒結晶の成長の結果、溶質は成長する結晶前線から拡散して、成長する結晶の隙間で固化する。希薄ポリマー水溶液の凍結相分離により、氷の厚い層の間の薄いポリマーラメラの交互の層が生じる。ポリマーラメラを破壊しない方法によって氷を除去すれば、相互連結した多孔質構造を有する低密度ポリマー被覆材が得られる。たとえば一実施形態では、低密度ポリマー被覆材は約0.005g/cm~約0.05g/cmの初期被覆材密度を有し得る。
【0059】
代替の実施形態では、凍結相分離被覆材は発泡した希薄溶液の凍結およびそれに続く乾燥によって形成される。代替の実施形態では、被覆材は遠心紡糸、電気紡糸、または凝固浴の中への溶媒繊維押出しなどの不織繊維紡糸プロセスによって形成される。さらに別の代替の実施形態では、本発明の材料から形成される乾燥被覆材は織物繊維形成プロセスから形成され得る。さらに別の代替の実施形態では、本発明の材料から形成される乾燥被覆材は相反転および非溶媒による沈殿(典型的には透析膜および濾過膜を製造するために使用される)によって形成され得る。さらに別の代替の実施形態では、本発明の材料から形成される被覆材はアディティブ3D印刷プロセスによって形成され得る。
【0060】
本発明の材料から形成される好ましい実施形態では、被覆材調製プロセスは最初の被覆材の密度を最初の好ましい範囲の約0.005g/cm~約0.05g/cmから最終の好ましい範囲の約0.03g/cm~約0.7g/cmに変化させる圧縮プロセスを含んでよい。しかし、約0.08g/cm~約1.2g/cmの範囲も意図される。約1.5g/cmの密度は孔のないキトサン被覆材の密度であることが留意される。圧縮プロセスは約20℃~約150℃の範囲の温度の適用を含んでよい。圧縮され乾燥した被覆材の生物学的流体との接触に際しての実質的な被覆材の膨潤を避けるために、圧縮の温度は、好ましくは、それだけに限らないが、対流、伝導、および輻射を含み得る方法によって適用され、圧縮される被覆材の温度は好ましくは少なくとも約80℃で少なくとも約15秒、維持されるべきである。
【0061】
圧縮の間の熱は、キトサンにひび割れまたは裂け目を生じずにキトサンを可塑化し成形することを可能にする手段である(非破壊的成形)。純粋な乾燥キトサンの第1のガラス転移温度(Tg)は80℃付近であり、この温度では、純粋な乾燥キトサンを加工する場合には、キトサンの非破壊的成形が容易になり、その構造のいくらかの結晶のアニーリングが可能になる。キトサンに水またはグリセロールなどの可塑剤を適用してTgを低下させ、それにより、より低い温度で同様のレベルの非破壊的成形を行なうことが可能である。ここでは、20℃~150℃の範囲でキトサンを非破壊的に成形できることが注目される。この範囲の外でも非破壊的にキトサンを成形することは可能であるが、ずっと困難になる。150℃を超えるとキトサンの熱分解が始まり、20℃未満では可塑剤の添加によって、耐溶解性ならびに滅菌の際に起こるような分解プロセスへの耐性を提供するキトサンの結晶性の望ましくない損失が生じ得る。
【0062】
好ましくは、圧縮によって生物学的流体との接触の際の圧縮され乾燥された被覆材の実質的な膨潤が防止され、圧縮は圧縮の間の乾燥被覆材の含水率約15%w/w以下で行なわれる。圧縮は二連もしくは多連ローラーの圧縮および/または隣接するプラテンの間で一軸で適用してよい。
【0063】
圧縮は、圧縮された被覆材に平滑な仕上げを提供するために均一で平坦なまたは湾曲した表面に対して行なってよい。
【0064】
あるいは、圧縮は、欠失したまたは付加された表面質感を与える腐食された、機械加工された、切削された、または他の種類の処理をされた表面に対して適用してよい。表面質感はランダムでもよく、または規則的な繰り返しパターンでもよい。表面のパターンは被覆材の折り畳みおよび展開または巻き付けおよび展開を助けることができ、ヒンジ様の特性を被覆材に与えることができる。そのような質感は、適用した際に被覆材を迅速にその場に固定し、動かないようにするための補助として使用してよい。標的組織表面に位置決めする間の被覆材表面の移動は、フィルムの形成、したがって、表面において接着を阻害する生物学的流体を除去する能力の損失、したがって被覆材を表面に接着させる能力の損失をもたらし得る開放表面構造の閉鎖を引き起こす可能性がある。被覆材の表面で起こる変化のタイムスケールは極めて重要であり、顕著な表面被覆材チャネルの閉鎖を伴う表面における液体の取り込みは極めて望ましくない。そのような移動を避ける良い方法は、被覆材が組織表面に接触すれば直ちに被覆材をその場に物理的に固定することである。
【0065】
本発明の前には、薄い固体状キトサン被覆材は一般に硬く、破壊、破砕、もしくはその他にその元の形状を失うこと、またはさもなくば使用に適さなくなることなしに、曲げ、または折り畳み、または巻くのに十分に可撓性でなかった。本明細書で提供するキトサン被覆材は、その組成構造および特徴により、折り畳み軸に沿って折り畳みおよび開くことができ、なお変化せずに出血を止める使用に適している。興味あることに、また予想と異なり、本明細書に記載したキトサン被覆材は、折り畳んだときに、その折り畳み線に沿っての裂けまたは破壊への耐性が小さくなることが見出された。一部の実施形態では、本明細書で提供するキトサン被覆材は、その組成構造および特徴により、その組成構造および特徴を失うことなく巻くことができ、なお変化せずに出血を止めることができる。
【0066】
CGHDの一部の実施形態では、本明細書で提供するキトサン被覆材は、その組成構造および特徴により、その組成構造および特徴を失うことなく巻くことができ、なお変化せずに出血を止めることができる。したがって一部の実施形態では、本明細書で提供するキトサン被覆材は、狭い作業チャネルを通して送達することができ、しかもその組成構造および特徴を変化せずに維持することができる。本明細書で提供するキトサン被覆材を送達させることができる狭い作業チャネルの例示的な直径には、約3.2mmまたはそれ未満、およびそれだけに限らないが、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、および3.2mmなどの直径が含まれる。
【0067】
CEHDの一部の実施形態では、本明細書で提供するキトサン被覆材は、その組成構造および特徴により、その組成構造および特徴を失うことなく巻くことができ、なお変化せずに出血を止めることができる。したがって一部の実施形態では、本明細書で提供するキトサン被覆材は、尿道に沿うバルーンカテーテルによって送達することができ、しかもその組成構造および特徴を変化せずに維持することができる。キトサン被覆材を支持するバルーンカテーテルの例示的な直径には、約12mmまたはそれ未満、およびそれだけに限らないが、3mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8.0mm、8.5mm、9.0mm、9.5mm、10.0mm、10.5mm、11.0mm、11.5mm、および12.0mmなどの直径が含まれ得る。
【0068】
カテコール改変キトサンおよびその製造
本明細書に記載したキトサン被覆材は、カテコール改変キトサンおよび/または親水性ポリマーを含むキトサン被覆材に関する。カテコール改変キトサンを含むキトサン被覆材の他の態様について、以下により詳細に記載する。
【0069】
本開示のCGHDまたはCEHDの好ましい実施形態には、カテコール改変キトサンおよび/または必要に応じて他の親水性ポリマーを含む組成物が含まれる。好ましくは、被覆材中のカテコール改変キトサンは、約1kPa以上の組織接着で湿潤組織に長期に接着し、約37℃で約6時間以上、水、生理食塩水溶液、血液および/またはGIもしくは膀胱液の中で溶解に耐える。好ましくは、カテコール改変キトサンは、キトサンのグルコサミンのC-2アミンの3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(別名3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロコーヒー酸)によるN-アシル化によって形成される。あるいは、カテコール改変キトサンを製造するためのキトサンのN-アシル化には、それだけに限らないが、3,4-ジヒドロキシけい皮酸(コーヒー酸)、trans-3,4-ジヒドロキシけい皮酸(trans-コーヒー酸)、および3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC、ホモプロトカテチュ酸)のうちの1つによる改変が含まれ得る。
【0070】
カテコールは酸化されてo-キノンになるので、組成物中のカテコールの存在によってあるポリコンジュゲート構造が得られる。それにより、未改変キトサン組成物とカテコール改変キトサン組成物との間に可視的な相違が生じ、それぞれオフホワイトまたはピンクから暗褐色の色になり得る。カテコール改変キトサン組成物は、カテコールの酸化が起こるとピンクから褐色になることが注目される。
【0071】
実質的に架橋がないことを意味するカテコール改変キトサンのピンクの着色は、水性合成で反応溶液のpHを5.5またはそれ未満に維持することによって得られる。ピンクの着色は、水性合成で、それだけに限らないが、アルゴンまたは窒素を含み得る不活性ガスでパージした水性システムを使用することなどによる実質的に酸素が存在しない状態で改変および引き続くプロセスステップを実施することによっても得られ得る。ピンクの着色は最終溶液またはカテコール改変生成物においては望ましくないが、(カテコールによるキトサンの誘導体化、ならびに/または残留する未反応物質を除去するための引き続くカテコールキトサン溶液の透析および/もしくは洗浄の直後などの)中間処理段階においては望ましいことがある。それは、後に所望の乾燥重量になるように純粋な乾燥したカテコール改変生成物を実質的に水に再溶解できる能力を引き続いて有して、安定な乾燥生成物であるポリマーを保存し、乾燥生成物の重量を決定することが可能になるからである。続いてこの水溶性キトサンカテコール材料を酸化し、架橋する(褐色に着色)。しかし、酸化前に乾燥されたカテコール改変キトサンは本発明の材料から形成されたキトサン被覆材における使用には適さない。それは、そのように処理したカテコール改変キトサンを含む被覆材は容易に再溶解せず、最終溶液には不溶性の(直径10ミクロンを超える)粒子の望ましくない大量の分画(5%w/wを超える)が含まれるからである。さらに、中間の凍結乾燥段階の後で調製されたカテコールキトサンは胃腸管液または膀胱内で早期に溶解する傾向が大きい。TURPにおける過度の架橋(即ち、褐色)はあまり望ましくない。それは、過度の架橋によって尿中での溶解時間が長くなり、たとえば目標の完全溶解が約72時間~約168時間である場合に168時間より長くなるからである。
【0072】
好ましい実施形態では、カテコール改変キトサンは、保存を可能にするための中間の乾燥ステップによって溶液から取り出すのではなく、むしろ水溶液中に保持して、大気中の酸素の存在下に約pH5.5より高いpHに曝露することによって水溶液中で酸化させる。好ましいpHの制御は、水中に溶存している二酸化炭素の分圧を調整することによって達成される(分圧を上げるとpHが低下し、分圧を下げるとpHがpH7近くまで上昇する)。pH制御の代替の好ましい手段は、pHを下げるための強酸、およびpHを上げるための強塩基の、増分の添加である。強酸の例としては、それだけに限らないが、塩酸、硫酸、および硝酸が挙げられる。強塩基の例としては、それだけに限らないが、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。続いてこの水性で水溶性の酸化されたカテコール改変キトサンを乾燥することによって、上部胃腸管および膀胱における溶解および分解に対して良好な耐性を有するカテコールキトサンの好ましいレベルの架橋がもたらされる。カテコールキトサン溶液は水の添加によって希釈され、水の除去によって濃縮される。水は、それだけに限らないが、限外濾過、逆透析、および遠心分離などの手法によって除去され得る。溶液の固体分率は、溶液から既知の体積をサンプリングし、それだけに限らないが、重量法、フーリエ変換赤外線分光法、紫外可視分光法、屈折率法、および比重びん法などの分析を実施することによって決定され得る。
【0073】
好ましい実施形態では、カテコール改変キトサン組成物は、カテコールのo-キノンへの酸化によって褐色になっている。キノンは、酸素の存在下および約5.5を超えるpHでのカテコールの水酸基の自動酸化によって生成する。改変キトサンにおいて、キノンとキトサンのC-2アミンとのシッフ塩基反応によって架橋が生成する。カテコール改変キトサン組成物の色は合成の間にpHおよび酸素への曝露を制御することによって制御される。pHを約pH5.5またはそれ未満に維持することによって、o-キノンの生成は阻害される。続いて透析溶液、最終洗浄しまたは透析したカテコールキトサン溶液を好ましいpH範囲の5.8~6.2に条件調整することによって、溶解耐性がより高い、より暗色の、より酸化されたカテコールが得られる。一部の実施形態では、カテコール改変キトサンの着色によって、カテコール改変キトサン被覆材の1つの態様が特徴付けられる。一部の実施形態では、着色はカテコールによるキトサンの置換の程度を反映している。一部の実施形態では、ピンクから褐色への着色は置換度と相関する。図15に、カテコールによるキトサンの種々の置換度を反映し、これと相関する種々の着色の例示的な実施形態を示す。
【0074】
カテコールキトサンから乾燥した被覆材を調製するために、好ましい明褐色から暗褐色のカテコール水性キトサン溶液を調製する。これはそれ自体で使用してもよく、または、それだけに限らないがキトサンおよび/または必要に応じて親水性ポリマーの溶液を含む他の水性親水性ポリマー溶液と混合してもよい。好ましくは、乾燥した相分離カテコールキトサン被覆材は、乾燥し緻密化された凍結相分離および繊維質の被覆材構造として調製される。
【0075】
本発明の好ましい架橋したカテコール改変キトサン組成物は、良好な組織接着性および上部胃腸管または膀胱内で実質的に未改変のキトサンから形成された被覆材と比較して10倍~100倍に増大した耐溶解性を提供する。たとえば、図6A、6B、および6Cは、キトサン被覆材は15分で消失するが、いくつかのカテコール被覆材は24時間を超えて存続することを実証する溶解試験結果を示す。本明細書に記載したカテコール改変キトサン組成物は、これまでのところ未知の持続性、生体適合性、および結果的には溶解する能力を提供する。
【0076】
本発明の材料から形成されたCGHDまたはCEHDの胃腸管粘膜または膀胱粘膜への好ましい迅速な接着(1分以下)は、乾燥した被覆材組成物中の酸の存在によってキトサンのグルコサミンのC-2アミンでの四級アンモニウムカチオンの形成が促進されることによって乾燥キトサン被覆材中で得られる。被覆材中の好ましいキトサンの酸の塩には、酢酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、塩酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、および酒石酸、ならびにそれらの組合せの塩が含まれ得る。好ましくは、キトサンの酸塩の重量%は約2%を超え、約15%未満である。湿潤した組織への急速な接着(たとえば1分以下)を達成するため、胃腸管または膀胱の乾燥した被覆材中の水分は、好ましくは約15重量%未満、より好ましくは約10重量%未満、最も好ましくは約5重量%未満である。
【0077】
凍結相分離し乾燥され、緻密化されたキトサン被覆材の場合には、キトサン溶液を、好ましくは約0.1%w/w、より好ましくは約0.5%w/w、最も好ましくは約0.25%w/wの親水性ポリマーキトサン溶液として凍結相分離鋳型(典型的には水平で平坦な底部を有するパンの形状)に注ぎ込む。親水性ポリマー溶液は、好ましくは水平で平坦なパンに好ましくは垂直深さ約10mm、より好ましくは2.5mm、最も好ましくは鋳型の深さ5.0mmまで添加する。続いて鋳型内の溶液を凍結し、昇華または凍結相置換(ポリマーに対する非溶媒で氷を溶媒抽出する)によって水を除去して乾燥して、(空孔体積99%を超える)低密度の開放または多孔質の乾燥密度約0.01g/cm未満(またはたとえば0.5%溶液からの未圧縮のカテコールキトサン被覆材については約0.005g/cm。これは約0.025g/cmである未圧縮のHemCon Bandageキトサンスポンジの密度の約5分の1、即ち20%である)の乾燥スポンジにする。凍結乾燥は典型的には300mTorr未満の圧力で実施する。一方、エタノールなどの無水の冷却した(たとえば-20℃未満の)溶媒を用いる凍結置換は大気圧で実施する。次いで乾燥スポンジを好ましくは約0.4g/cmを超える密度および約100ミクロン未満の厚みに圧縮する。好ましい圧縮に制限はないが、整列した平坦なプラテンの間の一軸圧縮が含まれ得る。プラテンは18℃~150℃に加熱され、加圧は10,000barまでである。
【0078】
好ましい圧縮により、際立って薄く(たとえば約50ミクロン以下~約200ミクロン以下の範囲)、強靭な(たとえば5MPa~25MPaのUTS)、容易に折り畳めるキトサン被覆材が創成される。これは、正確で効果的な大表面積の設置および付着のために元の折り畳んでいない被覆材形態の性能を犠牲にすることなく再形成することができる制限された折り畳まれた形態で、体内のどの場所にでも最小の侵襲で設置することができる。
【0079】
折り畳み性については以下の例で対処する。一実施形態では、折り畳み試験には水平に平坦な最終の圧縮された円形の被覆材を最初に反時計方向に180°、縁と縁を重ねて折り畳み、縁を一緒に保持して被覆材の中央部で堅く圧縮して被覆材に単一の直線状折り畳み軸(即ち折り目)を創成することが含まれる。折り畳まれた被覆材を次に開き、新たな折り畳み軸に沿って縁と縁の折り畳みを再現するが、折り畳みは反対の時計方向とする。折り畳みの成功は、折り畳みの軸に沿って裂け目もひび割れも見えないこと、および被覆材の引張り特性(被覆材の折り畳みを横切って穏やかに引っ張ることによって判定する)に顕著な損失がないこととして順位付けできる。図15に、折り畳んで開き、目視できる折り畳み軸(折り目)について変化のないカテコール改変キトサン被覆材を示す。
【0080】
希薄なポリマー水溶液の凍結相分離により、幅が200ミクロンに近い氷晶シートの間に規則的に挟まれたミクロンおよびサブミクロンの薄いポリマーキトサンラメラの相分離が生じる。昇華(凍結乾燥)または代替の溶媒抽出によって氷を除去することにより、ほぼ整列した、薄い(1ミクロン以下)ポリマーキトサンラメラからなる乾燥スポンジが残る。そのガラス転移温度に近いまたはそれより高い温度(乾燥キトサンのTgはほぼ80℃である)におけるポリマーキトサンラメラの圧縮により、割れ目を容易に伝播せず、障害なしに繰り返して折り畳むことができる数百層の強靭で追随性のあるポリマーキトサン薄層(ラメラ)から形成された薄く(ほぼ50ミクロン)緻密なポリマー構造への圧縮が可能になる。そのような多層の積み重ねによって、優れた強度が達成される。本発明の前には、本明細書に記載した製造および使用のための、たとえば(吸収、流通、置換、および/または再指向による)干渉する液体の除去、折り畳み軸を形成する能力、および折り畳み軸に沿って繰り返して折り畳み、開くことによる機械的障害に耐える能力による接着などの、本発明によって解決される重要な課題に対処することを目的とする高密度の凍結相分離キトサン被覆材についてはこれまで検討されてこなかった。
【0081】
一実施形態では、孔径範囲が20~300ミクロンで空孔の実質的に大部分がほぼ100~200ミクロンである非圧縮被覆材においては多孔性(空孔スペース>99%)は完全で中断されていない。中断されていない空孔構造は、圧縮された被覆材の血液などの生物学的流体を吸収する能力によって示される。
【0082】
一部の実施形態では、直径ほぼ500ミクロンで割れ目がなく縁がきれいな穴は、細いゲージ(直径ほぼ500ミクロン)で鋭い先端を有する針を、針の先端を受容して解放することができる被覆材に対して直接適用された平坦で堅い弾性表面に被覆材を通して局所的に適用することによる圧縮によって被覆材に形成することができる。好ましい受容支持体の平坦な表面には、それだけに限らないが、ショア硬度55D~90Dのきれいな乾燥した熱可塑性エラストマーが含まれる。穴を形成する代替の方法には、それだけに限らないが、小径のホールパンチ(ほぼ500ミクロン)またはレーザーカット穴が含まれ得る。
【0083】
一部の実施形態では、本明細書で提供するキトサン被覆材は、被覆材の中に穴を有する。一部の実施形態では、これらの穴は繊維または他の強化付着要素を受容する。そのような強化要素は、穴の縁に局所的に結合する強化液体の単なる局所的な適用によって形成され得る。本発明の開発において使用される強化液体には、被覆材の圧縮されたキトサンラメラを一緒に結合し、穴のストレス点におけるキトサンの局所的な剥離およびフィブリル化を防止するシアノアクリレート糊が含まれる。穴の強化要素の別の実施形態は、プラスチックまたは金属のミクロ成形された相互に噛み合う部品(上部胃腸管もしくは膀胱または体内適用の代替の区域で可溶性)であり、これらは穴の一方の側および穴の反対側に設置され、永久的に整合して、荷重をかけたときに被覆材の穴において被覆材の剥離、フィブリル化、または他のストレスに関連する障害を起こさずに穴を通る荷重を支持することができる。一部の実施形態では、ミクロ成形された部品は、被覆材を送達デバイスにスナップオンで取り付け、スナップオフで取り外すことが便利にできる送達デバイスへの取付け側の部品を含んでよい。
【0084】
本明細書で使用される場合、折り畳み軸という用語は、曲げストレスおよび/または折り畳みの材料における記憶を表し、典型的には曲げストレスおよびせん断が大きい狭い領域に局在化している被覆材シートの部分を意図している。折り畳んだ紙における折り目は折り畳み軸の例である。
【0085】
好ましい実施形態では、被覆材の組織接着性成分は、カテコールキトサンを含む組成物を含む、凍結相分離して乾燥したキトサンシートから形成される。好ましい実施形態では、被覆材の非組織接着性成分は、改変キトサンを含まない凍結相分離したキトサン乾燥シートから形成される。好ましい実施形態では、組織接着性および非組織接着性乾燥シートの両方は、圧縮前の約0.03g/cm以下の密度から約0.4g/cm以上の最終密度を有する。
【0086】
組織接着性表面層および非接着性表面層を有する被覆材で両方のシートから1つの被覆材を調製するために、たとえば1枚のシートを他のシートの上に載せ、これらをより高い密度になるように圧縮するために十分な均一な圧力を被覆材の上に印加することによって、2枚のシートを互いに結合する。好ましいプロセスでは、それぞれのシートの型の約0.03g/cm以下の元の密度は、被覆材の最終密度の約0.30g/cm以上に増大する。より好ましいプロセスでは、それぞれのシートの型の約0.015g/cm以下の元の密度は、被覆材の最終密度の約0.4g/cm以上に増大する。最も好ましいプロセスでは、それぞれのシートの型の約0.01g/cm以下の元の密度は、被覆材の最終密度の約0.5g/cm以上に増大する。圧縮が終了すれば、圧縮された2枚のシートは互いに結合され、一方を他方から容易に引き剥がすことはできず、被覆材は剥離を生じることなしに折り畳み、および巻くことによって取り扱うことができる。
【0087】
2つまたはそれより多い低密度多孔性材料を一緒に圧縮して最終的な高密度の2つまたはそれより多い層の多孔性材料を形成することによる材料のこの物理的接着によって、個別の材料に物理的または化学的な変化を生じさせることなく、さらなる結合剤または接着剤を添加せずに、どのようにしてそのような材料を一緒に接着するかという困難な課題を解決する。結合は微小表面の衝突および細孔を通る被覆材の浸透と、細孔の圧縮による物理的な噛み合わせに起因し得ると考えられる。低密度の凍結相分離された乾燥シートのこの物理的噛み合わせは同じ厚みの2つの材料または2層のみに限定されない。それは、噛み合い効果は側面性にも厚みにもよらないからである。したがって、同じまたは異なった厚みの同じまたは異なった材料の個別の凍結相分離され乾燥されたシートの多層構築物は、低密度のシート(好ましくは密度0.05g/cm以下)を重ねて、アセンブリーを一緒に密度0.3g/cm以上にまで圧縮することによって形成することができる。そのような最終の物理的に接着したアセンブリーは、それだけに限らないが、構造的、物理的、および化学的な要素などを提供する層を内部に有する、それだけに限らないが、接着性または非接着性の材料を含む薄い上部および底部の表面層の利点を提供することが期待される。
【0088】
一部の実施形態では、キトサン被覆材は接着側と非接着側を有している。一部の実施形態では、キトサンの接着側は組織に接着し、表面の水分を吸収しおよび/または再指向する。一部の実施形態では、非接着側は、キトサン被覆材が傷害部位に付着する際に送達デバイスから脱着し、キトサン被覆材は湿潤化している。これは部分的に組織表面へのキトサン被覆材の接着強度が、送達デバイスからの被覆材の脱着に際して、被覆材の位置を制御するからである。両側を有するキトサン被覆材における脱着または「容易に脱着」は、本明細書で使用される場合、その接着側が組織表面または傷害部位に適用され、水分の吸収によって接着したキトサン被覆材が組織表面または傷害部位に留まる一方、非接着側が送達デバイスから解放され、それにより組織表面または傷害部位におけるキトサン被覆材の位置を乱すことなく送達デバイスを傷害部位から引き戻すことが可能になることを示している。一部の実施形態では、キトサン被覆材は乾燥しているときは送達デバイスに付着し、それによりキトサン被覆材をデバイスとともに傷害部位に送達することが可能になる。
【0089】
一実施形態では、被覆材を局所的に送達デバイスに取り付ける必要がある。一般には、これらの局所的取付け区域は被覆材の先端部にある。たとえば、1つの設計は、被覆材が(巻いたり/折り畳んだりする際に)送達シース、送達デバイス、またはそれ自体に付着するリスクを避けるために、被覆材の周辺部の被覆材の先端のタブに局所的なピンポイントの取付けを行ない、他の位置には取り付けないことである。取付け位置は、湿潤化されたとき、あるいは何らかの種類の物理的解放機構によって解放のために活性化されたときに弱くなるように設計してよい。
【0090】
1つの機構では、本開示で提供するキトサン被覆材は、傷害部位において親水性および疎水性の液体を吸収し、導き、および/または再指向することによって出血を止めることができる。吸収によって傷害部位から水分が十分に除去され、それによりキトサン被覆材と傷害部位の組織との間の引き続く止血反応が可能になり、この止血反応が出血を止め、キトサン被覆材が付着したまま留まることを可能にし、それによって傷害部位がシールされる。本明細書で提供するキトサン被覆材の多孔質で緻密な多層構造により、傷害部位における水分の吸収、導出、および/または再指向、ならびに傷害部位へのキトサン被覆材の付着または接着が促進される。
【0091】
本明細書に開示するキトサン被覆材は生体適合性である。一部の実施形態では、in vivoで傷害部位に適用されたキトサン被覆材からの溶解した残渣は栄養管または尿道を安全に通過して他の生体排泄物とともに排泄される。
【0092】
1つより多くのまたは多数のキトサン被覆材を連続的に組織処置部位または傷害部位に使用しまたは適用してよい。1つより多くのキトサン被覆材を配置する場合には、そのような被覆材は隣接する組織部位または傷害部位の区域に個別に接着させてもよく、様々な程度に相互に重ねてもよい。本明細書に記載したキトサン被覆材は薄いので、用途に応じて、傷害部位の止血を促進しまたは達成するために必要に応じて多数のキトサン被覆材を使用してもよいことが意図される。
【0093】
一実施形態では、キトサン被覆材は適用に際して互いに重なり合う。そのような場合には、理想的には後の被覆材の湿潤した接着側が前の被覆材の湿潤した被覆材の裏打ちにある程度接着する。したがって一実施形態では、キトサン被覆材は非接着性の裏打ちを有しないが、引き続いてキトサン被覆材を重ねて設置するために十分な接着性を提供する弱い湿潤接着性の裏打ちを有する。
【0094】
送達デバイス
送達デバイスは、本明細書で使用される場合、キトサン被覆材を送達するためのデバイスである。送達デバイスはヒト、ブタ、イヌ、その他を含む動物の体内の様々な位置における傷害部位にキトサン被覆材を送達する。
【0095】
一部の実施形態では、送達デバイスは動物の体内の生理学的部位に非侵襲的または最小侵襲的な様式で被覆材、たとえばキトサン被覆材を送達することができる最小侵襲性デバイスである。一部の実施形態では、送達デバイスはバルーンデバイスである。一部の実施形態では、送達デバイスはワイヤデバイスまたはニチノールもしくはステンレススチールの小径円筒からレーザーカットされたデバイスである。一部の実施形態では、送達デバイスの非侵襲性または最小侵襲性の特徴は、細いカテーテルまたは同等の作業チャネルを通しての被覆材、たとえばキトサン被覆材の送達によって達成される。CGHDの一部の実施形態では、カテーテルまたは同等の作業チャネルは3.2mm未満の直径を有する。他のCGHDの実施形態では、胃内視鏡のチャネルは2.8mm~4.5mmの直径サイズの範囲でよい。一部のCEHDの実施形態では、バルーンカテーテルまたは同等の作業チャネルは約7mm未満の直径を有する。他のCEHDの実施形態では、TURP送達デバイスのチャネルは5mm~7mmの直径サイズの範囲でよい。
【0096】
一部のCGHDの実施形態では、カテーテルもしくはバルーンカテーテルまたは同等の作業チャネルは3.2mm未満の直径を有する。他のCGHDの実施形態では、胃内視鏡のチャネルは2.8mm~4.5mmの直径サイズの範囲でよい。
【0097】
一部のCEHDの実施形態では、カテーテルもしくはバルーンカテーテルまたは同等の作業チャネルは約7mm未満の直径を有する。他の実施形態では、TURP送達デバイスのチャネルは5mm~7mmの直径サイズの範囲でよい。
【0098】
例示的な送達デバイスには、それだけに限らないが、バルーンデバイス、バルーンカテーテル、ワイヤデバイス、レーザーカットされた端部を有する円筒形デバイス、留置カテーテル、尿道または恥骨上カテーテル、体外式カテーテル、短期カテーテル、および間欠カテーテルが含まれる。
【0099】
送達デバイスは医学手技の種々の態様において使用される内視鏡デバイスであってもよい。一部の実施形態では、内視鏡デバイスは細いカテーテルもしくは管/チューブ、または同様に細い径のデバイスの部分により非侵襲性または最小侵襲性である。
【0100】
送達デバイスは経管腔または経尿道送達デバイスであってもよい。一部の実施形態では、経尿道送達デバイスは細いカテーテルもしくは管/チューブ、または同様に細い径のデバイスの部分により非侵襲性または最小侵襲性である。
【0101】
送達デバイスには、細径のチューブもしくはカテーテル、または同様の構造を有する他のデバイスが含まれる。
【0102】
送達デバイスへの被覆材の取付け
CGHD
凍結相分離被覆材は脆弱で剥離しやすいラメラの圧縮された層から構成されており、ワイヤおよびレーザーカットされた円筒形の送達デバイスへの被覆材の特別の取付けを必要とする。送達デバイスへのそれぞれの被覆材の取付け点は、被覆材を巻いたり開いたりする際の50~100gまでの負荷に耐えることができなければならない。表面ラメラの凝集強度は低いので、送達デバイスへの被覆材の(たとえばシアノアクリレート糊による)直接の接着は、よく溶解された溶液から形成された凍結相分離被覆材については選択されない。これがあまり問題にならない一実施形態は炭酸に溶解したキトサンからカテコールキトサンが形成される実施形態である。この場合には、炭酸キトサンに溶解する前の塩基で沈殿し続いて水で洗浄した純粋なキトサン水性ゲルは、炭酸に不溶な固体状のキトサン繊維の分散物(キトサンの0.2%w/w以上)を含んでおり、これが炭酸溶液から続いてカテコール改変されたキトサンを強化する。凍結相分離された被覆材の全体および表面の構造の低分画(キトサンの0.2%~5%w/w)のキトサン繊維による強化のこの炭酸キトサンの事例の他に、ワイヤ送達の場合の局所的な強化および送達デバイスへの被覆材の取付けの好ましい様式は、送達デバイスへの取付け点において被覆材に強化要素を備えた小径(約500ミクロン)の貫通穴を設けることである。
【0103】
凍結相分離され乾燥された被覆材スポンジに予め穴を形成することは、圧縮されていない被覆材スポンジに受容穴を作成する好ましい方法である。低密度(0.05g/cm未満)の圧縮されていないスポンジは容易に剥離し、極めて脆弱で、したがってスポンジに何らかの負荷をかける通常の穿孔アプローチを受け入れることができないので、スポンジのラメラ構造に何ら損傷を与えることなくこれらのスポンジに穴を作成する好ましい方法は、溶液を凍結相分離する直前に絶縁性の疎水性(非接着性)ロッドマンドレルを成形溶液に(溶液の上部から、溶液を通して反対側に、鋳型の底部表面に接触させ、好ましくは底部表面を通して鋳型の底部に)適用することである。これらのマンドレルはテーパ状になっていて、凍結相分離スポンジを乾燥した後に容易に除去できる。そのようなマンドレルは機械加工または成形が可能な硬いまたはやや硬い疎水性材料から作られていることが想定される。好適なマンドレル材料には、それだけに限らないが、フッ素化材料、Teflon(商標)およびKel-F(商標)ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。マンドレルの除去の後に作られる穴の直径は、スポンジに損傷を与えることなく脆弱な圧縮されていないスポンジに容易にスレッドを設置することができるように設計される。マンドレルは、鋳型の底部表面の好適なサイズの受容穴に差し込むことによって鋳型に支持され得る。あるいは、マンドレルは、凍結相分離鋳型の上部表面と成形溶液の上に直接設けられた解放可能な疎水性フィルムのシートによって支持してもよい。このフィルムは、凍結相分離溶液を乾燥する場合には乾燥前に、凍結相分離表面から除去されてマンドレルをその場に残す。したがって、乾燥後に、予め形成された穴は、被覆材を送達/配置デバイスに取り付けるためのタイスレッドを受容する準備ができている。タイスレッドは圧縮の前に、被覆材を巻き、開き、および送達する際の全ての力を受けるために好適な配置でスポンジに位置決めされる。低密度(0.05g/cm未満)から高密度(0.4g/cmを超える)へのスポンジの圧縮によって、タイスレッドおよび任意の他の強化/取付け要素がその場に固定される。スレッドは被覆材の圧縮の前または後にその場に糊付けしてよく、またはスレッドを使用して、適用の後にスレッドが除去された穴を通して局所的にシアノアクリレート糊などの液体強化要素を局所的に適用してもよい。支持スレッドまたは他の種類の支持要素を取るための圧縮されていないスポンジに好適な穴を形成する代替の実施形態は、レーザーホールカッティングによる。
【0104】
直径ほぼ500ミクロンで割れ目がなく縁がきれいな穴は、細いゲージ(直径ほぼ500ミクロン)で鋭い先端を有する針を、針の先端を受容して解放し得る被覆材に対して直接適用された平坦で堅い弾性表面に被覆材を通して局所的に適用することによる圧縮によって被覆材に形成することができる。好ましい受容支持体の平坦な表面には、それだけに限らないが、ショア硬度55D~90Dのきれいな乾燥した熱可塑性エラストマーが含まれる。穴を形成する代替の方法には、それだけに限らないが、小径のホールパンチ(ほぼ500ミクロン)またはレーザーカット穴が含まれ得る。
【0105】
被覆材の中の穴は繊維または他の強化付着要素を受容することができる。そのような強化要素は、穴の縁に局所的に結合する強化液体の単なる局所的な適用によって形成され得る。本発明の開発において使用される強化液体には、被覆材の圧縮されたキトサンラメラを一緒に結合し、穴のストレス点におけるキトサンの局所的な剥離およびフィブリル化を防止するシアノアクリレート糊が含まれる。穴の強化要素の別の実施形態は、プラスチックまたは金属のミクロ成形された相互に噛み合う部品(上部胃腸管または体内適用の代替の区域で可溶性)であり、これらは穴の一方の側および穴の反対側に設置され、永久的に整合して、荷重をかけたときに被覆材の穴において被覆材の剥離、フィブリル化、または他のストレスに関連する障害を起こさずに穴を通る荷重を支持することができる。そのようなミクロ成形された部品は、被覆材を送達デバイスにスナップオンで取り付け、スナップオフで取り外すことが便利にできる送達デバイスへの取付け側の部品を含んでよいことが想定される。
【0106】
送達デバイスからの被覆材の一般的な解放は、スナップオフ脱着を含むいくつかの方法によって達成され得る。被覆材解放の好ましい方法は、送達デバイスを乾燥時には強く、湿潤時には弱い被覆材取付け繊維に使用することによるものである。そのような繊維には、それだけに限らないが、迅速に水溶性にするために処理されたキトサン繊維が含まれる。好ましいキトサン繊維は乾燥時には30MPaを超える強度、湿潤時には0.1MPa未満の強度を有する水溶性のマルチフィラメント繊維である。
【0107】
CEHD(バルーンへのTURP被覆材の取付け)
一実施形態では、円形の被覆材をそれ自体の上に縁から縁まで一度折り畳み、次いで、折り畳まれた被覆材(ここでは半分になっている)をそれ自体でもう一度、縁から縁まで折り畳む(ここでは4分の1になっている)。被覆材を開くと、被覆材の中央を通過する2本の折り畳み線が存在する。カテーテルの外周のトレース線を被覆材の中央に引く(小さな中央円)。鋏の先端または他の鋭利な切断器具を使用して、被覆材の中央の交差する折り畳み線に沿ってカテーテルに引いた外周まで切断する。折り畳み線が切れれば、被覆材の中央に4つの三角形の窓、即ちカテーテル連結用のタブができる。カテーテルは被覆材の中央の開口部を通して縫うことができ、被覆材のタブは両面接着テープまたは他の適用のための接着方法によって取り付け、タブをカテーテルの所望の位置に固定し、被覆材の全体をカテーテルバルーンの上に、これに対してセットすることができる。被覆材のタブは、好ましくはその上に被覆材を折り畳むカテーテルバルーンの反対に向いた被覆材の側に設置する。好ましくは、タブをカテーテルに取り付けるために使用する接着剤は水溶性で、バルーンカテーテルによる加圧の後で被覆材をカテーテルから滑らせて外して(必要に応じてカテーテルを除去して)その場に残すことを可能にする。
【0108】
適用および処置の方法
本開示で提供する本発明の材料から形成されたキトサン被覆材の実施形態は、好適な疾患、状態、障害、または緊急の外傷もしくは傷害において出血を止めるために使用することができる。一部の実施形態では、本発明の乾燥した固体状のキトサン材料は、任意の湿潤した生理学的表面、たとえば粘膜からの出血を止めるために使用することができる。例示的な適用には、それだけに限らないが、胃腸管または膀胱の出血、血管用途、体内手術による出血、体内生検による出血、実質臓器の切除の後の体内出血を含む他の管腔内適用、および口腔、眼科、聴覚器、または鼻の出血が含まれる。組織表面または傷害部位へのキトサン被覆材の接着を促進するために水または液体の添加を必要とし得るさらなる適用、たとえば体外表面におけるキトサン被覆材の使用も意図される。
【0109】
本発明の乾燥した固体状のキトサン材料は、それだけに限らないが、食道静脈瘤における出血、消化器潰瘍からの出血、十二指腸潰瘍からの出血、上部および下部胃腸管の生検に伴う出血、上部および下部胃腸管の切除、ならびに上部および下部胃腸管における裂傷または破裂を含み得る胃腸管出血の処置のために使用することができる。他の疾患、状態、障害、または緊急の外傷もしくは傷害には、それだけに限らないが、内部動脈傷害、肝臓からの内出血、大静脈からの内出血、心臓および肺ならびにそれらの血管の穿孔を含む胸腔の傷害、ならびに腹腔の傷害が含まれ得る。
【0110】
本発明のキトサン材料は、それだけに限らないが出血の処置を含み得る経尿道前立腺切除術および/または膀胱頸部の出血の処置のためにも使用することができる。
【0111】
本発明のキトサン材料は、(たとえばUGIB、TURP、もしくは他の最小侵襲性手技、または観血的手術で起こる)急性内部傷害の後で、傷害部位を閉鎖し、7日以内に溶解しまたは分解する前に細胞の再生に資する環境を提供することによって傷害部位を保護するためにも使用することができる。
【0112】
本発明のキトサン材料は、活性な医薬品および/または生物学的薬剤の送達を含む一般的な治療目的のために特定の標的部位に送達されて局所的に接着するように使用することもできる。そのような標的部位には、それだけに限らないが、血管吻合、食道静脈瘤、消化器潰瘍、切除した前立腺の裂溝、肝臓の切除および生検、腎臓の切除および生検、膀胱の切除および生検、咽喉の切除および生検、膵臓の切除および生検、胃の切除および生検、下部胃腸管の切除および生検、肺の切除および生検、ならびに心臓の切除および生検が含まれ得る。
【0113】
上記の種々の実施形態を組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。それだけに限らないが、米国仮特許出願第62/612,013号および第62/631,290号を含む、本明細書で言及したおよび/またはアプリケーションデータシートに列挙した米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許出版物の全ては、参照により全体として本明細書に組み込まれる。種々の特許、出願、および出版物の概念を採用してさらなる実施形態を提供するために必要であれば、本実施形態の態様を改変することができる。
【0114】
上記の詳細な説明に鑑みて、これらのおよび他の変更を本実施形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用した用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示した特定の実施形態に限定すると解釈すべきではなく、当該特許請求の範囲が権利を与える等価物の全ての範囲とともに、全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
【実施例
【0115】
実施例1~6はCEHDキトサン被覆材を表す。
【0116】
キトサン管腔内止血被覆材の発明プロセスにおいて以下の材料および調製物を考慮した。
キトサンA:Primex、ChitoClear 65010、TM 4375、MW=250~300kDa、ブルックフィールド
キトサンB:Primex、ChitoClear 43000、TM 4167、MW=110~150kDa、25℃およびスピンドルLV1における1.0%酢酸中1.0%w/wキトサン溶液のブルックフィールド粘度=9cPs、DDA=95%(コロイド滴定による)
氷酢酸:Fisher Scientific、カタログNo.A38-212
塩酸:1.0M水溶液、Sigma Aldrich、カタログNo.H9892
L-乳酸:JT Baker、カタログNo.0196-01
グリコール酸:JT Baker、カタログNo.M821-05
水酸化ナトリウム:5.0M NaOH水溶液、Sigma Aldrich、カタログNo.S8263-150ml
水酸化カリウム:メタノール中0.1 M KOH(BDH)
エタノール:200°プルーフSigma Aldrich、カタログNo.459844-1L
無水酢酸:Sigman Aldrichから入手、ACS試薬グレード、カタログNo.320102-1L
3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(ヒドロコーヒー酸):98% Sigma Aldrich、カタログNo.102601
3,4-ジヒドロキシけい皮酸(コーヒー酸):98% Sigma Aldrich、カタログNo.C0625
trans-3,4-ジヒドロキシけい皮酸(trans-コーヒー酸):Sigma Aldrich、カタログNo.51868
3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC、ホモプロトカテチュ酸):98% Sigma Aldrich、カタログNo.850217
1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノ-プロピル)-カルボジイミド:(あるいはN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸、一般的頭字語EDC)Sigma Aldrich、カタログ#E7750
N-アセチル-L-システイン:Sigma Aldrich、カタログNo.A7250
塩化ナトリウム:Sigma Aldrich、カタログNo.793566-500g
グリセロール:Sigma Aldrich、カタログNo.G-8773
ポリエチレングリコール:Spectrum、カタログNo.PO108
ポリエチレンオキシド:Mw400,000da、Sigma Aldrich、カタログNo.372773-500G
ポロキサマー407:Spectrum、カタログNo.P1166
スクロース:Sigma、カタログNo.S3929
D-ソルビトール:Sigma、カタログS1876
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC):Aldrich、カタログNo.191892
ヒドロキシエチルセルロース(HEC):Aldrich、カタログNo.308633
合成尿の処方:塩化カルシウム二水塩Sigma、カタログNo.C5080(1.30g);塩化マグネシウム六水塩Sigma、カタログNo.M2670(1.30g);塩化ナトリウムSigma、カタログNo.793566(9.20g);硫酸ナトリウムAldrich、カタログNo.238597(4.60g);クエン酸ナトリウム二水塩Sigma、カタログNo.S4641(1.30g);シュウ酸ナトリウムSigma、カタログNo.71800(0.04g);オルトリン酸二水素カリウムSigma、カタログNo.P5655(5.60g);塩化カリウムFisher、カタログNo.BP366(3.20g);塩化アンモニウムSigma、カタログNo.09718(2.00g);尿素Sigma、カタログNo.U1250(50.00g);クレアチニンAcros、カタログNo.228940500(2.20g)を2.0リットルのメスフラスコに添加し、1.5リットルの脱イオン水を添加して溶解する。成分が水に溶解して溶液の温度が室温に平衡化した後、2.0Lのマークまで脱イオン水を加える。
尿道付きブタ膀胱:Animal Biotech Industries Inc.(Danboro、PA 18916)
ブタ小腸ケーシング:Butcher and Packer(29/32mm)(Madison Heights、MI 48071)
クエン酸添加ウシ全血:Lampire Biological Laboratory Bovine CPD、カタログNo.7720010
シアノアクリレートA:Permabond 910 Tissue Adhesive、カタログNo.72590
シアノアクリレートB:Loctite 4902瞬間接着剤、カタログNo.1875841
透析チューブ:3,500Da MWCO Snakeskin透析チューブ(Fisher Scientific)、カタログNo.PI88244
パラフィルム:「M」Laboratory film、Pechiney plastic packaging(Chicago、IL 60631)
接着剤:両面3M、カタログNo.21200-46144-6(St Paul、MN 55144)
スコッチファインラインテープ218:3M、カタログNo.70-0060-4397-3(St Paul、MN 55144)
【0117】
(実施例1)
カテコールキトサンの調製および特徴解析
カテコールキトサンの合成は、末端カルボン酸を含むカテコール分子とキトサンのグルコサミンマーのC-2アミンとのN-アシル化反応である(図7参照)。反応は希薄水溶液中、室温でpHを制御して実施する。図12Aおよび12Bに、本発明の調製で使用したカテコール改変処方のいくつかの例を示す。図12Bのカラム1は被覆材の調製物のリストを示す。調製物の処方は図12Bのカラム2に示している。カテコールキトサンの処方は「Cs-Cat」の頭字語を有している。Cs-Catの処方番号は「Cs-Cat」の直後に示しており、「Cs-Cat,XX」と書いている。ここでXXはカテコールキトサンの処方番号の数値表示である。キトサン溶液を調製し、典型的には水溶液を得るために使用した酸(乳酸または酢酸)とともに「キトサン」または「Cs」と書いている。HPMCはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。HPCはヒドロキシプロピルセルロースであり、HECはヒドロキシエチルセルロースである。キトサンのロットはカラム3に示している。キトサンのカテコール置換度(図12Bのカラム4)は以下のようにして決定した。UV/可視スペクトルを取得するため、水晶UVテストセル(光路長1cm、×2(HACH Co.、カタログNo.48228-00)を使用した。UV/可視分光計はVarian Cary Bio100であった。水中で3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸の標準溶液を調製し、280nmの吸光度を濃度に対してプロットした。希薄溶液中の吸光度について以下に示すBeer Lambert関係式における吸光係数ε
A=ε・c・l
(Aは吸光度(無次元)であり、lは光路長である。)
【0118】
(吸光度<0.5)を2,540±50リットル/(mol・cm)として決定した。この値を使用して、既知量の改変キトサンの希薄水溶液、既知体積の溶液、および280nmで測定したピーク吸光度における改変キトサン中の置換度を決定した。
【0119】
キトサンカテコール溶液を、その280nmにおける吸光度が0.5未満になるように希釈する(通常、約50倍または100倍)。吸光度、希釈に使用した溶液の重量、および固形分パーセント(CS-カテコール)を使用して、式
【数1】
に従って、キトサン主鎖上の遊離アミンに対するHCAの分画置換度(fDS)を見出した。ここでAは改変キトサンの280nmにおけるUV/可視吸光度であり、Vは一定の乾燥質量になるまで乾燥するために採取した改変キトサン溶液の体積(リットル)であり、mCCはカテコール改変キトサンの測定した乾燥質量(g)であり、fDDAはキトサンの脱アセチル化の分画度である。
【0120】
溶液中の溶質(主として親水性ポリマー)のパーセンテージを図12Bのカラム5に示す。凍結相分離のために平坦ウェル鋳型に注いだ溶液の深さを図12Bのカラム6に示す。凍結に際して注いだ深さは実質的に変化しないままなので、凍結乾燥の後、注いだ深さは、圧縮した被覆材の最終の組を参照すれば、圧縮による変化量の有用な指標となる(図12Bのカラム7に示す)。圧縮し乾燥した被覆材の最終の密度を、図12Bのカラム8に示す。図12Bのカラム9は、被覆材の調製に関する追加情報があれば示している。被覆材17の調製物が高度に乾燥されているのに対し、被覆材調製物71、79、80、83、84、および85は全て、非カテコールキトサン被覆材の共圧縮とともに実施したことに留意することは興味深い。裏打ちとして使用したこれらの非カテコールキトサン被覆材は全て、5mm注いだ43000の0.5%w/wキトサン酢酸溶液から形成した。
【0121】
カテコールキトサン合成の例を、以下に提供する6つのアプローチ変形例で示す。
【0122】
アプローチ1
CS-カテコール、バッチ15:
キトサン(1.51g)を1.0MのHCl(5mL)とともに脱イオン水(140g)に溶解した。脱イオン水とエタノールの1:1v/v溶液(145mL)を調製した。3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(HCA、10.5mmol)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、13.0mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。次に水/アルコール溶液を上で調製したキトサン溶液にゆっくりと添加し、反応混合物を撹拌した。5.0MのNaOH溶液を使用して反応混合物のpHを5.5に維持し、一夜反応させた。一夜反応後、1.0MのHCl溶液1滴で酸性化した5Lの脱イオン水に対して3日間、脱イオン水に対して4時間、溶液を透析した。透析の間、定期的に(少なくとも24~48時間ごとに)透析液を交換した。
【0123】
アプローチ2
CS-カテコール、バッチ22-1:
キトサン(9.03g)を1.0MのHCl(30mL)とともに脱イオン水(126g)に溶解した。次いで1.0MのNaOH溶液を使用して溶液のpHを5.1にした。脱イオン水とエタノールの1:1v/v溶液(150mL)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、31.3mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(HCA、15.7mmol)を脱イオン水(15mL)に溶解した。次にHCA溶液を上で調製したキトサン溶液にゆっくりと添加し、反応混合物を上方から撹拌した。次いでEDC溶液をHCA/キトサン溶液にゆっくりと添加した。0.1NのKOHメタノール溶液を使用して反応混合物のpHを4.9に維持した。一夜反応後、1.0MのHCl溶液1滴で酸性化した5Lの脱イオン水に対して4日間、溶液を透析した。透析の間、定期的に(少なくとも24~48時間ごとに)透析液を交換した。
【0124】
CS-カテコール、バッチ22から透析後に単離した溶液の一部をオーブンに入れて溶液を濃縮した。溶液を80℃で加熱して体積をほぼ3分の1減少させた。
【0125】
アプローチ3
CS-カテコール、バッチ32(プロトタイプA、急性in vivo I):
キトサン(1.504g)を1.0MのHCl溶液(5.0mL)とともに脱イオン水(143.5g)に溶解した。次いで1.0MのNaOH溶液で溶液のpHを5.5に上げた。脱イオン水とエタノールの1:1v/v溶液(150mL)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、2.93mmol)と3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(HCA、10.41mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。次に水/アルコール反応物溶液を塩化キトサン溶液にゆっくりと添加した。反応物のキトサン溶液への添加の間、1.0MのNaOH溶液を使用してpHを4.9~5.5に制御した。反応物の添加後、反応混合物を2~4時間モニタリングして、必要に応じて1.0MのHClおよび1.0MのNaOHの滴を使用してpHを5.4~5.7に制御した。次に、pHを5.5に制御し、一夜反応させた。一夜(ほぼ18~24時間)反応後、キトサンカテコール溶液のpHを制御して5.5に戻した。次に、キトサンカテコール溶液をほぼpH5.8の5Lの脱イオン水に対して5日間、ほぼpH6.1の脱イオン水に対して4~24時間、透析した。透析手技の間、定期的に(少なくとも24~48時間ごとに)透析液を交換した。
【0126】
アプローチ4
CS-カテコール、バッチ33
キトサン(0.507g)を1.0MのHCl溶液(2.0mL)とともに脱イオン水(47.5g)に溶解した。5.0MのNaOH溶液を使用して溶液のpHを5.5に上げた。脱イオン水とエタノールの1:1v/v溶液(50mL)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、2.94mmol)と3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(HCA、1.49mmol)を水/アルコール溶液(反応物溶液)に溶解した。次に反応物溶液を塩化キトサン溶液にゆっくりと添加した。2.5時間の間、pHを5.4~5.6に制御した。次いでpHを制御して5.4に下げ、一夜(ほぼ18~24時間)反応させた。得られたキトサンカテコール溶液のpHをほぼ5.5に制御し、続いてほぼpH5.8で3日間、脱イオン水に対して3日間、透析した。透析手技の間、定期的に透析液を交換した。透析後、透析チューブの溶液をドラフトの中に一夜吊るしておくことによって、透析中に増えた過剰の水を溶液から蒸発させた。溶液が透析前の重量に戻るまで放置した。
【0127】
アプローチ5
CS-カテコール、バッチ35
キトサン(1.681g+10.6%w/w水分)を1.0MのHCl溶液(11mL)とともに脱イオン水(143.5g)に溶解した。次いで1.0MのNaOH溶液で塩化キトサン溶液のpHをほぼ5.5に上げた。脱イオン水とエタノールの1:1v/v溶液(150mL)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、8.76mmol)、3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(HCA、2.39mmol)、およびN-アセチル-L-システイン(NAC、2.36mmol)を水/アルコール溶液に溶解した(反応物溶液)。次に反応物溶液を塩化キトサン溶液に添加した。反応物溶液の添加の間、反応混合物のpHを5.2~5.3に制御した。2時間後、反応混合物のpHをほぼ5.4に上げた。次いで溶液を一夜(ほぼ18~24時間)反応させた。一夜反応後、溶液のpHをほぼ5.5まで制御した。溶液を5Lの脱イオン水に対して6日間、透析した。透析手技の間、定期的に(少なくとも24~48時間ごとに)透析液を交換した。
【0128】
アプローチ6
CS-カテコール、バッチ38
キトサン(1.678g+10.6%w/w水分)を1.0MのHCl溶液(8g)とともに脱イオン水(143.3g)に溶解した。次いで1.0MのNaOH溶液で塩化キトサン溶液のpHをほぼ5.5に上げた。脱イオン水とエタノールの1:1v/v溶液(150mL)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、2.95mmol)、3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(HCA、1.475mmol)を水/アルコール溶液に溶解した(反応物溶液)。次に反応物溶液を塩化キトサン溶液に添加した。反応物溶液の添加の間、反応混合物をpH5.5付近に制御した。2時間後、反応混合物のpHを5.51に調整した。次いで溶液を室温で20時間、カバーしたビーカー中で反応させた。20時間後、溶液のpHは5.54であった。溶液を透析チューブ中でほぼ100gの3ロットの溶液に分割し、最初の3日間はpH5.8~5.9、4日目はpH6.2で、5Lの脱イオン水に対して5日間、透析した。透析手技の間、定期的に(24時間ごとに)透析液を交換した。
【0129】
(実施例2)
凍結相分離親水性ポリマー被覆材
それだけに限らないが、予め調製した溶液、親水性ポリマー、水、酸、および追加の成分を含む成分を添加することによって、500ml、1000ml、または2000mlのNalgene LDPEボトルまたはポリプロピレンビーカーの中で親水性ポリマーの水溶液を調製した。図12Bに検討した85種類の処方の型を示す。
【0130】
尿と直接接触する被覆材を用いる経尿道前立腺切除術への適用のための処方に際して経験した主な問題点は、1)尿によって促進されるキトサンの急速な(一般に30分未満)溶解、2)純粋なカテコール改変キトサンの迅速な接着の達成における血液による干渉、3)溶解および接着における問題に対処するために処方を変更した際の被覆材のひび割れおよび裂け目の受けやすさであった。最終的な親水性ポリマー溶液の%w/wは0.1重量%~4重量%ポリマーであった。IKA KS260オービタルシェーカーまたはWheatonベンチトップボトルローラーを使用して、完全な溶液の均一性を達成するため、キャップしたボトルおよびその内容物を室温で12~24時間にわたって連続的に混合した。溶液の均一性を達成するため、ビーカー内の溶液は磁気撹拌器のプレートの上で磁気撹拌ビーズを用いて室温で12~24時間、混合した。混合の間、パラフィルムを使用してビーカーを外部環境から閉鎖した。凍結相分離のために調製した溶液は、懸濁条件が存在しない場合には、実質的に均一で澄明であった。カテコールキトサン溶液はいくらかのヘイズおよびミルク状の外観を呈し、いくらかの分散した微細なカテコールキトサンの球状粒子の存在を示した。
【0131】
キトサン溶液は、親水性ポリマーの最終溶液の重量%を0.25%~4%w/w水溶液の範囲として、凍結相分離被覆材として調製した。凍結相分離は、水平で平坦な底を有するテフロン(登録商標)コートしたアルミニウム製鋳型ウェルで実施した。好ましくは約10mm、より好ましくは2.5mm、最も好ましくは5.0mm以下の鋳型の底からの高さまで、溶液をウェルに注いだ。次いで、鋳型内での温度が最初、凍結前に15℃~30℃であった溶液を、鋳型の底を通して冷却することによって凍結させた。好適な凍結相分離構造を達成するために他の冷却温度を適用することができるが、適用する棚の冷却温度は好ましくは-40℃であり、より好ましくは冷却温度は-55℃であり、最も好ましくは冷却温度は-45℃であった。溶液が凍結相分離に達し、凍結した溶液の温度が凍結温度で平衡に達した後で、系をさらに凍結相分離させ、少なくともさらに1時間、平衡状態にしてから乾燥した。様々な凍結相分離溶液の層を提供するために改変した凍結および鋳型充填方法では、第1の層を好ましい深さまで鋳型に加えて凍結し、次いで第2の層を加えて凍結して、このようにして多層の凍結相分離被覆材を調製することができた。(n-1)番目の凍結した溶液とn番目の注いだ溶液との間に霜が生じて層の凍結構造の相違によってひび割れが生じないことを確実にするように注意する必要があった。一緒に接着してひび割れを生じない個別の凍結した層の層形成は大きな課題である。この検討の間に、単一の共接着した圧縮多層コンポジットシートに予め乾燥した親水性ポリマーマトリックスの単一の層を重ねて接着させる方法が成功することを発見したことは、予期しない有意義な知見であった。
【0132】
凍結相分離した凍結溶液のプラークを昇華凍結乾燥するために、24平方フィートの棚を有するVirtis Benchmark 2000パイロットスケール凍結乾燥機を使用した。一次の凍結乾燥(親水性ポリマーに水素結合していない氷の除去)においては、その鋳型の中の平衡化した凍結プラークを凍結乾燥機の中で300mTorr以下の減圧に供し、凍結乾燥機のコンデンサーを-65℃以下に設定して、プラークの温度が-15℃を超えることなく、凍結分離したプラークからの氷の昇華を促進するように、凍結乾燥機の棚を加熱した。実質的に全ての結合していない氷を除去した後、水素結合した氷を除去し、乾燥した被覆材マトリックス中の残存水分が4%以下になるように乾燥した被覆材マトリックス中の含水率を低減させるために、棚の温度をほぼ25℃まで上昇させた。最終的な乾燥したマトリックスは充填した鋳型の元の形状と一致し、長さおよび幅ではほぼ5%収縮しており、密度は0.005g/cm~0.04g/cmであった。これらは95%を超える空孔スペースを含み、微細なポリマーラメラ(厚みサブミクロン~5ミクロン)および100ミクロン~300ミクロンの隣接するラメラの間を隔てる空孔を有する相互連結した多孔質構造であった。
【0133】
凍結相分離および乾燥の後、乾燥したマトリックスを元の厚み(10mm~2.5mm)から最終の厚み、好ましくは50ミクロン近くまで圧縮した。圧縮していない2枚の被覆材を重ねて圧縮すれば、圧縮プロセスの終了時にはこれらは一緒に永久的に結合することになる。圧縮において、較正された均一な厚みの薄いシムを使用して、実質的にシムと同じ厚みの所望の厚みの圧縮された被覆材を得ることができる。50ミクロン付近に設定された所望の圧縮でこの圧縮を達成するために、いくつかの方法がある。本検討で使用した好ましい圧縮方法は、乾燥した未圧縮の被覆材(寸法は典型的には長さ100mm×幅100mm×高さ2.5mmまたは直径50mm×高さ2.5mmに近い)の全体を、整列したプラテンの間で、0.5mm/分以下の一軸圧縮速度で100ミクロン以下の厚みまで圧縮することであった。プラテン(ダイヤモンドをスプレーし、またはテフロン(登録商標)でコートしたMic 6アルミニウム300mm×300mm×90mm)は、その表面に機械加工された質感がないか、いくらかの制御された質感を有する平坦な平面状表面(300mmで5ミクロン以下)になるように機械加工した。圧縮の間のプラテンの温度は、3~5分の一軸圧縮の間、好ましくは80℃付近に維持した。圧縮は、プラテンの4つの隅に1つの隅あたり4トンまでの荷重をかけるスクリュー負荷によって達成した。荷重を解放するまで、圧縮を少なくとも2分維持した。新規な圧縮した親水性ポリマーマトリックスの圧縮厚みおよび重量を測定した。最終密度は0.25~0.9g/cmであった。圧縮の後、被覆材をさらに加工した。この付加的な加工には、直径2.5cmの試験片へのダイカッティングおよびある場合には熱アニーリング熱処理(対流オーブン中60℃~150℃で5~30分加熱)が含まれていた。加工が終了すれば、被覆材をジップロック(登録商標)または熱シールを有するフォイルパウチに収納した。動物および生体適合性の試験を意図した包装した被覆材は、25kGyでγ線照射した。
【0134】
(実施例3)
キトサン管腔内止血被覆材のプロトタイプのin vitroおよびex vivo試験
in vitroビーカー試験
CEHDの溶解挙動を、TURPのin vivo使用で経験するであろう条件と同様の条件下で検討した。CEHDの溶解が早期の溶解(最初の24時間)に耐え、続いて後に溶解して168時間(7日)後には残存のCEHDが存在しないという目標を満たすことを確立するため、7日までの期間の溶解をモニタリングした。
【0135】
粘膜表面を外向きにしたブタ膀胱組織の切片(25mm×25mm×3mm)を、200ミリリットルのポリスチレンビーカーの底にシアノアクリレートセメントで固定した。標準生理食塩水中の1:250v/vの血液の溶液1滴を、ex vivoで切片化した膀胱組織の上面に載せた。直径2.54cmのプローブに500グラムの標準重量(Troemner、Thorofare、NJ 08086)を5分間印加することによって、湿潤した組織表面に9.7kPa(73mmHg)の圧力でCEHD被覆材の片(1.3cm×1.9cm)を適用した。十分な合成尿(50ml)を室温でビーカーに添加し、CEHDの片を浸漬した。ビーカーをパラフィルムで覆い、37℃でインキュベート(Fisher Scientific、モデル146E、CAT.97-990E)し、120rpmでシェーカー(IKA AS260.1、KS260)に載せた。合成尿溶液を24時間ごとに交換し、完全に溶解するまで、または168時間まで、一定の間隔で、目視で存在する被覆材の量によって溶解挙動を記録した。いくつかの試験では、水平に引っ掻くようにピンセットを動かして、ずり力に対する抵抗を測定することによって、CEHD試験片の組織に対する接着を評価した。CEHDの組織接着試験は、in vitro溶解試験の間、合格または不合格に基づいて実施し、低度、中程度、および高度として記録した。
【0136】
in vitroの溶解性およびブタ膀胱粘膜への接着性の結果を図15に示す。in vitroの溶解性およびブタ膀胱粘膜への接着性の結果は、折り畳みおよびデバイス配置試験の結果と併せて、生体適合性およびin vivo試験のための3種の好ましい被覆材の型を選択するために使用した。これらの被覆材の型には、カテコール改変キトサン調製物ならびにカテコールおよびチオールによるキトサン改変の両方の調製物が含まれていた。好ましいin vivo前の被覆材の型に、A、B、およびC型と標識した。被覆材ロット71および81はA型被覆材を表し、ロット78および83はB型被覆材を表し、ロット75、80、および84はC型被覆材を表す。
【0137】
in vitro模擬静脈創傷シーリング(SVWS)試験
実験室用の模擬静脈創傷シーリング(SVWS)デバイスを構築して、粘膜接着性キトサンの真皮への結合に関して真皮を模倣することが既に示されている表面を有する標準のPVCプレートの中央にある直径1.5mmの「傷害」開口に5分間、9.7kPaの荷重をかけて、希薄血液、即ち1:250v/vの標準生理食塩水中の血液の1滴によって接着されたCEHDのシーリング能力を試験した。内径0.250インチ、外径0.375インチのサイラスティック実験用チューブ(Dow Corning Corporation、Midland、MI 48686)は、クエン酸添加ウシ全血の開放容器と、開口の直前にストッパーバルブを有する開口とを連結した。開口の上の相対的な容器中の血液レベルの垂直高さは、0.0~50cmの間で調整可能であった。標準のPVCの表面の開口の上の中央にCEHDの試験用被覆材を取り付けた後、ストッパーバルブを開いて被覆材を15分間観察し、被覆材のシーリング維持能力(取り付けた被覆材を通って、またはその下への血液の漏洩がないこと)を評価(合格/不合格)した。それぞれの試験において圧力水頭を記録した。この試験によって、静脈出血圧におけるプロトタイプCEHDの迅速な模擬出血制御試験が提供された。
【0138】
模擬出血速度(g/分)は、事前に秤量した吸収シートと、「傷害」の上に載せて流れる血液を15秒間収集して4倍した同じ吸収シートとの重量差によって決定した。
【0139】
23℃における20cm~42cmの水頭高さの差は、14.7mmHg~30.9mmHgの圧力(前立腺出血における静脈圧に典型的)と等価である。20cmおよび42cmの水頭高さの差についての出血速度は、それぞれ4.7および8.0g/分と決定した。
【0140】
in vitro模擬静脈創傷シーリング(SVWS)試験の結果を、25kGyでγ線照射した被覆材ロットBおよびCについて、(フォイル包装中、温度25℃で0~6か月保存した保存寿命とともに)表1に示す。
【表1】
【0141】
SISにおける直径3mmの穿孔の上に接着した10mm×10mmの被覆材のex vivo流れ試験
in vitroで良好に機能した試験被覆材(被覆材B型およびC型、各10枚。図12A、12B、および15を参照)を、特注製造したAdamsおよびChittendenのガラス試験セルに支持したブタ小腸粘膜下層(SIS)の直径3mmの穴の中央部で、7psi付近のバルーン圧で約3分間、SISに接着した(図10参照)。SISに接着して欠陥をシールしている被覆材を含む試験セルを、図11に図示する流れシステムに接続した。13-310-911フローカセットを備えたFisher Scientific FH100Mマルチチャネルペリスタポンプを使用して、流速20ml/分付近に制御した。34℃~37℃付近でセルの体積を完全に満たす合成尿を、20ml/分近くで6~20時間、セルに流した。試験の目的は、尿の流れの中で裂け目または被覆材からの粒子もしくは大きな片の損失なく、被覆材が粘膜に接着したままでいる能力を実証することであった。
【0142】
被覆材C型(被覆材ロット75および80)の場合には、1つの試験を20時間実施した。試験の終了時に、試験被覆材の組織への接着を試験するために、ガラス試験セルのジャケットを有する回路を通して標準生理食塩水中1:250v/v血液の20mmHgに近い外部圧を印加した。加圧は4回行ない、被覆材は内部SIS表面への直径3mmの穴の上に接着したままであることに成功し、4回の加圧の全てで液圧の外部印加に耐性を示した。この20時間試験した被覆材を(試験前後の乾燥重量の重量比較によって)質量損失についても検討した。20時間後のC型被覆材の重量試験によって、カテコール改変キトサンの材料損失は(溶解による可能性が最も大きく)元の被覆材の乾燥重量に対して15%以下であることが示された。C型被覆材についての他の全ての試験は、外部圧ストレスを印加せずに6時間実施した。C型被覆材の場合には、被覆材の顕著な目に見える溶解も被覆材からの材料の損失もなかった。試験の終了時に全ての被覆材はSISに接着したままであった。被覆材の(SIS粘膜への)接着および凝集は中程度と格付けした。
【0143】
被覆材ロットB型(被覆材ロット78および83)の場合には、1つの試験を24時間実施した。この24時間試験した被覆材を(試験前後の乾燥重量の重量比較によって)質量損失について検討した。24時間後のB型被覆材の重量試験によって、カテコール改変キトサンの材料損失は(溶解による可能性が最も大きく)元の被覆材の乾燥重量に対して39.4%と顕著であることが示された。B型被覆材についての他の全ての試験は6時間実施した。B型被覆材の場合には、被覆材の顕著な溶解(ゲル化)および材料の損失(目に見える片の被覆材からの放出)の目に見える兆候があった。被覆材の(SIS粘膜への)接着および凝集は中程度から低度と格付けした。
【0144】
(実施例4)
被覆材の折り畳み性および配置の試験
全ての被覆材ロット(N3以上)を折り畳み性について試験した。それは、折り畳み性が本発明の材料から形成された被覆材を前立腺および膀胱頸部の傷害部位に取り付け、巻き付け、および配置する能力のための重要な特徴であるからである。折り畳み試験には、水平に平坦な最終の圧縮された円形の被覆材を最初に反時計方向に180°、縁と縁を重ねて折り畳み、縁を一緒に保持して被覆材の中央部で堅く圧縮して被覆材に単一の直線状折り畳み軸(即ち折り目)を創成することが含まれていた。次いで、折り畳まれた被覆材を開き、新たな折り畳み軸に沿って縁と縁の折り畳みを再現するが、折り畳みは反対の時計方向とする。折り畳みの成功は、折り畳みの軸に沿って裂け目やひび割れが見えないこと、および被覆材の引張り特性(被覆材の折り畳みを横切って穏やかに引っ張ることによって判定する)に顕著な損失がないことによって順位付けする。折り畳み試験の結果を図15のカラム4に示す。
【0145】
尿で満たされた膀胱頸部のモデルとして通常の生理食塩水を満たした250ミリリットルのメスフラスコを使用して、好ましいキトサン裏打ち被覆材A、B、およびC型について配置試験(N=5)を行なった。CEHD被覆材、シースカバー、およびバルーンカテーテル(遠位および近位のバルーン)を備えた完全にアセンブリーされたデバイスを、メスフラスコの頸部の下まで通常の生理食塩水に浸漬した。遠位バルーンを膨張させて保護用の耐水性シースをその末端部で破壊し、その後フラスコの外のシースの乾燥した自由末端部を引っ張ることによって破れたシースを手で完全にかつ元のままで除去し、遠位バルーンを膀胱頸部に素早く位置決めし、その後すぐに近位バルーンを平滑にかつ迅速に膨張させて開き、被覆材をフラスコの頸部に接着させることによって、CEHDの適用を開始した。全ての被覆材の型(A、B、およびC)はガラス容器の頸部に良好に接着し、送達が成功した。
【0146】
(実施例5)
被覆材の型の生体適合性
完成し包装された無菌(最終γ線照射25kGy)のデバイスのISO10993-1生体適合性試験を、限定された接触のための間接的血液流路接触がある体外連絡デバイスの試験要求項目に従って行なった。試験には細胞毒性、皮膚刺激、および急性全身毒性が含まれていた(各試験について3回)。
【0147】
被覆材A型およびC型は全ての生体適合性試験に合格したが、被覆材B型は急性全身毒性試験に不合格であった。B型被覆材ではγ線照射によって細胞毒性のあるチオール残基が生成した疑いがある。
【0148】
(実施例6)
止血の急性in vivo膀胱頸部およびブタ脾臓カプセル剥離モデル
体重40~50kgの6頭の馴化したヨークシャー種の雌ブタ(Oak Hill Genetics、CA)において、急性in vivo試験を実施し、3種のCEHDプロトタイプ(被覆材A:n=6、被覆材B:n=9、被覆材C:n=10)を用いて送達デバイスを組み立てた。実験は急性のブタ膀胱頸部および脾臓実質の出血傷害モデルにおける個別のプロトタイプと対照の有効性のランダム盲検試験として設計した。
【表2】
*7日間の生存研究に進むために被覆材Cを選択した。
‡0、1、2、3および4=それぞれ、なし(材料は接着しない)、低度(接着するが容易に除去できる)、中程度(プローブによって縁を除去できる)、中程度~強度(プローブによる縁の除去に抵抗する)、および強度(プローブによって縁を除去できない)の接着。
†脾臓傷害モデルの陰性対照として手術用ガーゼを使用した。
【0149】
(実施例7~11)
実施例7~11はCGHDキトサン被覆材を表す。
CGHDの開発において以下の材料を使用した。
【0150】
キトサンA:Primex、ChitoClear 65010、TM 4375、MW=250~300kDa、25℃およびスピンドルLV1における1.0%酢酸中1.0%w/wキトサン溶液のブルックフィールド粘度=390cPs、DDA=80%(コロイド滴定による)
キトサンB:Primex、ChitoClear 43000、TM 4167、MW=110~150kDa、25℃およびスピンドルLV1における1.0%酢酸中1.0%w/wキトサン溶液のブルックフィールド粘度=9cPs、DDA=95%(コロイド滴定による)
氷酢酸:Fisher Scientific、カタログNo.A38-212
塩酸:1.0M水溶液、Sigma Aldrich、カタログNo.H9892
L-乳酸:JT Baker、カタログNo.0196-01
グリコール酸:JT Baker、カタログNo.M821-05
水酸化ナトリウム:5.0M NaOH水溶液、Sigma Aldrich、カタログNo.S8263-150ml
水酸化カリウム:メタノール中0.1 M KOH(BDH)
エタノール:200°プルーフSigma Aldrich、カタログNo.459844-1L
微細繊維キチン:直径約10ミクロン、アスペクト比約100/1、100%アセチル化、Weifang
遠心紡糸キトサンナノ繊維:ロットG01、坪量12g/m
Tricolメディカルグレード不織マイクロ繊維
脱イオン水:Ricca ACS試薬グレード脱イオン水、カタログNo.9152-5
無水酢酸:Sigman Aldrichから入手、ACS試薬グレード、カタログNo.320102-1L
3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(Mw=182.17g/mol):98% Sigma Aldrich、カタログNo.102601
1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド:(あるいはN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸、一般的頭字語EDC)Sigma Aldrich、カタログ#E7750
塩化ナトリウム:Sigma Aldrich、カタログNo.793566-500g
合成胃液:ペプシン-Sigma Aldrich、P7000-25G、NaCl-Sigma Aldrich、793566-500G、H2O ACS試薬グレード、NaOH-Sigma Aldrich、カタログNo.S8263-150ml
組織:新鮮なブタ膀胱粘膜、新鮮なブタ胃粘膜、Animal Biotech Industries Inc.から入手
クエン酸添加ウシ全血:Lampire Biological Laboratory Bovine CPD、カタログNo.7720010
シアノアクリレート:Permabond 910 Tissue Adhesive、カタログNo.72590
透析チューブ:3,500Da MWCO Snakeskin透析チューブ(Fisher Scientific)、カタログ#PI88244
ペクチン:MP Biomedicals LLC、カタログNo.102587
グリセロール:Sigma Aldrich、カタログNo.G-8773
ポリエチレングリコール:Spectrum、カタログNo.PO108
ポリエチレンオキシド:Mw400,000da、Sigma Aldrich、カタログNo.372773-500G
ポロキサマー407:Spectrum、カタログNo.P1166
グアー:Sigma Aldrich、カタログNo.G4129
セルロース(微結晶粉末):Sigma Aldrich、カタログNo.435236
ポリアクリル酸:Mv1,250,000 Sigma Aldrich、カタログNo.306215-100G
市販高効率キトサン止血被覆材であるHemCon Patch(登録商標)Proを、急性止血研究の陽性対照被覆材として使用した。
【0151】
急性止血研究の陰性対照として標準的な手術用ガーゼを使用した。
【0152】
(実施例7)
カテコールキトサンの調製および特徴解析
【0153】
アプローチ1
キトサンA(9.0g)を脱イオン水(148g)およびHCl(28ml、1.0M HCl)に溶解した。水:エタノールの1:1(150ml)溶液を調製した。3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(25.9mmol)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(51.8mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。水/アルコール溶液をキトサン溶液に添加した。溶液を激しく混合した。0.1MのHClおよび0.1MのNaOH溶液の滴下添加を使用して反応混合物をpH5.4に制御し、上方からの撹拌によって少なくとも12時間反応させた。その後、1.0MのHCl溶液1滴で酸性化した5リットルの水に対して6日間、酸性化していない水に対して少なくとも3時間、キトサン溶液(約300ml)を透析した。透析の間、約24時間の間隔で少なくとも5回、水を交換し、透析液を交換した。
【0154】
アプローチ2
キトサンA(1.5g)を水(140g)およびHCl(5ml、1.0M HCl)に溶解した。水:エタノールの1:1溶液(145ml)を調製した。3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(10.5mmol)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(13.0mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。水/アルコール溶液をキトサン溶液にゆっくりと添加し、反応混合物を上方からの機械的撹拌器によって低い撹拌速度で撹拌した。0.1MのNaOHおよび0.1MのNaOH溶液の滴下添加を使用して反応混合物をpH5.5に制御し、撹拌下に約12時間反応させた。反応プロセスの後、アプローチ1に記載したようにして溶液を透析した。
【0155】
アプローチ3
キトサンA(9.0g)をHCl(30ml、1.0M)で酸性化した水(126g)に溶解した。水:エタノールの1:1溶液(150ml)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(31.3mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。その後、3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(15.7mmol)を15mlの水に溶解し、この溶液を上方からの中程度の機械的撹拌の下にキトサン溶液にゆっくりと添加した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸を含む水/アルコール溶液をキトサン溶液にゆっくりと添加し、反応混合物を上方からの機械的撹拌器によって低い撹拌速度で撹拌した。0.1MのKOH(メタノール溶液中)および0.1MのHCl溶液の滴下添加を使用して反応混合物をpH5.5に制御し、撹拌下に約12時間反応させた。反応プロセスの後、アプローチ1に記載したようにして溶液を透析した。
【0156】
アプローチ4
キトサンA(9.0g)をHCl(30ml、1.0M)で酸性化した水(126g)に溶解した。次いで0.1MのHClおよび0.1MのNaOH水溶液を使用して溶液をほぼpH5.1に調整した。水:エタノールの1:1溶液(150ml)を調製し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸(31.3mmol)を水/アルコール溶液に溶解した。その後、3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸(15.7mmol)を15mlの水に溶解し、この溶液を上方からの中程度の機械的撹拌の下にキトサン溶液にゆっくりと添加した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸を含む水/アルコール溶液をキトサン溶液にゆっくりと添加し、反応混合物を上方からの機械的撹拌器によって低い撹拌速度で撹拌した。0.1MのKOH(メタノール溶液中)および0.1MのHCl溶液の滴下添加を使用して反応混合物をpH5.0に制御し、撹拌下に約12時間反応させた。反応プロセスの後、アプローチ1に記載したようにして溶液を透析した。
【0157】
カテコールキトサンの置換度
UV/可視スペクトルを取得するため、水晶UVテストセル(光路長1cm、×2(HACH Co.、カタログNo.48228-00)を使用した。
【0158】
UV/可視分光計はVarian Cary Bio100であった。水中で3,4-ジヒドロキシヒドロけい皮酸の標準溶液を調製し、280nmの吸光度を濃度に対してプロットした。希薄溶液中の吸光度について以下に示すBeer Lambert関係式における吸光係数ε
【数2】
(Aは吸光度(無次元)であり、lは光路長である。)
【0159】
(吸光度<0.5)を2,540±50リットル/(mol・cm)として決定した。この値を使用して、既知量の改変キトサンの希薄水溶液、既知体積の溶液、および280nmで測定したピーク吸光度における改変キトサン中の置換度を決定した。
【0160】
キトサンカテコール溶液を、その280nmにおける吸光度が0.5未満になるように希釈する(通常、約50倍または100倍)。吸光度、希釈に使用した溶液の重量、および固形分パーセント(CS-カテコール)を使用して、式
【数3】
に従って、キトサン主鎖上の遊離アミンに対するHCAの分画置換度(fDS)を見出した。ここでAは改変キトサンの280nmにおけるUV/可視吸光度であり、Vは一定の乾燥質量になるまで乾燥するために採取した改変キトサン溶液の体積(リットル)であり、mCCはカテコール改変キトサンの測定した乾燥質量(g)であり、fDDAはキトサンの脱アセチル化の分画度である。
【0161】
結果
キトサン-カテコール合成によって、乳状から澄明、明るいピンクから褐色の範囲で、粘度範囲が薄い液体状稠度(たとえば水の粘度は1cps付近)から濃い液体状稠度(たとえば蜂蜜の粘度は100,000cpsを超える)までの50~300mLのキトサンカテコール溶液が得られた。合成結果(表1を参照)は、キトサンの初期濃度、ほぼpH2~pH5のpH調整ステップにおけるキトサンの沈殿の防止、反応中のpHのほぼ5.0~5.5の維持、および透析洗浄ステップにおける低分子量成分の完全な除去に依存した。
【表3】
溶液中の乾燥固体のパーセンテージは重量法で決定した
*アプローチ2における合成では置換度の決定において過剰のUv/可視吸光度を生じた
†透析膜中に懸濁した溶液から水を熱で補助した乾燥で除去することによってカテコールキトサンを濃縮した。
【0162】
(実施例8)
凍結相分離親水性ポリマー被覆材
それだけに限らないが、予め調製した溶液、親水性ポリマー、水、酸、および追加の成分を含む成分を添加することによって、500ml、1000ml、または2000mlのNalgene LDPEボトルまたはポリプロピレンビーカーの中で親水性ポリマーの水溶液を調製した。図17A~17Cに、処方アプローチ、親水性ポリマー、および溶液中の親水性ポリマー成分の%w/wを列挙する。図17A~17Cの処方のいくつかはキトサンを含んでいない。処方戦略をA、B、C、D、E、F、およびGとして図17A~17Cに列挙する。戦略Aは一次的にはin vitroでの模擬胃腸管液によって試験して胃の中で溶解に耐えないと予想されたキトサンなどの材料の対照であった。再アセチル化(戦略B)は、ペプシンの存在下のin vitro模擬胃腸管液試験まで溶解/分解の速度を低減させる提案した戦略の1つであり、脱アセチル化の程度が低いとキトサンの分解および溶解の速度が速くなることを実証した。戦略Cはキトサンのない公知の多糖類(グアー、ペクチン、およびデンプン)の組成物の検討であり、これらはin vitroでの模擬胃腸管液による消化に耐性がある。戦略Dは戦略Cにキトサンおよびおそらく他の親水性ポリマーを加えたものであった。戦略Eは唯一の親水性ポリマーとしてカテコール改変キトサンを使用したものであった。戦略Fはカテコール改変キトサンと他の親水性ポリマーを使用したものであった。戦略Gは遠心紡糸キトサン繊維を使用したものであった。
【0163】
胃腸管における止血被覆材の適用のための処方に際して経験した主な問題点は、(1)合成胃液中におけるキチンおよびキトサンのペプシンによって促進される予期しない急速な(10分未満)分解(ペプシンは脱アセチル化度の低下に伴って増大する速度でキトサンの分解速度を早くする)、(2)純粋なカテコール改変キトサンの接着の達成における血液による予期しない干渉、(3)他の問題に対処するために処方を変更した際の被覆材のひび割れおよび裂け目の受けやすさであった。
【0164】
最終的な親水性ポリマー溶液の%w/wは0.1%~4%ポリマーであった。IKA KS260オービタルシェーカーまたはWheatonベンチトップボトルローラーを使用して、完全な溶液の均一性を達成するため、キャップしたボトルおよびその内容物を室温で12~24時間にわたって連続的に混合した。溶液の均一性を達成するため、ビーカー内の溶液は磁気撹拌器のプレート上で磁気撹拌ビーズを用いて室温で12~24時間、混合した。混合の間、パラフィルムを使用してビーカーを外部環境から閉鎖した。凍結相分離のために調製した溶液は、懸濁条件が存在しない場合には、実質的に均一で澄明であった(A06、B02、B04、およびC05を除く)。カテコールキトサン溶液はいくらかのヘイズおよびミルク状の外観を呈し、いくらかの分散した微細なカテコールキトサンの球状粒子の存在を示した。
【0165】
戦略Gの場合を除いて、キトサン溶液は、親水性ポリマーの最終溶液の重量%を0.25%~4%w/w水溶液の範囲として、凍結相分離被覆材として調製した。凍結相分離は、水平で平坦な底を有するテフロン(登録商標)コートしたアルミニウム製鋳型ウェルで実施した。好ましくは約10mm、より好ましくは2.5mm、最も好ましくは5.0mm以下の鋳型の底からの高さまで、溶液をウェルに注いだ。次いで、鋳型内での温度が最初、凍結前に15℃~30℃であった溶液を、鋳型の底を通して冷却することによって凍結させた。好適な凍結相分離構造を達成するために他の冷却温度を適用することができるが、適用する棚の冷却温度は好ましくは-40℃であり、より好ましくは冷却温度は-55℃であり、最も好ましくは冷却温度は-45℃であった。溶液が凍結相分離に達し、凍結した溶液の温度が凍結温度で平衡に達した後で、系をさらに凍結相分離させ、少なくともさらに1時間、平衡状態にしてから乾燥した。様々な凍結相分離溶液の層を提供するために改変した凍結および鋳型充填方法では、第1の層を好ましい深さまで鋳型に加えて凍結し、次いで第2の層を加えて凍結して、このようにして多層の凍結相分離被覆材を調製することができた。(n-1)番目の凍結した溶液とn番目の注いだ溶液との間に霜が生じて層の凍結構造の相違によってひび割れが生じないことを確実にするように注意する必要があった。この検討の間に、単一の共接着した圧縮多層コンポジットシートに予め凍結乾燥した親水性ポリマーマトリックスの単一の層を重ねて接着させる方法が成功することを発見したことは、予期しない有意義な知見であった。別個に調製した凍結乾燥組成物を圧縮を使用して組み合わせることも可能である。
【0166】
凍結相分離した凍結溶液のプラークを昇華凍結乾燥するために、24平方フィートの棚を有するVirtis Benchmark 2000パイロットスケール凍結乾燥機を使用した。一次の凍結乾燥(親水性ポリマーに水素結合していない氷の除去)においては、その鋳型の中の平衡化した凍結プラークを凍結乾燥機の中で300mTorr以下の減圧に供し、凍結乾燥機のコンデンサーを-65℃以下に設定して、プラークの温度が-15℃を超えることなく、凍結分離したプラークからの氷の昇華を促進するように、凍結乾燥機の棚を加熱した。実質的に全ての結合していない氷を除去した後、水素結合した氷を除去し、乾燥した被覆材の中の残存水分が4%以下になるように乾燥した被覆材の中の含水率を低減させるために、棚の温度をほぼ25℃まで上昇させた。最終的な乾燥したマトリックスは充填した鋳型の元の形状と一致し、長さおよび幅では約5%収縮しており、密度は0.005g/cm~0.04g/cmであった。これらは95%を超える空孔スペースを有し、微細なポリマーラメラ(たとえば厚みサブミクロン~5ミクロン)およびたとえば20ミクロン~300ミクロンの隣接するラメラの間を隔てる空孔を有する相互連結した多孔質構造(たとえば20~300ミクロン)であった。
【0167】
凍結相分離および乾燥の後、乾燥したマトリックスを元の厚み(10mm~2.5mm)から最終の厚み、好ましくは50ミクロン近くまで圧縮した。圧縮していない2枚の被覆材を重ねて圧縮すれば、圧縮プロセスの終了時にはこれらは一緒に永久的に結合することになる。圧縮において、較正された均一な厚みの薄いシムを使用して、実質的にシムと同じ厚みの所望の厚みの圧縮された被覆材を得ることができる。50ミクロン付近に設定された所望の圧縮でこの圧縮を達成するために、いくつかの方法がある。本検討で使用した好ましい圧縮方法は、乾燥した未圧縮の被覆材(寸法は典型的には長さ100mm×幅100mm×高さ2.5mmまたは直径50mm×高さ2.5mmに近い)の全体を、整列したプラテンの間で、10mm/分以下または約0.5mm/分以下の一軸圧縮速度で100ミクロン以下の厚みまで圧縮することであった。圧縮速度が遅いほど、最終被覆材の機械的特性が良好になり、たとえば約10mm/分に近い初期圧縮速度で調製した被覆材が許容できる。プラテン(テフロン(登録商標)でコートしたMic 6アルミニウム300mm×300mm×90mm)は、平坦な平面状表面(300mmで5ミクロン以下)になるように機械加工した。圧縮の間のプラテンの温度は、3~5分の一軸圧縮の間、好ましくは80℃付近に維持した。圧縮は、プラテンの4つの隅に1つの隅あたり4トンまで(トンは1000キログラムを意味する)の荷重をかけるスクリュー負荷によって達成した。荷重を解放するまで、圧縮を少なくとも2分維持した。新規な圧縮した親水性ポリマーマトリックスの圧縮厚みおよび重量を測定した。最終密度は0.35~0.55g/cmであった。圧縮の後、被覆材をさらに加工した。この付加的な加工には、直径2.5cmの試験片へのダイカッティングおよびある場合には熱アニーリング熱処理(対流オーブン中60℃~150℃で5~30分加熱)が含まれていた。加工が完了すれば、被覆材を熱シールを有するフォイルパウチに収納した。動物および生体適合性の試験を意図した包装した被覆材は、25kGyでγ線照射した。
【0168】
(実施例9)
胃腸管止血被覆材のプロトタイプのin vitro試験
合成胃液の調製:ペプシン(1.6g)、NaCl(1g)、水(500ml)をNalgene LDPE 1000mlボトルに添加して混合した。Millipore pH0~14ユニバーサルインジケーターストリップおよび3.0MのHClの滴下添加を使用して酸性度をpH3~4に調整した。必要があれば1.0MのNaOHの滴下添加を使用してpHを上昇させた。
【0169】
1.試験管法
合成胃液中における試験物品の溶解/断片化に対する耐性を迅速にスクリーニングするため、標識を付した15mlのファルコン管の底に試験物品のシートの0.5cm×0.5cmの片を加え、5mlの胃液を管に加えてから栓をして、37℃のインキュベーターに立てて入れ、穏やかに振盪した。実証できる試料の溶解/断片化が観察されるまで管をモニタリングし、溶解/断片化までの時間を記録した。試験管試験の結果を図16A~16Cに示す。
【0170】
2.ビーカー法
試験管試験で耐性を示す材料については、改変した試験方法を開発した。新鮮な胃粘膜の38mm×38mmの片を、木綿スワブを使用して塗布したシアノアクリレート接着剤の薄層を使用してポリスチレンビーカー(250ml、Fisher、カタログNo.08-732-124)の底の内側に接着した。糊付け前の粘膜表面はTexwipeティッシュを使用して軽く叩いて乾燥させた。接着剤を2~5分で乾燥させた。ビーカーに完全に接着させた後、上に露出した組織の表面をクエン酸添加ウシ全血を滴下(一般に2滴)して湿潤化させ、直径25mmのPVCの平面先端のプローブを通して500gの荷重を1分間、粘膜表面に直角に印加することによって、試験物品シートの20mm×20mmの片を血液で覆われた粘膜表面に接着させた。室における合成胃液(約90ml)をビーカーに添加した。パラフィルムを使用してビーカーをシールし、ビーカーを37℃のインキュベーター内でIKA KS260オービタルシェーカーに立てて入れ、穏やかに振盪した(130rpm)。粘膜からの実証できる分離および/または試料の溶解/断片化が観察されるまで数分間、次いで1時間ごとに、ビーカーの内部をモニタリングし、分離/溶解/断片化までの時間を記録した。
【0171】
試験方法の開発の間、印加した荷重(5kgまで)および付着のための印加の時間は5分までであった。最小侵襲性in vivo適用と比較して、胃腸管手術チームは直径2.5cmの被覆材に対して均一に30秒を超えず、300gを超えない荷重を印加することを助言した。5kgおよび120秒の元の条件は500g、1分に改変された。ここでは荷重300gで30秒の印加を適用している。ビーカー試験の結果を図16A~16Cに示す。
【0172】
3.機械的折り畳み試験
試料シートを長さおよび幅の軸に沿って180°に折り畳み、折り目の線を圧縮した。乾燥した試験シート(25mm×25mm)を折り畳んで開き、裂け目およびひび割れに対する耐性の観察を記録した。折り畳み試験の結果を図16A~16Cに示す。
【0173】
4.機械的組織接着
10Nのロードセルを備えた一軸機械テスター(Instron、モデル5844)を使用して、粘膜に対する湿潤接着を検討した。接着試験はASTM F2258-03 ”Standard Test Method for Strength: Properties of Tissue Adhesives in Tension”を使用して実施した。試験は、z垂直方向の一軸に整列した下部および上部のPVCプローブを用いる試験構成で実施し、これらのプローブのx-y水平の直径15.2mmの面の縁部が、Instronのチャック固定具の上部の可動クロスヘッドに支持された上部プローブの一軸の降下とともに互いに正確に(±0.2mm)一致するようにした。下部のPVCプローブは静止した底部のチャック固定具によって支持されていた。底部のPVC水平表面を使用して、試験の少なくとも5分前にシアノアクリレート糊によってPVCの表面に接着された10mm×10mmの粘膜組織試料を支持した。上部のPVC水平表面を使用して、試験の少なくとも5分前に3Mの両面テープによって接着された10mm×10mmのCGHD試験片を支持した。正方形の組織片は、試験表面の上にプローブを降下させる前に0.25mlの脱クエン酸ウシ全血CPDで湿潤させた。最大荷重の0.98Nに達するまで、プローブを10mm/分で降下させた。接触の際には、試験片と組織片は正確に(±0.2mm)接触し、互いに共平面であった。0.98Nの一軸プローブ荷重を30秒間維持し、その後、プローブを10mm/分で除去して最大破壊応力を記録した。接着性試験の結果を表4に示す。
【0174】
【表4】
【0175】
(実施例10)
in vivo(上部胃腸管出血のブタモデル)スクリーニング研究
【0176】
動物
全部で4頭の異種交配した成体馴化ブタ(体重40~50キログラム)を本研究に使用した。
【0177】
全ての実験は、2011 National Research Council, ”Guide for the Care and Use of Laboratory Animal”および適用可能な連邦規制に従って実施した。動物についてのプロトコールはNIH Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animalsに従っており、Institutional Animal Care and Use Committeeの承認を受けた。全ての手技および動物の世話は、承認された動物研究施設で実施した。
【0178】
獣医スタッフが全ての動物を検査してベースラインの健康状態を確認した。動物は手技の72時間前に全ての寝床から連れ出し、手術の24時間前に絶食させた。動物には随意に水を飲ませた。手技の20分前に、動物に500mgの静脈内セフォテタンおよび250mlのリンゲル乳酸塩の液体ボーラスを与えた。グリコピロレートおよびティレタミンHClとゾラゼパムHClの合剤(Telazol(登録商標)、Fort Dodge Laboratories、Fort Dodge、IA)による予備投薬の後、5%のイソフルランを使用したマスクによって麻酔を誘導した。ブタに挿管し、ベンチレーターに入れ、気管内挿管による2~3%のイソフルランで維持した。右大腿動脈を手術によって単離し、連続的な血圧のモニタリングおよび実験室での研究のための血液の回収を容易にするために、6Frのカテーテルを挿入した。凝固障害の状態を誘導するため、5000単位のヘパリンを静脈内(IV)投与した。抗凝固状態を維持するため、手技の間、50単位/kgのヘパリンの連続注入を使用した。10分後、次いで手技の間20分ごとに、活性化凝固時間(ACT)レベルを試験し、250秒を超えるACTの抗凝固状態を維持するために必要に応じて追加のヘパリン(元の用量の50%、2500単位)をIV投与した。手術および回復の間、ECG、血圧、および酸素飽和度をモニタリングした。血圧、%イソフルラン、O流量、呼吸数、心拍数、SpO、毛細血管再充満時間、血圧および平均動脈圧、ならびに体温を含むバイタルサインを15分ごとに記録した。
【0179】
実験の完了時、麻酔下にある間に、ユータゾール(1mg/10ポンド)のIV投与によって動物を安楽死させた。死亡はECGが平坦波になることおよび聴診器で拍動がないことによって確認した。
【0180】
胃出血モデル
クロルヘキサジンを使用してブタを準備し、無菌的にドレープで覆った。正中線開腹術を実施して胃を露出した。胃大網血管の5cmのセグメントを胃壁から切開して遊離した。それぞれのセグメントについて、遊離しているが元のままの血管に隣接して1cmの胃切開を作成した。次いで動脈を胃切開の方に押して位置決めし、動脈が胃管腔に露出するようにした。次いで胃の切開部を腹壁とともに通常の方法で閉鎖した。上部内視鏡(GIF Type Q180、Olympus)を実施して胃の中の胃創傷部位を特定した。次いで創傷部位および胃の血管の位置を確認して、内視鏡の生検鉗子でこれを切開し、脈動的出血を創成した。
【0181】
以下の表5に特定したキトサン胃腸管止血被覆材(CGHD)を手によるマニュアル適用によって適用した。簡単には、胃前壁に約12cmの切開を作成し、胃腔を露出して、胃の出血部位にCGHDプロトタイプ被覆材(20mm×20mm)を適用した。被覆材を適用する前に、乾燥し事前に秤量して折り畳んだガーゼスポンジを使用して、創傷からの血液があれば15秒間にわたって吸収し、秤量して4倍し、1分あたりの出血速度(血液重量)を計算することによって、出血速度を決定した。CGHD被覆材を、その上にガーゼスポンジを載せて創傷の上に載せた。パッチの上に200~300g付近の軽い圧力で均一に30秒、手で圧力を加えた。30秒でガーゼを取り外し、その区域の初期の止血を観察し、10分まで再出血の兆候を追跡した。適用の完了時に、CGHD被覆材を取り出し、接着スコアシステム(表5)を使用して、被覆材がどの程度組織表面に接着したかに従う接着スコアによって、被覆材と組織との接着を格付けした。
【表5-1】
【0182】
結果
【表5-2】
【0183】
3種のCGHDファミリーのプロトタイプ(D24、F11、およびG01)は、胃血管傷害モデルで迅速な止血および許容できる接着スコアに関して良好な止血特性を実証した。純粋なカテコール改変キトサンの遅い創傷組織接着は、未改変のキトサンとカテコールキトサンとの組合せによって対処した。これらの圧縮した凍結相分離被覆材を最終的に80℃付近で15分~30分熱処理することによって、脈動的出血性胃腸管出血を短時間(30秒)の低い加圧によって迅速に制御する良好な迅速組織接着およびしたがって有望な止血性能を備えた被覆材が得られた。Patch Proは必要に応じて折り畳むことができず、厚すぎるので、胃内視鏡送達における使用には適さないことが留意される。また、Patch Proは上部GIで約15分またはそれ未満で分解される標準的なキトサンから形成されている。
【0184】
(実施例11)
in vivo(上部胃腸管出血のブタモデル)3時間の研究
【0185】
動物
全部で4頭の異種交配した成体馴化ブタ(体重40~50キログラム)を本研究に使用した。
【0186】
動物の準備、手術の準備、動物の麻酔、および動物の屠殺は、実施例4で提示したものと同じであった。
【0187】
胃出血モデル
クロルヘキサジンを使用してブタを準備し、無菌的にドレープで覆う。正中線開腹術を実施して胃を露出した。胃大網血管の2つの5cmのセグメントを胃壁から切開して遊離した。それぞれのセグメントについて、遊離しているが元のままの血管に隣接して1cmの胃切開を作成した。次いで動脈を胃切開の方に押して位置決めし、動脈が胃管腔に露出するようにした。次いで胃の切開部を腹壁とともに通常の方法で閉鎖した(図2)。およそ12cmの切開を胃の前壁に施して、胃腔を露出させた。次いで創傷部位および胃の血管の位置を確認して、鉗子でこれを切開し、脈動的出血を創成した。適用の前に、事前に測定して折り畳んだガーゼスポンジを使用して創傷からの血液があれば15秒間にわたって吸収し、秤量して4倍し、出血速度を計算することによって、出血速度を決定した。次いで、CGHD被覆材を、その上にガーゼスポンジを載せて出血創傷の上に載せた。パッチの上に均一に30秒、手で圧力を加えた。30秒でガーゼを取り外し、その区域の止血を最初に、および10分まで観察した。10分間の観察後に、止血が達成されていれば、胃の切開を積層様式で、即ち術者が切開した層を一緒に連続的に縫合して閉鎖した。次いで腹壁を閉鎖して3時間観察した。3時間の適用の完了時に、創傷被覆材を特定して目視で検査するために、上部内視鏡検査(GIF Type Q180、Olympus)を実施した。次いで被覆材の全体観察のために腹部と胃の切開部を再び開いた。CGHD被覆材を取り出し、接着スコアシステム(表5)を使用して、被覆材がどの程度組織表面に接着したかに従う接着スコアを提示した。
【0188】
これらの手技が完了すれば、被覆材の2番目の組を上述のように再適用するため、古い血栓および残った創傷被覆材を除去することによって、創傷部位を再度準備した。この研究の相では2つの被覆材を試験するためにそれぞれの創傷部位を使用した。
【0189】
出血速度
Metzenbaum鋏を使用して胃の血管に半分に切断した血管傷害を作成し、脈動的出血を創成した。出血速度は予め秤量したガーゼで測定し、g/分で記録した。被覆材を適用する前に、それぞれの傷害について出血速度を決定して記録した。
【0190】
試験片は20mm×20mmであった。
それぞれの型のナノスパンキトサン(G01)およびキトサンカテコールブレンド(F11)からの8種の被覆材を試験した。
【0191】
試験片の適用
傷害の上の中央部に出血を止めるために十分な指からの圧力で試験片を適用するとともに30秒タイマーを始動させた。50mm×50mmのガーゼの一片を2つに折り畳んで20mm×20mmの試験片の上に適用した。続いて血液が溜まっていれば部位から吸引した。指で軽く30秒加圧(荷重300g付近)した後、指を外して出血の兆候がないか試験被覆材を観察した。出血が観察されれば、再び30秒加圧した。圧力を除いたときに止血が達成されていれば、被覆材を10分間観察した。出血の再発がなければ、胃壁を閉じてGI内視鏡で3時間観察した。3時間後に出血の再発がなければ、被覆材試験片は成功とみなした。5分以内に出血が再発すれば、被覆材を取り除いて新しい被覆材を適用した。2回までの再適用を利用した。
【表6】
*各群について1つの被覆材は3回目の加圧の後で滲出を止めるために余分の被覆材を有していた
**1つの被覆材はさらに30秒保持した
【0192】
ナノスパンキトサン被覆材(G01)は、12回の被覆材の適用の中で成功した適用が4回であった。一方、25%カテコール/75% 2%キトサン被覆材(F11)は、試験した13回の被覆材の中で成功した適用は6回であった。被覆材の適用について2回の逸脱が留意された。各群について1つの被覆材はブタ#4において止まらなかった滲出を止めるために余分の被覆材を有していた。ナノスパンキトサン被覆材の1つはさらに30秒保持した。
【0193】
全ての適用において、内視鏡を挿入して、被覆材がまだ存在していて止血性があるかを評価した。全ての例において、全ての被覆材が存在し、止血性があり、内視鏡を通して視認可能であることが確認された。3時間を超える被覆材の適用後、傷害部位および被覆材の検査ができるように、胃を開いた。全ての被覆材に変化はなかった。全ての創傷において血栓形成が観察された。初期に被覆材が成功した全ての例において、3時間の時点で創傷からの引き続く出血が観察されなかったことが注目された。
【0194】
実施例3、4、および5の試験によって特定された最終の最良の被覆材のプロトタイプは、標準的な胃内視鏡の送達ポートを通しての送達に必要な短時間の手による軽い加圧保持でいったん接着すれば、持続する有効性があることが実証された。開発した最良の被覆材は、標準的な胃内視鏡の標準的な直径2.8mmの送達チャネルを通して送達するための折り畳んだ(または巻いた)構成に適していた。
【0195】
3回以下の30秒の保持適用による最初の10分間の適用で止血(出血の完全な停止)に成功した全てのCGHD被覆材は、ブタの閉鎖した胃の中で3時間の試験期間を通して完全な止血性を保っていた。G01プロトタイプ適用の31%およびF11プロトタイプ適用の46%で成功が達成された。特に初期の粘膜接着適用への成功の全てが長期では100%の成功をもたらすということに注目すれば、この研究の困難な性質によって、臨床応用に関してほぼ50%(即ちF11プロトタイプ)が成功した。キトサンとカテコールキトサンの混合被覆材は、消化液による消化に実質的な耐性があり、最も複雑でコンパクトな形態に折り畳むこと/巻くことができ、未改変のキトサンとの混合と併用して良好な接着特性を提供することができる。
【0196】
参照文献
以下は、番号順に列挙し、本明細書を通して注記したカッコ内の番号に対応する参照文献のリストである。
【化1】
【化2】
【化3】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26